‹ ぱすてく

高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通

平成21年度 春期 科目A-1(午前Ⅰ)

平成21年度 春期に実施された高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ(2026年度からの科目A-1)の全30問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:科目A-1(午前Ⅰ・高度試験 共通)について

この年度を解く(受ける試験区分を選ぶ)

問1

(1+α)n の計算を,1+n×α で近似計算ができる条件として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

二項定理により (1+α)n=1+nα+{n(n−1)/2}α2+… と展開できる。|α| が1に比べて非常に小さければ,α2 以降の項は nα に比べて無視できるほど小さくなるので,1+n×α で近似できる。アが適切である。

イのように |α| が大きいと α2 以降の項が大きくなり,近似が成り立たない。ウの |α÷n| が1より大きい場合やエの |n×α| が1より大きい場合も,α が十分に小さいことが保証されず,2次以降の項を無視できない。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問1(表記を一部改変)

問2

次に示す有限オートマトンが受理する入力列はどれか。ここで,S1 は初期状態を,S3 は受理状態を表している。

状態遷移図。初期状態 S1 から,1 で S2,0 で S3 へ遷移する。S2 からは,0 で S2 自身,1 で S1 へ遷移する。受理状態 S3 からは,1 で S3 自身,0 で S2 へ遷移する。

正解 ウ

解説

初期状態 S1 から入力に従って状態をたどり,最後に受理状態 S3 にいるものを探す。ウの 1101 は,S1 →(1) S2 →(1) S1 →(0) S3 →(1) S3 となり,S3 で終わるので受理される。ウが正しい。

アの 1011 は S2,S2,S1,S2 の順で S2 に終わる。イの 1100 は S2,S1,S3,S2 で S2 に終わる。エの 1110 は S2,S1,S2,S2 で S2 に終わり,いずれも受理されない。

有限オートマトンで入力 1101 をたどる S1 から 1 で S2,0 で S3。S2 から 0 で S2,1 で S1。S3 から 1 で S3,0 で S2。1101 は S1 →1→ S2 →1→ S1 →0→ S3 →1→ S3 で,受理状態 S3 で終わるので受理される。 S1 S2 S3 1 ① 1 ② 0 ③ 1 ④ 0 0 1101:S1→S2→S1→S3→S3
1文字ずつ矢印をたどり,最後に受理状態(二重丸)にいれば受理

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問2(表記を一部改変)

問3

自然数をキーとするデータを,ハッシュ表を用いて管理する。キー x のハッシュ関数 h(x) を h(x)=x mod n とすると,キー a と b が衝突する条件はどれか。ここで,n はハッシュ表の大きさであり,x mod n は x を n で割った余りを表す。

正解 イ

解説

衝突は,異なるキー a と b のハッシュ値が同じ,つまり a mod n=b mod n となることである。a と b を n で割った余りが等しいのは,その差 a−b が n で割り切れるときなので,イが正しい。

例えば n=5 のとき,a=7,b=2 は a−b=5 で余りがどちらも 2 になり衝突する。アは a=1,b=4 のように a+b=5 でも余りが 1 と 4 で異なる場合があるので誤り。ウとエは倍数の関係が逆で,n は a−b の約数であればよい。

x mod n のハッシュ表で衝突する組 n=5 の表に,キーを5で割った余りの箱へ入れる。7 と 2 はどちらも余りが 2 で同じ箱に入り,衝突する。差 7−2=5 が n の倍数なので余りがそろう。1 と 4 は和が5でも余りは1と4で,衝突しない。 h(x) = x mod 5 0 1 1 7 と 2 2 3 4 4 衝突 7 mod 5 = 2,2 mod 5 = 2 → 差 7 − 2 = 5 は 5 の倍数 1 と 4:和は 5 でも余りは 1 と 4(衝突しない) 箱の下の数字が余り(格納位置)
余りが等しい ⇔ 差 a−b が n で割り切れる

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問3(表記を一部改変)

用語解説:ハッシュ関数

問4

メモリの誤り制御方式で,2ビットの誤り検出機能と,1ビットの誤り訂正機能をもたせるのに用いられるものはどれか。

正解 エ

解説

ECC メモリで用いられるハミング符号は,データビットに複数の検査ビットを付加し,検査ビットの組合せから誤りのあるビットの位置を特定できる符号である。1 ビットの誤りを訂正でき,2 ビットの誤りを検出できるので,エが該当する。

