平成25年度 秋期 午後Ⅰ

平成25年度 秋期に実施されたITサービスマネージャ試験 午後Ⅰの全3問(記述式)です。事例本文・設問・解答例と解説をそのまま読めます。

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問1 システムの移行

システムの移行に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

C 社は,日曜大工用品などを扱うホームセンタを首都圏に 10 店舗展開している。各店舗の営業時間は 10 時〜23 時で,年中無休としている。C 社の事業年度は 4 月から翌年 3 月までで,決算月の 3 月には毎年,全店舗で決算セールを行っており,3 月の来店客数と売上高は通常月の約 2 倍となっている。

〔販売管理システムの概要〕

C 社では,商品の売上管理・発注管理及び店舗ごとの売上情報管理のために,販売管理システムを使用している。現在,販売管理システムの本部サーバ(以下,現本部サーバという)は,Y 市にあるデータセンタ(以下,Y 市拠点という)で稼働している。Y 市拠点は施設の老朽化が進んだことから,Z 市に新設するデータセンタ(以下,Z 市拠点という)に本部サーバを移転(以下,移転切替えという)することになった。Z 市拠点のシステム構成は,Y 市拠点と同様とする。ただし,Z 市拠点には,現本部サーバよりも高性能のサーバを導入する。これによって,現本部サーバで 120 分掛かっている夜間バッチ処理が,Z 市拠点に新たに導入されるサーバ(以下,新本部サーバという)では 80 分に短縮される見込みである。情報システム部では,移転切替え前に Z 市拠点に新本部サーバを導入し,各種テストを実施する予定である。

移転切替え時の販売管理システムの構成を図 1 に,販売管理システムの処理概要を表 1 に示す。

VPN を中心とした構成図。Y 市拠点では現本部サーバが現ルータを介して VPN につながる。Z 市拠点では新本部サーバが新ルータを介して VPN につながる。店舗1から店舗 n では,それぞれ店舗サーバが店舗ルータを介して VPN につながる。本社では本社業務端末が本社ルータを介して VPN につながる。
図 1 移転切替え時の販売管理システムの構成
処理名称と処理概要の表。売上情報処理:各店舗サーバで,1 回の販売ごとに商品コード,売上金額などから成る売上情報レコードを生成する。各店舗サーバに蓄積された売上情報レコードは,日次で集約処理し,23 時 30 分から 24 時までの間に当日の売上情報集約ファイルとして本部サーバに送信する。売上情報レコードのバックアップのために,毎週月曜日の 8 時に各店舗サーバから本部サーバに,過去 1 週間分の売上情報レコードから成る売上情報ファイルを送信する。発注情報処理:商品の売上及び在庫の状況に応じて,店員が商品の発注数を算定し,8 時から 24 時までのオンライン業務時間帯に,商品の発注情報を本部サーバに随時送信する。各店舗サーバから送信された発注情報に基づいて,本部サーバの発注情報ファイル及び経営者が意思決定に使用する経営情報データベース(以下,経営情報 DB という)を更新する。本社社員が,更新された発注情報ファイルを本社業務端末から参照し,仕入先に対して商品を発注する。夜間バッチ処理:各店舗サーバから送信された売上情報集約ファイルに基づいて,経営情報 DB を更新する。
表 1 販売管理システムの処理概要

〔本部サーバの移転切替え方式の検討〕

IT サービスマネージャの J 氏は,本部サーバの移転切替え方式について,表 2 に示す二つの案を検討した。

案1と案2の概略を示す表。案1:Z 市拠点設置機器には,Y 市拠点設置機器とは異なる IP アドレスを付与する。Y 市拠点のデータを Z 市拠点に移行してから,移転切替えまでの一定期間は,両拠点とも VPN に接続された状態で並行稼働させる。店舗設置機器が一時的に Z 市拠点設置機器と接続されるように設定を変更し,オンライン業務開始前の早朝に,店舗サーバと新本部サーバ間で発注情報送信テストを実施する。両拠点間には,現 VPN とは別に回線を敷設する。この回線を使って,現本部サーバが発注情報及び売上情報集約ファイルを店舗から受信すると直ちに新本部サーバに転送する機能を構築し,新本部サーバで現本部サーバと同一の処理を行う。移転切替え日に,店舗設置機器が Z 市拠点設置機器と接続されるように設定を変更するとともに,Y 市拠点での処理を終了し,Z 市拠点で本番稼働させる。案2:Z 市拠点と Y 市拠点の両方を同時には VPN に接続させない前提で,両拠点に同一の IP アドレスを付与する。夜間のオフライン業務時間帯に,Y 市拠点を VPN 接続から切り離して Z 市拠点を VPN に接続し,店舗サーバと新本部サーバ間で発注情報送信テストを実施する。移転切替え日に,Y 市拠点を VPN 接続から切り離して Z 市拠点を VPN に接続するとともに,現本部サーバから新本部サーバにデータを移送してデータ移行を行い,Z 市拠点で本番稼働させる。
表 2 本部サーバの移転切替え方式案の概略

J 氏は,案 1,2 のリスクと,それぞれに考えられる対策について検討した。

情報システム部では,リスク評価に続いて両案の作業工数面での評価を行った。その結果,両拠点間でのデータ転送機能の構築及び店舗設置機器の設定変更作業が不要な案 2 を採用することにした。

〔全体スケジュールの検討〕

情報システム部では,本部サーバの移転切替え方式の確定後,移転切替え日について,各機器の搬入時期,移行に伴う要員計画及び作業スケジュールを考慮して検討した。その結果,早ければ 3 月に移転切替えが可能であったが,4 月の第 4 水曜日に決定した。この決定を受け,J 氏は移転切替えの全体スケジュールを図 2 のとおり策定した。

12 月から 4 月までのスケジュール表。機器搬入は 12 月初め。機器環境構築作業は 12 月前半から中旬。機能確認テストは 12 月中旬から 2 月初め。発注情報送信テストは 1 月後半。総合テストは 2 月中旬から 2 月末。切替えリハーサルは 4 月前半。移転切替えは 4 月後半。
図 2 移転切替えの全体スケジュール

〔移転切替え当日の作業スケジュールの検討〕

J 氏は,移転切替え当日の作業スケジュールについて検討した。J 氏が策定した,移転切替え当日の作業スケジュール案を表 3 に示す。

開始時刻・Y 市拠点での作業・Z 市拠点での作業・所要時間(分)の表。オンライン業務終了。0 時 00 分:Y 市拠点で夜間バッチ処理,120 分。2 時 00 分:移転切替え作業開始。2 時 00 分:Y 市拠点で現ルータ電源切断,10 分。2 時 10 分から Y 市拠点で現本部サーバのデータ取得・確認:2 時 10 分 発注情報ファイル 20 分,2 時 30 分 売上情報集約ファイル 20 分,2 時 50 分 売上情報ファイル(注1)40 分,3 時 30 分 経営情報 DB 20 分。3 時 50 分:Z 市拠点へ現本部サーバのデータを運搬,50 分。4 時 40 分から Z 市拠点で新本部サーバにデータ投入:4 時 40 分 発注情報ファイル 10 分,4 時 50 分 売上情報集約ファイル 10 分,5 時 00 分 売上情報ファイル(注1)30 分,5 時 30 分 経営情報 DB 10 分。5 時 40 分:Z 市拠点で新ルータ電源投入(注2)・起動確認,10 分。5 時 50 分:Z 市拠点で作業確認,60 分。6 時 50 分:移転切替え作業完了。8 時 00 分:Z 市拠点でオンライン業務開始。注1)バックアップのために,各店舗サーバから送信された売上情報ファイル。注2)VPN 側の切替えは通信事業者と調整済みである。
表 3 移転切替え当日の作業スケジュール案

