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高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通

令和3年度 春期 科目A-1(午前Ⅰ)

令和3年度 春期に実施された高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ(2026年度からの科目A-1)の全30問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:科目A-1(午前Ⅰ・高度試験 共通)について

この年度を解く(受ける試験区分を選ぶ)

問1

任意のオペランドに対するブール演算 A の結果とブール演算 B の結果が互いに否定の関係にあるとき,A は B の(又は,B は A の)相補演算であるという。排他的論理和の相補演算はどれか。

選択肢ごとに,二つの円が重なるベン図で演算の結果が塗り分けられている。ア 等価演算は,二つの円の重なり部分と,二つの円の外側が塗られている。イ 否定論理和は,二つの円の外側だけが塗られている。ウ 論理積は,二つの円の重なり部分だけが塗られている。エ 論理和は,二つの円の全体が塗られている。

正解 ア

解説

排他的論理和は,二つの入力が異なるときに真になる演算。その否定は「二つの入力が同じときに真」となり,これが等価演算(一致演算,XNOR)である。図でも,等価演算は二つの円の重なり部分(両方が真)と円の外側(両方が偽)が塗られていて,排他的論理和が真になる範囲とちょうど裏返しの関係になっている。アが正しい。

イの否定論理和は二つの円の外側だけなので,両方が真の場合が抜けており,相補にはならない。ウの論理積は重なり部分だけ,エの論理和は二つの円の全体で,いずれも排他的論理和の否定とは一致しない。

排他的論理和と等価演算 排他的論理和は,A と B のどちらか一方だけが真のときに真で,ベン図では2つの円の重なっていない部分。その否定は,両方が真(重なり)か両方が偽(円の外)のときに真になる等価演算(一致)で,塗る部分がちょうど裏返しになる。 A B 排他的論理和 A B 等価演算(一致)
排他的論理和の相補演算は等価演算。塗る部分が裏返しになる

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問1(表記を一部改変)

問2

A,B,C の順序で入力されるデータがある。各データについてスタックへの挿入と取出しを1回ずつ行うことができる場合,データの出力順序は何通りあるか。

スタックの模式図。右上から A,B,C の順にデータが入り,同じ側から取り出されて左へ出ていく。

正解 ウ

解説

スタックは後入れ先出しなので,各データの push と pop を1回ずつ行うときに得られる出力順序は ABC,ACB,BAC,BCA,CBA の5通り。

CAB は作れない。C を最初に出すには A,B,C を全て積む必要があり,その時点で残りは B,A の順にしか取り出せないため。なお,この個数は n=3 のカタラン数に一致する。

スタックで作れる出力順と作れない出力順 A,B,C の順に入力し,それぞれ1回ずつ積んで取り出す。ABC,ACB,BAC,BCA,CBA の5通りは作れる。CAB は作れない。C を最初に出すには A,B,C を全部積む必要があり,そのときスタックの上には B があるので,次に出せるのは B だけ(CBA になる)。 C を最初に出すとき A B C A,B,C を積む A B → C C を出す A → B 次は B しか出せない 作れる:ABC・ACB・BAC・BCA・CBA の5通り 作れない:CAB(C の次に A は出せない)
後から積んだものが先に出る。C を先に出したら,残りは B,A の順に決まる

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問2(表記を一部改変)

問3

アルゴリズム設計としての分割統治法に関する記述として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

分割統治法は,解きにくい問題を同じ構造をもつ小さな問題に分割し,それぞれを独立に解いてから結果を組み合わせて元の問題の解を得る手法。マージソートやクイックソートが代表例で,再帰的に適用されることが多い。ウが正しい。

アは粗い解を求めてから繰り返し精度を上げる逐次近似法の説明。イは調べる必要のない組合せを枝刈りして探索範囲を狭める分枝限定法。エは各段階でその時点の最良を選ぶ貪欲法(欲張り法)の説明である。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問3(表記を一部改変)

問4

キャッシュメモリへの書込み動作には,ライトスルー方式とライトバック方式がある。それぞれの特徴のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

ライトスルー方式は,書込みのたびにキャッシュメモリと主記憶の両方へ書くので,主記憶の内容が常に最新に保たれる。イが正しい。キャッシュだけを見て主記憶が古いという状態にならないため,複数のプロセッサや DMA から主記憶を参照する構成でも整合性を取りやすい。

