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システムアーキテクト試験

令和4年度 春期 科目A-2(午前Ⅱ)

令和4年度 春期に実施されたシステムアーキテクト試験 午前Ⅱ(2026年度からの科目A-2)の全25問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:システムアーキテクト試験について

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問1

アジャイル開発の初期段階において,プロジェクトの目的,スコープなどに対する共通認識を得るために,あらかじめ設定されている設問と課題について関係者が集まって確認し合い,その成果を共有する手法はどれか。

正解 イ

解説

インセプションデッキは,アジャイル開発の開始時に,“我々はなぜここにいるのか”“やらないことリスト”“夜も眠れない問題”など,あらかじめ用意された 10 の問いと課題に関係者全員で答え,プロジェクトの目的やスコープ,制約について共通認識を作り,その結果を共有する手法である。イが該当する。

アのアジャイルモデリングは,必要最小限のモデルを軽量に作成・活用する開発の実践方法である。ウのプランニングポーカは,カードを使ってユーザーストーリーの規模を全員で見積もる手法,エのユーザストーリマッピングは,ユーザーの行動の流れに沿ってストーリーを並べ,リリース計画を立てる手法である。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)

用語解説:アジャイル開発(スクラム・XP)

問2

ソフトウェアパターンのうち,GoF のデザインパターンの説明はどれか。

正解 イ

解説

GoF(Gang of Four)のデザインパターンは,オブジェクト指向設計でよく現れる問題と解決策を23のパターンにまとめたもので,オブジェクトの生成に関わる“生成”,クラスやオブジェクトの組み合わせ方に関わる“構造”,オブジェクト間の責任分担や処理の流れに関わる“振る舞い”の三つに分類される。イが正しい。

ウとエは,ソフトウェアアーキテクチャのパターン集である POSA(Pattern-Oriented Software Architecture)の説明で,Layers や Broker はそのアーキテクチャパターンである。アは Java に特化した実装上の指針の説明で,GoF のパターンは特定の言語に依存しない。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)

問3

Pattern-Oriented Software Architecture(POSA)のアーキテクチャパターンのうち,ソフトウェアをメタレベルとベースレベルの二つのレベルに分割し,ソフトウェアの構造と振る舞いとを動的に変更できる仕組みを提供しているものはどれか。

正解 エ

解説

POSA のアーキテクチャパターンのうち Reflection は,ソフトウェアの構造や振る舞いに関する情報を表すメタレベルと,アプリケーションの処理を行うベースレベルに分け,メタレベルの情報を変更することで,ベースレベルの構造や振る舞いを実行時に動的に変更できるようにするパターンである。エが該当する。

アの Broker は,分散したコンポーネント間の通信を仲介役が取り持つパターンである。イの Microkernel は,最小限の中核機能と,それに追加する拡張機能とを分けるパターン,ウの Model-View-Controller は,データと処理,表示,入力の制御を分けるパターンである。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)

問4

組込みシステムで DBMS を用いるときには,通信のオーバヘッド,通信負荷の発生を防ぐこと,必要なメモリ容量をリソース制限内に抑えることなどを目的として,インプロセスデータベースを用いることがある。このインプロセスデータベースの説明として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

インプロセスデータベースは,データベースエンジンがライブラリとして提供され,アプリケーションプログラムにリンクされて同じプロセスの同じメモリ空間で動作する形態の DBMS である。プロセス間通信やネットワーク通信が不要なので,通信のオーバーヘッドがなく,必要なメモリも小さく抑えられる。イが適切である。

アはデータベースサーバとアプリケーションが別のプロセスとして動き,ソケットで通信するクライアントサーバ型の DBMS の説明である。ウはデータを全てメモリ上に置いて高速化するインメモリデータベースの説明で,動作する場所(プロセス)の説明ではない。エはテーブルをファイル単位で管理し,ファイル入出力の API で操作する簡易なファイル型のデータ管理の説明である。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)

問5

デザインパターンの中のストラテジパターンを用いて,帳票出力のクラスを図のとおりに設計した。適切な説明はどれか。

クラス図。“コンテキスト”クラスが“帳票出力ストラテジ”クラス(操作“+帳票出力()”)を集約で保持する。“PDF帳票出力ストラテジ”クラスと“HTML帳票出力ストラテジ”クラスが,それぞれ操作“+帳票出力()”をもち,“帳票出力ストラテジ”クラスを汎化する(継承する)。凡例として,クラスは上からクラス名,属性,操作の3段で表す。

