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ITサービスマネージャ試験

平成22年度 秋期 科目A-2(午前Ⅱ)

平成22年度 秋期に実施されたITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ(2026年度からの科目A-2)の全25問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:ITサービスマネージャ試験について

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問1

JIS Q 20000-1 において,供給者管理に求められるものはどれか。

正解 ウ

解説

JIS Q 20000-1 の供給者管理では,サービス提供者が供給者を管理するためのプロセスを文書化し,供給者ごとに契約を結んで,その実績を監視することを求めている。ウが該当する。

アは誤りで,供給者に関わる変更も,サービスや構成品目に影響するものは変更管理プロセスで管理する。イも誤りで,供給者管理プロセスを確立し運用するのはサービス提供者であり,供給者がその適合を実証するものではない。エも誤りで,契約のレビューはあらかじめ定めた間隔で行うことが求められており,“少なくとも 3 年に 1 回”という規定はない。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)

用語解説:JIS Q 20000(サービスマネジメントシステム)

問2

コンピュータルームにおけるオペレータの行動のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

ジョブの異常終了の原因がシステムリソースの不足と分かった場合は,運用マニュアルに記載された回復処理手順に従って再処理するのが,オペレータとして適切な行動である。イが該当する。

アは,オペレーションミスによる障害を正常処理として扱うと,障害の記録や原因分析,再発防止が行われないので不適切である。ウは,保管庫の管理者の不在時にオペレータが自分で媒体を持ち出しており,媒体の管理と職務の分離を損なう。エは,開発者からの依頼を正式な手続を経ずに自分の判断で受け入れており,承認されていないジョブの実行につながる。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)

問3

JIS Q 20000 規格群の関係プロセスの規定における,供給者,サービス提供者及び顧客の 3 者の関係のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

関係プロセスでは,供給者から調達したサービスも含めて,サービス提供者が一体のサービスとして顧客に提供する。顧客から見た窓口はあくまでサービス提供者であり,供給者と顧客が直接やり取りするわけではない。

アは誤りで,内部顧客や内部供給者のように同じ組織内にいることもある。ウも誤りで,供給者にとってはサービス提供者が顧客に当たる。エは供給者とサービス提供者の関係が逆になっている。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)

用語解説:JIS Q 20000(サービスマネジメントシステム)

問4

IT サービスマネジメントにおける SLA の対象項目として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

SLA(サービスレベル合意書)には,サービス提供者と顧客が合意したサービスの品質を測る項目を定める。障害の起きにくさや,稼働率,復旧時間などの信頼性に関する項目は,利用者から見たサービスの品質を表すので SLA の対象になる。ウが適切である。

アの移植性とイの開発生産性は,ソフトウェアの開発や保守に関する特性であり,提供中の IT サービスの品質として合意する項目ではない。エの妥当性は,測定して達成状況を確認できるサービスレベルの項目にはならない。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)

用語解説:SLA(サービスレベル合意書)

問5

IT サービスマネジメントにおける問題管理プロセスとして,実施するものはどれか。

正解 ウ

解説

問題管理は,インシデントの背後にある根本原因を突き止め,同じインシデントが再び起きないように恒久的な解決策を立てるプロセス。原因がまだ分かっていないものを調査して既知の誤りとして登録し,恒久対策につなげる。ウが正しい。

アの暫定的に復旧させて業務を継続できるようにすることと,エのシステムダウンの発生を記録して関係部署に連絡することは,インシデント管理プロセスで行う。イのシステムダウンに備えた復旧のための設計は,可用性管理や IT サービス継続性管理で行う。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)

用語解説:インシデント管理と問題管理

問6

JIS Q 20000 規格群におけるインシデント管理プロセスと問題管理プロセスの関係はどれか。

正解 ウ

解説

問題管理は,既知の誤り(根本原因が判明し回避策が分かっている問題)と是正された問題の最新情報を,インシデント管理に提供しなければならない。この情報があるので,同じ症状のインシデントが起きたときに回避策で早く復旧できる。

