令和5年度 秋期 午前Ⅱ

令和5年度 秋期に実施されたプロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱの全25問です。問題文・正解・解説をそのまま読めます。

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問1

アジャイル開発プロジェクトの状況について,振り返りで得られた教訓のうち,“アジャイル宣言の背後にある原則”に照らして適切なものはどれか。

〔プロジェクトの状況〕

イテレーション1〜6から成る開発を計画し,イテレーションごとに動くソフトウェアのデモを顧客に対して実施することによって,進捗状況を報告していた。イテレーション4のデモの後に顧客から機能追加の要求が提示された。顧客と対面による議論を行った結果,その要求に価値があると判断し,機能追加を受け入れることにした。機能追加を行うことによって,追加機能を含むイテレーション5の全機能の完成が間に合わなくなることが分かったので,イテレーション5の期間を延長してこの機能追加を行うことにした。イテレーション5で予定していた全ての機能を実装してイテレーション5のデモを行ったときに,追加した機能の使い勝手に問題があることが分かった。その時点で,当初予定した開発期間は終了した。

正解 

解説

アジャイル宣言の背後にある原則は,“要求の変更はたとえ開発の後期であっても歓迎します”,“動くソフトウェアを,2〜3週間から2〜3か月というできるだけ短い時間間隔でリリースします”などを掲げる。この事例のつまずきは,機能追加を受け入れたこと自体ではなく,イテレーション5の期間を延ばしたことにある。期間を固定したまま,追加機能を含めて優先順位を顧客と合意し,価値の高い機能から作っていれば,当初の期間の中で使い勝手を確かめて手直しする余地も残せた。イが正しい。

アは後期の変更も歓迎するという原則に反する。ウは“情報を伝える最も効率的で効果的な方法はフェイス・トゥ・フェイスで話をすること”という原則に反する。エは“動くソフトウェアこそが進捗の最も重要な尺度”という原則に反し,デモをやめるのは逆効果である。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)

問2

JIS Q 21500:2018(プロジェクトマネジメントの手引)によれば,プロジェクトマネジメントに関する計画のプロセス群のプロセス“プロジェクト全体計画の作成”を実施する目的として,適切なものはどれか。

正解 

解説

JIS Q 21500:2018 の“プロジェクト全体計画の作成”は,対象群“統合”に属する計画のプロセスで,プロジェクトをどのように実行し,管理し,終結するのかを文書化することを目的とする。まとめた文書がプロジェクト計画書で,スコープ・スケジュール・コストなど各分野の計画を束ねる。イが正しい。

アは対象群“資源”の“資源の見積り”,ウは同じく“プロジェクト組織の定義”,エは対象群“スコープ”の“WBS の作成”の目的である。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)

問3

JIS Q 21500:2018(プロジェクトマネジメントの手引)によれば,プロジェクトマネジメントのプロセスのうち,計画のプロセス群に属するプロセスはどれか。

正解 

解説

JIS Q 21500:2018 は,プロジェクトマネジメントのプロセスを,立ち上げ・計画・実行・管理・終結の五つのプロセス群と,統合・ステークホルダ・スコープ・資源などの対象群の組合せで整理している。「スコープの定義」はスコープの対象群にあり,計画のプロセス群に置かれている。アが正しい。

イの品質保証の遂行は実行のプロセス群。ウのプロジェクト憲章の作成とエのプロジェクトチームの編成は,どちらも立ち上げのプロセス群に属する。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)

問4

JIS Q 21500:2018(プロジェクトマネジメントの手引)によれば,プロジェクトマネージャがステークホルダの貢献をプロジェクトに最大限利用することができるように,プロセス“ステークホルダのマネジメント”で行う活動はどれか。

正解 

解説

JIS Q 21500:2018 の“ステークホルダのマネジメント”は実行のプロセス群に属し,ステークホルダのニーズと期待を理解して適切に対応するためのプロセスである。ステークホルダとそのプロジェクトへの影響を詳細に分析しておくことで,プロジェクトマネージャはステークホルダの貢献を最大限プロジェクトに生かせる。アが正しい。

