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ITサービスマネージャ試験

平成26年度 秋期 科目A-2(午前Ⅱ)

平成26年度 秋期に実施されたITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ(2026年度からの科目A-2)の全25問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:ITサービスマネージャ試験について

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問1

IT サービスマネジメントにおけるインシデント及びサービス要求管理プロセスと問題管理プロセスとのインタフェースに関する要件のうち,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

問題管理は,既知の誤り(根本原因が判明し回避策が分かっている問題)と問題解決策の最新情報を,インシデント及びサービス要求管理に提供しなければならない。この情報があるので,同じ症状のインシデントが起きたときに回避策で早く復旧できる。

アは誤りで,インシデント解決の進捗を伝える相手は顧客や利用者である。イも誤りで,根本原因の調査は問題管理の役割で,インシデント管理は復旧を優先する。エも誤りで,問題を正すための変更要求は変更管理に伝える。

障害が起きてから本格的に直るまで インシデント管理はサービスをできるだけ早く元に戻し,原因が分からなくても再起動や回避策で戻ればよしとする。問題管理は根本原因を突き止め,原因と回避策を既知の誤りとして記録してインシデント管理に渡す。恒久的な解決策は変更要求(RFC)として変更管理に出され,リリース管理を経て本番に展開される。 インシデント管理 早く元に戻す 問題管理 根本原因を探す 変更管理 変更を評価・承認 リリース管理 本番に展開 RFC 既知の誤り・回避策 時間をかけずに戻す 時間をかけてでも再発を防ぐ 原因を調べるのはインシデント管理ではなく問題管理
既知の誤り(原因と回避策)の情報は,問題管理からインシデント管理へ渡る

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)

用語解説:インシデント管理と問題管理

問2

JIS Q 20000-1 において,サービスレベル管理は,サービスマネジメントシステム(SMS)を構成するどのプロセスに属するか。

正解 ウ

解説

JIS Q 20000-1:2012 は,サービスマネジメントシステムのプロセスを,サービス提供プロセス,関係プロセス,解決プロセス,統合的制御プロセスなどに分けている。サービスレベル管理は,サービス報告,サービス継続及び可用性管理,サービスの予算業務及び会計業務,容量・能力管理,情報セキュリティ管理とともにサービス提供プロセスに属する。ウが該当する。

アの解決プロセスはインシデント及びサービス要求管理と問題管理,イの関係プロセスは事業関係管理と供給者管理,エの統合的制御プロセスは構成管理,変更管理,リリース及び展開管理である。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)

用語解説:JIS Q 20000(サービスマネジメントシステム) SLA(サービスレベル合意書)

問3

ITIL において,良い目標値を設定するための条件として“SMART”がある。“S”は Specific(具体的),“M”は Measurable(測定可能),“R”は Relevant(適切),“T”は Time-bound(適時)の頭文字である。“A”は何の頭文字か。

正解 ア

解説

SMART は Specific(具体的),Measurable(測定可能),Achievable(達成可能),Relevant(適切),Time-bound(適時)の頭文字。“A”は Achievable で,努力すれば手が届く水準に目標を置くことを求める。

イの Ambitious(意欲的)は,高すぎて達成できない目標を許すことになるので SMART の考え方と合わない。ウの Analyzable とエの Auditable は SMART の要素ではない。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)

用語解説:ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)

問4

“IT サービスが必要とされるときに,合意した条件の下で要求された機能を果たせる状態にある能力”について,定義し,分析し,計画し,測定し,改善する活動を行う ITIL の管理プロセスはどれか。

正解 ウ

解説

設問の“IT サービスが必要とされるときに,合意した条件の下で要求された機能を果たせる状態にある能力”は可用性の定義。これを定義し,分析し,計画し,測定し,改善するのが可用性管理。

アの IT サービス継続性管理は災害などの重大な中断に備えて復旧を計画するプロセス,イのインシデント管理は発生した中断を早く復旧させるプロセス,エの問題管理はインシデントの根本原因を取り除くプロセスであり,可用性そのものを管理するプロセスではない。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)

