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システムアーキテクト試験

令和6年度 春期 科目A-2(午前Ⅱ)

令和6年度 春期に実施されたシステムアーキテクト試験 午前Ⅱ(2026年度からの科目A-2)の全25問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:システムアーキテクト試験について

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問1

アジャイル開発プロセスにおいて,Bill Wake が提案した“INVEST”と呼ばれる六つの観点を用いて行うことはどれか。

正解 エ

解説

INVEST は Independent(独立している),Negotiable(交渉の余地がある),Valuable(価値がある),Estimable(見積もれる),Small(小さい),Testable(テストできる)の頭文字で,Bill Wake が良いユーザーストーリーの条件として示した六つの観点である。よってエが正しい。

アのアクティビティ図は UML の振る舞い図,イのデータフロー図は構造化分析で使う図法で,いずれも INVEST とは関係がない。ウの再利用しやすさはソフトウェアパターンやモジュール設計を評価する観点であって,ユーザーストーリーの評価軸ではない。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)

用語解説:アジャイル開発(スクラム・XP) UML(統一モデリング言語)

問2

組込みシステムで DBMS を用いるときには,通信のオーバーヘッド,通信負荷の発生を防ぐこと,必要なメモリ容量をリソース制限内に抑えることなどを目的として,インプロセスデータベースを用いることがある。このインプロセスデータベースの説明として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

インプロセスデータベースは,データベースエンジンがライブラリとして提供され,アプリケーションプログラムにリンクされて同じプロセスの同じメモリ空間で動作する形態の DBMS である。プロセス間通信やネットワーク通信が不要なので,通信のオーバーヘッドがなく,必要なメモリも小さく抑えられる。イが適切である。

アはデータベースサーバとアプリケーションが別のプロセスとして動き,ソケットで通信するクライアントサーバ型の DBMS の説明である。ウはデータを全てメモリ上に置いて高速化するインメモリデータベースの説明で,動作する場所(プロセス)の説明ではない。エはテーブルをファイル単位で管理し,ファイル入出力の API で操作する簡易なファイル型のデータ管理の説明である。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)

問3

マイクロサービスアーキテクチャを採用してアプリケーションソフトウェアを設計している。障害発生による影響の範囲を局所化してシステム全体への波及を抑えるために,マイクロサービスへリクエストを送ったときのエラーが,あらかじめ設定している回数を超えた場合に,障害が解消するまでは,リクエストを送らない方式とする。この方式を何と呼ぶか。

正解 ウ

解説

サーキットブレーカーは,呼び出し先のサービスへのリクエストのエラーが一定回数を超えると,電気回路のブレーカーのように呼び出しを遮断して即座にエラーを返し,障害が解消するまで無駄なリクエストを送らないようにするパターンである。障害の連鎖的な波及を防げるので,ウが該当する。

アの CQRS は,データを更新するコマンドと参照するクエリの処理やモデルを分離する設計パターンである。イの RPC は,ネットワーク上の別のプログラムの手続を呼び出す仕組みである。エのサービスディスカバリーは,動的に増減するマイクロサービスのネットワーク上の所在を検出する仕組みである。

サーキットブレーカー ふだんは閉(リクエストを通す)。呼び出し先のエラーが決めた回数を超えると開になり,しばらくはリクエストを送らずにすぐエラーを返す。一定時間たつと半開になって試しに少し通し,成功すれば閉に戻り,失敗すれば開に戻る。障害が全体に連鎖するのを防ぐ。 閉 通す 開 すぐエラーを返す 半開 試しに少し通す エラーが回数を超えた 一定時間後 成功 失敗したら開に戻る
エラーが続いたら呼び出しを止め,時間をおいて試す

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)

用語解説:SOA(サービス指向アーキテクチャ)

問4

オブジェクト指向におけるデザインパターンに関する記述として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

デザインパターンは,オブジェクト指向設計で繰り返し現れる典型的な問題と,その解決策となるクラスやオブジェクトの構造を,名前を付けて整理し再利用できるようにしたものである。代表的なものに GoF の 23 のパターンがある。エが適切である。

