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ITサービスマネージャ試験

平成29年度 秋期 科目A-2(午前Ⅱ)

平成29年度 秋期に実施されたITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ(2026年度からの科目A-2)の全25問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:ITサービスマネージャ試験について

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問1

ITIL 2011 edition で定義されるサービスのライフサイクルにおける,サービストランジション段階に対応する説明はどれか。

正解 ア

解説

ITIL 2011 edition のサービスライフサイクルは,サービスストラテジ,サービスデザイン,サービストランジション,サービスオペレーション,継続的サービス改善の五つの段階からなる。サービストランジションは,設計されたサービスを,規定された要件と制約に沿って構築・テストし,運用に移行して確実に稼働させる段階である。アが正しい。

イは継続的サービス改善,ウはサービスデザイン,エはサービスストラテジの説明である。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)

用語解説:ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)

問2

システムの改善に向けて提出された 4 案について,評価項目を設定して採点した結果を,採点結果表に示す。効果及びリスクについては 5 段階評価とし,それぞれの評価項目の重要度に応じて,重み付け表に示すとおりの重み付けを行った上で,次の式で総合評価点を算出する。総合評価点が最も高い改善案はどれか。

〔総合評価点の算出式〕

総合評価点 = 効果の総評価点 - リスクの総評価点
採点結果表。案 1〜案 4 を評価項目ごとに 5 段階で採点した表。効果の作業コスト削減は 5,4,2,4。システム運用品質向上は 2,4,2,5。セキュリティ強化は 3,4,5,2。リスクの技術リスクは 4,1,5,1。スケジュールリスクは 2,4,1,5。
重み付け表。評価項目ごとの重み。効果の作業コスト削減は 3,システム運用品質向上は 2,セキュリティ強化は 4。リスクの技術リスクは 3,スケジュールリスクは 8。

正解 ウ

解説

各評価項目の点数に重みを掛けて合計する。効果の総評価点は,案1が 5×3+2×2+3×4=31,案2が 4×3+4×2+4×4=36,案3が 2×3+2×2+5×4=30,案4が 4×3+5×2+2×4=30。リスクの総評価点は,案1が 4×3+2×8=28,案2が 1×3+4×8=35,案3が 5×3+1×8=23,案4が 1×3+5×8=43。

総合評価点は,案1が 31−28=3,案2が 36−35=1,案3が 30−23=7,案4が 30−43=−13 で,最も高いのは案3。ウが正しい。効果だけを比べると案2が最も高いが,重みの大きいスケジュールリスクの点数が高いため総合では伸びない。

効果とリスクを重み付けして総合評価点を出す 効果の総評価点は 案1 31,案2 36,案3 30,案4 30。リスクの総評価点は 案1 28,案2 35,案3 23,案4 43(スケジュールリスクの重み 8 が大きい)。総合評価点=効果−リスクで,案1 3,案2 1,案3 7,案4 −13。最も高いのは案3。効果だけなら案2 が最も高い。 案1 案2 案3 案4 効果(重み 4・2・3) 31 36 30 30 リスク(重み 8・3) 28 35 23 43 総合(効果−リスク) 3 1 7 −13 案3:効果は 30 だが,重み 8 のスケジュールリスクが 1 と低い 案2:効果は最高の 36 でも,リスクが 35 で総合は 1 点数 × 重み を項目ごとに足してから,効果からリスクを引く
総合評価点=効果の総評価点−リスクの総評価点。最も高いのは案3

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)

問3

JIS Q 20000-2:2013(サービスマネジメントシステムの適用の手引)によれば,トップマネジメントは合意されたサービスマネジメントの目的を定義する。その際の考慮点のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

サービスマネジメントの目的は,サービス提供者の事業目的とサービスマネジメントの方針に沿って定める。事業として何を目指すのかと切り離れた目的を立てても,達成しても事業に貢献しないため。

アの重要業績評価指標や,ウの各プロセスの目的,エの要員の達成目標は,いずれも定めた目的から展開して決めるものであり,目的をそれらに合わせるのは順序が逆である。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)

用語解説:JIS Q 20000(サービスマネジメントシステム)

