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高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通

令和6年度 春期 科目A-1(午前Ⅰ)

令和6年度 春期に実施された高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ(2026年度からの科目A-1)の全30問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:科目A-1(午前Ⅰ・高度試験 共通)について

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問1

ATM(現金自動預払機)が1台ずつ設置してある二つの支店を統合し,統合後の支店には ATM を1台設置する。統合後の ATM の平均待ち時間を求める式はどれか。ここで,待ち時間は M/M/1 の待ち行列モデルに従い,平均待ち時間にはサービス時間を含まず,ATM を1台に統合しても十分に処理できるものとする。

〔条件〕

正解 エ

解説

M/M/1 モデルの平均待ち時間(サービス時間を含まない)は,利用率を ρ,平均サービス時間を Ts として ρ/(1−ρ)×Ts で表される。

統合すると利用者数は2倍になる一方,平均サービス時間 Ts は変わらない。利用率は「到着率×サービス時間」なので統合後は 2ρ になる。これを式に代入して 2ρ/(1−2ρ)×Ts となる。

M/M/1 の待ち時間と利用率 M/M/1 の平均待ち時間は 平均処理時間×ρ÷(1−ρ)(ρ は利用率)。ρ=0.5 で係数が1になり,待ち時間が処理時間と同じになる。ρ=0.67 で2倍,0.8 で4倍,0.9 で9倍と,1に近づくと急に長くなる。 0.5 → 1倍 0.8 → 4倍 0.9 → 9倍 1 利用率 ρ ρ÷(1−ρ)(待ち時間 ÷ 処理時間)
利用率が50%を超えると待ち時間が処理時間を超え,1に近づくと急増する

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問1(表記を一部改変)

問2

符号長7ビット,情報ビット数4ビットのハミング符号による誤り訂正の方法を,次のとおりとする。

受信した7ビットの符号語 x1 x2 x3 x4 x5 x6 x7(xk=0 又は 1)に対して

c0=x1+x3+x5+x7,c1=x2+x3+x6+x7,c2=x4+x5+x6+x7(いずれも mod 2 での計算)

を計算し,c0,c1,c2 の中に少なくとも一つは 0 でないものがある場合には,

i = c₀+c₁×2+c₂×4

を求めて,左から i ビット目を反転することによって誤りを訂正する。

受信した符号語が 1000101 であった場合,誤り訂正後の符号語はどれか。

正解 エ

解説

受信語 1000101 は x1=1,x2=0,x3=0,x4=0,x5=1,x6=0,x7=1。

c0=x1+x3+x5+x7=1+0+1+1=3→1,c1=x2+x3+x6+x7=0+0+0+1=1,c2=x4+x5+x6+x7=0+1+0+1=2→0(mod 2)。

i=1+1×2+0×4=3 なので,左から3ビット目を反転する。1000101 の3ビット目 0 を 1 にして 1010101 となる。

ハミング符号 x1〜x7(c0・c1・c2) の誤りの位置 受信した符号 1000101 で各検査式の合計を求めると,c0 は 1,c1 は 1,c2 は 0。合わない式のすべてに含まれ,合う式には含まれないビットは x3 なので,それを反転して 1010101 になる。 x1 1 x2 0 x3 0 x4 0 x5 1 x6 0 x7 1 受信 合計 c0 1 0 1 1 1 ✕ c1 0 0 0 1 1 ✕ c2 0 1 0 1 0 合わない式すべてに入り,合う式に入らない x3 が誤り x3 を反転して 1010101
i = c0 + c1×2 + c2×4 = 1 + 2 + 0 = 3 ビット目を反転する

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問2(表記を一部改変)

問3

各ノードがもつデータを出力する再帰処理 f(ノード n)を定義した。この処理を,図の2分木の根(最上位のノード)から始めたときの出力はどれか。

〔f(ノード n)の定義〕

2分木。根は+で,左の子は A,右の子は ÷。÷ の左の子は ×,右の子は −。× の左の子は B,右の子は C。− の左の子は D,右の子は E。

正解 エ

解説

定義は「右の子→左の子→自分自身」の順に処理する後行順走査(右優先)。根の+から順に展開すると次のようになる。

+の右の子 ÷ へ。÷ の右の子 − へ。− の右 E を出力,左 D を出力,− 自身を出力(E D -)。次に ÷ の左の子 × へ。右 C,左 B,自身 ×(C B ×)。ここで ÷ 自身を出力。最後に + の左の子 A を出力し,+ 自身を出力する。

