令和3年度 春期に実施されたITストラテジスト試験
午後Ⅰの全4問(記述式)です。事例本文・設問・解答例と解説をそのまま読めます。
この試験について:ITストラテジスト試験について
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問1 タクシー会社におけるデジタルトランスフォーメーション
タクシー会社におけるデジタルトランスフォーメーションに関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
A 社は,主に首都圏の顧客を対象としたタクシー会社で,約 3,000 台の車両を保有している。タクシー業界ではドライバの雇用環境を守る観点から増車が制限されており,昨今の A 社の収益は横ばいとなっている。A 社は,こうした事業環境の中でも収益を伸ばすために,顧客が乗車した状態(以下,実車という)で走る距離の走行距離全体に対する割合である実車率の向上,及び顧客の利便性の向上に取り組む目的で,IT を活用した新サービスを検討することにした。
〔新サービス検討の背景〕
A 社の売上げの多くは,顧客が乗車していない状態(以下,空車という)で走らせて顧客を獲得する流し営業によるもので,ドライバの経験やノウハウによって,実車率にばらつきがある。そこで,A 社は,現状を把握するために,顧客へのアンケート調査とドライバへのヒアリング調査を行った。
顧客へのアンケート調査では,次に示す状況に不満足を示す回答が多かった。
駅前などのタクシー乗り場へ行かないと,タイミングよくタクシーを拾えない。 目的地によっては,顧客自身が道順を指示しなければならない。 支払方法が限られている。 ドライバへのヒアリング調査では,次に示す回答が多かった。
駅前などのタクシー乗り場は,空車が集中して効率よく顧客を獲得できない。 目的地をカーナビゲーションシステムに登録する場合に手間が掛かり,顧客を待たせてしまう。 顧客が希望する決済手段に対応できず,乗車してもらえないことがある。 こうした調査結果から,A 社は,IT を活用して流し営業の実車率の向上と顧客の利便性の向上を実現するデジタルトランスフォーメーション(DX)による新サービスを提供することとなった。
〔A 社の新サービス〕
新サービスでは,顧客がスマートフォン(以下,スマホという)からタクシーを呼ぶことができ,多様な決済手段で乗車料金を支払うことができる。また,ドライバが車載タブレット端末から,顧客を獲得できる可能性(以下,実車確率という)の高い地域の情報を確認することができる。
A 社が新サービスを提供するために構築した,ビッグデータと AI を活用できるサービスプラットフォームを図 1 に示す。また,サービスプラットフォームに連携するドライバ用と顧客用のアプリケーションソフトウェア(以下,アプリという)を開発した。ドライバ用の車載タブレット端末アプリ(以下,車載アプリという)では,各種ビッグデータ情報を確認でき,また,顧客がスマホから予約した注文を受け付けることができる。顧客は,スマホ向けに開発した配車マッチングサービスアプリ(以下,配車アプリという)を使って予約注文することができる。
図1 ビッグデータと AI を活用できるサービスプラットフォーム
〔車載アプリとサービスプラットフォームの連携〕
サービスプラットフォーム上で行われる分析では,外部データである地図情報,気象情報,渋滞情報,交通情報,イベント情報なども取り込んだ分析が行われ,AI を活用した需要予測を行う。
需要予測サービスでは,車載アプリの地図情報に実車確率が高い場所が分かるよう色分けを表示する。また,車載アプリ上の色分けされた地図情報には,他の空車の位置情報も表示される。分析結果及び空車の位置情報はリアルタイムに更新され,ドライバは,常に最新の実車確率の高い場所を判断できる。
空車のドライバは,顧客の予約した注文情報を車載アプリで確認して,予約・注文サービスから注文を受け付ける。顧客が受付の内容を確認して注文を確定した場合は,ドライバは顧客をピックアップし,顧客に確定した注文の内容を確認した上で,車載アプリに表示される走行ルートをたどって,注文された降車地点まで運行する。
また,サービスプラットフォームには,多くの決済サービスが利用できるよう,各種決済接続サービスを提供する。これは,クレジットカードのほか,カード型電子マネー,QR コード決済,スマホ非接触決済といった決済サービスと接続できる環境を構築し,車載アプリ経由で各種決済サービスとつなぐことができる。
〔配車アプリとサービスプラットフォームの連携〕
A 社が提供する配車アプリでは,顧客が乗車地点と降車地点を指定できる。顧客が乗車地点を指定しない場合は,顧客のスマホの現在地の情報が自動設定される。空車検索サービスは,顧客の乗車地点と渋滞情報などの外部データを基に,最も早く乗車地点に到着できる空車を検索して特定する。時間・料金予測サービスは,到着までの待ち時間と,降車地点までの乗車時間及び目安料金の予測を行い,配車アプリに表示する。顧客は配車アプリの表示内容を確認した上で,注文を予約することができる。さらに,AI が,蓄積されたビッグデータを用いて,予測と実績のかい離を分析するとともに,多くの外部データから抽出された特徴量の組合せを変えることで,予測の精度を向上させていく。
〔課題と対応策〕
サービスプラットフォームをリリースした後,再び顧客へアンケート調査を行った。顧客から多かった不満足な点は,地域によって空車検索サービスにおいて空車が配車アプリに表示されず,タクシーを呼べないことであった。A 社は,この点について,地域によっては,配車可能な車両台数が少ないことが原因で,空車が配車アプリに表示されないと分析した。A 社は,この課題を解決することで,配車アプリの利用者を増やし,A 社の顧客も増やそうと考えた。
A 社が単独で増車することは規制によって難しいことから,A 社は,改善のための対応策として,多様な決済手段を保有していない他のタクシー会社との提携を検討した。配車が競合しないように,A 社がもつ営業所から離れていて A 社からの配車が行き届かず,配車アプリに A 社の空車が表示されにくい地域を中心に運行しているタクシー会社と提携する。また,車載アプリを改修し,各タクシー会社の配車システムとの連携を可能にした上で,車載アプリ及びサービスプラットフォームの利用料を無償で提供して,提携先を多く確保する方針とした。提携会社が車載アプリとサービスプラットフォームを利用することによって,顧客は,配車アプリを利用しなかったとしても,これまでにないメリットを得ることができる。
A 社は課題への対応を行い,新たなサービスプラットフォームによる DX を本格的に進めることになった。
出題趣旨(IPA)
ITストラテジストには,対象となる事業・業務環境の調査・分析を行い,情報システム戦略の実現に向けて,個別システム化構想・計画を策定し,実施結果を評価する能力が求められる。本問では,タクシー会社のデジタルトランスフォーメーションを題材として,事業環境の変化に対応する事業の高度化を推進するために,ITを活用した新サービスの構想・計画の実行と評価・改善を行う能力を評価する。具体的には,タクシーの配車や顧客の利便性向上に関する現状と課題の分析,ITを活用した新サービスの検討,見直し課題への対応などについて,実務能力を問う。
採点講評(問全体・IPA)
問1では,タクシー会社におけるデジタルトランスフォーメーションについて出題した。全体として正答率は平均的で,状況設定はおおむね理解されているようであった。
ITストラテジストは,対象となる事業・業務環境を分析,評価した上で,ディジタル技術の的確な活用を判断し,事業戦略を推進する能力を高めてほしい。
設問と解答例
設問1
解答欄2つ
〔A 社の新サービス〕について,A 社が収益を伸ばすために,サービスプラットフォームを構築した目的を二つ,それぞれ 10 字以内で述べよ。
解説
本文の根拠
冒頭
A 社は,こうした事業環境の中でも収益を伸ばすために,顧客が乗車した状態(以下,実車という)で走る距離の走行距離全体に対する割合である実車率の向上,及び顧客の利便性の向上に取り組む目的で,IT を活用した新サービスを検討することにした。
〔新サービス検討の背景〕
こうした調査結果から,A 社は,IT を活用して流し営業の実車率の向上と顧客の利便性の向上を実現するデジタルトランスフォーメーション(DX)による新サービスを提供することとなった。
〔A 社の新サービス〕
A 社が新サービスを提供するために構築した,ビッグデータと AI を活用できるサービスプラットフォームを図 1 に示す。
サービスプラットフォームは「新サービスを提供するために構築した」ものである。新サービスの目的は冒頭にそのまま書かれており,A 社は「収益を伸ばすために」,「実車率の向上,及び顧客の利便性の向上に取り組む目的で」新サービスを検討した。したがって構築の目的はこの二つになる。
増車が制限されて台数を増やせない中で収益を伸ばすには,1台当たりの稼ぎ(走行距離のうち顧客を乗せて走る割合)を上げることと,顧客に選ばれることの二つが要る。〔新サービス検討の背景〕の結びでも,調査結果を受けて「流し営業の実車率の向上と顧客の利便性の向上を実現する」新サービスを提供するとまとめている。
10字ずつに対し,解答例は①「実車率の向上」で6字,②「顧客の利便性の向上」で9字。本文の言葉をそのまま使えば収まる。「利便性の向上」だけでは誰の利便性かが抜けるので「顧客の」を付ける。
設問2(1)
40字以内
車載アプリに,他の空車の位置情報をリアルタイムで表示する理由は何か。40 字以内で述べよ。
解答例
空車が集中していない場所に移動することによって,実車率を向上させたいから
解説
本文の根拠
〔新サービス検討の背景〕
駅前などのタクシー乗り場は,空車が集中して効率よく顧客を獲得できない。
