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高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通

平成31年度 春期 科目A-1(午前Ⅰ)

平成31年度 春期に実施された高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ(2026年度からの科目A-1)の全30問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:科目A-1(午前Ⅰ・高度試験 共通)について

この年度を解く(受ける試験区分を選ぶ)

問1

0以上255以下の整数 n に対して,次のように next(n) を定義する。next(n) と等しい式はどれか。ここで,x AND y 及び x OR y は,それぞれ x と y を2進数表現にして,桁ごとの論理積及び論理和をとったものとする。

next(n) は,0≦n<255 のとき n+1,n=255 のとき 0。

正解 ア

解説

255 は2進数で 11111111(下位8ビットがすべて1)。したがって「AND 255」は下位8ビットだけを残す操作になる。

n が0〜254のときは n+1 が1〜255なので8ビットに収まり,AND 255 をとっても値は変わらず n+1 のまま。n=255 のときは n+1=256=100000000 となり,AND 255 で下位8ビットだけを残すと 0 になる。これは定義どおりの動きなのでアが正しい。

イの AND 256 は9ビット目だけを残すので常に0か256になる。ウとエの OR はビットを立てる操作なので,値が n+1 に一致しない。

AND 255 で下位8ビットだけを残す 255 は2進数で 11111111 なので,AND 255 は下位8ビットだけを残す。n が 0〜254 なら n+1 は8ビットに収まり値は変わらない。n=255 のときは n+1=256=1 0000 0000 で,下位8ビットを残すと 0 になる。これは next(n) の定義どおり。 n+1(2進) AND 1111 1111 結果 n=254 → 255 0 1111 1111 1111 1111 255 n=255 → 256 1 0000 0000 0000 0000 0 9 ビット目(256)は AND 255 で消える AND 256 は 9 ビット目だけ,OR はビットを立てるので違う
(n+1) AND 255 は 255 の次で 0 に戻る

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問1(表記を一部改変)

問2

AI におけるディープラーニングに関する記述として,最も適切なものはどれか。

正解 ア

解説

ディープラーニング(深層学習)は,人間の脳の神経回路を模したニューラルネットワークの層を多数重ね,データから特徴を自動的に学習して,画像認識や音声認識などの複雑な判断を行えるようにする機械学習の手法である。アが適切である。

イは大量のデータから未知の規則を見いだすデータマイニングに近い説明だが,例外事項を取り除きながら分析を繰り返す点はディープラーニングの特徴ではない。ウは統計的手法やパターン認識を組み合わせた高度なデータ分析一般の説明。エは知識をルールとして表現し演繹的に推論するエキスパートシステム(ルールベースの推論)の説明である。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問2(表記を一部改変)

問3

次の手順はシェルソートによる整列を示している。データ列 7,2,8,3,1,9,4,5,6 を手順(1)〜(4)に従って整列するとき,手順(3)を何回繰り返して完了するか。ここで,[ ] は小数点以下を切り捨てた結果を表す。

〔手順〕

正解 ア

解説

データ数は9なので,手順(1)で H=[9÷3]=3 となる。手順(2)で間隔3の部分列ごとに整列した後,手順(3)で H=[3÷3]=1 とする(1回目)。H は0でないので手順(2)に戻り,間隔1(通常の挿入法)で整列した後,手順(3)で H=[1÷3]=0 とする(2回目)。手順(4)で H が0なので整列は完了する。

手順(3)は2回繰り返されるので,アが正しい。データの値の並びは回数に関係せず,データ数だけで決まる。

シェルソートの手順 データ数9なので H=[9÷3]=3。間隔3の部分列(1・4・7番目,2・5・8番目,3・6・9番目)をそれぞれ挿入法で整列する。手順(3)で H=[3÷3]=1(1回目)。間隔1で全体を挿入法で整列し,手順(3)で H=[1÷3]=0(2回目)になって完了する。 H=3 整列前 7 2 8 3 1 9 4 5 6 部分列ごと 3 1 6 4 2 8 7 5 9 同じ色が同じ部分列(3つおき) 手順(3) 1回目:H=[3÷3]=1 → 全体を挿入法で整列 手順(3) 2回目:H=[1÷3]=0 → 完了 繰り返すのは2回
手順(3)の回数はデータ数だけで決まる:H は 3 → 1 → 0 の2回

