令和3年度 秋期に実施された高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通
午前Ⅰ(2026年度からの科目A-1)の全30問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。
この試験について:科目A-1(午前Ⅰ・高度試験 共通)について
問1
非線形方程式 f(x)=0 の近似解法であり,次の手順によって解を求めるものはどれか。ここで,y=f(x) には接線が存在するものとし,(3)で x0 と新たな x0 の差の絶対値がある値以下になった時点で繰返しを終了する。
〔手順〕
(1) 解の近くの適当な x 軸の値を定め,x0 とする。 (2) 曲線 y=f(x) の,点 (x0 ,f(x0 )) における接線を求める。 (3) 求めた接線と,x 軸の交点を新たな x0 とし,手順(2)に戻る。
ア オイラー法
イ ガウスの消去法
ウ シンプソン法
エ ニュートン法 正解
正解 エ
解説
手順は,現在の近似値 x0 における曲線の接線を引き,その接線と x 軸の交点を次の近似値とする操作を繰り返している。式で表すと x0 −f(x0 )/f′(x0 ) を新たな x0 とするもので,ニュートン法(ニュートン・ラフソン法)である。エが正しい。
アのオイラー法は微分方程式を刻み幅ごとに近似して解く方法,イのガウスの消去法は連立一次方程式を前進消去と後退代入で解く方法,ウのシンプソン法は区間を放物線で近似して定積分の値を求める方法である。
ニュートン法:接線と x 軸の交点を次の近似値に
近似値 x0 での曲線 y=f(x) の接線を引き,その接線が x 軸と交わる点を次の近似値 x1 にする。これを繰り返すと解に近づく。式では x1=x0−f(x0)÷f′(x0)。
x0
x1
x2
解
y=f(x)
x1 = x0 − f(x0) ÷ f′(x0)
接線を引いて x 軸との交点へ。繰り返すと解に近づく
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問1(表記を一部改変)
問2
図のように 16 ビットのデータを 4×4 の正方形状に並べ,行と列にパリティビットを付加することによって何ビットまでの誤りを訂正できるか。ここで,図の網掛け部分はパリティビットを表す。
正解 ア
解説
行と列にパリティビットを付けた水平垂直パリティでは,1ビットの誤りが起きると,その誤りを含む行のパリティと列のパリティの両方が合わなくなる。合わない行と列の交点が誤りの位置なので,特定して反転すれば訂正できる。訂正できるのは1ビットまでで,アが正しい。
2ビットの誤りが同じ行や同じ列に並ぶと,その行(列)のパリティは偶数個の反転で元に戻ってしまい,誤りがあることすら分からなくなる。離れた位置の2ビットなら合わない行と列が2つずつ出るが,どの組合せが誤りかを決められないので,やはり訂正はできない。
水平垂直パリティで1ビットの誤りを見つける
4×4 のデータに行ごと・列ごとのパリティ(1の数を偶数にするビット)を付ける。1ビットが反転すると,その行のパリティと列のパリティの両方が合わなくなるので,合わない行と列の交点が誤りの位置と分かり,反転して訂正できる。2ビットの誤りは,位置を決められないので訂正できない。
1
0
0
0
1
0
1
0
0
0
← 合わない
0
0
1
0
1
1
1
0
1
1
0
0
0
1
↑ 合わない
列のパリティ
パリティ
合わない行と合わない列の交わるところが誤り。訂正できるのは1ビットまで
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問2(表記を一部改変)
問3
バブルソートの説明として,適切なものはどれか。
ア ある間隔おきに取り出した要素から成る部分列をそれぞれ整列し,更に間隔を詰めて同様の操作を行い,間隔が1になるまでこれを繰り返す。
イ 中間的な基準値を決めて,それよりも大きな値を集めた区分と,小さな値を集めた区分に要素を振り分ける。次に,それぞれの区分の中で同様の操作を繰り返す。
ウ 隣り合う要素を比較して,大小の順が逆であれば,それらの要素を入れ替えるという操作を繰り返す。 正解
エ 未整列の部分を順序木にし,そこから最小値を取り出して整列済の部分に移す。この操作を繰り返して,未整列の部分を縮めていく。
正解 ウ
解説
バブルソートは,隣り合う要素を比較して大小の順が逆なら入れ替える操作を繰り返す整列法である。1回通すごとに最大(又は最小)の要素が端に確定していく。ウが適切である。
アは間隔を空けた部分列ごとに整列し,間隔を詰めていくシェルソート。イは基準値より大きい区分と小さい区分に振り分けることを繰り返すクイックソート。エは未整列の部分を順序木(ヒープ)にして最小値を取り出していくヒープソートの説明である。
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問3(表記を一部改変)
問4
演算レジスタが 16 ビットの CPU で符号付き 16 ビット整数 x1,x2 を 16 ビット符号付き加算(x1+x2)するときに,全ての x1,x2 の組合せにおいて加算結果がオーバフローしないものはどれか。ここで,|x| は x の絶対値を表し,負数は2の補数で表すものとする。
ア |x1|+|x2|≦32,768 の場合
イ |x1| 及び |x2| がともに 32,767 未満の場合
ウ x1×x2>0 の場合
エ x1 と x2 の符号が異なる場合 正解
正解 エ
解説
16 ビットの2の補数で表せる範囲は −32,768〜32,767。x1 と x2 の符号が異なる場合,和の絶対値は |x1| と |x2| の大きいほうを超えないので,結果は必ず表現範囲に収まり,オーバフローしない。エが正しい。
アは x1=x2=16,384 のとき和が 32,768 になり,正の最大値 32,767 を超える。イは x1=x2=32,766 のとき和が 65,532 になる。ウの x1×x2>0 は同符号の場合で,例えば 20,000+20,000 がオーバフローする。
16ビットの2の補数の範囲とオーバフロー
16ビットの2の補数で表せるのは −32,768 〜 32,767。符号が異なる2つを足すと,和は2つの間に入るので必ず範囲内に収まる。同じ符号どうしだと,例えば 20,000+20,000=40,000 のように範囲を超えることがある。