アはライトバック方式の特徴で,キャッシュだけに書くから速い。ウはライトスルー方式の説明を「ライトバック方式」として書いているので誤り。エはライトバック方式では主記憶が古いままなので,追い出されるときに書き戻しが必要になる。

ライトスルーとライトバック ライトスルー方式は,CPU が書き込むたびにキャッシュメモリと主記憶の両方に書くので,主記憶の内容は常に最新だが,書込みは主記憶の速さに引きずられる。ライトバック方式は,キャッシュメモリにだけ書いて済ませ,そのブロックがキャッシュから追い出されるときにまとめて主記憶に書き戻す。書込みは速いが,追い出されるまで主記憶は古いまま。 ライトスルー CPU キャッシュ 主記憶 書く 同時に書く 主記憶は常に最新,書込みは遅い ライトバック CPU キャッシュ 主記憶 書く 追い出すときに まとめて書き戻す 速いが,主記憶は古いことがある
ライトスルーは主記憶が常に最新,ライトバックは追い出すときに書き戻す

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問4(表記を一部改変)

用語解説:キャッシュメモリ

問5

稼働率が x である装置を四つ組み合わせて,図のようなシステムを作ったときの稼働率を f(x) とする。区間 0≦x≦1 における y=f(x) の傾向を表すグラフはどれか。ここで,破線は y=x のグラフである。

稼働率 x の装置を2台直列につないだ組を二つ作り,その二つを並列につないだシステムの構成図。

正解 エ

解説

直列につないだ2台は両方が動いていないと機能しないので,その組の稼働率は x2。これを2系統並列にしているので,両方の系統が止まる確率 (1−x2)2 を1から引いて f(x)=1−(1−x2)2=2x2−x4 となる。x=0.5 では f=0.4375 で y=x より下,x=0.9 では f=0.9639 で上になる。f(x)=x となるのは x=(√5−1)/2≒0.618 と x=1 なので,はじめは y=x の下を通り,途中で交差して上に出て(1,1)に達する。エがこの形になっている。

アは全区間で y=x より上,イは全区間で下にあり,途中で交差しない。ウは上下が逆で,x が小さいところで y=x より上になっている。稼働率の低い装置では直列部分が足を引っ張るので,原点付近でシステムの稼働率が装置単体より高くなることはない。

2台直列の組を2つ並列にしたときの稼働率 f(x) 2台直列の組の稼働率は x²。それを2つ並列にして f(x)=1−(1−x²)²=2x²−x⁴。x が小さいうちは直列が足を引っ張って y=x より下,x≒0.618 で交わり,それより大きいと y=x より上になって (1,1) に達する。x=0.5 で 0.4375,x=0.9 で 0.9639。 x x x x f(x)=2x²−x⁴ x≒0.618 で交わる y=x x 下 上 1
稼働率の低い装置では直列が足を引っ張り,高い装置では並列が効く

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問5(表記を一部改変)

用語解説:稼働率(MTBF・MTTR)

問6

ページング方式の仮想記憶において,ページアクセス時に発生する事象をその回数の多い順に並べたものはどれか。ここで,A≧B は,A の回数が B の回数以上,A=B は,A と B の回数が常に同じであることを表す。

正解 エ

解説

ページフォールトは,アクセスしたページが主記憶にないときに発生する。この処理では必ずそのページを主記憶へ読み込むので,ページフォールトの回数とページインの回数は常に等しい。一方ページアウトは,読み込む先の空きがなく既存のページを追い出すときにだけ起こるので,ページインの回数以下になる。エが正しい。

アとイはページアウトを最も多いものとしているが,追い出しはページインに伴ってしか起こらないのでページインを超えない。ウはページフォールトとページアウトが常に等しいとしているが,主記憶に空きがあれば追い出しは起こらないので誤り。

ページフォールト・ページイン・ページアウトの回数(例) 主記憶に3ページ分の枠があり,ページ1〜5を順に読む例。最初の3回は空きがあるので,ページフォールトのたびにページインだけが起きる。4回目からは空きがないので,1ページ追い出す(ページアウト)してから読み込む。ページフォールトのたびに必ずページインが起きるので両者は等しく,ページアウトは空きがないときだけなので,ページインの回数以下になる。 読むページ 1 2 3 4 5 フォールト ○ ○ ○ ○ ○ ページイン ○ ○ ○ ○ ○ ページアウト ○ ○ 主記憶の枠は 3 つ(4 ページ目から空きがない) フォールト 5 回 = ページイン 5 回 ≧ ページアウト 2 回(空きがないときだけ)
ページフォールト = ページイン ≧ ページアウト