イは対象群“コミュニケーション”の“コミュニケーションのマネジメント”,ウは“コミュニケーションの計画”の目的である。エは“ステークホルダの特定”の目的で,分析の前にまず関係者を洗い出す段階に当たる。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)

問5

ある組織では,プロジェクトのスケジュールとコストの管理にアーンドバリューマネジメントを用いている。期間10日間のプロジェクトの,5日目の終了時点の状況は表のとおりである。この時点でのコスト効率が今後も続くとしたとき,完成時総コスト見積り(EAC)は何万円か。

管理項目と金額(万円)の表。完成時総予算(BAC)は100,プランドバリュー(PV)は50,アーンドバリュー(EV)は40,実コスト(AC)は60。

正解 

解説

コスト効率指数 CPI は EV/AC で求めるので,40/60=2/3。この効率が完成まで続くとみると,完成時総コスト見積り EAC=BAC/CPI=100÷(2/3)=150万円になる。エが正しい。

数値で見ると,40万円分の出来高に60万円かかっている=予定の1.5倍の費用がかかっているので,総予算100万円の作業を終えるにも1.5倍の150万円が必要になる,と読める。イの120は EAC=AC+(BAC−EV)=60+60 で求めた値で,残りの作業は予定どおりの効率で進むとみなした場合の見積り。アの110とウの135は,この表の数値からは導けない。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)

問6

表は,あるプロジェクトにおける作業①〜④の担当者,所要日数の見積り,前作業を示している。条件に従って,クリティカルチェーンプロジェクトマネジメント(CCPM)によって日程計画を策定するとき,プロジェクトバッファを含めた全体の所要日数は何日か。

〔条件〕

作業・担当者・所要日数の見積り(HP と ABP,単位は日)・前作業の表。作業①は担当者 A,HP 8,ABP 6,前作業なし。作業②は担当者 A,HP 3,ABP 2,前作業は①。作業③は担当者 B,HP 5,ABP 3,前作業なし。作業④は担当者 A,HP 4,ABP 3,前作業は②と③。注1)HP(Highly Possible)による所要日数のこと。“まず大丈夫”と考えて見積もった所要日数であり,実現の確率は約90%である。注2)ABP(Aggressive But Possible)による所要日数のこと。“厳しそうだが,やればできる”と考えて見積もった所要日数であり,実現の確率は約50%である。

正解 

解説

CCPM では,各作業を ABP(厳しいがやればできる日数)で並べ,見積りから削った余裕をプロジェクトの最後にまとめてバッファとして持つ。ABP で並べると,担当者 A の作業①→②→④が 6+2+3=11日。担当者 B の作業③は3日で,並行して進めれば④の開始までに終わるので,①→②→④がクリティカルチェーンになる。

チェーン上の余裕日数は,①が 8−6=2日,②が 3−2=1日,④が 4−3=1日で合計4日。プロジェクトバッファはその半分の2日なので,全体の所要日数は 11+2=13日。イが正しい。アの11日はバッファを含めていない値である。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)

問7

四つのアクティビティ A〜D によって実行する開発プロジェクトがある。図は,各アクティビティの依存関係を PDM(プレシデンスダイアグラム法)によって表している。各アクティビティの実行に当たっては,同じ専門チームの支援が必要である。条件に従ってアクティビティを実行するとき,開発プロジェクトの最少の所要日数は何日か。

〔アクティビティの依存関係〕と題した図。開始から A,C,D の三つが並行して出る。A からは FS の関係で B へつながり,B,C,D はどれも終了へ向かう。

〔条件〕

アクティビティ名・所要日数(日)・専門チームの支援期間の表。A は10日で,支援は実行する期間の最初の4日間。B は5日で,最初の2日間。C は10日で,最初の4日間。D は4日で,実行する期間の全て。

