平成28年度 秋期に実施された高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通
午前Ⅰ(2026年度からの科目A-1)の全30問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。
この試験について:科目A-1(午前Ⅰ・高度試験 共通)について
問1
0≦x≦1 の範囲で単調に増加する連続関数 f(x) が f(0)<0≦f(1) を満たすときに,区間内で f(x)=0 である x の値を近似的に求めるアルゴリズムにおいて,(2) は何回実行されるか。
〔アルゴリズム〕
(1) x0 ←0,x1 ←1 とする。 (2) x←(x0 +x1 )/2 とする。 (3) x1 −x<0.001 ならば x の値を近似値として終了する。 (4) f(x)≧0 ならば x1 ←x として,そうでなければ x0 ←x とする。 (5) (2) に戻る。
正解 ア
解説
二分法(区間を半分に狭めていく方法)の問題。(2) を k 回実行した直後の x1 −x は,そのときの区間幅の半分,すなわち 1/2k になる。
終了条件 1/2k <0.001 は 2k >1000 と同値であり,29 =512,210 =1024 なので k=10 で初めて成立する。よって (2) は10回実行される。
二分法:区間を半分ずつ狭める
f(0)<0≦f(1) の区間 [0,1] の真ん中 x で f(x) の符号を調べ,解がある側の半分に区間を狭める。(2) を k 回実行した直後の x1−x は 1/2^k。1/2^k<0.001 となるのは 2^k>1000 のときで,2^9=512,2^10=1024 なので k=10。
初め
1回目
2回目
3回目
4回目
解
幅:1/2,1/4,… 1/512(9回),1/1024(10回)<0.001
1回ごとに幅が半分。1000分の1未満になるのは10回目
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問1(表記を一部改変)
問2
表は,入力記号の集合が {0,1},状態集合が {a,b,c,d} である有限オートマトンの状態遷移表である。長さ3以上の任意のビット列を左(上位ビット)から順に読み込んで最後が110で終わっているものを受理するには,どの状態を受理状態とすればよいか。
正解 ウ
解説
初期状態 a から 110 を読むと,1 で b,1 で d,0 で c へ遷移して c にたどり着く。d や c の状態から読み始めても,1,1,0 の3文字を読めば同じく c に到達する。110 を読み終えたときに必ず入る状態は c だけなので,受理状態とすべきはウの c になる。
他の選択肢では 110 で終わる列を受理できない。表で 0 を読んで到達できるのは a と c だけなので,末尾が 0 の列を受理するにはこの二つのどちらかである必要があり,イの b とエの d は初めから当てはまらない。アの a に 0 で入るのは直前が a のときで,これは 110 の並びとは対応しない。
どこから読み始めても 110 で c に着く
状態遷移表は,a:0→a,1→b/b:0→c,1→d/c:0→a,1→b/d:0→c,1→d。どの状態から 1,1,0 を読んでも,最後は c に着く(a→b→d→c,b→d→d→c,c→b→d→c,d→d→d→c)。だから c を受理状態にすれば,最後が 110 の列を受理できる。
読み始め
1 を読む
1 を読む
0 を読む
a
b
d
c
b
d
d
c
c
b
d
c
d
d
d
c
最後はいつも c → 受理状態は c
表:a 0→a 1→b/b 0→c 1→d/c 0→a 1→b/d 0→c 1→d
1,1,0 の3文字を読むと,どこから始めても c で終わる
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問2(表記を一部改変)
問3
ヒープソートの説明として,適切なものはどれか。
ア ある間隔おきに取り出した要素から成る部分列をそれぞれ整列し,更に間隔を詰めて同様の操作を行い,間隔が1になるまでこれを繰り返す。
イ 中間的な基準値を決めて,それよりも大きな値を集めた区分と,小さな値を集めた区分に要素を振り分ける。次に,それぞれの区分の中で同様な処理を繰り返す。
ウ 隣り合う要素を比較して,大小の順が逆であれば,それらの要素を入れ替えるという操作を繰り返す。
エ 未整列の部分を順序木にし,そこから最小値を取り出して整列済の部分に移す。この操作を繰り返して,未整列の部分を縮めていく。 正解
正解 エ
解説
ヒープソートは,未整列の部分をヒープ(親が子より必ず小さい,あるいは必ず大きいという条件を満たす順序木)として構成し,その根から最小値(又は最大値)を取り出して整列済みの部分へ移す,という操作を繰り返す整列法。取り出すたびにヒープを組み直して未整列部分を縮めていく。エが正しい。
アはシェルソート,イはクイックソート,ウはバブルソート(隣接交換法)の説明である。
ヒープとヒープソート
ヒープは,親が子より必ず小さい(又は必ず大きい)という条件を満たす2分木。根がいつも最小値になる。ヒープソートは,未整列の部分をヒープにし,根の最小値を取り出して整列済みの部分へ移し,残りをヒープに組み直す,を繰り返す。
1
3
2
7
5
4
8
親 ≦ 子(根が最小)
根の 1 を取り出す
整列済み
1
残りをヒープに
組み直して繰り返す
根から最小値を取り出し,残りを組み直す,を繰り返す
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問3(表記を一部改変)
問4
メモリインタリーブの目的として,適切なものはどれか。
ア 同一のバンクに連続してアクセスしたとき,アクセス時間を短くする。
イ 同一のバンクの連続したアドレスにアクセスしたとき,キャッシュミス発生時のアクセス時間を短くする。
ウ 一つのバンクが故障しても,システムが停止しないようにする。
エ 複数のバンクに割り振った連続したアドレスにアクセスしたとき,アクセス時間を短くする。 正解
正解 エ
解説
