令和4年度 春期に実施されたシステムアーキテクト試験
午前Ⅱの全25問です。問題文・正解・解説をそのまま読めます。
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問1
アジャイル開発の初期段階において,プロジェクトの目的,スコープなどに対する共通認識を得るために,あらかじめ設定されている設問と課題について関係者が集まって確認し合い,その成果を共有する手法はどれか。
ア アジャイルモデリング
イ インセプションデッキ 正解
ウ プランニングポーカ
エ ユーザストーリマッピング
正解 イ
解説
インセプションデッキは,アジャイル開発の開始時に,“我々はなぜここにいるのか”“やらないことリスト”“夜も眠れない問題”など,あらかじめ用意された 10 の問いと課題に関係者全員で答え,プロジェクトの目的やスコープ,制約について共通認識を作り,その結果を共有する手法である。イが該当する。
アのアジャイルモデリングは,必要最小限のモデルを軽量に作成・活用する開発の実践方法である。ウのプランニングポーカは,カードを使ってユーザーストーリーの規模を全員で見積もる手法,エのユーザストーリマッピングは,ユーザーの行動の流れに沿ってストーリーを並べ,リリース計画を立てる手法である。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2
ソフトウェアパターンのうち,GoF のデザインパターンの説明はどれか。
ア Java のパターンとして,引数オブジェクト,オブジェクトの可変性などで構成される。
イ オブジェクト指向開発のためのパターンであって,生成,構造,振る舞いの三つのカテゴリに分類される。 正解
ウ 構造,分散システム,対話型システム及び適合型システムの四つのカテゴリに分類される。
エ 抽象度が異なる要素を分割して階層化するための Layers,コンポーネント分割のための Broker などで構成される。
正解 イ
解説
GoF(Gang of Four)のデザインパターンは,オブジェクト指向設計でよく現れる問題と解決策を23のパターンにまとめたもので,オブジェクトの生成に関わる“生成”,クラスやオブジェクトの組み合わせ方に関わる“構造”,オブジェクト間の責任分担や処理の流れに関わる“振る舞い”の三つに分類される。イが正しい。
ウとエは,ソフトウェアアーキテクチャのパターン集である POSA(Pattern-Oriented Software Architecture)の説明で,Layers や Broker はそのアーキテクチャパターンである。アは Java に特化した実装上の指針の説明で,GoF のパターンは特定の言語に依存しない。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)
問3
Pattern-Oriented Software Architecture(POSA)のアーキテクチャパターンのうち,ソフトウェアをメタレベルとベースレベルの二つのレベルに分割し,ソフトウェアの構造と振る舞いとを動的に変更できる仕組みを提供しているものはどれか。
ア Broker
イ Microkernel
ウ Model-View-Controller
エ Reflection 正解
正解 エ
解説
POSA のアーキテクチャパターンのうち Reflection は,ソフトウェアの構造や振る舞いに関する情報を表すメタレベルと,アプリケーションの処理を行うベースレベルに分け,メタレベルの情報を変更することで,ベースレベルの構造や振る舞いを実行時に動的に変更できるようにするパターンである。エが該当する。
アの Broker は,分散したコンポーネント間の通信を仲介役が取り持つパターンである。イの Microkernel は,最小限の中核機能と,それに追加する拡張機能とを分けるパターン,ウの Model-View-Controller は,データと処理,表示,入力の制御を分けるパターンである。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)
問4
組込みシステムで DBMS を用いるときには,通信のオーバヘッド,通信負荷の発生を防ぐこと,必要なメモリ容量をリソース制限内に抑えることなどを目的として,インプロセスデータベースを用いることがある。このインプロセスデータベースの説明として,適切なものはどれか。
