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高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通

令和6年度 秋期 科目A-1(午前Ⅰ)

令和6年度 秋期に実施された高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ(2026年度からの科目A-1)の全30問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:科目A-1(午前Ⅰ・高度試験 共通)について

この年度を解く(受ける試験区分を選ぶ)

問1

AI における教師あり学習での交差検証に関する記述はどれか。

正解 エ

解説

交差検証は,手元のデータを複数のグループに分け,一つを評価用,残りを学習用にしてモデルを作り評価する作業を,評価用のグループを入れ替えながら繰り返す手法。全てのデータが一度ずつ評価に使われるので,未知のデータに対する性能(汎化性能)を偏りなく見積もれる。エが該当する。

アはペナルティ項で過学習を抑える正則化,イは複数のモデルの結果を組み合わせるアンサンブル学習,ウは一つのモデルで関連する複数の課題を同時に学習するマルチタスク学習の説明である。

交差検証(k 分割交差検証) データを5つのグループに分け,1つを評価用,残りの4つを学習用にしてモデルを作り評価する。評価用のグループを入れ替えながら5回繰り返し,結果を平均する。全てのデータが一度ずつ評価に使われるので,未知のデータに対する性能(汎化性能)を偏りなく見積もれる。 1回目 評価 学習 学習 学習 学習 2回目 学習 評価 学習 学習 学習 3回目 学習 学習 評価 学習 学習 4回目 学習 学習 学習 評価 学習 5回目 学習 学習 学習 学習 評価 5回の評価の結果を平均して性能とする
評価用(塗ったグループ)を入れ替えながら k 回学習と評価を繰り返す

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問1(表記を一部改変)

問2

式 A+B×C の逆ポーランド表記法による表現として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

逆ポーランド表記法(後置記法)では,演算子を被演算子の後ろに書く。A+B×C は乗算を先に行うので,まず B×C を BC× とし,それと A の加算を A(BC×)+ として ABC×+ となる。ウが正しい。

イの ×+ABC は演算子を前に置く前置記法のつもりでも,正しくは +A×BC である。アの +×CBA は正解の並びを逆にしただけで,式として成り立たない。エの CBA+× は C×(B+A) を表し,演算の優先順位が異なる。

A+B×C を式の木にして後置記法にする A+B×C は乗算が先なので,木の根は+で,右の子が B×C。左の子,右の子,自分の順(後行順)にたどると A,B,C,×,+ の順になり,逆ポーランド表記法は ABC×+。 + A × B C 1 2 3 4 5 A B C × +(小さな数字がたどる順番)
左の子 → 右の子 → 自分 の順にたどると後置記法になる

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問2(表記を一部改変)

問3

自然数をキーとするデータを,ハッシュ表を用いて管理する。キー x のハッシュ関数 h(x) を h(x)=x mod n とすると,任意のキー a と b が衝突する条件はどれか。ここで,n はハッシュ表の大きさであり,x mod n は x を n で割った余りを表す。

正解 イ

解説

衝突は,異なるキー a と b のハッシュ値が同じ,つまり a mod n=b mod n となることである。a と b を n で割った余りが等しいのは,その差 a−b が n で割り切れるときなので,イが正しい。

例えば n=5 のとき,a=7,b=2 は a−b=5 で余りがどちらも 2 になり衝突する。アは a=1,b=4 のように a+b=5 でも余りが 1 と 4 で異なる場合があるので誤り。ウとエは倍数の関係が逆で,n は a−b の約数であればよい。

x mod n のハッシュ表で衝突する組 n=5 の表に,キーを5で割った余りの箱へ入れる。7 と 2 はどちらも余りが 2 で同じ箱に入り,衝突する。差 7−2=5 が n の倍数なので余りがそろう。1 と 4 は和が5でも余りは1と4で,衝突しない。 h(x) = x mod 5 0 1 1 7 と 2 2 3 4 4 衝突 7 mod 5 = 2,2 mod 5 = 2 → 差 7 − 2 = 5 は 5 の倍数 1 と 4:和は 5 でも余りは 1 と 4(衝突しない) 箱の下の数字が余り(格納位置)
余りが等しい ⇔ 差 a−b が n で割り切れる