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問3(表記を一部改変)

問4

スーパスカラの説明として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

スーパスカラは,一つのプロセッサの中に複数の演算器(実行ユニット)をもち,同時に実行できる複数の命令を別々の演算器に振り分けて並列に実行する方式である。エが適切である。

アは一つのチップに複数のプロセッサコアを載せるマルチコアプロセッサ。イは一つのコアで複数のスレッドを切り替えて実行するマルチスレッディング(ハイパースレッディングなど)。ウは一つの命令で複数のデータに同じ演算を行う SIMD の説明である。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問4(表記を一部改変)

問5

あるクライアントサーバシステムにおいて,クライアントから要求された1件の検索を処理するために,サーバで平均 100 万命令が実行される。1件の検索につき,ネットワーク内で転送されるデータは平均 2×105 バイトである。このサーバの性能は 100 MIPS であり,ネットワークの転送速度は 8×107 ビット/秒である。このシステムにおいて,1秒間に処理できる検索要求は何件か。ここで,処理できる件数は,サーバとネットワークの処理能力だけで決まるものとする。また,1バイトは8ビットとする。

正解 ア

解説

サーバは 100 MIPS,すなわち1秒間に 100 万命令を実行でき,1件の検索に 100 万命令が必要なので,1秒間に処理できるのは 100 件である。ネットワークは1件当たり 2×105 バイト=1.6×106 ビットを転送し,転送速度が 8×107 ビット/秒なので,1秒間に転送できるのは 8×107÷1.6×106=50 件である。

システム全体で処理できる件数は,遅いほうのネットワークで決まり,1秒間に 50 件となる。アが正しい。1バイト=8ビットの換算を忘れると,ネットワークが 400 件(エ)となり,サーバの 100 件(イ)が上限と誤る。

サーバとネットワークで,1秒に処理できる件数を比べる サーバは 100 MIPS で1件 100 万命令なので,1秒に 100 件。ネットワークは1件 2×10⁵ バイト=1.6×10⁶ ビットを 8×10⁷ ビット/秒で送るので,1秒に 50 件。全体は遅いほうのネットワークで決まり,1秒に 50 件。バイトをビットにし忘れるとネットワークが 400 件になり,サーバの 100 件を答えてしまう。 サーバ 100 件/秒 100 MIPS ÷ 100 万命令 ネットワーク 50 件/秒 8×10⁷ ÷ 1.6×10⁶ ビット システム全体:1 秒に 50 件(ア)
遅いほう(ネットワークの 50 件)で決まる

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問5(表記を一部改変)

問6

二つのタスクが共用する二つの資源を排他的に使用するとき,デッドロックが発生するおそれがある。このデッドロックの発生を防ぐ方法はどれか。

正解 イ

解説

二つのタスクが資源を逆の順序で獲得しようとすると,一方が資源1を確保して資源2を待ち,もう一方が資源2を確保して資源1を待つ状態になり,デッドロックが起こり得る。両方のタスクで資源を獲得する順序を同じにすれば,先に資源1を得たタスクが資源2も得られるので,互いに待ち合う状態にならない。イが正しい。

ウの順序を逆にすると,まさにデッドロックが発生し得る状態になる。アとエの優先度は実行の順番に影響するだけで,資源の待ち合いは解消されない。

資源を獲得する順番とデッドロック タスク1が資源1→資源2,タスク2が資源2→資源1の逆の順番で獲得すると,タスク1が資源1を持って資源2を待ち,タスク2が資源2を持って資源1を待つ状態になり,どちらも進めない。両方のタスクが資源1→資源2の同じ順番で獲得すれば,先に資源1を得たタスクが資源2も得て終わり,もう一方はそれを待ってから進む。 逆の順番(1→2 と 2→1) タスク1 タスク2 資源1 資源2 互いに相手の資源を待つ → デッドロック 実線:持つ 破線:待つ 同じ順番(どちらも 1→2) タスク1 タスク2 資源1 資源2 タスク2は資源1を待つだけ → タスク1が終われば進める 実線:持つ 破線:待つ
獲得の順番を全てのタスクでそろえれば,待ち合いの輪ができない

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問6(表記を一部改変)

用語解説:排他制御とデッドロック(ACID 特性)