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問6(表記を一部改変)

用語解説:仮想記憶(ページング)

問7

RFID の活用事例として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

RFID は,微小な IC チップとアンテナを組み合わせたタグに識別情報を記録し,電波で非接触に読み書きする技術。商品や部品,入退室者の識別と管理に使われ,箱の中のタグをまとめて読み取れる点がバーコードとの違いになる。エが正しい。

アはバーコードや二次元コードによる入力,イは Bluetooth による無線通信,ウは IrDA などの赤外線通信の説明である。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問7(表記を一部改変)

問8

W3C で仕様が定義され,矩形や円,直線,文字列などの図形オブジェクトを XML 形式で記述し,Web ページでの図形描画にも使うことができる画像フォーマットはどれか。

正解 ウ

解説

SVG(Scalable Vector Graphics)は W3C が仕様を定めたベクター画像フォーマットで,矩形・円・直線・文字列などの図形オブジェクトを XML 形式で記述する。拡大しても劣化せず,HTML に直接埋め込んで Web ページの図形描画に使える。

アの OpenGL は3次元グラフィックスの API であって画像フォーマットではない。イの PNG とエの TIFF はいずれもラスタ(ビットマップ)形式の画像フォーマット。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問8(表記を一部改変)

問9

データレイクの特徴はどれか。

正解 エ

解説

データレイクは,構造化・非構造化を問わず,発生したままの生データをそのままの形で大量に蓄積しておく仕組み。使い道が決まる前に貯めておき,分析するときに必要な形へ加工する点が特徴で,あらかじめ整形して格納するデータウェアハウスと対比される。エが正しい。

アはデータマイニング,イはデータマート,ウは OLAP(多次元分析)の説明である。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問9(表記を一部改変)

問10

IPv4 ネットワークで使用される IP アドレス a とサブネットマスク m からホストアドレスを求める式はどれか。ここで,“〜”はビット反転の演算子,“|”はビットごとの論理和の演算子,“&”はビットごとの論理積の演算子を表し,ビット反転の演算子の優先順位は論理和,論理積の演算子よりも高いものとする。

正解 ウ

解説

サブネットマスク m はネットワーク部のビットが1,ホスト部のビットが0になっている。ホストアドレスはアドレス a のうちホスト部だけを残したものなので,m を反転してホスト部を1にした 〜m と a のビットごとの論理積をとればよい。ウの a & 〜m が正しい。

アの 〜a & m はアドレスを反転してからネットワーク部を取り出すもので意味をなさない。イとエは論理和なので,不要なビットを消すのではなく立てる操作になる。特にエの a | 〜m はホスト部が全て1になり,ブロードキャストアドレスを求める式である。

IP アドレスとサブネットマスクのビット演算 212.62.31.90/27(マスク 255.255.255.224)の第4オクテットで考える。90 は 01011010,マスクは 11100000,マスクを反転すると 00011111。a&m(論理積)はネットワーク部だけが残り 64,a&〜m はホスト部だけが残り 26(ホストアドレス),a|〜m はホスト部が全部1になり 95(ブロードキャストアドレス)。 a(90) 0 1 0 1 1 0 1 0 m(224) 1 1 1 0 0 0 0 0 〜m(31) 0 0 0 1 1 1 1 1 ネットワーク部 ホスト部 a & m 0 1 0 0 0 0 0 0 64 ネットワークアドレス a & 〜m 0 0 0 1 1 0 1 0 26 ホストアドレス a | 〜m 0 1 0 1 1 1 1 1 95 ブロードキャスト
& m でネットワーク部,& 〜m でホスト部,| 〜m でブロードキャスト

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問10(表記を一部改変)

用語解説:サブネットマスク・CIDR

問11

ONF(Open Networking Foundation)が標準化を進めている OpenFlow プロトコルを用いた SDN(Software-Defined Networking)の説明として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