メモリインタリーブは,主記憶を複数のバンクに分け,連続するアドレスを異なるバンクへ順に割り当てておく方式。連続したアドレスを読むときに各バンクへ並行してアクセスできるので,1バンクのアクセスが終わるのを待たずに次を始められ,見かけのアクセス時間が短くなる。エが正しい。
アとイは同一バンクへのアクセスで,並行動作ができないので効果がない。ウの冗長化による可用性の向上はメモリインタリーブの目的ではない。
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問4(表記を一部改変)
用語解説:キャッシュメモリ
問5
あるシステムにおいて,MTBF と MTTR がともに1.5倍になったとき,アベイラビリティ(稼働率)は何倍になるか。
正解 エ
解説
アベイラビリティ(稼働率)は MTBF/(MTBF+MTTR) で表せる。MTBF と MTTR がともに1.5倍になると (1.5×MTBF)/(1.5×MTBF+1.5×MTTR) となり,分子・分母の1.5が約分されて元の値と同じになる。エの「変わらない」が正しい。
稼働率は二つの時間の絶対値ではなく比で決まるので,同じ倍率で伸び縮みしても変化しない。稼働率を上げるには,MTBF を長くするか MTTR を短くするか,どちらか一方だけを改善して比を変える必要がある。
MTBF と MTTR が同じ倍率で変わっても稼働率は同じ
稼働率は MTBF÷(MTBF+MTTR)。両方が1.5倍になると 1.5x÷(1.5x+1.5y)=x÷(x+y) で変わらない。稼働率は MTBF と MTTR の比だけで決まるので,稼働率が等しければ MTTR÷MTBF も等しい。ただし MTBF や MTTR そのものが等しいとは限らない。
従来
MTBF x
y
稼働 80%
1.5倍
MTBF 1.5x
1.5y
稼働 80%
1.5x ÷ (1.5x + 1.5y) = x ÷ (x + y)
稼働率は比で決まる。帯の長さが変わっても,稼働の割合は同じ
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問5(表記を一部改変)
用語解説:稼働率(MTBF・MTTR)
問6
プログラム実行時の主記憶管理に関する記述として,適切なものはどれか。
ア 主記憶の空き領域を結合して一つの連続した領域にすることを,可変区画方式という。
イ プログラムが使用しなくなったヒープ領域を回収して再度使用可能にすることを,ガーベジコレクションという。 正解
ウ プログラムの実行中に主記憶内でモジュールの格納位置を移動させることを,動的リンキングという。
エ プログラムの実行中に必要になった時点でモジュールをロードすることを,動的再配置という。
正解 イ
解説
ガーベジコレクションは,プログラムが動的に確保したヒープ領域のうち,どこからも参照されなくなった領域を自動的に見つけて回収し,再び割当てに使えるようにする仕組み。イが正しい。
アの空き領域を結合して連続領域にすることはコンパクション(ガーベジコレクションの一部として行われることもある)。ウの実行中にモジュールの格納位置を移動させることは動的再配置。エの必要になった時点でモジュールをロードすることは動的リンキング(動的ロード)で,ウとエは用語が入れ替わっている。
ガーベジコレクション:どこからも参照されない領域を回収する
プログラムが動的に確保したヒープ領域のうち,変数(ルート)からたどれる領域はまだ使われている。どこからもたどれなくなった領域は二度と使われないので,ガーベジコレクションが自動的に見つけて回収し,再び割り当てに使えるようにする。空き領域を寄せて連続にするのはコンパクション,細切れになる現象はフラグメンテーション。
変数
(ルート)
ヒープ
A
B
C
D
E
どこからも参照されない
塗り(D・E):ルートからたどれない → 回収して再利用
D から E を指していても,D に誰も届かなければ E も回収
ルートからたどれない領域を見つけて回収する
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問6(表記を一部改変)
用語解説:仮想記憶(ページング)
問7
次の条件を満足する論理回路はどれか。
〔条件〕
階段の上下にあるスイッチ A 又は B で,一つの照明を点灯・消灯する。すなわち,一方のスイッチの状態にかかわらず,他方のスイッチで照明を点灯・消灯できる。
正解 エ
解説
階段の上下どちらのスイッチでも照明を切り替えられるようにするには,一方のスイッチの状態がどうであっても,他方のスイッチを操作したら出力が必ず反転する必要がある。この性質をもつのは排他的論理和(XOR)で,入力の一方を変えると出力が必ず変わる。エが正しい。
アの AND やウの NOR では,一方のスイッチの状態によっては他方を操作しても出力が変わらない。イの NAND も同様で,例えば AND では一方が0のとき他方をどう変えても出力は0のままになる。
2つのスイッチで照明を切り替える(XOR)
どちらのスイッチを操作しても照明が切り替わるには,一方を変えたら出力が必ず反転する必要がある。排他的論理和は,入力の一方を変えると出力が必ず変わる。AND・NAND・NOR は,もう一方が決まった値だと出力が変わらない。
A
B
AND
NAND
NOR
XOR
0
0
0
1
1
0
0
1
0
1
0
1
1
0
0
1
0
1
1
1
1
0
0
0
XOR は A・B どちらを1つ変えても 0 と 1 が入れ替わる
どちらを変えても出力が反転するのは XOR だけ
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問7(表記を一部改変)
問8
動画や音声などのマルチメディアコンテンツのレイアウトや再生のタイミングを XML フォーマットで記述するための W3C 勧告はどれか。
正解 ウ
解説
SMIL(Synchronized Multimedia Integration Language)は,動画・音声・静止画・テキストなどをどこに配置し,どのタイミングで再生するかを XML で記述するための W3C 勧告。ウが正しい。