−32,768
32,767
0
表せる範囲
符号が異なる:30,000 + (−20,000) = 10,000 → 範囲内
同じ符号:20,000 + 20,000 = 40,000 → 32,767 を超える
ア(|x1|+|x2|≦32,768)も 16,384+16,384=32,768 であふれる
符号が異なる数の和は,2つの数の間に入るのではみ出さない
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問4(表記を一部改変)
問5
システムが使用する物理サーバの処理能力を,負荷状況に応じて調整する方法としてのスケールインの説明はどれか。
ア システムを構成する物理サーバの台数を増やすことによって,システムとしての処理能力を向上する。
イ システムを構成する物理サーバの台数を減らすことによって,システムとしてのリソースを最適化し,無駄なコストを削減する。 正解
ウ 高い処理能力の CPU への交換やメモリの追加などによって,システムとしての処理能力を向上する。
エ 低い処理能力の CPU への交換やメモリの削減などによって,システムとしてのリソースを最適化し,無駄なコストを削減する。
正解 イ
解説
スケールインは,システムを構成するサーバの台数を減らして処理能力を調整する方法で,負荷が下がったときに余分なリソースを減らし,コストを抑える。イが該当する。
アのサーバの台数を増やして処理能力を上げるのはスケールアウト。ウの CPU やメモリを高性能にして1台当たりの処理能力を上げるのはスケールアップ。エの CPU やメモリを低性能なものにして1台当たりの処理能力を下げるのはスケールダウンである。
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問5(表記を一部改変)
問6
ページング方式の仮想記憶において,ページ置換えの発生頻度が高くなり,システムの処理能力が急激に低下することがある。このような現象を何と呼ぶか。
ア スラッシング 正解
イ スワップアウト
ウ フラグメンテーション
エ ページフォールト
正解 ア
解説
仮想記憶で実装している主記憶が不足すると,ページの読込みと追出し(ページイン・ページアウト)が頻発し,CPU がその処理に追われて本来の処理がほとんど進まなくなる。この現象をスラッシングといい,アが正しい。
イのスワップアウトは,主記憶上のプロセスやページを補助記憶に退避させる操作そのもの。ウのフラグメンテーションは,記憶領域が細切れの空き領域に分断されて有効に使えなくなる現象。エのページフォールトは,参照したページが主記憶上にないときに発生する割込みである。
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問6(表記を一部改変)
用語解説:仮想記憶(ページング)
問7
1桁の2進数 A,B を加算し,X に桁上がり,Y に桁上げなしの和(和の1桁目)が得られる論理回路はどれか。
正解 ア
解説
1桁どうしの加算では,桁上がり X は A と B が両方1のときだけ1になるので論理積,和の1桁目 Y は A と B が異なるときだけ1になるので排他的論理和で表せる。X に AND 素子,Y に排他的論理和素子を使っているアが正しい。この回路を半加算器という。
イは X に OR を使っているので,A と B の一方だけが 1 のときにも桁上がりが 1 になる。ウは X が OR,Y が AND,エは Y が OR で,いずれも和の1桁目が正しく求められない。
半加算器の真理値表
1桁の A+B は,0+0=00,0+1=01,1+0=01,1+1=10。桁上がり X は両方1のときだけ1なので論理積,和の1桁目 Y は A と B が違うときだけ1なので排他的論理和。
A
B
A+B
X 桁上がり
Y 和
0
0
00
0
0
0
1
01
0
1
1
0
01
0
1
1
1
10
1
0
X = A・B(AND),Y = A⊕B(XOR)
桁上がりは AND,和の1桁目は XOR
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問7(表記を一部改変)
問8
関係 R と関係 S に対して,関係 X を求める関係演算はどれか。
正解 エ
解説
関係 X は,R の3行(0001 a 100,0002 b 200,0003 d 300)と S の2行(0001 a 100,0002 a 200)を合わせ,重複する 0001 a 100 を1行にまとめた4行になっている。R と S の一方又は両方に含まれる行を集めた和(R∪S)で,エが正しい。
アの ID による結合なら,ID が一致する行どうしをつなげた列の多い関係になる。イの差(R−S)は R にあって S にない 0002 b 200 と 0003 d 300 の2行になる。ウの直積は R と S の行の全ての組合せで 3×2=6行になる。
関係演算:選択・射影・和・差
選択は条件に合う行を取り出し,射影は指定した列を取り出す。射影の結果は集合なので,重複する行は1つにまとめる(SQL では DISTINCT)。表 T の A と C への射影では (a1,c1) と (a2,c2) が重なり,3行になる。和 R∪S は両方の行を合わせて重複を1つに,差 R−S は R にあって S にない行。
表 T(A と C を射影)
ID
A
B
C
001
a1
b1
c1
002
a1
b1
c2
003
a1
b2
c1
004
a2
b1
c2
005
a2
b2
c2
射影の結果
A
C
a1
c1
a1
c2
a2
c2
(a1,c1) と
(a2,c2) が
重なるので
3行に
R
ID
A
B
0001
a
100
0002
b
200
0003
d
300
S
ID
A
B
0001
a
100
0002
a
200
和 R∪S
ID
A
B
0001
a
100
0002
a
200
0002
b
200
0003
d
300
差 R−S
ID
A
B
0002
b
200
0003
d
300
0001 a 100 は
S にもあるので除く
選択は行,射影は列。射影は重複を取り除く
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問8(表記を一部改変)