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問3(表記を一部改変)

用語解説:ハッシュ関数

問4

キャッシュメモリのアクセス時間が主記憶のアクセス時間の 1/30 で,ヒット率が 95%のとき,実効メモリアクセス時間は,主記憶のアクセス時間の約何倍になるか。

正解 イ

解説

主記憶のアクセス時間を1とすると,キャッシュのアクセス時間は 1/30。実効メモリアクセス時間はヒット時とミス時の重み付き平均なので,0.95×(1/30)+0.05×1=0.0317+0.05=0.0817 となり,約0.08倍。イが答えになる。

アの0.03はキャッシュのアクセス時間 1/30 そのもので,ヒット率が100%の場合の値。ウの0.37は 1/30 を 1/3 と読み違えたときの値(0.95×1/3+0.05=0.37)。エの0.95はヒット率をそのまま答えにしたもの。

ヒット率95%のときの実効アクセス時間 読みたいデータの95%はキャッシュにあり,主記憶の1/30の時間で読める。残り5%は主記憶から読む。実効アクセス時間は 0.95×1/30 + 0.05×1 で,主記憶の約0.08倍になる。 CPU キャッシュ 速さ 1/30 主記憶 速さ 1 95% 5% 0.95 × 1/30 ≒ 0.03 0.05 × 1 = 0.05 実効アクセス時間 ≒ 0.03 + 0.05 = 約0.08
主記憶のアクセス時間を1としたとき

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問4(表記を一部改変)

用語解説:キャッシュメモリ

問5

Web アプリケーションサーバの信頼性に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

セッション情報をクラスタ内のサーバで共有していれば,1台に障害が起きても,別のサーバが共有されたセッション情報を使って処理を引き継げる。利用者から見るとサービスも処理中のトランザクションも継続できるので,エが適切である。

アとイのコールドスタンバイ構成は,障害発生後に待機系を起動して切り替えるので,切替えの間サービスは中断し,処理中のトランザクションも引き継がれない。ウはセッションを共有しないクラスタ構成でも残りのサーバでサービスは継続できるが,セッション情報が失われるので処理中のトランザクションは継続できず,記述が逆になっている。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問5(表記を一部改変)

問6

仮想記憶方式において,セグメンテーション方式と比較した場合のページング方式の長所はどれか。

正解 エ

解説

ページング方式は,仮想記憶と主記憶を固定長のページ単位に区切って割り当てる。どのページ枠にも同じ大きさのページが収まるので,割り当てられない細切れの空き領域(外部断片化)が発生しない。エが長所に当たる。ただし,ページ内の使われない部分(内部断片化)は生じる。

ア,イ,ウはセグメンテーション方式の長所である。セグメンテーション方式はプログラムやデータなど論理的な意味をもつ可変長の単位で領域を管理するので,その単位ごとにアクセス保護をしたり,プログラム間で共用したり,実行時に大きさを変えたりしやすい。

外部断片化と内部断片化 セグメンテーション方式は大きさの違う領域を割り当てるので,解放と割当てを繰り返すと小さな空きが散らばり,合計は足りても連続した大きな領域を取れなくなる(外部断片化)。ページング方式は同じ大きさのページ枠に割り当てるので外部断片化は起きないが,最後のページの使わない部分が無駄になる(内部断片化)。 セグメンテーション A B C D 小さな空きが 散らばる 外部断片化 ページング ページ1 ページ2 ページ3 ページ4 余り 最後の ページ 内部断片化
ページングは外部断片化が起きない代わりに,ページの中の余りが無駄になる

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問6(表記を一部改変)

用語解説:仮想記憶(ページング)

問7

手続型言語のコンパイラがコード生成までに行う処理のうち,最後に行うものはどれか。

正解 ウ

解説

コンパイラは一般に,字句解析(ソースを字句に分ける)→ 構文解析(文法に従って構文木を作る)→ 意味解析(型や宣言の整合性を調べる)→ 最適化(実行効率のよいコードになるよう変換する)→ コード生成 の順に処理する。コード生成の直前に行うのは最適化で,ウが正しい。