正解 

解説

A→B は 10+5=15日かかり,支援の制約が無ければこれが最短である。この日程では専門チームの支援は,A が1〜4日目,A の後に始まる B が11・12日目になる。残る C(最初の4日間)と D(全4日間)の支援をその隙間に入れたいが,空いているのは5〜10日目の6日間だけで,4日連続を2回は入らない。どちらかは13日目以降に回ることになり,15日では終わらない。

C の支援を5〜8日目に入れて C を5〜14日目に行い,D を B の支援が終わった後の13〜16日目に行えば,全体は16日で終わる。イが正しい。逆に D を先に5〜8日目に入れると C の支援が13〜16日目になり,C は22日目までかかる。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)

問8

プロジェクトのスケジュール管理で使用する“クリティカルチェーン法”の実施例はどれか。

正解 

解説

クリティカルチェーン法は,個々の作業の見積りに紛れ込んでいる余裕を取り上げてまとめ直し,資源の制約も織り込んだ最長経路(クリティカルチェーン)の末尾にプロジェクトバッファを,そこへ合流する経路の末尾に合流バッファを置く手法である。余裕を作業ごとに持たせず全体で共有する点が特徴で,アがこれに当たる。

イとウは,クリティカルパス上の作業に資源や道具を投入して期間を縮めるクラッシング。エは先行作業の完了を待たずに後続作業を並行させるファストトラッキング。いずれもスケジュール短縮技法ではあるが,バッファの置き方を扱うクリティカルチェーン法とは別のものである。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)

問9

従業員が週に40時間働くソフトウェア会社がある。この会社が,1人で開発すると440人時のプログラム開発を引き受けた。開発コストを次の条件で見積もるとき,10人のチームで開発する場合のコストは,1人で開発する場合のコストの何倍になるか。ここで,倍率は小数第2位を切り捨てて小数第1位まで求めるものとする。

〔条件〕

正解 

解説

10人の2人1組の組合せは 10×9÷2=45組で,コミュニケーションの工数は週に 45×4=180人時。10人の労働時間は週 400人時なので,開発に使えるのは 400−180=220人時になる。440人時の開発には 440÷220=2週かかり,その間のコストは 10人×2週×40時間=800人時分。

1人で開発する場合は440人時分なので,800÷440=1.81… となり,小数第2位を切り捨てて1.8倍。ウが正しい。総当たりのコミュニケーションは人数のおよそ2乗に比例して増えるので,人数を増やすほど工数の合計は膨らむ。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)

問10

売上管理を行うアプリケーションソフトウェアの規模を,条件に従ってファンクションポイント法で見積もる。調整要因も加味したファンクションポイント数は幾つか。ここで,未調整ファンクションポイントの算出は,JIS X 0142:2010(ソフトウェア技術―機能規模測定―IFPUG 機能規模測定手法(IFPUG 4.1 版未調整ファンクションポイント)計測マニュアル)による。

〔条件〕

表1〜表4。表1 要素処理:①は外部入力で関連ファイル数1・データ項目数8,②は外部照会で関連ファイル数3・データ項目数21,③は外部照会で関連ファイル数1・データ項目数12,④は外部出力で関連ファイル数2・データ項目数10。表2 複雑さ(外部入力):関連ファイル数0〜1ではデータ項目数1〜4が低・5〜15が低・16以上が中,2では低・中・高,3以上では中・高・高。表3 複雑さ(外部出力,外部照会):関連ファイル数0〜1ではデータ項目数1〜5が低・6〜19が低・20以上が中,2〜3では低・中・高,4以上では中・高・高。表4 未調整ファンクションポイント:外部入力は低3・中4・高6,外部出力は低4・中5・高7,外部照会は低3・中4・高6。

正解 

解説

表1の要素処理ごとに,表2か表3で複雑さを決め,表4で点数を読む。①は外部入力で関連ファイル数1・データ項目数8なので表2で低,3点。②は外部照会で3・21なので表3で高,6点。③は外部照会で1・12なので表3で低,3点。④は外部出力で2・10なので表3で中,5点。トランザクションファンクションの合計は 3+6+3+5=17。