ア クライアントサーバ形式のクライアントとなるアプリケーションプログラムとソケットを介して通信し,SQL を用いて処理を記述する。
イ データベースエンジンはライブラリ形式で提供され,アプリケーションプログラムとリンクされて同一メモリ空間で動作する。 正解
ウ データベースの全体をメモリ上に配置して,データベース処理を高速化する。
エ 一つのテーブルを一つのファイルで管理し,アプリケーションプログラムからはファイル入出力の API で操作する。
正解 イ
解説
インプロセスデータベースは,データベースエンジンがライブラリとして提供され,アプリケーションプログラムにリンクされて同じプロセスの同じメモリ空間で動作する形態の DBMS である。プロセス間通信やネットワーク通信が不要なので,通信のオーバーヘッドがなく,必要なメモリも小さく抑えられる。イが適切である。
アはデータベースサーバとアプリケーションが別のプロセスとして動き,ソケットで通信するクライアントサーバ型の DBMS の説明である。ウはデータを全てメモリ上に置いて高速化するインメモリデータベースの説明で,動作する場所(プロセス)の説明ではない。エはテーブルをファイル単位で管理し,ファイル入出力の API で操作する簡易なファイル型のデータ管理の説明である。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)
問5
デザインパターンの中のストラテジパターンを用いて,帳票出力のクラスを図のとおりに設計した。適切な説明はどれか。
ア クライアントは,使用したいフォーマットに対応する,帳票出力ストラテジクラスのサブクラスを意識せずに利用できる。
イ 新規フォーマット用のアルゴリズムの追加が容易である。 正解
ウ 帳票出力ストラテジクラスの中で,どのフォーマットで帳票を出力するかの振り分けを行っている。
エ 帳票出力のアルゴリズムは,コンテキストクラスの中に記述する。
正解 イ
解説
ストラテジパターンは,アルゴリズムを抽象的なストラテジクラスとして定義し,具体的なアルゴリズムをそのサブクラスとして実装して,コンテキストクラスから入れ替えて使えるようにするパターンである。新しいフォーマットに対応するときは,帳票出力ストラテジのサブクラスを追加するだけでよく,コンテキストや既存のサブクラスを変更する必要がないので,イが適切である。
アは誤りで,クライアントは使いたいフォーマットに対応するサブクラスを選んでコンテキストに設定する必要がある。ウも誤りで,帳票出力ストラテジクラスは共通のインタフェースを定めるだけで,フォーマットの振り分けはサブクラスの選択によって行われ,条件分岐を書く必要がない。エも誤りで,帳票出力のアルゴリズムは各サブクラスに記述し,コンテキストクラスはストラテジに処理を任せる。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)
問6
モジュール間のデータの受渡し方法のうち,最も低いモジュール結合度となるものはどれか。
ア 単一のデータ項目を大域的データで受け渡す。
イ 単一のデータ項目を引数で受け渡す。 正解
ウ データ構造を大域的データで受け渡す。
エ データ構造を引数で受け渡す。
正解 イ
解説
モジュール結合度は,弱い(望ましい)ものから順に,データ結合,スタンプ結合,制御結合,外部結合,共通結合,内容結合となる。単一のデータ項目を引数で受け渡すのは,必要なデータだけをやり取りするデータ結合で,最も結合度が低い。イが該当する。
エのデータ構造を引数で受け渡すのはスタンプ結合で,受け取る側が使わない項目まで構造に依存する。アの単一のデータ項目を大域的データで受け渡すのは外部結合,ウのデータ構造を大域的データで受け渡すのは共通結合であり,いずれも大域的データを介して多くのモジュールが依存し合うので結合度が高い。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)
問7
既存システムを基に,新システムのモデル化を行う場合の DFD 作成の手順として,適切なものはどれか。
ア 現物理モデル → 現論理モデル → 新物理モデル → 新論理モデル
イ 現物理モデル → 現論理モデル → 新論理モデル → 新物理モデル 正解
ウ 現論理モデル → 現物理モデル → 新物理モデル → 新論理モデル
エ 現論理モデル → 現物理モデル → 新論理モデル → 新物理モデル
正解 イ
解説