問4

ITIL 2011 edition によれば,サービス・ポートフォリオの構成要素のうち,サービス・パイプラインに収録されるサービスはどれか。

正解 エ

解説

サービス・ポートフォリオは,サービス・パイプライン,サービス・カタログ,廃止済みサービスの三つからなる。このうちサービス・パイプラインは,構想中や開発中で,将来提供する予定のサービスを収めた部分。顧客には公開しない。

アの提供可能なサービスとウの稼働中のサービスはサービス・カタログ,イの段階的に停止・取消しをするサービスは廃止済みサービスに当たる。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)

用語解説:ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)

問5

IT サービスマネジメントにおけるインシデントの段階的取扱い(エスカレーション)の種類のうち,階層的エスカレーションに該当するものはどれか。

正解 イ

解説

階層的エスカレーションは,対応に必要な権限や資源が足りないときに,指揮命令系統の上位へ引き上げること。関係者を招集する権限をもつ上級マネージャに委ねるのがこれに当たる。

アはより高い技術力をもつグループへ渡す機能的エスカレーション。ウのシフト交代時の引継ぎと,エの中央からローカルのサービスデスクへの割り振りは,担当の移動であってエスカレーションの種類ではない。

機能的エスカレーションと階層的エスカレーション 機能的エスカレーションは,担当者では解決できないインシデントを,より高い専門知識をもつサポートグループ(2次・3次サポート)に引き継ぐ(横の方向)。階層的エスカレーションは,権限や資源が足りないときに,広く関係者を招集できる上級の管理者へ引き上げる(縦の方向)。 サービスデスク 2次サポート 3次サポート 機能的:専門知識のあるグループへ(横) 上級管理者 階層的:権限のある上位へ(縦)
機能的は専門家へ(横),階層的は上の管理者へ(縦)

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)

問6

サービスマネジメントシステムにおけるサービス継続及び可用性管理プロセスで行う活動はどれか。

正解 イ

解説

JIS Q 20000 規格群のサービス継続及び可用性の管理では,サービスの可用性と継続に関する要求事項を,事業計画,SLA 及びリスクを考慮して,顧客及び利害関係者と合意する。要求事項には,アクセスの権利や応答時間のほか,サービス中止の許容可能な最長継続時間などが含まれる。イが該当する。

アはインシデント及び問題の影響を最小化・未然防止する問題管理,ウは容量・能力管理,エはサービスレベル管理の活動である。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)

用語解説:SLA(サービスレベル合意書)

問7

ITIL 2011 edition によれば,リアクティブな可用性管理の活動で用いる技法はどれか。

正解 ウ

解説

ITIL 2011 edition の可用性管理の活動は,発生した障害に対応するリアクティブな活動と,障害を未然に防ぐプロアクティブな活動に分けられる。サービス障害分析(SFA)は,発生したサービスの中断について,その根本的な原因や対応の経過を分析して改善策を見つける技法であり,リアクティブな活動で用いる。ウが該当する。

アの故障樹解析(FTA),イのコンポーネント障害インパクト分析(CFIA),エの単一障害点分析(SPOF 分析)は,いずれも障害が起きる前に設計上の弱点を洗い出すプロアクティブな技法である。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)

用語解説:ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)

問8

IT サービスマネジメントにおける,インシデント及びサービス要求管理の主な活動はどれか。

正解 イ

解説

インシデント及びサービス要求管理の目的は,合意したサービス目標の時間内にサービスを回復させること。原因の究明よりも,まず復旧を優先する点がこのプロセスの特徴。

アの既知の誤り記録の作成,ウの傾向分析と予防処置,エの未知の根本原因の特定は,いずれも問題管理の活動である。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)

用語解説:インシデント管理と問題管理

問9

システムの信頼性を測る指標の一つに稼働品質率がある。年間の稼働品質率で評価される信頼性が最も高いシステムはどれか。ここで,稼働品質率は次の式で算出し,システムの資産規模には総運用費用を用いるものとする。

稼働品質率 = 利用者に迷惑を掛けた回数 ÷ システムの資産規模
システムA〜Dの一覧表。列は,利用者に迷惑を掛けた回数(回/年)のオンライン処理とバッチ処理,オンライン稼働時間(千時間/年),システムの総運用費用(百万円/年)。A=3,12,6,120。B=4,8,3,100。C=6,2,4,80。D=6,3,2,60。