移転切替え作業は 2 時に開始し,最初に現ルータの電源切断を行った後,データ移行を行う。移行対象データの Y 市拠点から Z 市拠点への移送方式として,テープ媒体にデータを取得して社用車で運搬する方式が採用された。移行対象データは,表 4 に示す 4 種類である。

項番とデータ名称の表。項番1 発注情報ファイル,項番2 売上情報集約ファイル,項番3 売上情報ファイル(注1),項番4 経営情報 DB。注1)バックアップのために,各店舗サーバから送信された売上情報ファイル。
表 4 移行対象データ

テープ媒体に順次データを取得し,全ての移行対象データの取得完了後,Z 市拠点へ運搬する。運搬には 30 分掛かるが,20 分の余裕を見込んだ。

表 3 の作業スケジュール案をチェックした情報システム部の D 部長は,J 氏に対して次の 2 点について指摘した。

出題趣旨(IPA)

ITサービスマネージャは,システムの移行に際し,各種計画を立案し,安全確実に実行する必要がある。本問では,様々な条件を考慮しながら,移行計画を立案する能力,移行方式を策定する能力,切替えの実施方法に関わる能力など,サービスの移行に関する能力を問う。

設問と解答例

設問1 50字以内

〔本部サーバの移転切替え方式の検討〕について,本文中の下線(ア)の設定変更作業の切り戻しを忘れ,Z 市拠点に接続したままオンライン業務を実行した場合に,インシデントが発生する。この場合のインシデントの内容を,業務に及ぼす影響の観点から 50 字以内で述べよ。

解答例(3通り)

  • 現本部サーバの発注情報ファイルが更新されず,仕入先に対して正しく商品発注が行われない。
  • 新本部サーバの発注情報ファイルが更新されてしまい,仕入先に対して正しく商品発注が行われない。
  • 本番稼働前の新本部サーバで発注情報処理を行ってしまい,仕入先に対して商品発注が行われない。
解説

本文の根拠

表 2 案2

夜間のオフライン業務時間帯に,Y 市拠点を VPN 接続から切り離して Z 市拠点を VPN に接続し,店舗サーバと新本部サーバ間で発注情報送信テストを実施する。

表 2 案1

店舗設置機器が一時的に Z 市拠点設置機器と接続されるように設定を変更し,オンライン業務開始前の早朝に,店舗サーバと新本部サーバ間で発注情報送信テストを実施する。

表 1 発注情報処理

各店舗サーバから送信された発注情報に基づいて,本部サーバの発注情報ファイル及び経営者が意思決定に使用する経営情報データベース(以下,経営情報 DB という)を更新する。本社社員が,更新された発注情報ファイルを本社業務端末から参照し,仕入先に対して商品を発注する。

下線(ア)は案 1 のテストのあとの切り戻しである。戻し忘れると,店舗の発注情報はまだ本番でない新本部サーバに送られ続け,現本部サーバの発注情報ファイルは更新されない。

本社社員は現本部サーバの発注情報ファイルを見て仕入先に発注している。店舗が送った発注がそこに載らないので,仕入先に正しく発注できず,店舗に商品が届かなくなる。講評のとおり,「データベースが更新されない」で止めず,業務への影響まで書く。

50字。解答例は「現本部サーバの発注情報ファイルが更新されず,仕入先に対して正しく商品発注が行われない。」で42字など3つ。どれも「仕入先への発注が正しく行われない」まで書いている。

採点講評(IPA)

設問1は,業務への影響の観点からインシデントの内容を問うたものの,単にデータベースが更新されないといったシステム上の事象の指摘にとどまった解答が少なからず見られた。また,設問2についても,システム作業におけるリスクの観点からの解答が多かった。ITサービスマネージャとして,顧客へのサービスを管理及び提供する視点の重要性を認識して,業務を遂行してほしい。

設問2 55字以内

〔全体スケジュールの検討〕について,移転切替え日を,3 月ではなく 4 月に決定した理由を,55 字以内で具体的に述べよ。

解答例(2通り)

  • C社の売上高が多い時期を避けることで,移転切替えで不具合が発生した場合の業務影響を小さくできるから
  • 来店客が多い時期を避けることで,移転切替えで不具合が発生した場合の業務影響を小さくできるから
解説

本文の根拠

冒頭

C 社の事業年度は 4 月から翌年 3 月までで,決算月の 3 月には毎年,全店舗で決算セールを行っており,3 月の来店客数と売上高は通常月の約 2 倍となっている。

〔全体スケジュールの検討〕

その結果,早ければ 3 月に移転切替えが可能であったが,4 月の第 4 水曜日に決定した。

3 月は決算セールで,来店客数も売上高もふだんの約 2 倍になる。この月に切り替えて不具合が起きれば,発注や売上の管理が滞り,影響が一番大きくなる。

スケジュールの上では 3 月でも間に合ったが,あえて繁忙期を避けて 4 月にした。講評のとおり,システム作業のリスクではなく,顧客へのサービスや業務への影響の観点から理由を書く。

55字。解答例は「C社の売上高が多い時期を避けることで,移転切替えで不具合が発生した場合の業務影響を小さくできるから」で48字。「売上高(来店客)が多い時期を避ける」と「不具合時の業務影響を小さくする」をつなげる。

設問3(1) 55字以内

本文中の下線(イ)を判断するための方策を,55 字以内で述べよ。

解答例(2通り)

  • 移行対象データ4種類のデータ件数が,現本部サーバと新本部サーバで一致していることを確認する。
  • 移行対象データ4種類のデータ件数が,テープ媒体と新本部サーバで一致していることを確認する。
解説

本文の根拠

〔移転切替え当日の作業スケジュールの検討〕

テープ媒体に順次データを取得し,全ての移行対象データの取得完了後,Z 市拠点へ運搬する。

表 4

項番1 発注情報ファイル,項番2 売上情報集約ファイル,項番3 売上情報ファイル(注1),項番4 経営情報 DB。

データは現本部サーバからテープに取り,運んで新本部サーバに入れる。途中で抜けや取り違えがあれば,入れた先の件数が元と合わなくなる。

移行対象の 4 種類それぞれについて,元の現本部サーバ(またはテープ)の件数と,新本部サーバに入った件数が一致しているかを確かめれば,漏れがないと判断できる。

55字。解答例は「移行対象データ4種類のデータ件数が,現本部サーバと新本部サーバで一致していることを確認する。」で45字。「4 種類」「件数」「どことどこを比べるか」を入れる。

採点講評(IPA)

設問3(1)は,多くの受験者が移行対象データの現新比較には着目できていたが,移転切替え当日に拠点間で連絡を取りながら実施する具体的内容に欠く解答が目立った。(3)は,設問の文中で除外対象として挙げているにも関わらず,移行対象データの移送方式を指摘する解答も見られた。移行計画の立案に当たり,考慮すべき前提条件を正確に把握することの重要性を認識してほしい。

設問3(2)

本文中の下線(ウ)について,移転切替えの前日までに移行可能なデータはどれか。表 4 の移行対象データから選び,項番で答えよ。

解答例

  • 3
解説

本文の根拠

表 1 売上情報処理

売上情報レコードのバックアップのために,毎週月曜日の 8 時に各店舗サーバから本部サーバに,過去 1 週間分の売上情報レコードから成る売上情報ファイルを送信する。