〔車載アプリとサービスプラットフォームの連携〕
また,車載アプリ上の色分けされた地図情報には,他の空車の位置情報も表示される。分析結果及び空車の位置情報はリアルタイムに更新され,ドライバは,常に最新の実車確率の高い場所を判断できる。
ドライバへのヒアリングでは「駅前などのタクシー乗り場は,空車が集中して効率よく顧客を獲得できない」という回答が多かった。実車確率の高い場所が分かっても,そこに空車が集まっていれば顧客を取り合うことになり,結局は顧客を獲得しにくい。
車載アプリは実車確率の高い場所の色分けに加え,他の空車の位置をリアルタイムに表示する。ドライバは他の空車が集中していない場所を選んで移動でき,顧客を獲得しやすくなる。これは A 社の目的の一つである実車率の向上につながる。
40字に対し,解答例は「空車が集中していない場所に移動することによって,実車率を向上させたいから」で36字。「空車の集中を避ける」という行動と,その結果の「実車率の向上」を組にする。理由を問われているので「〜から」で結ぶ。
設問2(2)
30字以内
車載アプリに,走行ルートが表示されることによって,どのような顧客の不満足を解決できるのか。30 字以内で述べよ。
解答例
目的地までの道順をドライバに指示しなければならない不満足
解説
本文の根拠
〔新サービス検討の背景〕
目的地によっては,顧客自身が道順を指示しなければならない。
〔車載アプリとサービスプラットフォームの連携〕
顧客が受付の内容を確認して注文を確定した場合は,ドライバは顧客をピックアップし,顧客に確定した注文の内容を確認した上で,車載アプリに表示される走行ルートをたどって,注文された降車地点まで運行する。
顧客へのアンケートで不満足とされた三つの状況のうち,道順に関わるのは「目的地によっては,顧客自身が道順を指示しなければならない」である。
新サービスでは,ドライバが車載アプリに表示される走行ルートをたどって,注文された降車地点まで運行する。道順は車載アプリが示すので,顧客がドライバに道順を指示する必要がなくなる。タクシーを拾えない不満は配車アプリで,支払方法の不満は各種決済接続サービスで解決するもので,走行ルートの表示とは別である。
30字に対し,解答例は「目的地までの道順をドライバに指示しなければならない不満足」で28字。設問が「どのような顧客の不満足」と問うているので,アンケートの項目を使って「〜不満足」で結ぶ。
設問3
30字以内
〔配車アプリとサービスプラットフォームの連携〕について,A 社は,AI が多くの外部データを活用することで,どのような改善を期待できると考えたか。30 字以内で述べよ。
解答例
待ち時間,乗車時間及び目安料金の予測の精度が向上する。
解説
本文の根拠
〔配車アプリとサービスプラットフォームの連携〕
時間・料金予測サービスは,到着までの待ち時間と,降車地点までの乗車時間及び目安料金の予測を行い,配車アプリに表示する。
〔配車アプリとサービスプラットフォームの連携〕
さらに,AI が,蓄積されたビッグデータを用いて,予測と実績のかい離を分析するとともに,多くの外部データから抽出された特徴量の組合せを変えることで,予測の精度を向上させていく。
〔配車アプリとサービスプラットフォームの連携〕の最後の文に,AI が多くの外部データから抽出した特徴量の組合せを変えることで「予測の精度を向上させていく」とある。この節で配車アプリに表示される予測は,時間・料金予測サービスによる到着までの待ち時間,降車地点までの乗車時間及び目安料金である。
したがって期待できる改善は,これら三つの予測の精度が上がることである。講評によると「需要予測の精度を向上させる」という答えが見受けられた。需要予測は〔車載アプリとサービスプラットフォームの連携〕でドライバ向けに行うもので,この節の予測ではない。問われた節の中で「予測」が何を指すかを確かめる。
30字に対し,解答例は「待ち時間,乗車時間及び目安料金の予測の精度が向上する。」で27字。「予測の精度が向上する」だけでは何の予測かが分からないので,三つの予測の対象を並べる。
採点講評(IPA)
設問3は,正答率がやや低く,“需要予測の精度を向上させる”という解答が見受けられた。ここでは,時間・料金予測サービスで提供される待ち時間,乗車時間及び目安料金に関する予測の精度が向上することに気付いてほしい。
設問4(1)
35字以内
A 社が,車載アプリとサービスプラットフォームの利用料を無償で提供して,提携先を多く確保しようと考えた具体的な狙いは何か。35 字以内で述べよ。
解答例
配車可能な車両を増やし,配車アプリの利用者とA社の顧客を増やす狙い
解説
本文の根拠
〔課題と対応策〕
A 社は,この点について,地域によっては,配車可能な車両台数が少ないことが原因で,空車が配車アプリに表示されないと分析した。A 社は,この課題を解決することで,配車アプリの利用者を増やし,A 社の顧客も増やそうと考えた。
〔課題と対応策〕
A 社が単独で増車することは規制によって難しいことから,A 社は,改善のための対応策として,多様な決済手段を保有していない他のタクシー会社との提携を検討した。
〔課題と対応策〕
また,車載アプリを改修し,各タクシー会社の配車システムとの連携を可能にした上で,車載アプリ及びサービスプラットフォームの利用料を無償で提供して,提携先を多く確保する方針とした。
リリース後のアンケートで多かった不満は,地域によって空車が配車アプリに表示されずタクシーを呼べないことだった。A 社はその原因を配車可能な車両台数が少ないことと分析し,この課題を解決して配車アプリの利用者と A 社の顧客を増やそうと考えた。
しかし A 社が単独で増車することは規制で難しい。そこで他のタクシー会社と提携し,その車両を車載アプリでつないで配車できるようにする。利用料を無償にして提携先を多く確保すれば,配車可能な車両が増え,空車が表示されない地域が減る。講評によると「配車アプリの利用者を増やす狙い」という答えが散見された。利用者を増やす前提として,配車可能な車両を増やす必要があるところまで書く。
35字に対し,解答例は「配車可能な車両を増やし,配車アプリの利用者とA社の顧客を増やす狙い」で33字。手段(配車可能な車両を増やす)と結果(配車アプリの利用者と A 社の顧客を増やす)を一続きに書く。
採点講評(IPA)
設問4(1)では,“配車アプリの利用者を増やす狙い”という解答が散見された。配車アプリの利用者を増やす背景として,タクシーを呼べないという顧客の不満を解消するために,配車可能な車両を増やす必要がある点まで理解してほしい。
設問4(2)
30字以内
提携会社の顧客が配車アプリを利用しなくても,顧客が提携会社に期待できるメリットは何か。30 字以内で述べよ。
解答例
顧客が,多様な決済手段から支払方法を選択できること
解説
本文の根拠
〔新サービス検討の背景〕
支払方法が限られている。
〔車載アプリとサービスプラットフォームの連携〕
これは,クレジットカードのほか,カード型電子マネー,QR コード決済,スマホ非接触決済といった決済サービスと接続できる環境を構築し,車載アプリ経由で各種決済サービスとつなぐことができる。
〔課題と対応策〕
多様な決済手段を保有していない他のタクシー会社との提携を検討した。
〔課題と対応策〕
提携会社が車載アプリとサービスプラットフォームを利用することによって,顧客は,配車アプリを利用しなかったとしても,これまでにないメリットを得ることができる。
提携先は「多様な決済手段を保有していない」タクシー会社である。提携会社は車載アプリとサービスプラットフォームを使うようになるので,サービスプラットフォームの各種決済接続サービスを車載アプリ経由で使える。クレジットカード,カード型電子マネー,QR コード決済,スマホ非接触決済といった決済サービスにつながる。
配車アプリで呼ばずに流しで乗った顧客でも,支払は車載アプリ経由で行われるので,この効果を受けられる。顧客アンケートの不満の一つ「支払方法が限られている」が,提携会社のタクシーでも解消されるわけである。これが「これまでにないメリット」に当たる。
30字に対し,解答例は「顧客が,多様な決済手段から支払方法を選択できること」で25字。配車アプリを使わないという条件なので,配車や予測の機能ではなく,車載アプリ側で完結する決済の話に絞る。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問1(表記を一部改変)
問2 小売業の店舗販売とインターネット通信販売の融合
小売業の店舗販売とインターネット通信販売の融合に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
R 社は,センスが良く洗練された輸入雑貨やファッション小物類を扱う小売業であり,全国の主要都市のターミナル駅の駅前ショッピングビルなどに出店している。
〔R 社の現状〕
R 社の店舗は競合店にはないような商品の品ぞろえによって,若い世代や外国人旅行客に人気がある。また,出店駅の利用者や近隣住民の年齢及び世帯構成に合わせて店舗ごとに品ぞろえや販売価格に特徴を出していることから,これまではどの店舗でも売上げは好調で利益も確保できていた。しかし,今期は,社会環境が激変した影響から期初より来店客や旅行客が大幅に減少しており,全ての店舗で前年と比べて減収減益が予想され,新たな取組が必要と考えている。
また,インターネット通信販売(以下,ネット通販という)の取組として,これまで外部のネット通販サイトに,バイヤーのお薦め商品を中心に出品してきた。R 社では,ネット通販サイトを通常の店舗と同様に一店舗とみなし,ネット通販サイトが提供するシステムを利用して,販売管理などの業務を,本社のネット通販専用 PC で行っていた。
〔R 社の情報システム〕
社内の主な情報システムには次のものがある。