アの Ajax は非同期通信で画面を部分更新する Web の実装手法で W3C 勧告ではない。イの CSS は文書の見た目を指定するスタイルシート言語。エの SVG はベクター画像を XML で記述する形式で,どちらも再生のタイミングを扱うものではない。
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問8(表記を一部改変)
問9
B+ 木インデックスが定義されている候補キーを利用して,1件のデータを検索するとき,データ総件数 X に対する B+ 木インデックスを格納するノードへのアクセス回数のオーダを表す式はどれか。
正解 イ
解説
B+ 木は,1つのノードが多数の枝をもつ平衡木で,どの葉までの深さも等しくなるように保たれる。候補キーで1件を検索するときのノードへのアクセス回数は木の高さに等しく,データ件数 X に対して木の高さは log X に比例する。イが正しい。
アの √X はデータをブロックに分けて順に探す場合などのオーダ。ウの X は先頭から順に調べる線形探索のオーダ。エの X! は順列の総数で,探索の計算量として現れる値ではない。
B+木の高さとアクセス回数
B+木は1つのノードが多数の枝をもつ平衡木で,葉までの深さはどこも同じ。1件を探すときのアクセス回数は木の高さで決まる。1ノードの枝の数を m とすると,高さ h で m^h 件まで扱えるので,データ件数 X に対して高さは log X に比例する。
根
1
中間
2
葉
3
根から葉まで3回のアクセスで1件にたどり着く
枝が3本なら3段で 3³=27 件。件数が3倍でも1段増えるだけ
件数が m 倍になっても高さは1段増えるだけ(log X)
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問9(表記を一部改変)
用語解説:データベースの設計(正規化・E-R 図・参照制約)
問10
DBMS をシステム障害発生後に再立上げするとき,ロールフォワードすべきトランザクションとロールバックすべきトランザクションの組合せとして,適切なものはどれか。ここで,トランザクションの中で実行される処理内容は次のとおりとする。
ア ロールフォワード:T2,T5,ロールバック:T6 正解
イ ロールフォワード:T2,T5,ロールバック:T3,T6
ウ ロールフォワード:T1,T2,T5,ロールバック:T6
エ ロールフォワード:T1,T2,T5,ロールバック:T3,T6
正解 ア
解説
システム障害からの再立上げでは,チェックポイント以降にコミットされたトランザクションの更新が主記憶のバッファに残ったまま失われている可能性があるので,ログを使って進め直す(ロールフォワード)。図で該当するのはチェックポイントをまたいでコミットした T2 と T5。一方,障害時点で未コミットのトランザクションは中途半端な更新を取り消す(ロールバック)が,これが要るのは実際に書込みを行ったものだけである。
未コミットなのは T3,T4,T6 だが,表を見ると T3 と T4 は Read 100 だけで Write がないので,取り消すべき更新がなくロールバックは不要。書込みのある T6 だけがロールバックの対象になる。T1 はチェックポイント前にコミットしており,その時点で更新が確定しているので何もしなくてよい。したがってアが正しい。
システム障害からの回復:トランザクションの振り分け
T1 はチェックポイントより前にコミットしているので何もしない。T2 と T5 はチェックポイントの後,障害の前にコミットしたのでロールフォワード。未コミットの T3・T4・T6 のうち,T3 と T4 は読むだけで書込みがないので取り消すものがなく,ロールバックするのは T6 だけ。
チェックポイント
障害
T1
何もしない
T2
ロールフォワード
T3
なし(読むだけ)
T4
なし(読むだけ)
T5
ロールフォワード
T6
ロールバック
コミット
破線:障害の時点でまだ終わっていない
更新(Write)のないトランザクションは取り消すものがない
未コミットでも,書込みのないトランザクションはロールバック不要
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問10(表記を一部改変)
用語解説:障害回復(ロールバック・ロールフォワード)
問11
TCP/IP ネットワークにおける ARP の説明として,適切なものはどれか。
ア IP アドレスから MAC アドレスを得るプロトコルである。 正解
イ IP ネットワークにおける誤り制御のためのプロトコルである。
ウ ゲートウェイ間のホップ数によって経路を制御するプロトコルである。
エ 端末に対して動的に IP アドレスを割り当てるためのプロトコルである。
正解 ア
解説
ARP(Address Resolution Protocol)は,通信相手の IP アドレスは分かっているが MAC アドレスが分からないときに,同じネットワーク上へ問合せをブロードキャストして MAC アドレスを得るプロトコル。アが正しい。
イの誤り制御や到達不能の通知を行うのは ICMP。ウのホップ数で経路を制御するのは RIP などのルーティングプロトコル。エの動的な IP アドレスの割当ては DHCP である。
ARP で MAC アドレスを調べる
PC A が 192.168.1.20 の MAC アドレスを知りたいとき,「この IP アドレスの人は MAC アドレスを教えて」という ARP 要求をブロードキャストで LAN 全体に送る。その IP アドレスをもつ機器だけが ARP 応答で自分の MAC アドレスを返し,PC A は ARP キャッシュに覚える。宛先が別のネットワークにあるときは,デフォルトゲートウェイ(ルータ)の MAC アドレスを調べてルータに渡す。
PC A
192.168.1.10
PC B
192.168.1.15
サーバ C
192.168.1.20
ルータ
192.168.1.1
① ARP 要求(ブロードキャスト)
「192.168.1.20 の人,MAC アドレスを教えて」
② ARP 応答(サーバ C だけが返す)
「MAC アドレスは 00-1B-…」
別のネットワーク宛てなら,ルータ(.1)の MAC を調べて渡す
要求はブロードキャスト(ルータを越えない),応答はその1台からだけ
