平成23年度 秋期に実施されたITサービスマネージャ試験
午前Ⅱ(2026年度からの科目A-2)の全25問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。
この試験について:ITサービスマネージャ試験について
この年度を解いてみる
問1
重要性や需要変動,在庫コストの観点から商品単位に定量発注法,定期発注法,2 ビン発注法のいずれの方法にするかを決定したい。発注方式を決定するために用いる手法として,適切なものはどれか。
ア ABC 分析 正解
イ 管理図
ウ クリティカルパスメソッド
エ 線形計画法
正解 ア
解説
ABC 分析は,商品を年間の使用金額(売上高や在庫金額)の大きい順に並べて累計比率を求め,A,B,C の三つのランクに分ける手法である。金額の大きい A 品目は需要を見ながらきめ細かく管理する定期発注法,中程度の B 品目は定量発注法,金額の小さい C 品目は手間の掛からない 2 ビン発注法というように,ランクに応じて発注方式を決められる。アが適切である。
イの管理図は工程が安定しているかを監視する手法,ウのクリティカルパスメソッドはプロジェクトの日程を管理する手法,エの線形計画法は制約条件の下で目的関数を最大又は最小にする解を求める手法であり,発注方式の決定には用いない。
ABC 分析と発注方式
品目を年間の使用金額の大きい順に並べて累計比率を求め,上位(例えば累計 70%まで)を A,次(90%まで)を B,残りを C に分ける。金額の大きい A はきめ細かく管理する定期発注方式,B は定量発注方式,C は手間の掛からない2ビン(ダブルビン)方式というように発注方式を選ぶ。
累計比率
A
定期発注
B
定量発注
C
2ビン
70
90
品目(金額の大きい順)
区切りの比率は例
金額の大きい順に A・B・C に分け,ランクごとに発注方式を変える
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)
用語解説:クリティカルパス
問2
IT サービスマネジメントにおけるプロセスで,サービスライフサイクルのサービスストラテジに含まれる戦略レベルのプロセスの組みはどれか。
ア インシデント管理,問題管理
イ サービス資産管理,構成管理
ウ サービスポートフォリオ管理,財務管理 正解
エ サービスレベル管理,キャパシティ管理
正解 ウ
解説
ITIL(v3)のサービスストラテジで扱う戦略レベルのプロセスには,どのサービスに投資するかを管理するサービスポートフォリオ管理,IT サービスの予算や会計,課金を扱う財務管理,需要管理などがある。ウが該当する。
アのインシデント管理と問題管理はサービスオペレーション,イのサービス資産管理及び構成管理はサービストランジション,エのサービスレベル管理とキャパシティ管理はサービスデザインに含まれるプロセスである。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)
用語解説:インシデント管理と問題管理 SLA(サービスレベル合意書)
問3
コンピュータシステムにおけるジョブスケジューリングの特徴のうち,適切なものはどれか。
ア CPU に割り当てるジョブを OS が強制的に切り替えるタイムスライス方式では,タイマ割込みが多発するので,スループットが低下する。
イ FCFS(first-come first-served)方式のジョブスケジューリングは,ジョブ間に CPU を公平に割り当てるので,スループットや応答時間の保証が可能となる。
ウ 対話型処理とバッチ処理が混在するシステムでは,対話型処理の優先度を高くすることによって,対話型処理の応答性能の向上が期待できる。 正解
エ 入出力を多用するジョブよりも CPU を多用するジョブの処理優先度を上げた方が,CPU の待ち時間が少なくなるので,全体のスループットの向上が期待できる。
正解 ウ
解説
対話型処理は利用者が画面の前で応答を待っているので,バッチ処理より優先度を高くして CPU を先に割り当てれば,対話型処理の応答性能の向上が期待できる。ウが適切である。
アは誤りで,タイムスライス方式は一定時間ごとに CPU を切り替えて各ジョブに公平に処理時間を与える方式であり,タイマの間隔は切替えのオーバーヘッドに比べて十分長く設定されるので,割込みの多発でスループットが低下することが特徴ではない。イも誤りで,FCFS 方式は到着順に処理するだけなので,長いジョブがあると後のジョブが待たされ,応答時間を保証できない。エも誤りで,入出力を多用するジョブの優先度を上げて入出力を先に開始させる方が,その間に CPU を他のジョブに使えるので,全体のスループットが向上する。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)