〔全体スケジュールの検討〕

4 月の第 4 水曜日に決定した。

表 3

2 時 50 分 売上情報ファイル(注1)40 分

前日までに移せるのは,切替えまでに中身が変わらないデータである。発注情報ファイルはオンライン中に随時,売上情報集約ファイルは毎晩,経営情報 DB は毎晩のバッチで更新されるので,当日まで変わり続ける。

売上情報ファイルだけは,毎週月曜日の 8 時に 1 週間分がまとめて送られてくる。切替えは水曜日なので,その週の月曜日に届いたあとは水曜日まで変わらない。月曜日 8 時以降,前日までに移しておける。

答えは項番「3」。表 3 で一番時間の掛かる 40 分と 30 分の作業なので,当日の短縮効果も大きい。

設問3(3)(a) 55字以内

移転切替え作業完了時刻を前倒しするための方策を,55 字以内で述べよ。ただし,移行対象データの移送方式の工夫は除くものとする。

解答例(4通り)

  • Y市拠点で実行予定の夜間バッチ処理を,データ移行を実施した後にZ市拠点で実行する。
  • 現ルータ電源切断作業を,データ移行作業と並行して実施する。
  • 新ルータ電源投入・起動確認作業を前倒しし,データ移行作業と並行して実施する。
  • 現ルータ電源切断作業と新ルータ電源投入・起動確認作業を,データ移行作業と並行して実施する。

〔備考〕同じ群中の組合せとする(ア群:夜間バッチ処理をZ市拠点で実行→(b)40,イ群:ルータ作業のどちらかをデータ移行と並行→(b)10,ウ群:ルータ作業の両方をデータ移行と並行→(b)20)

解説

本文の根拠

〔販売管理システムの概要〕

これによって,現本部サーバで 120 分掛かっている夜間バッチ処理が,Z 市拠点に新たに導入されるサーバ(以下,新本部サーバという)では 80 分に短縮される見込みである。

表 3

0 時 00 分:Y 市拠点で夜間バッチ処理,120 分。2 時 00 分:移転切替え作業開始。2 時 00 分:Y 市拠点で現ルータ電源切断,10 分。

表 3

5 時 40 分:Z 市拠点で新ルータ電源投入(注2)・起動確認,10 分。

表 3 で順番に並んでいる作業のうち,同時にできるものや,速い場所に回せるものを探す。移送方式の工夫は除くという条件である。

ア群:現本部サーバで 120 分掛かる夜間バッチを,データ移行のあとに新本部サーバで 80 分で行う。イ群:現ルータの電源切断,または新ルータの電源投入・起動確認のどちらかを,データ移行作業と並行して行う。ウ群:その 2 つの両方をデータ移行作業と並行して行う。

55字。(b)と同じ群の組合せで答える。ルータの作業は VPN の切替えだけで,データの取得や投入とは関係しないので並行できる。

設問3(3)(b)

(a)の方策を実施した場合,移転切替え作業完了時刻は何分前倒しできることになるか。

解答例(3通り)

  • 40
  • 10
  • 20

〔備考〕同じ群中の組合せとする(ア群40,イ群10,ウ群20)

解説

本文の根拠

表 3

6 時 50 分:移転切替え作業完了。

ア群:夜間バッチを移すと,0 時からデータ移行を始められる。ルータ切断 10 分,取得 100 分,運搬 50 分,投入 60 分,ルータ投入 10 分で 3 時 50 分,バッチ 80 分で 5 時 10 分,確認 60 分で 6 時 10 分。6 時 50 分より「40」分早い(120 分と 80 分の差)。

イ群:ルータの作業 1 つ(10 分)が並行になるので「10」分。ウ群:2 つとも並行なので「20」分。

(a)と同じ群の数値を答える。ア群ならバッチ 120 → 80 分の差がそのまま効き,他の作業の順番を入れ替えても合計は変わらない。

出典:平成25年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問1(表記を一部改変)

問2 サービス継続及び可用性管理

サービス継続及び可用性管理に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

X 社は,自社ブランドの陶磁器の製造・販売会社である。本社と工場は北陸にあり,営業所と倉庫は関東にある。販売は,主に関東近辺のデパートで行っている。

工場の生産管理部では生産の計画・管理,工場に隣接する本社では一般管理業務,営業所の販売部では商品の販売業務・売上分析,営業所の近郊にある倉庫ではデパートへの商品発送業務を行っている。また,情報システム部は,北陸のデータセンタ A(以下,DC-A という)と関東のデータセンタ B(以下,DC-B という)で主要システムの運用を行っており,生産管理部及び販売部の業務支援サービスを提供している。

〔主要システムの構成〕

X 社の主要システムの構成を図 1 に示す。情報システム部は,DC-A で販売管理システムと生産管理システムを運用し,DC-B で売上分析システムと在庫管理システムを運用している。また,DC-B では,販売管理システムの待機系システムが稼働可能である。ただし,DC-B は仮想サーバで構築されている関係から,待機系システムが稼働する際は売上分析システムの停止が必要になる。本番系システムに障害が発生した場合は,売上分析システムを停止してから待機系システムを起動し,システムの切替えに必要な作業を行って,販売管理システムのサービスを再開する。

北陸と関東を社内ネットワークで結んだ構成図。北陸には工場(生産管理部)の生産管理用端末と,DC-A(情報システム部)の販売管理システム(本番系システム),生産管理システム,ファイルサーバ,システム運用端末がある。関東には倉庫(販売部)の在庫管理用端末,営業所(販売部)の販売管理用端末2台と売上分析用端末,DC-B(情報システム部)の販売管理システム(待機系システム,点線枠),売上分析システム,在庫管理システム,ファイルサーバ,システム運用端末がある。
図 1 X 社の主要システムの構成

〔販売管理システムの機能概要〕

販売部は,顧客から商品の注文を受けると,手書きで注文伝票を作成する。注文伝票の注文情報は,オンラインで販売管理用端末から販売管理システムに入力される。注文情報は,販売管理システムから在庫管理システムに連携されて,商品の在庫引当処理と出荷指示処理が行われる。注文情報は日次バッチ処理で受注情報として確定し,顧客ごとに受注実績が集計される。受注実績は,翌日にはオンラインで参照可能となり,顧客との商談に利用される。

販売管理システムは,毎日 9 時から 20 時までをオンライン処理時間帯,20 時から翌日 5 時までをバッチ処理実施可能時間帯としている。バッチ処理では,販売管理システムの一部であるジョブ管理ツールによって,ジョブが順番に起動される。販売管理システムにおけるバッチ処理の区分と内容を,表 1 に示す。

区分・ジョブ番号・処理内容・所要時間の表。日次バッチ処理:ジョブ番号 1-1 注文情報のバックアップを取得する,1 時間。1-2 業務日付(注1)を更新する,5 分。1-3 注文情報を加工して受注情報として確定し,顧客ごとに集計し,受注実績とする,5 時間。週次バッチ処理(注2):2-1 業務日付(注1),受注情報及び受注実績のバックアップを取得して,取得情報を DC-B のファイルサーバに転送する,1 時間。注1)OS などが使用するシステム日付とは別に,業務アプリケーションが参照する日付として“業務日付”が定義されている。注2)週次バッチ処理は,毎週金曜日の日次バッチ処理終了後に実行される。
表 1 販売管理システムにおけるバッチ処理の区分と内容

