平成31年度 春期に実施されたプロジェクトマネージャ試験
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問1
あるプロジェクトのステークホルダとして,プロジェクトスポンサ,プロジェクトマネージャ,プロジェクトマネジメントオフィス及びプロジェクトマネジメントチームが存在する。JIS Q 21500:2018(プロジェクトマネジメントの手引)によれば,組織としての標準化,プロジェクトマネジメントの教育訓練,プロジェクトの計画及びプロジェクトの監視などの役割を主として担うのはどれか。
- アプロジェクトスポンサ
- イプロジェクトマネージャ
- ウプロジェクトマネジメントオフィス正解
- エプロジェクトマネジメントチーム
正解 ウ
解説
JIS Q 21500:2018 は,プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)が担う活動として,標準化,プロジェクトマネジメントの教育訓練,プロジェクトの計画作成や監視などを挙げている。個々のプロジェクトを直接指揮するのではなく,組織として複数のプロジェクトを横断的に支える役割である。ウが正しい。
アのプロジェクトスポンサは,プロジェクトを許可し,経営的な決定を下し,資源を提供する立場。イのプロジェクトマネージャは,プロジェクトの活動を指揮し,管理し,完了させる責任を負う。エのプロジェクトマネジメントチームは,プロジェクトマネージャを補佐してマネジメントの作業を担う。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2
表は,RACI チャートを用いた,あるプロジェクトの責任分担マトリクスである。設計アクティビティにおいて,説明責任をもつ要員は誰か。
正解 エ
解説
RACI チャートでは,R(Responsible)が実行責任,A(Accountable)が説明責任,C(Consulted)が相談対応,I(Informed)が情報提供を表す。設計アクティビティの行で A が付いているのは野村なので,説明責任をもつのは野村で,エが正しい。
同じ行の阿部は R で実際に設計を行う担当,鈴木と田中は C で相談を受ける立場,伊藤と佐藤は I で結果を知らされる立場である。A は作業の結果に最終的な責任を負う人で,一つのアクティビティにつき1人に絞るのが原則なので,選択肢のように2人組になることはない。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)
問3
工程管理図表の特徴に関する記述のうち,ガントチャートのものはどれか。
- ア計画と実績の時間的推移を表現するのに適し,進み具合及びその傾向がよく分かり,プロジェクト全体の費用と進捗の管理に利用される。
- イ作業の順序や作業相互の関係を表現したり,重要作業を把握したりするのに適しており,プロジェクトの作業計画などに利用される。
- ウ作業の相互関係の把握には適さないが,作業計画に対する実績を把握するのに適しており,個人やグループの進捗管理に利用される。正解
- エ進捗管理上のマイルストーンを把握するのに適しており,プロジェクト全体の進捗管理などに利用される。
正解 ウ
解説
ガントチャートは,作業を縦に並べ,各作業の予定期間と実績を横棒で表す図である。計画に対して実績がどこまで進んでいるかが一目で分かるので,個人やグループの作業の進捗管理に向く。一方で,作業どうしの前後関係は図に表れないため,相互関係の把握には適さない。ウが正しい。
アは計画と実績の累積値の推移を曲線で表す S 字カーブなど。イは作業の順序や相互関係を表し重要作業(クリティカルパス)を把握するアローダイアグラム(PERT 図)。エはマイルストーンの予定と実績を示すマイルストーンチャートの説明である。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)
問4
プロジェクトのスケジュール管理で使用する“クリティカルチェーン法”の実施例はどれか。
- ア限りある資源とプロジェクトの不確実性に対応するために,合流バッファとプロジェクトバッファを設ける。正解
- イクリティカルパス上の作業に,生産性を向上させるための開発ツールを導入する。
- ウクリティカルパス上の作業に,要員を追加投入する。
- エクリティカルパス上の先行作業が終了する前に後続作業に着手し,並行して実施する。
正解 ア
解説