正解 ウ

解説

稼働品質率は「利用者に迷惑を掛けた回数 ÷ 資産規模(総運用費用)」なので,値が小さいほど信頼性が高い。オンライン稼働時間はこの式に使わない。

A=(3+12)÷120=0.125,B=(4+8)÷100=0.12,C=(6+2)÷80=0.10,D=(6+3)÷60=0.15。

最も小さいのは C の0.10なので,信頼性が最も高いのはシステム C。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)

問10

サービスマネジメントシステムの関係プロセスで実施する内容はどれか。

正解 ア

解説

関係プロセスは,事業関係管理と供給者管理からなる。各供給者について,関係,契約,パフォーマンスの管理に責任をもつ個人を指名するのは供給者管理の要求事項であり,関係プロセスに当たる。

イは構成管理(統合的制御プロセス),ウはインシデント及びサービス要求管理(解決プロセス),エはサービスの予算業務及び会計業務(サービス提供プロセス)である。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)

問11

IT サービスマネジメントの変更管理の要求事項に基づいて策定する変更管理規程に記載する規則のうち,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

変更管理規程には,通常変更と標準変更に加えて,緊急変更の手順を定めておく。緊急を要する情報セキュリティパッチの適用のように,通常の承認手順を待てない場合に備え,簡略化した承認と事後の記録の手順をあらかじめ決めておく。

イは誤りで,サービスの廃止(除去)は重大な影響を及ぼす可能性のあるサービスの変更として扱う。ウも誤りで,CMDB は変更を展開した後に実態に合わせて更新する。エも誤りで,変更が失敗したときの切戻しは元の変更要求の計画にあらかじめ含めておく。

変更管理の CAB と緊急変更 変更要求(RFC)は,影響度と緊急度から優先度を決め,変更諮問委員会(CAB)が評価・優先度付け・許可について変更マネージャに助言する。緊急の変更は CAB を集める時間がないので,緊急時に決定できる小さな組織(ECAB)を前もって決め,簡略化した承認と事後の記録の手順を規程に定めておく。 変更要求 RFC CAB 評価・助言 許可・実施 緊急の変更 ECAB 少人数ですぐ決める 緊急変更の手順は変更管理規程に前もって定める 標準変更(事前承認済み)は CAB にかけない
通常は CAB,緊急は ECAB と簡略化した手順

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)

問12

ITIL 2011 edition のインシデント管理において,インシデント・モデルを定義しておくことによって得られるメリットはどれか。

正解 ウ

解説

インシデント・モデルは,繰り返し発生する種類のインシデントについて,取るべき手順とその順序,責任者,エスカレーション経路,解決までの時間枠をあらかじめ定めておくもの。定義しておけば,担当者の力量に左右されずに,決めた経路と時間枠の中で処理できる。

アはインシデント管理の KPI や測定基準の話,イはインシデント記録や既知のエラーデータベースの効用,エは根本原因が未判明の問題に対するワークアラウンド(問題管理)であり,いずれもモデルを定義したことによる直接のメリットではない。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)

用語解説:インシデント管理と問題管理 ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)

問13

“24 時間 365 日”の有人オペレーションサービスを提供する。シフト勤務の条件が次のとおりであるとき,オペレータは最少で何人必要か。

〔条件〕

正解 イ

解説

7 日間に必要な延べ勤務回数は,7 日×3 シフト×2 人=42 回。1 人当たりの勤務回数は 7 日間で 5 回以内なので,必要な人数は 42÷5=8.4,すなわち 9 人以上になる。

8 人では 8×5=40 回にしかならず 42 回に届かない。10 人や 16 人でも条件は満たせるが“最少”ではない。

シフト勤務に必要な人数 1日3シフト,各シフト2人以上なので,7日間で必要な延べ勤務は 7×3×2=42 回。1人は7日間に5回までなので,42÷5=8.4 で,9人以上が要る。8人では 8×5=40 回で足りない。 月 火 水 木 金 土 日 シフト1 2 2 2 2 2 2 2 シフト2 2 2 2 2 2 2 2 シフト3 2 2 2 2 2 2 2 延べ 7 × 3 × 2 = 42 回 42 ÷ 5 = 8.4 → 9 人
延べの回数 ÷ 1人の上限,端数は切り上げ

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)