基幹システム:販売管理サブシステム,発注管理サブシステム,在庫管理サブシステムから成る。基幹システムには,店舗に設置された POS レジとストアコンピュータを含む。 顧客管理システム:自社発行ポイントカードによって購買履歴などを管理する。 ワークフロー(以下,WF という)システム:本社から店舗への通達,及び店舗から本社へのりん議を取り扱う。 本社事務処理システム:財務会計システム,人事給与システムなどの本社内だけで利用する情報システム群。 〔R 社の課題〕
ネット通販サイトについては,来店客数の減少と反比例して顧客の閲覧数は多くなっている。しかし,ネット通販サイトのルールに従った画面レイアウト,表示項目などの制約があり,取扱商品の良さをアピールしにくいことから,同じネット通販サイトに出店している他の事業者との間で際立った特徴が出しにくく,店舗の売上減少を補うまでには至っていない。また,実際に商品を試すことで購買意欲が高まるといったネット通販に不向きな商品も存在する。さらに,ネット通販では,返品や交換の手続が煩わしいことに対し,顧客からは不満が出ていた。
ネット通販サイトの売上げはネット通販専用 PC から基幹システムへ手作業で連携させており,基幹システムで最新の売上把握ができていない。
色やサイズなどの種類が多い商品は,顧客の需要に応じた在庫を確保できず,人気のある種類が品切れになる店舗もある。また,商品の一部には,地域によって流行があるので,ある地域でブームになった商品は,その地域にある店舗では品切れになることがある。品切れ時には取り寄せの対応をするが,入荷するまで時間が掛かったり顧客が再来店しなかったりして,顧客,店舗とも不満がある。売行きが急激に向上しブームと判断された場合は,店舗ではその商品の在庫を大量に確保してきた。しかし,ブームが終わって長期間在庫として残ってしまった場合は,値引きしてでも売り切りたいと考えている。
R 社では,店舗ごとに達成すべき幾つかの目標値を本社から月次で指示している。目標値の一つに店舗の粗利率があり,店長はこの達成状況を常にモニタリングしている。店舗では,商品を値引き販売する場合には,店長が WF システムを使って本社の商品本部に商品の値引き額の承認を取る必要がある。これに時間が掛かることから,すぐに価格設定できず,販売機会を逃している。
〔ネット通販の強化とネット通販システムの構築〕
競合他社でも店舗販売からネット通販へのシフトを進めていることや,社会環境の激変などから,R 社は店舗で商品を陳列し顧客を待つだけでは売上回復は見込めないと考えた。そこで,店舗売上げの落ち込みを補完すべく,ネット通販を強化することにし,取組に当たっての方針を次のように定めた。
画像だけでは顧客が商品の良さに気付かず,購入に至らない場合があるので,対策をする。 顧客がネット注文後に届いた品物を見て,想像していたものと違っていた場合に,簡単に返品や交換ができる仕組みを提供する。 上記の方針に沿って新規にネット通販システムを構築し,外部のネット通販サイトから切り替えることにした。
〔店舗の取組〕
ネット通販における取扱商品は,全ての店舗の取扱商品を網羅させる。顧客がネット通販で購入決済した商品を,顧客が会社の帰りなどに最寄りの任意の店舗の受取専用ロッカーで受け取れる仕組みを導入する。店舗受取の注文があると,配送センタや他店舗の在庫から搬送したり,店舗の商品在庫からピックアップしたりして,翌日中にはネット通販の購入品を顧客が指定した受取専用ロッカーに準備しておく。受取専用ロッカーは決済時に設定した暗証番号で解錠できる。さらに,顧客は,受取時に商品が想像していたものと違っていた場合には購入品をその場で返品や交換ができるようにする。また,顧客が店舗で気に入った商品を見つけたものの,その店舗にはないサイズや色の商品であり,かつ,他店舗や配送センタに在庫がある場合は,店舗間で調整をすることで,顧客はその店舗で注文,決済してネット通販の流通経路に乗せられるようにする。
店舗受取分や店舗からのネット通販の流通経路に乗せて配送した分は,当該店舗の売上げとみなして,店舗のインセンティブにする。
ネット通販において,顧客の閲覧は多数あるものの売上げが伸びていない商品については,使用感や使用方法などを体験する無料の体験教室を開催し,顧客が実際に商品に触れたり使ったりできるようにする。スペースに余裕のない店舗ではこの様子を撮影した動画を店舗のディジタルサイネージで表示する。
店長の裁量で店舗ごとに柔軟に販売価格を変更できる仕組みにする。価格設定に当たっては,店舗で損益シミュレーションをできるようにする。変更された販売価格はすぐに売場の電子棚札に表示させる。
〔情報システムの対応〕
これらの取組を推進するために,R 社は情報システムを次のとおり整備することにした。
新規にネット通販システムを自社内に構築するとともに,基幹システムでは,ネット通販システムの売上げを連携するための機能を開発する。 在庫管理サブシステムでは,ネット通販システムと連携して,配送センタ及び店舗の全商品を管理する機能を開発する。 ネット通販システムは柔軟に画面レイアウトや表示項目を設定できる機能を開発する。
出題趣旨(IPA)
ITストラテジストには,社内外の環境変化に応じたITを活用した経営戦略や情報戦略を策定する能力が求められる。本問では,小売業のネット通販の推進を題材として,ITを活用した幾つかの施策と情報システム対策を策定する能力を評価する。具体的には,各施策の狙いや理由,その実現のために必要となる情報システムの機能の構築能力を問う。
採点講評(問全体・IPA)
問2では小売業の店舗販売とインターネット通信販売の融合について出題した。全体として正答率は平均的で,状況設定はおおむね理解されているようであった。
ITストラテジストは,社内外の環境変化に応じて,ITを活用した経営戦略や情報戦略を策定する能力を高めてほしい。
設問と解答例
設問1
25字以内
〔ネット通販の強化とネット通販システムの構築〕について,売上回復につなげるために新規にネット通販システムを構築するのはなぜか。25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔R 社の課題〕(1) ネット通販サイトに関する課題
しかし,ネット通販サイトのルールに従った画面レイアウト,表示項目などの制約があり,取扱商品の良さをアピールしにくいことから,同じネット通販サイトに出店している他の事業者との間で際立った特徴が出しにくく,店舗の売上減少を補うまでには至っていない。
〔ネット通販の強化とネット通販システムの構築〕
上記の方針に沿って新規にネット通販システムを構築し,外部のネット通販サイトから切り替えることにした。
〔情報システムの対応〕
ネット通販システムは柔軟に画面レイアウトや表示項目を設定できる機能を開発する。
R 社はこれまで外部のネット通販サイトに出品してきたが,閲覧数は増えても店舗の売上減少を補えていない。その理由として本文が挙げるのは,ネット通販サイトのルールに従った画面レイアウトや表示項目などの制約があり,取扱商品の良さをアピールしにくく,他の事業者との間で際立った特徴が出しにくいことである。
新規に構築するネット通販システムは,柔軟に画面レイアウトや表示項目を設定できる。外部のサイトから自社のシステムに切り替えれば,この制約がなくなり,商品の良さをアピールして売上回復につなげられる。講評によると「来店客数の減少」や「閲覧数の増加」といった現在の状況を書いた答えが散見された。それはネット通販を強化する背景であって,外部のサイトをやめて新規に構築する理由ではない。
25字に対し,解答例は「外部のネット通販サイトの制約が解消するから」で21字。「なぜか」と問うているので「〜から」で結び,何の制約かが分かるように「外部のネット通販サイトの」を付ける。
採点講評(IPA)
設問1は,正答率がやや低かった。“来店客数の減少”や“閲覧数の増加”という現在の状況を記述した解答が散見された。外部のネット通販サイトの制約の多さが,新規にネット通販システムを構築する背景にあることに気付いてほしい。
設問2(1)
30字以内
顧客のどのような場合を想定して,ネット通販の購入品を店舗で受け取れる仕組みにしたのか。30 字以内で述べよ。
解答例
商品が想像していたものと違う場合にその場で対応する。
解説
本文の根拠
〔R 社の課題〕(1) ネット通販サイトに関する課題
さらに,ネット通販では,返品や交換の手続が煩わしいことに対し,顧客からは不満が出ていた。
〔ネット通販の強化とネット通販システムの構築〕
顧客がネット注文後に届いた品物を見て,想像していたものと違っていた場合に,簡単に返品や交換ができる仕組みを提供する。
〔店舗の取組〕(1) 店舗でのネット通販システムの活用
さらに,顧客は,受取時に商品が想像していたものと違っていた場合には購入品をその場で返品や交換ができるようにする。
ネット通販には「返品や交換の手続が煩わしい」という顧客の不満があった。そこで R 社は取組の方針に,届いた品物が想像していたものと違っていた場合に簡単に返品や交換ができる仕組みを提供することを掲げた。
店舗の受取専用ロッカーで受け取る仕組みでは,受取時に商品が想像していたものと違っていれば,その場で返品や交換ができる。店舗で受け取れるようにしたのは,この場合を想定して,配送による返品や交換の手続を省くためと読める。会社の帰りに最寄りの店舗で受け取れるという利便もあるが,設問は「どのような場合を想定して」と問うているので,方針に書かれた場面を答える。
30字に対し,解答例は「商品が想像していたものと違う場合にその場で対応する。」で26字。想定した場面(想像と違う場合)と,その場での対応の両方を入れる。
設問2(2)
25字以内