アは共通する性質を抽出して上位のクラスを定義する汎化,イは同じ性質をもつオブジェクト群をクラスとしてまとめる抽象化(分類),ウはデータを内部に隠して仕様と実装を分離するカプセル化(情報隠蔽)の説明である。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)

問5

モジュール間のデータの受渡し方法のうち,最も低いモジュール結合度となるものはどれか。

正解 イ

解説

モジュール結合度は,弱い(望ましい)ものから順に,データ結合,スタンプ結合,制御結合,外部結合,共通結合,内容結合となる。単一のデータ項目を引数で受け渡すのは,必要なデータだけをやり取りするデータ結合で,最も結合度が低い。イが該当する。

エのデータ構造を引数で受け渡すのはスタンプ結合で,受け取る側が使わない項目まで構造に依存する。アの単一のデータ項目を大域的データで受け渡すのは外部結合,ウのデータ構造を大域的データで受け渡すのは共通結合であり,いずれも大域的データを介して多くのモジュールが依存し合うので結合度が高い。

モジュール結合度とモジュール強度 結合度はモジュールどうしのつながりの強さで,弱いほどよい。弱い順に,データ結合(必要な項目だけを引数で),スタンプ結合(データ構造を引数で),制御結合(制御の情報を渡す),外部結合(単一の大域データ),共通結合(共通域のデータ構造),内容結合(相手の内部を直接参照)。強度はモジュールの中のまとまりで,強いほどよい。機能的強度が最も強く,処理コードで機能を選ぶ論理的強度や,関係のない機能を集めた暗合的強度は弱い。 結合度(弱いほどよい) データ結合 項目を引数で スタンプ結合 構造を引数で 制御結合 制御情報を渡す 外部結合 単一の大域データ 共通結合 共通域の構造 内容結合 内部を直接参照 強度(強いほどよい) 機能的強度 1つの機能 情報的強度 同じ情報を扱う 連絡的強度 データを受け渡す 手順的強度 順に実行する 論理的強度 コードで機能を選ぶ 暗合的強度 関係のないものの寄せ集め 上ほど望ましい(時間的強度は手順的と論理的の間)
結合度は弱いほど,強度は強いほどよい

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)

問6

プログラムに,実行中の特定の時点で成立すべき変数間の関係や条件を記述した論理式を埋め込んで,そのプログラムの正当性を検証する手法はどれか。

正解 ア

解説

アサーションチェックは,プログラムの特定の位置に,その時点で成り立つべき変数間の関係や条件を論理式(アサーション)として埋め込み,実行時にその式が成り立つかを確かめることで,プログラムの正当性を検証する手法である。アが該当する。

イのコード追跡(トレース)は実行した命令の順序や変数の値の変化を追跡する手法,ウのスナップショットダンプはプログラムの実行中の指定した時点で主記憶やレジスタの内容を出力する手法である。エのテストカバレッジ分析は,テストによってプログラムの命令や分岐がどれだけ実行されたかの網羅率を測る手法である。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)

用語解説:テスト技法(ブラックボックス・ホワイトボックス)

問7

現在のプログラム A,B に,在庫テーブルを更新した後に更新ログを出力する機能を追加する。この機能は共通モジュールで実装し,どのプログラムからも利用できるようにする。図は,プログラムの実装案である。案 1 も案 2 も,在庫テーブルを更新した後に更新ログが出力される。更新ログを出力する共通モジュールを呼び出す処理を,案 1 のように各プログラム中に直接記述するのではなく,案 2 のように呼び出し方の宣言を共通プログラムなどに記述することによって,開発の効率を高めたり,保守性を高めたりするプログラミング技法はどれか。

〔現在〕〔案1〕〔案2〕の3列の図。〔現在〕はプログラムAとプログラムBがそれぞれ“在庫テーブルを更新する”だけを行う。〔案1〕はプログラムAとプログラムBがそれぞれ“在庫テーブルを更新する”の直後に“モジュールCを呼び出す”を記述し,モジュールCが“更新ログを出力する”。〔案2〕はプログラムAとプログラムBは“在庫テーブルを更新する”だけで,別のプログラムXに“宣言:在庫テーブルを更新した後にモジュールCを呼び出す”を記述し,モジュールCが“更新ログを出力する”。