エの字句解析が最初,次がイの構文解析,その次がアの意味解析であり,いずれも最適化より前に行われる。

コンパイラの処理の順番 コンパイラは,字句解析(ソースを字句に分ける)→構文解析(文法どおりか調べて構文木を作る)→意味解析(型や宣言の整合を調べる)→最適化(速く小さいコードになるよう変換する)→コード生成の順に処理する。コード生成の直前が最適化。 字句解析 字句に分ける 構文解析 構文木を作る 意味解析 型を調べる 最適化 効率よく直す コード生成 機械語にする ソース 目的プログラム ① → ② → ③ → ④ 最適化 → ⑤ コード生成
コード生成の直前は最適化

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問7(表記を一部改変)

問8

アクチュエーターの説明として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

アクチュエーターは,電気,油圧,空気圧などのエネルギー源からのパワーを,回転や直進といった機械的な動きに変換する装置である。モーター,ソレノイド,油圧シリンダーなどが当たり,ウが該当する。

アは目標値と制御量を比べて操作量を決める制御器(コントローラー)の説明。イは物理量を検出して電気信号に変換するセンサーの説明。エは微小な電気信号を増幅するアンプ(増幅器)の説明である。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問8(表記を一部改変)

問9

800×600 ピクセル,24 ビットカラーで 30 フレーム/秒の動画像の配信に最小限必要な帯域幅はおよそ幾らか。ここで,通信時にデータ圧縮は行わないものとする。

正解 エ

解説

1フレームのデータ量は,800×600=480,000 ピクセルに 1ピクセル当たり24ビットを掛けて 11,520,000 ビット。これを1秒に30フレーム送るので,11,520,000×30=345,600,000 ビット/秒,約 350M ビット/秒が必要になる。エが正しい。

ウの 35M ビット/秒は1桁小さく,1秒当たり3フレーム程度しか送れない。アとイは更に小さい値で,圧縮しない動画像の配信には足りない。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問9(表記を一部改変)

問10

化粧品の製造を行っている A 社では,販売代理店を通じて商品販売を行っている。今後の販売戦略に活用するために,次の三つの表を設計した。これらの表を用いるだけでは得ることのできない情報はどれか。

三つの表の構成。顧客(顧客 ID,氏名,性別,生年月日),販売代理店別日別販売(販売代理店 ID,日付,商品 ID,販売数量),商品購入(顧客 ID,販売代理店 ID,商品 ID,購入数量)。

正解 ウ

解説

販売代理店ごとの購入者数を日別に比べるには,“どの顧客が,どの販売代理店で,いつ購入したか”が必要になる。商品購入表には顧客 ID と販売代理店 ID はあるが日付がなく,日付をもつ販売代理店別日別販売表には顧客の情報がない。二つの表を結び付けても購入日は特定できないので,ウは得られない。

アは販売代理店別日別販売表の日付,商品 ID,販売数量から得られる。イは商品購入表と顧客表を顧客 ID で結合すれば性別ごとに購入数量を集計できる。エは販売代理店別日別販売表(又は商品購入表)を販売代理店 ID と商品 ID で集計すれば得られる。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問10(表記を一部改変)

問11

DNS に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

DNS で,ホスト名から IP アドレスを調べることを正引き,IP アドレスからホスト名を調べることを逆引きという。ウが適切である。

アの MX レコードはそのドメインのメールサーバを登録するレコードで,DNS サーバ(ネームサーバ)を登録するのは NS レコード。イの DNS サーバに問い合わせるソフトウェアはリゾルバという。エのホスト名に別名を付けるのは CNAME レコードである。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問11(表記を一部改変)

問12

IPv4 の LAN に接続されているプリンターの MAC アドレスを,同一 LAN 上の PC から調べるときに使用するコマンドはどれか。ここで,PC はこのプリンターを直前に使用しており,プリンターの IP アドレスは分かっているものとする。