クリティカルチェーン法は,個々の作業の見積りに紛れ込んでいる余裕を取り上げてまとめ直し,資源の制約も織り込んだ最長経路(クリティカルチェーン)の末尾にプロジェクトバッファを,そこへ合流する経路の末尾に合流バッファを置く手法である。余裕を作業ごとに持たせず全体で共有する点が特徴で,アがこれに当たる。
イとウは,クリティカルパス上の作業に資源や道具を投入して期間を縮めるクラッシング。エは先行作業の完了を待たずに後続作業を並行させるファストトラッキング。いずれもスケジュール短縮技法ではあるが,バッファの置き方を扱うクリティカルチェーン法とは別のものである。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)
問5
JIS Q 21500:2018(プロジェクトマネジメントの手引)によれば,対象群“リスク”の活動内容のうち,プロセス“リスクへの対応”で実施するものはどれか。
- アプロジェクトの混乱を最小限にするために,リスク対応の有効性を評価しながらのリスク対応の進捗をレビューする。
- イプロジェクトの目標への脅威を軽減するために,プロジェクトの予算及びスケジュールに資源と活動を投入することによって,リスクを扱う。正解
- ウプロジェクトのライフサイクルを通じて,プロジェクトの目標に影響を与えることがあるリスク事象及びその特性の決定を繰り返す。
- エリスクの優先順位を定めるために,各リスクの発生確率及びそのリスクが発生した場合にプロジェクトの目標に及ぼす結果を推定する。
正解 イ
解説
JIS Q 21500:2018 の対象群“リスク”は,リスクの特定,リスクの評価,リスクへの対応,リスクの管理の四つのプロセスからなる。“リスクへの対応”は,脅威を減らし機会を高めるために,選んだ対応策に沿って予算やスケジュールに資源と活動を組み込むプロセスで,イがこれに当たる。
アは対応の進捗と有効性をレビューする“リスクの管理”。ウはライフサイクルを通じて潜在的なリスク事象とその特性を繰り返し決定する“リスクの特定”。エは発生確率と影響を推定して優先順位を付ける“リスクの評価”である。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)
問6
WBS を構成する個々のワークパッケージの進捗率を測定する方法のうち,ワークパッケージの期間が比較的長い作業に適した,重み付けマイルストーン法の説明はどれか。
- ア作業を開始したら50%,作業が完了したら100%というように,作業の“開始”と“完了”の2時点について,計上する進捗率を決めておく。
- イ設計書の作成作業において,“複雑な入出力に関する記述を終えたら70%とする”というように,計測者の主観で進捗率を決める。
- ウ設計書のレビューを完了したら60%,社内承認を得たら80%というように,あらかじめ設定した作業の区切りを過ぎるごとに計上する進捗率を決めておく。正解
- エ全部で10日間の作業のうち5日を経過したら50%というように,全作業期間に対する経過した作業期間の比で進捗率を決める。
正解 ウ
解説
重み付けマイルストーン法は,ワークパッケージの作業をいくつかの区切り(マイルストーン)に分け,“レビュー完了で60%,社内承認で80%”のように,区切りを過ぎるごとに計上する進捗率をあらかじめ決めておく方法である。期間の長い作業でも途中の進み具合を客観的に計上できる。ウが正しい。
アの“開始で50%,完了で100%”のように2時点だけで計上するのは固定比率法で,期間の短い作業に向く。イは計測者の主観で進捗率を決める方法で,客観性に欠ける。エは経過した期間の比で進捗率を決める方法で,実際の作業の出来高を反映しない。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)
問7
PMBOK ガイド 第6版によれば,“ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメント”で行う活動はどれか。
- ア交渉やコミュニケーションを通してステークホルダーの期待をマネジメントする。正解
- イステークホルダーの権限レベルとプロジェクト成果に関する懸念レベルに応じて,ステークホルダーを分類する。
- ウステークホルダーのリスク選好を決めるためのステークホルダー分析をする。
- エプロジェクト・コミュニケーション活動のための適切な取組み方と計画を策定する。
正解 ア
解説
PMBOK ガイド第6版の“ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメント”は実行のプロセス群に属し,ステークホルダーとのコミュニケーションや交渉を通じて,その期待に応え,課題に対処し,適切な関与を促すプロセスである。アが正しい。