用語解説:インシデント管理と問題管理 ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)

問5

サービスレベル管理における運用レベル合意書(OLA)はどれか。

正解 ア

解説

運用レベル合意書(OLA)は,顧客と合意した SLA を実現するために,サービス提供者が同じ組織内の内部グループ(例えば,ネットワーク運用部門やデータベース管理部門)との間で,それぞれが提供する作業や目標を取り決める合意書である。アが該当する。

イの外部の供給者との間で取り交わすのは契約(UC:Underpinning Contract)である。ウは SLA の達成状況を報告するサービスレベル報告書,エはサービス提供者と顧客の間で取り交わす SLA の説明である。

SLA・OLA・外部との契約 サービス提供者は,顧客と SLA(サービスレベル合意書)を結ぶ。その SLA を守るため,同じ組織の内部グループ(ネットワーク担当など)とは OLA(運用レベル合意書)を,外部の供給者とは契約(UC)を取り交わす。顧客はサービスの費用を負担して要求を決める人,ユーザは日々サービスを使う人。 顧客 サービス 提供者 内部グループ 外部の供給者 SLA OLA 契約 顧客:費用を負担し要求を決める ユーザ:日々使う
顧客とは SLA,内部とは OLA,外部の供給者とは契約

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)

用語解説:SLA(サービスレベル合意書)

問6

IT サービスマネジメントにおいて,災害による重大なサービス停止に関する事業影響度分析は,どのプロセスで実施するか。

正解 イ

解説

災害による重大なサービス停止に備えるには,サービスが停止したときに事業が受ける影響の大きさや,許容できる停止時間を事業影響度分析(BIA)で明らかにし,それを基にサービス継続計画を作る。JIS Q 20000-1:2012 では,これはサービス継続及び可用性管理プロセスで実施する活動なので,イが該当する。

アのインシデント及びサービス要求管理は発生したインシデントからの迅速な復旧,ウのサービスレベル管理は顧客とのサービスレベルの合意と監視,エの問題管理はインシデントの根本原因の特定と再発防止を行うプロセスであり,災害に備えた事業影響度分析は行わない。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)

用語解説:BCP(事業継続計画・RTO・RPO) インシデント管理と問題管理 SLA(サービスレベル合意書)

問7

IT サービスマネジメントにおける変更要求に対する活動のうち,リリース及び展開管理プロセスに含まれるものはどれか。

正解 ア

解説

リリース及び展開管理は,稼働環境へ展開する変更済みの構成品目(CI)をまとめてリリースパッケージとして構築し,計画に沿って展開するプロセス。設問の選択肢のうち,この“集合の構築”がリリース及び展開管理に当たる。

イの影響を受ける CI の識別,ウの変更要求(RFC)の記録,エの変更諮問委員会(CAB)の召集は,いずれも変更管理プロセスの活動である。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)

問8

IT サービスマネジメントにおいて,構成ベースラインを確立することによって可能になることはどれか。

正解 ウ

解説

構成ベースラインは,ある時点の構成品目(CI)の構成を正式に承認して固定した記録である。これを基準にすれば,変更後などに実際の構成が記録どおりかを確かめる構成監査ができ,変更がうまくいかなかったときに戻すべき状態(切り戻しの基準)も明確になる。ウが該当する。

アはサービスの測定と報告,イはインシデント記録やログから行う原因分析,エはサービス継続で定める目標復旧レベル(RLO)に当たり,いずれも構成ベースラインを確立したことで可能になるものではない。

構成ベースライン:ある時点で承認して固定した構成 構成ベースラインは,ある時点の構成品目(CI)の構成を正式に承認して固定した記録。変更後などに実際の構成が記録どおりかを確かめる構成監査の基準になり,変更がうまくいかなかったときに戻すべき状態(切り戻しの基準)にもなる。 時間 ベースライン 承認して固定 変更後の構成 実際の状態 照合(構成監査) 失敗したら戻す(切り戻し) 変更
構成監査と切り戻しの基準になる