正解 ア

解説

arp コマンドは,IP アドレスと MAC アドレスの対応を保持する ARP キャッシュを表示する(Windows などでは arp -a)。PC は直前にプリンターと通信しているので,キャッシュにプリンターの IP アドレスと MAC アドレスの対応が残っており,ここから MAC アドレスを調べられる。アが正しい。

イの ipconfig や ifconfig は自分の PC のネットワークインタフェースの設定(自身の IP アドレスや MAC アドレス)を表示する。ウの netstat は通信中のコネクションや統計情報,エの ping は相手に到達できるかどうかを表示するもので,相手の MAC アドレスは表示しない。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問12(表記を一部改変)

問13

ディープフェイクを悪用した攻撃に該当するものはどれか。

正解 ア

解説

ディープフェイクは,ディープラーニングなどの AI 技術で本物そっくりの偽の画像,動画,音声を作る技術やその生成物をいう。AI で加工した CEO の声で電話をかけ,送金を指示するアが悪用に当たる。

イはランサムウェアによる身代金要求。ウは実際にはデータを盗んでいないのに盗んだと思わせて金銭を要求する脅迫。エは不正に入手した認証情報で本物のメールアカウントを乗っ取るビジネスメール詐欺であり,いずれも偽の映像や音声を使っていない。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問13(表記を一部改変)

用語解説:マルウェア(ルートキット・ポリモーフィック型・ビヘイビア法)

問14

JVN などの脆弱性情報サイトで採用されている CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)識別子の説明はどれか。

正解 ウ

解説

CVE(Common Vulnerabilities and Exposures)識別子は,公開された個々の脆弱性に“CVE-西暦年-番号”の形式で一意に付ける識別子である。JVN などの脆弱性対策情報ポータルサイトやベンダの情報で同じ番号を使うことで,製品に含まれる同一の脆弱性であることを識別できる。ウが正しい。

アのセキュリティ設定項目を識別するのは CCE(共通セキュリティ設定一覧)である。イの改ざんされた Web サイトのスクリーンショットや,エのセキュリティ製品の種別を識別するものは,CVE の役割ではない。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問14(表記を一部改変)

用語解説:脆弱性の管理と検査(CVE・CVSS・ファジング)

問15

DNS キャッシュポイズニング攻撃に対して有効な対策はどれか。

正解 イ

解説

DNS キャッシュポイズニングは,キャッシュ DNS サーバの問合せに対して攻撃者が偽の応答を先に送り込み,誤った情報をキャッシュさせる攻撃。偽の応答が受け入れられるには,問合せの ID や送信元ポート番号と一致させる必要があるので,ID をランダムにすると推測が難しくなり,攻撃が成功しにくくなる。イが有効である。

ウは送信元ポート番号を固定すると推測が容易になり,逆効果(ランダム化するのが対策)。エの宛先ポート番号 53 は DNS の問合せでは通常の値であり,これで応答相手を絞っても偽の応答は防げない(外部からの再帰問合せを受け付けないことが対策になる)。アのマルウェアの隔離はキャッシュへの偽情報の注入とは関係がない。

DNS キャッシュポイズニングの流れ キャッシュ DNS サーバが権威 DNS サーバに問い合わせている間に,攻撃者が問合せの ID やポート番号を推測した偽の応答を大量に送り込む。本物の応答より先に偽の応答が受け入れられると,キャッシュに偽の IP アドレスが残り,利用者は偽のサーバへ誘導される。対策は,ID と送信元ポート番号をランダムにする,外部からの再帰的な問合せに答えない,DNSSEC で応答を検証する。 利用者 キャッシュ DNS 権威 DNS ① 名前を問合せ ② 問合せ(ID・ポート) 攻撃者 ③ 推測した偽の応答を大量に 本物の応答(遅れる) ④ 偽の IP アドレス 対策:ID とポートをランダムに,外部の再帰問合せは受けない,DNSSEC
本物の応答より先に,ID とポートが合った偽の応答が入ると成り立つ

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問15(表記を一部改変)

用語解説:DNS のセキュリティ(DNSSEC・キャッシュポイズニング)