アの奇数パリティとイの水平パリティは,1ビットの誤りがあったことは分かるが,どのビットかは分からないので訂正できない。ウのチェックサムはデータの合計値を付けて誤りの有無を調べる方式で,こちらも訂正はできない。

パリティとハミング符号でできること パリティ(偶数・奇数・垂直・水平)は1ビットの誤りがあることは分かるが,どのビットかは分からないので直せない。ハミング符号は複数の検査ビットの組合せで誤りの位置まで分かるので,1ビットの誤りを訂正できる。ECC メモリで使う方式(SECDED)は,さらに2ビットの誤りがあることも検出できる。 方式 1ビット誤りの検出 1ビット誤りの訂正 2ビット誤りの検出 パリティ ○ × × ハミング符号(ECC) ○ ○ ○ 検査ビットの組合せで,誤ったビットの位置を指せる パリティ・チェックサムは誤りの有無が分かるだけ
ハミング符号は誤りの位置まで分かる → 1ビット訂正,2ビット検出

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問4(表記を一部改変)

問5

3台の装置 X〜Z を接続したシステム A,B の稼働率について,適切なものはどれか。ここで,3台の装置の稼働率は,いずれも0より大きく1より小さいものとする。

システム構成。A は,X と Y を並列に接続したものに Z を直列に接続している。B は,X と Z を直列に接続したものに Y を並列に接続している。

正解 エ

解説

装置 X,Y,Z の稼働率を x,y,z とする。A は X と Y の並列に Z を直列につないだもので,稼働率は {1−(1−x)(1−y)}z=xz+yz−xyz である。B は X と Z の直列に Y を並列につないだもので,稼働率は 1−(1−xz)(1−y)=xz+y−xyz である。

B から A を引くと y−yz=y(1−z) となり,0<y<1,0<z<1 なので常に正である。したがって常に B の稼働率が高く,エが正しい。

2つのシステムの稼働率を比べる 装置 X,Y,Z の稼働率を x,y,z とする。A は X と Y の並列に Z を直列につないだもので,{1−(1−x)(1−y)}z=xz+yz−xyz。B は X と Z の直列に Y を並列につないだもので,1−(1−xz)(1−y)=xz+y−xyz。B−A=y(1−z) は常に正なので,常に B が高い。 A:(X と Y の並列) に Z を直列 X Y Z {1−(1−x)(1−y)}・z = xz+yz−xyz B:(X と Z の直列) に Y を並列 X Z Y 1−(1−xz)(1−y) = xz+y−xyz B − A = y − yz = y(1−z) > 0 → 常に B が高い
並列をまとめて1台とみなし,直列は掛ける。引き算すると y(1−z)>0

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問5(表記を一部改変)

用語解説:稼働率(MTBF・MTTR)

問6

主記憶への1回のアクセスが 200 ナノ秒で,ページフォールトが発生すると1回当たり 100 ミリ秒のオーバヘッドを伴うコンピュータがある。ページフォールトが主記憶アクセスの 50 万回中に1回発生する場合,ページフォールトは1秒当たり最大何回発生するか。ここで,ページフォールトのオーバヘッド以外の要因は考慮しないものとする。

正解 ウ

解説

ページフォールトは主記憶アクセス 50 万回に1回発生する。50 万回のアクセスにかかる時間は 500,000×200 ナノ秒=0.1 秒で,これに1回のページフォールトのオーバヘッド 100 ミリ秒=0.1 秒が加わるので,ページフォールト1回当たり 0.2 秒かかる。

1秒間では 1÷0.2=5 回のページフォールトが発生し,ウが正しい。オーバヘッドの時間だけで考えると 10 回になり,アクセスの時間だけで考えても選択肢と合わない。