DFD で既存システムを基に新システムをモデル化するときは,まず現状の業務を担当者や媒体などの実装を含めて表した現物理モデルを作り,そこから実装に依存しない本質的な処理だけを抜き出した現論理モデルにする。次に,新しい要求を反映した新論理モデルを作り,最後にそれを実現する具体的な手段を当てはめた新物理モデルにする。イが適切である。
論理モデルは物理モデルから実装の制約を取り除いたものなので,ウやエのように現論理モデルから始めることはできない。アとウのように新物理モデルを先に作ると,実現手段を決めてから本質的な要求を整理することになり,手順が逆である。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)
問8
ある購買システムの開発において,開発者が行った探索的テストの例として,適切なものはどれか。
ア 過去に購買システムを開発した経験に基づいて,入力項目間の関連チェックの不備を検出できそうなデータパターンを推測し,テストケースを事前に作成してテストした。
イ 数量の範囲に応じて適用する商品価格が正しいかどうかを確認するために,各範囲の数量の中央の値を用いたテストケースを作成してテストした。
ウ 組織変更の前後で組織名が正しく印刷されるかどうかを確認するために,新組織の有効開始日とその前日とを発注日とするテストケースを事前に作成してテストした。
エ 入力値の組合せが無効なときは伝票を作成しないことを確認するために,幾つかの代表的な入力値の組合せをテストし,その結果に基づいて次のテストケースを作成してテストを繰り返した。 正解
正解 エ
解説
探索的テストは,テストケースを事前に詳細に作り込まず,テスト対象について学習しながら,実施したテストの結果に基づいて次に行うテストを設計し,実行を繰り返していくテストの手法である。代表的な入力値の組合せをテストし,その結果に基づいて次のテストケースを作成するエが該当する。
アは経験に基づいて誤りが起きやすい箇所を推測してテストケースを作るエラー推測,イは入力値の範囲を分割し各範囲の代表値を選ぶ同値分割,ウは有効開始日とその前日という境界の値を選ぶ境界値分析であり,いずれもテストケースを事前に作成する手法である。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)
問9
ソフトウェアのテスト工程において,バグ管理図を用いて,テストの進捗状況とソフトウェアの品質を判断したい。このときの考え方のうち,最も適切なものはどれか。
ア テスト工程の前半で予想以上にバグが摘出され,スケジュールが遅れたので,スケジュールの見直しを行い,5 日遅れでテストが終了すると判断した。
イ テスト項目がスケジュールどおりに消化され,かつ,バグ摘出の累積件数が増加しなければ,ソフトウェアの品質は高いと判断できる。
ウ テスト項目消化の累積件数,バグ摘出の累積件数及び未解決バグの件数の全てが変化しなくなった場合は,解決困難なバグに直面しているかどうかを確認する必要がある。 正解
エ バグ摘出の累積件数の推移とテスト項目の未消化件数の推移から,テスト終了の時期をほぼ正確に予測できる。
正解 ウ
解説
バグ管理図では,テスト項目の消化件数,バグの摘出件数の累積,未解決バグの件数の推移を並べて見る。これらの全てが変化しなくなった場合は,テストが進んでおらず,バグの解決もされていない状態なので,解決困難なバグによって作業が止まっていないかを確認する必要がある。ウが適切である。
アは,前半にバグが多く摘出されたことだけを理由に遅れ日数を判断しており,品質の状況を考慮していない。イは,テスト項目の品質が低い(バグを検出できていない)可能性もあるので,累積件数が増えないだけで品質が高いとは判断できない。エは,バグの摘出の推移には不確実性があり,テストの終了時期をほぼ正確に予測することはできない。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)
問10
故障の予防を目的とした解析手法である FMEA の説明はどれか。
ア 個々のシステム構成要素に起こり得る潜在的な故障モードを特定し,それらの影響度を評価する。 正解
イ 故障を,発生した工程や箇所などで分類して分析し,改善すべき工程や箇所を特定する。
ウ 発生した故障について,故障の原因に関係するデータ,事象などを収集し,“なぜ”を繰り返して原因を掘り下げ,根本的な原因を追究する。
エ 発生した故障について,その引き金となる原因を列挙し,それらの関係を木構造で表現する。