問7

次の二つの回路の入力に値を与えたとき,表の入力 A,B,C,D と出力 E,F の組合せのうち,全ての素子が論理積素子で構成された左側の回路でだけ成立するものはどれか。

二つの回路。左側は,B と C を論理積素子に入れ,その出力と A を論理積素子に入れて E,その出力と D を論理積素子に入れて F とする回路。右側は同じ接続で全ての素子を論理和素子にした回路。

正解 ウ

解説

左側の回路は,B と C の論理積を X とすると,E=A・X,F=X・D である。右側の回路は論理和なので,X=B+C,E=A+X,F=X+D となる。各選択肢の入力を両方の回路に当てはめて確かめる。

ウ(A=1,B=1,C=0,D=1)では,左側は X=0 なので E=0,F=0 となり表と一致する。右側は X=1 なので E=1,F=1 となり表と一致しない。左側の回路でだけ成立するのでウが正しい。

アは入力がすべて0なので,どちらの回路でも出力は0になり両方で成立する。イ(C=1,D=1)は左側で X=0 なので E=0 となり成立せず,右側では成立する。エは入力がすべて1なので,両方の回路で出力が1になり成立する。

論理積の回路と論理和の回路に同じ入力を入れる 入力 A=1,B=1,C=0,D=1(選択肢ウ)の場合。論理積の回路では X=B・C=0 なので E=A・X=0,F=X・D=0 で表と一致する。論理和の回路では X=B+C=1 なので E=1,F=1 となり表と一致しない。左の回路でだけ成り立つ。 論理積の回路 A1 B1 C0 D1 X=0 E0 F0 E=0,F=0 表と一致する 論理和の回路 A1 B1 C0 D1 X=1 E1 F1 E=1,F=1 表と一致しない
途中の X の値が決め手。論理積では C=0 が X を0にし,論理和では B=1 が X を1にする

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問7(表記を一部改変)

問8

コンピュータグラフィックスにおける,レンダリングに関する記述として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

レンダリングは,モデル化された物体のデータに,光源や視点の位置,材質などを考慮して,陰影や光の反射を計算し,表示するための画像を生成する処理である。ウが適切である。

アは色数の少ない環境で中間色を表現するディザリング。イは静止画を連続して表示して動画を作るアニメーション(パラパラ漫画の原理)。エは物体の形状をワイヤフレームやポリゴンなどで表すモデリングの説明である。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問8(表記を一部改変)

問9

トランザクションの ACID 特性のうち,一貫性(consistency)の説明はどれか。

正解 ア

解説

ACID 特性の一貫性(Consistency)は,整合性の取れたデータベースに対してトランザクションを実行した後も,データベースの整合性が保たれるという性質である。アが該当する。

イの同時に実行される複数のトランザクションが互いに干渉しない性質は独立性(Isolation)。ウの完全に実行されるか全く実行されなかった状態しかとらない性質は原子性(Atomicity)。エのコミットした後はどのような障害が起きても変更が失われない性質は耐久性(Durability)である。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問9(表記を一部改変)

用語解説:排他制御とデッドロック(ACID 特性)

問10

プライベート IP アドレスを割り当てられた PC が NAPT(IP マスカレード)機能をもつルータを経由して,インターネット上の Web サーバにアクセスしている。Web サーバから PC への応答パケットに含まれるヘッダ情報のうち,このルータで書き換えられるフィールドの組合せとして,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

NAPT では,PC から Web サーバへの要求パケットの送信元 IP アドレス(プライベート IP アドレス)と送信元ポート番号を,ルータがグローバル IP アドレスと自身が割り当てたポート番号に書き換える。Web サーバからの応答パケットは,そのグローバル IP アドレスとポート番号を宛先として届くので,ルータは対応表を使って宛先 IP アドレスと宛先ポート番号を PC のプライベート IP アドレスとポート番号に書き換える。イが正しい。

応答パケットの送信元 IP アドレスと送信元ポート番号は Web サーバのものであり,ルータは書き換えない。アとウとエは送信元の項目を含んでいるので誤りである。ウは要求パケットで書き換えられる組合せである。