問4
情報システムの設計において,フェールソフトが講じられているのはどれか。
ア UPS 装置を設置することで,停電時に手順どおりにシステムを停止できるようにし,データを保全する。
イ 制御プログラムの障害時に,システムの暴走を避け,安全に運転を停止できるようにする。
ウ ハードウェアの障害時に,パフォーマンスは低下するが,構成を縮小して運転を続けられるようにする。 正解
エ 利用者の誤操作や誤入力を未然に防ぐことで,システムの誤動作を防止できるようにする。
正解 ウ
解説
フェールソフトは,故障が起きたときにシステムを止めるのではなく,機能や性能を落としてでも動き続けさせる(縮退運転する)考え方。ハードウェア障害時に構成を縮小して運転を続けるウがこれに当たる。
アとイは,障害時に安全な側へ倒して停止させるフェールセーフ。エは利用者の誤操作を未然に防ぐフールプルーフの例。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)
用語解説:信頼性設計(フェールセーフ・フェールソフト・フールプルーフ)
問5
RAID において,信頼性向上ではなく,性能向上だけを目的としたものはどれか。
ア RAID0 正解
イ RAID1
ウ RAID3
エ RAID5
正解 ア
解説
RAID0 は,データを複数のディスクに分散して書き込むストライピングだけを行う方式である。並行して読み書きできるので性能は向上するが,冗長データをもたないので,1 台のディスクが故障するとデータを復元できず,信頼性は向上しない。アが該当する。
イの RAID1 は同じデータを 2 台のディスクに書き込むミラーリング,ウの RAID3 はパリティ専用のディスクを設ける方式,エの RAID5 はパリティを複数のディスクに分散して記録する方式であり,いずれも冗長データによって信頼性を高める。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)
用語解説:RAID(ディスクアレイ)
問6
IT サービスマネジメントにおいて,リリース管理からインシデント管理に伝達することが望ましいとされている情報はどれか。
ア リリースが許可された証拠
イ リリースするものに含まれている既知の誤り 正解
ウ リリースに関連しないインシデント
エ リリースまでに要したコスト
正解 イ
解説
リリースに含まれることが分かっている既知の誤りの情報をインシデント管理に伝えておけば,リリース後にその誤りによるインシデントが発生したときに,サービスデスクが原因や回避策を把握して迅速に対応できる。イが該当する。
アのリリースが許可された証拠は変更管理やリリース管理で記録として保持するもので,インシデントの対応に必要な情報ではない。ウのリリースに関連しないインシデントは,リリース管理から伝える情報ではない。エのリリースまでに要したコストは財務管理で扱う情報である。
障害が起きてから本格的に直るまで
インシデント管理はサービスをできるだけ早く元に戻し,原因が分からなくても再起動や回避策で戻ればよしとする。問題管理は根本原因を突き止め,原因と回避策を既知の誤りとして記録してインシデント管理に渡す。恒久的な解決策は変更要求(RFC)として変更管理に出され,リリース管理を経て本番に展開される。
インシデント管理
早く元に戻す
問題管理
根本原因を探す
変更管理
変更を評価・承認
リリース管理
本番に展開
RFC
既知の誤り・回避策
時間をかけずに戻す
時間をかけてでも再発を防ぐ
原因を調べるのはインシデント管理ではなく問題管理
既知の誤り(原因と回避策)の情報は,問題管理からインシデント管理へ渡る
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)
用語解説:インシデント管理と問題管理
問7
システムが障害によって停止したときに行う,システム再開の方法の一つであるウォームスタートの説明はどれか。
ア システムの再立上げの過程で,システム停止時に処理中であったジョブのうち,処理の続行が可能なものは処理を再開させ,入出力キューに残っているものは,そのまま処理の対象とする。 正解
イ システムの初期化のために,イニシャルプログラムローダによってコンフィギュレーション情報を主記憶装置上に展開する。
ウ システムの停止で処理が中断したジョブについて,それまでに採取されたチェックポイント情報によって回復作業を実施する。
エ ジャーナルファイルに記録されているデータを使用して,ファイルを障害発生以前の状態に戻す。
正解 ア
解説
ウォームスタートは,システムを完全に初期化せず,停止時の状態の情報を生かして再開する方法である。システム停止時に処理中であったジョブのうち続行できるものは処理を再開し,入出力キューに残っているジョブもそのまま処理の対象とするので,短時間で業務を再開できる。アが該当する。