正解 ア

解説

アスペクト指向プログラミングは,ログ出力やトランザクション管理のように多くのモジュールにまたがる横断的な関心事をアスペクトとして分離し,“どの処理の後に何を実行するか”という宣言によって,各プログラムに直接呼び出しを書かずに処理を織り込む技法である。案 2 のように宣言をプログラム X にまとめて記述するのはこれに当たり,アが該当する。

イのオブジェクト指向プログラミングはデータと手続をオブジェクトにまとめる技法,ウの関数型プログラミングは副作用のない関数の組合せで処理を記述する技法,エの構造化プログラミングは順次・選択・反復の制御構造でプログラムを組み立てる技法であり,いずれも呼び出しを宣言によって織り込む仕組みではない。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)

問8

純粋関数型言語がもつ特性の一つである参照透過性の説明はどれか。

正解 ア

解説

参照透過性とは,式や関数の値がその引数だけで決まり,いつ,何度評価しても,同じ引数に対して常に同じ結果を返す性質である。副作用がないので,式をその値で置き換えてもプログラムの意味が変わらない。アが該当する。

イの関数を引数や返却値として扱えるのは第一級関数(高階関数)の性質である。ウのコンパイル時の型検査は静的型付けの性質であり,エの評価が必要になるまで式を評価しないのは遅延評価の性質である。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)

問9

論理型プログラミングにおいて,命題の証明を行うための基本的な機能はどれか。

正解 エ

解説

論理型プログラミング(Prolog など)では,事実と規則を記述しておき,与えられた問い(命題)が成り立つかを推論によって証明する。その基本となる機能が,二つの項を同じ形にするように変数に値を割り当てるユニフィケーション(単一化)と,失敗したときに別の候補を試すバックトラックである。エが該当する。

アのオーバーライドは上位クラスのメソッドを下位クラスで再定義すること,イのオーバーロードは同じ名前で引数の異なるメソッドを複数定義すること,ウのメッセージパッシングはオブジェクト間でメッセージを送って処理を依頼することで,いずれもオブジェクト指向の概念である。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)

問10

JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,移行プロセスで実施するタスクはどれか。

正解 ア

解説

JIS X 0160:2021 の移行プロセスは,運用環境でソフトウェアシステムを利用できる状態にするプロセスで,移行の準備として,システムの利用及び支援に必要な情報のニーズを識別し,利用者用文書や,運用操作者・利用者などの利害関係者への教育訓練を用意することが含まれる。アが該当する。

イのシステム又はシステム要素が明示された要件に合致していることの確認は検証プロセス,ウの利害関係者のニーズに合致していることの合意の獲得は妥当性確認プロセスのタスクである。エの統合されたソフトウェアのインタフェースと機能が期待どおりに動作することのチェックは,統合プロセスや検証プロセスで行う活動である。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)

用語解説:JIS X 0160 と共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス)

問11

JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,廃棄プロセスに関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

JIS X 0160:2021 の廃棄プロセスは,ソフトウェアシステムの特定の要素の存在を終わらせるためのプロセスで,ライフサイクルの最後に限らず,どの段階でも適用できることが意図されている。例えば開発途中で不要になった要素の廃棄にも適用する。ウが適切である。

アは誤りで,廃棄プロセスは使用に不十分なシステム要素を廃棄し,再利用されないようにすることを扱う。イも誤りで,ソフトウェアシステムの廃棄にはサービスの終了も含まれる。エも誤りで,プロトタイプの廃棄にも廃棄プロセスは適用される。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)

用語解説:JIS X 0160 と共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス)

問12

リーンソフトウェア開発の説明として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

リーンソフトウェア開発は,トヨタ生産方式などの製造業のリーン生産の考え方をソフトウェア開発に応用したもので,“ムダをなくす”“品質を作り込む”“知識を作り出す”“決定を遅らせる”“速く提供する”“人を尊重する”“全体を最適化する”の七つの原則を掲げる。イが正しい。

アは経験的プロセス制御に基づきスプリントで検査と適応を繰り返すスクラム。ウは“コミュニケーション”“シンプリシティ”“フィードバック”“勇気”“尊重”の五つの価値を掲げる XP(エクストリームプログラミング)。エは利用者にとって価値のある機能単位ごとに五つのプロセスを回す FDD(ユーザ機能駆動開発)の説明である。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)