NAPT のアドレス変換 PC(192.168.1.10,ポート 5000)から Web サーバへの要求は,ルータで送信元が 203.0.113.1,ポート 60001 に書き換えられ,その組合せが対応表に残る。Web サーバからの応答は宛先が 203.0.113.1:60001 なので,ルータは表を見て宛先 IP アドレスと宛先ポート番号を 192.168.1.10:5000 に書き戻す。外から先に届いたパケットは表に対応がないので,内側へ転送できない。 PC 192.168.1.10 ルータ NAPT Web 198.51.100.5 送信元 .10:5000 送信元 .1:60001 宛先 203.0.113.1:60001 宛先 .10:5000 対応表 内側(プライベート) 外側(グローバル) 192.168.1.10 : 5000 203.0.113.1 : 60001 応答で書き換えるのは「宛先 IP アドレス」と「宛先ポート番号」 外から始まる通信は表に対応がないので,内側に届かない
要求では送信元を,応答では宛先を書き換える。対応は IP アドレスとポート番号の組

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問10(表記を一部改変)

問11

図のような IP ネットワークの LAN 環境で,ホスト A からホスト B にパケットを送信する。LAN1 において,パケット内のイーサネットフレームの宛先と IP データグラムの宛先の組合せとして,適切なものはどれか。ここで,図中の MACn/IPm はホスト又はルータがもつインタフェースの MAC アドレスと IP アドレスを示す。

ネットワーク構成図。LAN1 にホスト A(MAC1/IP1)とルータのインタフェース(MAC3/IP3)が接続され,LAN2 にルータのもう一方のインタフェース(MAC4/IP4)とホスト B(MAC2/IP2)が接続されている。

正解 ウ

解説

ホスト A からみてホスト B は別のネットワークにあるので,パケットはデフォルトゲートウェイであるルータに渡す。LAN1 の中を流れるイーサネットフレームの宛先は,次に受け取る機器であるルータの LAN1 側のインタフェースの MAC3 になる。一方,IP データグラムの宛先は最終的な宛先であるホスト B の IP2 のままで,ルータを経由しても変わらない。ウが正しい。

アとイはイーサネットフレームの宛先をホスト B の MAC2 としているが,ホスト B は LAN1 上にないので直接届けられない。イとエは IP データグラムの宛先をルータの IP3 としており,ルータ自身が宛先になってしまう。

区間ごとに変わる宛先 MAC,変わらない宛先 IP ホスト A から別のネットワークのホスト B へ送るとき,LAN1 では宛先 MAC アドレスをルータの MAC3,宛先 IP アドレスをホスト B の IP2 にする。ルータは LAN2 へ転送するとき,宛先 MAC アドレスを MAC2 に付け替える。宛先 IP アドレスは最後まで IP2 のまま。LAN2 で IP2 と MAC2 を ARP で対応付けるのはルータ。 ホスト A MAC1/IP1 ルータ MAC3 / MAC4 ホスト B MAC2/IP2 LAN1 LAN2 宛先 MAC:MAC3 宛先 IP:IP2 宛先 MAC:MAC2 宛先 IP:IP2 LAN1 のフレーム LAN2 のフレーム LAN2 で ARP を使って IP2 と MAC2 を対応付けるのはルータ
MAC アドレスは区間(LAN)ごとの宛先,IP アドレスは最終的な宛先

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問11(表記を一部改変)

問12

リスクベース認証の特徴はどれか。

正解 ウ

解説

リスクベース認証は,普段と異なる端末,場所,時間帯などからのアクセスを検知したときに,秘密の質問やワンタイムパスワードなどの追加の本人認証を求める方式である。普段の利用では利便性を損なわず,不正アクセスの疑いがあるときだけ認証を強化できる。ウが該当する。

アはどのような環境でも認証方法を変えない通常の認証で,リスクに応じて変える点がない。イは常に二つの認証方式を併用する多要素認証。エは認証情報を忘れた利用者を救済するパスワードリセットなどの仕組みの説明である。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問12(表記を一部改変)

問13

ディジタルフォレンジックスの手順を収集,検査,分析,報告に分けたとき,そのいずれかに該当するものはどれか。

正解 イ

解説

デジタルフォレンジックスは,インシデントが起きた後に,法的な証拠となり得るデータを保全して解析する一連の手続。削除されたログファイルを復元して不正アクセスの痕跡を突き止めるイが,その「検査・分析」に当たる。