店舗にない商品でも他店舗や配送センタに在庫がある場合,ネット通販の流通経路に乗せて配送できるようにした狙いは何か。25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔R 社の課題〕(2) 商品在庫の確保と値引きに関する課題
色やサイズなどの種類が多い商品は,顧客の需要に応じた在庫を確保できず,人気のある種類が品切れになる店舗もある。
〔R 社の課題〕(2) 商品在庫の確保と値引きに関する課題
品切れ時には取り寄せの対応をするが,入荷するまで時間が掛かったり顧客が再来店しなかったりして,顧客,店舗とも不満がある。
〔店舗の取組〕(1) 店舗でのネット通販システムの活用
また,顧客が店舗で気に入った商品を見つけたものの,その店舗にはないサイズや色の商品であり,かつ,他店舗や配送センタに在庫がある場合は,店舗間で調整をすることで,顧客はその店舗で注文,決済してネット通販の流通経路に乗せられるようにする。
〔R 社の課題〕(2) に,色やサイズなどの種類が多い商品は需要に応じた在庫を確保できず品切れになる店舗があり,取り寄せでは入荷までに時間が掛かったり顧客が再来店しなかったりして,顧客・店舗とも不満があると書かれている。地域の流行によるブームでも品切れが起きる。
店舗にないサイズや色でも,他店舗や配送センタに在庫があれば,その店舗で注文・決済してネット通販の流通経路で届けられる。顧客は再来店しなくても品切れの商品を買え,店舗は販売を逃さない。講評によると「店舗のインセンティブになる」という R 社の店舗の利点を書いた答えが見受けられ,R 社の取組の狙いは需要の変動への対応にあるとしている。インセンティブは取組を店舗に進めてもらうための手当てであって,取組の狙いではない。
25字に対し,解答例は「品切れ時にも顧客がすぐに購入できるから」で19字。品切れという場面と,取り寄せと違って「すぐに」買えるという違いを入れる。
採点講評(IPA)
設問2(2)は,正答率がやや低かった。“店舗のインセンティブになる”というR社の店舗の利点を解答したものが見受けられた。R社の取組の狙いは,需要の変動への対応にあることを理解してほしい。
設問2(3)
30字以内
体験重視の販売促進に取り組む狙いは何か。30 字以内で述べよ。
解答例
顧客が良さに気付いていない商品の紹介機会を増やす。
解説
本文の根拠
〔R 社の課題〕(1) ネット通販サイトに関する課題
また,実際に商品を試すことで購買意欲が高まるといったネット通販に不向きな商品も存在する。
〔ネット通販の強化とネット通販システムの構築〕
画像だけでは顧客が商品の良さに気付かず,購入に至らない場合があるので,対策をする。
〔店舗の取組〕(2) 体験重視の販売促進
ネット通販において,顧客の閲覧は多数あるものの売上げが伸びていない商品については,使用感や使用方法などを体験する無料の体験教室を開催し,顧客が実際に商品に触れたり使ったりできるようにする。
体験重視の販売促進の対象は,ネット通販で「顧客の閲覧は多数あるものの売上げが伸びていない商品」である。取組の方針には「画像だけでは顧客が商品の良さに気付かず,購入に至らない場合があるので,対策をする」とあり,これに当たる。
〔R 社の課題〕にも,実際に商品を試すことで購買意欲が高まるネット通販に不向きな商品があると書かれている。体験教室や店舗のディジタルサイネージの動画で使用感や使用方法を見せれば,画像だけでは伝わらなかった良さを顧客に知ってもらう機会が増える。
30字に対し,解答例は「顧客が良さに気付いていない商品の紹介機会を増やす。」で25字。方針の「顧客が商品の良さに気付かず」を使って対象の商品を絞り,狙いを「紹介機会を増やす」とまとめる。
設問2(4)
20字以内
店長の裁量で販売価格を変更できる仕組みにする理由は何か。20 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔R 社の課題〕(2) 商品在庫の確保と値引きに関する課題
しかし,ブームが終わって長期間在庫として残ってしまった場合は,値引きしてでも売り切りたいと考えている。
〔R 社の課題〕(2) 商品在庫の確保と値引きに関する課題
店舗では,商品を値引き販売する場合には,店長が WF システムを使って本社の商品本部に商品の値引き額の承認を取る必要がある。これに時間が掛かることから,すぐに価格設定できず,販売機会を逃している。
〔店舗の取組〕(3) 店長の権限拡大
店長の裁量で店舗ごとに柔軟に販売価格を変更できる仕組みにする。
現状では,店舗で値引き販売するには,店長が WF システムで本社の商品本部に値引き額の承認を取る必要がある。これに時間が掛かるので,すぐに価格設定できず,販売機会を逃している。ブームが終わって残った在庫は値引きしてでも売り切りたいのに,それが間に合わない。
店長の裁量で販売価格を変えられれば,本社の承認を待たずにすぐ価格を設定でき,変更した価格は電子棚札にすぐ表示される。課題の結びの「販売機会を逃している」を裏返したものが理由になる。
20字に対し,解答例は「販売機会を逃さないようにしたいから」で17字。字数が少ないので,承認に時間が掛かるという経緯は省き,本文の結果の言葉を裏返して「〜から」で結ぶ。
設問2(5)
25字以内
店舗で損益シミュレーションができる機能を開発する理由は何か。25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔R 社の課題〕(2) 商品在庫の確保と値引きに関する課題
R 社では,店舗ごとに達成すべき幾つかの目標値を本社から月次で指示している。目標値の一つに店舗の粗利率があり,店長はこの達成状況を常にモニタリングしている。
〔店舗の取組〕(3) 店長の権限拡大
価格設定に当たっては,店舗で損益シミュレーションをできるようにする。
店舗には本社から月次で目標値が指示されており,その一つが店舗の粗利率である。店長はこの達成状況を常にモニタリングしている。値引きすれば売価が下がり,粗利率に影響する。
店長の裁量で販売価格を変えられるようにすると,値引きの判断は本社の承認ではなく店長が行うことになる。そのとき店長が,値引きによって目標の粗利率が達成できるかどうかを事前に確かめるために,損益シミュレーションが要る。
25字に対し,解答例は「店長が店舗の目標粗利率への影響を確認するから」で22字。誰が(店長が)何を確かめるのか(店舗の目標粗利率への影響)を入れる。「損益を確認する」だけでは,本文に書かれた店長の目標値とのつながりが見えない。
設問3(1)
25字以内
基幹システムでネット通販システムの売上げを連携する機能を開発するのは,どのような R 社の課題を解決するためか。25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔R 社の課題〕(1) ネット通販サイトに関する課題
ネット通販サイトの売上げはネット通販専用 PC から基幹システムへ手作業で連携させており,基幹システムで最新の売上把握ができていない。
〔情報システムの対応〕
新規にネット通販システムを自社内に構築するとともに,基幹システムでは,ネット通販システムの売上げを連携するための機能を開発する。
〔R 社の課題〕(1) の2段落目に,ネット通販サイトの売上げはネット通販専用 PC から基幹システムへ手作業で連携させており,基幹システムで最新の売上把握ができていないとある。
基幹システムにネット通販システムの売上げを連携する機能を作れば,手作業がなくなり,基幹システムで最新の売上げを把握できる。ネット通販の売上げは店舗受取分などを店舗の売上げとみなすことにもなるので,基幹システムで扱えることがいっそう重要になる。
25字に対し,解答例は「ネット通販の売上げを手作業で連携していた課題」で22字。「どのような課題」と問うているので「〜課題」で結び,原因の「手作業で連携」を入れる。
設問3(2)
30字以内
在庫管理サブシステムでネット通販システムと連携する機能は,どのような R 社の取組に対応するものか。30 字以内で述べよ。
解答例
顧客がネット通販の購入品を店舗で受取可能にする取組
解説
本文の根拠
〔店舗の取組〕(1) 店舗でのネット通販システムの活用
店舗受取の注文があると,配送センタや他店舗の在庫から搬送したり,店舗の商品在庫からピックアップしたりして,翌日中にはネット通販の購入品を顧客が指定した受取専用ロッカーに準備しておく。
〔情報システムの対応〕
在庫管理サブシステムでは,ネット通販システムと連携して,配送センタ及び店舗の全商品を管理する機能を開発する。
在庫管理サブシステムの新機能は,ネット通販システムと連携して配送センタ及び店舗の全商品を管理するものである。これまでネット通販は一店舗とみなして外部のサイトで扱っており,店舗の在庫とはつながっていなかった。
この機能が要るのは,店舗受取の取組である。店舗受取の注文があると,配送センタや他店舗の在庫から搬送したり,店舗の商品在庫からピックアップしたりして,翌日中に受取専用ロッカーに準備する。ネット通販の注文に対して,どの店舗や配送センタにどの在庫があるかが分からなければ,これはできない。講評によると「在庫をネット通販にも流通させる」などの一般的な答えが見受けられ,R 社の独自の取組に即して答えるよう求めている。
30字に対し,解答例は「顧客がネット通販の購入品を店舗で受取可能にする取組」で25字。「どのような R 社の取組」と問うているので,〔店舗の取組〕にある具体的な取組の名前(店舗受取)を使い,「〜取組」で結ぶ。
採点講評(IPA)
設問3(2)は,正答率が低かった。“在庫をネット通販にも流通させる”などの一般的な解答が見受けられた。R社の独自の取組に即して解答してほしい。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問2(表記を一部改変)
問3 印刷会社の写真事業における新規ビジネスの企画