イの権限と懸念(関心)のレベルに応じてステークホルダーを分類するのと,ウのステークホルダー分析は,立ち上げのプロセス群の“ステークホルダーの特定”で行う。エのコミュニケーション活動の取組み方と計画を策定するのは,計画のプロセス群の“コミュニケーション・マネジメントの計画”である。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)
問8
あるシステムの設計から結合テストまでの作業について,開発工程ごとの見積工数を表1に,開発工程ごとの上級技術者と初級技術者の要員割当てを表2に示す。上級技術者は,初級技術者に比べて,プログラム作成・単体テストにおいて2倍の生産性を有する。表1の見積工数は,上級技術者の生産性を基に算出している。
全ての開発工程に対して,上級技術者を1人追加して割り当てると,この作業に要する期間は何か月短縮できるか。ここで,開発工程の期間は重複させないものとし,要員全員が1か月当たり1人月の工数を投入するものとする。
正解 エ
解説
工程ごとの期間を,見積工数を1か月当たりの投入量で割って求める。初級技術者はプログラム作成・単体テストで上級技術者の半分の生産性なので,0.5人分として数える。現在は,設計 6÷2=3か月,プログラム作成・単体テスト 12÷(2+2×0.5)=4か月,結合テスト 12÷2=6か月で,合計13か月。
上級技術者を1人ずつ追加すると,設計 6÷3=2か月,プログラム作成・単体テスト 12÷(3+1)=3か月,結合テスト 12÷3=4か月で,合計9か月になる。短縮できるのは 13−9=4か月で,エが正しい。初級技術者を上級と同じ1人分と数えると,プログラム作成・単体テストは 12÷4=3か月から 12÷5=2.4か月になり,短縮は3.4か月と選択肢に合わない。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)
問9
工程別の生産性が次のとおりのとき,全体の生産性を表す式はどれか。
〔工程別の生産性〕
- 設計工程:X ステップ/人月
- 製造工程:Y ステップ/人月
- 試験工程:Z ステップ/人月
正解 エ
解説
全体の生産性は,全工程を通した開発規模を,全工程の工数の合計で割った値である。規模を S ステップとすると,各工程の工数は S÷X,S÷Y,S÷Z 人月なので,全体の生産性は S÷(S÷X+S÷Y+S÷Z)=1÷(1÷X+1÷Y+1÷Z)となる。エが正しい。
同じ S ステップを三つの工程が順に扱うので,工程ごとの生産性を足し合わせる(ア)ことも,単純に平均する(イ)こともできない。ウは全工程の工数を規模で割った“1ステップ当たりの人月”で,生産性の逆数に当たる。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)
問10
どのリスクがプロジェクトに対して最も影響が大きいかを判断するのに役立つ定量的リスク分析とモデル化の技法として,感度分析がある。感度分析の結果を示した次の図を何と呼ぶか。
- ア確率分布
- イデシジョンツリーダイアグラム
- ウトルネード図正解
- エリスクブレークダウンストラクチャ
正解 ウ
解説
感度分析では,各リスクの不確実な要素を一つずつ変化させたとき,プロジェクトの目標(コストなど)がどれだけ振れるかを求める。その結果を,影響の大きいリスクから順に上から横棒で並べると,上が広く下が狭い竜巻(トルネード)のような形になる。これをトルネード図と呼ぶ。ウが正しい。
アの確率分布は,ある値がどれくらいの確率で起こるかを表したもの。イのデシジョンツリーダイアグラムは,選択肢とその結果を枝分かれで表し期待値を比べる図。エのリスクブレークダウンストラクチャ(RBS)は,リスクの発生源を分類して階層的に表したものである。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)
問11
プロジェクトマネジメントで使用する分析技法のうち,傾向分析の説明はどれか。
- ア個々の選択肢とそれぞれを選択した場合に想定されるシナリオの関係を図に表し,それぞれのシナリオにおける期待値を計算して,最善の策を選択する。
- イ個々のリスクが現実のものとなったときの,プロジェクトの目標に与える影響の度合いを調べる。
- ウ時間の経過に伴うプロジェクトのパフォーマンスの変動を分析する。正解
- エ発生した障害とその要因の関係を魚の骨のような図にして分析する。
正解 ウ
解説
