平成24年度 秋期 午後Ⅰ

平成24年度 秋期に実施されたITサービスマネージャ試験 午後Ⅰの全4問(記述式)です。事例本文・設問・解答例と解説をそのまま読めます。

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問1 サービスレベル管理

サービスレベル管理に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

Z 社は,消費者向けのスポーツ用品を製造する中堅企業であり,商品は全国の小売店で販売されている。

〔オンラインショッピングサイトの新規開設〕

Z 社では,売上拡大を図るために,消費者向けオンラインショッピングサイトを新規に開設し,営業管理部が企画・運営を担当することになった。オンラインショッピングサイトの Web 注文受付システム(以下,W システムという)は,情報システム部が新規に構築し,IT サービス(以下,W サービスという)として提供する予定である。

情報システム部の M 部長は,W システムの構築と,W サービスとして提供するために必要なマネジメントを,IT サービスマネージャの U 氏に指示した。

〔W サービスのサービスレベル目標〕

U 氏は,営業管理部に,W サービスに関する要望をヒアリングし,サービスレベル要件としてまとめた。その結果を基に,U 氏は表 1 のサービスレベル目標を設定した。

項番・サービスレベル項目・サービスレベル目標の表。項番1 Web 画面の応答性能:応答時間は,3 秒以内とする。3 秒を超えた場合は,システムを停止させずに,応答性能の改善を 2 時間以内に実施する。項番2 稼働率:基本的には 24 時間 365 日,W サービスを利用できるようにする。メンテナンスなどによる計画停止は,毎月第 3 日曜日の 23 時から翌日 8 時までとする。計画停止以外のサービス停止は,年間 50 時間以内とする。項番3 復旧時間:障害が発生した場合には,5 時間以内に復旧させる。項番4 障害発生時の連絡時間:障害が発生した場合には,障害検知から 30 分以内に営業管理部に連絡する。
表 1 W サービスのサービスレベル目標

〔クラウドサービスの活用〕

U 氏は,W システムのプラットフォームを,社外のクラウド事業者が提供するクラウドサービスから調達することにした。また,アプリケーションは,情報システム部が自社開発する方針とした。この方針に基づいたシステム構成要素ごとの責任分担を,図 1 に示す。

システム構成要素と責任分担の対応図。アプリケーションは情報システム部が責任を負う。プラットフォーム(ミドルウェア,OS,ハードウェア・ネットワーク)はクラウド事業者が責任を負う。
図 1 システム構成要素ごとの責任分担

U 氏は,毎月第 3 日曜日の 23 時から翌日 8 時までをシステムの計画停止時間とする前提で,W システムを設計することにした。そして,別途算出したアプリケーション部分の稼働率を踏まえると,稼働率に関するサービスレベル目標を達成するためには,プラットフォーム部分の稼働率を 99.9%以上にする必要があると判断した。また,Web 画面の応答性能が低下した場合には,CPU,メモリなどを迅速に増強して改善することにした。

〔クラウド事業者の選定〕

U 氏は,W システムのプラットフォーム調達に当たって,クラウド事業者である A 社及び B 社のプラットフォーム提供サービスの内容を比較し,評価した。その結果,両社のサービスでは,いつでもリソースの追加依頼が可能で,システムを停止させずに,CPU,メモリ及びディスク容量を追加できることが分かった。

なお,B 社では,標準サービスに加えて選択可能なオプションを提供しており,追加料金を支払えば,必要なオプションを選択できる。U 氏が収集した情報を,表 2 及び表 3 に示す。

項番・項目・A 社の標準サービス・B 社の標準サービスの表。項番1 リソース追加の所要時間:A 社 依頼から 30 分以内,B 社 依頼から 1 営業日以内。項番2 プラットフォームの稼働率:A 社 99.5%以上,B 社 99.5%以上。項番3 プラットフォームの復旧時間:A 社 4 時間以内,B 社 4 時間以内。項番4 障害発生時の連絡時間:A 社 規定なし,B 社 障害検知から 15 分以内(注1)。注1)クラウド事業者がプラットフォームの稼働状況を定期的に監視する。サービス提供に影響を与える障害を検知した場合は,障害が発生したことをサービス利用者に連絡する。
表 2 A 社及び B 社の標準サービスの内容
項番・オプション名・サービス内容の表。項番1 リソース追加の所要時間:依頼から 30 分以内。項番2 プラットフォームの稼働率:99.99%以上。
表 3 B 社のサービスで選択可能なオプション