ページフォールト1回分の時間 主記憶アクセス 50 万回に1回ページフォールトが起きる。50 万回のアクセスは 500,000×200 ナノ秒=0.1 秒,そこにページフォールトのオーバヘッド 100 ミリ秒=0.1 秒が加わり,1回分は 0.2 秒。1 秒にはこれが 5 回入る。 1 2 3 4 5 アクセス PF 1 秒 50万回 × 200 ナノ秒 = 0.1 秒 + オーバヘッド 0.1 秒 = 0.2 秒 1 ÷ 0.2 = 5 回
アクセス 0.1 秒+オーバヘッド 0.1 秒の組が,1 秒に5回

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問6(表記を一部改変)

用語解説:仮想記憶(ページング)

問7

サーバの種類とそれに使用されるオープンソースソフトウェアの組合せはどれか。

正解 イ

解説

BIND は代表的な DNS サーバのソフトウェア,Apache(Apache HTTP Server)は代表的な Web サーバのソフトウェア,Postfix はメールサーバ(メール転送エージェント)のソフトウェアで,いずれもオープンソースソフトウェアである。この組合せのイが正しい。

ア,ウ,エは,いずれかのサーバの種類とソフトウェアの組合せが入れ替わっている。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問7(表記を一部改変)

問8

論理式 X=A・B+A・B+A・B と同じ結果が得られる論理回路はどれか。ここで,図記号はそれぞれ論理積(AND),論理和(OR),否定論理積(NAND),否定論理和(NOR)を表す。

図記号の凡例。平らな入力側と丸い出力側の記号は論理積(AND),入力側がへこんだとがった記号は論理和(OR),AND の記号の出力に小さな丸を付けたものは否定論理積(NAND),OR の記号の出力に小さな丸を付けたものは否定論理和(NOR)。

正解 イ

解説

X=A・B+A・B+A・B を真理値表で調べると,A=0,B=1 のときは A・B が1,A=1,B=0 のときは A・B が1,A=0,B=0 のときは A・B が1 なので X=1 となり,A=1,B=1 のときだけ全ての項が0 で X=0 となる。

A と B がともに1のときだけ0になるのは否定論理積(NAND)なので,イが正しい。式で変形しても,A・B+A・B=A,A・B+A・B=B より X=A+B=¬(A・B) となる。アの論理積は A=B=1 のときだけ1,ウの論理和は A=B=0 のときだけ0,エの否定論理和は A=B=0 のときだけ1 になる。

X=¬A・B+A・¬B+¬A・¬B の真理値表 A=0・B=1 では ¬A・B が1,A=1・B=0 では A・¬B が1,A=0・B=0 では ¬A・¬B が1 で,X=1。A=1・B=1 のときだけどの項も0で X=0。両方が1のときだけ0になるのは否定論理積(NAND)。 A B ¬A・B A・¬B ¬A・¬B X 0 0 0 0 1 1 0 1 1 0 0 1 1 0 0 1 0 1 1 1 0 0 0 0 X = ¬A + ¬B = ¬(A・B)(NAND)
両方が1のときだけ0 → NAND

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問8(表記を一部改変)

問9

Web ページに“パンくずリスト”や“topic path”,“breadcrumbs list”などと呼ばれる情報を表示する目的はどれか。

Web ページの例。ページ上部のパンくずリストに“トップ > 情報公開 > サイト管理 > 不正アクセス対策”と表示され,“不正アクセス対策”以外はリンクになっている。本文には“不正アクセス対策”“1. 修正プログラム適用状況”と,リンクの“2009年4月”“2009年3月”が並んでいる。

正解 ウ

解説

パンくずリストは,“トップ > 情報公開 > サイト管理 > 不正アクセス対策”のように,閲覧しているページが Web サイトの階層構造のどこに位置しているかを示し,上位の階層へのリンクを並べたものである。利用者は現在位置を把握でき,上位のページへ移動しやすくなる。ウが正しい。

アの掲載情報を一覧表示するのはサイトマップ。イの更新履歴や通知を日付順に表示するのは新着情報や更新情報の欄。エの不正アクセスへの対応状況の一覧は,図の例のページの本文の内容で,パンくずリストの目的ではない。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問9(表記を一部改変)

問10

MPEG-1 を説明したものはどれか。

正解 ア

解説

MPEG-1 は,1.5 M ビット/秒程度のビットレートで動画と音声を圧縮する方式で,主に CD-ROM などの蓄積型メディア(ビデオ CD など)を対象にしている。アが正しい。