傾向分析は,時間の経過に伴ってプロジェクトのパフォーマンスがどう変わってきたかを分析する技法。ある時点の値だけでなく変化の向きを見ることで,このままいくとどうなるかを予測できる。
アはディシジョンツリー分析,イは個々のリスクの影響度を調べる定性的リスク分析,エは特性要因図(フィッシュボーン図)による分析である。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)
問12
PMBOK ガイド 第6版によれば,WBS の構成要素であるワーク・パッケージに関する記述のうち,適切なものはどれか。
- アワーク・パッケージとその一つ上位の成果物との関係は,1対1である。
- イワーク・パッケージは,OBS(組織ブレークダウン・ストラクチャー)のチームに,担当する人員を割り当てたものである。
- ウワーク・パッケージは,通常,アクティビティに分解される。正解
- エワーク・パッケージは,プロジェクトに関連がある成果物をまとめたものである。
正解 ウ
解説
PMBOK ガイド第6版では,ワーク・パッケージは WBS の最下位の要素で,コストや期間を見積もり管理できる単位である。スケジュール・マネジメントの“アクティビティの定義”で,ワーク・パッケージは作業を完了するためのアクティビティに分解される。ウが正しい。
アは誤りで,一つ上位の成果物は通常は複数のワーク・パッケージから構成され,1対1とは限らない。イは誤りで,ワーク・パッケージは作業の単位であり,担当者との対応付けは責任分担マトリックスなどで行う。エは誤りで,成果物をまとめたものは WBS の上位の要素に当たり,ワーク・パッケージはそれを分解した最下位の単位である。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)
問13
新しく編成するプロジェクトチームの開発要員投入計画に基づいて PC をレンタルで調達する。調達の条件を満たすレンタル費用の最低金額は何千円か。
〔調達の条件〕
- (1) PC のレンタル契約は月初日から月末日までの1か月単位であり,日割りによる精算は行わない。
- (2) PC 1台のレンタル料金は月額5千円である。
- (3) 台数にかかわらず,レンタル PC の受入れ時のセットアップに2週間,返却時のデータ消去に1週間を要し,この期間はレンタル期間に含める。
- (4) セットアップとデータ消去は,プロジェクトチームの開発要員とは別の要員が行う。
- (5) 開発要員は月初日に着任し,月末日に離任する。
- (6) 開発要員の役割にかかわらず,共通仕様の PC を1人が1台使用する。
- (7) レンタル期間中に PC を他の開発要員に引き渡す場合,データ消去,セットアップ及び引渡しの期間は不要である。
正解 イ
解説
開発要員は月初日に着任するので,2週間のセットアップを済ませるには前の月からレンタルする必要がある。離任は月末日で,1週間のデータ消去は次の月に掛かる。日割りはないので,PC を使う期間の前後に1か月ずつ料金が発生する。要員の間で引き渡すときは空きが要らないので,台数が一時的に減る月も,返さずに持ち続けるほうが安くなることがある。
必要台数を下から積み上げる。2台は2〜11月に使うので1〜12月の12か月,次の2台は3〜11月で2〜12月の11か月,次の3台は4〜9月で3〜10月の8か月,次の2台は6〜9月で5〜10月の6か月。最後の2台は6・7月と9月に使い8月は空くが,8月に返すと返却と再レンタルで7か月分掛かるので,5〜10月の6か月借り続ける。合計は 24+22+24+12+12=94台月で,94×5千円=470千円。イが正しい。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)
問14
顧客に提出した進捗状況の報告書に対して,顧客から成果物ごとの進捗状況についての問合せが繰り返しあった。今後このような事態が発生しないようにするためには,プロジェクトのコミュニケーションマネジメント計画書のどの内容を是正する必要があるか。
- ア情報伝達の手段
- イ情報を受け取る人又はグループ
- ウ情報を配布するスケジュール
- エ伝達すべき情報の内容,表現形式及び詳細度正解
正解 エ
解説
顧客は成果物ごとの進捗を知りたいのに,提出した報告書がその粒度で書かれていなかったため,問合せが繰り返されたと考えられる。コミュニケーションマネジメント計画書で,伝達すべき情報の内容,表現形式及び詳細度を見直し,成果物ごとの進捗が分かる報告にするのが適切な是正で,エが正しい。