問9
データベースの障害回復処理に関する記述として,適切なものはどれか。
ア 異なるトランザクション処理プログラムが,同一データベースを同時更新することによって生じる論理的な矛盾を防ぐために,データのブロック化が必要となる。
イ システムが媒体障害以外のハードウェア障害によって停止した場合,チェックポイントの取得以前に終了したトランザクションについての回復作業は不要である。 正解
ウ データベースの媒体障害に対して,バックアップファイルをリストアした後,ログファイルの更新前情報を使用してデータの回復処理を行う。
エ トランザクション処理プログラムがデータベースの更新中に異常終了した場合には,ログファイルの更新後情報を使用してデータの回復処理を行う。
正解 イ
解説
システム障害(媒体障害以外)では,チェックポイントの時点で主記憶上の更新内容はディスクに書き出されている。チェックポイントの取得以前に終了したトランザクションの更新はデータベースに反映済みなので,回復作業は要らない。イが適切である。
アの同時更新による矛盾を防ぐのはブロック化ではなく排他制御(ロック)。ウの媒体障害では,バックアップをリストアした後にログの更新後情報を使ってロールフォワードする。エのトランザクションの異常終了では,ログの更新前情報を使ってロールバックし,更新前の状態に戻す。
障害の種類と回復に使うログ
トランザクション障害(実行中の異常終了)では,更新前ログを使ってロールバックし,トランザクション開始前の状態に戻す。システム障害では,チェックポイント以降にコミットしたものを更新後ログでロールフォワードし,未コミットのものを更新前ログでロールバックする。媒体障害では,バックアップから復元し,バックアップ以降にコミットしたものを更新後ログでロールフォワードする。
ロールバック
更新前ログ → 開始前に戻す
ロールフォワード
更新後ログ → 障害直前まで進める
トランザクション障害
異常終了したものを戻す
—
システム障害
未コミットを戻す
チェックポイント後のコミット
媒体障害
—
バックアップを復元してから
ロールバックは更新前ログで戻す,ロールフォワードは更新後ログで進める
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問9(表記を一部改変)
用語解説:障害回復(ロールバック・ロールフォワード)
問10
TCP/IP ネットワークにおける ARP の説明として,適切なものはどれか。
ア IP アドレスから MAC アドレスを得るプロトコルである。 正解
イ IP ネットワークにおける誤り制御のためのプロトコルである。
ウ ゲートウェイ間のホップ数によって経路を制御するプロトコルである。
エ 端末に対して動的に IP アドレスを割り当てるためのプロトコルである。
正解 ア
解説
ARP(Address Resolution Protocol)は,通信相手の IP アドレスは分かっているが MAC アドレスが分からないときに,同じネットワーク上へ問合せをブロードキャストして MAC アドレスを得るプロトコル。アが正しい。
イの誤り制御や到達不能の通知を行うのは ICMP。ウのホップ数で経路を制御するのは RIP などのルーティングプロトコル。エの動的な IP アドレスの割当ては DHCP である。
ARP で MAC アドレスを調べる
PC A が 192.168.1.20 の MAC アドレスを知りたいとき,「この IP アドレスの人は MAC アドレスを教えて」という ARP 要求をブロードキャストで LAN 全体に送る。その IP アドレスをもつ機器だけが ARP 応答で自分の MAC アドレスを返し,PC A は ARP キャッシュに覚える。宛先が別のネットワークにあるときは,デフォルトゲートウェイ(ルータ)の MAC アドレスを調べてルータに渡す。
PC A
192.168.1.10
PC B
192.168.1.15
サーバ C
192.168.1.20
ルータ
192.168.1.1
① ARP 要求(ブロードキャスト)
「192.168.1.20 の人,MAC アドレスを教えて」
② ARP 応答(サーバ C だけが返す)
「MAC アドレスは 00-1B-…」
別のネットワーク宛てなら,ルータ(.1)の MAC を調べて渡す
要求はブロードキャスト(ルータを越えない),応答はその1台からだけ
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問10(表記を一部改変)
用語解説:ARP
問11
IPv4 ネットワークにおいて,あるホストが属するサブネットのブロードキャストアドレスを,そのホストの IP アドレスとサブネットマスクから計算する方法として,適切なものはどれか。ここで,論理和,論理積はビットごとの演算とする。
ア IP アドレスの各ビットを反転したものとサブネットマスクとの論理積を取る。
イ IP アドレスの各ビットを反転したものとサブネットマスクとの論理和を取る。
ウ サブネットマスクの各ビットを反転したものと IP アドレスとの論理積を取る。
エ サブネットマスクの各ビットを反転したものと IP アドレスとの論理和を取る。 正解
正解 エ
解説
ブロードキャストアドレスは,IP アドレスのネットワーク部はそのままで,ホスト部のビットを全て 1 にしたアドレスである。サブネットマスクを反転するとホスト部だけが 1 になるので,これと IP アドレスの論理和を取れば,ネットワーク部を残したままホスト部を全て 1 にできる。エが正しい。
ウのように論理積を取ると,ネットワーク部が 0 になり,ホスト部だけが残る。アとイは IP アドレスを反転しており,ネットワーク部の値が変わってしまう。なお,IP アドレスとサブネットマスクの論理積を取ると,ネットワークアドレスが求められる。
IP アドレスとサブネットマスクのビット演算
212.62.31.90/27(マスク 255.255.255.224)の第4オクテットで考える。90 は 01011010,マスクは 11100000,マスクを反転すると 00011111。a&m(論理積)はネットワーク部だけが残り 64,a&〜m はホスト部だけが残り 26(ホストアドレス),a|〜m はホスト部が全部1になり 95(ブロードキャストアドレス)。
a(90)
0
1
0
1
1
0
1
0
m(224)