つなげると ED-CB×÷A+ となる。

右の子→左の子→自分の順に出力する f は,右の子を先に処理し,次に左の子を処理し,最後に自分を出力する。根の+から始めると,E(1),D(2),−(3),C(4),B(5),×(6),÷(7),A(8),+(9)の順に出力され,ED−CB×÷A+ になる。 + 9 A 8 ÷ 7 × 6 − 3 B 5 C 4 D 2 E 1 出力 ED−CB×÷A+
丸の横の数字が出力の順番。右の部分木を全部出してから左へ

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問3(表記を一部改変)

問4

量子ゲート方式の量子コンピュータの説明として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

量子コンピュータは,0と1の状態を同時に表現できる量子ビット(qubit)と,その重ね合わせや量子もつれを利用して並列的に計算する。量子ゲート方式は,この量子ビットに量子ゲートを組み合わせて演算を行う汎用的な方式。

アは誤り。演算の途中は重ね合わせ状態であり,0か1かに定まる古典的な2進数の演算ではない。イは誤り。量子ゲート方式は汎用であり,加算を含む任意の演算を組み立てられる(特定用途向けなのは量子アニーリング方式)。エは誤り。量子状態を保つため,絶対零度近くの極低温で動作させる必要がある。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問4(表記を一部改変)

用語解説:耐量子暗号(PQC)と量子暗号

問5

システムの信頼性設計に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

フォールトアボイダンス(故障回避)は,構成要素の品質や信頼性そのものを高めることで,故障の発生を未然に防ごうとする考え方。

アはフールプルーフ(利用者の誤操作を防ぐ)の説明。イは誤りで,フェールソフトは機能を縮退させてでも稼働を継続する考え方。エはフェールセーフ(故障時に安全側に倒す)の説明で,フォールトトレランスは故障が起きても冗長性によって機能を維持する考え方。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問5(表記を一部改変)

用語解説:信頼性設計(フェールセーフ・フェールソフト・フールプルーフ)

問6

三つの資源 X〜Z を占有して処理を行う四つのプロセス A〜D がある。各プロセスは処理の進行に伴い,表中の数値の順に資源を占有し,実行終了時に三つの資源を一括して解放する。プロセス A と同時にもう一つプロセスを動かした場合に,デッドロックを起こす可能性があるプロセスはどれか。

資源の占有順序の表。プロセスAは資源X=1,資源Y=2,資源Z=3。プロセスBはX=1,Y=2,Z=3。プロセスCはX=2,Y=3,Z=1。プロセスDはX=3,Y=2,Z=1。

正解 イ

解説

デッドロックは,複数のプロセスが資源を異なる順序で確保しようとして,互いに相手が持つ資源の解放を待ち合うことで起こる。逆に,すべてのプロセスが同じ順序で資源を確保すれば待ち合いの輪はできない。

A の占有順序は X→Y→Z。B も X→Y→Z で A と同じ順序なのでデッドロックしない。C は Z→X→Y,D は Z→Y→X で,どちらも A と順序が異なるため,A が X を確保して Z を待つ一方で相手が Z を確保して X を待つ,という状況が起こり得る。よって C と D。

資源を占有する順番とデッドロック A は X→Y→Z の順に資源を占有する。B も X→Y→Z で同じ順番なので,待ち合いの輪はできない。C は Z→X→Y,D は Z→Y→X で順番が違うので,A が X を持って Z を待ち,相手が Z を持って X を待つ,という状態が起こり得る。 A X → Y → Z B X → Y → Z A と同じ順番 → 大丈夫 C Z → X → Y A と順番が違う → 危ない D Z → Y → X A と順番が違う → 危ない 例:A が X を持って Z を待ち,C が Z を持って X を待つ 答え:C と D
同じ順番なら輪はできない。順番が違う C と D は A とデッドロックし得る

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問6(表記を一部改変)

用語解説:排他制御とデッドロック(ACID 特性)