アは SIEM によるリアルタイム監視,ウは送信時の情報漏えい対策,エはマルウェア検査であり,いずれも事後の証拠保全・解析ではない。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問13(表記を一部改変)

用語解説:ハッシュ関数

問14

情報セキュリティにおけるサンドボックスの説明はどれか。

正解 エ

解説

サンドボックスは,不正な動作をするおそれのあるプログラムを,他の領域から隔離された特別な領域(砂場)の中で動作させ,システムの他の部分に悪影響が及ばないようにする仕組みである。不審なファイルを実行してその振る舞いを観察するマルウェア検知にも使われる。エが該当する。

アは多様な機器のログを集めて分析する SIEM。イは入力データ中の HTML タグや SQL 文などの特殊な文字を無害な文字列に置き換えるサニタイジング(エスケープ処理)。ウは Web サーバの前段でリクエストを代理で受けるリバースプロキシの説明である。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問14(表記を一部改変)

問15

WAF の説明はどれか。

正解 ア

解説

WAF(Web Application Firewall)は,Web アプリケーションへの通信の中身を検査し,SQL インジェクションやクロスサイトスクリプティングといった攻撃を検知して遮断する仕組み。アが正しい。

イは PC 内で Web ブラウザの通信を監視する仕組み(MITB 対策など)。ウはサーバへの不正ログインの監視で,ホスト型の IDS などが担う。エはウイルス対策ソフトの働きで,いずれも WAF の説明ではない。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問15(表記を一部改変)

用語解説:WAF・IDS・IPS

問16

フェールセーフの考えに基づいて設計したものはどれか。

正解 イ

解説

フェールセーフは,故障や誤りが起きたときに,システムを安全な側の状態に倒して被害を防ぐ設計の考え方である。交通管制システムが故障したときに信号機をすべて赤にして車を止めるイがこれに当たる。

アの乾電池を逆向きに装填できないようにするのは,利用者の誤操作をそもそも起こさせないフールプルーフ。ウのコントローラを二重化して片方が故障しても運用を続けるのと,エの RAID1 でディスクを二重化して信頼性を高めるのは,故障が起きても機能を維持するフォールトトレランスの考え方である。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問16(表記を一部改変)

用語解説:稼働率(MTBF・MTTR) RAID(ディスクアレイ) 信頼性設計(フェールセーフ・フェールソフト・フールプルーフ)

問17

アジャイル開発におけるプラクティスの一つであるバーンダウンチャートはどれか。ここで,図中の破線は予定又は予想を,実線は実績を表す。

正解 ア

解説

バーンダウンチャートは,縦軸に残作業量,横軸に時間をとり,残作業が減っていく予定と実績を示すグラフである。予定の線と実績の線を比べることで,作業の進み具合や遅れが一目で分かる。アが該当する。

イは時間とともに故障(不具合)の発生数が減った後,再び増えるバスタブ曲線。ウは累積バグ数が S 字状に増えて収束していく信頼度成長曲線(ゴンペルツ曲線など)。エは時期ごとの要員数の予定と実績を示す要員計画のグラフである。

バーンダウンチャート 縦軸に残っている作業量,横軸に日付をとり,予定(破線)と実績(実線)を描く。実績が予定の線より上にあれば遅れている。スプリントの終わりに残作業が0になるよう,日々の進み具合を確かめる。 日 残りの作業量 予定 実績が予定より上 → 遅れ
縦軸は「残り」。右下がりの予定線より上なら遅れ

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問17(表記を一部改変)

用語解説:アジャイル開発(スクラム・XP)

問18

ある組織では,プロジェクトのスケジュールとコストの管理にアーンドバリューマネジメントを用いている。期間10日間のプロジェクトの,5日目の終了時点の状況は表のとおりである。この時点でのコスト効率が今後も続くとしたとき,完成時総コスト見積り(EAC)は何万円か。

管理項目と金額(万円)の表。完成時総予算(BAC)100,プランドバリュー(PV)50,アーンドバリュー(EV)40,実コスト(AC)60。

正解 エ

解説

コスト効率指数 CPI は EV/AC で求めるので,40/60=2/3。この効率が完成まで続くとみると,完成時総コスト見積り EAC=BAC/CPI=100÷(2/3)=150万円になる。エが正しい。