問16

エクスプロイトコードの説明はどれか。

正解 ア

解説

エクスプロイトコードは,ソフトウェアの脆弱性を突いて攻撃を成立させるためのプログラムで,攻撃コードとも呼ばれる。攻撃に悪用される一方,脆弱性が実際に悪用できるかを確かめる検証に使われることもあるので,アが該当する。

イはマルウェア対策ソフトが検知に使うシグネチャ(パターンファイル),ウはメッセージと秘密鍵から計算する MAC(メッセージ認証コード),エはワンタイムパスワードの説明である。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問16(表記を一部改変)

用語解説:マルウェア(ルートキット・ポリモーフィック型・ビヘイビア法)

問17

ソフトウェアの使用性を評価する指標の目標設定の例として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

JIS X 25010 の品質モデルでは,使用性は利用者が製品を有効かつ効率的に使える度合いで,副特性に習得性(使い方を学べる度合い)や運用操作性などを含む。“使用方法を1時間以内に習得できる”は習得性の目標なので,イが使用性の指標に当たる。

アの障害発生から使えるようになるまでの時間は信頼性(回復性),ウの機能改善を完了するまでの期間は保守性(修正性),エの必要な機能の提供は機能適合性(機能完全性)に関する目標である。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問17(表記を一部改変)

問18

プロジェクトマネジメントにおけるスコープの管理の活動はどれか。

正解 ウ

解説

スコープの管理は,プロジェクトのスコープの状況を監視し,スコープ・ベースラインへの変更を管理するプロセスである。連携先の外部システムのリリース延期を受けて,その連携作業をこのプロジェクトのスコープから外し別プロジェクトで行うと決めるウは,スコープを変更して管理する活動に当たる。

アの教育期間の延長はスケジュールの管理,イの追加予算の確保はコストの管理,エのテスト担当者の交代は資源(チーム)の管理の活動で,いずれもプロジェクトで行う作業の範囲そのものは変えていない。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問18(表記を一部改変)

問19

プロジェクトマネジメントにおけるファストトラッキングの例として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

ファストトラッキングは,本来は順番に行う作業の一部を並行して進めることで,スケジュールを短縮する技法である。全ての設計が終わるのを待たず,設計が終わったモジュールからプログラム開発に着手するエが該当する。手戻りのリスクは高まる。

アは資源を追加して作業期間を縮めるクラッシング。イは残業禁止によるコスト削減で,期間の短縮にはならない。ウは完了予定日の延期で,スケジュールを短縮するものではない。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問19(表記を一部改変)

用語解説:クリティカルパス

問20

サービスマネジメントにおいて,中断したサービスを復旧させるときの目標を定めた指標に,RTO(目標復旧時間),RPO(目標復旧時点)及び RLO(目標復旧レベル)がある。RTO と RLO とを定めた例として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

RTO(目標復旧時間)はサービス中断からどれだけの時間で復旧させるか,RPO(目標復旧時点)はどの時点の状態までデータを戻すか,RLO(目標復旧レベル)はどの水準までサービスを復旧させるかを表す。エは“1日以内”が RTO,“重要なサービスに限定して”が RLO に当たる。

アは“3時間前の時点の状態”が RPO,“利用者の50%以上に提供”が RLO で,RTO がない。イは“直前の状態”が RPO で,サービス終了時刻の延長は復旧目標ではない。ウは“1時間以内”が RTO,“1時間前の時点の状態”が RPO で,RLO がない。

RPO・RTO・MTPD の関係 障害が起きた時点を中心に,RPO(目標復旧時点)は過去に向かって,どの時点のデータまで戻すか(失ってよいデータの範囲)を表す。RTO(目標復旧時間)は未来に向かって,どれだけの時間で戻すかを表す。MTPD(最大許容停止時間)は止まっていられる限界で,RTO はこれより短く置く。 時間 最後のバックアップ 障害発生 復旧 RPO どこまで戻すか RTO 何時間で戻すか MTPD:これ以上止まると事業が立ち行かない ← 過去(データ) 未来(時間)→
RPO は障害の前(データ),RTO は障害の後(時間)を向く。RTO は MTPD より短く

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問20(表記を一部改変)