正解 ア
解説
FMEA(Failure Mode and Effects Analysis,故障モード影響解析)は,システムを構成する個々の部品や要素について,起こり得る潜在的な故障モードを洗い出し,それがシステム全体に与える影響の大きさや発生頻度を評価して,事前に対策を講じるボトムアップ型の解析手法である。アが該当する。
イは故障を発生工程や箇所で分類して重点を見つけるパレート分析などの層別分析,ウは“なぜ”を繰り返して根本原因を追究するなぜなぜ分析である。エの故障の原因を列挙し関係を木構造で表すのは FTA(故障の木解析)で,トップダウン型の解析手法である。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)
問11
JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,廃棄プロセスのタスクのうち,アクティビティ“廃棄を確実化する”において実施すべきタスクはどれか。
ア 選定されたソフトウェアシステム要素を再利用,再生利用,再調整,分解修理,保管又は破壊する。
イ ソフトウェアシステムの廃棄戦略を定義する。
ウ ソフトウェアシステム又は要素を不活性化して取り除くための準備をする。
エ 廃棄後の,人の健康,安全性,セキュリティ及び環境への有害な状況が識別されて対処されていることを確認する。 正解
正解 エ
解説
JIS X 0160:2021 の廃棄プロセスでは,“廃棄を準備する”“廃棄を実行する”“廃棄を確実化する”などのアクティビティが定められている。“廃棄を確実化する”では,廃棄後に,人の健康,安全性,セキュリティ及び環境への有害な状況が識別されて対処されていることを確認し,記録を保持する。エが該当する。
イの廃棄戦略の定義は“廃棄を準備する”のタスクである。アの選定された要素を再利用や破壊するタスクとウの要素を不活性化して取り除く準備をするタスクは,“廃棄を実行する”で行う作業であり,廃棄が確実に行われたことの確認ではない。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)
問12
JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,ライフサイクルモデルの目的及び成果を達成するために,ライフサイクルプロセスを修正するか,又は新しいライフサイクルプロセスを定義することを何というか。
ア シミュレーション
イ 修整(Tailoring) 正解
ウ 統治(Governance)
エ ベンチマーキング
正解 イ
解説
JIS X 0160:2021 では,ライフサイクルモデルの目的及び成果を達成するために,ライフサイクルプロセスを修正したり,新しいライフサイクルプロセスを定義したりすることを修整(tailoring)という。組織やプロジェクトの特性に合わせて,規格のプロセスをそのまま使うのではなく取捨選択・変更して適用する考え方であり,イが該当する。
アのシミュレーションはモデルを使って対象の振る舞いを模擬的に再現すること,エのベンチマーキングは優れた他社などの実践と比較して改善につなげる手法である。ウの統治(ガバナンス)は組織を方向付けて監視する活動であり,プロセスを修正・定義することを指す用語ではない。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)
問13
IT 投資に対する評価指標の設定に際し,バランススコアカードの手法を用いて KPI を設定する場合に,内部ビジネスプロセスの視点に立った KPI の例はどれか。
ア IT リテラシ向上のための研修会の受講率を 100%とする。
イ 売上高営業利益率を前年比 5%アップとする。
ウ 顧客クレーム件数を 1 か月当たり 20 件以内とする。
エ 注文受付から製品出荷までの日数を 3 日短縮とする。 正解
正解 エ
解説
バランススコアカードは,財務,顧客,内部ビジネスプロセス,学習と成長の四つの視点から戦略目標と KPI を設定する手法である。内部ビジネスプロセスの視点は,業務プロセスの効率や品質を高めるための指標を扱うので,注文受付から製品出荷までの日数の短縮というエが該当する。
アの研修会の受講率は人材の能力向上に関する学習と成長の視点,イの売上高営業利益率は財務の視点,ウの顧客クレーム件数は顧客の視点の KPI である。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)