〔販売管理用端末の増設〕

X 社では現在,営業所に 2 台の販売管理用端末があるが,販売業務の拡大に備えて,端末を 2 台増設することになった。販売管理システムには許可された端末からしか接続できないので,IT サービスマネージャの U 氏は,増設される端末からの接続を許可するように本番系システムの設定変更を計画した。情報システム部の担当者は変更計画に従って変更を行い,増設された端末の本番運用を開始した。本番系システムの設定変更を待機系システムへ反映する作業については,変更をできるだけ早く展開する必要があるが,売上分析システムの稼働スケジュールとの関係から,3 か月に 1 回設けられている売上分析システムの次回定期保守日に行うことにしている。また,規定に従い,本番系システムの変更に合わせて,“待機系システムの変更に必要なリリース”及び“リリースの展開に必要な関連文書”を,DC-B に設置されているファイルサーバに格納し,DC-B の情報システム部員に通知した。

〔事業継続計画の検討〕

営業所に販売管理用端末を増設してから 1 か月後,X 社は,事業継続計画(以下,BCP という)を策定することになり,BCP 策定プロジェクト(以下,プロジェクトという)を発足させた。プロジェクトは,生産管理部,販売部などの責任者から成る全社横断チームで構成され,意思決定には経営陣が関与した。情報システム部からは T 部長が参画した。プロジェクトでは,BCP を策定する際の災害発生から全面復旧に至るまでの想定フェーズを図 2 のように整理した。

イベントとフェーズを時系列に並べた図。フェーズは平常運用,BCP 発動準備,業務再開,業務回復,全面復旧の順。イベントは,平常運用と BCP 発動準備の境に災害発生,BCP 発動準備と業務再開の境に BCP 発動,業務再開と業務回復の境に業務継続の拡大,業務回復と全面復旧の境に平常運用への切替え開始。注記:業務再開フェーズでは,優先度が高い業務を再開する。業務回復フェーズでは,優先度が高い業務を再開した後,更に業務範囲を拡大する。
図 2 災害発生から全面復旧に至るまでの想定フェーズ

プロジェクトでは,北陸に地震が発生し,交通の混乱,通信障害及び大規模停電によって,本社,工場及び DC-A が 1 週間稼働できない事態を想定した。

なお,本社,工場及び DC-A の建物・設備に直接の被害はないものとする。また,関東では,地震による被害は発生しないものとし,X 社の主要顧客やデパートは関東地区に集中しているので,被災による顧客やデパートへの影響は少ないものとする。

プロジェクトでは,これらの想定の下で,BCP の方針を表 2 のように整理した。

項番と方針の表。項番1:地震の発生によって,事業が受ける影響度を分析した。その結果,事業を継続する上で優先度が最も高いのは,販売業務であることが分かった。そこで,生産が 1 週間滞った場合でも販売を継続できるように,必要な在庫調整を行う。販売業務については,災害発生直後は販売管理用端末からのオンラインによる注文情報の入力を諦め,手書きによる注文伝票の作成だけで業務を継続させる。また,生産業務については,業務回復フェーズに北陸で再開する。項番2:災害発生時には,社長を対策本部長とする対策本部を設置し,意思決定機関として BCP の実施を指揮する。対策本部長の下に生産,販売といった機能別のチーム体制を編成し,情報システム部からは T 部長が対策本部に加わる。
表 2 BCP の方針

プロジェクトでは,商品を販売する際は,販売部が顧客などと商談を行う必要がある点を踏まえ,災害発生から 3 時間以内に待機系システムで販売管理システムのオンライン機能を正常に使用できるようにすることを,事業継続の要件として取り決めた。また,当日のオンライン開始から災害発生までに登録された注文情報については,販売部が注文伝票を基に再入力することとした。

T 部長はこれらの BCP の検討を受け,販売管理システムがオンライン処理時間帯に被災することを想定し,図 2 の BCP 発動準備フェーズから全面復旧フェーズまでを対象範囲としたサービス継続計画を作成するよう,U 氏に指示した。

〔サービス継続計画の作成〕

U 氏は,災害発生後の販売管理システムの業務再開に向けての目標値について,販売部と確認した。その結果,目標復旧時間(以下,RTO という)及び目標復旧時点(以下,RPO という)については,プロジェクトの検討結果を踏まえ,RTO を a 以内,RPO を b 時点に設定した。また,平常運用フェーズではオンラインの応答時間の目標値を 3 秒以内としているが,業務再開フェーズと業務回復フェーズでは待機系システムでのサービス提供になるので,応答時間の目標値は 5 秒まで許容することにした。

U 氏は,T 部長からの指示を踏まえ,BCP と連携したサービス継続計画を作成し,BCP 発動を受け,サービス継続計画が発動されることを規定した。サービス継続計画が発動された場合は,待機系システムを起動し,転送済みのバックアップから必要なデータをリストアした上で,待機系システムに切り替える予定である。しかし,現在のバッチ処理の構成では RPO の目標値を達成できないと考えた U 氏は,(ア)バッチ処理の内容を見直した

T 部長はサービス継続計画の内容を確認し,U 氏に試験の実施を指示した。

〔サービス継続計画の試験〕

U 氏は,BCP 発動準備フェーズから全面復旧フェーズまでを対象として,サービス継続計画の試験計画書を作成した。この試験によって,情報システム部員の訓練だけでなく,サービス継続計画全体が正しく機能するかどうかを確認する。試験計画書の内容を,表 3 に示す。

項番・フェーズ・実施項目・確認すべき内容・試験方法の表。項番1 BCP 発動準備:復旧作業要員の配置,復旧作業に関わる情報システム部員への連絡,机上チェック。項番2 業務再開:待機系システムを使ったサービス運用の開始,売上分析システムの正常停止,待機系システムの起動,データリストアの実施,切替えの実施確認,及び提供サービスの正常稼働確認,実機訓練。項番3 業務回復:サービス運用の拡大,生産管理システムの起動及び提供サービスの正常稼働確認,実機訓練。項番4 全面復旧:全面復旧手順の確認,[ c ],実機訓練。
表 3 サービス継続計画の試験計画書の内容

U 氏は,関係者の協力を得て試験を行った。試験では,増設された 2 台の販売管理用端末から待機系システムに接続できないという事態が発生し,混乱した。原因は,売上分析システムの定期保守日に実施予定であった変更リリースが展開される前に試験を実施したからであり,必要な対応を行い,試験は無事終了した。

試験終了後,T 部長は,(イ)サービス継続計画の発動後に今回のような混乱が発生しないように,業務再開フェーズに必要な作業内容の追加を U 氏に指示した。

出題趣旨(IPA)

東日本大震災以降,サービス継続性が特に注目されている。このような中で,ITサービスマネージャには,重大なサービス障害,災害状況などの下で,顧客と合意したサービス継続についての責任を果たすことが求められている。本問では,BCPと連携したサービス継続計画の策定,サービス継続計画の発動から全面回復に至るフェーズにおける実施項目の検討と試験などを通じて,サービス継続に関する計画能力,サービス継続計画を有効な状態に維持する管理能力を問う。

設問と解答例

設問1 35字以内

〔事業継続計画の検討〕において対策本部を設置するとしているが,災害発生当初に関係者全員を招集できるとは限らない。このような状況を考慮した上で考えられる,対策本部の要員配置に必要な検討内容を,35 字以内で述べよ。

解答例(2通り)