用語解説:BCP(事業継続計画・RTO・RPO)

問21

システム監査において,監査手続の適用に際して用いられる技法のうち,データの生成から入力,処理,出力,活用までのプロセス,及び組み込まれているコントロールを,書面上で,又は実際に追跡するものはどれか。

正解 ア

解説

ウォークスルー法は,データの生成から入力,処理,出力,活用に至る一連の流れと,その過程に組み込まれたコントロールを,書面上で,又は実際にたどって確かめる監査技法である。アが該当する。

イのチェックリスト法は監査人が作成したチェックリストに監査対象部門が回答する技法,ウの突合・照合法は関連する記録どうし(伝票と入力データなど)を突き合わせて正確性を確かめる技法,エのドキュメントレビュー法は規程や記録などの文書を査閲して確かめる技法である。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問21(表記を一部改変)

用語解説:システム監査(監査手続・監査証拠・フォローアップ)

問22

システム監査基準(令和5年)におけるフォローアップの説明として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

システム監査基準(令和5年)の基準12は,監査報告書に改善提案が記載されている場合,適切な措置が適時に講じられているかを確認するために,改善計画及びその実施状況に関する情報を収集し,改善状況をモニタリングしなければならないとしている。ウが該当する。

アの改善計画の策定は監査対象先の責任で行うもので,基準も監査人が改善計画の策定や実行に関与すると独立性と客観性を損なうとしており,フォローアップとは区別される。イは監査部門内で行う監査の品質管理(レビュー)の話。エの時間切れで終わらなかった監査項目の追跡調査は,監査報告書に記載した改善提案の実施状況を確かめるフォローアップではない。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問22(表記を一部改変)

用語解説:システム監査(監査手続・監査証拠・フォローアップ)

問23

経済産業省が取りまとめた“デジタル経営改革のための評価指標(DX 推進指標)”によれば,DX を実現する上で基盤となる IT システムの構築に関する指標において,“IT システムに求められる要素”について経営者が確認すべき事項はどれか。

正解 イ

解説

DX 推進指標は,IT システム構築の枠組みの“IT システムに求められる要素”として,データ活用,スピード・アジリティ,全社最適の三つの項目を置いている。スピード・アジリティの設問は“環境変化に迅速に対応し,求められるデリバリースピードに対応できる IT システムとなっているか”で,イが該当する。

アの,全体設計やベンダーの選別ができる人材を確保できているかは,同じ IT システム構築の枠組みでも“ガバナンス・体制”の人材確保の設問である。ウは,データをリアルタイム等使いたい形で使えることを求めるデータ活用の考え方と逆になっている。エは,部門ごとの個別最適を解消し全社最適でデータを活用できることを求める全社最適の考え方と逆になっている。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問23(表記を一部改変)

問24

BPR によって業務を見直した場合,これまで従業員5人で年間計 9,000 時間掛かっていた業務が 7,000 時間で実現可能なことと,その 7,000 時間のうちの 2,000 時間分の業務は外部委託が可能なことが分かった。この結果を基に BPR を実施した次のシナリオ a から d のうち,当該部門において,年間当たりの金額面の効果が最も高いものはどれか。なお,いずれのシナリオも年初から実施することとし,条件に記載した時間や費用以外は考慮しないものとする。

〔条件〕

シナリオの表。列はシナリオ,当該業務を行う従業員数,外部委託。a は4人・外部委託する,b は4人・しない,c は5人・する,d は5人・しない。

正解 イ

解説

BPR 後の業務は 7,000 時間で,外部委託すれば社内で行うのは 5,000 時間になる。空いた時間は 100 時間当たり 20 万円の利益を生み,異動する1人分の人件費 600 万円も効果とみなす。各シナリオの効果は次のとおり。

a(4人・委託する):4人の時間 7,200−5,000=2,200 時間で 440 万円,人件費削減 600 万円,委託費 −700 万円で,計 340 万円。b(4人・委託しない):7,200−7,000=200 時間で 40 万円,人件費削減 600 万円で,計 640 万円。c(5人・委託する):9,000−5,000=4,000 時間で 800 万円,委託費 −700 万円で,計 100 万円。d(5人・委託しない):9,000−7,000=2,000 時間で 400 万円。