ウの数 M〜数十 M ビット/秒で蓄積型メディア,放送,通信に共通に利用できる汎用の方式は MPEG-2。エの低ビットレートで携帯電子機器などへの利用を対象にしたのは MPEG-4 の説明である。イの 60 M ビット/秒を超える方式は MPEG-1 には当たらない。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問10(表記を一部改変)

問11

次の概念データモデルの解釈として,適切なものはどれか。ここで,モデルの記法として UML を用いる。

UML のクラス図。“部署”と“従業員”が関連“所属する”(従業員から部署へ向かう)で結ばれ,部署側の多重度は 1..*,従業員側の多重度は 0..*。

正解 ウ

解説

UML の多重度は,関連の相手側に書く。部署側の 1..* は,一人の従業員が所属する部署の数が1以上であることを表し,従業員側の 0..* は,一つの部署に所属する従業員の数が0以上であることを表す。したがって,従業員は同時に複数の部署に所属してもよく,ウが適切である。

アは誤りで,一つの部署の従業員は0人でもよいので,従業員が所属していない部署も存在できる。イは誤りで,従業員が所属している部署を削除すると,その従業員の所属先がなくなり参照整合性が保証されない。エは誤りで,従業員は少なくとも一つの部署に所属しなければならない。

多重度の読み方 多重度は,関連の相手側の端に書く。部門(1)と社員(*)なら,社員の側から見て部門は必ず1つ(どの社員もちょうど1つの部門に所属し,兼務はない),部門の側から見て社員は0人以上(社員のいない部門もある)。1..* なら1以上,0..1 なら0か1。 部門 社員 1 * 社員から見て部門は 1 つ(必ず,兼務なし) 部門から見て社員は 0 人以上 書き方 意味 1 ちょうど1 0..1 0 か 1 *(0..*) 0 以上 1..* 1 以上
相手から見て何個か,を相手側の端に書く

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問11(表記を一部改変)

用語解説:UML(統一モデリング言語)

問12

IP ネットワークにおいて,二つの LAN セグメントを,ルータを経由して接続する。ルータの各ポート及び各端末の IP アドレスを図のとおりに設定し,サブネットマスクを全ネットワーク共通で 255.255.255.128 とする。ルータの各ポートのアドレス設定は正しいとした場合,IP アドレスの設定を正しく行っている端末の組合せはどれか。

ネットワーク構成。ルータの一方のポート(172.16.0.1)の LAN に端末 A(172.16.0.10)と端末 B(172.16.0.130)が,もう一方のポート(172.16.1.5)の LAN に端末 C(172.16.1.140)と端末 D(172.16.1.20)が接続されている。

正解 イ

解説

サブネットマスク 255.255.255.128 では,第4オクテットの上位1ビットまでがネットワーク部になり,0〜127 と 128〜255 の二つのサブネットに分かれる。ルータのポート 172.16.0.1 側のサブネットは 172.16.0.0〜172.16.0.127,ポート 172.16.1.5 側は 172.16.1.0〜172.16.1.127 である。

端末 A の 172.16.0.10 と端末 D の 172.16.1.20 は,それぞれ接続されたルータのポートと同じサブネットに含まれるので正しい。端末 B の 172.16.0.130 と端末 C の 172.16.1.140 は,第4オクテットが 128 以上で別のサブネットになるので誤りである。したがって,A と D のイが正しい。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問12(表記を一部改変)

用語解説:サブネットマスク・CIDR

問13

TCP/IP ネットワーク上で,メールサーバから電子メールを取り出すプロトコルはどれか。

正解 ア

解説

POP3 は,メールサーバのメールボックスに届いた電子メールを,クライアントが取り出す(受信する)ためのプロトコルである。アが正しい。

イの PPP は,2点間をつないでデータを転送するデータリンク層のプロトコル。ウの SMTP は,電子メールを送信したりメールサーバ間で転送したりするプロトコル。エの UDP は,コネクションを確立せずにデータを送るトランスポート層のプロトコルである。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問13(表記を一部改変)