A 社及び B 社のプラットフォーム提供サービスの内容を比較し,評価した結果,U 氏は,(ア)A 社の標準サービスでは,表 1 に示されたサービスレベル目標を達成できないと判断した。そして,Z 社の予算の範囲内であることを確認した上で,B 社のサービスを採用し,表 3 の二つのオプションを選択することにした。情報システム部は,表 2 及び表 3 のサービス内容について B 社と合意し,クラウドサービスの利用契約を締結した。

〔オペレーション体制の確立〕

U 氏は,サービスレベル目標を達成するためには,オペレーション管理を適切に行うことが重要であると考えた。情報システム部のオペレーションチームは,24 時間 365 日体制を採っていて,既に他システムのオペレーションの実績がある。そこで,W システムのオペレーションを,情報システム部のオペレーションチームに依頼することにした。

〔オンラインショッピングサイトの提供〕

Z 社では,システム障害によって消費者向けサービスが中断した場合の社内ルールを,次のとおりに規定している。

U 氏はこれらの社内ルールを踏まえ,アプリケーションの障害だけでなく,プラットフォームの障害などが発生した場合にも使用すべき“共通の正常稼働確認手順書”を作成し,オペレーションチームに配付した。

情報システム部と営業管理部が合同で,W システムの運用テストを実施し,全機能が問題なく動作することを確認した。また,オペレーションチームが W システムの全機能について正常であることを確認する作業も,滞りなく実施できることを確認した。しかし,確認作業は 1 時間 30 分も掛かることが判明した。U 氏は,確認作業の時間短縮のために,(イ)一部のオペレーションを自動化し,1 時間以内で確認できるように改善した

運用テストが無事終了し,Z 社では,8 月 1 日から消費者向けにオンラインショッピングサイトを提供することを決定した。ただし,8 月 1 日から 9 月 30 日までの 2 か月間は,オンラインショッピングサイトの初期提供期間として位置付け,Z 社のメールマガジン購読者だけがアクセスできるようにして,オンラインショッピングサイトを公開する。10 月 1 日からは,本格サービスとして,全ての消費者向けにオンラインショッピングサイトを公開する予定である。

U 氏は,8 月 1 日からは,初期提供期間の利用者数に見合ったリソースで運用を開始する方針とした。そして,10 月 1 日からは,本格サービスの利用者数に見合ったリソースを追加する計画である。

8 月 1 日からのサービス提供開始に当たって,営業管理部からの要望を受け,情報システム部と営業管理部は,W サービスのサービスレベルについて SLA を締結することにした。SLA 締結に向けた話合いの中で,営業管理部から,“オンラインショッピングサイトという新規サービスの提供に当たって,サービス稼働中は,利用者が快適に使用できる環境を提供したい。”との意見が出された。そこで,U 氏は,初期提供期間のサービス利用者を対象として,アンケート方式による顧客満足度調査を行うことにした。

出題趣旨(IPA)

ITサービスマネージャには,サービスレベルに関する顧客の要件(ServiceLevelRequirement)を踏まえてサービスレベルの目標値を設定し,目標の達成に向けて必要なリソースを調達してサービスを提供することが求められる。本問では,サービスレベルの目標値を設定して管理する能力,及び目標達成に向けて適切な対応を行う能力を問う。

設問と解答例

設問1

〔W サービスのサービスレベル目標〕において,表 1 に示された稼働率に関する W サービスのサービスレベル目標を達成するためには,W システムの稼働率の目標値を,最低何%に設定する必要があるか。1 年を 365 日とし,小数第 3 位を四捨五入して,小数第 2 位まで答えよ。

解答例(2通り)