1
1
1
0
0
0
0
0
〜m(31)
0
0
0
1
1
1
1
1
ネットワーク部
ホスト部
a & m
0
1
0
0
0
0
0
0
64 ネットワークアドレス
a & 〜m
0
0
0
1
1
0
1
0
26 ホストアドレス
a | 〜m
0
1
0
1
1
1
1
1
95 ブロードキャスト
& m でネットワーク部,& 〜m でホスト部,| 〜m でブロードキャスト
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問11(表記を一部改変)
用語解説:サブネットマスク・CIDR
問12
IoT 推進コンソーシアム,総務省,経済産業省が策定した“IoT セキュリティガイドライン(Ver 1.0)”における“要点17. 出荷・リリース後も安全安心な状態を維持する”に対策例として挙げられているものはどれか。
ア IoT 機器及び IoT システムが収集するセンサデータ,個人情報などの情報の洗い出し,並びに保護すべきデータの特定
イ IoT 機器のアップデート方法の検討,アップデートなどの機能の搭載,アップデートの実施 正解
ウ IoT 機器メーカ,IoT システムやサービスの提供者,利用者の役割の整理
エ PDCA サイクルの実施,組織として IoT システムやサービスのリスクの認識,対策を行う体制の構築
正解 イ
解説
“出荷・リリース後も安全安心な状態を維持する”は運用・保守段階の要点で,脆弱性が見つかったときに直せるよう,アップデート方法を検討し,機能を搭載し,実際にアップデートを実施することが対策例として挙げられている。
アは分析段階の“守るべきものを特定する”,ウは方針段階の“つながることによるリスクを想定する”に関連する内容,エは方針段階の“IoT の性質を考慮した基本方針を定める”に当たる。
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問12(表記を一部改変)
問13
JIS Q 27000:2019(情報セキュリティマネジメントシステム−用語)において定義されている情報セキュリティの特性に関する説明のうち,否認防止の特性に関するものはどれか。
ア ある利用者があるシステムを利用したという事実が証明可能である。 正解
イ 認可された利用者が要求したときにアクセスが可能である。
ウ 認可された利用者に対してだけ,情報を使用させる又は開示する。
エ 利用者の行動と意図した結果とが一貫性をもつ。
正解 ア
解説
JIS Q 27000:2019 は,否認防止を“主張された事象又は処置の発生,及びそれを引き起こしたエンティティを証明する能力”と定義している。ある利用者があるシステムを利用したという事実を後から証明できることは,否認防止の特性に当たる。アが該当する。
イの認可された利用者が要求したときにアクセスできることは可用性,ウの認可された利用者にだけ情報を使用させ又は開示することは機密性,エの行動と意図した結果が一貫していることは信頼性に関する説明である。
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問13(表記を一部改変)
用語解説:JIS Q 27000 シリーズ(情報セキュリティマネジメント) 情報セキュリティの要素(機密性・完全性・可用性)
問14
盗まれたクレジットカードの不正利用を防ぐ仕組みのうち,オンラインショッピングサイトでの不正利用の防止に有効なものはどれか。
ア 3D セキュアによって本人確認する。 正解
イ クレジットカード内に保持された PIN との照合によって本人確認する。
ウ クレジットカードの有効期限を確認する。
エ セキュリティコードの入力によって券面認証する。
正解 ア
解説
3D セキュアは,オンラインでのクレジットカード決済の際に,カード会社に登録したパスワードやワンタイムパスワードなどで本人を認証する仕組みである。カードの番号や券面の情報だけでは決済できないので,盗まれたカードの情報による不正利用の防止に有効である。アが正しい。
イの PIN の照合は,実店舗の端末に IC カードを挿して行う仕組みで,オンラインショッピングでは使えない。ウの有効期限とエのセキュリティコードは,カードの券面に印字されており,カードそのものを盗まれた場合は犯人にも分かるので不正利用を防げない。
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問14(表記を一部改変)
問15
OSI 基本参照モデルのネットワーク層で動作し,“認証ヘッダ(AH)”と“暗号ペイロード(ESP)”の二つのプロトコルを含むものはどれか。
ア IPsec 正解
イ S/MIME
ウ SSH
エ XML 暗号
正解 ア
解説
IPsec は,OSI 基本参照モデルのネットワーク層で IP パケットを保護するプロトコル群で,改ざんの検知と送信元の認証を行う認証ヘッダ(AH)と,暗号化も行う暗号ペイロード(ESP)を含む。アが正しい。
イの S/MIME は電子メールの暗号化とデジタル署名,ウの SSH は遠隔ログインなどの通信の暗号化,エの XML 暗号は XML 文書の全体又は一部の暗号化を行うもので,いずれもネットワーク層より上位で動作し,AH と ESP を含まない。
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問15(表記を一部改変)
用語解説:VPN・IPsec
問16
UML における振る舞い図の説明のうち,アクティビティ図のものはどれか。
ア ある振る舞いから次の振る舞いへの制御の流れを表現する。 正解
イ オブジェクト間の相互作用を時系列で表現する。
ウ システムが外部に提供する機能と,それを利用する者や外部システムとの関係を表現する。
エ 一つのオブジェクトの状態がイベントの発生や時間の経過とともにどのように変化するかを表現する。
正解 ア
解説
アクティビティ図は,処理の開始から終了までの流れを,ある振る舞い(アクティビティ)から次の振る舞いへの制御の流れとして表す UML の図で,分岐や並行処理も書ける。アが該当する。
イのオブジェクト間の相互作用を時系列で表すのはシーケンス図,ウのシステムが提供する機能と利用者や外部システムとの関係を表すのはユースケース図,エの一つのオブジェクトの状態がイベントや時間とともにどう変わるかを表すのは状態マシン図である。