用語解説:電子メールのプロトコル(SMTP・POP・IMAP)

問14

ISMS 適合性評価制度における情報セキュリティ基本方針に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

ISMS 適合性評価制度の基準(JIS Q 27001 とその管理策)では,情報セキュリティ基本方針は,事業上の要求事項や関連する法令に従って,情報セキュリティのための経営陣の方向性及び支持を規定するものとされる。イが適切である。

アは誤りで,基本方針は経営陣が承認し,全ての従業員や関連する外部関係者に公表して通知する。ウは誤りで,ビジネス環境や技術の変化などに応じて,定期的に見直す必要がある。エの特定のシステムについてのリスク分析やセキュリティ対策,運用の詳細は,基本方針の下位にある対策基準や実施手順で定める。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問14(表記を一部改変)

問15

企業内情報ネットワークやサーバにおいて,通常のアクセス経路以外で,侵入者が不正な行為に利用するために設置するものはどれか。

正解 ウ

解説

バックドアは,侵入者が一度侵入したコンピュータに,次回以降も通常の認証やアクセス経路を経ずに侵入できるように設置する裏口のような仕組みである。ウが正しい。

アの VoIP ゲートウェイは,電話の音声信号と IP パケットを相互に変換する装置。イのストリクトルーティングは,パケットが経由するルータを送信元が厳密に指定する経路制御の方式。エのフォレンジックは,不正アクセスなどの事後に,証拠となる記録を収集・分析する手法で,いずれも侵入者が設置するものではない。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問15(表記を一部改変)

用語解説:マルウェア(ルートキット・ポリモーフィック型・ビヘイビア法)

問16

新システムのモデル化を行う場合の DFD 作成の手順として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

DFD で既存システムを基に新システムをモデル化するときは,まず現状の業務を担当者や媒体などの実装を含めて表した現物理モデルを作り,そこから実装に依存しない本質的な処理だけを抜き出した現論理モデルにする。次に,新しい要求を反映した新論理モデルを作り,最後にそれを実現する具体的な手段を当てはめた新物理モデルにする。イが適切である。

論理モデルは物理モデルから実装の制約を取り除いたものなので,ウやエのように現論理モデルから始めることはできない。アとウのように新物理モデルを先に作ると,実現手段を決めてから本質的な要求を整理することになり,手順が逆である。

DFD の作り方と図形要素 既存のシステムを基に新しいシステムをモデル化するときは,現物理モデル(担当者や媒体を含む今の姿)→現論理モデル(実装に依らない本質)→新論理モデル(新しい要求を入れる)→新物理モデル(実現手段を当てはめる)の順に作る。図形要素は,プロセス(円),データフロー(矢印),データストア(二本線),源泉と吸収(外部実体,四角)の4つ。データストアどうしを直接つなぐことはなく,間に必ずプロセスが入る。 現物理 現論理 新論理 新物理 図形要素 源泉・吸収 プロセス データストア データフロー データストアどうしは直接つながらない(間にプロセス) 実体(エンティティ)・関連は E-R 図の要素
現物理 → 現論理 → 新論理 → 新物理。実体や関連は E-R 図の要素

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問16(表記を一部改変)

問17

CMMI の開発モデルの目的はどれか。

正解 イ

解説

CMMI(能力成熟度モデル統合)は,組織がプロセスを改善するためのベストプラクティスを体系的にまとめ,その適用の手引を提供するモデルである。組織のプロセスの成熟度を段階で示し,改善の進め方の指針とする。イが正しい。

アの設計・開発技法を使って開発作業を自動化するのは CASE ツールなどの考え方。ウのソフトウェアライフサイクルを主,支援,組織の三つのライフサイクルプロセスに分けて作業を定めるのは,ISO/IEC 12207(JIS X 0160)や共通フレームである。エの特定の購入者と製作者の間で授受されるソフトウェア製品の品質保証は,CMMI の目的ではない。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問17(表記を一部改変)

問18

WBS(Work Breakdown Structure)を利用する効果として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

WBS は,プロジェクトで行う作業や作成する成果物を,管理しやすい大きさまで階層的に分解して表したものである。作業の内容や範囲が体系的に整理され,漏れや重複を防ぎ,作業の全体を把握しやすくなる。アが適切である。