イはシステムを初期状態から立ち上げるコールドスタート(イニシャルプログラムロード)の説明である。ウはチェックポイントからの再開(チェックポイントリスタート),エはジャーナル(ログ)を用いてファイルを障害前の状態に戻すロールバックの説明である。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)
用語解説:障害回復(ロールバック・ロールフォワード)
問8
ITIL のキャパシティ管理において,監視項目となるものはどれか。
ア インシデント発生件数
イ オペレータ要員数
ウ ディスク使用率 正解
エ 平均故障間隔
正解 ウ
解説
キャパシティ管理は,IT リソースの能力が現在と将来の需要を満たすように管理するプロセスであり,CPU 使用率,メモリ使用率,ディスク使用率,ネットワーク帯域の使用率,応答時間などを監視して,資源の不足を事前に把握する。ウが該当する。
アのインシデント発生件数はインシデント管理,エの平均故障間隔は可用性管理で監視する指標である。イのオペレータ要員数は,IT リソースの使用状況を表す監視項目ではない。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)
用語解説:ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)
問9
ITIL において,サービスレベル管理プロセスの活動とされているものはどれか。
ア IT サービスの提供に必要な予算に対して,適切な資金を確保する。
イ 現在のリソースのチューニングと最適化,及び将来のリソース要件に関する予測を記載した計画を作成する。
ウ 災害や障害などで事業が中断しても,要求されたサービス機能を合意された期間内に確実に復旧できるように,ビジネスインパクトの評価や復旧優先順位を明確にする。
エ 提供する IT サービスとその目標値などについて,IT サービスプロバイダが顧客との間で合意書を交わす。 正解
正解 エ
解説
サービスレベル管理プロセスは,提供する IT サービスとそのサービス目標を特定し,サービス提供者と顧客の間でサービスレベル合意書(SLA)として合意し,その達成状況を監視・報告して改善していくプロセスである。エが該当する。
アの予算と資金の確保は IT サービス財務管理,イのリソースの最適化と将来のリソース要件の予測はキャパシティ管理,ウのビジネスインパクトの評価や復旧優先順位の明確化は IT サービス継続性管理の活動である。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)
用語解説:ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス) SLA(サービスレベル合意書)
問10
JIS Q 20000 規格群におけるサービス継続及び可用性の管理プロセスで行う活動はどれか。
ア インシデント及び問題の影響を識別し,最小限に抑える,又は回避するための手順を採用する。
イ サービス中止の許容可能な最長継続時間などの要求事項を,事業計画,SLA 及びリスクアセスメントに基づいて特定する。 正解
ウ サービスの容量・能力を監視し,サービスのパフォーマンスを調整して,かつ,適切な容量・能力を提供するための方法,手順及び技法を明確にする。
エ 提供する個々のサービスを定義し,合意して,かつ,文書化する。
正解 イ
解説
JIS Q 20000 規格群のサービス継続及び可用性の管理では,サービスの可用性と継続に関する要求事項を,事業計画,SLA 及びリスクアセスメントに基づいて特定する。要求事項には,アクセスの権利や応答時間のほか,サービス中止の許容可能な最長継続時間などが含まれる。イが該当する。
アのインシデント及び問題の影響を最小限に抑える又は回避する手順は問題管理,ウの容量・能力の監視と調整は容量・能力管理,エの個々のサービスの定義,合意及び文書化はサービスレベル管理の活動である。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)
用語解説:JIS Q 20000(サービスマネジメントシステム) SLA(サービスレベル合意書)
問11
システム運用管理における管理情報の取扱いに関する記述のうち,最も適切なものはどれか。
ア 管理は少人数の管理者グループで行う。管理用アカウントは,グループ専用のものを共用する。管理情報は,一般利用者に公開し,利用者自身がチェックできるようにする。
イ 管理は少人数の管理者グループで行う。管理用アカウントは,グループ専用のものを共用する。管理情報は,セキュリティレベルなどを考慮した上で一般利用者への公開を行う。