数値で見ると,40万円分の出来高に60万円かかっている=予定の1.5倍の費用がかかっているので,総予算100万円の作業を終えるにも1.5倍の150万円が必要になる,と読める。イの120は EAC=AC+(BAC−EV)=60+60 で求めた値で,残りの作業は予定どおりの効率で進むとみなした場合の見積り。アの110とウの135は,この表の数値からは導けない。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問18(表記を一部改変)

用語解説:EVM(アーンドバリューマネジメント)

問19

図のアローダイアグラムから読み取れることとして,適切なものはどれか。ここで,プロジェクトの開始日を1日目とする。

アローダイアグラム(矢印の上が作業名,下が所要日数)。開始から A(5日)と B(10日)。B の後からダミー作業で A の後の結合点につながる。その結合点から C(20日),D(30日),E(10日)。C の後に G(20日)。B の後に F(10日)。E と F は同じ結合点に入り,そこからダミー作業で G と D が入る結合点につながる。その結合点の後に H(10日)で終了。

正解 ウ

解説

各結合点に最も早く到達できる日数をたどると,B の後が10日,A の後はダミー作業があるので5日と10日のうち遅い10日。そこから C の後が30日,E と F の合流点が 10+10=20日。H の手前は,G 経由 30+20=50日,D 経由 10+30=40日,ダミー経由20日のうち50日で,全体は60日。逆に遅くとも到達すべき日数をたどると,H の手前が50日,E と F の合流点も(ダミーなので)50日になる。

E は最も早く10日経過後に始められ,最も遅くは 50−10=40日経過後に始めればよいので,総余裕時間は30日。ウが正しい。アは,C の最早開始は10日経過後なので11日目。イは,D の総余裕が 50−30−10=10日あり,クリティカルパス(B→ダミー→C→G→H)上にない。エは,F の最遅開始が 50−10=40日経過後なので41日目である。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問19(表記を一部改変)

用語解説:クリティカルパス

問20

IT サービスマネジメントにおける問題管理プロセスにおいて実施することはどれか。

正解 イ

解説

問題管理は,インシデントの背後にある根本原因を突き止め,同じインシデントが再び起きないように恒久的な解決策を立てるプロセス。原因がまだ分かっていないものを調査して既知の誤りとして登録し,恒久対策につなげる。イが正しい。

アの暫定的な復旧とエのインシデントの記録・連絡はインシデント管理の活動。ウの復旧のための設計は,サービス継続及び可用性管理などで行うことである。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問20(表記を一部改変)

用語解説:インシデント管理と問題管理

問21

次の処理条件で磁気ディスクに保存されているファイルを磁気テープにバックアップするとき,バックアップの運用に必要な磁気テープは最少で何本か。

〔処理条件〕

正解 ウ

解説

処理条件 (3) から,常に 6 か月前の同一日以降の任意の日の状態に復元できなければならない。ある日の状態に復元するには,その月の 1 日のフルバックアップと,その月の差分バックアップの両方が必要である。

例えば本日が 10 月 31 日なら,4 月 30 日以降の日を復元できる必要があるので,4 月から 10 月までの 7 か月分のフルバックアップと差分バックアップを保管しておかなければならない。本日が 10 月 1 日でフルバックアップを取った後でも,4 月 1 日以降の復元のために同じく 4 月から 10 月までの 7 か月分が必要になる。

フルバックアップ用が 7 本,差分バックアップ用が 7 本で,合計 14 本となり,ウになる。

バックアップに必要な磁気テープの本数 ある日の状態に戻すには,その月の1日のフルバックアップと,その月の差分バックアップの両方が要る。6か月前の同じ日以降のどの日にも戻せるようにするには,例えば10月31日なら4月30日以降,つまり4月から10月までの7か月分を残す。フルバックアップ用7本と差分バックアップ用7本で14本。 4月 フル 差分 5月 フル 差分 6月 フル 差分 7月 フル 差分 8月 フル 差分 9月 フル 差分 10月 フル 差分 4月30日〜10月31日のどの日にも戻せる 7か月 × 2本 = 14本 (10月31日なら6か月前は4月30日。4月分のテープも要る)
6か月前の月も含めるので7か月分。月ごとにフルと差分で2本

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問21(表記を一部改変)