正解 イ

解説

ストラテジパターンは,アルゴリズムを抽象的なストラテジクラスとして定義し,具体的なアルゴリズムをそのサブクラスとして実装して,コンテキストクラスから入れ替えて使えるようにするパターンである。新しいフォーマットに対応するときは,帳票出力ストラテジのサブクラスを追加するだけでよく,コンテキストや既存のサブクラスを変更する必要がないので,イが適切である。

アは誤りで,クライアントは使いたいフォーマットに対応するサブクラスを選んでコンテキストに設定する必要がある。ウも誤りで,帳票出力ストラテジクラスは共通のインタフェースを定めるだけで,フォーマットの振り分けはサブクラスの選択によって行われ,条件分岐を書く必要がない。エも誤りで,帳票出力のアルゴリズムは各サブクラスに記述し,コンテキストクラスはストラテジに処理を任せる。

ストラテジパターン:アルゴリズムをサブクラスで入れ替える 帳票出力のアルゴリズムを抽象的な“帳票出力ストラテジ”として定め,PDF・HTML などの具体的なアルゴリズムをそのサブクラスとして実装する。コンテキストはストラテジに処理を任せるだけなので,新しいフォーマットはサブクラスを足すだけで済み,コンテキストや既存のサブクラスは変えなくてよい。どのサブクラスを使うかはクライアントが選ぶ。 コンテキスト 帳票出力ストラテジ +帳票出力() PDF 帳票出力 +帳票出力() HTML 帳票出力 +帳票出力() (新)CSV 帳票出力 +帳票出力() 足すのはサブクラスだけ。コンテキストは変えない CSV は追加の例(問題の図には無い)
新しいフォーマットはサブクラスを足すだけ(イ)

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)

問6

モジュール間のデータの受渡し方法のうち,最も低いモジュール結合度となるものはどれか。

正解 イ

解説

モジュール結合度は,弱い(望ましい)ものから順に,データ結合,スタンプ結合,制御結合,外部結合,共通結合,内容結合となる。単一のデータ項目を引数で受け渡すのは,必要なデータだけをやり取りするデータ結合で,最も結合度が低い。イが該当する。

エのデータ構造を引数で受け渡すのはスタンプ結合で,受け取る側が使わない項目まで構造に依存する。アの単一のデータ項目を大域的データで受け渡すのは外部結合,ウのデータ構造を大域的データで受け渡すのは共通結合であり,いずれも大域的データを介して多くのモジュールが依存し合うので結合度が高い。

モジュール結合度とモジュール強度 結合度はモジュールどうしのつながりの強さで,弱いほどよい。弱い順に,データ結合(必要な項目だけを引数で),スタンプ結合(データ構造を引数で),制御結合(制御の情報を渡す),外部結合(単一の大域データ),共通結合(共通域のデータ構造),内容結合(相手の内部を直接参照)。強度はモジュールの中のまとまりで,強いほどよい。機能的強度が最も強く,処理コードで機能を選ぶ論理的強度や,関係のない機能を集めた暗合的強度は弱い。 結合度(弱いほどよい) データ結合 項目を引数で スタンプ結合 構造を引数で 制御結合 制御情報を渡す 外部結合 単一の大域データ 共通結合 共通域の構造 内容結合 内部を直接参照 強度(強いほどよい) 機能的強度 1つの機能 情報的強度 同じ情報を扱う 連絡的強度 データを受け渡す 手順的強度 順に実行する 論理的強度 コードで機能を選ぶ 暗合的強度 関係のないものの寄せ集め 上ほど望ましい(時間的強度は手順的と論理的の間)
結合度は弱いほど,強度は強いほどよい

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)

問7

既存システムを基に,新システムのモデル化を行う場合の DFD 作成の手順として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

DFD で既存システムを基に新システムをモデル化するときは,まず現状の業務を担当者や媒体などの実装を含めて表した現物理モデルを作り,そこから実装に依存しない本質的な処理だけを抜き出した現論理モデルにする。次に,新しい要求を反映した新論理モデルを作り,最後にそれを実現する具体的な手段を当てはめた新物理モデルにする。イが適切である。

論理モデルは物理モデルから実装の制約を取り除いたものなので,ウやエのように現論理モデルから始めることはできない。アとウのように新物理モデルを先に作ると,実現手段を決めてから本質的な要求を整理することになり,手順が逆である。