ウ 管理は少人数の管理者グループで行う。管理用アカウントは,個々の管理者専用のものを使用する。管理情報は,セキュリティレベルなどを考慮した上で一般利用者への公開を行う。 正解
エ 管理は一人の管理者で行う。管理情報は,セキュリティレベルなどを考慮した上で一般利用者への公開を行う。
正解 ウ
解説
管理情報を扱う管理者は,一人に任せると不在時に対応できず相互のチェックも働かないので,少人数のグループで担当する。管理用アカウントを共用すると誰が操作したかを特定できないので,管理者ごとに専用のアカウントを使う。管理情報には機密性の高いものも含まれるので,セキュリティレベルなどを考慮した上で一般利用者に公開する。これらを満たすウが最も適切である。
アは管理用アカウントを共用し,管理情報を無条件で公開している。イは管理用アカウントを共用している。エは管理を一人の管理者に任せている。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)
問12
様式が複数ある伝票から,様式ごとに定められた項目のデータを入力する。項目の入力漏れを検出するためにプログラムで実行する処理として,適切なものはどれか。
ア 伝票の様式ごとに定められた項目数と入力された項目数が一致することを確認する。 正解
イ 伝票の様式に基づいて,入力された項目の値のデータ形式を検査する。
ウ 入力された項目の内容が,伝票で定義された範囲に収まっていることを確認する。
エ マスタファイルと突き合わせて,入力された項目の内容が正しいことを確認する。
正解 ア
解説
項目の入力漏れは,入力されるべき項目が入力されていない誤りである。伝票の様式ごとに定められた項目数と,実際に入力された項目数を比べれば,入力されていない項目があることを検出できる。アが適切である。
イはデータの形式が正しいかを確かめるフォーマットチェック,ウは値が定められた範囲内にあるかを確かめる範囲チェック,エはマスタファイルと照合して内容の正しさを確かめる照合チェックであり,いずれも入力された値の誤りを検出するもので,入力漏れの検出には向かない。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)
問13
雷サージによって通信回線に誘起された異常電圧から通信機器を防護するための装置はどれか。
ア IDF(Intermediate Distributing Frame)
イ MCCB(Molded Case Circuit Breaker)
ウ アレスタ 正解
エ 避雷針
正解 ウ
解説
アレスタ(避雷器)は,雷サージによって通信回線や電源線に誘起された異常電圧を大地に逃がし,接続された通信機器などを過電圧から保護する装置である。ウが該当する。
アの IDF(中間配線盤)は,建物のフロアなどで配線を中継・分岐する配線盤である。イの MCCB(配線用遮断器)は,過電流が流れたときに電路を遮断する装置で,雷サージの異常電圧から機器を守るものではない。エの避雷針は,建物への直撃雷を受けて大地に流す設備であり,通信回線に誘起された異常電圧から通信機器を守るものではない。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)
問14
システム監査人の外観上の独立性に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア 監査報告書における指摘事項の多寡によって報酬が決まるような契約が望ましい。
イ 公正かつ客観的な監査判断を行うための精神上の独立性が保たれることによって保証される。
ウ 組織的な独立の他,過去の自己の業務に対する監査とならないか,被監査部門の長が監査人の元上司でないか,なども考慮する必要がある。 正解
エ 第三者がうかがい知ることの困難な精神上の独立性とは異なり,内部監査では必要ないが,外部監査では厳密に要求される。
正解 ウ
解説
システム監査人の外観上の独立性は,第三者から見て,システム監査人が監査対象と利害関係をもたず,公正な監査を行える立場にあると認められることである。組織上独立していることのほか,過去に自分が担当した業務を監査することにならないか,被監査部門の長が監査人の元上司でないかなども考慮する必要がある。ウが適切である。
アは,指摘事項の多寡で報酬が決まると監査判断に偏りが生じるおそれがあるので,独立性を損なう。イは精神上の独立性の説明であり,外観上の独立性は精神上の独立性によって保証されるものではない。エは誤りで,内部監査でも,システム監査人は監査対象の部門から独立していることが求められる。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)