  • 99.42
  • 98.20
解説

本文の根拠

表 1 項番2

基本的には 24 時間 365 日,W サービスを利用できるようにする。メンテナンスなどによる計画停止は,毎月第 3 日曜日の 23 時から翌日 8 時までとする。計画停止以外のサービス停止は,年間 50 時間以内とする。

計画停止は毎月 23 時〜翌 8 時の 9 時間で,年に 9 × 12 = 108 時間。1 年は 24 × 365 = 8,760 時間なので,動かす予定の時間は 8,760 − 108 = 8,652 時間である。

そのうち止まってよいのは 50 時間なので,稼働率は (8,652 − 50) ÷ 8,652 ≒ 99.422%。小数第 3 位を四捨五入して「99.42」。

計画停止も停止に数えて 1 年全体で割る考え方もあり,(8,760 − 108 − 50) ÷ 8,760 ≒ 98.196%で「98.20」になる。解答例はどちらも正解としている。

設問2(1) 解答欄2つ

本文中の下線(ア)について,A 社の標準サービスでは表 1 に示されたサービスレベル目標を達成できない理由を二つ挙げ,それぞれ 30 字以内で具体的に述べよ。

〔①〕解答例

  • プラットフォームの稼働率が99.9%に満たないから

〔②〕解答例

  • 障害発生時の連絡時間に関して規定がないから
解説

本文の根拠

〔クラウドサービスの活用〕

稼働率に関するサービスレベル目標を達成するためには,プラットフォーム部分の稼働率を 99.9%以上にする必要があると判断した。

表 2

項番2 プラットフォームの稼働率:A 社 99.5%以上,B 社 99.5%以上。

表 2

項番4 障害発生時の連絡時間:A 社 規定なし

表 1 項番4

障害が発生した場合には,障害検知から 30 分以内に営業管理部に連絡する。

表 1 のサービスレベル目標と,A 社の標準サービス(表 2)を 1 行ずつ突き合わせる。

まず稼働率。U 氏はプラットフォームに 99.9%以上が要ると判断したが,A 社は 99.5%以上しか約束していない。次に障害連絡。W サービスは検知から 30 分以内に営業管理部へ連絡する目標があるのに,A 社は障害発生時の連絡時間を規定していない。クラウド側の障害を知らされなければ,30 分以内の連絡はできない。

①・②とも 30 字以内。解答例は「プラットフォームの稼働率が99.9%に満たないから」(24字)と「障害発生時の連絡時間に関して規定がないから」(21字)。リソース追加の所要時間は A 社のほうが短いので,理由にならない。

設問2(2) 40字以内

U 氏は,W サービスのサービスレベル目標を達成するために,“リソース追加の所要時間”オプションを選択した。このオプションを選択した理由について,40 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • 応答時間が3秒を超えた場合は,2時間以内に改善する必要があるから
解説

本文の根拠

表 1 項番1

応答時間は,3 秒以内とする。3 秒を超えた場合は,システムを停止させずに,応答性能の改善を 2 時間以内に実施する。

〔クラウドサービスの活用〕

また,Web 画面の応答性能が低下した場合には,CPU,メモリなどを迅速に増強して改善することにした。

表 2

項番1 リソース追加の所要時間:A 社 依頼から 30 分以内,B 社 依頼から 1 営業日以内。

応答性能の目標では,3 秒を超えたら 2 時間以内に改善しなければならない。U 氏は,応答が遅くなったら CPU やメモリを増強して改善すると決めている。

B 社の標準サービスでは,リソースの追加は依頼から 1 営業日以内で,2 時間では間に合わない。オプションを選べば 30 分以内になり,2 時間の中で増強できる。

40字。解答例は「応答時間が3秒を超えた場合は,2時間以内に改善する必要があるから」で31字。「3 秒」「2 時間以内」の数字を入れて,表 1 のどの目標を守るためかを示す。

採点講評(IPA)

設問2(2)は,正答率が高かった。Web画面の応答性能のサービスレベル目標を達成するために,オプションの選択が必要であることが,おおむね理解されているようであった。