UML のおもな図の使い分け
シーケンス図はオブジェクト間のメッセージを時間の順に,コミュニケーション図はオブジェクトのつながりに注目して相互作用を表す。ユースケース図はアクタとシステムの機能の関係(システムの範囲),アクティビティ図は処理の流れ(分岐・並行・同期),状態マシン図は1つのオブジェクトの状態の移り変わり,クラス図は静的な構造,オブジェクト図はある時点のインスタンスのつながりを表す。
図
表すもの
シーケンス図
メッセージを時間の順に
コミュニケーション図
オブジェクトのつながりと相互作用
ユースケース図
アクタと機能,システムの範囲
アクティビティ図
処理の流れ(分岐・並行・同期)
状態マシン図
1つのオブジェクトの状態の遷移
クラス図
クラスと関連(静的な構造)
オブジェクト図
ある時点のインスタンスとリンク
時間の順はシーケンス図,範囲はユースケース図,業務の流れはアクティビティ図
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問16(表記を一部改変)
用語解説:UML(統一モデリング言語)
問17
アジャイル開発におけるプラクティスの一つであるバーンダウンチャートはどれか。ここで,図中の破線は予定又は予想を,実線は実績を表す。
正解 ア
解説
バーンダウンチャートは,縦軸に残作業量,横軸に時間をとり,残作業が減っていく予定と実績を示すグラフである。予定の線と実績の線を比べることで,作業の進み具合や遅れが一目で分かる。アが該当する。
イは時間とともに故障(不具合)の発生数が減った後,再び増えるバスタブ曲線。ウは累積バグ数が S 字状に増えて収束していく信頼度成長曲線(ゴンペルツ曲線など)。エは時期ごとの要員数の予定と実績を示す要員計画のグラフである。
バーンダウンチャート
縦軸に残っている作業量,横軸に日付をとり,予定(破線)と実績(実線)を描く。実績が予定の線より上にあれば遅れている。スプリントの終わりに残作業が0になるよう,日々の進み具合を確かめる。
日
残りの作業量
予定
実績が予定より上 → 遅れ
縦軸は「残り」。右下がりの予定線より上なら遅れ
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問17(表記を一部改変)
用語解説:アジャイル開発(スクラム・XP)
問18
次のプレシデンスダイアグラムで表現されたプロジェクトスケジュールネットワーク図を,アローダイアグラムに書き直したものはどれか。ここで,プレシデンスダイアグラムの依存関係は全て FS 関係とする。
正解 イ
解説
プレシデンスダイアグラムでは,作業 F の前に A と D の二つの矢印が入っている。アローダイアグラムで F を“A と D の両方が終わってから始まる作業”として表すには,A の終了の結合点から D の終了(F の開始)の結合点へダミー作業を引く必要がある。それ以外の依存関係は矢印をつなげればそのまま表せるので,ダミー作業を1本だけ加えたイが正しい。
アはダミー作業がなく,F が A の終了を待たずに始められることになる。ウは A の終了から H の開始へのダミー作業も加えているが,F の後に H があるので既に表されている関係で,余分である。エは A の終了から H の開始へのダミー作業だけで,F が A の終了を待つ関係を表していない。
PDM をアローダイアグラムに書き直す
PDM では F の前に A と D の2本が入っている。アローダイアグラムで F を“A と D の両方が終わってから始まる作業”にするには,A の終わりの結合点から D の終わり(F の始まり)の結合点へダミー作業(破線)を1本引く。
A
B
D
C
E
G
F
H
ダミー
A の終わり → F の始まりへダミーを1本
前の作業が2つある所にダミー作業が要る
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問18(表記を一部改変)
問19
PMBOK ガイド 第6版によれば,リスクの定量的分析で実施することはどれか。
ア 発生の可能性や影響のみならず他の特性を評価することによって,さらなる分析や行動のためにプロジェクトの個別リスクに優先順位を付ける。
イ プロジェクトの個別の特定した個別リスクと,プロジェクト目標全体における他の不確実性要因が複合した影響を数量的に分析する。 正解
ウ プロジェクトの全体リスクとプロジェクトの個別リスクに対処するために,選択肢の策定,戦略の選択,及び対応処置を合意する。
エ プロジェクトの全体リスクの要因だけでなくプロジェクトの個別リスクの要因も特定し,それぞれの特性を文書化する。
正解 イ
解説
PMBOK ガイド第6版は,リスクの定量的分析を,特定した個別リスクとプロジェクト目標全体に対するその他の不確実性要因が複合した影響を,数量的に分析するプロセスとしている。モンテカルロ・シミュレーションなどを使う。イが該当する。
アの発生確率や影響などを評価して個別リスクに優先順位を付けるのはリスクの定性的分析。ウの対応の選択肢を策定し戦略を選択して対応処置に合意するのはリスク対応の計画。エの個別リスクと全体リスクの要因を特定して特性を文書化するのはリスクの特定である。
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問19(表記を一部改変)
用語解説:PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系)
問20
サービスマネジメントシステムにおける問題管理の活動のうち,適切なものはどれか。
ア 同じインシデントが発生しないように,問題は根本原因を特定して必ず恒久的に解決する。
イ 同じ問題が重複して管理されないように,既知の誤りは記録しない。
ウ 問題管理の負荷を低減するために,解決した問題は直ちに問題管理の対象から除外する。
エ 問題を特定するために,インシデントのデータ及び傾向を分析する。 正解
正解 エ
解説
問題管理では,インシデントのデータや傾向を分析して,繰り返し起きているインシデントなどから,その根本原因となる問題を特定する。エが適切である。
アは誤り。根本原因が特定できても,費用対効果などから恒久的な解決をしない判断もあり,その場合は回避策を既知の誤りとして記録して管理する。イは誤り。既知の誤りは,インシデントを速やかに解決するために記録して活用する。ウは誤り。解決した問題も,解決策の有効性の確認やレビューを経てから終了し,記録は再発時などに活用する。