用語解説:システム監査(監査手続・監査証拠・フォローアップ)
問15
システム開発委託先(受託者)から委託元(委託者)に納品される成果物に対する受入れテストの適切性を確かめるシステム監査の要点はどれか。
ア 委託者が作成した受入れテスト計画書に従って,受託者が成果物に対して受入れテストを実施していること
イ 受託者が成果物と一緒に受入れテスト計画書を納品していること
ウ 受託者から納品された成果物に対して,委託者が受入れテストを実施していること 正解
エ 受託者から納品された成果物に対して,監査人が受入れテスト計画を策定していること
正解 ウ
解説
受入れテストは,委託者(委託元)が,受託者から納品された成果物が要求したとおりのものになっているかを確かめるために,委託者自身が実施するテストである。成果物に対して委託者が受入れテストを実施していることを確かめるウが,監査の要点として適切である。
アは受入れテストを受託者が実施しており,委託者による確認になっていない。イは受入れテスト計画書を受託者が作成して納品しており,委託者の立場からの計画になっていない。エのシステム監査人が受入れテスト計画を策定すると,監査対象の業務に自ら関与することになり,監査人の独立性を損なう。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)
用語解説:システム監査(監査手続・監査証拠・フォローアップ)
問16
プロジェクトのスケジュールを管理するときに使用する“クリティカルチェーン法”の特徴はどれか。
ア クリティカルパス上の作業に生産性を向上させるための開発ツールを導入する。
イ クリティカルパス上の作業に要員を追加投入する。
ウ クリティカルパス上の先行作業が終了する前に後続作業に着手し,並行して実施する。
エ クリティカルパスを守るために,フィーディングバッファと所要期間バッファを設ける。 正解
正解 エ
解説
クリティカルチェーン法は,資源の制約まで考えて最も長い作業の連なり(クリティカルチェーン)を求め,各作業の見積りに含まれていた余裕を取り上げてまとめ直す手法である。まとめた余裕は,チェーンの最後に置くプロジェクトバッファ(所要期間バッファ)と,チェーンに合流する作業の後に置く合流バッファ(フィーディングバッファ)として管理し,遅れはバッファの消費で吸収する。エが正しい。
イはクラッシング(資源の追加投入),ウはファストトラッキング(先行作業と後続作業の並行実施)。アはツール導入による生産性向上であり,いずれもクリティカルチェーン法の特徴ではない。
クリティカルチェーン法のバッファ
各作業の見積りに含まれている余裕を取り除いて短くし,取り除いた余裕の一部をまとめてプロジェクトの最後にプロジェクトバッファとして置く。クリティカルチェーンに合流する経路の末尾には合流バッファを置き,合流する経路の遅れがクリティカルチェーンに及ばないようにする。
従来:作業ごとに余裕を含む
A
余裕
B
余裕
C
余裕
CCPM:余裕を取り除き,まとめて置く
A
B
C
プロジェクト
バッファ
D
合流
合流バッファ:合流する経路の末尾に置く
余裕は作業ごとに持たせず,まとめて最後(と合流点)に置く
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)
用語解説:クリティカルパス
問17
プロジェクトの進捗管理を EVM(Earned Value Management)で行っている。コストが超過せず,納期にも遅れないと予想されるプロジェクトはどれか。ここで,それぞれのプロジェクトの開発の生産性は今までと変わらないものとする。
正解 ウ
解説
EVM では,出来高(EV)と実コスト(AC)を比べるとコストの状況が,EV と計画値(PV)を比べるとスケジュールの状況が分かる。今後の生産性が変わらないとき,コストが超過しないのは EV が AC 以上(CPI≧1),納期に遅れないのは EV が PV 以上(SPI≧1)の場合である。現在の時点で EV が最も上にあり,PV,AC の順に並ぶウが両方を満たす。
アは EV が PV より上なので予定より進んでいるが,AC が EV を上回りコストが超過する。イは AC が最も高く EV が最も低いので,コスト超過でスケジュールも遅れている。エは AC が EV より低くコストは収まるが,EV が PV を下回りスケジュールが遅れている。
EVM の3本の線と SV・CV
PV(計画の出来高)・EV(実際の出来高)・AC(実際のコスト)を累積で描く。現時点の EV と PV の縦の差がスケジュール差異 SV=EV−PV で,負なら進捗の遅れを金額で表したもの。EV と AC の差がコスト差異 CV=EV−AC で,負ならコスト超過。EV が PV 以上なら納期に遅れず,EV が AC 以上ならコストは超過しない。