問14
組込みシステム開発において,製品に搭載する LSI を新規に開発する。LSI 設計を自社で行い,LSI 製造を外部に委託する場合の委託先として,適切なものはどれか。
ア IP プロバイダ
イ デザインハウス
ウ ファウンドリ 正解
エ ファブレスメーカ
正解 ウ
解説
ファウンドリーは,自社では LSI の設計を行わず,他社から設計データを受け取って半導体の製造を受託する事業者である。LSI の設計を自社で行い,製造だけを外部に委託する場合の委託先に当たるので,ウが適切である。
アの IP プロバイダは,LSI に組み込む CPU コアやインタフェースなどの回路設計資産(IP コア)を提供する事業者,イのデザインハウスは LSI の設計を受託する事業者である。エのファブレスメーカーは,自社の工場をもたずに設計や販売を行い,製造をファウンドリーに委託するメーカーであり,委託する側に当たる。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)
問15
ラボ契約の特徴はどれか。
ア 依頼元がベンダ企業側の作業担当者を指名して直接指揮命令を行う契約であり,ベンダ企業はこれを前提に要員を割り当てる。
イ 依頼元は,契約に基づきスキルや人数などの基準を満たすように要員を確保することをベンダ企業に求めるかわりに一定以上の発注を約束する。 正解
ウ 開発したシステムによって依頼元が将来獲得する売上や利益をベンダ企業にも分配することを条件に,開発時のベンダ企業への発注金額を抑える。
エ ベンダ企業が契約で定めた最低発注工数を下回って作業を完了した場合には,実稼働工数に基づいて請求することが求められる。
正解 イ
解説
ラボ契約は,一定期間,ベンダ企業が依頼元のために,契約で定めたスキルや人数などの基準を満たす開発要員を確保し,依頼元はその代わりに一定以上の発注量を約束する形態の契約である。依頼元は必要な開発体制を継続的に確保でき,ベンダ企業は安定した受注が見込める。イが該当する。
アの依頼元がベンダ企業の作業担当者を直接指揮命令するのは労働者派遣の形態であり,請負や準委任の形をとるラボ契約で直接指揮命令を行うと偽装請負になるおそれがある。ウは開発後の収益をベンダ企業にも分配するレベニューシェア契約の説明である。エは契約の性質に反しており,ラボ契約は確保した要員の体制に対して対価を支払うものである。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)
問16
e シールの説明はどれか。
ア インターネット上のゲーム内に限定されたキャラクターのイメージデータの作成者を証明する仕組みの一つである。
イ 個人の意思表示や,意思表示をしている個人の本人確認が必要な電子文書データについて,その電子文書データの作成者の証明と改ざん防止のために,個人が行う電子署名である。
ウ 電子文書データの作成者の証明と改ざん防止のために,重要文書を扱う国や地方自治体などの公共機関だけに使用が許されている電子署名である。
エ 法人が作成した電子文書データについて,その電子文書データの作成者が間違いなくその法人であり,かつその電子文書データは作成後に改ざんされていないことを証明するものである。 正解
正解 エ
解説
e シールは,請求書や領収書などの電子文書データについて,それが確かにその組織(法人)から発行されたものであり,発行後に改ざんされていないことを証明する仕組みである。個人の意思表示を示す電子署名と違い,発行元の組織を証明する。エが該当する。
イの個人が行う電子署名は,文書に記載された内容に対する個人の意思表示を証明するもので,組織の発行元を証明する e シールとは区別される。ウのように公共機関だけに使用が限定されたものではなく,民間の法人も利用できる。アのゲームのキャラクターの作成者の証明とは関係がない。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)
問17
マルチベクトル型 DDoS 攻撃に該当するものはどれか。
ア 攻撃対象の Web サーバ 1 台に対して,多数の PC から一斉にリクエストを送ってサーバのリソースを枯渇させる攻撃と,大量の DNS 通信によってネットワークの帯域を消費する攻撃を同時に行う。 正解