イのシステムの構成要素の管理は構成管理。ウのプロジェクト体制を階層的に表して指揮命令系統を明確にするのは,組織ブレークダウンストラクチャ(OBS)などの体制図。エの要員ごとの作業配分の把握は,責任分担マトリックスや資源ヒストグラムの役割である。

WBS とワークパッケージ WBS(作業分解構成図)は,プロジェクトの成果物と作業を,管理できる大きさまで階層的に分解したもの。いちばん下の要素がワークパッケージで,これを単位に費用や期間を見積もり,担当を決めて管理する。上の要素は下の要素の合計(100%ルール)。 システム開発 設計 WP WP 製造 WP WP テスト WP WP WP:ワークパッケージ(費用・期間・担当を決める単位)
いちばん下がワークパッケージ。見積りと管理の単位

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問18(表記を一部改変)

用語解説:契約の形態(請負・準委任・労働者派遣)

問19

図のプロジェクトの日程計画において,プロジェクトの所要日数は何日か。

アローダイアグラム(数字は標準日数)。開始の結合点から A 10 と B 5 が出る。A の終点から C 10 と D 15 が出るとともに,A の終点から B の終点へダミー作業がある。D の終点から F 15 が出るとともに,D の終点から C の終点へダミー作業がある。C の終点から E 20,B の終点から G 25 が出る。E,F,G は同じ結合点に入り,そこから H 10 で終了する。

正解 エ

解説

各結合点の最早結合点時刻を求める。A は0日目から10日で終わる。B の終点には B(0+5=5)と A の後のダミー作業(10)が入るので10日目,そこから G 25 で35日目となる。D は10日目から15日で25日目に終わり,C の終点には C(10+10=20)と D の後のダミー作業(25)が入るので25日目となる。

E は25日目から20日で45日目,F は25日目から15日で40日目に終わる。E,F,G が入る結合点は最も遅い45日目で,H 10 を加えて全体は55日となり,エが正しい。ダミー作業を無視すると E の開始が20日目になり50日(ウ)と誤る。

ダミー作業のあるアローダイアグラムの所要日数 A(10日)の終点から B の終点へ,D の終点から C の終点へダミー作業がある。C と E は A と D の両方が終わってから始まるので,C の後の結合点は 25 日目。E は 25+20=45 日目,F は 40 日目,G は 35 日目に終わり,H の手前の結合点は最も遅い 45 日目。H の 10 日を足して 55 日。 A 10 B 5 D 15 C 10 F 15 E 20 G 25 H 10 0 / 0 10 / 10 10 / 20 25 / 25 25 / 25 45 / 45 55 / 55 結合点の数字:最早 / 最遅 濃い線:クリティカルパス
合流する結合点は「最も遅く着く作業」に合わせる。ダミー作業も合流に数える

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問19(表記を一部改変)

問20

SLA に記載する内容として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

SLA(サービスレベル合意書)は,顧客とサービスプロバイダの間で,提供するサービスの内容,サービスレベルの目標,双方の責任範囲などを合意して文書にしたものである。アが適切である。

イのサービスデスクと IT サポート部門の役割分担は,サービスプロバイダ内部の取決め(OLA など)に記載する。ウの提供する全てのサービスの特徴や料金はサービスカタログ,エの利用者から出された業務要件は SLA の合意に先立って把握するサービスレベル要求の内容である。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問20(表記を一部改変)

用語解説:SLA(サービスレベル合意書)

問21

ソフトウェア開発・保守工程において,リポジトリを構築する理由はどれか。

正解 ウ

解説

リポジトリは,要求仕様書,設計書,プログラム,テストデータなど,ソフトウェア開発・保守の各工程で作成される成果物とその情報を一元的に管理するデータベースである。成果物を共有して再利用しやすくなるので開発・保守作業の効率が良くなり,データ項目名などの用語を辞書として統一することもできる。ウが該当する。

アの作業手順の定義は開発標準や手順書,イの作業予定と実績の管理は進捗管理のツール,エの発生不良の管理は障害管理や品質管理の仕組みの役割である。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問21(表記を一部改変)