印刷会社の写真事業における新規ビジネスの企画に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
B 社は,大手印刷会社である。事業部門として出版事業,広告事業,写真事業を有しており,機能部門としてデザイン部門,研究開発部門を有している。
〔B 社の写真事業〕
B 社の写真事業は,全国主要都市に写真スタジオを有しており,同一都市に複数の写真スタジオを展開している。写真スタジオでは,個人向けに七五三,成人式,結婚式などのライフイベントにおける写真撮影を行っており,撮影した写真をプリントし,販売している。写真スタジオには,カメラマンと事務スタッフがそれぞれ複数名勤務している。カメラマンはスタジオでの写真撮影を行うほか,出版事業,広告事業における写真撮影も行っている。しかし,近年高性能化したスマートフォン内蔵カメラの普及によって,かつてよりもカメラマンの稼働率が下がっている。
写真事業では,撮影した写真をプリント販売するのに加え,デザイン部門の協力を得て,撮影した写真を紙のアルバムとして編集し,販売している。B 社 Web サイトでは顧客別の専用ページ作成が可能になっている。専用ページには B 社で撮影した写真が保存されており,顧客は個人で撮影したディジタル写真をアップロードして追加することもできる。専用ページからアルバムに収録したい写真を選定することで,七五三,成人式,結婚式などの各ライフイベントに限定したアルバムや,ライフイベントを横断的に整理したアルバムを作成できる。アルバムは,デザイン性の高さから顧客の思い出に残るものとして,非常に高い評価を得ている。
研究開発部門では,ディープラーニングの顔認識技術を研究しており,写真事業に関連する領域では,写真に写っている“顔の識別”や“表情の分析”を行う機能を開発した。また,近年の法整備やプライバシー意識の高まりを踏まえて,写真の一部に対して自動でぼかしをいれる機能も開発した。
〔小中学校の状況〕
B 社は人的リソースの有効活用を事業課題とし,一層のビジネス拡大に向けて,潜在顧客として写真撮影の機会が多いと思われる小中学校を対象としてニーズの有無に関する調査を行った。調査結果の概要は次のとおりであった。
全国の小中学校では遠足,運動会,文化祭などの学校行事に際して写真撮影を行っていることが多い。 写真撮影は学校の職員が行うケースと外部のカメラマンに外注するケースがある。 撮影した写真は都度保護者に販売することに加え,卒業アルバムの掲載写真としても利用している。 学校は,卒業アルバムを思い出に残る良いものにするために毎年非常に苦労している。 B 社は,学校行事における写真撮影について,近隣の大規模中学校である C 中学校にヒアリングを行った。C 中学校には各学年に複数のクラスが存在し,学校行事で撮影される写真も多数に上る。C 中学校では次のプロセスで学校行事の写真を保護者に販売していることが分かった。
① 学校の職員が,学校行事に際して写真を撮影する。 ② プリントした写真を学校の職員が校内に掲示する。 ③ 保護者が来校し,購入する写真を選定する。 ④ 保護者が,購入希望の写真を注文票に記入し学校の職員に提出する。 ⑤ 学校の職員が写真の注文を取りまとめる。 ⑥ 注文票と撮影媒体を業者に渡し,業者が写真をプリントして保護者に受け渡す。 現在 C 中学校では,学校の職員が写真撮影を行っている。これは,同一都市の小中学校が同一日に学校行事を実施することが多く,カメラマンを調達することに苦労した経験によるものである。学校の職員は,上記プロセスを行う上で多くの手作業を行う必要があり,業務負荷が高いと感じている。また,保護者は写真の閲覧をするためだけに来校する必要があることや,掲示されている多数の写真の中から自分の子供を探し出すこと,自分の子供が良い表情で写っている写真を探し出すことが手間であると感じている。
B 社は以上の状況をチャンスと見て,主要都市の大規模小中学校における行事写真ビジネス(以下,新規ビジネスという)を立ち上げることにした。
〔新規ビジネスの概要〕
図 1 に示す写真購入システムを新たに開発し,次のプロセスで写真撮影販売サービスを実施する。 ① B 社が小中学校と写真撮影,販売代行契約を締結する。 ② B 社カメラマンが,学校行事に派遣されて写真を撮影し,写真をストレージにアップロードする。 ③ 保護者が,B 社に対して氏名,住所,電子メールアドレス,パスワード,子供の所属学校名とともにアカウントの発行を申請する。 ④ B 社が,保護者に対してアカウントを発行する。 ⑤ 保護者がアカウントページから写真を閲覧し,購入希望の写真を選択する。 ⑥ B 社が購入希望情報を確認し,各保護者に写真を紙媒体又はデータで送付する。 写真購入システムに表示する写真には“sample”のすかし文字を表示する。 写真購入システムには写真レコメンド機能を実装する。写真レコメンド機能では,研究開発部門で開発をしたディープラーニング技術を活用し“顔の識別”と“表情の分析”を行う。“顔の識別”ではまず,保護者が自分の子供の写っている写真を数枚選択する。すると,それらの写真に共通して写っている顔を識別し,ストレージから当該識別した顔と似た顔が写っている写真を優先してレコメンドする。また,“表情の分析”では,撮影した写真の中から表情が笑顔のものを優先してレコメンドする。
図1 写真購入システムの概要
〔保護者説明会と要望への対応〕
B 社は新規ビジネスの検討を踏まえ,C 中学校で新規事業のトライアルを行うことにした。トライアルに先立ち保護者説明会を実施し,今回の取組について保護者から同意を得た。保護者からは IT の利用に習熟していない人にも分かりやすくしてほしいとの要望があった。また,学校の担当者からは,保護者から“自分の子供の顔が写っている写真を,他の保護者に購入されたくない”という要望が出た場合の対応方法も検討してほしいとの依頼を受けた。
保護者からの要望を受け,B 社は操作方法が直感的に分かるシンプルなページにするとともに,“よくある質問”や“お問合せ先”といったページを設けて保護者の疑問点を解消できるようにした。また学校の担当者の依頼に対応するために,複数の生徒が 1 枚の写真に写り込んでいる場合には,B 社の技術を生かした対応を行うことができるようにした。
さらに B 社は一層のビジネス拡大を念頭に,学校の課題を解決でき,B 社の既存ビジネスにおける強みを生かした,“写真撮影販売サービス以外の新たな提案”を行った。
出題趣旨(IPA)
ITストラテジストには,対象となる事業,業務環境の調査,分析を行い,全体システム化計画に基づいて個別システム化構想,計画を策定し,適切な個別システムを調達する能力が求められる。本問では,印刷会社における写真購入システムの企画を題材として,設定された事業,業務環境の下で発生しているステークホルダの課題や要望を,適切な解決策に結びつける能力を問う。具体的にはステークホルダの有する課題に対してITを活用して解決を図る企画能力や,自社の開発した技術を活用して顧客に提案を行う提案能力を問う。
採点講評(問全体・IPA)
問3では,印刷会社の写真事業における新規ビジネスの企画について出題した。全体として正答率は平均的で,状況設定はおおむね理解されているようであった。
ITストラテジストは,顧客ニーズを的確に捉え,効果の高い解決策を策定する能力を高めてほしい。
設問と解答例
設問1
35字以内
〔小中学校の状況〕について,B 社が新規ビジネスを展開していく上でもっている強みは何か。人的リソースの観点から 35 字以内で述べよ。
解答例
同一日に同一都市の複数の小中学校にカメラマンを派遣できること
解説
本文の根拠
〔B 社の写真事業〕
B 社の写真事業は,全国主要都市に写真スタジオを有しており,同一都市に複数の写真スタジオを展開している。
〔B 社の写真事業〕
写真スタジオには,カメラマンと事務スタッフがそれぞれ複数名勤務している。
〔小中学校の状況〕
現在 C 中学校では,学校の職員が写真撮影を行っている。これは,同一都市の小中学校が同一日に学校行事を実施することが多く,カメラマンを調達することに苦労した経験によるものである。
〔小中学校の状況〕に,C 中学校が職員で写真撮影をしているのは,同一都市の小中学校が同一日に学校行事を実施することが多く,カメラマンの調達に苦労した経験によるとある。学校側から見ると,同じ日に多くの学校でカメラマンが要ることが壁になっている。
B 社は全国主要都市に写真スタジオを持ち,同一都市に複数のスタジオを展開しており,各スタジオにカメラマンが複数名いる。つまり同じ都市の中に多くのカメラマンを抱えており,同じ日に複数の小中学校へ派遣できる。これが人的リソースの観点での強みである。講評によると,B 社側の人員の状況に加えて,小中学校側の学校行事実施日の状況も踏まえた答えは少なかった。
35字に対し,解答例は「同一日に同一都市の複数の小中学校にカメラマンを派遣できること」で30字。「カメラマンが多い」だけでは学校側の事情とつながらないので,「同一日に」「同一都市の複数の小中学校に」を入れる。
採点講評(IPA)
設問1は正答率が低かった。B社側の人員の状況に加えて,小中学校側の学校行事実施日の状況も踏まえて解答しているものは少なかった。状況設定から事実を適切に評価し,簡潔に説明する能力を高めてほしい。
設問2(1)
15字以内
B 社が新規ビジネス立ち上げによって対応しようとした,写真事業における事業課題の背景となる問題は何か。15 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔B 社の写真事業〕
しかし,近年高性能化したスマートフォン内蔵カメラの普及によって,かつてよりもカメラマンの稼働率が下がっている。
〔小中学校の状況〕
B 社は人的リソースの有効活用を事業課題とし,一層のビジネス拡大に向けて,潜在顧客として写真撮影の機会が多いと思われる小中学校を対象としてニーズの有無に関する調査を行った。