アの伝達の手段,イの受け取る人,ウの配布のスケジュールを変えても,報告書に書かれている情報の中身と細かさが同じなら,成果物ごとの進捗が分からないという問題は解消しない。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)
問15
PMBOK ガイド第6版によれば,プロジェクト・スコープ・マネジメントにおいて作成するプロジェクト・スコープ記述書の説明のうち,適切なものはどれか。
- アインプット情報として与えられる WBS やスコープ・ベースラインを用いて,プロジェクトのスコープを記述する。
- イプロジェクトのスコープに含まれないものは,記述の対象外である。
- ウプロジェクトの成果物と,これらの成果物を生成するために必要な作業について記述する。正解
- エプロジェクトの予算見積りやスケジュール策定を実施して,これらをプロジェクトの前提条件として記述する。
正解 ウ
解説
PMBOK ガイド第6版のプロジェクト・スコープ記述書は,“スコープの定義”のアウトプットで,プロジェクトの成果物と,それを生み出すために必要な作業を記述する。成果物の受入れ基準や,スコープから除外する事項,制約条件,前提条件なども含む。ウが正しい。
アは誤りで,WBS はプロジェクト・スコープ記述書を基に作成するものであり,スコープ記述書とWBSなどを合わせたものがスコープ・ベースラインになる。イは誤りで,スコープに含まれない除外事項も明記して認識のずれを防ぐ。エは誤りで,予算の見積りやスケジュールの策定はコストやスケジュールのマネジメントのプロセスで行う。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)
問16
テストケースを作成する技法のうち,直交表によるテストケースの作成条件を緩和し,2因子間の取り得る値の組合せが同一回数でなくても,1回以上存在すればよいとしてテストケースを設計する技法はどれか。
- アAll-Pair 法(ペアワイズ法)正解
- イ決定表
- ウ原因結果グラフ法
- エ同値分割法
正解 ア
解説
All-Pair 法(ペアワイズ法)は,どの2因子を取り出しても,その値の組合せが少なくとも1回は現れるようにテストケースを作る技法である。直交表は2因子間の組合せがどれも同じ回数ずつ現れることを求めるが,その条件を緩めて“1回以上”とすることで,テストケースの数をさらに減らせる。アが正しい。
イの決定表は,条件の組合せとそれに対応する動作を表に整理する技法。ウの原因結果グラフ法は,入力(原因)と出力(結果)の論理関係をグラフに表し,そこから決定表を作る技法。エの同値分割法は,入力を同じように処理されるグループに分け,各グループから代表値を選ぶ技法である。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)
問17
マッシュアップに該当するものはどれか。
- ア既存のプログラムから,そのプログラムの仕様を導き出す。
- イ既存のプログラムを部品化し,それらの部品を組み合わせて,新規プログラムを開発する。
- ウクラスライブラリを利用して,新規プログラムを開発する。
- エ公開されている複数のサービスを利用して,新たなサービスを提供する。正解
正解 エ
解説
マッシュアップは,Web API などで公開されている複数のサービスを組み合わせて,新しいサービスを作り出す手法である。例えば地図サービスと店舗情報のサービスを組み合わせて,店舗の場所を地図に示すサービスを作る。エが正しい。
アは既存のプログラムを解析して仕様を導き出すリバースエンジニアリング。イは既存のプログラムを部品化して組み合わせるソフトウェア部品の再利用,ウはクラスライブラリを使った開発で,いずれも自組織のプログラム資産を再利用する方法であり,外部に公開されたサービスを組み合わせるマッシュアップとは異なる。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)
問18
企業間で,商用目的で締結されたソフトウェアの開発請負契約書に著作権の帰属に関する内容が記載されていない場合の著作権の帰属先として,適切なものはどれか。ここで,ソフトウェアは請負人が開発するものとする。
- ア請負人,注文者のどちらにも帰属しない。
- イ請負人と注文者が共有する。
- ウ請負人に帰属する。正解
- エ注文者に帰属する。
正解 ウ
解説
著作権は,契約で特に定めない限り,著作物を実際に創作した者に帰属する。請負契約で請負人がソフトウェアを開発した場合,著作権は請負人に帰属し,注文者は代金を支払っても当然には著作権を得ない。ウが正しい。