問題管理のリアクティブとプロアクティブ
リアクティブな活動は,起きたインシデントから根本原因を調べて取り除き,既知のエラーとして記録する。プロアクティブな活動は,過去のインシデントの記録を分析して傾向をつかみ,これから起きそうな問題を見つけて未然に防ぐ。
リアクティブ(事後)
プロアクティブ(予防)
きっかけ
起きたインシデント
過去の記録・傾向
すること
根本原因の究明・既知のエラー
起きそうな問題を予測して防ぐ
傾向を分析して予測する → プロアクティブ
起きた後に調べるのがリアクティブ,起きる前に傾向から防ぐのがプロアクティブ
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問20(表記を一部改変)
用語解説:インシデント管理と問題管理
問21
次の処理条件で磁気ディスクに保存されているファイルを磁気テープにバックアップするとき,バックアップの運用に必要な磁気テープは最少で何本か。
〔処理条件〕
(1) 毎月初日(1日)にフルバックアップを取る。フルバックアップは1本の磁気テープに1回分を記録する。 (2) フルバックアップを取った翌日から次のフルバックアップを取るまでは,毎日,差分バックアップを取る。差分バックアップは,差分バックアップ用としてフルバックアップとは別の磁気テープに追記録し,1本に1か月分を記録する。 (3) 常に6か月前の同一日までのデータについて,指定日の状態にファイルを復元できるようにする。ただし,6か月前の月に同一日が存在しない場合は,当該月の末日までのデータについて,指定日の状態にファイルを復元できるようにする(例:本日が10月31日の場合は,4月30日までのデータについて,指定日の状態にファイルを復元できるようにする)。
正解 ウ
解説
処理条件 (3) から,常に 6 か月前の同一日以降の任意の日の状態に復元できなければならない。ある日の状態に復元するには,その月の 1 日のフルバックアップと,その月の差分バックアップの両方が必要である。
例えば本日が 10 月 31 日なら,4 月 30 日以降の日を復元できる必要があるので,4 月から 10 月までの 7 か月分のフルバックアップと差分バックアップを保管しておかなければならない。本日が 10 月 1 日でフルバックアップを取った後でも,4 月 1 日以降の復元のために同じく 4 月から 10 月までの 7 か月分が必要になる。
フルバックアップ用が 7 本,差分バックアップ用が 7 本で,合計 14 本となり,ウになる。
バックアップに必要な磁気テープの本数
ある日の状態に戻すには,その月の1日のフルバックアップと,その月の差分バックアップの両方が要る。6か月前の同じ日以降のどの日にも戻せるようにするには,例えば10月31日なら4月30日以降,つまり4月から10月までの7か月分を残す。フルバックアップ用7本と差分バックアップ用7本で14本。
4月
フル
差分
5月
フル
差分
6月
フル
差分
7月
フル
差分
8月
フル
差分
9月
フル
差分
10月
フル
差分
4月30日〜10月31日のどの日にも戻せる
7か月 × 2本 = 14本
(10月31日なら6か月前は4月30日。4月分のテープも要る)
6か月前の月も含めるので7か月分。月ごとにフルと差分で2本
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問21(表記を一部改変)
問22
データの生成から入力,処理,出力,活用までのプロセス,及び組み込まれているコントロールを,システム監査人が書面上で又は実際に追跡する技法はどれか。
ア インタビュー法
イ ウォークスルー法 正解
ウ 監査モジュール法
エ ペネトレーションテスト法
正解 イ
解説
ウォークスルー法は,データの生成から入力,処理,出力,活用までのプロセスと,組み込まれているコントロールを,監査人が書面上で又は実際に追跡して確かめるシステム監査の技法である。イが該当する。
アのインタビュー法は関係者に口頭で質問して回答を得る技法。ウの監査モジュール法は,監査対象のプログラムに監査用のモジュールを組み込み,処理の状況を記録して検証する技法。エのペネトレーションテスト法は,実際に外部から侵入を試みてセキュリティ対策の有効性を確かめる技法である。
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問22(表記を一部改変)
用語解説:システム監査(監査手続・監査証拠・フォローアップ)
問23
物流業務において,10%の物流コストの削減の目標を立てて,図のような業務プロセスの改善活動を実施している。図中の c に相当する活動はどれか。
ア CSF(Critical Success Factor)の抽出
イ KGI(Key Goal Indicator)の設定
ウ KPI(Key Performance Indicator)の設定 正解
エ MBO(Management by Objectives)の導入
正解 ウ
解説
図の流れでは,a で最終的な目標“10%の物流コストの削減”を定め,b でそれを達成するための重要な成功要因“在庫の削減,誤出荷の削減”を挙げ,c でその達成度合いを測る具体的な数値目標“在庫日数7日以内,誤出荷率3%以内”を決めている。c は KPI(重要業績評価指標)の設定に当たり,ウが正しい。
イの KGI(重要目標達成指標)の設定は最終目標を定める a に,アの CSF(重要成功要因)の抽出は b に相当する。エの MBO(目標による管理)は,従業員が自ら目標を設定して達成度で評価する人事管理の手法で,この流れのどの段階にも当たらない。
KGI・CSF・KPI の流れ
まず最終の目標を数値にする(KGI:物流コスト 10%削減)。次にそれを達成する鍵になる要因を見極める(CSF:在庫の削減,誤出荷の削減)。その要因の達成度を測る指標を決める(KPI:在庫日数7日以内,誤出荷率3%以内)。改善を実施して成果を測り,ギャップを分析して KGI に戻る。
物流コストの削減
a KGI の設定
10%の物流コスト削減
目標
b CSF の抽出
在庫・誤出荷の削減
鍵になる要因
c KPI の設定
在庫日数7日・誤出荷率3%
測る指標
改善活動の実施
計測とギャップ分析
a=KGI の設定,b=CSF の抽出,c=KPI の設定