B 社の事業課題は「人的リソースの有効活用」であり,新規ビジネスはこの課題に対応するものである。その背景となる問題は,〔B 社の写真事業〕の最後の文にある「かつてよりもカメラマンの稼働率が下がっている」ことである。
稼働率が下がったカメラマンを小中学校の行事撮影に派遣すれば,人的リソースを有効に使える。講評によると「スマートフォン内蔵カメラの普及」という答えが散見された。それは稼働率低下の原因であって,B 社が問題として捉え,解決のために行動しているのはカメラマンの稼働率低下のほうである。
15字に対し,解答例は「カメラマンの稼働率低下」で11字。字数が少ないので,原因は書かず,問題そのものを名詞句で答える。
採点講評(IPA)
設問2(1)では,“スマートフォン内蔵カメラの普及”という解答が散見された。B社は“カメラマンの稼働率低下”を問題として捉え,これを解決するための行動をとっていることを理解してほしい。
設問2(2)
解答欄2つ
C 中学校の職員へのメリットのうち,写真購入システムが提供するものを二つ,それぞれ 20 字以内で具体的に述べよ。
解説
本文の根拠
〔小中学校の状況〕
② プリントした写真を学校の職員が校内に掲示する。
〔小中学校の状況〕
⑤ 学校の職員が写真の注文を取りまとめる。
〔小中学校の状況〕
学校の職員は,上記プロセスを行う上で多くの手作業を行う必要があり,業務負荷が高いと感じている。
〔新規ビジネスの概要〕
⑤ 保護者がアカウントページから写真を閲覧し,購入希望の写真を選択する。
C 中学校の現在のプロセスで職員が行っている作業は,①写真の撮影,②プリントした写真の校内への掲示,④注文票の受取り,⑤注文の取りまとめ,⑥業者への受渡しである。職員はこれらの手作業で業務負荷が高いと感じている。
写真購入システムでは,保護者がアカウントページで写真を閲覧し,購入希望の写真を選ぶ。写真を校内に掲示する必要がなくなり,購入希望は B 社がシステム上で確認するので,職員が注文を取りまとめる必要もなくなる。撮影を B 社カメラマンが行うことも負荷を減らすが,それはカメラマンの派遣によるもので,写真購入システムが提供するメリットではない。
20字ずつに対し,解答例は①「写真を掲示する業務負荷の軽減」で14字,②「注文を取りまとめる業務負荷の軽減」で16字。「具体的に」と求めているので,「業務負荷の軽減」だけで終わらせず,現在のプロセスのどの作業がなくなるかを書く。
設問2(3)
解答欄2つ
C 中学校の保護者へのメリットのうち,写真レコメンド機能が提供するものを二つ,それぞれ 30 字以内で具体的に述べよ。
〔②〕解答例
自分の子供が良い表情で写っている写真を探す手間の軽減
解説
本文の根拠
〔小中学校の状況〕
また,保護者は写真の閲覧をするためだけに来校する必要があることや,掲示されている多数の写真の中から自分の子供を探し出すこと,自分の子供が良い表情で写っている写真を探し出すことが手間であると感じている。
〔新規ビジネスの概要〕
すると,それらの写真に共通して写っている顔を識別し,ストレージから当該識別した顔と似た顔が写っている写真を優先してレコメンドする。
〔新規ビジネスの概要〕
また,“表情の分析”では,撮影した写真の中から表情が笑顔のものを優先してレコメンドする。
保護者が手間だと感じていることは三つある。写真の閲覧のためだけに来校すること,多数の写真から自分の子供を探し出すこと,自分の子供が良い表情で写っている写真を探し出すことである。
写真レコメンド機能の“顔の識別”は,保護者が選んだ写真から子供の顔を識別し,似た顔が写っている写真を優先して示す。これで自分の子供を探す手間が減る。“表情の分析”は笑顔の写真を優先して示すので,良い表情の写真を探す手間が減る。来校が要らなくなるのはアカウントページで閲覧できるからで,レコメンド機能ではなく写真購入システム全体のメリットである。
30字ずつに対し,解答例は①「自分の子供が写っている写真を探す手間の軽減」で21字,②「自分の子供が良い表情で写っている写真を探す手間の軽減」で26字。“顔の識別”と“表情の分析”の二つの機能に一つずつ対応させ,本文の保護者の手間の言い回しを使う。
設問3(1)
30字以内
学校の担当者の依頼に対応するために,B 社が実装できる機能は何か。30 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔B 社の写真事業〕
また,近年の法整備やプライバシー意識の高まりを踏まえて,写真の一部に対して自動でぼかしをいれる機能も開発した。
〔保護者説明会と要望への対応〕
また,学校の担当者からは,保護者から“自分の子供の顔が写っている写真を,他の保護者に購入されたくない”という要望が出た場合の対応方法も検討してほしいとの依頼を受けた。
〔保護者説明会と要望への対応〕
また学校の担当者の依頼に対応するために,複数の生徒が 1 枚の写真に写り込んでいる場合には,B 社の技術を生かした対応を行うことができるようにした。
学校の担当者の依頼は,保護者から「自分の子供の顔が写っている写真を,他の保護者に購入されたくない」という要望が出た場合への対応である。B 社はこれに対して,複数の生徒が写り込んでいる写真に「B 社の技術を生かした対応」を行えるようにした。
B 社の研究開発部門は,写真の一部に対して自動でぼかしをいれる機能を開発している。“顔の識別”で要望のあった子供の顔を見分け,その顔にぼかしを入れれば,他の保護者はその子供の顔が分かる写真を買えなくなる。講評によると「自分の子供以外の顔全てにぼかしを入れる」という答えが散見された。保護者の要求を正確に読めば,ぼかしの対象は要望のあった子供の顔であり,他の保護者が購入した場合にぼかしを入れれば足りる。
30字に対し,解答例は「指定した子供の顔に自動でぼかしを入れる機能」で21字。誰の顔が対象か(指定した子供の顔)を必ず入れる。
採点講評(IPA)
設問3(1)では,“自分の子供以外の顔全てにぼかしを入れる”という解答が散見された。保護者の要求事項を正確に理解し,目的達成のためには,要望があった子供の顔を対象とし,他の保護者が購入した場合にぼかしを入れれば足りることを理解してほしい。
設問3(2)
15字以内
“写真撮影販売サービス以外の新たな提案”とは何か。15 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔B 社の写真事業〕
写真事業では,撮影した写真をプリント販売するのに加え,デザイン部門の協力を得て,撮影した写真を紙のアルバムとして編集し,販売している。
〔B 社の写真事業〕
アルバムは,デザイン性の高さから顧客の思い出に残るものとして,非常に高い評価を得ている。
〔小中学校の状況〕
学校は,卒業アルバムを思い出に残る良いものにするために毎年非常に苦労している。
〔保護者説明会と要望への対応〕
さらに B 社は一層のビジネス拡大を念頭に,学校の課題を解決でき,B 社の既存ビジネスにおける強みを生かした,“写真撮影販売サービス以外の新たな提案”を行った。
新たな提案の条件は二つある。「学校の課題を解決でき」ることと,「B 社の既存ビジネスにおける強みを生かした」ものであることである。
学校の課題は,調査結果にある「卒業アルバムを思い出に残る良いものにするために毎年非常に苦労している」ことである。B 社の強みは,デザイン部門の協力を得て写真をアルバムに編集・販売しており,そのアルバムがデザイン性の高さから顧客の思い出に残るものとして非常に高い評価を得ていることである。二つを合わせると,卒業アルバムの制作を引き受ける提案になる。行事写真を B 社が撮影していれば,その写真を卒業アルバムの掲載写真にも使える。
15字に対し,解答例は「卒業アルバムの制作」で9字。写真の撮影・販売以外の提案なので,写真の販売ではなく卒業アルバムを作ることを答える。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問3(表記を一部改変)
問4 AI を用いた筋電義手
AI を用いた筋電義手に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
D 社は,義手の製造メーカである。義手とは,外傷や病気などで手を失った人が用いる人工の手のことである。D 社は,外観の再現を目的とした装飾用義手と,肩,背中,反対の腕などを動かして機構部を操作し,物をつかむ,放すという手の基本的な機能を実現する能動義手を製造販売してきた。
D 社の製品は,外観の再現性が高く,アフターサービスが良いので,利用者からの評判が良い。一方で,“日常生活をより自然に送れるように,指を個別に動かすことができる自由度の高い義手が欲しい”といった要望も多く寄せられている。
D 社は,顧客の満足と社会貢献を社是として掲げ,顧客の要求に応える製品開発に取り組んできた。D 社は,次に開発する自由度の高い義手について,信号処理及びモータ制御が要素技術として必要になると見越して,これらの技術研究を進める方針を策定した。また,将来は保有技術を他市場に生かして事業を拡大することが必要になると考えている。
〔義手を動かす技術〕
利用者の意思で動かせる義手には,能動義手のほか,筋肉の収縮時に発生する微弱な電位(以下,筋電という)を検出して,これを基にモータで手指を動かす義手(以下,筋電義手という)がある。
今まで海外も含め製品化された筋電義手は,手を失って残った前腕の表面から検出した筋電を基に,5 本の指を同時に曲げて物をつかむものだった。しかし,最近では,検出した筋電の波形を分析する研究が進んだことによって,個々の指を動かすための筋電を別々に取り出す技術が発表されている。