イ 攻撃対象の Web サイトのログインパスワードを解読するために,ブルートフォースによるログイン試行を,多数のスマートフォン,IoT 機器などから成るボットネットを踏み台にして一斉に行う。
ウ 攻撃対象のサーバに大量のレスポンスが同時に送り付けられるようにするために,多数のオープンリゾルバに対して,送信元 IP アドレスを攻撃対象のサーバの IP アドレスに偽装した名前解決のリクエストを一斉に送信する。
エ 攻撃対象の組織内の多数の端末をマルウェアに感染させ,当該マルウェアを遠隔操作することによってデータの改ざんやファイルの消去を一斉に行う。
正解 ア
解説
マルチベクトル型 DDoS 攻撃は,性質の異なる複数の攻撃手法を組み合わせて同時に仕掛ける DDoS 攻撃である。サーバのリソースを枯渇させるアプリケーション層の攻撃と,大量の DNS 通信でネットワーク帯域を消費させる攻撃を同時に行うアが該当する。一つの対策では防ぎきれないので,対応が難しい。
イはボットネットを使ったブルートフォース攻撃でログインパスワードを解読しようとする不正ログインの試みで,サービスの妨害を目的とする DDoS 攻撃ではない。ウはオープンリゾルバを踏み台にした DNS リフレクション攻撃という単一の手法である。エはマルウェアによるデータの改ざんや破壊であり,DDoS 攻撃ではない。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)
問18
暗号方式に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア AES は公開鍵暗号方式,RSA は共通鍵暗号方式の一種である。
イ 共通鍵暗号方式では,暗号化及び復号に同一の鍵を使用する。 正解
ウ 公開鍵暗号方式を通信内容の秘匿に使用する場合は,暗号化に使用する鍵を秘密にして,復号に使用する鍵を公開する。
エ デジタル署名に公開鍵暗号方式が使用されることはなく,共通鍵暗号方式が使用される。
正解 イ
解説
共通鍵暗号方式は,暗号化と復号に同じ鍵を使う方式。鍵を送受信者だけの秘密に保つ必要があるが,公開鍵暗号方式より処理が高速なので,大量のデータの暗号化に向く。イが正しい。
アは逆で,AES が共通鍵暗号方式,RSA が公開鍵暗号方式である。ウも逆で,秘匿のために使う場合は受信者の公開鍵で暗号化し,受信者だけがもつ秘密鍵で復号する。エも逆で,ディジタル署名には公開鍵暗号方式が使われる。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)
問19
CRYPTREC の役割として,適切なものはどれか。
ア 外国為替及び外国貿易法で規制されている暗号装置の輸出許可申請を審査,承認する。
イ 政府調達において IT 関連製品のセキュリティ機能の適切性を評価,認証する。
ウ 電子政府での利用を推奨する暗号技術の安全性を評価,監視する。 正解
エ 民間企業のサーバに対するセキュリティ攻撃を監視,検知する。
正解 ウ
解説
CRYPTREC は,電子政府で利用される暗号技術の安全性を評価・監視し,適切な実装法や運用法を調査・検討するプロジェクトであり,電子政府推奨暗号リストなどからなる CRYPTREC 暗号リストを策定している。ウが適切である。
アの暗号装置の輸出許可申請の審査・承認は経済産業省の役割である。イの IT 関連製品のセキュリティ機能を評価・認証するのは,IPA が運営する IT セキュリティ評価及び認証制度(JISEC)である。エの民間企業のサーバへの攻撃の監視・検知は,SOC などのセキュリティ監視サービスが担う。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)
問20
インターネットとの接続において,ファイアウォールの NAPT 機能によるセキュリティ上の効果はどれか。
ア DMZ 上にある公開 Web サーバの脆弱性を悪用する攻撃を防御できる。
イ インターネットから内部ネットワークへの侵入を検知し,検知後の通信を遮断できる。
ウ インターネット上の特定の Web サービスを利用する HTTP 通信を検知し,遮断できる。
エ 内部ネットワークからインターネットにアクセスする利用者 PC について,インターネットからの不正アクセスを困難にすることができる。 正解
正解 エ
解説