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問23(表記を一部改変)
用語解説:バランススコアカードと KPI・KGI・CSF
問24
A 社は,社員 10 名を対象に,ICT 活用によるテレワークを導入しようとしている。テレワーク導入後5年間の効果(“テレワークで削減可能な費用”から“テレワークに必要な費用”を差し引いた額)の合計は何万円か。
〔テレワークの概要〕
テレワーク対象者は,リモートアクセスツールを利用して,テレワーク用 PC から社内システムにインターネット経由でアクセスして,フルタイムで在宅勤務を行う。 テレワーク用 PC の購入費用,リモートアクセスツールの費用,自宅・会社間のインターネット回線費用は会社が負担する。 テレワークを導入しない場合は,育児・介護理由によって,毎年1名の離職が発生する。フルタイムの在宅勤務制度を導入した場合は,離職を防止できる。離職が発生した場合は,その補充のために中途採用が必要となる。 テレワーク対象者分の通勤費とオフィススペース・光熱費が削減できる。 在宅勤務によって,従来,通勤に要していた時間が削減できるが,その効果は考慮しない。
正解 イ
解説
削減可能な費用(5年間)は,通勤費 10万円×10名×5年=500万円,オフィススペース・光熱費 12万円×10名×5年=600万円,離職を防止できることによる中途採用費用 50万円×毎年1名×5年=250万円で,合計 1,350万円になる。
必要な費用(5年間)は,テレワーク用 PC 8万円×10台=80万円,リモートアクセスツールの初期費用 1万円×10名=10万円と運用費用 2万円×10名×5年=100万円,インターネット回線費用 6万円×10名×5年=300万円で,合計 490万円になる。
効果の合計は 1,350−490=860万円で,イが正しい。中途採用費用の削減を数えないと 610万円(ア)になる。
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問24(表記を一部改変)
問25
RFI を説明したものはどれか。
ア サービス提供者と顧客との間で,提供するサービスの内容,品質などに関する保証範囲やペナルティについてあらかじめ契約としてまとめた文書
イ システム化に当たって,現在の状況において利用可能な技術・製品,ベンダにおける導入実績など実現手段に関する情報提供をベンダに依頼する文書 正解
ウ システムの調達のために,調達側からベンダに技術的要件,サービスレベル要件,契約条件などを提示し,指定した期限内で実現策の提案を依頼する文書
エ 要件定義との整合性を図り,利用者と開発要員及び運用要員の共有物とするために,業務処理の概要,入出力情報の一覧,データフローなどをまとめた文書
正解 イ
解説
RFI(Request For Information:情報提供依頼書)は,システム化を検討する初期の段階で,利用可能な技術や製品,導入実績などの情報の提供をベンダに依頼する文書である。集めた情報を基に要件を固め,その後に提案を求める。イが正しい。
アはサービスの内容や品質の保証範囲,未達時のペナルティを合意する SLA(サービスレベル合意書)。ウは要件や契約条件を示して期限内に提案を求める RFP(提案依頼書)。エは業務処理の概要や入出力情報,データフローをまとめ,利用者と開発・運用の要員が共有する設計書の説明である。
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問25(表記を一部改変)
用語解説:SLA(サービスレベル合意書)
問26
バリューチェーンの説明はどれか。
ア 企業活動を,五つの主活動と四つの支援活動に区分し,企業の競争優位の源泉を分析するフレームワーク 正解
イ 企業の内部環境と外部環境を分析し,自社の強みと弱み,自社を取り巻く機会と脅威を整理し明確にする手法
ウ 財務,顧客,内部ビジネスプロセス,学習と成長の四つの視点から企業を分析し,戦略マップを策定するフレームワーク
エ 商品やサービスを,誰に,何を,どのように提供するかを分析し,事業領域を明確にする手法
正解 ア
解説
バリューチェーン(価値連鎖)は,M.E.ポーターが提唱したフレームワークで,企業活動を購買物流,製造,出荷物流,販売・マーケティング,サービスの五つの主活動と,全般管理(インフラストラクチャ),人事・労務管理,技術開発,調達の四つの支援活動に分け,どの活動で価値が生まれ競争優位につながっているかを分析する。アが該当する。
イは SWOT 分析,ウはバランススコアカード,エは“誰に(顧客),何を(機能),どのように(技術)”で事業領域を定める事業ドメインの定義の説明である。
バリューチェーン
企業の活動を,製品やサービスが顧客に届くまでの主活動(購買物流・製造・出荷物流・販売とマーケティング・サービス)と,それを支える支援活動(全般管理・人事労務管理・技術開発・調達)に分け,どの活動で価値(利益,マージン)が生まれているかを分析する。
全般管理(インフラストラクチャ)
人事・労務管理
技術開発
調達活動
購買物流
製造
出荷物流
販売・マーケ
サービス
マージン
上:支援活動 下:主活動
主活動5つと支援活動4つ。右端のマージンが生み出した価値
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問26(表記を一部改変)
用語解説:バランススコアカードと KPI・KGI・CSF
問27
新しい事業に取り組む際の手法として,E.リースが提唱したリーンスタートアップの説明はどれか。
ア 国・地方公共団体など,公共機関の補助金・助成金の交付を前提とし,事前に詳細な事業計画を検討・立案した上で,公共性のある事業を立ち上げる手法
イ 市場環境の変化によって競争力を喪失した事業分野に対して,経営資源を大規模に追加投入し,リニューアルすることによって,基幹事業として再出発を期す手法
ウ 持続可能な事業を迅速に構築し,展開するために,あらかじめ詳細に立案された事業計画を厳格に遂行して,成果の検証や計画の変更を最小限にとどめる手法
エ 実用最小限の製品・サービスを短期間で作り,構築・計測・学習というフィードバックループで改良や方向転換をして,継続的にイノベーションを行う手法 正解
正解 エ
解説