注文者が著作権を得たいときは,契約書に著作権の譲渡を明記しておく必要がある。なお,会社の従業員が職務として作成したものを会社の著作物とする職務著作は,雇用関係などの指揮監督下で作成された場合の規定であり,独立した事業者どうしの請負契約には当てはまらない。ア・イ・エはいずれも誤りである。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)
問19
サービスマネジメントにおいて,事業関係マネージャが責任をもつ事項として,適切なものはどれか。
- アサービスカタログの認可
- イサービス提供者と個別の供給者との関係の管理
- ウ将来の事業上の要求事項の理解及び計画立案正解
- エ容量・能力及びパフォーマンスのデータの分析及びレビュー
正解 ウ
解説
事業関係マネージャは,サービス提供者と顧客の関係を維持する役割で,顧客の事業を理解し,将来の事業上の要求事項を把握して,サービスの計画に反映させることに責任をもつ。ウが正しい。
イのサービス提供者と個別の供給者との関係の管理は,供給者管理の責任者が担う。エの容量・能力及びパフォーマンスのデータの分析とレビューは,容量・能力管理の責任者が担う。アのサービスカタログは,サービスの内容を顧客に示す文書で,その維持や承認はサービスレベル管理などの担当が扱い,事業関係マネージャの中心的な責任ではない。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)
問20
データの追加・変更・削除が,少ないながらも一定の頻度で行われるデータベースがある。このデータベースのフルバックアップを磁気テープに取得する時間間隔を今までの2倍にした。このとき,データベースのバックアップ又は復旧に関する記述のうち,適切なものはどれか。
- ア復旧時に行うログ情報の反映の平均処理時間が約2倍になる。正解
- イフルバックアップ取得1回当たりの磁気テープ使用量が約2倍になる。
- ウフルバックアップ取得1回当たりの磁気テープ使用量が約半分になる。
- エフルバックアップ取得の平均処理時間が約2倍になる。
正解 ア
解説
フルバックアップの間隔を2倍にすると,直前のバックアップから障害発生までにたまるログの量も約2倍になる。復旧はバックアップを戻してからログを反映(ロールフォワード)して行うので,その反映にかかる時間が約2倍になる。
イ・ウ・エは誤り。フルバックアップは毎回データベース全体を取得するものであり,1回当たりのテープ使用量も取得時間もデータベースの大きさで決まる。更新は「少ないながらも一定の頻度」なので,間隔を変えてもデータベースの大きさはほとんど変わらない。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)
問21
RFI を説明したものはどれか。
- アサービス提供者と顧客との間で,提供するサービスの内容,品質などに関する保証範囲やペナルティについてあらかじめ契約としてまとめた文書
- イシステム化に当たって,現在の状況において利用可能な技術・製品,ベンダにおける導入実績など実現手段に関する情報提供をベンダに依頼する文書正解
- ウシステムの調達のために,調達側からベンダに技術的要件,サービスレベル要件,契約条件などを提示し,指定した期限内で実現策の提案を依頼する文書
- エ要件定義との整合性を図り,利用者と開発要員及び運用要員の共有物とするために,業務処理の概要,入出力情報の一覧,データフローなどをまとめた文書
正解 イ
解説
RFI(Request For Information:情報提供依頼書)は,システム化を検討する初期の段階で,利用可能な技術や製品,導入実績などの情報の提供をベンダに依頼する文書である。集めた情報を基に要件を固め,その後に提案を求める。イが正しい。
アはサービスの内容や品質の保証範囲,未達時のペナルティを合意する SLA(サービスレベル合意書)。ウは要件や契約条件を示して期限内に提案を求める RFP(提案依頼書)。エは業務処理の概要や入出力情報,データフローをまとめ,利用者と開発・運用の要員が共有する設計書の説明である。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)
問22
下請代金支払遅延等防止法の対象となる下請事業者から納品されたプログラムに,下請事業者側の事情を原因とする重大なバグが発見され,プログラムの修正が必要となった。このとき,支払期日を改めて定めようとする場合,下請代金支払遅延等防止法で認められている期間(60日)の起算日はどれか。
- ア当初のプログラムの検査が終了した日