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問11(表記を一部改変)
用語解説:ARP
問12
IPv6 において,拡張ヘッダを利用することによって実現できるセキュリティ機能はどれか。
ア URL フィルタリング機能
イ 暗号化機能 正解
ウ ウイルス検疫機能
エ 情報漏えい検知機能
正解 イ
解説
IPv6 では,基本ヘッダの後ろに必要に応じて拡張ヘッダを連ねる構造になっている。このうち ESP(Encapsulating Security Payload)ヘッダを使うとペイロードを暗号化でき,認証ヘッダ(AH)と合わせて IPsec の機能を IP 層で実現できる。イが正しい。
アの URL フィルタリングはアプリケーション層で URL を見て制御するもの,ウのウイルス検疫やエの情報漏えい検知も上位層で内容を検査する仕組みで,いずれも IP の拡張ヘッダで実現できるものではない。
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問12(表記を一部改変)
用語解説:IPv6
問13
チャレンジレスポンス認証方式の特徴はどれか。
ア TLS によって,クライアント側で固定パスワードを暗号化して送信する。
イ 端末のシリアル番号を,クライアント側で秘密鍵を使って暗号化して送信する。
ウ トークンという装置が自動的に表示する,認証のたびに異なるデータをパスワードとして送信する。
エ 利用者が入力したパスワードと,サーバから送られたランダムなデータとをクライアント側で演算し,その結果を送信する。 正解
正解 エ
解説
チャレンジレスポンス認証では,サーバが毎回異なるランダムなデータ(チャレンジ)をクライアントに送り,クライアントはチャレンジと利用者が入力したパスワードからハッシュ関数などで計算した値(レスポンス)を返す。サーバも登録されたパスワードで同じ計算をして結果を照合する。パスワードそのものはネットワークに流れず,レスポンスも毎回変わるので,盗聴や再送攻撃に強い。エが適切である。
アは通信路を暗号化して固定パスワードを送るだけで,チャレンジを使っていない。イは端末のシリアル番号を暗号化して送るもので,毎回同じ値になる。ウは時刻同期方式のワンタイムパスワードで,値は毎回変わるがサーバからのチャレンジを受け取っていない点が異なる。
チャレンジレスポンス認証
サーバは毎回違うランダムな値(チャレンジ)を送り,クライアントはチャレンジとパスワードからハッシュ値(レスポンス)を計算して返す。サーバも同じ計算をして一致すれば認証する。パスワードそのものはネットワークに流れず,チャレンジが毎回違うので,盗聴したレスポンスを使い回しても通らない。
クライアント
サーバ
① チャレンジ(毎回違う乱数)
② レスポンス=hash(チャレンジ+パスワード)
③ サーバも同じ計算をして一致すれば認証
パスワードそのものは流れない
パスワードは流れない。チャレンジが毎回違うので,盗んだ値は使い回せない
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問13(表記を一部改変)
用語解説:TLS(SSL)
問14
アクセス制御に用いる認証デバイスの特徴に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア USB メモリにディジタル証明書を組み込み,認証デバイスとする場合は,利用する PC の MAC アドレスを組み込む必要がある。
イ 成人には虹彩の経年変化がなく,虹彩認証では,認証デバイスでのパターン更新がほとんど不要である。 正解
ウ 静電容量方式の指紋認証デバイスでは,LED 照明を設置した室内において正常に認証できなくなる可能性がある。
エ 認証に利用する接触型 IC カードは,カード内のコイルの誘導起電力を利用している。
正解 イ
解説
虹彩の模様は生後2年ほどで完成し,その後は生涯ほとんど変化しない。したがって成人の虹彩認証では,登録したパターンを更新する必要がほとんどない。
アは誤りで,ディジタル証明書に接続先 PC の MAC アドレスを組み込む必要はなく,組み込めば他の PC で使えなくなる。ウも誤りで,静電容量方式は指の凹凸による静電容量の差を読む方式なので照明の影響を受けない。エも誤りで,コイルの誘導起電力で給電されるのは非接触型 IC カードであり,接触型は端子から直接給電される。
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問14(表記を一部改変)
問15
OpenPGP や S/MIME において用いられるハイブリッド暗号方式の特徴はどれか。
ア 暗号通信方式として IPsec と TLS を選択可能にすることによって利用者の利便性を高める。
イ 公開鍵暗号方式と共通鍵暗号方式を組み合わせることによって鍵管理コストと処理性能の両立を図る。 正解
ウ 複数の異なる共通鍵暗号方式を組み合わせることによって処理性能を高める。
エ 複数の異なる公開鍵暗号方式を組み合わせることによって安全性を高める。
正解 イ
解説
ハイブリッド暗号方式は,本文そのものは処理の速い共通鍵暗号方式で暗号化し,その共通鍵だけを受信者の公開鍵で暗号化して一緒に送る方式。公開鍵暗号の「鍵を安全に配れる」利点と,共通鍵暗号の「大量のデータを速く処理できる」利点の両方を得られる。イが正しい。
アは通信路の暗号化方式を選べるという話で,OpenPGP や S/MIME の仕組みとは別。ウの共通鍵暗号どうしの組合せでは鍵配送の問題が解決しない。エの公開鍵暗号どうしの組合せでは処理性能の問題が残る。
鍵の数とハイブリッド暗号
共通鍵暗号では,n 人が互いに秘密に通信するには2人の組ごとに鍵が要り,n(n−1)÷2 本になる。4人なら6本,100人なら4,950本。公開鍵暗号では1人が公開鍵と秘密鍵の1組を持てばよく,2n 本(100人なら200本)。ハイブリッド暗号では,データは速い共通鍵暗号で暗号化し,その共通鍵を受信者の公開鍵で暗号化して一緒に送る。
共通鍵:4人で6本
n(n−1)÷2 本
公開鍵:1人1組
2n 本(公開鍵と秘密鍵)
100人なら 共通鍵 4,950本 / 公開鍵 200本