NAPT は,内部の複数の PC のプライベート IP アドレスとポート番号を,グローバル IP アドレスと別のポート番号の組に対応付けて変換する。この対応表は内部から外へ通信を始めたときに作られるので,インターネット側から内部の PC を名指しで指定して接続を仕掛けることが難しくなる。エが正しい。
アの公開 Web サーバの脆弱性を突く攻撃への防御は WAF の役割。イの侵入検知と遮断は IPS,ウの特定の Web サービスを使う HTTP 通信の検知・遮断はプロキシや URL フィルタリングの役割で,いずれも NAPT の機能ではない。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)
問21
容量が a M バイトでアクセス時間が x ナノ秒の命令キャッシュと,容量が b M バイトでアクセス時間が y ナノ秒の主記憶をもつシステムにおいて,CPU からみた,主記憶と命令キャッシュとを合わせた平均アクセス時間を表す式はどれか。ここで,読み込みたい命令コードが命令キャッシュに存在しない確率を r とし,キャッシュ管理に関するオーバヘッドは無視できるものとする。
ア (1−r)·a/(a+b)·x + r·b/(a+b)·y
イ (1−r)·x + r·y 正解
ウ r·a/(a+b)·x + (1−r)·b/(a+b)·y
エ r·x + (1−r)·y
正解 イ
解説
命令キャッシュに命令コードが存在する確率は 1−r で,そのときのアクセス時間は x ナノ秒である。存在しない確率 r のときは主記憶にアクセスするので,アクセス時間は y ナノ秒になる。平均アクセス時間はこれらの期待値なので,(1−r)·x+r·y であり,イになる。
アとウは容量 a,b による重み付けを含めているが,平均アクセス時間はキャッシュに存在するかどうかの確率だけで決まり,記憶装置の容量は関係しない。エは存在しない確率 r と存在する確率 1−r を逆にしている。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)
問22
データベースサーバのクラスタリング技術の特徴のうち,シェアードエブリシングはどれか。
ア クラスタリング構成にして可用性を高めることによって,故障発生時に担当していた範囲のデータを待機系のサーバに引き継ぐことができる。
イ サーバごとに管理する対象データが決まっているので,1 台のサーバに故障が発生すると故障したサーバが管理する対象データを処理できなくなり,システム全体の可用性が低下する。
ウ データを複数の磁気ディスクに分割配置し,更にサーバと磁気ディスクが 1 対 1 に対応しているので,複数サーバを用いた並列処理が可能になる。
エ 負荷を分散し,全てのサーバのリソースを有効活用できることに加えて,データを共有することによって 1 台のサーバに故障が発生したときでも処理を継続することができる。 正解
正解 エ
解説
シェアードエブリシングは,クラスタを構成する全てのサーバが,ディスク上のデータなどの資源を共有する方式である。どのサーバでも全てのデータを処理できるので,負荷を分散して全サーバのリソースを活用でき,1 台に障害が発生しても他のサーバが処理を引き継いで継続できる。エが該当する。
アは,通常は稼働系だけが処理を行い,障害時に待機系に引き継ぐアクティブ/スタンバイ型のクラスタの説明である。イとウは,サーバごとに担当するデータやディスクが分かれているシェアードナッシングの特徴であり,並列処理に向くが,1 台の障害でそのサーバのデータを処理できなくなる。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)
問23
幾つかのサブシステムから成るシステムの信頼性に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア あるサブシステムで発生したフォールトの影響が他のサブシステムに波及することを防ぐフォールトマスクは,システムの MTBF は変化させないが,MTTR の短縮につながる。
イ サブシステムにフォールトが検出されたとき,再試行すると正しい結果が得られる場合もあるので,再試行はシステムの MTBF の向上と MTTR の短縮につながる。
ウ サブシステムの稼働中に行われるフォールトの検出は,システムを停止せず行われるので,システムの MTTR は変化させないが,MTBF の向上につながる。
エ フォールトが発生したあるサブシステムを切り離して,待機系のサブシステムに自動で切り替えるフェールオーバは,システムの MTBF は変化させないが,MTTR の短縮につながる。 正解