  • 予定された要員を招集できない場合に備えて代替要員を定める。
  • 要員が不足する場合は,招集できた要員で役割分担を決める。
解説

本文の根拠

表 2 項番2

災害発生時には,社長を対策本部長とする対策本部を設置し,意思決定機関として BCP の実施を指揮する。対策本部長の下に生産,販売といった機能別のチーム体制を編成し,情報システム部からは T 部長が対策本部に加わる。

〔事業継続計画の検討〕

プロジェクトでは,北陸に地震が発生し,交通の混乱,通信障害及び大規模停電によって,本社,工場及び DC-A が 1 週間稼働できない事態を想定した。

想定は北陸の地震で,交通の混乱や通信障害が起きる。社長をはじめ,決められた人が対策本部にすぐ集まれるとは限らない。

集まれない人がいても本部が動くよう,あらかじめ代わりの要員を決めておく。あるいは,集まれた人数で役割をどう分けるかを決めておく。

35字。解答例は「予定された要員を招集できない場合に備えて代替要員を定める。」(28字)と「要員が不足する場合は,招集できた要員で役割分担を決める。」(27字)の2つ。

採点講評(IPA)

設問1は,代替要員の必要性に着眼していない解答が多く,正答率が低かった。災害が発生した当初は,関係者全員を招集できるとは限らない。そこで,事業継続計画においては,構成要員の一部が対策本部に参集できない場合を想定し,要員のバックアップ体制に関する検討が必要であることを理解しておいてほしい。

設問2(1) 解答欄2つ

本文中の a に入れる適切な字句を 5 字以内で,b に入れる適切な字句を 15 字以内で,それぞれ答えよ。

〔a〕解答例

  • 3時間

〔b〕解答例

  • 当日のオンライン開始
解説

本文の根拠

〔事業継続計画の検討〕

災害発生から 3 時間以内に待機系システムで販売管理システムのオンライン機能を正常に使用できるようにすることを,事業継続の要件として取り決めた。

〔事業継続計画の検討〕

また,当日のオンライン開始から災害発生までに登録された注文情報については,販売部が注文伝票を基に再入力することとした。

RTO は,何時間以内に使えるようにするかである。要件は「災害発生から 3 時間以内に待機系でオンライン機能を正常に使える」なので,a は「3 時間」。

RPO は,どの時点のデータまで戻すかである。当日のオンライン開始から被災までに入った注文は,販売部が伝票から入れ直す。つまりシステムで戻すべきなのは,当日のオンライン開始の時点まででよい。b は「当日のオンライン開始」。

a は 5 字,b は 15 字以内。b は「前日の日次バッチ終了」でも中身は近いが,本文の再入力の範囲に合わせて書く。

採点講評(IPA)

設問2(1)は,RTOについての正答率は高かったが,RPOについての正答率が低かった。サービス継続マネジメントを行う上で基本となる,RPOやRTOの定義については,是非理解しておいてほしい。

設問2(2) 50字以内

本文中の下線(ア)について,見直し後のバッチ処理の内容を,50 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • ジョブ番号2-1を週次バッチ処理から日次バッチ処理に変更し,ジョブ番号1-3の後に実行する。
解説

本文の根拠

表 1

週次バッチ処理(注2):2-1 業務日付(注1),受注情報及び受注実績のバックアップを取得して,取得情報を DC-B のファイルサーバに転送する,1 時間。

表 1 注2)

週次バッチ処理は,毎週金曜日の日次バッチ処理終了後に実行される。

〔サービス継続計画の作成〕

サービス継続計画が発動された場合は,待機系システムを起動し,転送済みのバックアップから必要なデータをリストアした上で,待機系システムに切り替える予定である。

待機系は DC-B に転送済みのバックアップから戻す。ところが DC-B に送っているのは週次バッチの 2-1 で,金曜日の夜だけである。月曜日に被災すると,金曜日の時点までしか戻せず,RPO の「当日のオンライン開始」に届かない。

2-1 を毎日の日次バッチに移せば,毎晩 DC-B にバックアップが届く。受注情報と受注実績を作る 1-3 が終わったあとに実行すれば,その日の確定分まで含められる。バッチの時間枠は 9 時間で,日次の 6 時間 5 分に 1 時間を足しても収まる。

50字。解答例は「ジョブ番号2-1を週次バッチ処理から日次バッチ処理に変更し,ジョブ番号1-3の後に実行する。」で45字。「日次に変える」ことと「どのジョブのあとか」を書く。

設問3(1) 35字以内

表 3 中の項番 2 の業務再開フェーズにおいて,提供サービスの正常稼働に関して,機能面に加えて,確認すべき内容を,35 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • 販売管理システムのオンラインの応答時間が5秒以内であること
解説

本文の根拠

〔サービス継続計画の作成〕

また,平常運用フェーズではオンラインの応答時間の目標値を 3 秒以内としているが,業務再開フェーズと業務回復フェーズでは待機系システムでのサービス提供になるので,応答時間の目標値は 5 秒まで許容することにした。

業務再開フェーズでは待機系で販売管理システムを動かす。機能が動くことに加えて,サービスとして使える速さが出ているかも確かめる必要がある。

本文では,業務再開フェーズと業務回復フェーズの応答時間の目標を 5 秒と決めている。待機系でこの 5 秒以内が守れているかを確認する。

35字。解答例は「販売管理システムのオンラインの応答時間が5秒以内であること」で28字。平常時の 3 秒ではなく,このフェーズの目標値 5 秒を書く。

採点講評(IPA)

設問3(1)は,正答率が低く,サービスの設計経験に乏しい受験生が多いと類推された。ITサービスマネージャは,サービスの設計段階で,情報システムの機能面だけではなく,性能要件などの非機能面についてのサービス仕様の定義が必要であることを認識してほしい。

設問3(2) 55字以内

表 3 中の c に入れる確認すべき内容を,55 字以内で述べよ。

解答例

  • 販売管理システム(本番系システム)への切り戻し,売上分析システムの起動及び提供サービスの正常稼働確認
解説

本文の根拠

表 3

項番3 業務回復:サービス運用の拡大,生産管理システムの起動及び提供サービスの正常稼働確認,実機訓練。項番4 全面復旧:全面復旧手順の確認,c,実機訓練。

〔主要システムの構成〕

ただし,DC-B は仮想サーバで構築されている関係から,待機系システムが稼働する際は売上分析システムの停止が必要になる。

全面復旧は平常運用に戻すフェーズである。業務再開フェーズで行ったことを逆にたどればよい。

業務再開では,売上分析システムを止め,待機系を起動して切り替えた。全面復旧では,販売管理システムを DC-A の本番系に切り戻し,止めていた売上分析システムを起動し直し,それぞれのサービスが正常に動くことを確かめる。

55字。解答例は「販売管理システム(本番系システム)への切り戻し,売上分析システムの起動及び提供サービスの正常稼働確認」で49字。表 3 の他の行と同じ「〜の起動及び提供サービスの正常稼働確認」の形でそろえる。

設問3(3) 55字以内

本文中の下線(イ)について,業務再開フェーズに追加すべき作業内容を,55 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • 待機系システムに未実施の変更がある場合は,切替え前までに当該リリースの展開実施判断を行い,必要ならば展開する。
解説

本文の根拠

〔販売管理用端末の増設〕

本番系システムの設定変更を待機系システムへ反映する作業については,変更をできるだけ早く展開する必要があるが,売上分析システムの稼働スケジュールとの関係から,3 か月に 1 回設けられている売上分析システムの次回定期保守日に行うことにしている。