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)

用語解説:インシデント管理と問題管理

問9

ITIL において,インシデントに対する一連の活動のうち,イベント管理プロセスが分担する活動はどれか。

正解 エ

解説

イベント管理は,構成品目やサービスの状態変化(イベント)を監視して検知し,意味を判断したうえで,対応が必要なものを関連するプロセスへ通知するプロセス。インシデントの検知と通知がこれに当たる。

アは問題管理で作成する既知のエラー記録,イも問題管理の根本原因分析,ウはインシデント管理によるサービスの復旧であり,いずれもイベント管理の分担ではない。

イベント管理 イベント管理は,構成品目やサービスの状態の変化(イベント)を監視して検知し,その意味を判断して,対応が要るものを関係するプロセスへ通知する。インシデントになるものはインシデント管理へ渡す。サービスの復旧はインシデント管理,根本原因の分析や既知のエラーの記録は問題管理の役目。 監視 イベント検知 状態の変化 判断 意味・重要度 通知 関係先へ インシデント管理(復旧) 根本原因の分析は問題管理 イベント管理が担うのは検知と通知
検知して判断し,関係するプロセスへ知らせる

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)

用語解説:ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)

問10

ITIL で定義されるサービスのライフサイクルにおけるサービストランジション段階の説明はどれか。

正解 ア

解説

ITIL のサービスライフサイクルは,サービスストラテジ,サービスデザイン,サービストランジション,サービスオペレーション,継続的サービス改善の五つの段階からなる。サービストランジションは,設計されたサービスを,規定された要件と制約に沿って構築・テストし,運用に移行して確実に稼働させる段階である。アが正しい。

イの運用状況を継続的に測定して改善するのは継続的サービス改善。ウのサービスの内容を具体的に決めるのはサービスデザイン。エの,戦略的資産としてサービスマネジメントをどう設計,開発,導入するかの手引を提供するのはサービスストラテジの説明である。

ITIL のサービスライフサイクル(v3・2011 edition) サービスストラテジでどんなサービスを提供するかの戦略を決め,サービスデザインで設計し,サービストランジションで運用に移し,サービスオペレーションで日々運用する。継続的サービス改善は,ほかの4段階を通してサービスを測り,改善し続ける。 ストラテジ 戦略を決める デザイン 設計する トランジション 運用に移す オペレーション 日々の運用 継続的サービス改善 全ての段階を測り,改善し続ける(7ステップの改善プロセス) ITIL 4 ではプロセスを「プラクティス」と呼ぶ
段階の順番(ストラテジ→デザイン→トランジション→オペレーション)を問う問題が出ている

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)

用語解説:ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)

問11

バックアップサイトの説明のうち,ウォームスタンバイの説明として,最も適切なものはどれか。

正解 エ

解説

ウォームスタンバイは,別の場所にバックアップシステムを用意しておくが,常にデータを同期させて動かしているわけではなく,緊急時にバックアップシステムを起動し,データを最新の状態にしてからサービスを回復する方式である。エが該当する。

アは相互バックアップ(他組織との相互援助協定),イは機材を持ち込んでから立ち上げるコールドスタンバイ,ウは常時同期していて直ちに切り替えられるホットスタンバイである。

ホット・ウォーム・コールドスタンバイ ホットスタンバイは別の場所のシステムを常に動かしてデータを同期し,すぐに切り替える。ウォームスタンバイは機器を用意しておくが動かしてはおらず,緊急時に起動してデータを最新にしてから回復する。コールドスタンバイは場所(と電源など)だけを用意し,機器は災害後に持ち込んで立ち上げる。 方式 待機の状態 切替え 費用 ホット 常に稼働・同期 すぐ 高い ウォーム 機器はあるが止めている 起動して最新にする 中 コールド 場所だけ(機器は後から) 持ち込んで立ち上げる 安い 相互援助協定:同じようなシステムの組織どうしで助け合う
常に動かす・用意だけして起動する・場所だけ