用語解説:アジャイル開発(スクラム・XP)

問13

スタンフォード大学ハッソ・プラットナー・デザイン研究所によるデザイン思考の説明はどれか。

正解 ウ

解説

スタンフォード大学ハッソ・プラットナー・デザイン研究所(d.school)が示すデザイン思考は,利用者の立場から問題解決に取り組む方法論で,共感(Empathize),問題定義(Define),アイディア創出(Ideate),プロトタイプ(Prototype),テスト(Test)の段階を繰り返す。現場で利用者を観察して共感することから始める点が特徴で,ウが正しい。

アは誤りで,デザイン思考ではアイディア出しの段階でむしろ発想を広げる。イは誤りで,過去のデータよりも利用者の観察や対話を重視する。エは過去の問題と解決策を蓄積するナレッジマネジメントの説明である。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)

問14

WTO 政府調達協定に関する記述として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

WTO 政府調達協定は,政府調達の分野で内外無差別の原則を定め,政府調達における国際的な競争の機会を増大させるとともに,政府調達をめぐる締約国間の紛争の円滑な解決を図ることを目的としている。イが適切である。

アは誤りで,協定が適用される調達の基準額は締約国や調達機関の区分ごとに附属書で定められ,各国で同一ではない。ウも誤りで,中央政府機関だけでなく,地方政府機関や特殊法人などの政府関係機関の調達も対象になる。エも誤りで,政府の調達情報は電子調達システムなどでも公開されており,官報の入手が不可欠というわけではない。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)

問15

組込みシステム開発において,製品に搭載する LSI を新規に開発する。LSI 設計を自社で行い,LSI 製造を外部に委託する場合の委託先として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

ファウンドリーは,自社では LSI の設計を行わず,他社から設計データを受け取って半導体の製造を受託する事業者である。LSI の設計を自社で行い,製造だけを外部に委託する場合の委託先に当たるので,ウが適切である。

アの IP プロバイダは,LSI に組み込む CPU コアやインタフェースなどの回路設計資産(IP コア)を提供する事業者,イのデザインハウスは LSI の設計を受託する事業者である。エのファブレスメーカーは,自社の工場をもたずに設計や販売を行い,製造をファウンドリーに委託するメーカーであり,委託する側に当たる。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)

問16

e シールの説明はどれか。

正解 エ

解説

e シールは,請求書や領収書などの電子文書データについて,それが確かにその組織(法人)から発行されたものであり,発行後に改ざんされていないことを証明する仕組みである。個人の意思表示を示す電子署名と違い,発行元の組織を証明する。エが該当する。

イの個人が行う電子署名は,文書に記載された内容に対する個人の意思表示を証明するもので,組織の発行元を証明する e シールとは区別される。ウのように公共機関だけに使用が限定されたものではなく,民間の法人も利用できる。アのゲームのキャラクターの作成者の証明とは関係がない。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)

問17

デジタル署名のあるソフトウェアをインストールするときに,そのソフトウェアの発行元を確認するために使用する証明書はどれか。

正解 ウ

解説

コードサイニング証明書は,ソフトウェアの開発元又は発行元が署名するために使う証明書。導入前に署名を検証することで,作成者が誰であるかと,配布の途中で改ざんされていないことを確認できる。

アの EV SSL 証明書とエのサーバ証明書は Web サーバの正当性を確認するもの,イのクライアント証明書は利用者や端末を認証するもので,いずれもソフトウェアの発行元の確認には使わない。

コードサイニング証明書 ソフトウェアの発行元は,自分の秘密鍵でソフトウェアに署名し,コードサイニング証明書を付けて配る。利用者はインストールの前に,証明書の公開鍵で署名を検証し,誰が作ったかと,配る途中で改ざんされていないかを確かめる。サーバ証明書や EV SSL 証明書は Web サーバを,クライアント証明書は利用者を確かめるもの。 発行元 秘密鍵で署名 ソフトウェア +署名+証明書 利用者 証明書で検証 分かること:作ったのは誰か,改ざんされていないか サーバ証明書は Web サーバ,クライアント証明書は利用者を確かめる
署名で発行元と改ざんの有無を確かめる