データファンクションの33を足すと,未調整ファンクションポイントは50。調整要因0.9を掛けて 50×0.9=45となり,アが正しい。エの50は調整要因を掛け忘れた値である。外部入力だけ表2を使い,外部出力と外部照会は表3を使う点を取り違えないこと。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)

問11

リスクマネジメントに使用する EMV(期待金額価値)の算出に用いる式はどれか。

正解 

解説

EMV(期待金額価値)は,リスク事象が起きたときの影響金額に,その事象の発生確率を掛けた値。確率で重み付けした金額なので,起こりやすさと大きさの両方を 1 つの数値で比べられる。

イのように確率で割ったり,ウ・エのようにリスク対応のコストを掛けたり割ったりしても,期待値にはならない。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)

問12

JIS Q 21500:2018(プロジェクトマネジメントの手引)によれば,プロセス“リスクの特定”及びプロセス“リスクの評価”は,どのプロセス群に属するか。

正解 

解説

JIS Q 21500:2018 の表1(プロセス群及び対象群に関連するプロジェクトマネジメントのプロセス)では,リスク対象群のプロセスのうち「リスクの特定」(4.3.28)と「リスクの評価」(4.3.29)がいずれも計画のプロセス群に置かれている。どんなリスクがあるかを洗い出し,その大きさを評価するのは,対応を計画するための準備だからである。よってイ。

同じリスク対象群でも,「リスクへの対応」(4.3.30)は実行のプロセス群,「リスクの管理」(4.3.31)は管理のプロセス群に属する。終結のプロセス群にはリスク対象群のプロセスは置かれていない。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)

問13

a〜c の説明に対応するレビューの名称として,適切な組合せはどれか。

正解 

解説

a の,参加者が持ち回りでレビュー責任者を務める方式はラウンドロビンで,全員が主体的に関わるので参画意欲が高まる。b の,作成者自身が説明者となって対象物を順に説明し,参加者が質問やコメントをする方式はウォークスルー。c の,議長(モデレータ)や読み上げ係などの役割を決め,事前に準備した資料で厳密に確認して結果を公式に評価する方式はインスペクションである。組合せはエ。

インスペクションは最も形式的なレビューで,指摘の記録や是正の確認まで手順として決まっている。ウォークスルーは作成者が主導し比較的形式ばらない。“作成者が説明する”か“役割を決めて公式に評価する”かが,b と c を取り違えないための手掛かりになる。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)

問14

オブジェクト指向における汎化の説明として,適切なものはどれか。

正解 

解説

汎化は,複数のクラスに共通する属性や操作を取り出し,それらをまとめた上位のクラス(スーパークラス)を定義することである。例えば“普通預金”と“定期預金”に共通する口座番号や残高をまとめて“口座”クラスを作る。イが正しい。

アは逆向きの特化(特殊化)で,上位のクラスに性質を加えて下位のクラスを作る。ウは“全体と部分”の関係を表す集約の説明。エはメソッド名が同じというだけで性質の共通性を見ておらず,汎化の説明にならない。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)

問15

アジャイル開発のフレームワークであるスクラムのルールとして,適切なものはどれか。

正解 

解説

スクラムガイドは,開発を1か月以内の決まった期間(スプリント)に区切って繰り返すことを定めている。スプリントの中でスプリントプランニング,デイリースクラム,スプリントレビュー,スプリントレトロスペクティブを行う。アが正しい。

ウのリファクタリングとエのペアプログラミングは,エクストリームプログラミング(XP)のプラクティスで,スクラムのルールには含まれない。イの構造化言語による仕様の記述は,構造化分析などで使う手法で,スクラムとは関係がない。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)

問16

JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,ソフトウェアシステムのライフサイクルで実行するプロセスグループの説明のうち,テクニカルプロセスの説明はどれか。