問22

情報システムの安全性のコントロールに関係する監査証跡はどれか。

正解 イ

解説

監査証跡は,システムの処理の過程を後から追跡できるように記録したもので,監査人がコントロールの有効性を確かめる証拠になる。情報システムの安全性のコントロール(不正アクセスの防止など)については,誰がいつどの資源にアクセスしたかを記録したアクセスログが監査証跡になる。イが正しい。

アの CPU の性能評価レポートは効率性,ウの計算チェックプログラムの単体テストの結果報告書は信頼性,エのソフトウェア導入の費用対効果分析表は有効性や効率性に関係する資料である。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問22(表記を一部改変)

問23

“システム管理基準”によれば,全体最適化計画策定の段階で,業務モデルを定義する目的はどれか。

正解 ア

解説

全体最適化計画の策定では,企業の全体業務とそこで使われる情報の関連を業務モデルとして整理し,組織全体として情報システムがどうあるべきかを明確にする。業務モデルを定義する目的はアである。

イのシステム化の範囲や開発規模を把握して期間,工数,費用を見積もるのは,個別の開発計画(システム化計画)の段階で行う。ウのハードウェアやソフトウェアなどの構成要素の洗い出しは,システムの設計の段階で行う。エのユーザマニュアルや運用マニュアルの作成に向けた業務手順の確認は,導入や運用の準備の段階で行う。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問23(表記を一部改変)

問24

ERP パッケージを導入して,基幹業務システムを再構築する場合の留意点はどれか。

正解 エ

解説

ERP パッケージは,業務のベストプラクティスに基づく業務モデルを前提に作られている。導入に当たっては,パッケージが前提とする業務モデルに合わせて会社全体の業務プロセスを見直し,再設計することで,パッケージの利点を生かし,カスタマイズを最小限にできる。エが適切である。

アの全ての業務システムの同時導入は,リスクが大きく,段階的な導入も行われる。イの現行業務プロセスに合わせたカスタマイズを多くすると,開発費用や保守の負担が増え,パッケージのバージョンアップにも対応しにくくなる。ウの会計システムから導入しなければならないという決まりはない。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問24(表記を一部改変)

問25

共通フレーム 2007 によれば,要件定義プロセスで行うべき作業はどれか。

正解 ア

解説

共通フレーム 2007 の要件定義プロセスでは,新しい業務のあり方や運用をまとめた上で,業務上実現すべき要件(業務要件)を定義する。アが正しい。

イの企業で将来的に必要となる最上位の業務機能と組織モデルの検討は,企画プロセス(システム化構想の立案)の作業。ウのシステム化機能の整理とネットワーク構成などのシステム方式の策定は,開発プロセスのシステム方式設計の作業。エのシステムが提供する信頼性,性能,セキュリティなどの定義は,開発プロセスのシステム要件定義で行うシステム要件の定義である。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問25(表記を一部改変)

用語解説:JIS X 0160 と共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス) SLA(サービスレベル合意書)

問26

図に示すマトリックス表を用いたポートフォリオ類型によって,事業計画や競争優位性の分析を行う目的はどれか。

2×2 のマトリックス表。横軸は事業の強み(市場シェア)で左が強,右が弱。縦軸は事業の魅力度(市場成長率)で上が高,下が低。

正解 イ

解説

図は,事業の強み(市場シェア)と事業の魅力度(市場成長率)の2軸で事業を分類するプロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)のマトリックスである。各事業が四つの領域のどこに位置するかによって自らの置かれた立場を評価し,目標を設定して,どの事業に経営資源を優先的に配分するかを決める基礎とする。イが正しい。

アのプロモーション効果の測定,ウの製品の品質向上による優位性維持の方策の評価,エの季節変動要因や地域的広がりによる市場の変化の評価は,いずれもこのマトリックスを用いる目的ではない。

PPM の4つの区分 縦軸に市場成長率,横軸に相対的市場シェア(左が高い)をとる。成長率もシェアも高い花形,成長率が高くシェアが低い問題児,成長率が低くシェアが高い金のなる木,どちらも低い負け犬に分ける。金のなる木が生んだ資金を,花形や問題児に回す。 花形 成長に合わせた投資も要る 問題児 シェアを取るには投資が要る 金のなる木 投資が少なく資金を生む 負け犬 撤退を考える 高 低 成長率 市場 高 低 相対的市場シェア 金のなる木の資金を,花形と問題児へ回す
金のなる木が生む資金を,花形と問題児に回す

