平成28年度 春期に実施されたプロジェクトマネージャ試験
午前Ⅱ(2026年度からの科目A-2)の全24問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。
問2は,IPA が“問題誤りにつき受験者全員正解の措置済み”とし,解答例でも“誤りにより問題として成立しない”として正解を公表していないため収録していません。
この試験について:プロジェクトマネージャ試験について
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問1
情報システムの企画,開発,運用,保守作業に関わる国際標準の一つである SPA(Software Process Assessment)の説明として,適切なものはどれか。
ア ソフトウェアプロセスがどの程度の能力水準にあり,継続的に改善されているかを判定することを目的としている。 正解
イ ソフトウェアライフサイクルを合意プロセス,テクニカルプロセス,運用・サービスプロセスなどのプロセス群に分け,作業内容を定めている。
ウ 品質保証に関する要求項目を体系的に規定した国際規格の一部である。
エ プロジェクトマネジメントの知識体系と応用のためのガイドである。
正解 ア
解説
SPA(Software Process Assessment)は,組織のソフトウェアプロセスを診断して,その能力水準がどの段階にあるか,継続的に改善されているかを判定する枠組みで,ISO/IEC 15504(JIS X 0145 シリーズ)としてまとめられている。アが正しい。判定の結果を基にプロセスの改善を進めたり,委託先の能力を評価したりするのに使う。
イはソフトウェアライフサイクルのプロセスと作業内容を定める ISO/IEC 12207(JIS X 0160)や共通フレームの説明。ウは品質マネジメントシステムの要求事項を定める ISO 9000 シリーズの説明。エはプロジェクトマネジメントの知識体系をまとめた PMBOK ガイドの説明である。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問3
PMBOK によれば,多くのプロジェクトのライフサイクルに共通する特性はどれか。
ア プロジェクト完成時のコストに対してステークホルダが及ぼす影響の度合いは,プロジェクトの終盤が最も高い。
イ プロジェクトの不確実性の度合いは,プロジェクトの開始時が最も高い。 正解
ウ プロジェクト要員の必要人数は,プロジェクトの終了時が最も多い。
エ 変更やエラー訂正に掛かるコストは,プロジェクトの初期段階が最も高い。
正解 イ
解説
PMBOK ガイドは,多くのプロジェクトのライフサイクルに共通する特性として,リスクと不確実性はプロジェクトの開始時が最も高く,進むにつれて下がっていくことを挙げている。イが正しい。
アは逆で,ステークホルダが最終的なコストや成果物に影響を及ぼせる度合いは開始時が最も高く,終盤ほど低くなる。ウは誤りで,要員の人数やコストは開始時に少なく,作業が進む中盤に最も多くなり,終了に向けて減っていく。エも逆で,変更やエラー訂正に掛かるコストは,プロジェクトが進むほど高くなる。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)
用語解説:PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系)
問4
プロジェクトの開始を公式に承認する文書の作成を依頼された者の行動として,適切なものはどれか。
ア 契約書を作成し,プロジェクトマネージャに文書の承認を求めた。
イ プロジェクト憲章を作成し,プロジェクトスポンサに文書の承認を求めた。 正解
ウ プロジェクト作業範囲記述書を作成し,プロジェクトマネージャに文書の承認を求めた。
エ プロジェクトマネジメント計画書を作成し,プロジェクトスポンサに文書の承認を求めた。
正解 イ
解説
プロジェクトの開始を公式に承認する文書はプロジェクト憲章である。プロジェクト憲章はプロジェクトマネージャを任命してその権限を定める文書でもあるので,プロジェクトマネージャ自身ではなく,プロジェクトを許可し資金を出すプロジェクトスポンサに承認を求めるのが適切である。イが正しい。
アの契約書は組織間の取決めで,プロジェクトの開始を承認する文書ではない。ウのプロジェクト作業範囲記述書は,プロジェクト憲章を作るためのインプットの一つで,提供するプロダクトやビジネスニーズを記述するもの。エのプロジェクトマネジメント計画書は,憲章の承認後にプロジェクトマネージャが中心になって作る計画の文書である。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)