DFD の作り方と図形要素 既存のシステムを基に新しいシステムをモデル化するときは,現物理モデル(担当者や媒体を含む今の姿)→現論理モデル(実装に依らない本質)→新論理モデル(新しい要求を入れる)→新物理モデル(実現手段を当てはめる)の順に作る。図形要素は,プロセス(円),データフロー(矢印),データストア(二本線),源泉と吸収(外部実体,四角)の4つ。データストアどうしを直接つなぐことはなく,間に必ずプロセスが入る。 現物理 現論理 新論理 新物理 図形要素 源泉・吸収 プロセス データストア データフロー データストアどうしは直接つながらない(間にプロセス) 実体(エンティティ)・関連は E-R 図の要素
現物理 → 現論理 → 新論理 → 新物理。実体や関連は E-R 図の要素

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)

問8

ある購買システムの開発において,開発者が行った探索的テストの例として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

探索的テストは,テストケースを事前に詳細に作り込まず,テスト対象について学習しながら,実施したテストの結果に基づいて次に行うテストを設計し,実行を繰り返していくテストの手法である。代表的な入力値の組合せをテストし,その結果に基づいて次のテストケースを作成するエが該当する。

アは経験に基づいて誤りが起きやすい箇所を推測してテストケースを作るエラー推測,イは入力値の範囲を分割し各範囲の代表値を選ぶ同値分割,ウは有効開始日とその前日という境界の値を選ぶ境界値分析であり,いずれもテストケースを事前に作成する手法である。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)

問9

ソフトウェアのテスト工程において,バグ管理図を用いて,テストの進捗状況とソフトウェアの品質を判断したい。このときの考え方のうち,最も適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

バグ管理図では,テスト項目の消化件数,バグの摘出件数の累積,未解決バグの件数の推移を並べて見る。これらの全てが変化しなくなった場合は,テストが進んでおらず,バグの解決もされていない状態なので,解決困難なバグによって作業が止まっていないかを確認する必要がある。ウが適切である。

アは,前半にバグが多く摘出されたことだけを理由に遅れ日数を判断しており,品質の状況を考慮していない。イは,テスト項目の品質が低い(バグを検出できていない)可能性もあるので,累積件数が増えないだけで品質が高いとは判断できない。エは,バグの摘出の推移には不確実性があり,テストの終了時期をほぼ正確に予測することはできない。

バグ管理図の読み方 テスト項目の消化件数(累積),バグの摘出件数(累積),未解決のバグの件数の3本を時間で並べる。消化が進み,摘出の累積が頭打ちになり,未解決が0に近づけば収束に向かっている。3本とも変化しなくなった期間は,テストが進まずバグも解決していないので,解決が難しいバグで作業が止まっていないかを確かめる。 時間 件数 全部横ばい 消化 摘出(累積) 未解決 止まっている期間は,解決困難なバグがないか確かめる
3本とも横ばいになったら,作業が止まっていないかを疑う

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)

問10

故障の予防を目的とした解析手法である FMEA の説明はどれか。

正解 ア

解説

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis,故障モード影響解析)は,システムを構成する個々の部品や要素について,起こり得る潜在的な故障モードを洗い出し,それがシステム全体に与える影響の大きさや発生頻度を評価して,事前に対策を講じるボトムアップ型の解析手法である。アが該当する。

イは故障を発生工程や箇所で分類して重点を見つけるパレート分析などの層別分析,ウは“なぜ”を繰り返して根本原因を追究するなぜなぜ分析である。エの故障の原因を列挙し関係を木構造で表すのは FTA(故障の木解析)で,トップダウン型の解析手法である。

FTA と FMEA FTA(故障の木解析)は,起きてほしくない障害(頂上事象)から出発し,その原因を AND や OR のゲートで結んで下へ掘り下げるトップダウンの手法。FMEA(故障モード影響解析)は,部品ごとに起こり得る故障モードを洗い出し,それがシステム全体にどう影響するかを評価するボトムアップの手法。 FTA(トップダウン) システム停止 OR 電源の故障 両系の故障 AND 1系 2系 FMEA(ボトムアップ) 部品 故障モード 影響 ファン 停止 過熱で停止 ディスク 読めない 片系で継続 電源 出力低下 再起動 部品の故障 → 全体への影響
FTA は結果から原因へ(上から下),FMEA は部品から影響へ(下から上)