SDN は,パケットを転送する機能(データプレーン)と,どう転送するかを決める機能(コントロールプレーン)を論理的に分離し,後者をコントローラに集約してネットワーク全体をソフトウェアから集中制御できるようにするアーキテクチャ。OpenFlow は,そのコントローラとスイッチの間でフローテーブルをやり取りするプロトコルである。エが正しい。

アは SNMP を使ったネットワーク管理手法。イはルーティングプロトコルによる自律分散型の経路制御で,SDN の集中制御とは逆の考え方。ウはネットワーク機能を仮想環境で動かす NFV の説明である。

SDN:制御と転送を分ける SDN では,経路を決める制御(コントロールプレーン)をコントローラに集め,各スイッチはコントローラから OpenFlow などで受け取った規則(フローテーブル)に従ってパケットを転送するだけ(データプレーン)になる。ネットワーク全体をソフトウェアで一元的に設定・変更できる。 SDN コントローラ コントロールプレーン スイッチ スイッチ スイッチ OpenFlow データプレーン:規則に従って転送するだけ
頭脳(コントローラ)と手足(スイッチ)を分ける

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問11(表記を一部改変)

問12

暗号学的ハッシュ関数における原像計算困難性,つまり一方向性の性質はどれか。

正解 ア

解説

原像計算困難性(一方向性)は,ハッシュ値からその元になったメッセージを求めることが計算量的に困難であるという性質。パスワードをハッシュ値で保存しても元のパスワードを復元されないのは,この性質による。アが正しい。

イは可変長の入力から固定長の値を作るというハッシュ関数一般の性質で,安全性の要件ではない。ウは同じハッシュ値をもつ二つのメッセージを見つけにくいという衝突発見困難性。エはハッシュを計算する機器の耐タンパ性に関する説明である。

暗号学的ハッシュ関数の3つの性質 原像計算困難性は,ハッシュ値が与えられたときに,そのハッシュ値になるメッセージを見つけることが難しい。第2原像計算困難性は,あるメッセージが与えられたときに,同じハッシュ値になる別のメッセージを見つけることが難しい。衝突発見困難性は,同じハッシュ値になる2つのメッセージを,どれでもよいので見つけることが難しい。違いは何が先に決まっているか。 原像計算困難性(一方向性) メッセージ ハッシュ値 ← これになる m を探す 第2原像計算困難性 m1 メッセージ2 同じハッシュ値 m1 は決まっている 衝突発見困難性 メッセージ1 メッセージ2 同じハッシュ値 どれでもよい
塗った枠が先に決まっているもの,破線の枠が探すもの

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問12(表記を一部改変)

用語解説:ハッシュ関数

問13

経済産業省と IPA が策定した“サイバーセキュリティ経営ガイドライン(Ver2.0)”の説明はどれか。

正解 ア

解説

サイバーセキュリティ経営ガイドラインは,経済産業省と IPA が策定した経営者向けの手引で,サイバー攻撃から企業を守る観点で経営者が認識すべき3原則と,情報セキュリティ対策を実施する上での責任者となる担当幹部(CISO など)に経営者が指示すべき重要10項目をまとめている。アが正しい。

イは ISMS(JIS Q 27001)の説明。ウは IT ガバナンスとマネジメントに分けて40のプロセスを定義した COBIT の説明。エはサイバーセキュリティ基本法が定める国の責務に関する記述である。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問13(表記を一部改変)

用語解説:情報セキュリティの要素(機密性・完全性・可用性)

問14

JPCERT コーディネーションセンターの説明はどれか。

正解 ウ

解説

JPCERT コーディネーションセンター(JPCERT/CC)は,特定の政府機関や企業から独立した一般社団法人で,国内のセキュリティインシデントの報告受付,対応の支援,手口の分析,再発防止策の助言などを行う。ウが正しい。

アは日本産業標準調査会(JISC),イは CRYPTREC(暗号技術評価プロジェクト),エは内閣官房の内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の説明である。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問14(表記を一部改変)

問15

Web システムにおいて,セッションの乗っ取りの機会を減らすために,利用者のログアウト時に Web サーバ又は Web ブラウザにおいて行うべき処理はどれか。ここで,利用者は自分専用の PC において,Web ブラウザを利用しているものとする。