設問3(1) 50字以内

本文中の下線(イ)の対応を行わなかった場合には,オンラインショッピングサイトの提供開始後にプラットフォームの障害が発生したときに,W サービスのサービスレベル目標に関して問題が生じるおそれがある。問題の内容を,50 字以内で具体的に述べよ。

解答例(2通り)

  • プラットフォームの復旧時間が3時間30分を超えた場合に,Wシステムを5時間以内に復旧できない。
  • プラットフォームの復旧時間が4時間以内なので,5時間以内にWシステムを復旧できないことがある。
解説

本文の根拠

表 1 項番3

障害が発生した場合には,5 時間以内に復旧させる。

表 2

項番3 プラットフォームの復旧時間:A 社 4 時間以内,B 社 4 時間以内。

〔オンラインショッピングサイトの提供〕

回復後,全機能が正常であることを自社内で確認してから,消費者向けサービスを再開する。

〔オンラインショッピングサイトの提供〕

しかし,確認作業は 1 時間 30 分も掛かることが判明した。

プラットフォームが壊れると,B 社の復旧に最大 4 時間掛かる。そのあと社内ルールで全機能を確かめてから再開するので,確認の時間が足される。

確認に 1 時間 30 分掛かると,4 時間 + 1 時間 30 分 = 5 時間 30 分で,復旧時間の目標 5 時間を超える。B 社の復旧が 3 時間 30 分を超えたら間に合わない。下線(イ)で確認を 1 時間に縮めたので,4 時間 + 1 時間 = 5 時間に収まった。

50字。解答例は「プラットフォームの復旧時間が3時間30分を超えた場合に,Wシステムを5時間以内に復旧できない。」で47字。「どういう場合に」「どの目標を守れないか」を書く。

設問3(2) 40字以内

Web 画面の応答性能に関するサービスレベル目標について,初期提供期間に確認すべきことを,40 字以内で述べよ。

解答例

  • リソースの使用状況と応答時間の実績値が計画に見合っているかどうか
解説

本文の根拠

〔オンラインショッピングサイトの提供〕

U 氏は,8 月 1 日からは,初期提供期間の利用者数に見合ったリソースで運用を開始する方針とした。そして,10 月 1 日からは,本格サービスの利用者数に見合ったリソースを追加する計画である。

表 1 項番1

応答時間は,3 秒以内とする。

初期提供期間は,利用者の少ない状態に合わせたリソースで始める。10 月からは本格サービスに合わせてリソースを足す計画である。

この 2 か月は,計画したリソースで本当に 3 秒以内を守れているかを確かめる期間になる。リソースの使用状況と応答時間の実績を見て,計画と合っているかを確認しておけば,10 月に足すリソースの量も実績から見直せる。

40字。解答例は「リソースの使用状況と応答時間の実績値が計画に見合っているかどうか」で31字。「リソース」と「応答時間」の両方を,計画と照らすことを書く。

採点講評(IPA)

設問3(2)は,リソースに関する計画や各種実績値に着眼していない回答が多く,正答率は低かった。本格サービスに先立って初期提供期間を設けた意図を考えて,正解を導き出してほしかった。

設問3(3) 20字以内

顧客満足度調査のアンケートで質問すべき内容は何か。サービスレベル目標との関係から,20 字以内で述べよ。

解答例

  • Web画面の応答性能に関する満足度
解説

本文の根拠

〔オンラインショッピングサイトの提供〕

“オンラインショッピングサイトという新規サービスの提供に当たって,サービス稼働中は,利用者が快適に使用できる環境を提供したい。”との意見が出された。

表 1 項番1

Web 画面の応答性能

営業管理部の意見は「利用者が快適に使用できる環境」である。サービスレベル目標のうち,利用者の快適さに直接かかわるのは Web 画面の応答性能である。

稼働率や復旧時間は止まったときの話で,動いているときの使い心地は表さない。数値の目標(3 秒以内)が利用者にとって十分かを,アンケートで確かめる。

20字。解答例は「Web画面の応答性能に関する満足度」で17字。「満足度」と書いて,アンケートで問う形にする。

出典:平成24年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問1(表記を一部改変)