人の手,指の構造を考慮すると,関節の数や動きから,指 1 本当たり 4 自由度,手首から指先まで合わせて 24 自由度があり,このような製品ができれば,日常生活でほぼ不自由なく使えると考えられている。
〔市場状況〕
義手は,ほかの福祉機器と比べ,国内において対象者が少ないことから,需要が少なく量産化によるコストダウンや売上拡大が期待できない。
筋電義手は,海外において半世紀以上前に製品化されている。海外では,紛争,災害などで手を失った人が多いこともあり需要が多く,幾つもの海外メーカが筋電義手の製品を販売してきたことで製品が行き渡り,市場としては既に飽和状態にある。現在ではメーカが淘汰されたことで寡占市場になり,価格が下がりにくい状況になっている。国内においては,筋電義手を販売しているメーカはないが,海外メーカは国内市場への進出を狙い,代理店を探し始めている。
〔今後の展望〕
自由度の高い義手の技術は,IoT,仮想現実(VR)及び触感のフィードバック技術を組み合わせることによって,宇宙空間,海底など人が立ち入ることが難しい場所で補修をしたり,ケーブルをつないだりといった細やかな作業ができる遠隔操作ロボットハンドとして,さらには,視覚,聴覚及び触覚まで活用して遠隔地にいるような体験ができるテレイグジスタンス技術としても利用できる可能性がある。
〔試作機の開発〕
D 社は,手首から指先までの全ての関節を別々に動かすことを目標とし,開発期間を限定して,PC を用いた筋電義手の試作機を開発した。試作機を開発した結果,筋電を検出して物をつかむことが可能であることは確認できたが,筋電の波形に基づき全ての指を別々に動かすための情報処理が難しく,例えば,“グー”,“パー”は実現できたが,“チョキ”は開発期間内に実現できなかった。この時点で,D 社の保有技術だけで自由度の高い製品を開発すると開発費が高くなることが予想された。
D 社は,この試作機を数名のモニターに利用してもらい,意見を収集した。
〔国の方針〕
国は,障害のある人がそれぞれの障害の種類,状況に応じ,ハンディキャップを意識せず,自立した豊かな人生を享受できるインクルーシブ(包摂)社会を実現する目標を掲げた。この目標を達成するために,国は,IoT,AI の技術開発を強化して障害のある人の ICT 利活用を促進する方針を定めた。
〔大学における研究〕
G 大学の H 教授は研究室の学生とともに,筋電義手の技術,及び筋電義手の使用時に対象に加えた圧力をフィードバックさせたり触感を感じさせたりする技術の研究を進めている。特に,個々の利用者が自由度の高い義手を違和感なく動かすために必要な先端技術を AI で実現する研究を行っている。主な研究内容を次に示す。
利用者には,“手を握る”,“手を開く”,“じゃんけんをする”,“2 本の指でつまむ”などの感覚で筋肉に力を入れてもらい,義手が意思どおりに動いたらその時点の筋電の波形と動作を学習させる。 学習のための大量のデータから,規則性やルールを AI で見つけ出し,制御する。 H 教授は,研究した AI の技術を搭載した筋電義手の製品を世に出すことによって,その製品に対する社会における認知度を高めるとともに,先端技術を発展させるために必要な大量のフィールドデータと研究費用を継続的に取得したいと考えている。
さらに,H 教授は,筋電義手の使用時に対象に加えた圧力をフィードバックさせたり触感を感じさせたりする技術においても先駆者として取り組み,実装可能なレベルの成果を挙げている。
〔製品化の検討〕
D 社の IT ストラテジストである E 氏は,試作機を基に自由度の高い筋電義手を製品化することを想定し,技術上の問題点の整理をシステムアーキテクトの F 氏に依頼した。F 氏は,機構設計の技術者と協力し,試作機を利用したモニターの意見も踏まえ,次のように問題点とその原因を整理して E 氏に報告した。
筋電の波形から指を動かす信号を取り出す処理と,この信号を基に指ごとのモータを動かす処理を,筋電義手の接続先である PC で行っているからである。
フィードバック機能がなく,持つ物に対してどの指でどれくらいの圧力を加えているのかが利用者には分からず,壊してしまうおそれを感じるからである。
自由度が高まるに従いモータの数が増え,現在の技術では義手が重くなり,消費電力も増え,バッテリによる駆動可能時間が短くなるからである。
(4) “利用者に合わせるチューニングに長時間掛かる” 検出される筋電の波形が利用者によって異なり,筋電と義手との動きを合わせる作業に多くの時間を掛けているからである。
E 氏は,試作機の開発結果と F 氏の報告内容を考慮し,最初の筋電義手の製品を開発するに当たり,自由度は市場の製品の水準をやや上回る程度に限定すべきと考えた。また,信号を解析する情報処理の面では,ほかの組織から技術を得るべきと考え,H 教授を訪問して意見交換を行った。
H 教授は,意見交換の中で,D 社と継続的に協力したいとの意向を示した。
〔目標と開発方針の設定〕
E 氏は,筋電技術の最新の技術動向を F 氏が調査した結果,及び H 教授と意見交換した結果を踏まえ,次の目標を設定した。
AI の技術を用いることによって,自由度の高い細やかな制御を可能にする。 常に先端技術を搭載した製品を開発し続ける。 将来的には,箸を使ったり,ギターを弾いたり,タッチタイピングでキーボードを打ったりすることができる,軽くて自由度の高い筋電義手を安価に提供する。 また,最初の筋電義手の製品開発に当たり,F 氏の報告と H 教授の意見も踏まえた上で製品の開発方針を次のように整理した。
試作機では PC で行っていた機能を,AI チップ化して筋電義手に組み込む。 対象に加えた圧力をフィードバックさせたり触感を感じさせたりする装置を追加する。 H 教授に,継続的な相互協力の中で技術協力を依頼する。 短期間で開発し,国内市場で販売を開始する。 〔事業戦略の策定〕
E 氏は,最初の筋電義手の製品開発に当たり,各種助成金を得て研究開発費に充当することができないかどうかを調査すべきと考えた。また,販売先を国内から海外へ展開し,量産化によるコストダウンや売上拡大を図るべきと考えた。さらに,遠隔操作ロボットハンドを手掛ける国内会社に技術供与の提案を進めるべきと考えた。
出題趣旨(IPA)
ITストラテジストには,社会の状況と自社の保有技術を基に,将来性が見込める事業を想定した新製品を企画する能力,さらには,どのように市場へ展開し事業を成り立たせるかといった戦略を立案する能力が求められる。本問では,義手の製造メーカにおける新製品の企画を題材として,ITストラテジストに求められる,国内外の市場状況や技術動向を分析する能力,それを基に新製品を企画し必要となる技術を調達する能力,有効な目標と開発方針を設定する能力,事業拡大も踏まえた事業戦略を立案する能力を問う。
採点講評(問全体・IPA)
問4では,AIを用いた筋電義手の事業計画の立案について出題した。全体として正答率は平均的で,状況設定はおおむね理解されているようであった。
ITストラテジストは,社会環境,市場動向,技術動向を基に,AIなどの新たな技術も活用して,将来の事業の拡大も含めた戦略的な事業計画を立案し,推進する能力を高めてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
30字以内
E 氏が,最初の筋電義手の製品を開発するに当たり,自由度は市場の製品の水準をやや上回る程度に限定すべきと考えた目的は何か。市場状況及び開発方針を考慮して,30 字以内で述べよ。
解答例
海外メーカが国内市場に進出する前に販売を開始するため
解説
本文の根拠
〔市場状況〕
国内においては,筋電義手を販売しているメーカはないが,海外メーカは国内市場への進出を狙い,代理店を探し始めている。
〔試作機の開発〕
筋電の波形に基づき全ての指を別々に動かすための情報処理が難しく,例えば,“グー”,“パー”は実現できたが,“チョキ”は開発期間内に実現できなかった。
〔製品化の検討〕
E 氏は,試作機の開発結果と F 氏の報告内容を考慮し,最初の筋電義手の製品を開発するに当たり,自由度は市場の製品の水準をやや上回る程度に限定すべきと考えた。
〔目標と開発方針の設定〕
短期間で開発し,国内市場で販売を開始する。
設問は市場状況と開発方針を考慮するよう求めている。市場状況では,国内に筋電義手を販売しているメーカはないが,海外メーカが国内市場への進出を狙って代理店を探し始めている。開発方針には「短期間で開発し,国内市場で販売を開始する」とある。
試作機では全ての関節を別々に動かすことを目標にしたが,全ての指を別々に動かす情報処理が難しく,“チョキ”さえ開発期間内に実現できなかった。自由度を高くしすぎると開発に時間が掛かり,海外メーカに先を越される。そこで自由度を市場の製品の水準をやや上回る程度に抑え,短期間で開発して,海外メーカが入ってくる前に国内で売り始めようとしたと読める。講評によると,市場状況と開発方針を考慮していない答えも見受けられた。
30字に対し,解答例は「海外メーカが国内市場に進出する前に販売を開始するため」で26字。「短期間で開発するため」だけでは市場状況が抜けるので,海外メーカの国内進出という時間の制約を入れる。
採点講評(IPA)
設問1(1)は,正答率がやや低かった。市場状況と開発方針を考慮していない解答も見受けられた。海外メーカが国内市場への進出を狙う状況に対し,短期間で開発して国内市場で販売を開始する開発方針を立てたことを理解してほしい。
設問1(2)
40字以内
E 氏が,信号を解析する情報処理の面では,ほかの組織から技術を得るべきと考えたのは,どのような問題を解決するためか。40 字以内で述べよ。
解答例
D社の保有技術だけで自由度の高い製品を開発すると開発費が高くなる。
解説
本文の根拠
〔試作機の開発〕
この時点で,D 社の保有技術だけで自由度の高い製品を開発すると開発費が高くなることが予想された。
〔製品化の検討〕