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)

用語解説:ディジタル署名(デジタル署名) TLS(SSL)

問18

NIST が制定した,AES における鍵長の条件はどれか。

正解 ア

解説

AES(Advanced Encryption Standard)は,NIST が米国の標準暗号として制定した共通鍵暗号方式で,ブロック長は128ビット,鍵長は128ビット,192ビット,256ビットの三つから選ぶ。アが正しい。鍵長が長いほど暗号化の繰返し処理(ラウンド)の回数が増え,安全性も高くなる。

イのように256ビット未満で任意に決めることはできない。ウとエのように鍵長をブロック長から32ビット増減させるという決まりもなく,ブロック長は鍵長にかかわらず128ビットで一定である。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)

問19

デジタル証明書が失効しているかどうかをオンラインで確認するためのプロトコルはどれか。

正解 ウ

解説

OCSP(Online Certificate Status Protocol)は,デジタル証明書が失効しているかどうかを,OCSP レスポンダにオンラインで問い合わせて確認するためのプロトコルである。失効リスト(CRL)全体を取得しなくても,個々の証明書の状態をその都度確認できる。ウが該当する。

アの CHAP は PPP で接続する際にチャレンジレスポンス方式で利用者を認証するプロトコル,イの LDAP はディレクトリサービスにアクセスするプロトコル,エの SNMP はネットワーク機器を監視・管理するプロトコルである。

CRL と OCSP の違い CRL は,認証局が有効期限内に失効させた証明書のシリアル番号と失効日時を一覧にし,署名を付けて公開するもの。利用者はリストを取ってきて自分で照らし合わせる。OCSP は,利用者が調べたい証明書を OCSP レスポンダ(VA)にオンラインで問い合わせ,有効か失効しているかの答えを受け取る。 CRL(証明書失効リスト) 認証局 CA 失効した証明書の一覧 No.1024 3/10 失効 No.2041 5/02 失効 利用者 ブラウザなど 署名して公開 取ってきて照合 載るのは有効期限内に失効した証明書のシリアル番号と日時 OCSP 利用者 ブラウザなど OCSP レスポンダ VA(検証局) この証明書は有効? 有効・失効・不明を返す その都度オンラインで問い合わせるので,最新の状態が分かる
CRL は一覧を取ってきて自分で調べる,OCSP はその都度問い合わせる

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)

用語解説:PKI(認証局・CRL・OCSP)

問20

日本の IT セキュリティ評価及び認証制度(JISEC)に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

JISEC は,IT 製品のセキュリティ機能を ISO/IEC 15408(コモンクライテリア)に基づいて評価・認証する制度である。評価はセキュリティターゲット(ST)に記述された,保護すべき資産,対抗すべき脅威,運用する環境などを前提に行うので,これらを具体化できる IT 製品が対象になる。エが適切である。

アは誤りで,利用者ガイダンスや管理者ガイダンスも評価用提供物件に含まれる。イも誤りで,ソフトウェアだけでなくハードウェアやファームウェアを含む製品やシステムも対象になる。ウも誤りで,ファイアウォールのようなセキュリティ専用の製品に限らず,複合機など,セキュリティ機能をもつ IT 製品も対象になる。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)

用語解説:ファイアウォールと DMZ ISO/IEC 15408(コモンクライテリア)と FIPS 140

問21

プロセッサの高速化を図る手法であるスーパースカラの説明として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

スーパースカラは,プロセッサ内に命令を実行するパイプラインを複数もち,互いに依存関係がなく同時に実行できる複数の命令を,実行時に動的に判断して並列に実行する方式である。アが適切である。

イはコンパイラがあらかじめ並列実行できる命令を一つの長い命令語にまとめておき,それを実行する VLP(超長命令語)方式の説明である。ウのパイプラインのステージを細分化して段数を増やすのはスーパーパイプライン,エの一つの命令で複数のデータを同時に処理するのは SIMD 方式の説明である。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)

問22

ストレージ仮想化技術のシンプロビジョニングに関する記述として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