正解 イ

解説

セッションの乗っ取りは,攻撃者が有効なセッション ID を手に入れて成りすますことで起こる。ログアウト時にサーバ側でそのセッション ID を無効にしておけば,後からその ID を入手されても使えないので,乗っ取られる機会を減らせる。イが正しい。

アとエはセッション ID をストレージに保存する処理で,残しておくことはむしろ危険を増やす。ウのキャッシュのクリアは画面に表示した内容が後から見られるのを防ぐ効果はあるが,セッション ID 自体は有効なままなので乗っ取りは防げない。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問15(表記を一部改変)

問16

あるプログラムについて,流れ図で示される部分に関するテストを,命令網羅で実施する場合,最小のテストケース数は幾つか。ここで,各判定条件は流れ図に示された部分の先行する命令の結果から影響を受けないものとする。

流れ図。judgment が3段に並ぶ。1段目の判定は3方向に分かれ,それぞれに処理が一つずつ置かれて合流する。2段目の判定は2方向に分かれ,それぞれに処理が一つずつ置かれて合流する。3段目の判定は3方向に分かれ,それぞれに処理が一つずつ置かれて合流する。

正解 ア

解説

命令網羅は,全ての命令(処理)を少なくとも1回は実行できればよいという基準。この流れ図には判定が3段あり,分岐先の処理はそれぞれ3個,2個,3個ある。1件のテストケースは各段から1個ずつ処理を通るので,処理が3個ある段を覆うには3件必要で,逆に3件あれば処理が2個の段も同時に覆える。よって最小のテストケース数は3で,アが正しい。

各判定条件は互いに影響しないという前提なので,段ごとに好きな分岐を選んで組み合わせられる。エの18は3×2×3で全ての経路を数えた値,イの6やウの8も経路の組合せに関する数で,命令網羅に必要な件数ではない。

命令網羅・分岐網羅・条件網羅 「A かつ B」なら処理 X を行う流れ図。命令網羅は全ての命令を一度は通すので,A も B も真の1件で足りる。分岐網羅は判定の真と偽を両方通すので,(真,真)と(偽,真)の2件が要る。条件網羅は A と B のそれぞれが真と偽を取ればよいので(真,偽)と(偽,真)でも満たせるが,このとき判定は2回とも偽で,処理 X を一度も通らない。 A かつ B 真 処理 X 偽 命令網羅 (A,B)=(真,真)の1件 分岐網羅 (真,真)(偽,真)の2件 条件網羅 (真,偽)(偽,真)でもよい 条件網羅の例では判定が2回とも偽になり,処理 X を通らない 判定条件/条件網羅は,判定と各条件の真偽を両方そろえる
条件網羅を満たしても,分岐網羅や命令網羅を満たすとは限らない

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問16(表記を一部改変)

用語解説:テスト技法(ブラックボックス・ホワイトボックス)

問17

スクラムチームにおけるプロダクトオーナの役割はどれか。

正解 ア

解説

スクラムのプロダクトオーナは,プロダクトの価値を最大化する責任を負い,プロダクトバックログの内容と並び順(優先順位)を決める。何を作るかを決める役割であって,どう作るかには踏み込まない。アが正しい。

イはスクラムマスタの役割で,スクラムが正しく機能するように支援する。ウとエは開発者(開発チーム)の役割で,作り方を自分たちで決め,スプリントごとにリリース判断可能なインクリメントを完成させる。

スクラムの1スプリントの流れ プロダクトオーナーが優先順位を付けたプロダクトバックログから,スプリントプランニングで今回やることを選んでスプリントバックログにする。1か月以内のスプリントの間,毎日デイリースクラムで進み具合を確かめ,動くインクリメントを作る。最後にスプリントレビューで利害関係者に成果を見せ,スプリントレトロスペクティブでふりかえってから次のスプリントへ進む。 プロダクト バックログ スプリント バックログ プランニング スプリント 1か月以内 毎日 デイリースクラム インクリメント スプリントレビュー 利害関係者に成果を見せる レトロスペクティブ ふりかえり(KPT など) 次のスプリントへ プロダクトオーナー:バックログの優先順位を決める スクラムマスター:進め方を支える 開発者:スプリントバックログを自分たちで変えられる
役割3つ・イベント4つ(プランニング・デイリー・レビュー・レトロスペクティブ)・作成物3つ

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問17(表記を一部改変)

用語解説:アジャイル開発(スクラム・XP)