問5
プロジェクトマネジメントにおけるスコープコントロールの活動はどれか。
ア 開発ツールの新機能の教育が必要と分かったので,開発ツールの教育期間を2日間延長した。
イ 要件定義完了時に再見積りをしたところ,当初見積もった開発費用を超過することが判明したので,追加予算を確保した。
ウ 連携する計画であった外部システムのリリースが延期になったので,この外部システムとの連携に関わる作業は別プロジェクトで実施することにした。 正解
エ 割り当てたテスト担当者が期待した成果を出せなかったので,経験豊富なテスト担当者に交代した。
正解 ウ
解説
スコープコントロールは,プロジェクトのスコープの状況を監視し,スコープ・ベースラインへの変更を管理するプロセスである。連携先の外部システムのリリース延期を受けて,その連携作業をこのプロジェクトのスコープから外し別プロジェクトで行うと決めるウは,スコープを変更して管理する活動に当たる。
アの教育期間の延長はスケジュールの管理,イの追加予算の確保はコストの管理,エのテスト担当者の交代はプロジェクトチームのマネジメント(人的資源)の活動で,いずれもプロジェクトのスコープそのものは変えていない。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)
問6
プロジェクトマネジメントで使用する責任分担表(RAM)の一つである,RACI チャートで示す4種類の役割及び責任の組合せのうち,適切なものはどれか。
ア 実行責任,情報提供,説明責任,相談対応 正解
イ 実行責任,情報提供,説明責任,リスク管理
ウ 実行責任,情報提供,相談対応,リスク管理
エ 実行責任,説明責任,相談対応,リスク管理
正解 ア
解説
RACI チャートは,作業ごとに誰がどの役割を担うかを表す責任分担マトリックスで,Responsible(実行責任),Accountable(説明責任),Consulted(相談対応),Informed(情報提供)の頭文字から名付けられている。四つがそろったアが正しい。
Accountable は作業の結果に最終的な責任を負う人で,一つの作業につき1人に絞るのが原則である。イ・ウ・エに含まれる“リスク管理”は RACI の役割ではなく,プロジェクトマネジメントで扱う対象の一つである。
責任分担マトリックス(RACI)
作業と人の表に,R(実行責任:作業をする),A(説明責任:最終的に責任を負う,1つの作業に1人),C(協議先:相談を受ける),I(報告先:結果を知らされる)を書き込む。
作業
PM
設計者
開発者
顧客
要件定義
A
R
I
C
設計
A
R
C
I
製造
A
C
R
I
R:実行責任 A:説明責任 C:協議先 I:報告先
役割と責任を作業ごとに明らかにする
A は1つの作業に1人だけ
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)
問7
PMBOK によれば,アクティビティの所要期間を見積もる際の資源カレンダーの用途として,適切なものはどれか。
ア アクティビティが必要とする資源の種類と量を特定する。
イ アクティビティが必要とする資源を区分と類型別に階層表示し,必要な資源を明確にする。
ウ アクティビティが必要とする資源を利用できる作業日及びシフトを取得する。 正解
エ 過去のプロジェクトにおいて類似のアクティビティが必要とした資源の種類と量を取得する。
正解 ウ
解説
PMBOK ガイドの資源カレンダーは,要員や設備などの資源が,いつ,どの作業日やシフトで利用できるかを示すものである。アクティビティの所要期間を見積もるときは,必要な資源がいつどれだけ使えるかによって期間が変わるので,資源カレンダーから利用できる作業日やシフトを取得する。ウが正しい。
アのアクティビティに必要な資源の種類と量はアクティビティ資源要求事項,イの資源を区分と類型別に階層で表すのは資源ブレークダウン・ストラクチャーで,いずれもアクティビティ資源見積りのアウトプットである。エの過去の類似アクティビティの実績は,組織のプロセス資産に含まれる情報である。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)
用語解説:PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系)
問8