最も効果が高いのはシナリオ b で,イが正しい。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問24(表記を一部改変)

問25

UML の図のうち,業務要件定義において,業務フローを記述する際に使用する,処理の分岐や並行処理,処理の同期などを表現できる図はどれか。

正解 ア

解説

アクティビティ図は,処理の流れを開始から終了まで順に表す UML の図で,条件による分岐(デシジョンノード),並行処理への分割と同期(フォーク・ジョイン),担当者ごとのレーン分け(パーティション)を書ける。業務フローの記述に向くのでアが正しい。

イのクラス図はクラスと関連による静的な構造,ウの状態マシン図は一つのオブジェクトが取る状態とその遷移,エのユースケース図は利用者(アクタ)とシステムが提供する機能の関係を表す図で,いずれも処理の流れそのものは表現しない。

UML のおもな図の使い分け シーケンス図はオブジェクト間のメッセージを時間の順に,コミュニケーション図はオブジェクトのつながりに注目して相互作用を表す。ユースケース図はアクタとシステムの機能の関係(システムの範囲),アクティビティ図は処理の流れ(分岐・並行・同期),状態マシン図は1つのオブジェクトの状態の移り変わり,クラス図は静的な構造,オブジェクト図はある時点のインスタンスのつながりを表す。 図 表すもの シーケンス図 メッセージを時間の順に コミュニケーション図 オブジェクトのつながりと相互作用 ユースケース図 アクタと機能,システムの範囲 アクティビティ図 処理の流れ(分岐・並行・同期) 状態マシン図 1つのオブジェクトの状態の遷移 クラス図 クラスと関連(静的な構造) オブジェクト図 ある時点のインスタンスとリンク
時間の順はシーケンス図,範囲はユースケース図,業務の流れはアクティビティ図

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問25(表記を一部改変)

用語解説:UML(統一モデリング言語)

問26

コ・クリエーション戦略の特徴はどれか。

正解 ウ

解説

コ・クリエーション(価値共創)戦略は,企業が単独で価値を作って顧客に提供するのではなく,顧客や取引先などのネットワークと協働し,商品・サービスそのものに加えて顧客が得る経験まで含めて価値を共に創り出す戦略である。ウが該当する。

アは自前主義にこだわる点で,外部との協働を重視する共創とは逆の考え方。イは顧客が仕様を決めて企業が製造を請け負う形で,顧客の経験を含めた価値を共に創る戦略ではない。エは M&A による経営資源の獲得で,共創とは異なる。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問26(表記を一部改変)

問27

企業における研究,開発,事業化,そして産業化へとステージが移行する過程の中で,事業化から産業化に移行するときの,競合製品との競争過程にある障壁を何と呼ぶか。

正解 ウ

解説

研究開発から事業が確立するまでの過程には三つの障壁があるとされる。研究から開発への移行を阻むのが魔の川,開発から事業化への移行を阻む資金などの壁が死の谷,事業化から産業化へ移行するとき,競合製品との競争を勝ち抜かなければならない障壁がダーウィンの海である。ウが正しい。

イの死の谷とエの魔の川は,それぞれ別の段階の障壁である。アのキャズムは,新製品が初期採用者(アーリーアダプター)から前期多数派(アーリーマジョリティ)へ普及するときにある深い溝を指すマーケティングの用語である。

魔の川・死の谷・ダーウィンの海 研究から開発へ進む間の障壁が魔の川,開発から事業化(量産や販路づくり)までの障壁が死の谷,事業化してから競合との競争に勝ち残って産業化するまでの障壁がダーウィンの海。 研究 開発 事業化 産業化 魔の川 製品にできない 死の谷 資金・量産の壁 ダーウィンの海 競争に負ける キャズムは新製品の普及(初期の市場→主流の市場)の溝
研究→開発が魔の川,開発→事業化が死の谷,事業化→産業化がダーウィンの海

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問27(表記を一部改変)