アのインシデント解決の進捗状況を問題管理に伝えることは求められていない。イのインシデントの根本原因の調査は問題管理プロセスで行う活動である。エの根本原因を正すための変更は,変更管理プロセスに要求として提起するもので,インシデント管理プロセスに伝えるものではない。

障害が起きてから本格的に直るまで インシデント管理はサービスをできるだけ早く元に戻し,原因が分からなくても再起動や回避策で戻ればよしとする。問題管理は根本原因を突き止め,原因と回避策を既知の誤りとして記録してインシデント管理に渡す。恒久的な解決策は変更要求(RFC)として変更管理に出され,リリース管理を経て本番に展開される。 インシデント管理 早く元に戻す 問題管理 根本原因を探す 変更管理 変更を評価・承認 リリース管理 本番に展開 RFC 既知の誤り・回避策 時間をかけずに戻す 時間をかけてでも再発を防ぐ 原因を調べるのはインシデント管理ではなく問題管理
既知の誤り(原因と回避策)の情報は,問題管理からインシデント管理へ渡る

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)

用語解説:インシデント管理と問題管理 JIS Q 20000(サービスマネジメントシステム)

問7

システム障害が発生したときにシステムを初期状態に戻して再開する方法で,イニシャルプログラムロードとも呼ばれるものはどれか。

正解 イ

解説

コールドスタートは,直前の状態を引き継がずにシステムを初期状態から立ち上げ直す方法で,初期プログラムロード(IPL)とも呼ばれる。更新前コピーや更新後コピーを使った前処理を伴わない。

アのウォームスタートは,停止直前の状態を引き継いで再開する方法。ウのロールバックとエのロールフォワードは,ログを使ってデータベースの内容を整合の取れた状態に戻す・進める回復処理であり,システムの開始方法ではない。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)

用語解説:障害回復(ロールバック・ロールフォワード)

問8

レプリケーションが有効な対策となるものはどれか。

正解 ウ

解説

レプリケーションは,データを別の場所にある複製先へほぼリアルタイムに複製し,常に同じ内容を保つ仕組みである。災害で主系のシステムが使えなくなっても,遠隔地の複製先に切り替えれば,最新に近いデータで早期にサービスを再開できるので,システムの長時間停止を防ぐ対策になる。ウが該当する。

ア,イ,エの改ざん,ウイルスによる破壊,操作ミスによる削除は,いずれも元のデータへの変更がそのまま複製先にも反映されてしまうので,レプリケーションでは防げない。これらには,アクセス制御やウイルス対策,世代管理したバックアップなどが有効である。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)

問9

ITIL v3 における変更諮問委員会(CAB)の役割の説明はどれか。

正解 ウ

解説

ITIL v3 の変更諮問委員会(CAB)は,変更の評価,優先度付け,許可について,変更マネージャを支援し助言する機関である。変更の内容に応じて,IT 部門,業務部門,供給者などの関係者で構成する。ウが該当する。

アのリリースパッケージの導入の承認はリリース管理で行う判断である。イの切り戻し計画やテスト計画の作成は,変更を実施する担当者やリリース管理が行う作業である。エの変更要求の受付と登録,非現実的な要求の却下は,変更管理の最初の段階で変更マネージャなどが行う作業であり,CAB の役割ではない。

変更管理の CAB と緊急変更 変更要求(RFC)は,影響度と緊急度から優先度を決め,変更諮問委員会(CAB)が評価・優先度付け・許可について変更マネージャに助言する。緊急の変更は CAB を集める時間がないので,緊急時に決定できる小さな組織(ECAB)を前もって決め,簡略化した承認と事後の記録の手順を規程に定めておく。 変更要求 RFC CAB 評価・助言 許可・実施 緊急の変更 ECAB 少人数ですぐ決める 緊急変更の手順は変更管理規程に前もって定める 標準変更(事前承認済み)は CAB にかけない
通常は CAB,緊急は ECAB と簡略化した手順

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)

用語解説:ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)