問14

JDCC(日本データセンター協会)が制定する“データセンターファシリティスタンダード”において,UPS 設備の冗長性に関するティア基準がある。ティア 3 に該当する構成はどれか。ここで,ティア 3 は機器のメンテナンスなど一部設備の一時停止時においても,コンピューティングサービスを継続して提供できる冗長構成の設備を有するレベルである。また,システム構成として必要となる常用 UPS の台数は N とする。

正解 ウ

解説

ティア 3 は,機器のメンテナンスなどで一部の設備を止めてもサービスを継続できるレベル。常用に必要な N 台に予備を 1 台加えた N+1 構成にすれば,1 台を停止しても残る N 台で必要な容量をまかなえる。

イの N は予備がなく,1 台の停止がそのままサービス停止につながる。アの 2N は系統ごと二重化して障害時にも無停止で切り替えられる構成で,より上位のティアが求める水準。エの N+2 はティア 3 の要件を超える過剰な構成である。

UPS の冗長構成とティア 常用に N 台の UPS が要るとき,N 台だけでは1台止めるとサービスが止まる。N+1 なら1台を保守で止めても残りの N 台で動かせるので,メンテナンス中もサービスを続けられるティア3 の水準になる。2N は系統ごと二重化した,より上位の構成。 N UPS UPS UPS N+1 UPS UPS UPS UPS 2N UPS UPS UPS UPS UPS UPS 1台止めると停止 保守中も継続 系統ごと二重化 塗った UPS が予備。ティア3 は N+1
保守で1台止めても続けられるのは N+1

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)

問15

内部統制としての効果的な職務の分離の例として,最も適切なものはどれか。

正解 ア

解説

職務の分離は,1 人が単独で不正を完結できないように,相互に牽制が働く業務どうしを別の担当者に割り当てること。開発部門のプログラマが運用部門のオペレータを兼務しなければ,自分が仕込んだプログラムを自分で本番環境に流すことができなくなる。

イの検品確認とその入力は同じ確認作業の続きなので分けても牽制にならない。ウの現物の確認と発注情報の確認はどちらも確認する側の作業である。エのシステムの始動は単なる起動操作で,送金の実行と牽制関係にない。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)

用語解説:内部統制(全般統制・業務処理統制)

問16

プロジェクトで必要な作業とメンバの関係を表したものはどれか。

正解 ウ

解説

責任分担マトリックス(RAM)は,WBS で洗い出した作業を行に,メンバや役割を列に置いて,誰がどの作業にどう関わるかを表した表。RACI チャートはその一形態である。

アのコロケーションはメンバを同じ場所に集める配置の工夫,イの資源ヒストグラムは期間ごとの資源投入量を棒グラフで表したもの,エのプロジェクト憲章はプロジェクトの開始を公式に許可する文書である。

責任分担マトリックス(RACI) 作業と人の表に,R(実行責任:作業をする),A(説明責任:最終的に責任を負う,1つの作業に1人),C(協議先:相談を受ける),I(報告先:結果を知らされる)を書き込む。 作業 PM 設計者 開発者 顧客 要件定義 A R I C 設計 A R C I 製造 A C R I R:実行責任 A:説明責任 C:協議先 I:報告先 役割と責任を作業ごとに明らかにする
A は1つの作業に1人だけ

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)

問17

自動生産システムの増強に関する次のディシジョンツリーにおいて,新規にシステムを開発する場合の期待金額価値(EMV)は何億円か。

ディシジョンツリー。決定ノード“自動生産システムを増強する”から二つに分岐する。上は“新規システム開発(投資額:50億円)”で,機会ノードから 60%で“需要が大きい(収益:80億円)”→30億円,40%で“需要が小さい(収益:40億円)”→−10億円。下は“既存システム改修(投資額:20億円)”で,60%で“需要が大きい(収益:40億円)”→20億円,40%で“需要が小さい(収益:20億円)”→0億円。

正解 ア

解説

期待金額価値(EMV)は,起こり得る結果の金額に,それぞれの発生確率を掛けて足し合わせた値。新規システム開発を選んだ場合の分岐の終点は,需要が大きい(確率 60%)のとき 30 億円,需要が小さい(確率 40%)のとき −10 億円なので,0.6×30+0.4×(−10)=18−4=14 億円。