- イ当初のプログラムを下請事業者に返却した日
- ウ修正済プログラムが納品された日正解
- エ修正済プログラムの検査が終了した日
正解 ウ
解説
下請代金支払遅延等防止法は,下請代金の支払期日を「給付を受領した日から起算して60日以内」と定めている。下請事業者の責めに帰すべき理由でやり直しをさせた場合には,やり直した給付を改めて受領した日を新たな起算日にできる。本問はバグの原因が下請事業者側の事情なので,起算日は修正済プログラムが納品された日であり,ウが正しい。
起算日はあくまで「受領した日」であって検査が終わった日ではないので,アとエは誤り。イの返却した日は受領が行われた日ではないので起算日にならない。なお,親事業者側の都合でやり直させた場合は起算日を動かせず,当初の受領日から60日以内に支払わなければならない。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)
問23
技術者倫理の遵守を妨げる要因の一つとして,集団思考というものがある。集団思考の説明として,適切なものはどれか。
- ア自分とは違った視点から事態を見ることができず,客観性に欠けること
- イ組織内の権威に無批判的に服従すること
- ウ正しいことが何かは知っているが,それを実行する勇気や決断力に欠けること
- エ強い連帯性をもつチームが批判的思考を欠くことによって,不合理な合意へと達すること正解
正解 エ
解説
集団思考は,結束の強いチームで,全員一致を保とうとする圧力が働いて異論が出にくくなり,批判的に検討しないまま不合理な結論に合意してしまう現象である。エが正しい。
アの自分と違う視点から事態を見られず客観性を欠くのは自己中心的な傾向,イの組織内の権威に無批判に従うのは権威への無批判な服従,ウの正しいことを知っていても実行する勇気や決断力に欠けるのは意志の弱さで,いずれも技術者倫理の遵守を妨げる要因として挙げられる別の項目である。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)
問24
NIST が制定した,AES における鍵長の条件はどれか。
- ア128ビット,192ビット,256ビットから選択する。正解
- イ256ビット未満で任意に指定する。
- ウ暗号化処理単位のブロック長よりも32ビット長くする。
- エ暗号化処理単位のブロック長よりも32ビット短くする。
正解 ア
解説
AES(Advanced Encryption Standard)は,NIST が米国の標準暗号として制定した共通鍵暗号方式で,ブロック長は128ビット,鍵長は128ビット,192ビット,256ビットの三つから選ぶ。アが正しい。鍵長が長いほど暗号化の繰返し処理(ラウンド)の回数が増え,安全性も高くなる。
イのように256ビット未満で任意に決めることはできない。ウとエのように鍵長をブロック長から32ビット増減させるという決まりもなく,ブロック長は鍵長にかかわらず128ビットで一定である。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)
問25
DNSSEC の機能はどれか。
- アDNS キャッシュサーバの設定によって,再帰的な問合せを受け付ける送信元の範囲が最大になるようにする。
- イDNS サーバから受け取るリソースレコードに対するディジタル署名を利用して,リソースレコードの送信者の正当性とデータの完全性を検証する。正解
- ウISP などに設置されたセカンダリ DNS サーバを利用して DNS コンテンツサーバを二重化することによって,名前解決の可用性を高める。
- エ共通鍵暗号技術とハッシュ関数を利用したセキュアな方法によって,DNS 更新要求が許可されているエンドポイントを特定して認証する。
正解 イ
解説
DNSSEC は,DNS の応答に含まれるリソースレコードにディジタル署名を付け,受け取った側がその署名を検証することで,応答が正当な権威 DNS サーバから送られたものであり,途中で改ざんされていないことを確かめる仕組みである。DNS キャッシュポイズニングへの対策になる。イが正しい。
アのように再帰的な問合せを受け付ける範囲を広げると,オープンリゾルバとなって DNS リフレクション攻撃に悪用されるおそれがあり,逆効果である。ウは権威 DNS サーバの冗長化による可用性の向上。エは共通鍵とハッシュ関数を使って DNS の更新要求などの送信者を認証する TSIG の説明である。
出典:平成31年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)