問18

JIS Q 21500:2018(プロジェクトマネジメントの手引)によれば,プロジェクトマネジメントのプロセスのうち,計画のプロセス群に属するプロセスはどれか。

正解 ア

解説

JIS Q 21500:2018 は,プロジェクトマネジメントのプロセスを,立ち上げ・計画・実行・管理・終結の五つのプロセス群と,統合・ステークホルダ・スコープ・資源などの対象群の組合せで整理している。「スコープの定義」はスコープの対象群にあり,計画のプロセス群に置かれている。アが正しい。

イの品質保証の遂行は実行のプロセス群。ウのプロジェクト憲章の作成とエのプロジェクトチームの編成は,どちらも立ち上げのプロセス群に属する。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問18(表記を一部改変)

用語解説:JIS Q 21500(プロジェクトマネジメントの手引)

問19

プロジェクトのスケジュールを短縮したい。当初の計画は図1のとおりである。作業 E を作業 E1,E2,E3 に分けて,図2のとおりに計画を変更すると,スケジュールは全体で何日短縮できるか。

図1 当初の計画。アローダイアグラムで,作業と所要日数は A5,B8,C7,D7,E9,F5,G7,H4,I2。A のあと B と C に分かれ,B のあと D と E に分かれる。D のあとが G。C のあとが F。E と F が合流したあとに H,続いて I。G と I が同じ終点に入る。
図2 変更後の計画。図1の作業 E9 が E1(3日),E2(4日),E3(2日)に分かれている。B の終点から E1 と E2 が出て,E2 の終点から E1 の終点へダミー作業が引かれ,そこから E3 が F の終点へ入る。ほかの作業と所要日数は図1と同じ。

正解 ア

解説

図1のクリティカルパスは A→B→E→H→I で,5+8+9+4+2=28日。

図2では E が E1(3),E2(4),E3(2) に分割され,E3 の直前の結合点には E1 とダミー作業(E2 の後)が入る。B の完了時点(13日)から見ると,E1 経由は 3 日,E2 経由は 4 日で,遅いほうの 4 日で結合点に到達し,そこから E3 が 2 日かかる。よって B→H は 4+2=6日となり,A→B→E2→E3→H→I は 5+8+4+2+4+2=25日。もう一方の A→B→D→G は 5+8+7+7=27日なので,図2 全体は 27日。

28−27=1日短縮できる。

作業 E を分けて並行させると 当初は A→B→E→H→I が 28 日でクリティカルパス。E(9日)を E1(3日),E2(4日),E3(2日)に分け,E1 と E2 を並行させると,B の後から H の手前までが 4+2=6 日に縮まり,その経路は 25 日。代わって A→B→D→G の 27 日がクリティカルパスになり,全体は 1 日だけ縮む。 A 5 B 8 C 7 D 7 E1 3 E2 4 E3 2 F 5 G 7 H 4 I 2 0 / 0 5 / 5 13 / 13 12 / 16 20 / 20 16 / 19 17 / 27 18 / 21 22 / 25 27 / 27 変更前 28 日 → 変更後 27 日(1日短縮)
縮めた結果,別の経路(27 日)が新しいクリティカルパスになる

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問19(表記を一部改変)

問20

プロジェクトメンバが16人のとき,1対1の総当たりでプロジェクトメンバ相互の顔合わせ会を行うためには,延べ何時間の顔合わせ会が必要か。ここで,顔合わせ会1回の所要時間は0.5時間とする。

正解 エ

解説

顔合わせ会の回数は,16人から2人を選ぶ組合せの数なので 16×15/2=120回。1回0.5時間なので延べ時間は 120×0.5=60時間になる。エが正しい。

延べ時間を問うているので,複数の組が同時に会えるかどうかは考えない。アの8は人数の半分,イの16は人数そのもので,どちらも組合せの数を求めていない。ウの30は,0.5時間を二重に掛けてしまったときに出る値である。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問20(表記を一部改変)

問21

マスタファイル管理に関するシステム監査項目のうち,可用性に該当するものはどれか。

正解 ア

解説

可用性は,必要なときにシステムやデータを使える度合いのこと。マスタファイルが置かれたサーバを二重化しておけば,片方が故障してももう一方で処理を続けられるので,これは可用性に関する監査項目に当たる。アが正しい。