ハイブリッド暗号
データ
共通鍵で暗号化(速い)
暗号文
共通鍵
受信者の公開鍵で暗号化
暗号化した共通鍵
受信者は秘密鍵で共通鍵を取り出し,データを復号する
鍵の配り方は公開鍵暗号で,データの暗号化は速い共通鍵暗号で
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問15(表記を一部改変)
用語解説:VPN・IPsec 共通鍵暗号と公開鍵暗号 TLS(SSL)
問16
UML のユースケース図の説明はどれか。
ア 外部からのトリガに応じて,オブジェクトの状態がどのように遷移するかを表現する。
イ クラスと関連から構成され,システムの静的な構造を表現する。
ウ システムとアクタの相互作用を表現する。 正解
エ データの流れに注目してシステムの機能を表現する。
正解 ウ
解説
ユースケース図は,システムを利用する人や外部システム(アクタ)と,システムが提供する機能(ユースケース)との関係を線で結んで表す図。システムの外側から見た振る舞いを示すのに使う。ウが正しい。
アは状態マシン図,イはクラス図の説明。エのデータの流れに注目して機能を表すのは DFD で,UML の図ではない。
UML のおもな図の使い分け
シーケンス図はオブジェクト間のメッセージを時間の順に,コミュニケーション図はオブジェクトのつながりに注目して相互作用を表す。ユースケース図はアクタとシステムの機能の関係(システムの範囲),アクティビティ図は処理の流れ(分岐・並行・同期),状態マシン図は1つのオブジェクトの状態の移り変わり,クラス図は静的な構造,オブジェクト図はある時点のインスタンスのつながりを表す。
図
表すもの
シーケンス図
メッセージを時間の順に
コミュニケーション図
オブジェクトのつながりと相互作用
ユースケース図
アクタと機能,システムの範囲
アクティビティ図
処理の流れ(分岐・並行・同期)
状態マシン図
1つのオブジェクトの状態の遷移
クラス図
クラスと関連(静的な構造)
オブジェクト図
ある時点のインスタンスとリンク
時間の順はシーケンス図,範囲はユースケース図,業務の流れはアクティビティ図
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問16(表記を一部改変)
用語解説:UML(統一モデリング言語)
問17
自社開発したソフトウェアの他社への使用許諾に関する説明として,適切なものはどれか。
ア 使用許諾対象が特許で保護された技術を使っていないソフトウェアであっても,使用許諾することは可能である。 正解
イ 既に自社の製品に搭載して販売していると,ソフトウェア単体では使用許諾対象にできない。
ウ 既にハードウェアと組み合わせて特許を取得していると,ソフトウェア単体では使用許諾対象にできない。
エ ソースコードを無償で使用許諾すると,無条件でオープンソースソフトウェアになる。
正解 ア
解説
使用許諾(ライセンス)は,著作権者が自分の著作物を他人に使わせることを認める行為。特許で保護された技術を使っているかどうかとは関係なく,著作権をもっていれば使用を許諾できる。アが正しい。
イは,自社製品に組み込んで販売していてもソフトウェアの著作権は自社にあるので,単体でも許諾できる。ウも,ハードウェアと組み合わせた特許を取得していることと,ソフトウェアの著作権を許諾することとは別の話。エは,ソースコードを無償で提供しただけではオープンソースソフトウェアにはならず,改変や再頒布の自由を認めるライセンスを付けて初めてそう呼べる。
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問17(表記を一部改変)
用語解説:著作権と知的財産権(特許・営業秘密・ライセンス)
問18
PMBOK の統合変更管理プロセスにおいて,プロジェクトのプロダクト,サービス,所産,構成要素などに対する変更と実施状況を記録・報告したり,要求事項への適合性を検証する活動を支援したりする活動はどれか。
ア アーンド・バリュー・マネジメント
イ コンフィギュレーション・マネジメント 正解
ウ コンフリクト・マネジメント
エ ポートフォリオマネジメント
正解 イ
解説
コンフィギュレーション・マネジメント(構成管理)は,プロダクトやサービス,構成要素に対する変更をどう行い,実施状況をどう記録・報告するかを管理する活動。要求事項への適合性を検証する活動を支えるのもこの一部で,PMBOK の統合変更管理プロセスの中で行われる。イが正しい。
アのアーンド・バリュー・マネジメントは出来高とコスト・スケジュールを比較する測定手法。ウのコンフリクト・マネジメントは対立の解消に関する手法。エのポートフォリオマネジメントは,複数のプログラムやプロジェクトを組織の戦略に沿って選び,資源を配分する活動である。
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問18(表記を一部改変)
用語解説:PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系)
問19
あるプロジェクトの作業が図のとおり計画されているとき,最短日数で終了するためには,作業 H はプロジェクトの開始から遅くとも何日後に開始しなければならないか。
正解 エ
解説
まず最短日数を求める。作業を最も早く始められる日を順にたどると,A は8日目,B は5日目に終わる。D と E が合流する結合点は,A→D の 8+10=18日と B→E の 5+9=14日のうち遅い18日。H の手前の結合点には C の12日とダミー作業経由の18日が入るので18日で,H が終わるのは 18+5=23日。終了の結合点には F 経由 8+8=16日,G 経由 18+12=30日,I 経由 23+4=27日が入り,最短日数は最も遅い30日になる。
次に,30日で終えるための H の最も遅い開始日を終点から逆にたどる。30日から I の4日を引くと H は26日目までに終えればよく,さらに H の5日を引くと H の開始は21日目まで遅らせられる。エが正しい。
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問19(表記を一部改変)