問10

システムを毎日 8:00 から 24:00 まで稼働させるために,要員を図の 3 種類の勤務時間で 1 名ずつ配置している。このシステムを,年間 365 日稼働させるために必要となる要員の総数は,最少で何人か。ここで,年間の休日は 120 日,年次有給休暇日数は 20 日とする。また,休暇や病欠などで要員の確保が不可能にならないように調整できるものとする。

3種類の勤務時間を示す図。勤務1は8:00〜17:00で,12:00〜13:00が休憩。勤務2は10:00〜19:00で,13:00〜14:00が休憩。勤務3は15:00〜24:00で,18:00〜19:00が休憩。

正解 ウ

解説

8:00 から 24:00 まで稼働させるために,勤務 1〜3 に毎日 1 名ずつ,1 日当たり 3 名の勤務が必要である。年間 365 日稼働させるので,必要な勤務日数の合計は 3×365=1,095 人日となる。

要員 1 人が年間に勤務できる日数は,365−120(休日)−20(年次有給休暇)=225 日である。1,095÷225=4.86… なので,4 人では 900 人日しか確保できず,最少で 5 人が必要となる。ウになる。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)

問11

ITIL におけるサービスレベル管理の説明はどれか。

正解 イ

解説

ITIL のサービスレベル管理は,顧客と IT サービス提供者の間で合意したサービスレベルが達成できるように,IT サービスの品質を監視,報告,レビューし,維持・改善していくプロセスである。イが該当する。

アは IT 資産と資源を財務的に管理する IT サービス財務管理,ウはサービスの品質を阻害する事象から迅速に回復させるインシデント管理,エは必須となる IT インフラとサービス設備を合意した期限内に回復できるようにする IT サービス継続性管理の説明である。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)

用語解説:ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス) SLA(サービスレベル合意書)

問12

“IT サービスが必要とされたときに合意済の機能を実行する能力”について,様々な側面を定義,分析,計画立案,測定,改善することを責務とする ITIL のプロセスはどれか。

正解 ウ

解説

設問の“IT サービスが必要とされるときに,合意した条件の下で要求された機能を果たせる状態にある能力”は可用性の定義。これを定義し,分析し,計画し,測定し,改善するのが可用性管理。

アの IT サービス継続性管理は災害などの重大な中断に備えて復旧を計画するプロセス,イのインシデント管理は発生した中断を早く復旧させるプロセス,エの問題管理はインシデントの根本原因を取り除くプロセスであり,可用性そのものを管理するプロセスではない。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)

用語解説:インシデント管理と問題管理 ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)

問13

ITIL v3 におけるサービストランジションの説明はどれか。

正解 ア

解説

ITIL のサービスライフサイクルは,サービスストラテジ,サービスデザイン,サービストランジション,サービスオペレーション,継続的サービス改善の五つの段階からなる。サービストランジションは,設計されたサービスを,規定された要件と制約に沿って構築・テストし,運用に移行して確実に稼働させる段階である。アが正しい。

イの運用状況を継続的に測定して改善するのは継続的サービス改善。ウのサービスの内容を具体的に決めるのはサービスデザイン。エの,戦略的資産としてサービスマネジメントをどう設計,開発,導入するかの手引を提供するのはサービスストラテジの説明である。

ITIL のサービスライフサイクル(v3・2011 edition) サービスストラテジでどんなサービスを提供するかの戦略を決め,サービスデザインで設計し,サービストランジションで運用に移し,サービスオペレーションで日々運用する。継続的サービス改善は,ほかの4段階を通してサービスを測り,改善し続ける。 ストラテジ 戦略を決める デザイン 設計する トランジション 運用に移す オペレーション 日々の運用 継続的サービス改善 全ての段階を測り,改善し続ける(7ステップの改善プロセス) ITIL 4 ではプロセスを「プラクティス」と呼ぶ
段階の順番(ストラテジ→デザイン→トランジション→オペレーション)を問う問題が出ている

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)

用語解説:ITIL(IT サービスマネジメントのベストプラクティス)

問14

ソフトウェア開発・保守の工程において,リポジトリを構築する理由はどれか。

正解 エ

解説

リポジトリは,要求仕様書,設計書,プログラム,テストデータなど,ソフトウェア開発・保守の各工程で作成される成果物とその情報を一元的に管理するデータベースである。成果物を共有して再利用しやすくなるので開発・保守作業の効率が良くなり,データ項目名などの用語を辞書として統一することもできる。エが該当する。