正解 

解説

JIS X 0160:2021 は,ライフサイクルのプロセスを,合意プロセス,組織のプロジェクトイネーブリングプロセス,テクニカルマネジメントプロセス,テクニカルプロセスの四つのグループに分けている。テクニカルプロセスは,利害関係者のニーズを製品やサービスに変換し,それを適用・運用して要件を満たすためのプロセスで,要件の定義,設計,実装,検証,運用などを含む。エが正しい。

アは取得と供給からなる合意プロセス,イはプロジェクト計画やプロジェクトの評価及び制御などのテクニカルマネジメントプロセス,ウはプロジェクトに資源を提供する組織のプロジェクトイネーブリングプロセスの説明である。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)

問17

組込み機器用のソフトウェアを開発委託する契約書に開発成果物の著作権の帰属先が記載されていない場合,委託元であるソフトウェア発注者に発生するおそれがある問題はどれか。ここで,当該ソフトウェアの開発は委託先が全て行うものとする。

正解 

解説

著作権は,契約で特に定めなければ,実際に著作物を創作した者に帰属する。開発を委託先が全て行ったのであれば,ソフトウェアの著作権は委託先に残り,委託元は契約で認められた範囲でしか使えない。そのため,成果物を別のソフトウェアに流用するといった,複製や改変を伴う利用ができなくなるおそれがある。アが正しい。

イのようなソースコードの公開義務は,GPL などのライセンスに従う場合の話で,帰属先の記載漏れからは生じない。ウは,著作権をもたない以上バイナリ形式でも自由には販売できない。エのハードウェアの特許は著作権とは別の権利で,ソフトウェアの著作権の帰属とは関係しない。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)

問18

新システムの開発を計画している。提案された4案の中で,TCO(総所有費用)が最小のものはどれか。ここで,このシステムは開発後,3年間使用するものとする。

4案の費用の表(単位 百万円)。ハードウェア導入費用は A案30,B案30,C案40,D案40。システム開発費用は A案30,B案50,C案30,D案40。導入教育費用は各案とも5。ネットワーク通信費用/年は A案20,B案20,C案15,D案15。保守費用/年は A案6,B案5,C案5,D案5。システム運用費用/年は A案6,B案4,C案6,D案4。

正解 

解説

TCO は,導入時の費用に,使用期間中に毎年掛かる費用を3年分足して求める。導入時の費用(ハードウェア導入+開発+教育)と年間の費用(通信+保守+運用)はそれぞれ,A案が65と32,B案が85と29,C案が75と26,D案が85と24。3年間の TCO は,A案 65+32×3=161,B案 85+29×3=172,C案 75+26×3=153,D案 85+24×3=157 となり,C案の153百万円が最小。ウが正しい。

導入時の費用が最も安いのは A案,年間の費用が最も安いのは D案だが,どちらも3年通すと C案に及ばない。片方だけで比べず,使用期間全体の合計で比べるのが TCO の考え方である。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)

問19

JIS Q 20000-1:2020(サービスマネジメントシステム要求事項)を適用している組織において,サービスマネジメントシステム(SMS)が次の要求事項に適合している状況にあるか否かに関する情報を提供するために,あらかじめ定めた間隔で組織が実施するものはどれか。

〔要求事項〕

正解 

解説

JIS Q 20000-1:2020 の 9.2(内部監査)は,SMS が“組織自体が規定した SMS に関する要求事項”及び“この規格の要求事項”に適合しているか,並びに有効に実施され維持されているかに関する情報を提供するために,あらかじめ定めた間隔で内部監査を実施することを要求している。設問の〔要求事項〕は,この二つをそのまま挙げたもの。

アは 9.1(監視,測定,分析及び評価)で,SMS 及びサービスのパフォーマンスを測る活動。イは 9.4(サービスの報告)。エは 9.3(マネジメントレビュー)で,トップマネジメントが SMS の適切性・妥当性・有効性を評価するものであり,要求事項への適合を確かめる監査とは目的が異なる。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)