また,信号を解析する情報処理の面では,ほかの組織から技術を得るべきと考え,H 教授を訪問して意見交換を行った。
試作機の開発では,筋電の波形に基づき全ての指を別々に動かすための情報処理が難しかった。その結果「D 社の保有技術だけで自由度の高い製品を開発すると開発費が高くなることが予想された」。
信号を解析する情報処理は,まさに試作機でつまずいた部分である。これを自社だけで開発すると開発費が高くなるので,筋電義手の技術を AI で研究している H 教授のような外部の組織から技術を得て,この問題を解決しようとした。
40字に対し,解答例は「D社の保有技術だけで自由度の高い製品を開発すると開発費が高くなる。」で33字。本文の一文をほぼそのまま使えばよい。「開発費が高くなる」だけでは,外部から技術を得る理由(保有技術だけでは足りないこと)が伝わらないので,「D 社の保有技術だけで」を残す。
設問2(1)
20字以内
E 氏が,AI チップ化して筋電義手に組み込むことを考えたのは,利用者のどのような意見を参考にしたか。20 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔製品化の検討〕
“反応速度が遅く使用に違和感がある”
〔製品化の検討〕
筋電の波形から指を動かす信号を取り出す処理と,この信号を基に指ごとのモータを動かす処理を,筋電義手の接続先である PC で行っているからである。
〔目標と開発方針の設定〕
試作機では PC で行っていた機能を,AI チップ化して筋電義手に組み込む。
開発方針の「試作機では PC で行っていた機能を,AI チップ化して筋電義手に組み込む」は,F 氏の報告した問題点のうち (1) に対応する。(1) の原因は,筋電の波形から信号を取り出す処理とモータを動かす処理を,接続先の PC で行っていることだった。
処理を義手の中の AI チップで行えば,PC とのやり取りがなくなり,反応が速くなると考えられる。(1) の問題点の見出しが,モニター(利用者)の意見そのものである。(2) の圧力のフィードバックは装置の追加で,(4) のチューニングは H 教授の AI の研究で対応するもので,AI チップ化とは別である。
20字に対し,解答例は「反応速度が遅く使用に違和感がある。」で17字。利用者の意見を問うているので,原因の説明ではなく,報告に引用された利用者の言葉をそのまま書く。
設問2(2)
15字以内
E 氏が,継続的な相互協力の中で H 教授に与えることができると考えた情報は何か。15 字以内で答えよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔大学における研究〕
H 教授は,研究した AI の技術を搭載した筋電義手の製品を世に出すことによって,その製品に対する社会における認知度を高めるとともに,先端技術を発展させるために必要な大量のフィールドデータと研究費用を継続的に取得したいと考えている。
〔目標と開発方針の設定〕
H 教授に,継続的な相互協力の中で技術協力を依頼する。
相互協力なので,D 社が H 教授から技術協力を受ける代わりに,H 教授にも得るものがある。H 教授が継続的に取得したいと考えているのは,先端技術を発展させるために必要な「大量のフィールドデータと研究費用」である。
D 社が H 教授の AI 技術を搭載した製品を販売すれば,利用者が実際に使ったときの筋電の波形や動作のデータが大量に集まる。これが D 社から H 教授に与えられる情報である。講評によると,正答率はやや高かったが,研究費用など情報でない答えも一部に見受けられた。設問は「情報」を問うているので,研究費用は外す。
15字に対し,解答例は「大量のフィールドデータ」で11字。本文の言葉をそのまま使い,「大量の」を落とさない。
採点講評(IPA)
設問2(2)は,正答率がやや高かったが,研究費用など情報でない解答も一部に見受けられた。H教授が必要としている情報が何であるかを理解してほしい。
設問3(1)
40字以内
E 氏が,筋電義手の開発に当たり,各種助成金を得て研究開発費に充当することができないかどうかを調査すべきと考えたのは,国のどのような方針からか。40 字以内で述べよ。
解答例(2通り)
IoT,AIの技術開発を強化して障害のある人のICT利活用を促進する。 IoT,AIの技術開発を強化してインクルーシブ社会を実現する。
解説
本文の根拠
〔国の方針〕
国は,障害のある人がそれぞれの障害の種類,状況に応じ,ハンディキャップを意識せず,自立した豊かな人生を享受できるインクルーシブ(包摂)社会を実現する目標を掲げた。
〔国の方針〕
この目標を達成するために,国は,IoT,AI の技術開発を強化して障害のある人の ICT 利活用を促進する方針を定めた。
国の方針は〔国の方針〕に書かれており,国はインクルーシブ(包摂)社会を実現する目標を掲げ,そのために「IoT,AI の技術開発を強化して障害のある人の ICT 利活用を促進する方針」を定めた。
D 社の筋電義手は,AI の技術を搭載して障害のある人が使う製品なので,この方針にそのまま当てはまる。国がこうした技術開発を強化するのであれば,研究開発に使える助成金が用意されている見込みがあり,E 氏はそれを調べるべきと考えた。解答例は「障害のある人の ICT 利活用を促進する」と「インクルーシブ社会を実現する」の2通りを示しており,どちらを書いてもよい。前者は方針の本文,後者は方針が目指す目標で,いずれも国の方針を表している。
40字に対し,解答例は「IoT,AIの技術開発を強化して障害のある人のICT利活用を促進する。」で35字,別解が「IoT,AIの技術開発を強化してインクルーシブ社会を実現する。」で31字。D 社の製品と重なる「IoT,AI の技術開発を強化して」を必ず入れる。
設問3(2)
40字以内
E 氏は,海外で潜在的にある需要に応えるために,どのような目標を設定したか。40 字以内で述べよ。
解答例
AIの技術を用いることによって,自由度の高い細やかな制御を可能にする。
解説
本文の根拠
冒頭
一方で,“日常生活をより自然に送れるように,指を個別に動かすことができる自由度の高い義手が欲しい”といった要望も多く寄せられている。
〔義手を動かす技術〕
今まで海外も含め製品化された筋電義手は,手を失って残った前腕の表面から検出した筋電を基に,5 本の指を同時に曲げて物をつかむものだった。
〔市場状況〕
海外では,紛争,災害などで手を失った人が多いこともあり需要が多く,幾つもの海外メーカが筋電義手の製品を販売してきたことで製品が行き渡り,市場としては既に飽和状態にある。
〔目標と開発方針の設定〕
AI の技術を用いることによって,自由度の高い細やかな制御を可能にする。
海外の筋電義手の市場は,製品が行き渡って既に飽和状態にある。それでも潜在的な需要があるとすれば,既に筋電義手を使っている人の買い替えである。これまでの筋電義手は 5 本の指を同時に曲げて物をつかむものだったので,指を個別に動かせる自由度の高い義手があれば,買い替えたい人がいると考えられる。
E 氏が設定した目標のうち,この需要に応えるのは「AI の技術を用いることによって,自由度の高い細やかな制御を可能にする」である。D 社にも「指を個別に動かすことができる自由度の高い義手が欲しい」という要望が多く寄せられている。講評によると,既に飽和状態にある市場に対して,買い替えを促す潜在的需要を考慮していない答えが散見された。
40字に対し,解答例は目標の一つ目をそのまま写した「AIの技術を用いることによって,自由度の高い細やかな制御を可能にする。」で35字。設問が「どのような目標を設定したか」と問うているので,三つの目標のうち既存の製品にない価値(自由度の高い制御)を示すものを選び,本文どおりに書く。
採点講評(IPA)
設問3(2)は,正答率が平均的であった。既に飽和状態にある市場に対して,買い替えを促す潜在的需要を考慮していない解答が散見された。設問で求めている内容と本文記述をよく理解して解答してほしい。
設問3(3)
25字以内
E 氏が,遠隔操作ロボットハンドを手掛ける国内会社に技術供与の提案を進めるべきと考えた目的は何か。25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
冒頭
また,将来は保有技術を他市場に生かして事業を拡大することが必要になると考えている。
〔今後の展望〕
自由度の高い義手の技術は,IoT,仮想現実(VR)及び触感のフィードバック技術を組み合わせることによって,宇宙空間,海底など人が立ち入ることが難しい場所で補修をしたり,ケーブルをつないだりといった細やかな作業ができる遠隔操作ロボットハンドとして,
〔事業戦略の策定〕
さらに,遠隔操作ロボットハンドを手掛ける国内会社に技術供与の提案を進めるべきと考えた。
〔今後の展望〕に,自由度の高い義手の技術は,IoT,VR 及び触感のフィードバック技術と組み合わせて,遠隔操作ロボットハンドとして利用できる可能性があるとある。義手とは別の市場で D 社の技術が使えるということである。
冒頭には,D 社は「将来は保有技術を他市場に生かして事業を拡大することが必要になる」と考えているとある。遠隔操作ロボットハンドを手掛ける会社への技術供与は,義手の技術という保有技術を他市場に生かす手段であり,その目的はこの事業拡大である。
25字に対し,解答例は「保有技術を他市場に生かして事業を拡大する。」で21字。冒頭の一文をそのまま使う。「技術供与による収入を得る」のように手段の側を書くのではなく,D 社が必要と考えている将来の方向を書く。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問4(表記を一部改変)
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