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)

問11

JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,廃棄プロセスのタスクのうち,アクティビティ“廃棄を確実化する”において実施すべきタスクはどれか。

正解 エ

解説

JIS X 0160:2021 の廃棄プロセスでは,“廃棄を準備する”“廃棄を実行する”“廃棄を確実化する”などのアクティビティが定められている。“廃棄を確実化する”では,廃棄後に,人の健康,安全性,セキュリティ及び環境への有害な状況が識別されて対処されていることを確認し,記録を保持する。エが該当する。

イの廃棄戦略の定義は“廃棄を準備する”のタスクである。アの選定された要素を再利用や破壊するタスクとウの要素を不活性化して取り除く準備をするタスクは,“廃棄を実行する”で行う作業であり,廃棄が確実に行われたことの確認ではない。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)

用語解説:JIS X 0160 と共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス)

問12

JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,ライフサイクルモデルの目的及び成果を達成するために,ライフサイクルプロセスを修正するか,又は新しいライフサイクルプロセスを定義することを何というか。

正解 イ

解説

JIS X 0160:2021 では,ライフサイクルモデルの目的及び成果を達成するために,ライフサイクルプロセスを修正したり,新しいライフサイクルプロセスを定義したりすることを修整(tailoring)という。組織やプロジェクトの特性に合わせて,規格のプロセスをそのまま使うのではなく取捨選択・変更して適用する考え方であり,イが該当する。

アのシミュレーションはモデルを使って対象の振る舞いを模擬的に再現すること,エのベンチマーキングは優れた他社などの実践と比較して改善につなげる手法である。ウの統治(ガバナンス)は組織を方向付けて監視する活動であり,プロセスを修正・定義することを指す用語ではない。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)

用語解説:JIS X 0160 と共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス)

問13

IT 投資に対する評価指標の設定に際し,バランススコアカードの手法を用いて KPI を設定する場合に,内部ビジネスプロセスの視点に立った KPI の例はどれか。

正解 エ

解説

バランススコアカードは,財務,顧客,内部ビジネスプロセス,学習と成長の四つの視点から戦略目標と KPI を設定する手法である。内部ビジネスプロセスの視点は,業務プロセスの効率や品質を高めるための指標を扱うので,注文受付から製品出荷までの日数の短縮というエが該当する。

アの研修会の受講率は人材の能力向上に関する学習と成長の視点,イの売上高営業利益率は財務の視点,ウの顧客クレーム件数は顧客の視点の KPI である。

バランススコアカードの4つの視点と戦略マップ 下から学習と成長,内部ビジネスプロセス,顧客,財務の4つの視点を積み上げる。専門人材を育てると出荷までの日数を縮められ,顧客満足度が上がり,売上高が伸びる,という因果関係を矢印でつないだものが戦略マップ。各視点に目標と指標(KPI)を置く。 財務 売上高を伸ばす 売上高・利益率 顧客 顧客満足度を上げる 顧客満足度・シェア 内部ビジネスプロセス 出荷を速くする 出荷までの日数 学習と成長 専門人材を育てる 育成人数・特許件数
下の視点の成果が上の視点の成果につながる(因果関係)

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)

用語解説:バランススコアカードと KPI・KGI・CSF

問14

組込みシステム開発において,製品に搭載する LSI を新規に開発する。LSI 設計を自社で行い,LSI 製造を外部に委託する場合の委託先として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

ファウンドリーは,自社では LSI の設計を行わず,他社から設計データを受け取って半導体の製造を受託する事業者である。LSI の設計を自社で行い,製造だけを外部に委託する場合の委託先に当たるので,ウが適切である。

アの IP プロバイダは,LSI に組み込む CPU コアやインタフェースなどの回路設計資産(IP コア)を提供する事業者,イのデザインハウスは LSI の設計を受託する事業者である。エのファブレスメーカーは,自社の工場をもたずに設計や販売を行い,製造をファウンドリーに委託するメーカーであり,委託する側に当たる。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)

問15

ラボ契約の特徴はどれか。

正解 イ

解説

ラボ契約は,一定期間,ベンダ企業が依頼元のために,契約で定めたスキルや人数などの基準を満たす開発要員を確保し,依頼元はその代わりに一定以上の発注量を約束する形態の契約である。依頼元は必要な開発体制を継続的に確保でき,ベンダ企業は安定した受注が見込める。イが該当する。