アの不良の管理は不良管理(障害管理)のデータベース,イの作業手順の定義は標準化された開発プロセスや手順書,ウの作業予定と実績の管理は進捗管理のツールの役割である。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)

問15

システム運用にかかわる費用を,利用部門に公平に賦課するための制度はどれか。

正解 ウ

解説

課金は,システム運用に掛かった費用を,各利用部門の利用量などに応じて公平に負担させる制度である。利用部門にコストを意識させ,資源の無駄な使用を抑える効果もある。ウが該当する。

アの委託計算は計算処理を外部に委託すること,イの外部委託は業務を外部の事業者に任せることであり,費用を利用部門に賦課する制度ではない。エの標準原価は,製品などの目標となる原価をあらかじめ科学的に設定したもので,原価管理に用いる。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)

問16

ミッションクリティカルシステムの意味として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

ミッションクリティカルシステムは,障害が発生して停止すると,企業活動や社会に重大な影響を及ぼすシステムである。銀行の勘定系システムや交通機関の運行管理システムなどが該当し,高い信頼性と可用性が求められる。ウが適切である。

アは業務システムの基盤となる OS などの基本ソフトウェア,イは性能の限界に近い高負荷で稼働するシステムの説明である。エは試験的に導入されるパイロットシステムの説明である。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)

問17

請負契約でシステム開発を委託している案件について,委託元のシステム監査人の指摘事項に該当するものはどれか。

正解 イ

解説

請負契約では,受託者が自ら雇用する開発担当者に対して業務の遂行方法の指示などを行う。委託元の管理者が委託先の開発担当者を直接指揮命令すると,実態が労働者派遣となる偽装請負に当たり,労働者派遣法に抵触するおそれがあるので,システム監査人の指摘事項に該当する。イが該当する。

アの委託した開発案件の品質を定期的にモニタリングすること,ウの契約書に機密保持のための事項を盛り込むこと,エの長期化した契約の妥当性を確認することは,いずれも委託元として適切な管理であり,指摘事項にはならない。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)

用語解説:契約の形態(請負・準委任・労働者派遣) システム監査(監査手続・監査証拠・フォローアップ)

問18

EVM(Earned Value Management)は,プロジェクトのスケジュールの遅れやコストの超過を可視化できる進捗管理手法である。図中の A が示すものはどれか。

縦軸が金額,横軸が時間のグラフ。現在の時点で,実コスト(AC,点線)が最も高く,次にプランドバリュー(PV,実線),アーンドバリュー(EV,破線)が最も低い。現在の時点の PV と EV の差が A として示されている。

正解 エ

解説

EVM では,現在の時点までに予定していた作業の価値であるプランドバリュー(PV)と,実際に完了した作業の価値であるアーンドバリュー(EV)を比べて進捗を評価する。図の A は PV と EV の差(スケジュール差異)であり,予定より進んでいない作業の分を金額で表したものである。エが該当する。

アとイのコストの削減や超過は,EV と実コスト(AC)の差(コスト差異)で表す。ウの遅延日数は横軸(時間)方向の差であり,縦軸(金額)方向の差である A では表されない。

EVM の3本の線と SV・CV PV(計画の出来高)・EV(実際の出来高)・AC(実際のコスト)を累積で描く。現時点の EV と PV の縦の差がスケジュール差異 SV=EV−PV で,負なら進捗の遅れを金額で表したもの。EV と AC の差がコスト差異 CV=EV−AC で,負ならコスト超過。EV が PV 以上なら納期に遅れず,EV が AC 以上ならコストは超過しない。 時間 金額(累積) 現時点 PV EV AC SV CV SV=EV−PV(進捗) CV=EV−AC(コスト)
EV と PV の差は進捗の遅れ(金額),EV と AC の差はコストの超過

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)

用語解説:EVM(アーンドバリューマネジメント)