問20
過去のプロジェクトの開発実績から構築した作業配分モデルがある。システム要件定義からシステム内部設計までをモデルどおりに進めて228日で完了し,プログラム開発を開始した。現在,200本のプログラムのうち100本のプログラム開発を完了し,残りの100本は未着手の状況である。プログラム開発以降もモデルどおりに進捗すると仮定するとき,プロジェクトの完了まで,あと何日掛かるか。ここで,各プログラムの開発に掛かる工数及び期間は,全てのプログラムで同一であるものとする。
〔作業配分モデル〕
正解 イ
解説
期間比で見ると,システム要件定義 0.25,システム外部設計 0.21,システム内部設計 0.11 の合計 0.57 が 228 日に当たるので,全体の期間は 228÷0.57=400 日。プログラム開発は 400×0.11=44 日で,200 本中 100 本が終わっているので残りは 22 日。システム結合は 400×0.11=44 日,システムテストは 400×0.21=84 日。残りの合計は 22+44+84=150 日。
工数比の列は,人員をどう割り振るかを見るための値で,期間の計算には使わない。工数比で同じ計算をすると別の値になるので,どちらの比を使うかを取り違えないことが要点。
作業配分モデルで残りの日数を求める
期間比で考える。要件定義から内部設計までの期間比は 0.25+0.21+0.11=0.57 で,これが 228 日にあたるので,全体は 228÷0.57=400 日。残りはプログラム開発の半分(0.11÷2),システム結合 0.11,システムテスト 0.21 で,期間比 0.375,つまり 400×0.375=150 日。
要件
0.25
外部
0.21
内部
0.11
PG
PG
結合
0.11
テスト
0.21
0.11
0.57 → 228 日(全体 400 日)
残り 0.375
400 × 0.375 = 150 日
日数は期間比で計算する。工数比は使わない
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問20(表記を一部改変)
問21
次の処理条件で磁気ディスクに保存されているファイルを磁気テープにバックアップするとき,バックアップの運用に必要な磁気テープは最少で何本か。
〔処理条件〕
(1) 毎月初日(1日)にフルバックアップを取る。フルバックアップは1本の磁気テープに1回分を記録する。 (2) フルバックアップを取った翌日から次のフルバックアップまでは,毎日,差分バックアップを取る。差分バックアップは,差分バックアップ用としてフルバックアップとは別の磁気テープに追記録し,1本に1か月分を記録する。 (3) 常に6か月前の同一日までのデータについて,指定日の状態にファイルを復元できるようにする。ただし,6か月前の月に同一日が存在しない場合は,当該月の末日までのデータについて,指定日の状態にファイルを復元できるようにする(例:本日が10月31日の場合は,4月30日までのデータについて,指定日の状態にファイルを復元できるようにする)。
正解 ウ
解説
処理条件 (3) から,常に 6 か月前の同一日以降の任意の日の状態に復元できなければならない。ある日の状態に復元するには,その月の 1 日のフルバックアップと,その月の差分バックアップの両方が必要である。
例えば本日が 10 月 31 日なら,4 月 30 日以降の日を復元できる必要があるので,4 月から 10 月までの 7 か月分のフルバックアップと差分バックアップを保管しておかなければならない。本日が 10 月 1 日でフルバックアップを取った後でも,4 月 1 日以降の復元のために同じく 4 月から 10 月までの 7 か月分が必要になる。
フルバックアップ用が 7 本,差分バックアップ用が 7 本で,合計 14 本となり,ウになる。
バックアップに必要な磁気テープの本数
ある日の状態に戻すには,その月の1日のフルバックアップと,その月の差分バックアップの両方が要る。6か月前の同じ日以降のどの日にも戻せるようにするには,例えば10月31日なら4月30日以降,つまり4月から10月までの7か月分を残す。フルバックアップ用7本と差分バックアップ用7本で14本。
4月
フル
差分
5月
フル
差分
6月
フル
差分
7月
フル
差分
8月
フル
差分
9月
フル
差分
10月
フル
差分
4月30日〜10月31日のどの日にも戻せる
7か月 × 2本 = 14本
(10月31日なら6か月前は4月30日。4月分のテープも要る)
6か月前の月も含めるので7か月分。月ごとにフルと差分で2本
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問21(表記を一部改変)
問22
金融庁の“財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準”における“IT への対応”に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア IT 環境とは,企業内部に限られた範囲での IT の利用状況である。
イ IT の統制は,IT に係る全般統制及び IT に係る業務処理統制から成る。 正解
ウ IT の利用によって統制活動を自動化している場合,当該統制活動は有効であると評価される。
エ IT を利用せず手作業だけで内部統制を運用している場合,直ちに内部統制の不備となる。
正解 イ
解説
金融庁の“財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準”では,IT の統制を,IT 基盤の整備や運用に関わる「IT に係る全般統制」と,個々の業務処理の正確性を確保する「IT に係る業務処理統制」の二つに分けて考えるとしている。イが正しい。
アは,IT 環境には企業を取り巻く社会の IT 利用状況も含まれるので,企業内部に限られない。ウは,自動化されていてもプログラムの設定や運用が適切でなければ有効とはいえない。エは,手作業だけの内部統制でも有効に機能していれば不備とはされない。
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問22(表記を一部改変)