問2 IT サービス財務管理

IT サービス財務管理に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

Y 電鉄は,P 市と Q 市とを結ぶ列車を運行している鉄道会社であり,ホテルも経営している。Y 電鉄の情報システム部では,これらの業務を支える基幹システムとして,総合予約システムを運用している。

〔総合予約システムの概要〕

総合予約システムの構成を,図 1 に示す。現在のハードウェア及びソフトウェアは,2009 年 4 月の総合予約システムリリース時に使用を開始した。

利用者 PC がインターネットを経由して FW につながる構成図。FW の先には,負荷分散装置①とその配下の Web サーバ①・②・③,負荷分散装置②とその配下の AP サーバ①・②,DB サーバが接続されている。AP サーバ①・②は負荷分散装置③にもつながり,負荷分散装置③から専用線を経由して複数の駅端末につながる。FW:ファイアウォール。AP:アプリケーション。DB:データベース。
図 1 総合予約システムの構成

総合予約システムのサービス種別と要求の流れを表 1 に,サーバ 1 台当たりの性能を表 2 に,サーバ 1 台当たりの費用を表 3 に,それぞれ示す。

サービス種別・概要・要求の流れの表。インターネット予約:利用者 PC から予約する。利用者 PC→Web サーバ→AP サーバ→DB サーバ。窓口予約:駅端末から予約する。駅端末→AP サーバ→DB サーバ。サイト閲覧(注1):利用者 PC から観光案内を閲覧する。利用者 PC→Web サーバ。注1)サイト閲覧は,Web サーバだけで要求が完結する。
表 1 総合予約システムのサービス種別と要求の流れ
サーバの種類ごとの処理能力(単位 要求/秒)。Web サーバ 6,AP サーバ 15,DB サーバ 40。
表 2 サーバ 1 台当たりの性能
サーバの種類ごとの取得価額と年間保守費(単位 千円)。Web サーバ:取得価額 5,000,年間保守費 750。AP サーバ:10,000,1,500。DB サーバ:20,000,3,000。
表 3 サーバ 1 台当たりの費用

表 2 の処理能力とは,Y 電鉄が定めている“応答時間の目標を達成可能な要求数の上限値”を表している。

また,AP サーバの処理能力は機能別に割当てが可能である。現在,AP サーバ 1 台当たりの処理能力 15 要求/秒のうち,10 要求/秒をインターネット予約に,5 要求/秒を窓口予約に割り当てている。

総合予約システムは毎年 8 月に利用が最も集中し,アクセス要求がピークに達する。Y 電鉄では,2012 年度のピーク時のアクセス要求を次のように予測している。

年度ごとのインターネット予約・サイト閲覧・合計(単位 要求/秒)。2009 年度:10.0,1.0,11.0。2010 年度:13.0,1.5,14.5。2011 年度:16.0,2.0,18.0。注1)年度とは,Y 電鉄の会計年度(4 月 1 日〜翌年 3 月 31 日)を指す。
表 4 ピーク時の Web サーバへのアクセス要求の推移

〔システム運営費用〕

情報システム部では,システム運用に関わる費用(以下,システム運営費用という)を,年度ごとに計算し,管理している。総合予約システムのシステム運営費用の費目を,表 5 に示す。

費目と内容の表。サーバ保守費:Web サーバ,AP サーバ及び DB サーバの保守費。通信機器保守費:FW 及び負荷分散装置の保守費。2009 年度以降は機器増減計画がなかったことから,年間 4,000 千円で一定である。運用人件費:システム運用に必要なオペレーション要員の人件費。総合予約システムの要員は,現在 4 名である。要員 1 人当たりの運用人件費は年間 6,000 千円で一定である。ハードウェア償却費:サーバ及び通信機器の減価償却費。ソフトウェア償却費:DB ソフトウェアなどの減価償却費。減価償却期間は使用開始から 5 年間,減価償却方式は定額法,各年の減価償却費は 4,000 千円である。注記:情報システム部が一括して管理しているネットワーク関連費用は,総合予約システムのシステム運営費用には含まれていない。
表 5 総合予約システムのシステム運営費用の費目