問19

プロジェクトのリスクマネジメントにおけるリスク対応策のうち,リスクの受容策はどれか。

正解 エ

解説

リスク対応策には,回避,転嫁,軽減,受容がある。受容は,リスクへの対応策を事前に講じず,リスクが発生したときに対処することを受け入れる策であり,発生に備えて費用や時間のコンティンジェンシー予備を設けておくことは,能動的な受容策に当たる。エが該当する。

アの開発人員の追加投入はリスクの発生確率や影響を小さくする軽減,イの開発の他社への委託はリスクを第三者に移す転嫁,ウのスコープの縮小はリスクの原因そのものを取り除く回避の策である。

リスクへの対応の戦略 マイナスのリスク(脅威)には,回避(原因を取り除く・計画を変える),転嫁(保険や契約で第三者に移す),軽減(確率や影響を下げる),受容(何もしないか予備を持つ)。プラスのリスク(好機)には,活用(確実に起こす),共有(能力のある第三者と組む),強化(確率や影響を上げる),受容。 脅威(マイナス) 好機(プラス) なくす/確実に 回避 活用 他者へ 転嫁(保険など) 共有(組む) 小さく/大きく 軽減 強化 何もしない 受容 受容 保険を掛けるのは転嫁,計画を変えて避けるのは回避
脅威は回避・転嫁・軽減・受容,好機は活用・共有・強化・受容

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)

問20

RAID3 の組合せとして,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

RAID3 は,データをビット(又はバイト)単位で複数のディスクに分散して記録するストライピングを行い,誤り訂正のためのパリティを専用の 1 台のディスクに固定して記録する方式である。イが適切である。

アのハミングコードを用いるのは RAID2,ウのブロック単位のストライピングでパリティ専用ディスクを固定するのは RAID4,エのブロック単位でパリティを複数のディスクに分散するのは RAID5 である。

RAID1・3・4・5 の違い RAID1 は同じデータを2台に書くミラーリング。RAID3 はビット(バイト)単位で分散し,パリティを専用の1台に固定する。RAID4 はブロック単位で分散し,パリティを専用の1台に固定する。RAID5 はブロック単位で分散し,パリティを全ての台に分散する。 RAID1 ミラーリング A B A B RAID3 ビット単位・パリティ固定 a1 b1 a2 b2 P P RAID4 ブロック単位・パリティ固定 A1 B1 A2 B2 P P RAID5 ブロック単位・パリティ分散 A1 B1 A2 P P B2 P:パリティ(1台壊れても残りから復元できる)
分散の単位(ビット・ブロック)と,パリティの置き場(固定・分散)で見分ける

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)

用語解説:RAID(ディスクアレイ)

問21

Web システムにおいて,ロードバランサ(負荷分散装置)が定期的に行っているアプリケーションレベルの稼働監視に関する記述として,最も適切なものはどれか。

正解 イ

解説

ロードバランサによるアプリケーションレベルの稼働監視は,Web サーバの特定の URL に実際に HTTP でアクセスし,応答の内容に想定した文字列が含まれているかを確認して,アプリケーションが正しく動作しているかを判断する。イが最も適切である。

ウは特定のポートへの接続確認で,TCP の接続が確立できることは分かるが,アプリケーションが正常に応答するかまでは分からない。エは ping などによるネットワークの疎通確認である。アの Web サーバで OS のコマンドを実行する方法は,負荷分散装置が外部から行う稼働監視ではなく,アプリケーションの応答も確認できない。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)

問22

商品の販売状況分析を商品軸,販売チャネル軸,時間軸,顧客タイプ軸で行う。データ集計の観点を,商品,販売チャネルごとから,商品,顧客タイプごとに切り替える操作はどれか。

正解 ア

解説

OLAP のダイスは,多次元データを見る分析軸を別の軸に入れ替える操作。商品・販売チャネルの組合せで見ていたものを商品・顧客タイプの組合せに切り替えるのがこれに当たる。

ウのドリルダウンは同じ軸のまま,より細かい階層へ掘り下げる操作。エのロールアップは逆に上位の階層へ集約する操作。イのデータクレンジングは,分析の前に表記の揺れや誤りを整える処理であり,集計の観点を変える操作ではない。