用語解説:内部統制(全般統制・業務処理統制)
問23
IT ベンダにおけるソリューションビジネスの推進で用いるバランススコアカードの,学習と成長の KPI の目標例はどれか。ここで,ソリューションとは“顧客の経営課題の達成に向けて,情報技術と専門家によるプロフェッショナルサービスを通して支援すること”とする。
ア サービスを提供した顧客に対して満足度調査を行い,満足度の平均を5段階評価で3.5以上とする。
イ 再利用環境の整備によってソリューション事例の登録などを増やし,顧客提案数を前年度の1.5倍とする。
ウ 情報戦略のコンサルティングサービスに重点を置くために,社内要員30名を IT のプロフェッショナルとして育成する。 正解
エ 情報戦略立案やシステム企画立案に対するコンサルティングの受注金額を,全体の15%以上とする。
正解 ウ
解説
バランススコアカードの学習と成長の視点は,人材の育成や組織の能力向上など,将来の業績を支える基盤づくりを測る。社内要員30名を IT のプロフェッショナルとして育成するという目標がこれに当たる。ウが正しい。
アの顧客満足度は顧客の視点,イの再利用環境の整備による顧客提案数の増加は内部ビジネスプロセスの視点,エのコンサルティングの受注金額の割合は財務の視点の指標である。
バランススコアカードの4つの視点と戦略マップ
下から学習と成長,内部ビジネスプロセス,顧客,財務の4つの視点を積み上げる。専門人材を育てると出荷までの日数を縮められ,顧客満足度が上がり,売上高が伸びる,という因果関係を矢印でつないだものが戦略マップ。各視点に目標と指標(KPI)を置く。
財務
売上高を伸ばす
売上高・利益率
顧客
顧客満足度を上げる
顧客満足度・シェア
内部ビジネスプロセス
出荷を速くする
出荷までの日数
学習と成長
専門人材を育てる
育成人数・特許件数
下の視点の成果が上の視点の成果につながる(因果関係)
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問23(表記を一部改変)
用語解説:バランススコアカードと KPI・KGI・CSF
問24
BI(Business Intelligence)の活用事例として,適切なものはどれか。
ア 競合する他社が発行するアニュアルレポートなどの刊行物を入手し,経営戦略や財務状況を把握する。
イ 業績の評価や経営戦略の策定を行うために,業務システムなどに蓄積された膨大なデータを分析する。 正解
ウ 電子化された学習教材を社員がネットワーク経由で利用することを可能にし,学習・成績管理を行う。
エ りん議や決裁など,日常の定型的業務を電子化することによって,手続を確実に行い,処理を迅速化する。
正解 イ
解説
BI(Business Intelligence)は,業務システムなどに日々たまっていく大量のデータを集めて分析し,業績の評価や経営戦略の策定といった意思決定に役立てる仕組みや考え方。イが正しい。
アは他社の公開資料を集める競合分析で,自社に蓄積したデータの分析ではない。ウは e ラーニング,エはワークフローシステムの説明である。
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問24(表記を一部改変)
問25
“情報システム・モデル取引・契約書”によれば,要件定義工程を実施する際に,ユーザ企業がベンダと締結する契約の形態について適切なものはどれか。
ア 構築するシステムがどのような機能となるか明確になっていないので準委任契約にした。 正解
イ 仕様の決定権はユーザ側ではなくベンダ側にあるので準委任契約にした。
ウ ベンダに委託する作業の成果物が具体的に想定できないので請負契約にした。
エ ユーザ内のステークホルダとの調整を行う責任が曖昧にならないように請負契約にした。
正解 ア
解説
“情報システム・モデル取引・契約書”では,要件定義工程は,何を作るかがまだ固まっておらず,ユーザ側が主体となって決めていく段階なので,成果物の完成を約束する請負契約ではなく,作業の遂行を約束する準委任契約が適切だとしている。アが正しい。
イは,要件定義の仕様の決定権はユーザ側にあるので前提が誤り。ウは,成果物が具体的に想定できないなら請負契約は結べないので逆。エは,ユーザ内のステークホルダとの調整はユーザ側の責任であり,請負契約にすべき理由にはならない。
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問25(表記を一部改変)
用語解説:契約の形態(請負・準委任・労働者派遣)
問26
ベンチマーキングを説明したものはどれか。
ア 企業内に散在している知識を共有化し,全体の問題解決力を高めていく経営を行う。
イ 迅速な意思決定のために,組織の階層をできるだけ少なくしたフラット型の組織構造によって経営を行う。
ウ 優れた業績を上げている企業などとの比較分析を行い,結果を自社の経営改革に活用する。 正解
エ 他社にはまねのできない,企業独自のノウハウや技術などの強みを核とした経営を行う。
正解 ウ
解説
ベンチマーキングは,優れた業績を上げている企業や他業種の優良事例と自社を比較し,どこにどれだけ差があるかを分析して,自社の経営改革に活かす手法。ウが正しい。
アはナレッジマネジメント,イはフラット型組織による経営,エはコアコンピタンス経営の説明である。
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問26(表記を一部改変)
問27
アンゾフが提唱する成長マトリクスを説明したものはどれか。
ア 自社の強みと弱み,市場における機会と脅威を,分類ごとに列挙して,事業戦略における企業の環境分析を行う。
イ 製品と市場の視点から,事業拡大の方向性を市場浸透・製品開発・市場開拓・多角化に分けて,戦略を検討する。 正解
ウ 製品の市場占有率と市場成長率から,企業がそれぞれの事業に対する経営資源の最適配分を意思決定する。
エ 製品の導入期・成長期・成熟期・衰退期の各段階に応じて,製品の改良,新品種の追加,製品廃棄などを計画する。
正解 イ
解説
アンゾフの成長マトリクスは,製品(既存・新規)と市場(既存・新規)の2軸で事業拡大の方向性を四つに分け,市場浸透・製品開発・市場開拓・多角化のどれを採るかを検討する枠組み。イが正しい。