リーンスタートアップは,E.リースが提唱した新規事業の立ち上げ方で,MVP(実用最小限の製品)を短期間で作って市場に出し,構築・計測・学習のフィードバックループを素早く回しながら,改良や方向転換(ピボット)を繰り返してイノベーションを生む手法である。エが該当する。
アの補助金を前提に事前に詳細な計画を立てる手法,ウの詳細な計画を厳格に遂行し検証や変更を最小限にする手法は,仮説を検証しながら素早く修正していくリーンスタートアップとは逆の考え方である。イは衰退した事業への大規模な追加投資による再生で,新しい事業の立ち上げ方ではない。
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問27(表記を一部改変)
問28
IoT の技術として注目されている,エッジコンピューティングの説明として,適切なものはどれか。
ア 演算処理のリソースをセンサ端末の近傍に置くことによって,アプリケーション処理の低遅延化や通信トラフィックの最適化を行う。 正解
イ 人体に装着して脈拍センサなどで人体の状態を計測して解析を行う。
ウ ネットワークを介して複数のコンピュータを結ぶことによって,全体として処理能力が高いコンピュータシステムを作る。
エ 周りの環境から微小なエネルギーを収穫して,電力に変換する。
正解 ア
解説
エッジコンピューティングは,クラウドにデータを送って処理するのではなく,端末に近い場所(エッジ)に演算資源を配置して処理する方式。通信の往復が減るので応答が速くなり,ネットワークに流れるデータ量も抑えられる。アが正しい。
イはウェアラブルコンピューティング,ウはグリッドコンピューティング(分散処理),エはエネルギーハーベスティングの説明。
エッジコンピューティング
センサーなどの端末のデータを全部クラウドへ送って処理すると,往復に時間がかかり,回線のデータ量も増える。端末の近く(エッジ)に処理の資源を置いて先に処理すれば,応答が速くなり(低遅延),クラウドへ送るデータも減らせる。
クラウド
エッジ
近くで処理
センサー1
センサー2
センサー3
要るものだけ
往復が短い → 低遅延
クラウドへ流すデータが減る
端末の近くで処理する → 速く,送るデータも少ない
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問28(表記を一部改変)
問29
いずれも時価 100 円の株式 A〜D のうち,一つの株式に投資したい。経済の成長を高,中,低の三つに区分したときのそれぞれの株式の予想値上がり幅は,表のとおりである。マクシミン原理に従うとき,どの株式に投資することになるか。
正解 ア
解説
マクシミン原理は,各選択肢で起こり得る最悪の結果(最小値)を比べ,その最小値が最も大きい選択肢を選ぶ考え方である。各株式の最小の値上がり幅は,A が 10 円,B が 5 円,C が 5 円,D が −10 円なので,最小値が最も大きい A を選ぶ。アが正しい。
各株式の最大値が最も大きいものを選ぶマクシマックス原理なら,最大 40 円の D(エ)を選ぶことになる。
マクシミン原理(株式の選択)
各株式で最も悪い値上がり幅は A 10 円,B 5 円,C 5 円,D −10 円。その中で最も大きい A を選ぶ。最良の値を比べるマクシマックス原理なら,最大 40 円の D になる。
高
中
低
最小
A
20
10
15
10
B
25
5
20
5
C
30
20
5
5
D
40
10
−10
−10
最小のうち最大は 10 → A
単位 円。最大の最大(マクシマックス)なら D
最小値が最も大きい株式を選ぶ
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問29(表記を一部改変)
問30
労働基準法で定める36協定において,あらかじめ労働の内容や事情などを明記することによって,臨時的に限度時間の上限を超えて勤務させることが許される特別条項を適用する36協定届の事例として,適切なものはどれか。
ア 商品の売上が予想を超えたことによって,製造,出荷及び顧客サービスの作業量が増大したので,期間を3か月間とし,限度時間を超えて勤務する人数や所要時間を定めて特別条項を適用した。 正解
イ 新技術を駆使した新商品の研究開発業務がピークとなり,3か月間の業務量が増大したので,労働させる必要があるために特別条項を適用した。
ウ 退職者の増加に伴い従業員一人当たりの業務量が増大したので,新規に要員を雇用できるまで,特に期限を定めずに特別条項を適用した。
エ 慢性的な人手不足なので,増員を実施し,その効果を想定して1年間を期限とし,特別条項を適用した。
正解 ア
解説
36協定の特別条項は,通常予見することのできない業務量の大幅な増加などに伴い,臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合に限って定めることができる。適用する場合は,その事由をできる限り具体的に定め,限度時間を超えて労働させる期間や時間数などを明記する必要がある。予想を超えた売上増による作業量の増大という臨時の事由で,期間を3か月間とし,人数や所要時間を定めたアが適切である。
イは“労働させる必要があるため”という事由の書き方が具体的でなく,限度時間を超える必要性が特定されていない。ウの期限を定めない適用や,エの慢性的な人手不足への対応は,臨時的なものとはいえないので特別条項の適用として認められない。
出典:令和3年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問30(表記を一部改変)
科目A-1(午前Ⅰ・高度試験 共通)のほかの年度
科目A-1(午前Ⅰ)
令和7年度 秋期
令和7年度 春期
令和6年度 秋期
令和6年度 春期
令和5年度 秋期
令和5年度 春期
令和4年度 秋期
令和4年度 春期
令和3年度 秋期
令和3年度 春期
令和2年度 10月
令和元年度 秋期
平成31年度 春期
平成30年度 秋期
平成30年度 春期
平成29年度 秋期
平成29年度 春期
平成28年度 秋期
平成28年度 春期
平成27年度 秋期
平成27年度 春期
平成26年度 秋期
平成26年度 春期
平成25年度 秋期
平成25年度 春期
平成24年度 秋期
平成24年度 春期
平成23年度 秋期
平成23年度 特別試験
平成22年度 秋期
平成22年度 春期
平成21年度 秋期
平成21年度 春期
この試験について すべての試験区分の一覧