OLAP の操作 多次元のデータ(商品・販売チャネル・時間・顧客タイプ)を立方体のように見る。ダイスは見る軸を入れ替える(商品×販売チャネル → 商品×顧客タイプ)。スライスは1つの軸を固定して断面を見る。ドリルダウンは同じ軸をより細かく,ロールアップはより粗く(上位の階層へ)集計し直す。 商品 チャネル 時間 操作 すること ダイス 見る軸を入れ替える スライス 1つの軸を固定して断面 ドリルダウン 同じ軸をより細かく ロールアップ 上位の階層へまとめる 商品×チャネル → 商品×顧客タイプ はダイス
軸を入れ替えるのがダイス,細かくするのがドリルダウン

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)

問23

図は,組織内の TCP/IP ネットワークにあるクライアントが,プロキシサーバ,ルータ,インターネットを経由して組織外の Web サーバを利用するときの経路を示している。この通信の TCP コネクションが設定される場所はどれか。

組織内ネットワーク(点線の枠)にクライアントとプロキシサーバがつながっている。プロキシサーバはもう一方のネットワークにもつながり,そこにルータがある。ルータはインターネットにつながり,インターネットの先に Web サーバがある。

正解 イ

解説

プロキシサーバはクライアントに代わって Web サーバへアクセスする。このためコネクションはクライアントとプロキシサーバの間で一度終端され,プロキシサーバと Web サーバの間で改めて張られる。TCP コネクションはこの 2 本になる。

アは誤りで,プロキシを経由する以上クライアントと Web サーバが直接コネクションを張ることはない。ウとエのルータは IP パケットを中継するネットワーク層の装置であり,TCP コネクションの終端にはならない。

プロキシを通ると TCP コネクションは2本 クライアントはプロキシサーバと TCP コネクションを張り,プロキシサーバが改めて Web サーバと TCP コネクションを張る。ルータは IP パケットを中継するネットワーク層の装置なので,TCP コネクションの終点にはならない。 クライアント プロキシ ルータ Web TCP ① TCP ② IP パケットを中継するだけ TCP コネクションは クライアント⇔プロキシ,プロキシ⇔Web の2本
TCP の終点はクライアント・プロキシ・Web サーバ。ルータは素通り

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)

問24

暗号方式に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

共通鍵暗号方式は,暗号化と復号に同じ鍵を使う方式。鍵を送受信者だけの秘密に保つ必要があるが,公開鍵暗号方式より処理が高速なので,大量のデータの暗号化に向く。イが正しい。

アは誤りで,AES は共通鍵暗号方式,RSA は公開鍵暗号方式である。ウも誤りで,公開鍵暗号方式を通信内容の秘匿に使う場合は,受信者の公開鍵で暗号化し,受信者だけがもつ秘密鍵で復号する。暗号化鍵を公開し,復号鍵を秘密にする。エも誤りで,ディジタル署名では,送信者が自分の秘密鍵で署名を作り,受信者が送信者の公開鍵で検証するので,公開鍵暗号方式が使われる。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)

用語解説:ディジタル署名(デジタル署名) 共通鍵暗号と公開鍵暗号

問25

製造業者の責任に関して,製造物責任法(PL 法)に定められているものはどれか。

正解 ウ

解説

製造物責任法第 4 条第 1 号は,製造物を引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては欠陥があることを認識できなかったことを製造業者等が証明したときは,損害賠償の責任を負わないと定めている(開発危険の抗弁)。ウが該当する。

アは誤りで,同法第 5 条により,損害賠償の請求権は製造業者等が製造物を引き渡した時から 10 年を経過したときなどに時効によって消滅する。イも誤りで,同法第 4 条第 2 号により,部品の欠陥が専ら完成品メーカの設計に関する指示に従ったことにより生じ,過失がない場合は,部品メーカは責任を負わない。エも誤りで,同法第 2 条第 3 項により,製造物を業として輸入した者も製造業者に含まれ,責任を負う。

出典:平成22年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)