アの依頼元がベンダ企業の作業担当者を直接指揮命令するのは労働者派遣の形態であり,請負や準委任の形をとるラボ契約で直接指揮命令を行うと偽装請負になるおそれがある。ウは開発後の収益をベンダ企業にも分配するレベニューシェア契約の説明である。エは契約の性質に反しており,ラボ契約は確保した要員の体制に対して対価を支払うものである。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)

用語解説:契約の形態(請負・準委任・労働者派遣)

問16

e シールの説明はどれか。

正解 エ

解説

e シールは,請求書や領収書などの電子文書データについて,それが確かにその組織(法人)から発行されたものであり,発行後に改ざんされていないことを証明する仕組みである。個人の意思表示を示す電子署名と違い,発行元の組織を証明する。エが該当する。

イの個人が行う電子署名は,文書に記載された内容に対する個人の意思表示を証明するもので,組織の発行元を証明する e シールとは区別される。ウのように公共機関だけに使用が限定されたものではなく,民間の法人も利用できる。アのゲームのキャラクターの作成者の証明とは関係がない。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)

問17

マルチベクトル型 DDoS 攻撃に該当するものはどれか。

正解 ア

解説

マルチベクトル型 DDoS 攻撃は,性質の異なる複数の攻撃手法を組み合わせて同時に仕掛ける DDoS 攻撃である。サーバのリソースを枯渇させるアプリケーション層の攻撃と,大量の DNS 通信でネットワーク帯域を消費させる攻撃を同時に行うアが該当する。一つの対策では防ぎきれないので,対応が難しい。

イはボットネットを使ったブルートフォース攻撃でログインパスワードを解読しようとする不正ログインの試みで,サービスの妨害を目的とする DDoS 攻撃ではない。ウはオープンリゾルバを踏み台にした DNS リフレクション攻撃という単一の手法である。エはマルウェアによるデータの改ざんや破壊であり,DDoS 攻撃ではない。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)

用語解説:DDoS 攻撃(リフレクション攻撃・Smurf 攻撃) DNS のセキュリティ(DNSSEC・キャッシュポイズニング)

問18

暗号方式に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

共通鍵暗号方式は,暗号化と復号に同じ鍵を使う方式。鍵を送受信者だけの秘密に保つ必要があるが,公開鍵暗号方式より処理が高速なので,大量のデータの暗号化に向く。イが正しい。

アは逆で,AES が共通鍵暗号方式,RSA が公開鍵暗号方式である。ウも逆で,秘匿のために使う場合は受信者の公開鍵で暗号化し,受信者だけがもつ秘密鍵で復号する。エも逆で,デジタル署名には公開鍵暗号方式が使われる。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)

用語解説:ディジタル署名(デジタル署名) 共通鍵暗号と公開鍵暗号

問19

CRYPTREC の役割として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

CRYPTREC は,電子政府で利用される暗号技術の安全性を評価・監視し,適切な実装法や運用法を調査・検討するプロジェクトであり,電子政府推奨暗号リストなどからなる CRYPTREC 暗号リストを策定している。ウが適切である。

アの暗号装置の輸出許可申請の審査・承認は経済産業省の役割である。イの IT 関連製品のセキュリティ機能を評価・認証するのは,IPA が運営する IT セキュリティ評価及び認証制度(JISEC)である。エの民間企業のサーバへの攻撃の監視・検知は,SOC などのセキュリティ監視サービスが担う。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)

問20

インターネットとの接続において,ファイアウォールの NAPT 機能によるセキュリティ上の効果はどれか。

正解 エ

解説

NAPT は,内部の複数の PC のプライベート IP アドレスとポート番号を,グローバル IP アドレスと別のポート番号の組に対応付けて変換する。この対応表は内部から外へ通信を始めたときに作られるので,インターネット側から内部の PC を名指しで指定して接続を仕掛けることが難しくなる。エが正しい。

アの公開 Web サーバの脆弱性を突く攻撃への防御は WAF の役割。イの侵入検知と遮断は IPS,ウの特定の Web サービスを使う HTTP 通信の検知・遮断はプロキシや URL フィルタリングの役割で,いずれも NAPT の機能ではない。