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)

問12

データベースのロールバック処理の説明はどれか。

正解 エ

解説

ロールバックは,異常終了したトランザクションが加えた更新を取り消す処理。ログに記録しておいた更新前情報(更新前の値)を使って,そのトランザクションを開始する直前の状態までデータを戻す。

アはログの更新後情報で障害直前まで進めるロールフォワードの説明。イとウは,使うログの情報と戻す先の組合せが入れ替わっており,どちらも成り立たない。

障害の種類と回復に使うログ トランザクション障害(実行中の異常終了)では,更新前ログを使ってロールバックし,トランザクション開始前の状態に戻す。システム障害では,チェックポイント以降にコミットしたものを更新後ログでロールフォワードし,未コミットのものを更新前ログでロールバックする。媒体障害では,バックアップから復元し,バックアップ以降にコミットしたものを更新後ログでロールフォワードする。 ロールバック 更新前ログ → 開始前に戻す ロールフォワード 更新後ログ → 障害直前まで進める トランザクション障害 異常終了したものを戻す — システム障害 未コミットを戻す チェックポイント後のコミット 媒体障害 — バックアップを復元してから
ロールバックは更新前ログで戻す,ロールフォワードは更新後ログで進める

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)

用語解説:障害回復(ロールバック・ロールフォワード)

問13

“24 時間 365 日”の有人オペレーションサービスを提供する。シフト勤務の条件が次のとき,オペレータは最少で何人必要か。

〔条件〕

正解 イ

解説

7 日間に必要な延べ勤務回数は,7 日×3 シフト×2 人=42 回。1 人当たりの勤務回数は 7 日間で 5 回以内なので,必要な人数は 42÷5=8.4,すなわち 9 人以上になる。

8 人では 8×5=40 回にしかならず 42 回に届かない。10 人や 16 人でも条件は満たせるが“最少”ではない。

シフト勤務に必要な人数 1日3シフト,各シフト2人以上なので,7日間で必要な延べ勤務は 7×3×2=42 回。1人は7日間に5回までなので,42÷5=8.4 で,9人以上が要る。8人では 8×5=40 回で足りない。 月 火 水 木 金 土 日 シフト1 2 2 2 2 2 2 2 シフト2 2 2 2 2 2 2 2 シフト3 2 2 2 2 2 2 2 延べ 7 × 3 × 2 = 42 回 42 ÷ 5 = 8.4 → 9 人
延べの回数 ÷ 1人の上限,端数は切り上げ

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)

問14

情報セキュリティに関する従業員の責任について,“情報セキュリティ管理基準”に基づいて監査を行った。指摘事項に該当するものはどれか。

正解 ア

解説

情報セキュリティ管理基準では,雇用の終了又は変更の後もなお有効な情報セキュリティに関する責任及び義務を定め,要員に伝達することを求めている。情報の秘密保持の責任は雇用の終了後も引き続き有効とすべき責任の代表である。雇用の終了をもって守秘責任が解消されると雇用契約に定めていると,退職者による情報の漏えいを防げないので,指摘事項に該当する。アが該当する。

イの勤務時間外にも守秘責任を負うこと,ウの守秘責任を果たさなかった場合の措置(懲戒手続)を定めること,エの守秘義務契約書への署名を求めることは,いずれも管理基準が求める適切な取決めであり,指摘事項にはならない。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)

問15

データ管理者(DA)とデータベース管理者(DBA)を別々に任命した場合の DA の役割として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

DA(データ管理者)は,組織全体のデータを資源として捉え,データ項目の標準化や論理データベース設計といった“データそのもの”の管理を担う。

ア・ウ・エはいずれも DBA(データベース管理者)の役割で,容量の管理,性能チューニング,障害時の復旧など,DBMS の運用に関わる業務。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)

問16

プロジェクトの進捗管理を EVM(Earned Value Management)で行っている。コストが超過せず,納期にも遅れないと予想されるプロジェクトはどれか。ここで,それぞれのプロジェクトの開発の生産性は現在までと変わらないものとする。