正解 エ
解説
フェールオーバは,障害が発生したサブシステムを切り離し,待機系に自動で切り替えて処理を継続する仕組みである。障害(フォールト)が発生すること自体は防げないので MTBF は変わらないが,復旧までの時間が短くなるので MTTR の短縮につながる。エが適切である。
アのフォールトマスクは,フォールトの影響を隠して外部に障害として現れないようにするので,システムとしての故障を減らし MTBF の向上につながる。イの再試行も,一時的なフォールトをシステムの故障にしないので MTBF の向上につながるが,修理時間(MTTR)を短くするものではない。ウの稼働中のフォールト検出は,フォールトを見つけるだけで発生そのものを減らすわけではないので MTBF の向上にはつながらず,早く見つけて修理に着手できる点ではむしろ MTTR の短縮に効く。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)
問24
t1 ~t10 の時刻でスケジュールされたトランザクション T1 ~T4 がある。時刻 t10 で T1 が commit を発行する直前の,トランザクションの待ちグラフを作成した。a に当てはまるトランザクションはどれか。ここで,select(X) は共有ロックを掛けて資源 X を参照することを表し,update(X) は専有ロックを掛けて資源 X を更新することを表す。これらのロックは,commit された時にアンロックされるものとする。また,トランザクションの待ちグラフの矢印は,Ti →Tj としたとき,Tj がロックしている資源のアンロックを,Ti が待つことを表す。
〔トランザクションのスケジュール〕
〔トランザクションの待ちグラフ〕
正解 イ
解説
時刻順にロックを追う。T1 は A と C に共有ロック,T2 と T3 は B に共有ロック,T4 は A に共有ロックを掛ける。t5 で T4 が B を更新しようとすると,B を共有ロックしている T2 と T3 を待つ(T4 →T2 ,T4 →T3 )。t8 で T2 が C を更新しようとすると T1 を待ち(T2 →T1 ),t9 で T3 が A を更新しようとすると T1 と T4 を待つ(T3 →T1 ,T3 →T4 )。
矢印を受けるだけの d が T1 ,互いに矢印を向け合う b と c が T3 と T4 である。b から a に矢印があり,a から d(T1 )に矢印があるので,a は T4 に待たれて T1 を待つ T2 であり,イになる(b が T4 ,c が T3 )。T3 と T4 は互いに待ち合っており,デッドロックが発生している。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)
問25
図は,既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網を,IP ネットワークに統合する場合の接続構成を示している。図中の a~c に該当する装置の適切な組合せはどれか。
ア a:PBX b:VoIP ゲートウェイ c:ルータ 正解
イ a:PBX b:ルータ c:VoIP ゲートウェイ
ウ a:VoIP ゲートウェイ b:PBX c:ルータ
エ a:VoIP ゲートウェイ b:ルータ c:PBX
正解 ア
解説
既存の電話機はまず内線交換機である PBX に接続する。PBX が扱う電話の音声信号を IP パケットに変換して IP ネットワークでやり取りできるようにするのが VoIP ゲートウェイであり,そのパケットをルータを通して IP ネットワークへ送る。電話機から順に PBX,VoIP ゲートウェイ,ルータとなるので,アが適切である。
イは PBX の出す電話の信号を IP 化しないままルータに渡すことになり,ルータは IP パケットしか中継できないので通信できない。ウは VoIP ゲートウェイで IP 化した後に PBX を置き,エは IP ネットワークの直前に PBX を置いているが,既存の PBX は電話の信号を交換する装置で IP パケットを扱えないので,どちらも成り立たない。
出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)
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