問20

要件定義プロセスにおいて,要件を評価する際には,矛盾している要件,検証できない要件などを識別することが求められている。次のうち,要件が検証可能である例はどれか。

正解 

解説

要件が検証可能であるとは,完成したシステムやソフトウェアがその要件を満たしているかどうかを確かめる方法があり,その確認を現実的な費用で行えることをいう。“使いやすいこと”のように判定の基準がない要件は検証できない。ウが正しい。

アは要件に重要度のランクが付いていること,イは利害関係者が漏れなく識別されていることで,いずれも検証可能性とは別の観点である。エは実現可能性を無視しており,むしろ実現できない要件を含んでしまう不適切な状態である。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)

問21

プロバイダ責任制限法が定める特定電気通信役務提供者が行う送信防止措置に関する記述として,適切なものはどれか。

正解 

解説

プロバイダ責任制限法は,プロバイダなどの特定電気通信役務提供者が権利侵害の情報について送信防止措置を講じた場合,それが必要な限度で行われ,他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったときなど一定の条件を満たせば,発信者に生じた損害について賠償責任を負わないと定めている。イが正しい。

アは誤りで,権利侵害を信じる相当の理由がある場合などは,発信者の承諾がなくても責任を負わない。ウも誤りで,送信防止措置は裁判所の決定がなくてもプロバイダの判断で講じられる。エの個人情報保護委員会への申立てと命令という仕組みは,この法律にはない。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)

問22

労働基準法で定める制度のうち,いわゆる36協定と呼ばれる労使協定に関する制度はどれか。

正解 

解説

いわゆる36協定は,労働基準法第36条に基づき,時間外労働・休日労働に関する労使協定を書面で締結して労働基準監督署に届け出ることにより,法定労働時間を超える時間外労働などを認める制度。

アは裁量労働制,イは1か月単位の変形労働時間制,エはフレックスタイム制の説明。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)

問23

セキュリティ評価基準である ISO/IEC 15408 の説明はどれか。

正解 

解説

ISO/IEC 15408(コモンクライテリア)は,IT 製品やシステムのセキュリティ機能が正しく設計・実装されているかを評価するための国際規格である。評価では,セキュリティ機能の仕様書や設計書,利用者向けのガイダンス,開発や配付の手順といった様々な視点から,保証の度合いを確かめる。アが正しい。

エの EAL は,評価でどこまで深く確かめたかという“保証の度合い”を表す段階で,セキュリティ機能の強度を表すものではない。イは組織のセキュリティ管理を扱う ISO/IEC 27001 などの説明,ウは暗号モジュールの実装を評価する ISO/IEC 19790 などの説明である。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)

問24

デジタルフォレンジックスに該当するものはどれか。

正解 

解説

デジタルフォレンジックスは,不正アクセスや情報漏えいなどの事件が起きたときに,コンピュータやネットワークに残る記録を証拠として使えるように保全し,調査・分析する技術や手続のことである。証拠としての信頼性を保つため,改ざんされていないことを示せる形で複製や記録を残し,訴訟などにも耐えられるようにする。エが正しい。

アは電子透かし,イはペネトレーションテスト,ウはソーシャルエンジニアリングの説明である。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)

問25

脆弱性検査手法の一つであるファジングはどれか。

正解 

解説

ファジングは,検査対象のソフトウェアに,想定外の長さや形式のデータ,境界値など問題を引き起こしそうなデータ(ファズ)を大量に,多様なパターンで入力し,異常終了や応答の乱れといった挙動から脆弱性を見つける手法である。ソースコードがなくても実施できる。イが正しい。

アはバージョンやパッチの適用状況を確かめる検査,ウはソースコードを解析する静的解析,エはセキュリティアドバイザリなどの情報を基に該当する脆弱性がないかを調べる検査で,いずれもファジングではない。

出典:令和5年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)