正解 ウ

解説

EVM では,出来高(EV)と実コスト(AC)を比べるとコストの状況が,EV と計画値(PV)を比べるとスケジュールの状況が分かる。今後の生産性が変わらないとき,コストが超過しないのは EV が AC 以上(CPI≧1),納期に遅れないのは EV が PV 以上(SPI≧1)の場合である。現在の時点で EV が最も上にあり,PV,AC の順に並ぶウが両方を満たす。

アは EV が PV より上なので予定より進んでいるが,AC が EV を上回りコストが超過する。イは AC が最も高く EV が最も低いので,コスト超過でスケジュールも遅れている。エは AC が EV より低くコストは収まるが,EV が PV を下回りスケジュールが遅れている。

EVM の3本の線と SV・CV PV(計画の出来高)・EV(実際の出来高)・AC(実際のコスト)を累積で描く。現時点の EV と PV の縦の差がスケジュール差異 SV=EV−PV で,負なら進捗の遅れを金額で表したもの。EV と AC の差がコスト差異 CV=EV−AC で,負ならコスト超過。EV が PV 以上なら納期に遅れず,EV が AC 以上ならコストは超過しない。 時間 金額(累積) 現時点 PV EV AC SV CV SV=EV−PV(進捗) CV=EV−AC(コスト)
EV と PV の差は進捗の遅れ(金額),EV と AC の差はコストの超過

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)

用語解説:EVM(アーンドバリューマネジメント)

問17

プロジェクト管理で使用する分析技法のうち,傾向分析の説明はどれか。

正解 ウ

解説

傾向分析は,時間の経過に伴ってプロジェクトのパフォーマンスがどう変わってきたかを分析する技法。ある時点の値だけでなく変化の向きを見ることで,このままいくとどうなるかを予測できる。

アはディシジョンツリー分析,イは個々のリスクの影響度を調べる定性的リスク分析,エは特性要因図(フィッシュボーン図)による分析である。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)

問18

プロジェクトのリスクを,デルファイ法を利用して抽出しているものはどれか。

正解 イ

解説

デルファイ法は,複数の専門家に匿名でアンケートを行い,集計した結果を示してもう一度回答してもらう,ということを繰り返して意見を収束させる手法である。互いの顔を合わせないので,声の大きい人や上位者の意見に引きずられにくい。アンケートと要約を繰り返すイが正しい。

アの専門家へのインタビューは,繰り返しの集約とフィードバックを伴わない。ウは関係者が一堂に会して意見を出し合うブレーンストーミング。エは強み・弱み・好機・脅威の観点で分析する SWOT 分析で,いずれもリスクの特定に使う手法だがデルファイ法ではない。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)

用語解説:デルファイ法と問題分析の技法

問19

パイプラインハザード対策に関する記述のうち,アウトオブオーダ実行方式を用いたものはどれか。

正解 ア

解説

アウトオブオーダ実行は,命令を記述された順番どおりに実行するのではなく,演算に必要なデータがそろった命令から先に実行し,実行結果を本来の順番に並べ直して確定させる方式である。データの到着を待つ命令のために後続の命令まで止まってしまうことを防げるので,アが該当する。

イは分岐予測に基づく投機実行で,制御ハザードへの対策である。ウは演算結果を次の命令に直接渡すフォワーディング(バイパス),エはクロックサイクルの前半で書き込み後半で読み出すことによるレジスタアクセスの競合回避で,いずれもデータハザードへの対策だがアウトオブオーダ実行ではない。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)

問20

二つのシステムの信頼性評価指標の関係に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

故障発生率(故障率)は,単位時間当たりに故障が発生する割合であり,平均故障間隔(MTBF)の逆数(1/MTBF)で表される。故障発生率が等しければ MTBF も等しいので,ウが適切である。