取得したハードウェア資産は,使用開始から減価償却の対象となる。ハードウェア償却費については,耐用年数 5 年,償却率 0.5 の定率法の償却方式を適用している。5 年目までの各年度のハードウェア償却費は次の式で計算し,6 年目以降は償却費が発生しないものとしている。

ハードウェア償却費=(取得価額-前年度までの償却費の合計額)× 0.5

なお,情報システム部では,総合予約システムのハードウェアの耐用年数にかかわらず,新規導入から 7 年間使い続けることを想定している。

〔予算の立案〕

2011 年 12 月,情報システム部の S 氏は,次年度の総合予約システムの予算に関して,経営企画部の T 氏から相談を受けた。T 氏の説明は,次のとおりであった。

“2012 年度のインターネット予約とサイト閲覧を合わせたピーク時の Web サーバへのアクセス要求の予測値は,21.5 要求/秒となる。これは,現在の Web サーバ群の処理能力 18 要求/秒と AP サーバ群のインターネット予約に割り当てられた処理能力 20 要求/秒のいずれも超過する。そこで,Web サーバと AP サーバをそれぞれ 1 台ずつ追加購入することを前提に,予算を立案した。”

これに対して S 氏は,“(ア)2012 年度に,サーバを 1 台だけ追加購入すればよい。”と判断し,サーバの追加購入費用を a 千円,追加購入分を含む年間の全サーバ保守費を b 千円と算定した。後日,S 氏の見直しに基づいた予算案は承認され,2012 年 4 月から追加購入したサーバの使用が始まった。

〔システム運営費用の見直し〕

2012 年の秋に,経営企画部から情報システム部に対して,“総合予約システムのシステム運営方法を 2014 年度までに見直し,2015 年度以降の年間システム運営費用を大幅に削減してほしい”という指示があった。そこで,S 氏が総合予約システムの計画を調査したところ,サーバ増強は当面不要で,サーバに関係する新たな保守費の増加,償却費の発生はないことを確認した。

次に,S 氏は運用作業の改善を実施してシステム運営費用を削減する案の検討を行った。現在,総合予約システムでは,オペレーション要員が磁気テープにバックアップを実施し,複写を行っている。これに対し,大容量磁気ディスクシステム(以下,大容量ディスクという)を導入し,バックアップの実施と複写を自動化することでオペレーション要員を 1 名削減できることが判明した。大容量ディスクの導入には,15,000 千円のハードウェアの購入と年間保守費 2,000 千円が必要である。(イ)S 氏は,できるだけ早期に大容量ディスクの使用を開始することを考えて,2013 年 4 月から稼働させる前提で案(以下,変更案という)をまとめた。

S 氏の検討を受けて,“大容量ディスクを導入せずに現状どおりのバックアップ方式を継続する”案(以下,現行案という)と,変更案との比較が会議で行われた。

〔ネットワーク関連費用の管理方針変更〕

経営企画部は,財務管理をよりきめ細かく行うために,情報システム部が一括管理しているネットワーク関連費用を,社内システムに適切に割り当てることができないか,検討を始めた。総合予約システムに関わるネットワークを,表 6 に示す。

種別と内容の表。専用線接続:駅端末と総合予約システム間を専用線で結ぶ。総合予約システムだけで使用されている。インターネット接続:総合予約システムをインターネットに接続する。総合予約システム以外に,電子メールシステムを使った営業部門と利用者間の情報授受にも使用されている。
表 6 総合予約システムに関わるネットワーク

T 氏は,専用線接続費用とインターネット接続費用の全てを総合予約システムに割り当てる案を策定し,S 氏に打診したところ,S 氏は“(ウ)T 氏の費用割当て案には改善の余地がある。”と指摘した。T 氏は,割当て案を見直すことにした。

出題趣旨(IPA)

ITサービスマネージャには,サービス提供に関わる費用を可視化し,適切な財務管理を行うことが求められる。本問では,投資決定に影響を及ぼすキャパシティ管理の能力とともに,費用の分類と費目ごとに費用を明確にする能力,費用予算を策定し,管理する能力など,ITサービス財務管理の能力を問う。