投資額 50 億円を改めて引くと合わない。分岐の終点に示された 30 億円と −10 億円は,収益から投資額を差し引いた後の値なので,そのまま期待値を計算する。既存システム改修の側(0.6×20+0.4×0=12 億円)と混同しないことも要点。

デシジョンツリー:新規開発の EMV 新規システム開発の枝の先には,収益から投資額を引いた値(30 億円と −10 億円)が書かれている。EMV=0.6×30+0.4×(−10)=14 億円。投資額をもう一度引かない。 新規開発(投資50) 60%:需要大 30 40%:需要小 −10 EMV 14 既存改修(投資20) 60%:需要大 20 40%:需要小 0 EMV 12 新規開発の EMV = 0.6×30 + 0.4×(−10) = 14 億円
終点の値が「投資額を引いた後」なら,そのまま期待値を取る

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)

問18

プロジェクト管理で使用する分析技法のうち,傾向分析の説明はどれか。

正解 ウ

解説

傾向分析は,時間の経過に伴ってプロジェクトのパフォーマンスがどう変わってきたかを分析する技法。ある時点の値だけでなく変化の向きを見ることで,このままいくとどうなるかを予測できる。

アはディシジョンツリー分析,イは個々のリスクの影響度を調べる定性的リスク分析,エは特性要因図(フィッシュボーン図)による分析である。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)

問19

MLC(Multi-Level Cell)フラッシュメモリの特徴として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

MLC(Multi-Level Cell)は,一つのメモリセルに 2 ビット以上の情報を記憶する方式のフラッシュメモリ。1 ビットだけを記憶する SLC に比べて同じ面積により多くのデータを詰められるが,書換え可能回数は少なくなる。

アはコンデンサの電荷を使う DRAM,イは電気抵抗の値を使う ReRAM(抵抗変化型メモリ),エはフリップフロップを使う SRAM の説明である。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)

問20

SAN(Storage Area Network)におけるサーバとストレージの接続形態の説明として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

SAN は,サーバとストレージをファイバチャネルなどによる専用のネットワークで接続する構成。業務用の LAN とは別の経路になるので,ストレージへのアクセスが LAN の通信と干渉しない。

アはサーバに直結する DAS,ウとエは LAN 上でファイル共有プロトコル(CIFS や NFS)を使う NAS の説明である。

DAS・SAN・NAS の違い DAS はサーバにディスクを直接つなぎ,ブロック単位で読み書きする。SAN は LAN とは別の専用ネットワーク(ファイバチャネルなど)でサーバとストレージをつなぎ,ブロック単位で読み書きする。NAS はふだんの LAN につなぐファイルサーバで,NFS や SMB でファイル単位で共有する。 DAS SAN NAS サーバ ディスク 直接つなぐ サーバ サーバ FC スイッチ ストレージ LAN とは別の専用網 PC サーバ ふだんの LAN NAS NFS・SMB で共有 ブロック単位 ブロック単位 ファイル単位 SAN は大量の読み書きが LAN を混ませない
見分けるのは「どの線でつなぐか」と「ブロックかファイルか」

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)

用語解説:SAN(Storage Area Network)

問21

WAL(Write Ahead Log)プロトコルの目的に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

WAL(Write Ahead Log)は,更新後のデータをデータベースに書き込むより先に,更新内容のログを書き出す方式。コミット時点でログが確実に残るので,DBMS が停止して“コミット済みだがデータベースにはまだ書かれていない更新”があっても,ログからロールフォワードして回復できる。

アはチェックポイント処理の話であり WAL の目的ではない。イのデッドロックの検出は待ちグラフなどで行う。エはログの媒体障害に備える多重化の話で,WAL が保証するものではない。

コミットが完了するのはログファイルに書いた時点 トランザクションの更新は,まず主記憶のバッファで行い,その更新内容をログバッファを経てログファイル(ディスク)に書き出す。コミット情報がログファイルに書けた時点でコミット完了とする(WAL:データベースより先にログを書く)。データベース本体への書出しは後のチェックポイントでよく,その前に止まってもログからロールフォワードして回復できる。 主記憶(障害で消える) 更新命令の完了 ログバッファに書く ディスク(残る) ログファイルに書く ここでコミット完了 データベースに書く 後のチェックポイントでよい ログをデータベースより先に書く(WAL) 止まっても,ログにあるコミット済みの更新は ロールフォワードで回復できる
主記憶の上にある間は障害で消える。ディスクのログに書けたら完了