問7

入力が A と B,出力が Y の論理回路を動作させたとき,図のタイムチャートが得られた。この論理回路として,適切なものはどれか。

入力AとB,出力Yのタイムチャート。AとBがともに1のときだけYが0になり,それ以外はYが1になっている。

正解 ウ

解説

タイムチャートを読むと,A と B がともに 1 のときだけ Y が 0 になり,それ以外(0と0,0と1,1と0)では Y が 1 になっている。これは論理積を反転した動作,すなわち NAND である。

アの XOR は入力が異なるとき 1,イの XNOR は入力が同じとき 1,エの NOR は両方 0 のときだけ 1 になるので,いずれもタイムチャートと合わない。

タイムチャートから論理回路を読む(NAND) A と B の組合せごとに Y を読むと,0・0,0・1,1・0 では Y=1,A と B がともに1のときだけ Y=0。両方が1のときだけ0になるのは論理積の否定(NAND)。 A B Y 両方1のときだけ Y=0 → NAND
A も B も1の区間(塗った部分)だけ Y が0

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問7(表記を一部改変)

問8

ビットマップフォントよりも,アウトラインフォントの利用が適している場合はどれか。

正解 エ

解説

アウトラインフォントは,文字の輪郭を数式(曲線)で表現しておき,表示時に必要なサイズで描画する。したがって任意の倍率に拡大・縮小しても輪郭が滑らかなまま保たれる。

アとイはどちらの方式でも実現できる。ウはあらかじめ点の配置が決まっているビットマップフォントのほうが有利で,アウトラインフォントは描画時に展開処理が必要なぶん不利になる。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問8(表記を一部改変)

問9

ストアドプロシージャの利点はどれか。

正解 ア

解説

ストアドプロシージャは,一連の SQL 文をあらかじめ DBMS 側に登録しておき,呼出し1回で実行させる仕組み。SQL 文を1文ずつ送る必要がなくなるので,アプリケーションと DBMS の間の通信量(ネットワーク負荷)が減る。

イ・ウ・エはいずれもストアドプロシージャによって直接減るものではない。処理する内容が同じである以上,実行計画の数やバッファ数,ディスクへの I/O 回数が減るわけではない。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問9(表記を一部改変)

問10

CSMA/CD 方式の LAN に接続されたノードの送信動作として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

CSMA/CD は,送信前に伝送路が空いているか確認し(キャリア検知),空いていれば送信する。同時に送信して衝突が起きたら,それを検出してランダムな時間だけ待ってから再送する方式。

アはトークンバス,ウはトークンリングの動作。エは TDMA(時分割多重アクセス)の説明。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問10(表記を一部改変)

用語解説:CSMA/CD・CSMA/CA

問11

ビット誤り率が0.0001%の回線を使って,1,500バイトのパケットを10,000個送信するとき,誤りが含まれるパケットの個数の期待値はおよそ幾らか。

正解 エ

解説

ビット誤り率 0.0001% は 1×10−6。1パケットは 1,500バイト=12,000ビットなので,1パケットに含まれる誤りビット数の期待値は 12,000×10−6=0.012。誤り率が十分小さいため,これはそのまま「そのパケットに誤りが含まれる確率」とみなせる。

10,000個のパケットを送るので,誤りを含むパケット数の期待値は 10,000×0.012=120個。

誤りを含むパケットの数の期待値 誤り率 0.0001% は 10⁻⁶。1パケットは 1,500 バイト=12,000 ビットなので,1パケットの誤りビット数の期待値は 0.012。誤り率が小さいので,これがそのパケットに誤りが含まれる確率とみなせて,10,000 個では 120 個。 誤り率 0.0001% 10⁻⁶ 1パケットのビット数 1,500 × 8 12,000 ビット 1パケットの誤りの期待値 12,000 × 10⁻⁶ 0.012 10,000 × 0.012 = 120 個
0.0001% = 10⁻⁶。バイトはビットに直す

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問11(表記を一部改変)

問12

3D セキュア2.0(EMV 3-D セキュア)は,オンラインショッピングにおけるクレジットカード決済時に,不正取引を防止するための本人認証サービスである。3D セキュア2.0で利用される本人認証の特徴はどれか。