〔販売管理用端末の増設〕

規定に従い,本番系システムの変更に合わせて,“待機系システムの変更に必要なリリース”及び“リリースの展開に必要な関連文書”を,DC-B に設置されているファイルサーバに格納し,DC-B の情報システム部員に通知した。

〔サービス継続計画の試験〕

原因は,売上分析システムの定期保守日に実施予定であった変更リリースが展開される前に試験を実施したからであり

待機系への変更の反映は,3 か月に 1 回の定期保守日にまとめて行う。そのため,次の保守日までは本番系の変更が待機系に入っていない期間がある。試験ではこの状態で切り替えたので,増設した端末が使えなかった。

本当の災害も保守日を待ってはくれない。リリースと関連文書は DC-B のファイルサーバに届いているので,業務再開フェーズの切替え前に,待機系に未実施の変更がないかを確かめ,あれば展開するかを判断して,必要なら展開する。

55字。解答例は「待機系システムに未実施の変更がある場合は,切替え前までに当該リリースの展開実施判断を行い,必要ならば展開する。」で53字。「確認→判断→展開」の順にし,「切替え前まで」と時点を書く。

出典:平成25年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問2(表記を一部改変)

問3 サービスの運用

サービスの運用に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

E 社は,大手物流会社である。E 社には,グループ会社が 20 社あり,グループ全体の経営効率向上を図るために,2 年前にグループ会社の業務標準化を進めることになった。これに合わせて,各社が別々に構築してきたシステムの統合を進めている。

〔システムの運用体制〕

システムの統合は,グループ会社である F 社の開発チームが実施している。統合が完了したシステム(以下,統合システムという)は,F 社のデータセンタで,F 社のオペレーションチームによって 24 時間 365 日運用されている。運用全体の管理は,IT サービスマネージャの S 氏が行っている。オペレーションチームはシフト体制を組み,4 チームが 3 交代で運用している。シフト時間帯は 6 時から 15 時までの早番,14 時から 23 時までの遅番,22 時から翌朝 7 時までの深夜番となっている。各オペレーションチームは,運用責任者のリーダ 1 人とオペレータ 3 人の計 4 人で編成されている。

〔統合システムの監視〕

統合システムの監視には運用管理システムを利用する。本番運用されている各システムが出力するメッセージは,運用管理システムに集約される。集約されたメッセージは,F 社の運用監視基準に従って種類分けされて,オペレータに通知される。オペレータは通知されたメッセージを監視し,対応が必要な場合は,定められた対応を行う。オペレータが監視するメッセージは,表 1 のとおりである。

種類・内容・例・オペレーションチームの対応の表。通知(注1):通常どおり運用されている状態を表す事象,例 バッチ処理の正常終了,特に対応する必要はない。警告:調査が必要なことを表す事象,例 幾つかのリソースを対象にあらかじめ設定されている使用率などのしきい値超過,運用マニュアルを参照して調査する。必要な場合は,定められたチームに連絡する。異常(注2):正常に運用されていない状態を表す事象,例 バッチ処理の異常終了,運用マニュアルを参照して,定められたチームに連絡する。注1)通知は,警告と異常以外でシステムの運用に必要なメッセージを対象とする。注2)異常は,F 社ではインシデントとして管理される。
表 1 F 社のオペレータが監視するメッセージ

警告のしきい値は,監視要件に基づいて設計・設定されている。統合システムの警告のしきい値については,F 社開発チームのインフラ担当が設計・設定を行う。

〔E 社のサービス要求管理プロセス〕

E 社では,E 社及びグループ会社各社のサービス利用者を対象としたサービスデスク(以下,SD という)を設けている。SD では,サービス利用者からの電話及び電子メールによるサービス要求を,平日の 9 時から 17 時まで受け付けている。サービス要求には,問合せ,作業依頼などがある。SD では,サービス要求が受入基準を満たしているかどうかを判断し,基準を満たしていれば要求を受け付ける。このとき,決められた診断手順に従い,要求の優先度を判断する。SD では,サービス要求への対応を行い,サービス利用者に対応結果を回答する。必要に応じて,サービス利用者と対応時期について調整し,サービス要求の進捗状況をサービス利用者に通知する。また,サービス要求の内容がバッチ処理作業依頼の場合は,F 社のオペレーションチームに転送して処理してもらう。バッチ処理の終了後,オペレーションチームはその旨を a に連絡する。サービス要求への対応について,サービス利用者に完了報告を行い,プロセスを終了する。

なお,サービス要求の内容がインシデントへの対応要求の場合,又はサービス要求への対応中にその内容がインシデントへの対応要求であると判明した場合は,別途規定されているインシデント管理プロセスに従って処理される。

〔経理システムの統合〕

E 社では,グループ会社と調整し,各社で個別に稼働している経理システムを統合することにした。現在,E 社の経理部の部門コンピュータで運用されている経理システムを,E 社とグループ会社で利用する統合経理システムとして改修し,F 社が運用する。改修後は,まず,E 社とグループ会社の G 社の 2 社で統合経理システムの利用を開始し,その後,グループ会社各社に利用を広げていく計画である。

統合経理システムの機能要件は F 社開発チームのアプリケーション担当が,非機能要件はインフラ担当がそれぞれ設計を行う。E 社の経理システムで出力されているメッセージの内容は,表 2 のとおりである。

種類・経理システムでの表示例・コメントの表。通知:①バッチ処理の正常終了,正常処理の確認。②通信の正常接続,死活監視(注1)の OK メッセージ。③売上の当日集計値,経理部担当者の確認用(注2)。警告:④メモリ使用率のしきい値超過,決められた時間内に規定回数のしきい値超過が発生した場合,メッセージを出力する。異常:⑤バッチ処理の異常終了,日次処理の中断。⑥通信の切断を検知,死活監視(注1)の NG メッセージ。注1)アプリケーションで,経理システム端末との通信の死活監視を 5 分間隔で行う。OK メッセージ又は NG メッセージを出力する。注2)E 社では日次バッチ処理の結果を経理部担当者が確認している。業務で確認が必要な数値を出力して,担当者が確認している。
表 2 E 社の経理システムで出力されているメッセージの内容

F 社では,表 2 を自社の運用監視基準と照合し,受入れ可能かどうか調査した。調査の結果,表 2 中の④のしきい値については,F 社のシステム資源に合わせて設定を変更する必要があることが分かり,しきい値を新たに設計することになった。

また,E 社の経理部は,現在は担当者が直接臨時バッチ処理を実行していることから,統合経理システムの利用に当たり,臨時バッチ処理を SD 経由ではなく,直接オペレーションチームに作業依頼したいとのことであった。S 氏は,次の二つの理由から,E 社の経理部に対して,“SD を経由してほしい。SD の要員体制は確保されている。作業依頼の手順については SD と調整するように”と回答した。

統合経理システムの運用が開始され,E 社と G 社で 1 年間利用された。その後,新たにグループ会社の H 社が決算月から利用を開始した。決算月は,昼のオンライン時間帯に臨時バッチ処理が発生する。このバッチ処理は経理部からの要求で臨時に実施され,業務の状況に応じて 1 日に数回実施される。バッチ処理中は,大量のデータを処理することから,突発的にメモリ使用率が増加する。H 社では統合経理システムの習熟度が低いこともあって,臨時バッチ処理が頻繁に発生し,メモリ使用率のしきい値超過の警告が多く発生するようになった。