問22

事務所の物理的セキュリティ対策について,JIS Q 27002:2014(情報セキュリティ管理策の実践のための規範)に基づいて情報セキュリティ監査を実施した。判明した状況のうち,監査人が監査報告書に指摘事項として記載すべきものはどれか。

正解 イ

解説

JIS Q 27002:2014 の物理的入退管理(11.1.2)は,セキュリティを保つべき領域への立入りを認可された者だけに限定するために,アクセスを管理し,入退室の記録を残せるようにすることを求めている。入室許可を得た者が共通の暗証番号で入室していると,誰が入室したかを個人ごとに特定できず,暗証番号を知った許可のない者も入室できてしまう。個人ごとの認証を行うべきであり,指摘事項に当たる。イが該当する。

アの荷物の受渡しを情報処理施設に立ち入らずに行える場所に限ること(11.1.6),ウの機密性の高い情報資産を置く部屋を外部の者の目に触れにくい場所に設けること(11.1.3),エの取引先との打合せを執務室と分けた情報資産のない場所で行うことは,いずれも規格の管理策に沿った状況であり,指摘事項にならない。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問22(表記を一部改変)

用語解説:JIS Q 27000 シリーズ(情報セキュリティマネジメント) システム監査(監査手続・監査証拠・フォローアップ)

問23

事業目標達成のためのプログラムマネジメントの考え方として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

プログラムマネジメントは,事業目標の達成という共通の目的に向けて,互いに関連する複数のプロジェクトをまとめて管理する考え方。個々のプロジェクトの成果を足し合わせるだけでなく,プロジェクト間の連携や統合,相互作用を通じて全体の価値を高め,組織の戦略を実現する。アが適切である。

イは個々のプロジェクト管理を細かくする話で,複数のプロジェクトを束ねる視点がない。ウは一つのシステム開発の技術選定によるリスク低減の話。エはプロジェクトマネジメントを組織的に支援する PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の説明である。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問23(表記を一部改変)

問24

A 社は,ソリューションプロバイダから,顧客に対するワントゥワンマーケティングを実現する統合的なソリューションの提案を受けた。この提案が該当するソリューションとして,最も適切なものはどれか。

正解 ア

解説

CRM(Customer Relationship Management,顧客関係管理)は,顧客の属性や購買履歴,問合せ履歴などの情報を一元管理し,顧客一人一人に合わせた対応や提案を行うことで,長期的に良好な関係を築くための仕組みである。顧客ごとに個別の働きかけをするワントゥワンマーケティングを実現するソリューションに当たるので,アが適切である。

イの HRM(人的資源管理)は従業員の採用,評価,育成など人事に関するもの,ウの SCM(サプライチェーンマネジメント)は調達から生産,物流,販売までの供給の流れを最適化するもの,エの財務管理は会計や資金を扱うもので,いずれも顧客への個別のマーケティングを目的としていない。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問24(表記を一部改変)

問25

要件定義において,利用者や外部システムと,業務の機能を分離して表現することによって,利用者を含めた業務全体の範囲を明らかにするために使用される図はどれか。

正解 エ

解説

ユースケース図は,システムの外部にいる利用者や外部システム(アクタ)と,システムが提供する業務の機能(ユースケース)を分けて描き,その関係を表す UML の図である。要件定義で,利用者を含めた業務全体の範囲やシステム化の対象を明らかにするのに使われる。エが正しい。

アのアクティビティ図は処理や業務の流れ,イのオブジェクト図はある時点のインスタンスとその間のつながり,ウのクラス図はクラスの属性や操作とクラス間の静的な関係を表す図である。

UML のおもな図の使い分け シーケンス図はオブジェクト間のメッセージを時間の順に,コミュニケーション図はオブジェクトのつながりに注目して相互作用を表す。ユースケース図はアクタとシステムの機能の関係(システムの範囲),アクティビティ図は処理の流れ(分岐・並行・同期),状態マシン図は1つのオブジェクトの状態の移り変わり,クラス図は静的な構造,オブジェクト図はある時点のインスタンスのつながりを表す。 図 表すもの シーケンス図 メッセージを時間の順に コミュニケーション図 オブジェクトのつながりと相互作用 ユースケース図 アクタと機能,システムの範囲 アクティビティ図 処理の流れ(分岐・並行・同期) 状態マシン図 1つのオブジェクトの状態の遷移 クラス図 クラスと関連(静的な構造) オブジェクト図 ある時点のインスタンスとリンク
時間の順はシーケンス図,範囲はユースケース図,業務の流れはアクティビティ図