稼働率は MTBF÷(MTBF+MTTR) で求めるので,MTBF と MTTR の比率が同じであれば値が等しくなる。例えば MTBF 90 時間・MTTR 10 時間と,MTBF 900 時間・MTTR 100 時間は,どちらも稼働率 0.9 である。したがって,稼働率が等しくても MTBF や MTTR が等しいとは限らず,アとイは誤りである。エの MTTR は修理に掛かる時間であり,故障発生率とは関係しないので誤りである。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)

用語解説:稼働率(MTBF・MTTR)

問21

トランザクション A~D に関する待ちグラフのうち,デッドロックが発生しているものはどれか。ここで,待ちグラフの矢印は,X → Y のとき,トランザクション X はトランザクション Y がロックしている資源のアンロックを待っていることを表す。

正解 イ

解説

待ちグラフで矢印が一巡する閉路があると,互いに相手のアンロックを待ち続けるので,デッドロックが発生している。イでは,A が C を待ち(A→C),C が B を待ち(C→B),B が A を待つ(B→A)ので,A→C→B→A の閉路があり,デッドロックが発生している。イが正しい。

アは D→C→B→A と D→A の矢印があるが,A から出る矢印がないので閉路はない。ウは A から B,C,D へ矢印が出ているだけ,エは A,B,D から C へ矢印が向いているだけで,いずれも閉路がなく,待っているトランザクションもいずれは処理を進められる。

待ちグラフの閉路とデッドロック 待ちグラフは,トランザクションを点にして,X が Y のロック解除を待っているとき X→Y の矢印を引いたもの。A→C→B→A のように矢印が一巡する閉路があると,互いに相手を待ち続けるのでデッドロックになる。D→C→B→A と D→A のように閉路が無ければ,A から順に終わって解消する。DBMS はこの閉路を探してデッドロックを検出する。 閉路あり → デッドロック A B C D 閉路なし A B C D X→Y:X は Y のロック解除を待っている
矢印が一巡する(閉路がある)とデッドロック

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)

用語解説:排他制御とデッドロック(ACID 特性)

問22

図は,組織内の TCP/IP ネットワークにあるクライアントが,プロキシサーバ,ルータ,インターネットを経由して組織外の Web サーバを利用するときの経路を示している。この通信の TCP コネクションが設定される場所はどれか。

組織内ネットワーク(点線の枠)にクライアントとプロキシサーバがつながっている。プロキシサーバはもう一方のネットワークにもつながり,そこにルータがある。ルータはインターネットにつながり,インターネットの先に Web サーバがある。

正解 イ

解説

プロキシサーバはクライアントに代わって Web サーバへアクセスする。このためコネクションはクライアントとプロキシサーバの間で一度終端され,プロキシサーバと Web サーバの間で改めて張られる。TCP コネクションはこの 2 本になる。

アは誤りで,プロキシを経由する以上クライアントと Web サーバが直接コネクションを張ることはない。ウとエのルータは IP パケットを中継するネットワーク層の装置であり,TCP コネクションの終端にはならない。

プロキシを通ると TCP コネクションは2本 クライアントはプロキシサーバと TCP コネクションを張り,プロキシサーバが改めて Web サーバと TCP コネクションを張る。ルータは IP パケットを中継するネットワーク層の装置なので,TCP コネクションの終点にはならない。 クライアント プロキシ ルータ Web TCP ① TCP ② IP パケットを中継するだけ TCP コネクションは クライアント⇔プロキシ,プロキシ⇔Web の2本
TCP の終点はクライアント・プロキシ・Web サーバ。ルータは素通り

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)

問23

シングルサインオンの実装方式の特徴のうち,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

リバースプロキシ型のシングルサインオンでは全ての通信がリバースプロキシを経由するので,そこで利用者認証を行う。認証方式はパスワードに限られず,クライアント証明書(デジタル証明書)を用いることもできる。

アは誤り。cookie を生成するのはクライアントではなく認証を行うサーバ側。イは誤り。cookie は発行元ドメインにしか送られないので,cookie 方式では同一ドメインに配置する必要がある。ウは誤り。リバースプロキシ方式ではドメインを分ける必要はない。