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問26(表記を一部改変)

問27

TLO(Technology Licensing Organization)法に基づき,承認又は認定された事業者の役割として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

TLO 法(大学等技術移転促進法)に基づいて承認又は認定された TLO(技術移転機関)は,大学などの研究成果を特許化し,その特許を企業にライセンスするなどして技術移転を支援し,大学と産業界の仲介役を果たす。ウが適切である。

アの企業からの委託研究や共同研究を受け入れる窓口は,大学の産学連携部門などの役割。イの研究者の応募に基づいて補助金を支給するのは,研究助成を行う機関の役割。エの民間企業が保有する休眠特許の発掘とライセンスは,大学の研究成果を対象とする TLO の役割ではない。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問27(表記を一部改変)

問28

ある期間の生産計画において,図の部品表で表される製品 A の需要量が 10 個であるとき,部品 D の正味所要量は何個か。ここで,ユニット B の在庫残が5個,部品 D の在庫残が 25 個あり,ほかの在庫残,仕掛残,注文残,引当残などはないものとする。

部品表。レベル0 の製品 A(1個)は,レベル1 のユニット B 4個とユニット C 1個から成る。ユニット B は,レベル2 の部品 D 3個と部品 E 1個から成る。ユニット C は,レベル2 の部品 D 1個と部品 F 2個から成る。

正解 イ

解説

製品 A が10個なので,ユニット B は 10×4=40個必要だが在庫が5個あるので正味35個,ユニット C は 10×1=10個必要で在庫はないので10個。部品 D はユニット B から 35×3=105個,ユニット C から 10×1=10個で合計115個必要になる。部品 D の在庫が25個あるので,正味所要量は 115−25=90個。イが正しい。

上位のユニット B の在庫を引かずに40個のまま計算すると,部品 D は 40×3+10=130個必要となり,在庫25個を引いて105個(エ)になってしまう。在庫は上位の品目から順に引き当てていく点に注意する。アの80とウの95は,この部品表からは導けない値である。

部品表から部品 D の正味所要量を求める 製品 A が10個なので,ユニット B は 4×10=40個,在庫5個を引いて正味35個。ユニット C は10個。部品 D は B から 35×3=105個,C から 10×1=10個で合計115個,在庫25個を引いて正味90個。 A 10個 B 40−在庫5=35 C 10 D 35×3 E D 10×1 F D:105 + 10 = 115,在庫25を引いて 90 個
在庫は上の階層から順に引いていく

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問28(表記を一部改変)

問29

ゲーム理論を使って検討するのに適している業務はどれか。

正解 ウ

解説

ゲーム理論は,利害が対立する複数の意思決定者(プレイヤ)が,互いに相手の行動を考慮しながら自らの最適な行動を選ぶ状況を分析する理論である。競争者がいる地域での販売戦略の策定は,競争者の出方によって自社の結果が変わるので,ゲーム理論が適している。ウが正しい。

アの入場ゲート数の決定は待ち行列理論,イの売れ筋商品の要因の分析は回帰分析などの多変量解析,エの新規開発商品の需要の予測は市場調査や時系列分析などの需要予測の手法が適している。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問29(表記を一部改変)

問30

請負契約の下で,自己の雇用する労働者を契約先の事業所などで働かせる場合,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

請負契約では,請負業者(雇用主)が労働者を自ら指揮命令して業務に従事させ,仕事を完成させる。契約先の事業所で働く場合でも,雇用主が自らの指揮命令の下に労働者を業務に従事させる必要がある。イが適切である。

アの勤務時間や出退勤時刻などの労働条件は雇用主が管理する。ウの契約先との間に雇用関係は生じない。エの契約先の指示による配置変更は,契約先が指揮命令することになり,請負ではなく労働者派遣(偽装請負)に当たる。

出典:平成21年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問30(表記を一部改変)

用語解説:契約の形態(請負・準委任・労働者派遣)