プロジェクトの進捗管理を EVM(Earned Value Management)で行っている。コストが超過せず,納期にも遅れないと予測されるプロジェクトの状況を表しているのはどれか。ここで,それぞれのプロジェクトの今後の開発生産性は現在までと変わらないものとする。
正解 ウ
解説
EVM では,出来高(EV)と実コスト(AC)を比べるとコストの状況が,EV と計画値(PV)を比べるとスケジュールの状況が分かる。今後の生産性が変わらないとき,コストが超過しないのは EV が AC 以上(CPI≧1),納期に遅れないのは EV が PV 以上(SPI≧1)の場合である。現在の時点で EV が最も上にあり,PV,AC の順に並ぶウが両方を満たす。
アは EV が PV より上なので予定より進んでいるが,AC が EV を上回りコストが超過する。イは AC が最も高く EV が最も低いので,コスト超過でスケジュールも遅れている。エは AC が EV より低くコストは収まるが,EV が PV を下回りスケジュールが遅れている。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)
用語解説:EVM(アーンドバリューマネジメント)
問9
プロジェクト管理で使用する分析技法のうち,傾向分析の説明はどれか。
ア 個々の選択肢とそれぞれを選択した場合に想定されるシナリオの関係を図に表し,それぞれのシナリオにおける期待値を計算して,最善の策を選択する。
イ 個々のリスクが現実のものとなったときの,プロジェクトの目標に与える影響の度合いを調べる。
ウ 時間の経過に伴うプロジェクトのパフォーマンスの変動を分析する。 正解
エ 発生した障害とその要因の関係を魚の骨のような図にして分析する。
正解 ウ
解説
傾向分析は,時間の経過に伴ってプロジェクトのパフォーマンスがどう変わってきたかを分析する技法。ある時点の値だけでなく変化の向きを見ることで,このままいくとどうなるかを予測できる。
アはディシジョンツリー分析,イは個々のリスクの影響度を調べる定性的リスク分析,エは特性要因図(フィッシュボーン図)による分析である。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)
問10
社員が週に40時間働くソフトウェア会社がある。この会社が,1人で開発すると440人時のプログラム開発を引き受けた。開発コストを次の条件で見積もるとき,10人のチームで開発する場合のコストは,1人で開発する場合のコストの約何倍になるか。
〔条件〕
(1) 10人のチームでは,コミュニケーションをとるための工数が余分に発生する。 (2) コミュニケーションはチームのメンバが総当たりでとり,その工数は2人1組の組合せごとに週当たり4人時(1人につき2時間)である。 (3) 社員の週当たりコストは社員間で差がない。 (4) (1)〜(3)以外の条件は無視できる。
正解 ウ
解説
10人の2人1組の組合せは 10×9÷2=45組で,コミュニケーションの工数は週に 45×4=180人時。10人の労働時間は週 400人時なので,開発に使えるのは 400−180=220人時になる。440人時の開発には 440÷220=2週かかり,その間のコストは 10人×2週×40時間=800人時分。
1人で開発する場合は440人時分なので,800÷440≒1.82 となり,約1.8倍。ウが正しい。総当たりのコミュニケーションは人数のおよそ2乗に比例して増えるので,人数を増やすほどコミュニケーションに取られる時間の割合が大きくなり,1人当たりの生産性は下がる。
人数とコミュニケーションの経路
総当たりの組合せは n(n−1)÷2。10 人なら 45 組で,1組あたり週 4 人時なら週 180 人時がコミュニケーションに使われ,開発に使えるのは週 400−180=220 人時。440 人時の開発に 2 週かかり,コストは 10 人×2 週×40 時間=800 人時分。1人なら 440 人時分なので約 1.8 倍。16 人なら組合せは 120。
4人:6本
10人:45本
10人:45組×4人時=週180人時 → 開発に使えるのは週220人時
2週 × 400人時 = 800人時 → 1人(440人時)の約 1.8 倍
人数が増えると,組合せはおよそ人数の2乗で増える
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)
問11
COCOMO にはシステム開発の工数を見積もる式の一つに