シングルサインオンの3つの方式 リバースプロキシ方式は,利用者と Web サーバの間に置いたリバースプロキシで認証をまとめる(全ての通信が集まる)。エージェント方式は,各 Web サーバに入れたエージェントが認証サーバの発行したチケットを確かめる。SAML は,IdP が発行したアサーションを別の組織の SP が検証するので,ドメインをまたいで使える。 リバースプロキシ方式 利用者 リバースプロキシ ここで認証 Web サーバ 1 Web サーバ 2 全ての通信がプロキシを通る。Web サーバの改修が少ない エージェント方式 利用者 Web サーバ 1(エージェント) Web サーバ 2(エージェント) 認証サーバ チケット発行 各サーバのエージェントがチケットを確かめる。通信は集中しない SAML(フェデレーション) 利用者 IdP(組織 X) SP(組織 Y) アサーション IdP の署名付きアサーションで,別の組織(ドメイン)をまたいで使える
どこで認証の結果を確かめるかが違う

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)

用語解説:シングルサインオン(SAML・OAuth)

問24

NIST の定義によるクラウドコンピューティングのサービスモデルにおいて,パブリッククラウドサービスの利用企業のシステム管理者が,仮想サーバのゲスト OS に関わる設定作業及びセキュリティパッチ管理作業を実施可かどうかの組合せのうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

NIST SP 800-145 の定義では,IaaS の利用者は下層のクラウド基盤を管理しないが,オペレーティングシステム,ストレージ,配置したアプリケーションを制御できる。そのため,ゲスト OS の設定作業やセキュリティパッチの管理は利用企業のシステム管理者が実施する。

PaaS の利用者は,ネットワーク,サーバ,オペレーティングシステム,ストレージを含む下層のクラウド基盤を管理せず,配置したアプリケーションを制御する。SaaS の利用者は,オペレーティングシステムはもちろん個々のアプリケーションの機能も管理しない。PaaS と SaaS ではゲスト OS の作業は提供者が行うので,IaaS だけが実施可となるイが適切である。

IaaS・PaaS・SaaS の管理の分担 下からハードウェア・ネットワーク,仮想化,OS,ミドルウェア・実行環境,アプリケーションの層がある。IaaS では利用者が OS から上を,PaaS では自分のアプリケーションだけを管理する。SaaS では全て提供者が管理し,利用者が扱うのは利用者 ID や設定だけ。 IaaS 利用者 利用者 利用者 提供者 提供者 PaaS 利用者 提供者 提供者 提供者 提供者 SaaS 提供者 提供者 提供者 提供者 提供者 アプリケーション ミドルウェア・実行環境 OS 仮想化 ハードウェア・NW SaaS で利用者が扱うのは,アプリケーションの利用者 ID や設定だけ FaaS(サーバレス)は PaaS をさらに進め,関数を置くだけ
上の層に行くほど利用者の自由と責任が大きい。ゲスト OS に手を入れられるのは IaaS だけ

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)

用語解説:クラウドのサービスモデル(IaaS・PaaS・SaaS)

問25

刑法の電子計算機使用詐欺罪が適用される違法行為はどれか。

正解 ウ

解説

刑法第246条の2の電子計算機使用詐欺罪は,人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報や不正な指令を与えて財産権の得喪や変更に係る不実の電磁的記録を作るなどして,財産上不法の利益を得る行為を罰する。インターネットを経由して銀行のシステムに虚偽の情報を与え,不正な振込や送金をさせるウが該当する。

アのねずみ講の開設は無限連鎖講の防止に関する法律で禁止される行為である。イは人を欺いて粗悪な商品を販売するもので,詐欺罪や景品表示法などの問題になるが,電子計算機に虚偽の情報を与えて財産上の利益を得るものではない。エは Web ページの改ざんによる業務妨害や信用毀損であり,電子計算機損壊等業務妨害罪や信用毀損罪などに当たり得る。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)