正解 イ

解説

3D セキュア2.0 の特徴は,取引ごとにリスクを判定する「リスクベース認証」を採用したこと。過去の取引履歴や利用デバイスの情報から不正利用の疑いが低いと判断されれば追加認証を求めず(利用者の手間を減らし),高リスクと判断された場合にだけワンタイムパスワードなどの追加認証を行う。

アはパスワード再発行の話で 3D セキュア2.0 の特徴ではない。ウは全件で追加認証を行うことになり,リスクベース認証の考え方に反する。エの「人間であることの確認」(CAPTCHA など)は 3D セキュア2.0 の認証の要素ではない。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問12(表記を一部改変)

問13

公開鍵暗号方式を使った暗号通信を n 人が相互に行う場合,全部で何個の異なる鍵が必要になるか。ここで,一組の公開鍵と秘密鍵は2個と数える。

正解 イ

解説

公開鍵暗号方式では,一人ひとりが自分用の公開鍵と秘密鍵の組を一つ持てばよい。相手に送るときは相手の公開鍵で暗号化し,受け取った相手は自分の秘密鍵で復号するので,通信の相手が何人いても鍵の組を増やす必要はない。n 人なら n 組で,1組を2個と数えるので 2n 個。イが正しい。

1人あたり2個なので,n 人では 2n 個。ウの n(n−1)/2 は,通信する組合せごとに共通鍵が必要になる共通鍵暗号方式の場合の鍵の個数。

鍵の数とハイブリッド暗号 共通鍵暗号では,n 人が互いに秘密に通信するには2人の組ごとに鍵が要り,n(n−1)÷2 本になる。4人なら6本,100人なら4,950本。公開鍵暗号では1人が公開鍵と秘密鍵の1組を持てばよく,2n 本(100人なら200本)。ハイブリッド暗号では,データは速い共通鍵暗号で暗号化し,その共通鍵を受信者の公開鍵で暗号化して一緒に送る。 共通鍵:4人で6本 n(n−1)÷2 本 公開鍵:1人1組 2n 本(公開鍵と秘密鍵) 100人なら 共通鍵 4,950本 / 公開鍵 200本 ハイブリッド暗号 データ 共通鍵で暗号化(速い) 暗号文 共通鍵 受信者の公開鍵で暗号化 暗号化した共通鍵 受信者は秘密鍵で共通鍵を取り出し,データを復号する
鍵の配り方は公開鍵暗号で,データの暗号化は速い共通鍵暗号で

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問13(表記を一部改変)

用語解説:共通鍵暗号と公開鍵暗号

問14

自社製品の脆弱性に起因するリスクに対応するための社内機能として,最も適切なものはどれか。

正解 イ

解説

PSIRT(Product Security Incident Response Team)は,自社が提供する製品やサービスの脆弱性を受け付けて対応し,修正や情報公開を行う組織。“Product”の頭文字が示すとおり,製品の脆弱性に特化している。

アの CSIRT は自組織で発生したセキュリティインシデントに対応する組織,ウの SOC はネットワークや機器を常時監視して脅威を検知する組織。エは WHOIS 上の連絡先であって,リスク対応を行う機能ではない。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問14(表記を一部改変)

問15

PC からサーバに対し,IPv6 を利用した通信を行う場合,ネットワーク層で暗号化を行うときに利用するものはどれか。

正解 ア

解説

IPsec は IP パケット自体を暗号化・認証するプロトコルで,OSI 基本参照モデルのネットワーク層(第3層)で動作する。IPv6 では標準的に組み込まれている。

イの PPP はデータリンク層のプロトコル。ウの SSH とエの TLS はトランスポート層より上位で動作し,ネットワーク層の暗号化には当たらない。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問15(表記を一部改変)

用語解説:VPN・IPsec IPv6 TLS(SSL)

問16

オブジェクト指向におけるクラス間の関係のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

サブクラスはスーパークラスから操作を継承するが,同じ名前の操作を独自に定義し直すことができる。これをオーバーライド(再定義)といい,ポリモーフィズムを実現する仕組みになる。

アは誤り。3つ以上のクラス間の関連(多項関連)も定義できる。ウは誤り。継承した操作はサブクラスのインスタンス自身が実行するのであって,スーパークラスのインスタンスに依頼するわけではない。エは誤り。集約は「全体と部分」の関係であり,属性や操作を共有するものではない。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問16(表記を一部改変)