しきい値超過の警告が発生した場合,オペレータはインフラ担当に連絡する。インフラ担当は状況に応じて,サービス利用者からの問合せに対応できるように SD に状況を連絡する。また,インフラ担当は,メモリの使用状況などを分析し,オンライン業務に影響が及ぶことが想定される場合は,S 氏に連絡し,各社の経理部と臨時バッチ処理の使用制限について調整する。

決算月に入って警告状態が続いているが,その都度,オンライン業務に影響を与える事態ではないとの判断が出されている。そこで,オペレーションチームのリーダは,警告対応のオペレータの業務負荷を軽減するために,“決算時期は,しきい値を緩く設定することも考えられるのではないか”と S 氏に打診した。しかし,(イ)S 氏はシステムの安定稼働を保証できないので,しきい値の変更は安易には行えないと判断した

〔オペレーション業務の見直し〕

E 社では,グループ会社各社で物流業務の分析に利用しているデータウェアハウスの統合を進めることにした。S 氏は,統合データウェアハウスの運用開始に当たり,F 社のオペレーション体制で受入れが可能かどうかを検討した。

S 氏は,オペレーションが可能な要員数(以下,可能要員数という)と,現在の通常のオペレーションに必要な要員数(以下,必要要員数という)を調査し,図 1 にまとめた。可能要員数は図 1 の A の点線で表される。現在,オペレーションチームは 4 人で編成されているが,0 時〜4 時,8 時〜12 時,16 時〜20 時の間は,交代で休憩をとるので,可能要員数は 3 人となる。その他の時間帯の可能要員数は 4 人である。また,6 時,14 時,22 時にチームが交代し,引継ぎを行うが,引継ぎ時間中も可能要員数は 4 人である。現在の必要要員数は,図 1 の B の実線で示すとおりであった。

横軸が時刻(0〜24 時),縦軸が要員数(人)の階段状のグラフ。A:可能要員数(点線)は,0 時〜4 時 3 人,4 時〜8 時 4 人,8 時〜12 時 3 人,12 時〜16 時 4 人,16 時〜20 時 3 人,20 時〜24 時 4 人。B:必要要員数(実線)は,0 時〜4 時 2.5 人,4 時〜6 時 3 人,6 時〜8 時 3.5 人,8 時〜14 時 2.5 人,14 時〜16 時 3 人,16 時〜22 時 2.5 人,22 時〜24 時 2 人。
図 1 オペレーションの可能要員数と必要要員数

なお,障害などインシデントの発生に備えて,可能要員数に対する必要要員数の比率は常に 90%以下に抑える必要がある。

S 氏はシフト勤務の時間帯ごとの特徴を調べた。深夜番の勤務時間帯にはバックアップを取得する必要があり,0 時から 6 時の間で実施している。バックアップの取得が失敗していた場合,再処理が必要となる。したがって,再処理時間を考慮し,早番の勤務時間帯でバックアップが取得できているかどうかを確認する必要がある。現在は,バックアップ処理完了後の 6 時から 8 時までの 2 時間で,この確認作業を平均して 1 人で行っている。

次に,統合データウェアハウスの運用方法について調べたところ,バッチ処理が多いことから,4 時から 8 時までの間,平均して 0.5 人の要員数が必要なことが分かった。S 氏は,統合データウェアハウスの受入れを可能にする解決策を検討した。

出題趣旨(IPA)

グループ企業の業務効率化のため,システム統合が行われることがある。運用対象のシステムの増加によって,システムの利用者も増加することから,システムの安定運用のためには,利用者からの問合せに,より適切に,効率よく対応していく必要がある。また,新規のシステム運用の受入れも増えるので,自社の運用ルールに合わせたシステムの受入れも重要となる。本問では,ITサービスマネージャとしての,状況に応じた適切なオペレーション管理の見直し能力を問う。

設問と解答例

設問1(1) 10字以内

本文中の a に入れる適切な字句を,10 字以内で答えよ。

解答例(2通り)

  • SD
  • サービスデスク
解説

本文の根拠

〔E 社のサービス要求管理プロセス〕

また,サービス要求の内容がバッチ処理作業依頼の場合は,F 社のオペレーションチームに転送して処理してもらう。

〔E 社のサービス要求管理プロセス〕

SD では,サービス要求への対応を行い,サービス利用者に対応結果を回答する。

バッチ処理の依頼は,SD がサービス利用者から受け付けて,オペレーションチームに転送する。オペレーションチームがバッチ処理を終えたら,その結果を利用者に返すのも SD の役目である。

オペレーションチームが直接利用者に連絡すると,SD が進み具合を把握できず,完了報告もできない。終わった旨は,依頼を回してきた SD に連絡する。

10字。解答例は「SD 又は サービスデスク」。本文では「SD」と略しているので,どちらで書いてもよい。

設問1(2) 30字以内

本文中の下線(ア)の準備作業の具体的な内容を,30 字以内で述べよ。

解答例(3通り)

  • 要求内容の優先度が判定できる診断手順の作成
  • 臨時バッチ処理の識別と処理手順の作成
  • 統合経理システムの臨時バッチ処理要求の受入基準の作成
解説

本文の根拠

〔E 社のサービス要求管理プロセス〕

SD では,サービス要求が受入基準を満たしているかどうかを判断し,基準を満たしていれば要求を受け付ける。このとき,決められた診断手順に従い,要求の優先度を判断する。

〔経理システムの統合〕

また,E 社の経理部は,現在は担当者が直接臨時バッチ処理を実行していることから,統合経理システムの利用に当たり,臨時バッチ処理を SD 経由ではなく,直接オペレーションチームに作業依頼したいとのことであった。

SD はサービス要求を「受入基準」で受け付けるか決め,「診断手順」で優先度を決める。統合経理システムの臨時バッチ処理は,これまで経理部が自分で実行していて,SD では扱ったことがない。

利用開始までに,臨時バッチ処理の依頼を受けるための受入基準や,優先度を判定できる診断手順,処理を見分けて回すための手順を SD に用意しておく必要がある。

30字。解答例は「要求内容の優先度が判定できる診断手順の作成」(21字)など3つ。どれも本文にある SD のプロセス(受入基準・診断手順)のうち,臨時バッチ処理の分が欠けていることを突いている。

採点講評(IPA)

設問1(2)は,単純な手順の整備や問合せ対応の体制を作るなどの一般的な解答が多く,正答率は低かった。サービスデスクで作業依頼を受け付けるために必要な準備作業について,サービス要求管理プロセスで必要としている作業内容に着目して正解を導き出してほしかった。

設問2(1)(a)

見直す必要があるメッセージの内容はどれか。表 2 中の①〜⑥(ただし,④を除く)から一つ選べ。

解答例

解説

本文の根拠

表 2

③売上の当日集計値,経理部担当者の確認用(注2)。

表 1 注1)

通知は,警告と異常以外でシステムの運用に必要なメッセージを対象とする。

F 社の基準では,通知は「システムの運用に必要なメッセージ」に限る。表 2 の通知 3 つを見ていく。

①バッチの正常終了と②通信の正常接続は,運用で確かめるメッセージで基準に合う。③売上の当日集計値は,経理部の担当者が業務の数字を確かめるためのもので,システムの運用には関係しない。

答えは「③」。④は問われている項目なので除く。⑤⑥は異常で,F 社の基準の異常(正常に運用されていない状態)に合っている。

採点講評(IPA)

設問2(1)は,オペレータの負担を考えて正常なメッセージの出力を抑止するなど,運用管理システムの機能を利用しただけの解答が多く見られた。システムの受入れに当たり,運用監視基準に沿った運用ができることが重要であることを意識しておいてほしい。