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問25(表記を一部改変)

用語解説:UML(統一モデリング言語)

問26

コアコンピタンスに該当するものはどれか。

正解 イ

解説

コアコンピタンスは,競合他社がまねのできない,顧客に価値をもたらす企業の中核的な能力や技術である。競合他社よりも効率性が高い生産システムは,自社の内部に蓄積された競争力の源泉なので,イが該当する。

アの事業ドメインの成長率,ウの参入を予定している分野の競合状況は,自社を取り巻く外部環境や市場の状況であり,自社の能力ではない。エの市場シェアは,能力を発揮した結果として得られた成果であって,能力そのものではない。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問26(表記を一部改変)

問27

オープンイノベーションに関する事例として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

オープンイノベーションは,自社の中だけでなく,他社や大学,個人など外部の技術やアイディアを取り入れて組み合わせ,新しい製品やサービスを生み出す考え方である。社外からアイディアを募集して新サービスの開発に活用したアが該当する。

イは社内の部門どうしの協働であり,外部の知見を取り入れていないので,自社内で完結するクローズドイノベーションに当たる。ウの物流システムの変更による販売の効率化は業務改善。エの自社製品の革新性の Web への掲載は広報活動であり,いずれも外部と協働したイノベーションではない。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問27(表記を一部改変)

問28

IoT 活用におけるディジタルツインの説明はどれか。

正解 エ

解説

ディジタルツインは,現実世界の物や環境の状態を様々なセンサで収集し,そのデータを用いてディジタル空間に現実と同等の“双子”の世界を構築する技術である。ディジタル空間の上で,現実世界では実施できないようなシミュレーションや将来の予測を行い,その結果を現実世界に生かす。エが適切である。

アは遠隔地の 3D プリンタへの設計データの送信による製作,イはシステムを正副二重に用意するデュプレックスシステムなどの冗長化,ウは家電を遠隔で監視・操作するウェアラブルデバイスで,いずれもディジタル空間に現実世界を再現するものではない。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問28(表記を一部改変)

用語解説:デジタルツインとサイバーフィジカルシステム(CPS)

問29

発生した故障について,発生要因ごとの件数の記録を基に,故障発生件数で上位を占める主な要因を明確に表現するのに適している図法はどれか。

正解 イ

解説

パレート図は,項目を件数の多い順に並べた棒グラフと,その累積比率の折れ線グラフを組み合わせた図である。どの要因が故障件数の大部分を占めているかが一目で分かり,重点的に対策すべき要因を明確にできる。イが適切である。

アの特性要因図は結果(特性)とそれに影響する要因の関係を魚の骨の形に整理する図,ウのマトリックス図は行と列に要素を並べて要素間の関連を表す図,エの連関図は複雑に絡み合う原因と結果の関係を矢印でつないで表す図で,いずれも件数の大小を比べるものではない。

パレート図 不良の原因などを件数の多い順に棒で並べ,累積比率を折れ線で重ねる。上位の少数の項目で全体の大部分(例えば80%)を占めることが分かり,どこから対策すれば効果が大きいかを決めるのに使う。 寸法 傷 汚れ 欠け 色 他 80% 100% 累積比率 上位2項目で約7割 → ここから対策する
多い順の棒と累積比率の折れ線。左の数項目に集中して対策する

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問29(表記を一部改変)

用語解説:デルファイ法と問題分析の技法

問30

個人情報のうち,個人情報保護法における要配慮個人情報に該当するものはどれか。

正解 エ

解説

個人情報保護法第2条第3項は,要配慮個人情報を,本人の人種,信条,社会的身分,病歴,犯罪の経歴,犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別,偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報と定義している。エが該当する。

アは誤り。要配慮個人情報は法令で定められた情報であり,本人の申告によって設定されるものではない。イの運転免許証の番号などは個人識別符号に当たり得るが,要配慮個人情報ではない(クレジットカード番号は個人識別符号にも当たらない)。ウの勤務先や住所などは一般の個人情報である。

出典:平成31年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問30(表記を一部改変)