問17

ソフトウェア信頼度成長モデルの一つであって,テスト工程においてバグが収束したと判定する根拠の一つとして使用するゴンペルツ曲線はどれか。

正解 ウ

解説

ゴンペルツ曲線は,テスト初期はバグの検出が少なく,中盤で急増し,終盤には新たなバグが出にくくなって頭打ちになる S 字形(シグモイド形)を描く。曲線が水平に近づいたことをもって,バグが収束したと判断する根拠の一つにする。

アは増加が加速し続けており収束しない。イは一定のペースで検出され続ける直線。エは初めから急に増えて緩やかになる形で,序盤の立ち上がりが緩やかな S 字にはなっていない。

ゴンペルツ曲線(信頼度成長曲線) テストの初めはバグの検出が少なく,中盤で急に増え,終盤は新しいバグが出にくくなって頭打ちになる S 字の曲線。累積のバグ件数が水平に近づいたことを,バグが収束したと判断する根拠の1つにする。 テストの時間 バグの累積 緩やか 急増 頭打ち=収束
序盤は緩やか,中盤で急増,終盤で頭打ちの S 字

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問17(表記を一部改変)

問18

EVM で管理しているプロジェクトがある。図は,プロジェクトの開始から完了予定までの期間の半分が経過した時点での状況である。コスト効率,スケジュール効率がこのままで推移すると仮定した場合の見通しのうち,適切なものはどれか。

EVMのグラフ。横軸は開始日・現時点・完了予定日,縦軸は累積値。現時点において上から PV,AC,EV の順に並んでおり,EV が最も小さい。

正解 ア

解説

図の現時点では PV>AC>EV となっている。

コスト効率指数 CPI=EV÷AC は EV<AC なので1未満。かけた費用に見合う出来高が得られておらず,このまま進むと完成時のコストは計画を超える。スケジュール効率指数 SPI=EV÷PV も EV<PV なので1未満で,計画より出来高が遅れている。

したがって「コストは多くなり,完了は遅くなる」が適切。

CPI と SPI で見通しを読む コスト効率指数 CPI=EV÷AC,スケジュール効率指数 SPI=EV÷PV。1 より小さいとそれぞれ悪い。現時点で PV>AC>EV なら CPI も SPI も1未満で,このまま進めばコストは計画を超え,完了は遅れる。残作業効率指数 TCPI が1を超えるときは,残りを計画より高い効率で進めないと予算に収まらない。 指数 式 1 未満なら CPI EV ÷ AC コストが超過 SPI EV ÷ PV 進捗が遅れ TCPI 残りの作業 ÷ 残りの予算 (1 超)残りを効率よく PV>AC>EV → CPI<1,SPI<1 → コスト増・完了は遅れる 例:EV 150,AC 150,PV 200 なら CPI=1.0,SPI=0.75
CPI=EV÷AC,SPI=EV÷PV。1 未満なら悪い

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問18(表記を一部改変)

用語解説:EVM(アーンドバリューマネジメント)

問19

工場の生産能力を増強する方法として,新規システムを開発する案と既存システムを改修する案とを検討している。次の条件で,期待金額価値の高い案を採用するとき,採用すべき案と期待金額価値との組合せのうち,適切なものはどれか。ここで,期待金額価値は,収入と投資額との差で求める。

〔条件〕

正解 ア

解説

期待金額価値は,需要が拡大した場合と縮小した場合の収入をそれぞれの確率で重み付けして足し,投資額を引いて求める。新規システムの開発は 180×0.7+50×0.3=126+15=141億円の収入に対して投資額100億円なので41億円。既存システムの改修は 120×0.7+40×0.3=84+12=96億円の収入に対して投資額50億円なので46億円。

期待金額価値の高い既存システムの改修を採用し,その値は46億円となるので,アが正しい。イの96億円は投資額を引いていない収入の期待値,エの130億円は新規システムの収入の期待値から改修の投資額を引くなど組み合わせを誤った値である。新規システムは需要拡大時の収入が大きいが,投資額の差を埋めるほどではない。