時間
金額(累積)
現時点
PV
EV
AC
SV
CV
SV=EV−PV(進捗) CV=EV−AC(コスト)
EV と PV の差は進捗の遅れ(金額),EV と AC の差はコストの超過
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)
用語解説:EVM(アーンドバリューマネジメント)
問18
定性的リスク分析の活動として,適切なものはどれか。
ア 検討対象以外の全ての不確実な要素をベースライン値に固定した状態で,プロジェクトの個々の不確定要素が,検討対象の目標に与える影響の度合いを調べる。
イ デシジョンツリー図を使用して,選択肢に対する期待金額価値(EMV)を比較する。
ウ リスクに関するインタビューを通じて,各 WBS 要素に対する三点見積りをする。
エ リスクの発生確率と影響度を評価して,識別したリスクに等級付けをする。 正解
正解 エ
解説
定性的リスク分析は,識別したリスクの発生確率と,発生したときの影響度を評価し,それらを組み合わせてリスクに等級付け(優先順位付け)をする活動である。エが適切である。
アは,他の要素を固定して個々の不確定要素が目標に与える影響を調べる感度分析,イはデシジョンツリーを用いた期待金額価値(EMV)の比較,ウはインタビューで得た三点見積りを用いた分析であり,いずれもリスクを数値で分析する定量的リスク分析の活動である。
発生確率・影響度マトリックス
定性的リスク分析では,リスクごとに発生確率と影響度を評価し,マトリックスに置いて優先順位を付ける。右上(確率も影響も大きい)ほど優先して対応する。
発生確率
高
低
影響度(小 → 大)
濃い所ほど
優先して対応
数値で計算するのは定量的リスク分析
確率も影響も大きい右上を優先
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)
問19
MPU の高速化技術の一つであるスーパスカラの特徴として,適切なものはどれか。
ア 同時に実行可能な複数の動作をまとめて一つの命令として実行する。
イ 独立した複数の命令ストリームを用意し,これらの実行を適宜切り換えながら行う。
ウ パイプラインの深さを増すとともに,パイプラインピッチを短くして,平均命令実行時間を短縮する。
エ パイプラインを複数用意し,同時に複数の命令を実行する。 正解
正解 エ
解説
スーパスカラは,命令の実行段階などのパイプラインを複数用意し,複数の命令を同時に並行して実行することで,単位時間当たりに処理できる命令数を増やす高速化技術である。エが該当する。
アは同時に実行可能な複数の動作を一つの命令にまとめるもので,パイプラインを複数用意するスーパスカラとは異なる。イは複数の命令の流れ(スレッド)を切り換えながら実行するマルチスレッディングの説明である。ウはパイプラインの段数を増やして各段の処理を短くするスーパパイプラインの説明である。
スーパスカラと VLIW
スーパスカラは,パイプラインを複数用意し,同時に実行できる命令を実行時にハードウェアが空いている演算器へ割り当てて並べて流す。VLIW は,同時に実行できる複数の動作をコンパイラが前もって1つの長い命令にまとめておき,そのまま並列に実行する。
スーパスカラ(パイプライン2本)
命令1
取
解
実
書
命令2
取
解
実
書
命令3
取
解
実
書
命令4
取
解
実
書
同時に流せる命令を
ハードウェアが
実行時に割り当てる
VLIW(長い命令1つに複数の動作)
加算
乗算
読込み
分岐
1命令
まとめるのは
コンパイラ
取:取出し 解:解読 実:実行 書:書込み
割当てを決めるのは,スーパスカラは実行時のハードウェア,VLIW はコンパイラ
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)
問20
ECC メモリで,2 ビットの誤りを検出し,1 ビットの誤りを訂正するために用いるものはどれか。
ア 偶数パリティ
イ 垂直パリティ
ウ チェックサム
エ ハミング符号 正解
正解 エ
解説
ECC メモリで用いられるハミング符号は,データビットに複数の検査ビットを付加し,検査ビットの組合せから誤りのあるビットの位置を特定できる符号である。1 ビットの誤りを訂正でき,2 ビットの誤りを検出できるので,エが該当する。
アの偶数パリティとイの垂直パリティは,1 ビットの誤りを検出できるが,誤りの位置は分からないので訂正できない。ウのチェックサムは,データの合計値を比べて誤りの有無を検出する方法で,誤りを訂正することはできない。
パリティとハミング符号でできること
パリティ(偶数・奇数・垂直・水平)は1ビットの誤りがあることは分かるが,どのビットかは分からないので直せない。ハミング符号は複数の検査ビットの組合せで誤りの位置まで分かるので,1ビットの誤りを訂正できる。ECC メモリで使う方式(SECDED)は,さらに2ビットの誤りがあることも検出できる。