イの検索・加工の機能は業務の効率性に関わる項目。ウの特権アカウントによるメンテナンスの制限は,権限のない者に触らせないという機密性の項目。エの入力チェック機能は,正しいデータだけを登録させるという完全性(正確性)の項目である。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問21(表記を一部改変)

用語解説:システム監査(監査手続・監査証拠・フォローアップ)

問22

システム監査人が行う改善提案のフォローアップとして,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

システム監査人は監査対象から独立した立場で監査を行うので,改善そのものを実施したり指示したりしてはならない。フォローアップでは,改善の実施は監査対象部門の責任に委ね,監査人はその進捗や結果を確かめる立場にとどまる。改善状況をモニタリングするというウが正しい。

アの改善の実施を指示すること,イの改善実施プロジェクトを管理すること,エの改善実施計画を策定することは,いずれも監査人が改善活動そのものに関与することになり,監査の独立性・客観性を損なう。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問22(表記を一部改変)

用語解説:システム監査(監査手続・監査証拠・フォローアップ)

問23

エンタープライズアーキテクチャの“四つの分類体系”に含まれるアーキテクチャは,ビジネスアーキテクチャ,テクノロジアーキテクチャ,アプリケーションアーキテクチャともう一つはどれか。

正解 ウ

解説

エンタープライズアーキテクチャは,組織の全体像を四つの体系で捉える。業務のあり方を表すビジネスアーキテクチャ(政策・業務体系),扱う情報の構造を表すデータアーキテクチャ(データ体系),業務を支える情報システムの構成を表すアプリケーションアーキテクチャ(適用処理体系),それらを動かす基盤を表すテクノロジアーキテクチャ(技術体系)である。残る一つはウのデータアーキテクチャ。

アのシステムアーキテクチャ,イのソフトウェアアーキテクチャ,エのバスアーキテクチャは,いずれもこの四つの分類体系には含まれない。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問23(表記を一部改変)

問24

情報システムの調達の際に作成される RFI の説明はどれか。

正解 ア

解説

RFI(Request For Information,情報提供依頼書)は,調達の検討段階で,実現手段や技術動向などの情報提供をベンダに依頼する文書。提案を求める前の情報収集が目的。

イは RFP(提案依頼書)の説明。ウとエは契約変更や契約締結に関するもので,いずれも RFI ではない。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問24(表記を一部改変)

問25

システム開発委託契約の委託報酬におけるレベニューシェア契約の特徴はどれか。

正解 ウ

解説

レベニューシェア契約は,システム開発の委託報酬を,そのシステムが生む収益をあらかじめ決めた配分率で分け合う形で支払う契約。受託側は収益が上がらなければ報酬も少ないというリスクを負う代わりに,成功すれば通常の委託報酬を上回る収入が得られる。ウが正しい。

アとイは収益と無関係に費用を負担する形で,従来型の請負契約や準委任契約に当たる。エの受託側が継続的に固定額の収益を得るという形も,収益に応じて取り分が変わるレベニューシェアの特徴ではない。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問25(表記を一部改変)

問26

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)マトリックスの a,b に入れる語句の適切な組合せはどれか。

PPM マトリックス。縦軸が a で上が高,下が低。横軸が b で左が高,右が低。左上が花形,右上が問題児,左下が金のなる木,右下が負け犬。

正解 ウ

解説

PPM は,縦軸に市場成長率,横軸に相対的市場占有率をとって事業を四つに分ける。図では縦軸の上が高,横軸の左が高になっており,左上が花形(成長率も占有率も高い),右上が問題児(成長率は高いが占有率が低い),左下が金のなる木(成長率は低いが占有率が高い),右下が負け犬に当たる。この配置に合うのは a が市場成長率,b が市場占有率のウ。

エのように a と b を入れ替えると,成長率が高く占有率の低い区画が「金のなる木」になってしまい,四つの区画の意味と合わなくなる。アとイの売上高利益率は PPM の軸には使わない。