MM=3.0×(KDSI)1.12 がある。開発規模(KDSI)と開発生産性(KDSI/MM)の関係を表したグラフはどれか。ここで,MM は開発工数(人月),KDSI は開発規模(注釈を除いたソースコードの行数,単位は k 行)である。
正解 エ
解説
開発生産性は,開発規模÷開発工数=開発規模÷(3.0×開発規模1.12 )=(1/3.0)×開発規模−0.12 となる。指数が負なので,開発規模が大きくなるほど生産性は下がる。さらに指数の絶対値が 0.12 と小さいため,下がり方は最初が急で,その後は緩やかになって横軸に近づいていく。この形はエである。
指数が1を超える(1.12)ことは,規模が大きくなると工数がそれ以上の割合で増える,つまり大規模ほど調整や管理の負担で効率が落ちることを表している。アとイは生産性が上がるグラフで逆。ウは下がり方が次第に急になっており,曲線の曲がり方が逆である。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)
問12
プロジェクトにどのツールを導入するかを,EMV(期待金額価値)を用いて検討する。デシジョンツリーが次の図のとき,ツール A を導入する EMV がツール B を導入する EMV を上回るのは,X が幾らよりも大きい場合か。
正解 ウ
解説
EMV は,機会ノードの先の効果額を確率で重み付けして足し,導入費用を引いて求める。ツール B は 120×0.6+60×0.4−60=72+24−60=36万円。ツール A は X×0.6+90×0.4−120=0.6X−84万円である。
ツール A の EMV が B を上回る条件は 0.6X−84>36 なので,0.6X>120,X>200。X が200万円より大きい場合で,ウが正しい。X=200 のときは両方とも36万円で等しい。費用を引き忘れると,A が 0.6X+36,B が 96 となり X>100 と誤るので,決定ノードの枝の費用も必ず差し引く。
デシジョンツリー:ツール A と B の EMV
ツール A は 0.6X+0.4×90−120=0.6X−84,ツール B は 0.6×120+0.4×60−60=36。A が B を上回るのは 0.6X−84>36,つまり X>200 のとき。
ツール A(費用120)
60%:効果大
X
40%:効果小
90
EMV 0.6X−84
ツール B(費用60)
60%:効果大
120
40%:効果小
60
EMV 36
0.6X − 84 > 36 → X > 200
決定ノードの枝の費用も必ず差し引く
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)
問13
プロジェクトのリスクを,デルファイ法を利用して抽出しているものはどれか。
ア ステークホルダや経験豊富なプロジェクトマネージャといった専門家にインタビューし,回答を収集してリスクとしてまとめる。
イ 複数のお互いに関係がないステークホルダやプロジェクトマネージャにアンケートを行い,その結果を要約する。さらに,要約結果を用いてアンケートを行い,結果を要約することを繰り返してリスクをまとめる。 正解
ウ プロジェクトチームのメンバに PMO のメンバやステークホルダを複数名加え,一堂に会して会議をし,リスクに対する意見を出し合い,進行役がリスクとしてまとめる。
エ プロジェクトを強み,弱み,好機,脅威のそれぞれの観点及びその組合せで分析し,リスクをまとめる。
正解 イ
解説
デルファイ法は,複数の専門家に匿名でアンケートを行い,集計した結果を示してもう一度回答してもらう,ということを繰り返して意見を収束させる手法である。互いの顔を合わせないので,声の大きい人や上位者の意見に引きずられにくい。アンケートと要約を繰り返すイが正しい。
アの専門家へのインタビューは,繰り返しの集約とフィードバックを伴わない。ウは関係者が一堂に会して意見を出し合うブレーンストーミング。エは強み・弱み・好機・脅威の観点で分析する SWOT 分析で,いずれもリスクの特定に使う手法だがデルファイ法ではない。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)
用語解説:デルファイ法と問題分析の技法
問14
PMBOK によれば,プロジェクトリスクマネジメントにおける定性的リスク分析で実施することのうち,適切なものはどれか。
ア 感度分析によって,プロジェクトに与える影響が大きいリスクを明確にする。
イ 定量的リスク分析の結果に基づいて,リスクの優先順位付けをする。
ウ リスク対応計画に基づいて,発生するおそれがあるリスクを具体的に特定する。
エ リスクの発生確率と影響度を査定した結果に基づいて,リスク登録簿を更新する。 正解