デシジョンツリー:新規開発と改修 新規開発は 0.7×180+0.3×50−100=41 億円,改修は 0.7×120+0.3×40−50=46 億円。EMV の高い改修を採用する。 新規開発(投資100) 70%:拡大 180 30%:縮小 50 EMV 41 既存改修(投資50) 70%:拡大 120 30%:縮小 40 EMV 46 改修 46 億円 > 新規 41 億円 → 改修を採用
収入の期待値から投資額を引いて比べる

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問19(表記を一部改変)

問20

サービスマネジメントにおけるサービスレベル管理の活動はどれか。

正解 エ

解説

サービスレベル管理プロセスは,提供するサービスとそのサービスレベル目標を特定し,サービス提供者と顧客の間でサービスレベル合意書(SLA)として合意し,その達成状況を監視・報告して改善していくプロセスである。エが該当する。

アは容量・能力管理,イはサービスの予算業務及び会計業務,ウはサービス継続管理の活動。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問20(表記を一部改変)

用語解説:SLA(サービスレベル合意書)

問21

システム監査基準(令和5年)によれば,システム監査において,監査人が一定の基準に基づいて総合的に点検・評価を行う対象とするものは,情報システムのマネジメント,コントロールと,あと一つはどれか。

正解 ア

解説

システム監査基準(令和5年)は,システム監査を「情報システムのガバナンス,マネジメント,コントロールを点検・評価・検証する」ものと位置付けている。経営陣による統治の仕組みであるガバナンスまでを対象に含めている点が特徴。

イ・ウ・エはいずれもこの3つの並びには含まれない。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問21(表記を一部改変)

用語解説:システム監査(監査手続・監査証拠・フォローアップ)

問22

情報システムに対する統制を IT に係る全般統制と IT に係る業務処理統制に分けたとき,IT に係る業務処理統制に該当するものはどれか。

正解 ウ

解説

IT に係る業務処理統制は,個々の業務システムの中に組み込まれ,その業務の処理が正確・網羅的に行われることを確保する統制。入力データの正当性チェック機能はその典型例。

ア・イ・エはいずれも複数の業務システムに共通して働く基盤的な統制であり,IT に係る全般統制(物理的アクセス管理,外部委託の管理,セキュリティ運用など)に当たる。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問22(表記を一部改変)

用語解説:ファイアウォールと DMZ 内部統制(全般統制・業務処理統制)

問23

SOA の説明はどれか。

正解 エ

解説

SOA(Service Oriented Architecture,サービス指向アーキテクチャ)は,業務システムの機能を利用者から見た意味のある単位(サービス)に分割し,それらを組み合わせてシステムを構築する考え方。業務プロセスの変更に合わせてサービスを組み替えやすく,他システムとの連携も容易になる。

アは ERP,イはフィット&ギャップ分析,ウは BPM(ビジネスプロセスマネジメント)の説明。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問23(表記を一部改変)

用語解説:SOA(サービス指向アーキテクチャ)

問24

EMS(Electronics Manufacturing Services)の説明として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

EMS は,自社で生産設備をもつ企業が,他社のブランドで販売される電子機器の製造を受託するサービス。複数社の製品をまとめて生産することで規模の経済を働かせ,委託側は生産設備を持たずに済む。

アは設計だけを受託しており製造を行っていない点で誤り。イは自社ブランド販売,ウは自社製造なので,いずれも受託製造ではない。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問24(表記を一部改変)

問25

組込み機器のハードウェアの製造を外部に委託する場合のコンティンジェンシープランの記述として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

コンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)は,リスクが実際に起きてしまった場合に何をするかをあらかじめ決めておく計画。「顕在化したときに備えて,対処するための計画を策定する」がこれに当たる。

ア・イ・ウはいずれもリスクが起きる前に発生確率や影響を下げようとする予防的な対策(リスク軽減策)であり,顕在化後の対応計画ではない。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問25(表記を一部改変)

問26

企業が属する業界の競争状態と収益構造を,“新規参入の脅威”,“供給者の支配力”,“買い手の交渉力”,“代替製品・サービスの脅威”,“既存競合者同士の敵対関係”の要素に分類して,分析するフレームワークはどれか。

正解 エ

解説

ファイブフォース分析は,業界の競争環境を「新規参入の脅威」「供給者の交渉力」「買い手の交渉力」「代替品の脅威」「既存競合者同士の敵対関係」という五つの力に分けて,その業界の収益性を分析する枠組み。