設問2(1)(b) 30字以内

見直す必要がある理由を,30 字以内で述べよ。

解答例(2通り)

  • 顧客業務用の確認メッセージを出力しているから
  • 出力すべきメッセージ種類のどれにも該当しないから
解説

本文の根拠

表 2 注2)

E 社では日次バッチ処理の結果を経理部担当者が確認している。業務で確認が必要な数値を出力して,担当者が確認している。

〔統合経理システムの監視〕

本番運用されている各システムが出力するメッセージは,運用管理システムに集約される。集約されたメッセージは,F 社の運用監視基準に従って種類分けされて,オペレータに通知される。

③は業務の担当者が数字を確かめるためのメッセージである。これまでは経理部の部門コンピュータで動いていたので,担当者の画面に出ればよかった。

統合後はメッセージがすべて運用管理システムに集まり,オペレータに届く。オペレータには要らない業務用の確認メッセージで,F 社の通知・警告・異常のどれにも当たらない。

30字。解答例は「顧客業務用の確認メッセージを出力しているから」(22字)と「出力すべきメッセージ種類のどれにも該当しないから」(24字)の2つ。

採点講評(IPA)

設問2(1)は,オペレータの負担を考えて正常なメッセージの出力を抑止するなど,運用管理システムの機能を利用しただけの解答が多く見られた。システムの受入れに当たり,運用監視基準に沿った運用ができることが重要であることを意識しておいてほしい。

設問2(1)(c) 40字以内

改善策を,40 字以内で述べよ。

解答例(2通り)

  • 業務用メッセージはアプリケーションで作成し,通知メッセージは出力しない。
  • システムの運用に不必要な通知メッセージを抑止する。
解説

本文の根拠

〔統合経理システムの監視〕

オペレータは通知されたメッセージを監視し,対応が必要な場合は,定められた対応を行う。

〔経理システムの統合〕

統合経理システムの機能要件は F 社開発チームのアプリケーション担当が,非機能要件はインフラ担当がそれぞれ設計を行う。

③の集計値は経理部の業務には必要なので,なくすわけにはいかない。問題は,それが運用監視のメッセージとしてオペレータに流れることである。

業務で使う数字は,アプリケーションの機能として経理部の担当者向けに出す(帳票や画面にする)。運用管理システムへの通知メッセージとしては出さない。こうすればオペレータの監視対象から外れる。

40字。解答例は「業務用メッセージはアプリケーションで作成し,通知メッセージは出力しない。」(35字)など2つ。「業務の数字を残す方法」と「通知から外す」の両方を書く。

採点講評(IPA)

設問2(1)は,オペレータの負担を考えて正常なメッセージの出力を抑止するなど,運用管理システムの機能を利用しただけの解答が多く見られた。システムの受入れに当たり,運用監視基準に沿った運用ができることが重要であることを意識しておいてほしい。

設問2(2) 40字以内

本文中の下線(イ)で,S 氏が,しきい値の変更を安易には行えないと判断した理由を,40 字以内で述べよ。

解答例

  • しきい値変更に伴うオンラインへの影響を再評価する必要があるから
解説

本文の根拠

〔経理システムの統合〕

インフラ担当は,メモリの使用状況などを分析し,オンライン業務に影響が及ぶことが想定される場合は,S 氏に連絡し,各社の経理部と臨時バッチ処理の使用制限について調整する。

〔統合経理システムの監視〕

警告のしきい値は,監視要件に基づいて設計・設定されている。統合システムの警告のしきい値については,F 社開発チームのインフラ担当が設計・設定を行う。

しきい値は,インフラ担当が監視要件に基づいて,オンライン業務に影響が出る前に気付けるように設計したものである。

オペレータの負担を減らすために緩めると,本当にオンラインに影響が出るときも警告が出なくなるおそれがある。今は「影響がない」と判断できているが,しきい値を変えるならその影響をもう一度評価し直さないと,安定稼働を保証できない。

40字。解答例は「しきい値変更に伴うオンラインへの影響を再評価する必要があるから」で30字。「オンラインへの影響」と「再評価」の2語を入れる。

設問3(1) 40字以内

現在のオペレーション方法では,統合データウェアハウスの受入れができない。その理由を 40 字以内で述べよ。

解答例

  • 6時から8時の間は可能要員数に対する必要要員数の比率が90%を超えるから
解説

本文の根拠

〔オペレーション業務の見直し〕

なお,障害などインシデントの発生に備えて,可能要員数に対する必要要員数の比率は常に 90%以下に抑える必要がある。

〔オペレーション業務の見直し〕

次に,統合データウェアハウスの運用方法について調べたところ,バッチ処理が多いことから,4 時から 8 時までの間,平均して 0.5 人の要員数が必要なことが分かった。

図 1

4 時〜6 時 3 人,6 時〜8 時 3.5 人

統合データウェアハウスが加わると,4 時〜8 時の必要要員数が 0.5 人増える。4 時〜8 時の可能要員数は 4 人である。

4 時〜6 時は 3 + 0.5 = 3.5 人で,3.5 ÷ 4 = 87.5%,90%以下に収まる。6 時〜8 時は 3.5 + 0.5 = 4 人で,4 ÷ 4 = 100%になり,90%を超える。

40字。解答例は「6時から8時の間は可能要員数に対する必要要員数の比率が90%を超えるから」で36字。時間帯と「90%を超える」ことを書く。6 時〜8 時が高いのは,バックアップの確認作業 1 人分がここに入っているからである。

採点講評(IPA)

設問3(1)は正答率が高く,運用作業負荷が集中する理由はおおむね理解されているようであった。一方,(2)の解決策については,新システム受入れのためだけにシフト勤務を見直すといった解答が多く見られた。与えられた制限を十分に理解して解答してほしかった。

設問3(2) 40字以内

現在のオペレーション体制で統合データウェアハウスを受け入れるための解決策を,40 字以内で具体的に述べよ。ただし,バッチ処理の処理時間帯は変えられないものとする。

解答例

  • バックアップ処理結果の確認作業の開始を12時からに変更する。
解説

本文の根拠

〔オペレーション業務の見直し〕

したがって,再処理時間を考慮し,早番の勤務時間帯でバックアップが取得できているかどうかを確認する必要がある。現在は,バックアップ処理完了後の 6 時から 8 時までの 2 時間で,この確認作業を平均して 1 人で行っている。

〔システムの運用体制〕

シフト時間帯は 6 時から 15 時までの早番,14 時から 23 時までの遅番,22 時から翌朝 7 時までの深夜番となっている。

図 1

8 時〜12 時 3 人,12 時〜16 時 4 人

バッチの時間は動かせないので,6 時〜8 時にあるバックアップの確認(2 時間,1 人)をずらす。確認は早番(6 時〜15 時)のうちに行う決まりがある。

8 時〜12 時は可能 3 人で,今の 2.5 人に 1 人足すと超える。12 時〜14 時は可能 4 人・必要 2.5 人で,1 人足しても 3.5 ÷ 4 = 87.5%に収まる。移したあとの 6 時〜8 時は 3.5 − 1 + 0.5 = 3 人,3 ÷ 4 = 75%になる。

40字。解答例は「バックアップ処理結果の確認作業の開始を12時からに変更する。」で29字。14 時からは遅番との引継ぎで早番の範囲を外れるので,12 時開始が早番内で収まる。

出典:平成25年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(表記を一部改変)