正解 エ
解説
PMBOK ガイドの定性的リスク分析は,特定したリスクの発生確率と影響度を査定し,その組合せからリスクの優先順位を付けるプロセスである。査定の結果はリスク登録簿に反映して更新する。エが正しい。
アの感度分析は,リスクが目標に与える影響を数値で求める定量的リスク分析の技法。イは順序が逆で,定性的リスク分析で優先順位を付けた後に,重要なリスクについて定量的リスク分析を行う。ウの発生するおそれのあるリスクを具体的に特定するのはリスク特定のプロセスで,リスク対応計画より前に行う。
発生確率・影響度マトリックス
定性的リスク分析では,リスクごとに発生確率と影響度を評価し,マトリックスに置いて優先順位を付ける。右上(確率も影響も大きい)ほど優先して対応する。
発生確率
高
低
影響度(小 → 大)
濃い所ほど
優先して対応
数値で計算するのは定量的リスク分析
確率も影響も大きい右上を優先
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)
用語解説:PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系)
問15
PMBOK のリスクマネジメントにおけるリスク対応戦略の適用に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア 強化は,マイナスのリスクに対して使用される戦略である。
イ 共有は,プラスのリスクとマイナスのリスクのどちらにも使用される戦略である。
ウ 受容は,プラスのリスクとマイナスのリスクのどちらにも使用される戦略である。 正解
エ 転嫁は,プラスのリスクに対して使用される戦略である。
正解 ウ
解説
PMBOK ガイド第5版は,マイナスのリスク(脅威)への戦略として回避・転嫁・軽減・受容の四つ,プラスのリスク(好機)への戦略として活用・共有・強化・受容の四つを挙げている。受容はどちらにも含まれ,リスクを認めたうえで積極的な対応をとらない戦略である。ウが正しい。
アの強化は,好機の発生確率や影響を高めるプラスのリスクへの戦略。イの共有は,好機を最もうまく生かせる第三者と組むプラスのリスクへの戦略。エの転嫁は,脅威の影響と責任を保険や契約などで第三者に移すマイナスのリスクへの戦略である。
リスクへの対応の戦略
マイナスのリスク(脅威)には,回避(原因を取り除く・計画を変える),転嫁(保険や契約で第三者に移す),軽減(確率や影響を下げる),受容(何もしないか予備を持つ)。プラスのリスク(好機)には,活用(確実に起こす),共有(能力のある第三者と組む),強化(確率や影響を上げる),受容。
脅威(マイナス)
好機(プラス)
なくす/確実に
回避
活用
他者へ
転嫁(保険など)
共有(組む)
小さく/大きく
軽減
強化
何もしない
受容
受容
保険を掛けるのは転嫁,計画を変えて避けるのは回避
脅威は回避・転嫁・軽減・受容,好機は活用・共有・強化・受容
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)
用語解説:PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系)
問16
JIS X 0160 において,“開発者は,ソフトウェア結合のために暫定的なテスト要求事項及びスケジュールを定義し,文書化する。”というタスクを実施するプロセスはどれか。
ア ソフトウェア結合
イ ソフトウェア詳細設計
ウ ソフトウェア適格性確認テスト
エ ソフトウェア方式設計 正解
正解 エ
解説
JIS X 0160 のソフトウェア方式設計(アーキテクチャ設計)のプロセスでは,ソフトウェアの構造と構成要素を決めるとともに,それらを組み合わせるソフトウェア結合のための暫定的なテスト要求事項とスケジュールを定義し文書化するタスクがある。どの構成要素をどう組み合わせて試験するかは,構造を決める段階で見通しておく必要があるためである。エが正しい。
アのソフトウェア結合は,その計画に沿って構成要素を実際に結合しテストするプロセス。イのソフトウェア詳細設計は,構成要素ごとの詳細な設計と,ユニットのテスト要求事項を定めるプロセス。ウのソフトウェア適格性確認テストは,ソフトウェア要求事項を満たしているかを確認するプロセスである。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)
用語解説:JIS X 0160 と共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス)