NAPT のアドレス変換 PC(192.168.1.10,ポート 5000)から Web サーバへの要求は,ルータで送信元が 203.0.113.1,ポート 60001 に書き換えられ,その組合せが対応表に残る。Web サーバからの応答は宛先が 203.0.113.1:60001 なので,ルータは表を見て宛先 IP アドレスと宛先ポート番号を 192.168.1.10:5000 に書き戻す。外から先に届いたパケットは表に対応がないので,内側へ転送できない。 PC 192.168.1.10 ルータ NAPT Web 198.51.100.5 送信元 .10:5000 送信元 .1:60001 宛先 203.0.113.1:60001 宛先 .10:5000 対応表 内側(プライベート) 外側(グローバル) 192.168.1.10 : 5000 203.0.113.1 : 60001 応答で書き換えるのは「宛先 IP アドレス」と「宛先ポート番号」 外から始まる通信は表に対応がないので,内側に届かない
要求では送信元を,応答では宛先を書き換える。対応は IP アドレスとポート番号の組

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)

用語解説:ファイアウォールと DMZ

問21

容量が a M バイトでアクセス時間が x ナノ秒の命令キャッシュと,容量が b M バイトでアクセス時間が y ナノ秒の主記憶をもつシステムにおいて,CPU からみた,主記憶と命令キャッシュとを合わせた平均アクセス時間を表す式はどれか。ここで,読み込みたい命令コードが命令キャッシュに存在しない確率を r とし,キャッシュ管理に関するオーバヘッドは無視できるものとする。

正解 イ

解説

命令キャッシュに命令コードが存在する確率は 1−r で,そのときのアクセス時間は x ナノ秒である。存在しない確率 r のときは主記憶にアクセスするので,アクセス時間は y ナノ秒になる。平均アクセス時間はこれらの期待値なので,(1−r)·x+r·y であり,イになる。

アとウは容量 a,b による重み付けを含めているが,平均アクセス時間はキャッシュに存在するかどうかの確率だけで決まり,記憶装置の容量は関係しない。エは存在しない確率 r と存在する確率 1−r を逆にしている。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)

問22

データベースサーバのクラスタリング技術の特徴のうち,シェアードエブリシングはどれか。

正解 エ

解説

シェアードエブリシングは,クラスタを構成する全てのサーバが,ディスク上のデータなどの資源を共有する方式である。どのサーバでも全てのデータを処理できるので,負荷を分散して全サーバのリソースを活用でき,1 台に障害が発生しても他のサーバが処理を引き継いで継続できる。エが該当する。

アは,通常は稼働系だけが処理を行い,障害時に待機系に引き継ぐアクティブ/スタンバイ型のクラスタの説明である。イとウは,サーバごとに担当するデータやディスクが分かれているシェアードナッシングの特徴であり,並列処理に向くが,1 台の障害でそのサーバのデータを処理できなくなる。

シェアードエブリシングとシェアードナッシング シェアードエブリシングは,全てのサーバがディスクのデータを共有する。どのサーバでも全てのデータを処理できるので,負荷を分散でき,1台が故障しても他のサーバが処理を続けられる。シェアードナッシングは,サーバごとに担当するデータとディスクが決まっていて,並列処理に向くが,1台が故障するとそのデータを処理できなくなる。 シェアードエブリシング S1 S2 S3 共有ディスク どれでも全データを処理 1台止まっても続く シェアードナッシング S1 D1 S2 D2 S3 D3 サーバごとに担当が決まる 1台止まるとそのデータが止まる
共有すれば1台が止まっても続けられる。分けると並列に強いが止まると困る

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)

問23

幾つかのサブシステムから成るシステムの信頼性に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

フェールオーバは,障害が発生したサブシステムを切り離し,待機系に自動で切り替えて処理を継続する仕組みである。障害(フォールト)が発生すること自体は防げないので MTBF は変わらないが,復旧までの時間が短くなるので MTTR の短縮につながる。エが適切である。

アのフォールトマスクは,フォールトの影響を隠して外部に障害として現れないようにするので,システムとしての故障を減らし MTBF の向上につながる。イの再試行も,一時的なフォールトをシステムの故障にしないので MTBF の向上につながるが,修理時間(MTTR)を短くするものではない。ウの稼働中のフォールト検出は,フォールトを見つけるだけで発生そのものを減らすわけではないので MTBF の向上にはつながらず,早く見つけて修理に着手できる点ではむしろ MTTR の短縮に効く。

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)

用語解説:稼働率(MTBF・MTTR) 信頼性設計(フェールセーフ・フェールソフト・フールプルーフ)