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)

用語解説:障害回復(ロールバック・ロールフォワード) 排他制御とデッドロック(ACID 特性)

問22

図は,組織内の TCP/IP ネットワークに接続しているクライアントが,プロキシサーバ,ルータ,インターネットを経由して組織外の Web サーバを利用するときの経路を示している。この通信の TCP コネクションが設定される場所はどれか。

組織内ネットワークの中にクライアントとプロキシサーバが同じ LAN に接続され,その LAN がルータ,インターネットを経由して組織外の Web サーバにつながる構成図。

正解 イ

解説

プロキシサーバはクライアントに代わって Web サーバへアクセスする。このためコネクションはクライアントとプロキシサーバの間で一度終端され,プロキシサーバと Web サーバの間で改めて張られる。TCP コネクションはこの 2 本になる。

アは誤りで,プロキシを経由する以上クライアントと Web サーバが直接コネクションを張ることはない。ウとエのルータは IP パケットを中継するネットワーク層の装置であり,TCP コネクションの終端にはならない。

プロキシを通ると TCP コネクションは2本 クライアントはプロキシサーバと TCP コネクションを張り,プロキシサーバが改めて Web サーバと TCP コネクションを張る。ルータは IP パケットを中継するネットワーク層の装置なので,TCP コネクションの終点にはならない。 クライアント プロキシ ルータ Web TCP ① TCP ② IP パケットを中継するだけ TCP コネクションは クライアント⇔プロキシ,プロキシ⇔Web の2本
TCP の終点はクライアント・プロキシ・Web サーバ。ルータは素通り

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)

問23

XML 署名の特徴はどれか。

正解 ウ

解説

XML 署名は XML 文書のための署名方式で,文書全体だけでなく特定の要素にだけ署名を付けられる。このため,文書の一部にだけ署名する部分署名や,複数の署名者が別々の範囲に署名する多重署名といった要件にも対応できる。

アは TLS,イは Ajax の説明で,どちらも XML 署名ではない。エは署名データを画像に埋め込むステガノグラフィの説明である。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)

用語解説:TLS(SSL)

問24

署名されたソフトウェアを導入する前に,そのソフトウェアの開発元又は発行元を確認するために使用する証明書はどれか。

正解 ウ

解説

コードサイニング証明書は,ソフトウェアの開発元又は発行元が署名するために使う証明書。導入前に署名を検証することで,作成者が誰であるかと,配布の途中で改ざんされていないことを確認できる。

アの EV SSL 証明書とエのサーバ証明書は Web サーバの正当性を確認するもの,イのクライアント証明書は利用者や端末を認証するもので,いずれもソフトウェアの発行元の確認には使わない。

コードサイニング証明書 ソフトウェアの発行元は,自分の秘密鍵でソフトウェアに署名し,コードサイニング証明書を付けて配る。利用者はインストールの前に,証明書の公開鍵で署名を検証し,誰が作ったかと,配る途中で改ざんされていないかを確かめる。サーバ証明書や EV SSL 証明書は Web サーバを,クライアント証明書は利用者を確かめるもの。 発行元 秘密鍵で署名 ソフトウェア +署名+証明書 利用者 証明書で検証 分かること:作ったのは誰か,改ざんされていないか サーバ証明書は Web サーバ,クライアント証明書は利用者を確かめる
署名で発行元と改ざんの有無を確かめる

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)

用語解説:TLS(SSL)

問25

シュリンクラップ契約において,ソフトウェアの使用許諾契約が成立するのはどの時点か。

正解 ウ

解説

シュリンクラップ契約は,包装(シュリンクラップ)を解くことで使用許諾条件に同意したとみなす契約形態。したがって契約が成立するのは CD-ROM の包装を解いた時点である。

アの代金の支払とイの受取りは売買に関する行為であって使用許諾への同意ではない。エのインストールの時点で成立するのは,インストール中に条件を表示して同意を求めるクリックオン(クリックラップ)契約である。

出典:平成29年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)

用語解説:著作権と知的財産権(特許・営業秘密・ライセンス)