問17
フェールセーフの考えに基づいて設計したものはどれか。
ア 乾電池のプラスとマイナスを逆にすると,乾電池が装塡できないようにする。
イ 交通管制システムが故障したときには,信号機に赤色が点灯するようにする。 正解
ウ ネットワークカードのコントローラを二重化しておき,故障したコントローラの方を切り離しても運用できるようにする。
エ ハードディスクに RAID1 を採用して,MTBF で示される信頼性が向上するようにする。
正解 イ
解説
フェールセーフは,故障や誤りが起きたときに,システムを安全な側の状態に倒して被害を防ぐ設計の考え方である。交通管制システムが故障したときに信号機をすべて赤にして車を止めるイがこれに当たる。
アの,電池を逆向きには装塡できないようにして誤った使い方そのものを防ぐのはフールプルーフ。ウの,二重化したコントローラの故障した方を切り離して運用を続けるのと,エの RAID1 で信頼性を高めるのは,故障しても機能を維持するフォールトトレラントの考え方である。
信頼性設計の考え方の見分け方
フォールトトレランスは故障しても機能を保つ(二重化など)。フェールソフトは故障部分を切り離し,機能を落として動かし続ける(フォールバック=縮退運転)。フェールセーフは故障したら安全な側に倒す(信号を赤に)。フールプルーフは人が誤った操作をしても危険にならない(インタロック,逆向きの電池が入らない)。
考え方
きっかけ
どうするか
例
フォールトトレランス
故障
機能を保つ
二重化・RAID1
フェールソフト
故障
落として続ける
縮退運転
フェールセーフ
故障
安全側に倒す
信号を全部赤
フールプルーフ
誤操作
危険にしない
インタロック
フォールバック(縮退運転)は,故障部分を切り離して残りで続けること
何が起きたとき(故障か誤操作か)に,どうするか(保つ・落とす・止める)で見分ける
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)
用語解説:稼働率(MTBF・MTTR) RAID(ディスクアレイ) 信頼性設計(フェールセーフ・フェールソフト・フールプルーフ)
問18
CMMI の目的として,最も適切なものはどれか。
ア 各種のソフトウェア設計・開発技法を使って開発作業を自動化し,ソフトウェア開発の生産性の向上を図る。
イ 共通の物差しとして用いることによって,国内におけるシステム及びソフトウェア開発とその取引の明確化を可能にする。
ウ 組織がプロセスを改善することに役立つ,ベストプラクティスの適用に対する手引を提供する。 正解
エ 特定の購入者と製作者の間で授受されるソフトウェア製品の品質保証を行い,顧客満足度の向上を図る。
正解 ウ
解説
CMMI(能力成熟度モデル統合)は,組織がプロセスを改善するためのベストプラクティスを体系的にまとめ,その適用の手引を提供するモデルである。組織のプロセスの成熟度を段階で示し,改善の進め方の指針とする。ウが正しい。
アは開発作業を自動化する CASE ツールなどの説明。イは国内のシステム開発と取引の共通の物差しとして使う共通フレームの説明。エは特定の購入者と製作者の間のソフトウェア製品の品質保証を扱うもので,組織のプロセス改善の手引という CMMI の目的とは異なる。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)
問19
XP(eXtreme Programming)のプラクティスの一つに取り入れられているものはどれか。
ア 構造化プログラミング
イ コンポーネント指向プログラミング
ウ ビジュアルプログラミング
エ ペアプログラミング 正解
正解 エ
解説
XP(エクストリームプログラミング)は,短い反復で開発を進めるアジャイル開発手法の一つで,プラクティスとしてペアプログラミング,テスト駆動開発,リファクタリング,継続的インテグレーション,コードの共同所有などを挙げる。2人1組で1台のコンピュータを使い,一方がコードを書き他方がレビューしながら進めるペアプログラミングはその代表で,エが正しい。
アの構造化プログラミングは,順次・選択・繰返しの制御構造でプログラムを組み立てる考え方。イのコンポーネント指向プログラミングは,部品を組み合わせてソフトウェアを作る考え方。ウのビジュアルプログラミングは,図形を操作してプログラムを作る方式で,いずれも XP のプラクティスではない。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)