方式
1ビット誤りの検出
1ビット誤りの訂正
2ビット誤りの検出
パリティ
○
×
×
ハミング符号(ECC)
○
○
○
検査ビットの組合せで,誤ったビットの位置を指せる
パリティ・チェックサムは誤りの有無が分かるだけ
ハミング符号は誤りの位置まで分かる → 1ビット訂正,2ビット検出
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)
問21
信頼性設計におけるフォールバックを説明したものはどれか。
ア サーバに障害が発生した場合,あらかじめ確保しておいた予備のサイトに必要な機器や媒体を持ち込み,サーバを復元して業務を再開する。
イ サーバに障害が発生した場合,他のサーバに処理を一旦引き継ぎ,障害が回復した後に元のサーバに処理を戻す。
ウ 人間の操作ミスやシステムの故障の際,その結果が人間などに危害や損害を与えることがないようにする。
エ 不具合が起きた場合,不具合の箇所を含む分割可能な部分を切り離して,残りの部分で処理を続行する。 正解
正解 エ
解説
フォールバック(縮退運転)は,システムに不具合が起きたときに,不具合の箇所を含む部分を切り離し,機能や性能を落としながらも残りの部分で処理を続行することである。エが該当する。
アは障害時に予備のサイトに機器や媒体を持ち込んで復旧するコールドサイトによる復旧の説明である。イは他のサーバに処理を引き継ぐフェールオーバと,回復後に元のサーバに戻すフェールバックの説明である。ウは操作ミスや故障があっても人間などに危害を与えないようにするフェールセーフの説明である。
信頼性設計の考え方の見分け方
フォールトトレランスは故障しても機能を保つ(二重化など)。フェールソフトは故障部分を切り離し,機能を落として動かし続ける(フォールバック=縮退運転)。フェールセーフは故障したら安全な側に倒す(信号を赤に)。フールプルーフは人が誤った操作をしても危険にならない(インタロック,逆向きの電池が入らない)。
考え方
きっかけ
どうするか
例
フォールトトレランス
故障
機能を保つ
二重化・RAID1
フェールソフト
故障
落として続ける
縮退運転
フェールセーフ
故障
安全側に倒す
信号を全部赤
フールプルーフ
誤操作
危険にしない
インタロック
フォールバック(縮退運転)は,故障部分を切り離して残りで続けること
何が起きたとき(故障か誤操作か)に,どうするか(保つ・落とす・止める)で見分ける
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)
用語解説:信頼性設計(フェールセーフ・フェールソフト・フールプルーフ)
問22
次数が n の関係 R には,属性なし(φ)も含めて異なる射影は幾つあるか。
正解 エ
解説
次数が n の関係は n 個の属性をもつ。射影は,関係から属性の一部を選んで取り出す操作なので,異なる射影の数は,n 個の属性からなる集合の部分集合の数に等しい。各属性について“選ぶ”か“選ばない”かの 2 通りがあるので,属性なし(φ)を含めて 2n 通りとなり,エになる。
例えば属性が A,B の 2 個なら,φ,{A},{B},{A,B} の 4=22 通りである。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)
問23
TCP,UDP のポート番号を識別し,プライベート IP アドレスとグローバル IP アドレスとの対応関係を管理することによって,プライベート IP アドレスを使用する LAN 上の複数の端末が,一つのグローバル IP アドレスを共有してインターネットにアクセスする仕組みはどれか。
ア IP スプーフィング
イ IP マルチキャスト
ウ NAPT 正解
エ NTP3
正解 ウ
解説
NAPT(Network Address Port Translation)は,IP アドレスに加えて TCP,UDP のポート番号も変換し,プライベート IP アドレスとポート番号の組と,グローバル IP アドレスとポート番号の組との対応を管理する。これにより,LAN 上の複数の端末が一つのグローバル IP アドレスを共有してインターネットにアクセスできる。ウが該当する。
アの IP スプーフィングは送信元 IP アドレスを偽装する攻撃,イの IP マルチキャストは特定のグループの複数の宛先に同時にデータを送る通信方式,エの NTP は機器の時刻を同期させるプロトコルである。
NAPT のアドレス変換