問24

t1~t10 の時刻でスケジュールされたトランザクション T1~T4 がある。時刻 t10 で T1 が commit を発行する直前の,トランザクションの待ちグラフを作成した。a に当てはまるトランザクションはどれか。ここで,select(X) は共有ロックを掛けて資源 X を参照することを表し,update(X) は専有ロックを掛けて資源 X を更新することを表す。これらのロックは,commit された時にアンロックされるものとする。また,トランザクションの待ちグラフの矢印は,Ti→Tj としたとき,Tj がロックしている資源のアンロックを,Ti が待つことを表す。

時刻ごとの各トランザクションの操作。t1: T1 が select(A)。t2: T2 が select(B)。t3: T3 が select(B)。t4: T4 が select(A)。t5: T4 が update(B)。t6: T1 が select(C)。t7: T2 が select(C)。t8: T2 が update(C)。t9: T3 が update(A)。t10: T1 が commit。
〔トランザクションのスケジュール〕
節点 a,b,c,d の有向グラフ。矢印は a→d,c→d,b→a,b→c,c→b の5本。
〔トランザクションの待ちグラフ〕

正解 イ

解説

時刻順にロックを追う。T1 は A と C に共有ロック,T2 と T3 は B に共有ロック,T4 は A に共有ロックを掛ける。t5 で T4 が B を更新しようとすると,B を共有ロックしている T2 と T3 を待つ(T4→T2,T4→T3)。t8 で T2 が C を更新しようとすると T1 を待ち(T2→T1),t9 で T3 が A を更新しようとすると T1 と T4 を待つ(T3→T1,T3→T4)。

矢印を受けるだけの d が T1,互いに矢印を向け合う b と c が T3 と T4 である。b から a に矢印があり,a から d(T1)に矢印があるので,a は T4 に待たれて T1 を待つ T2 であり,イになる(b が T4,c が T3)。T3 と T4 は互いに待ち合っており,デッドロックが発生している。

トランザクションの待ちグラフ t5 で T4 が B を更新しようとし,B を共有ロックしている T2 と T3 を待つ。t8 で T2 が C を更新しようとし,C を共有ロックしている T1 を待つ。t9 で T3 が A を更新しようとし,A を共有ロックしている T1 と T4 を待つ。T3 と T4 が互いに待ち合っているのでデッドロック。a は T4 に待たれ T1 を待つ T2。 T2(a) T4(b) T3(c) T1(d) T4→T3 T3→T4 T3 と T4 が待ち合う → デッドロック
矢印 Ti→Tj は「Ti が Tj のロック解放を待つ」。T3 と T4 の間に輪がある

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)

用語解説:排他制御とデッドロック(ACID 特性)

問25

図は,既存の電話機と PBX を使用した企業内の内線網を,IP ネットワークに統合する場合の接続構成を示している。図中の a~c に該当する装置の適切な組合せはどれか。

接続構成の図。電話機,a,b,c,IPネットワークの順に一列につながっている。

正解 ア

解説

既存の電話機はまず内線交換機である PBX に接続する。PBX が扱う電話の音声信号を IP パケットに変換して IP ネットワークでやり取りできるようにするのが VoIP ゲートウェイであり,そのパケットをルータを通して IP ネットワークへ送る。電話機から順に PBX,VoIP ゲートウェイ,ルータとなるので,アが適切である。

イは PBX の出す電話の信号を IP 化しないままルータに渡すことになり,ルータは IP パケットしか中継できないので通信できない。ウは VoIP ゲートウェイで IP 化した後に PBX を置き,エは IP ネットワークの直前に PBX を置いているが,既存の PBX は電話の信号を交換する装置で IP パケットを扱えないので,どちらも成り立たない。

既存の電話機を IP ネットワークにつなぐ順番 電話機は内線交換機の PBX につなぐ。PBX が扱う電話の音声信号を,VoIP ゲートウェイが IP パケットに変換する。そのパケットをルータが IP ネットワークへ送る。電話機 → PBX → VoIP ゲートウェイ → ルータ の順。 電話機 PBX VoIP ゲートウェイ ルータ IP 網 a b c 電話の音声信号 IP パケット a:PBX b:VoIP ゲートウェイ c:ルータ
電話の信号を IP にするのが VoIP ゲートウェイ,IP を運ぶのがルータ

出典:令和4年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)