用語解説:アジャイル開発(スクラム・XP)
問20
ITIL で定義されるサービスのライフサイクルにおける,サービストランジション段階の説明はどれか。
ア 規定された要件と制約に沿って,サービスを運用に移行し,確実に稼働させることである。 正解
イ サービスの効率,有効性,費用対効果の観点で運用状況を継続的に測定し,改善していくことである。
ウ サービスの内容を具体的に決めることである。
エ 戦略的資産として,どのようにサービスマネジメントを設計,開発,導入するかについての手引を提供することである。
正解 ア
解説
ITIL のサービスライフサイクルは,サービスストラテジ,サービスデザイン,サービストランジション,サービスオペレーション,継続的サービス改善の五つの段階からなる。サービストランジションは,設計されたサービスを,規定された要件と制約に沿って構築・テストし,運用に移行して確実に稼働させる段階である。アが正しい。
イの運用状況を継続的に測定して改善するのは継続的サービス改善。ウのサービスの内容を具体的に決めるのはサービスデザイン。エの,戦略的資産としてサービスマネジメントをどう設計,開発,導入するかの手引を提供するのはサービスストラテジの説明である。
ITIL のサービスライフサイクル(v3・2011 edition)
サービスストラテジでどんなサービスを提供するかの戦略を決め,サービスデザインで設計し,サービストランジションで運用に移し,サービスオペレーションで日々運用する。継続的サービス改善は,ほかの4段階を通してサービスを測り,改善し続ける。
ストラテジ
戦略を決める
デザイン
設計する
トランジション
運用に移す
オペレーション
日々の運用
継続的サービス改善
全ての段階を測り,改善し続ける(7ステップの改善プロセス)
ITIL 4 ではプロセスを「プラクティス」と呼ぶ
段階の順番(ストラテジ→デザイン→トランジション→オペレーション)を問う問題が出ている
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)
用語解説:ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)
問21
情報システムの設計のうち,フェールソフトの考え方を適用した例はどれか。
ア UPS を設置することによって,停電時に手順どおりにシステムを停止できるようにし,データを保全する。
イ 制御プログラムの障害時に,システムの暴走を避け,安全に運転を停止できるようにする。
ウ ハードウェアの障害時に,パフォーマンスは低下するが,構成を縮小して運転を続けられるようにする。 正解
エ 利用者の誤操作や誤入力を未然に防ぐことによって,システムの誤動作を防止できるようにする。
正解 ウ
解説
フェールソフトは,故障が起きたときにシステムを止めるのではなく,機能や性能を落としてでも動き続けさせる(縮退運転する)考え方。ハードウェア障害時に構成を縮小して運転を続けるウがこれに当たる。
アとイは,障害時に安全な側へ倒して停止させるフェールセーフ。エは利用者の誤操作を未然に防ぐフールプルーフの例。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)
用語解説:信頼性設計(フェールセーフ・フェールソフト・フールプルーフ)
問22
IT 投資効果の評価に用いられる手法のうち,ROI によるものはどれか。
ア 一定期間のキャッシュフローを,将来発生するものは割引率を設定して現在価値に換算した上で,キャッシュフローの合計値を求め,その大小で評価する。
イ キャッシュフロー上で初年度の投資によるキャッシュアウトフローが何年後に回収できるかによって評価する。
ウ 金銭価値の時間的変化を考慮して,現在価値に換算されたキャッシュフローの一定期間の合計値がゼロとなるような割引率を求め,その大小で評価する。
エ 投資額を分母に,投資による収益を分子とした比率を算出し,その大小で評価する。 正解
正解 エ
解説
ROI(Return On Investment:投資利益率)は,投資によって得られた収益(利益)を投資額で割った比率で,その大小で投資の効率を評価する。エが正しい。
アは将来のキャッシュフローを割引率で現在価値に換算して合計する NPV(正味現在価値)法。イは初期投資を何年で回収できるかで評価する回収期間法(ペイバック法)。ウは現在価値に換算したキャッシュフローの合計がゼロになる割引率を求める IRR(内部収益率)法である。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)