PC(192.168.1.10,ポート 5000)から Web サーバへの要求は,ルータで送信元が 203.0.113.1,ポート 60001 に書き換えられ,その組合せが対応表に残る。Web サーバからの応答は宛先が 203.0.113.1:60001 なので,ルータは表を見て宛先 IP アドレスと宛先ポート番号を 192.168.1.10:5000 に書き戻す。外から先に届いたパケットは表に対応がないので,内側へ転送できない。
PC
192.168.1.10
ルータ
NAPT
Web
198.51.100.5
送信元 .10:5000
送信元 .1:60001
宛先 203.0.113.1:60001
宛先 .10:5000
対応表
内側(プライベート)
外側(グローバル)
192.168.1.10 : 5000
203.0.113.1 : 60001
応答で書き換えるのは「宛先 IP アドレス」と「宛先ポート番号」
外から始まる通信は表に対応がないので,内側に届かない
要求では送信元を,応答では宛先を書き換える。対応は IP アドレスとポート番号の組
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)
問24
ステガノグラフィの機能はどれか。
ア 画像データなどにメッセージを埋め込み,メッセージの存在そのものを隠す。 正解
イ メッセージの改ざんやなりすましの検出,及び否認の防止を行う。
ウ メッセージの認証を行って改ざんの有無を検査する。
エ メッセージを決まった手順で変換し,通信途中での盗聴を防ぐ。
正解 ア
解説
ステガノグラフィは,画像や音声などのデータに,見た目や聞こえ方ではほとんど分からないようにメッセージを埋め込み,メッセージが存在すること自体を隠す技術である。アが該当する。
イの改ざんやなりすましの検出及び否認の防止はデジタル署名,ウのメッセージの認証による改ざんの有無の検査はメッセージ認証符号(MAC),エのメッセージを決まった手順で変換して盗聴を防ぐのは暗号化の機能である。暗号化はメッセージがあることは分かるが内容を読めなくするもので,存在そのものを隠すステガノグラフィとは異なる。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)
問25
請負契約を締結していても,労働者派遣とみなされる受託者の行為はどれか。
ア 休暇取得のルールを発注者側の指示に従って取り決める。 正解
イ 業務の遂行に関する指導や評価を自ら実施する。
ウ 勤務に関する規律や職場秩序の保持を実施する。
エ 発注者の業務上の要請を受託者側の責任者が窓口となって受け付ける。
正解 ア
解説
“労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準”(昭和 61 年労働省告示第 37 号)では,請負の形式による契約であっても,受託者が自ら雇用する労働者の業務の遂行に関する指示や評価,始業及び終業の時刻,休憩時間,休日,休暇等に関する指示,服務上の規律や配置の決定などを自ら行わない場合は,労働者派遣事業を行うものと判断される。休暇取得のルールを発注者側の指示に従って取り決めるアは,休暇等に関する管理を自ら行っていないので,労働者派遣とみなされる。
イの業務の遂行に関する指導や評価,ウの規律や職場秩序の保持は,受託者が自ら行うべき管理である。エの発注者からの要請を受託者側の責任者が窓口となって受け付けるのも,発注者が受託者の労働者に直接指示しないための適切な方法である。
出典:平成23年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)
用語解説:契約の形態(請負・準委任・労働者派遣)
ITサービスマネージャ試験のほかの年度
科目A-2(午前Ⅱ)
令和7年度 春期
令和6年度 春期
令和5年度 春期
令和4年度 春期
令和3年度 春期
令和元年度 秋期
平成30年度 秋期
平成29年度 秋期
平成28年度 秋期
平成27年度 秋期
平成26年度 秋期
平成25年度 秋期
平成24年度 秋期
平成23年度 秋期
平成22年度 秋期
平成21年度 秋期
科目B-1(午後Ⅰ)
令和7年度 春期
令和6年度 春期
令和5年度 春期
令和4年度 春期
令和3年度 春期
令和元年度 秋期
平成30年度 秋期
平成29年度 秋期
平成28年度 秋期
平成27年度 秋期
平成26年度 秋期
平成25年度 秋期
平成24年度 秋期
平成23年度 秋期
平成22年度 秋期
平成21年度 秋期
科目B-2(午後Ⅱ)
令和7年度 春期
令和6年度 春期
令和5年度 春期
令和4年度 春期
令和3年度 春期
令和元年度 秋期
平成30年度 秋期
平成29年度 秋期
平成28年度 秋期
平成27年度 秋期
平成26年度 秋期
平成25年度 秋期
平成24年度 秋期
平成23年度 秋期
平成22年度 秋期
平成21年度 秋期
この試験について すべての試験区分の一覧