アの PEST 分析は政治・経済・社会・技術という外部のマクロ環境を分析する枠組み,イの VRIO 分析は経営資源の競争優位性を評価する枠組み,ウのバリューチェーン分析は自社の活動を機能別に分解して付加価値の源泉を探る手法。

ファイブフォース分析 業界の収益性を決める5つの競争要因として,業界内の競争(既存の競合企業どうしの敵対関係)を中心に,新規参入の脅威,代替品の脅威,売り手(供給業者)の交渉力,買い手(顧客)の交渉力を置いて分析する。 業界内の競争 既存企業どうし 新規参入の脅威 代替品の脅威 売り手の交渉力 買い手の交渉力
中心が業界内の競争。上下に脅威2つ,左右に交渉力2つ

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問26(表記を一部改変)

問27

フィージビリティスタディの説明はどれか。

正解 ア

解説

フィージビリティスタディ(実現可能性調査)は,事業やプロジェクトに本格的に投資する前に,技術面・採算面などから実現できるかどうかを調査・検証する評価活動。

イはデルファイ法,ウはブレーンストーミング,エはプロダクトライフサイクルの説明。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問27(表記を一部改変)

問28

IoT の技術として注目されている,エッジコンピューティングの説明として,最も適切なものはどれか。

正解 ア

解説

エッジコンピューティングは,クラウドにデータを送って処理するのではなく,端末に近い場所(エッジ)に演算資源を配置して処理する方式。通信の往復が減るので応答が速くなり,ネットワークに流れるデータ量も抑えられる。アが正しい。

イはウェアラブルコンピューティング,ウはグリッドコンピューティング(分散処理),エはエネルギーハーベスティングの説明。

エッジコンピューティング センサーなどの端末のデータを全部クラウドへ送って処理すると,往復に時間がかかり,回線のデータ量も増える。端末の近く(エッジ)に処理の資源を置いて先に処理すれば,応答が速くなり(低遅延),クラウドへ送るデータも減らせる。 クラウド エッジ 近くで処理 センサー1 センサー2 センサー3 要るものだけ 往復が短い → 低遅延 クラウドへ流すデータが減る
端末の近くで処理する → 速く,送るデータも少ない

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問28(表記を一部改変)

問29

損益計算資料から求められる損益分岐点売上高は,何百万円か。

損益計算資料(単位 百万円)。売上高500,材料費(変動費)200,外注費(変動費)100,製造固定費100,総利益100,販売固定費80,利益20。

正解 ウ

解説

変動費は材料費200+外注費100=300百万円,固定費は製造固定費100+販売固定費80=180百万円。

変動費率は 300÷500=0.6 なので,限界利益率は 1−0.6=0.4。

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率=180÷0.4=450百万円。

損益分岐点図表 横軸に売上高,縦軸に金額をとる。固定費は売上高に関係なく一定で,総費用は固定費に変動費を足したもの。売上高の線と総費用の線が交わる点が損益分岐点で,それより右は利益,左は損失になる。損益分岐点売上高は 固定費 ÷(1 − 変動費率)で求める。 売上高 金額 固定費 総費用 売上高 損益分岐点 損益分岐点売上高 利益 損失 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
売上高の線が総費用の線を越えたところから利益が出る

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問29(表記を一部改変)

問30

不正競争防止法の不正競争行為に該当するものはどれか。

正解 ウ

解説

不正競争防止法は,商標権の有無にかかわらず,不正の利益を得る目的でのドメイン名の取得・使用や,他人の商品形態を模倣した商品の譲渡などを不正競争行為として規制している。ウはコピー商品を販売して利益を得ており,これに該当する。

アは「偶然」であり,不正の利益を得る目的も他人に損害を加える目的も認められない。イは周知性の及ばない地方での販売で,混同が生じるおそれがない。エは正当な利益を得る目的が認められており,いずれも不正競争行為には当たらない。

出典:令和6年度 春期 高度試験・情報処理安全確保支援士試験 共通 午前Ⅰ 問30(表記を一部改変)

用語解説:著作権と知的財産権(特許・営業秘密・ライセンス)