用語解説:投資評価(NPV・IRR・ROI)
問23
労働基準法及び労働契約法が定める,就業規則に係る使用者の義務の記述のうち,適切なものはどれか。
ア 就業規則の基準に達しない労働条件を労働契約で定める場合には,使用者が労働者から個別に合意を得ることが義務付けられている。
イ 使用者は,就業規則を労働者に周知するために,見やすい場所に掲示したり,書面を交付したりするなどの措置を行うことが義務付けられている。 正解
ウ 使用する労働者の数が常時10名以上の使用者は,就業規則を作成する義務はあるが,就業規則を行政官庁へ届け出ることは義務付けられていない。
エ 労働組合がない事業場において,使用者が就業規則を作成する場合,労働者の意見を聴くことは義務付けられていない。
正解 イ
解説
労働基準法第106条は,使用者に,就業規則を常時各作業場の見やすい場所に掲示し,又は備え付けること,書面を交付することなどの方法で労働者に周知する義務を課している。イが正しい。
アは誤りで,就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,個別に合意を得てもその部分が無効になり,就業規則の基準による(労働契約法第12条)。ウは誤りで,常時10人以上の労働者を使用する使用者は,就業規則を作成して行政官庁に届け出る義務がある(労働基準法第89条)。エは誤りで,労働組合がない場合でも,労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない(同法第90条)。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)
問24
シャドー IT に該当するものはどれか。
ア IT 製品や IT を活用して地球環境への負荷を低減する取組み
イ IT 部門の公式な許可を得ずに,従業員又は部門が業務に利用しているデバイスやクラウドサービス 正解
ウ 攻撃対象者のディスプレイやキータイプを物陰から盗み見て,情報を盗み出すこと
エ ネットワーク上のコンピュータに侵入する準備として,攻撃対象の弱点を探るために個人や組織などの情報を収集すること
正解 イ
解説
シャドー IT は,企業の IT 部門など情報システムを管理する部署の正式な許可を得ずに,従業員や部門が業務に使っている私物のデバイスやクラウドサービスなどを指す。管理されていないため,情報漏えいなどのリスクの原因になる。イが正しい。
アは IT を活用して環境負荷を減らすグリーン IT。ウはディスプレイやキー入力を後ろから盗み見るショルダーハッキング。エは侵入の準備として攻撃対象の情報を集めるフットプリンティングの説明である。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)
問25
DNSSEC の機能はどれか。
ア DNS キャッシュサーバの設定によって再帰的な問合せの受付範囲が最大になるようにする。
イ DNS サーバから受け取るリソースレコードに対するディジタル署名を利用して,リソースレコードの送信者の正当性とデータの完全性を検証する。 正解
ウ ISP などのセカンダリ DNS サーバを利用して DNS コンテンツサーバを二重化することによって,名前解決の可用性を高める。
エ 共通鍵暗号技術とハッシュ関数を利用したセキュアな方法によって,DNS 更新要求が許可されているエンドポイントを特定して認証する。
正解 イ
解説
DNSSEC は,DNS の応答に含まれるリソースレコードにディジタル署名を付け,受け取った側がその署名を検証することで,応答が正当な権威 DNS サーバから送られたものであり,途中で改ざんされていないことを確かめる仕組みである。DNS キャッシュポイズニングへの対策になる。イが正しい。
アのように再帰的な問合せを受け付ける範囲を広げると,オープンリゾルバとなって DNS リフレクション攻撃に悪用されるおそれがあり,逆効果である。ウは権威 DNS サーバの冗長化による可用性の向上。エは共通鍵とハッシュ関数を使って DNS の更新要求などの送信者を認証する TSIG の説明である。
出典:平成28年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)
用語解説:ディジタル署名(デジタル署名) DNS のセキュリティ(DNSSEC・キャッシュポイズニング) ハッシュ関数 共通鍵暗号と公開鍵暗号
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