問28

構成表の製品 A を 300 個出荷しようとするとき,部品 b の正味所要量は何個か。ここで,A,a,b,c の在庫量は在庫表のとおりとする。また,他の仕掛残,注文残,引当残などはないものとする。

構成表(単位 個)と在庫表(単位 個)。構成表では,製品 A は部品 a を3個,b を2個,c を0個使う。部品 a は b を1個,c を2個使う。在庫表では,A が 100,a が 100,b が 300,c が 400。

正解 イ

解説

正味所要量は,総所要量から在庫量を差し引いた量である。製品 A は 300 個出荷するが在庫が 100 個あるので,A の正味所要量は 200 個。

A 1個に部品 a が3個,b が2個使われる。a の総所要量は 200×3=600 個で在庫 100 個を引いて正味 500 個。b は A から直接 200×2=400 個,a から 500×1=500 個で総所要量 900 個,在庫 300 個を引いて正味所要量は 600 個となり,イが正しい。

ウの 900 は在庫を引く前の総所要量。在庫を考えずに A 300 個分で計算すると b は 300×2+900×1=1,500 個(エ)になる。

部品 b の正味所要量 製品 A は300個出荷するが在庫が100個あるので正味200個。部品 a は 200×3=600個から在庫100個を引いて正味500個。部品 b は A から 200×2=400個,a から 500×1=500個で計900個,在庫300個を引いて正味600個。 A 300−在庫100=200 a 600−100=500 b 200×2=400 b 500×1=500 c b:400 + 500 = 900,在庫300を引いて 600 個
在庫を引いた「正味」の数で下の階層を計算する

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問28(表記を一部改変)

問29

企業経営において,経営理念,経営戦略,事業戦略は,経営理念を最上位とするピラミッドを形成している。経営理念,経営戦略,事業戦略の関係性で適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

経営理念は企業の存在意義や価値観を示す最上位の考え方で,それを実現するために全社としての方向性や資源配分を定めるのが経営戦略,経営戦略を各事業に落とし込み,事業ごとに具体化するのが事業戦略である。経営理念を達成するために経営戦略を策定し,それを事業戦略に分解するウが適切である。

アとイは逆。ピラミッドの上位ほど抽象的で中長期的な視点であり,下位ほど具体的で短期的な視点になる。エは経営戦略と事業戦略の上下関係が逆である。

経営理念・経営戦略・事業戦略のピラミッド 経営理念は企業の存在意義や価値観を示す最上位の考え方で,それを実現するために全社の方向性や資源配分を定めるのが経営戦略,経営戦略を各事業に落とし込んで具体化するのが事業戦略。上位ほど抽象的で中長期的,下位ほど具体的で短期的。 経営理念 経営戦略(全社) 事業戦略(事業ごと) 抽象的 中長期 具体的 短期 上から分解していく:理念 → 経営戦略 → 事業戦略
理念を達成するために経営戦略を作り,それを事業戦略に分解する(ウ)

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問29(表記を一部改変)

問30

大規模なシステム開発を受注した A 社では,不足する開発要員を派遣事業者である B 社からの労働者派遣によって補うことにした。A 社の行為のうち,労働者派遣法に照らして適切なものはどれか。

正解 ア

解説

労働者派遣法は,派遣先の同一の事業所等で派遣を受け入れられる期間(派遣可能期間)を原則3年としている(第40条の2)。3年の派遣期間とする契約は上限の範囲内なので,アが適切である。

イは誤り。派遣先は派遣労働者を特定することを目的とする行為(事前の面接や履歴書の送付要請など)をしないよう努めなければならない(第26条第6項)。ウは誤り。年齢や性別で派遣労働者を指定することも派遣労働者を特定する行為に当たり,性別を理由とする差別的な取扱いにもなる。エは誤り。派遣先は派遣労働者から苦情の申出を受けたときは,派遣元に通知するとともに密接に連携して適切かつ迅速に処理を図らなければならず(第40条第1項),派遣元に任せきりにはできない。

出典:令和6年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問30(表記を一部改変)

用語解説:契約の形態(請負・準委任・労働者派遣)