PPM の4つの区分 縦軸に市場成長率,横軸に相対的市場シェア(左が高い)をとる。成長率もシェアも高い花形,成長率が高くシェアが低い問題児,成長率が低くシェアが高い金のなる木,どちらも低い負け犬に分ける。金のなる木が生んだ資金を,花形や問題児に回す。 花形 成長に合わせた投資も要る 問題児 シェアを取るには投資が要る 金のなる木 投資が少なく資金を生む 負け犬 撤退を考える 高 低 成長率 市場 高 低 相対的市場シェア 金のなる木の資金を,花形と問題児へ回す
金のなる木が生む資金を,花形と問題児に回す

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問26(表記を一部改変)

問27

政府は,IoT を始めとする様々な ICT が最大限に活用され,サイバー空間とフィジカル空間とが融合された“超スマート社会”の実現を推進してきた。必要なものやサービスが人々に過不足なく提供され,年齢や性別などの違いにかかわらず,誰もが快適に生活することができるとされる“超スマート社会”実現への取組は何と呼ばれているか。

正解 イ

解説

Society 5.0 は,第5期科学技術基本計画(平成28年)で政府が提唱した,サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させた“超スマート社会”の実現に向けた取組の名称。狩猟社会,農耕社会,工業社会,情報社会に続く5番目の社会という意味でこう呼ぶ。イが正しい。

アの e-Gov は行政情報の総合窓口となるポータルサイト。ウの Web 2.0 は利用者が情報を発信し合う形へと変わった Web の潮流を指す言葉。エのダイバーシティ社会は多様な人材が活躍できる社会を指す言葉で,いずれも政府の“超スマート社会”実現への取組の名称ではない。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問27(表記を一部改変)

問28

アグリゲーションサービスに関する記述として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

アグリゲーションサービスは,別々の事業者に分散しているサービスや情報への窓口を一つにまとめ,比較したり,まとめて表示したり,最適な組合せを提示したりして,ワンストップで利用できるようにするサービス。複数の金融機関の口座残高をまとめて表示する家計簿サービスなどが例になる。ウが正しい。

アは店舗と EC など全ての顧客接点を統合するオムニチャネル,イは第三者が代金決済を仲介するエスクローサービス,エは本部と加盟店の関係を示すフランチャイズの説明である。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問28(表記を一部改変)

問29

バランススコアカードの四つの視点とは,財務,学習と成長,内部ビジネスプロセスと,もう一つはどれか。

正解 イ

解説

バランススコアカードは,企業の業績を財務の数字だけで測らず,財務,顧客,内部ビジネスプロセス,学習と成長の四つの視点から評価する仕組み。残る一つはイの顧客の視点で,顧客満足度やシェアなど,顧客からどう見られているかを測る。

四つの視点は,学習と成長が内部ビジネスプロセスを支え,それが顧客の評価につながり,最終的に財務の成果に結び付くという因果関係で結ばれている。アのガバナンス,ウの自社の強み,エの遵法は,いずれもこの四つには含まれない。

バランススコアカードの4つの視点と戦略マップ 下から学習と成長,内部ビジネスプロセス,顧客,財務の4つの視点を積み上げる。専門人材を育てると出荷までの日数を縮められ,顧客満足度が上がり,売上高が伸びる,という因果関係を矢印でつないだものが戦略マップ。各視点に目標と指標(KPI)を置く。 財務 売上高を伸ばす 売上高・利益率 顧客 顧客満足度を上げる 顧客満足度・シェア 内部ビジネスプロセス 出荷を速くする 出荷までの日数 学習と成長 専門人材を育てる 育成人数・特許件数
下の視点の成果が上の視点の成果につながる(因果関係)

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問29(表記を一部改変)

用語解説:バランススコアカードと KPI・KGI・CSF

問30

電子署名法に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

電子署名法第3条は,本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより,本人だけが行うことができるものに限る)が行われた電磁的記録は,真正に成立したものと推定すると定めている。これは民事訴訟法第228条第4項が,本人の署名又は押印のある私文書について定める推定と同じ働きをするので,イが正しい。

アは,同法第2条が電子署名を電磁的記録に記録できる情報について行う措置と定めているので誤り。ウは,認証業務を政府の認証局に限る規定はなく,民間の事業者も行える(一定の基準を満たすものを国が認定する特定認証業務の制度がある)。エは,法律は特定の暗号技術を要求しておらず,実際に広く使われているのは公開鍵暗号によるものである。

出典:令和3年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問30(表記を一部改変)

用語解説:PKI(認証局・CRL・OCSP) 共通鍵暗号と公開鍵暗号