アは SWOT 分析,ウは PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント),エはプロダクトライフサイクルに基づく製品戦略の説明である。
アンゾフの成長マトリクス
製品(既存・新規)と市場(既存・新規)の組合せで成長の戦略を4つに分ける。既存の製品を既存の市場でもっと売るのが市場浸透,既存の製品を新しい市場に売るのが市場開拓(新市場開拓),新しい製品を既存の市場に出すのが製品開発(新製品開発),新しい製品で新しい市場に出るのが多角化。
製品
既存
新規
市場
既存
新規
市場浸透
今の製品を今の市場で
製品開発
新しい製品を今の市場に
市場開拓
今の製品を新しい市場に
多角化
新しい製品で新しい市場へ
製品と市場のどちらを新しくするか
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問27(表記を一部改変)
問28
ある期間の生産計画において,図の部品表で表される製品 A の需要量が10個であるとき,部品 D の正味所要量は何個か。ここで,ユニット B の在庫残が5個,部品 D の在庫残が25個あり,他の在庫残,仕掛残,注文残,引当残などはないものとする。
正解 イ
解説
製品 A が10個なので,ユニット B は 10×4=40個必要だが在庫が5個あるので正味35個,ユニット C は 10×1=10個必要で在庫はないので10個。部品 D はユニット B から 35×3=105個,ユニット C から 10×1=10個で合計115個必要になる。部品 D の在庫が25個あるので,正味所要量は 115−25=90個。イが正しい。
上位のユニット B の在庫を引かずに40個のまま計算すると,部品 D は 40×3+10=130個必要となり,在庫25個を引いて105個(エ)になってしまう。在庫は上位の品目から順に引き当てていく点に注意する。アの80とウの95は,この部品表からは導けない値である。
部品表から部品 D の正味所要量を求める
製品 A が10個なので,ユニット B は 4×10=40個,在庫5個を引いて正味35個。ユニット C は10個。部品 D は B から 35×3=105個,C から 10×1=10個で合計115個,在庫25個を引いて正味90個。
A
10個
B
40−在庫5=35
C
10
D
35×3
E
D
10×1
F
D:105 + 10 = 115,在庫25を引いて 90 個
在庫は上の階層から順に引いていく
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問28(表記を一部改変)
問29
故障率曲線において,図中の A の期間に実施すべきことはどれか。
ア 設計段階では予想できなかった設計ミス,生産工程では発見できなかった欠陥などによって故障が発生するので,出荷前に試運転を行う。
イ 対象の機器・部品が,様々な環境条件の下で使用されているうちに,偶発的に故障が発生するので,予備部品などを用意しておく。 正解
ウ 疲労・摩耗・劣化などの原因によって故障が発生するので,部品交換などの保全作業を行い,故障率を下げる。
エ 摩耗故障が多く発生してくるので,定期的に適切な保守を行うことによって事故を未然に防止する。
正解 イ
解説
故障率曲線(バスタブ曲線)は,初めに故障率が高く下がっていく初期故障期,低い水準で平らに続く偶発故障期,最後に上がっていく摩耗故障期の三つに分かれる。A は平らな区間なので偶発故障期に当たる。この期間の故障は原因を予測しにくく偶発的に起こるので,予備部品を用意しておくなど,起きたときに早く直せる備えが有効になる。イが正しい。
アは初期故障期の説明で,出荷前の試運転(バーンイン)で取り除く。ウとエは摩耗故障期の説明で,部品交換や定期保守によって故障率の上昇を抑える。
故障率曲線(バスタブ曲線)
使い始めは製造上の欠陥などで故障率が高く,次第に下がる(初期故障期)。その後は故障率が低く一定の時期が続く(偶発故障期)。長く使うと部品の劣化で故障率が再び上がる(摩耗故障期)。
初期故障
偶発故障
摩耗故障
低く一定
時間
故障率
初期故障 → 偶発故障(一定)→ 摩耗故障。浴槽の断面の形
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問29(表記を一部改変)
問30
日本において,産業財産権と総称される四つの権利はどれか。
ア 意匠権,実用新案権,商標権,特許権 正解
イ 意匠権,実用新案権,著作権,特許権
ウ 意匠権,商標権,著作権,特許権
エ 実用新案権,商標権,著作権,特許権
正解 ア
解説
産業財産権は,特許庁が所管する四つの権利,すなわち特許権・実用新案権・意匠権・商標権の総称。アが正しい。いずれも出願して登録を受けることで権利が発生する。
イ・ウ・エに含まれる著作権は文化庁の所管で,創作した時点で自動的に権利が発生し,登録を必要としない。産業財産権とは制度の建て付けが異なるので,この四つには含まれない。
出典:平成28年度 秋期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問30(表記を一部改変)
用語解説:著作権と知的財産権(特許・営業秘密・ライセンス)
科目A-1(午前Ⅰ・高度試験 共通)のほかの年度
科目A-1(午前Ⅰ)
令和7年度 秋期
令和7年度 春期
令和6年度 秋期
令和6年度 春期
令和5年度 秋期
令和5年度 春期
令和4年度 秋期
令和4年度 春期
令和3年度 秋期
令和3年度 春期
令和2年度 10月
令和元年度 秋期
平成31年度 春期
平成30年度 秋期
平成30年度 春期
平成29年度 秋期
平成29年度 春期
平成28年度 秋期
平成28年度 春期
平成27年度 秋期
平成27年度 春期
平成26年度 秋期
平成26年度 春期
平成25年度 秋期
平成25年度 春期
平成24年度 秋期
平成24年度 春期
平成23年度 秋期
平成23年度 特別試験
平成22年度 秋期
平成22年度 春期
平成21年度 秋期
平成21年度 春期
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