シンプロビジョニングは,サーバやアプリケーションに対して,実際に搭載している物理ストレージの容量よりも大きな仮想的な容量を割り当てて見せ,データが実際に書き込まれた分だけ物理領域を割り当てる技術である。物理容量を必要に応じて後から追加できるので,初期投資を抑えられる。アが適切である。

イは複数のストレージをまとめて一つの大きなボリュームとして使うストレージのプール化やボリュームの連結,ウは利用者ごとに使用できる容量の上限を設ける割当て制限(クォータ),エは重複したデータを一つにまとめて容量を節約する重複排除の説明である。

シン・プロビジョニング サーバには必要と見込まれる大きさの仮想ボリュームを見せておき,物理ディスクの領域は実際に書き込まれた分だけを割り当てる。最初から全ての容量を用意しなくてよく,使う量が増えたら物理ディスクを足せばよい。 サーバA 仮想 1T バイト サーバB 仮想 1T バイト サーバC 仮想 1T バイト 使った分だけ 物理ディスク(あとから足せる) 塗った部分が実際に書き込まれた量
見せる容量は大きく,実際に割り当てるのは使った分だけ

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)

問23

システムに異常が起きた際の対応方法の一つであるフェールソフトとして,適切な動作はどれか。

正解 ウ

解説

フェールソフトは,システムの一部に障害が発生したとき,障害の起きた部分を切り離すなどして,機能や性能を落としながらもシステム全体の処理を継続させる考え方である。ウが該当する。

イの安全に順次停止する動作やエのデータや装置を損なわずに停止する動作は,障害時にシステムを安全な状態に移すフェールセーフの考え方である。アの警告を出してオペレーターに判断を任せる動作は,処理を継続するための仕組みではなく,フェールソフトの説明に当たらない。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)

用語解説:信頼性設計(フェールセーフ・フェールソフト・フールプルーフ)

問24

DBMS において,デッドロックを検出するために使われるデータ構造はどれか。

正解 エ

解説

待ちグラフは,トランザクションを節点とし,あるトランザクションが別のトランザクションのロックの解除を待っていることを有向辺で表したグラフである。グラフに閉路(循環)があれば,互いに相手を待ち続けるデッドロックが発生していると判断できる。エが該当する。

アの資源割当表は資源の割当て状況を管理する表で,それだけでは待ちの循環は検出できない。イの時刻印順管理表は,トランザクションの開始時刻の順序で同時実行を制御する時刻印順序方式に使う情報で,デッドロックを起こさないようにする方式に関するものである。ウの優先順管理表はトランザクションの優先度を管理するもので,デッドロックの検出には使わない。

待ちグラフの閉路とデッドロック 待ちグラフは,トランザクションを点にして,X が Y のロック解除を待っているとき X→Y の矢印を引いたもの。A→C→B→A のように矢印が一巡する閉路があると,互いに相手を待ち続けるのでデッドロックになる。D→C→B→A と D→A のように閉路が無ければ,A から順に終わって解消する。DBMS はこの閉路を探してデッドロックを検出する。 閉路あり → デッドロック A B C D 閉路なし A B C D X→Y:X は Y のロック解除を待っている
矢印が一巡する(閉路がある)とデッドロック

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)

用語解説:排他制御とデッドロック(ACID 特性)

問25

HTTP 応答のステータスコードで,指定された URL にはコンテンツがなく,別の URL へアクセスし直すように Web ブラウザに促す(リダイレクトさせる)ことを意味するコードはどれか。ここで,左側の 3 桁の数字がステータスコードで,右側の語句は HTTP 応答のステータス行にステータスコードとともに示される説明メッセージである。

正解 イ

解説

HTTP のステータスコードの 3xx はリダイレクトを表し,302 Found は,要求されたリソースが一時的に別の URL にあることを示し,Location ヘッダで示した URL へアクセスし直すよう Web ブラウザに促す。イが該当する。

アの 204 No Content は,要求は成功したが返すコンテンツがないことを示す成功のコードである。ウの 404 Not Found は要求されたリソースが見つからないことを示すクライアントエラー,エの 501 Not Implemented はサーバが要求されたメソッドに対応していないことを示すサーバエラーであり,いずれもリダイレクトを促すものではない。

出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)