設問と解答例

設問1(1)(a)

S 氏が追加購入不要と判断したサーバの種類を,Web サーバ,AP サーバのいずれかで答えよ。

解答例

  • APサーバ
解説

本文の根拠

〔予算の立案〕

2012 年度のインターネット予約とサイト閲覧を合わせたピーク時の Web サーバへのアクセス要求の予測値は,21.5 要求/秒となる。これは,現在の Web サーバ群の処理能力 18 要求/秒と AP サーバ群のインターネット予約に割り当てられた処理能力 20 要求/秒のいずれも超過する。

表 4

2009 年度:10.0,1.0,11.0。2010 年度:13.0,1.5,14.5。2011 年度:16.0,2.0,18.0。

T 氏は 21.5 要求/秒を Web サーバにも AP サーバにも当てはめている。しかし AP サーバに来るのはインターネット予約だけで,サイト閲覧は来ない。

インターネット予約は毎年 3.0 ずつ増えているので,2012 年度は 16.0 + 3.0 = 19.0 要求/秒。AP サーバのインターネット予約の枠は 10 × 2 台 = 20 要求/秒で,足りている。Web サーバは 21.5 に対して 6 × 3 台 = 18 なので,こちらは 1 台増やす必要がある。

答えは「AP サーバ」。サイト閲覧も 1.5,2.0 と毎年 0.5 ずつ増えていて,合わせると 19.0 + 2.5 = 21.5 になり,T 氏の数字とも合う。

採点講評(IPA)

設問1(1)(b)は,Webサーバへのアクセス要求合計の予測値(21.5要求/秒)が全てAPサーバで処理されるものと誤解し,インターネット予約と窓口予約の処理能力割当てを変更すればこれらの要求を処理可能とした解答が目立った。問題中の表に記載されている数値の意味について正しく理解することを心がけてもらいたい。

設問1(1)(b) 45字以内

追加購入不要と判断した理由を,総合予約システムの要求の流れに着目して 45 字以内で述べよ。

解答例(2通り)

  • APサーバが処理するWebサーバ経由のアクセス要求に,サイト閲覧は含まれないから
  • APサーバが処理するWebサーバ経由のアクセス要求は,インターネット予約だけだから
解説

本文の根拠

表 1

サイト閲覧(注1):利用者 PC から観光案内を閲覧する。利用者 PC→Web サーバ。注1)サイト閲覧は,Web サーバだけで要求が完結する。

〔総合予約システムの概要〕

現在,AP サーバ 1 台当たりの処理能力 15 要求/秒のうち,10 要求/秒をインターネット予約に,5 要求/秒を窓口予約に割り当てている。

(a)のとおり,AP サーバの枠を超えるかどうかは,インターネット予約だけで見ればよい。表 1 の要求の流れで,サイト閲覧は Web サーバで終わり,AP サーバに届かない。

T 氏はサイト閲覧を含めた 21.5 で比べたので,AP サーバも足りないと判断してしまった。

45字。解答例は「APサーバが処理するWebサーバ経由のアクセス要求に,サイト閲覧は含まれないから」で40字。「要求の流れに着目して」とあるので,表 1 の流れから「サイト閲覧は AP サーバに来ない」を書く。

採点講評(IPA)

設問1(1)(b)は,Webサーバへのアクセス要求合計の予測値(21.5要求/秒)が全てAPサーバで処理されるものと誤解し,インターネット予約と窓口予約の処理能力割当てを変更すればこれらの要求を処理可能とした解答が目立った。問題中の表に記載されている数値の意味について正しく理解することを心がけてもらいたい。

設問1(2) 解答欄2つ

本文中の ab に入れる適切な数値を答えよ。ただし,サーバ 1 台当たりの費用は,表 3 を使用すること。

〔a〕解答例

  • 5,000

〔b〕解答例

  • 9,000
解説

本文の根拠

表 3

Web サーバ:取得価額 5,000,年間保守費 750。AP サーバ:10,000,1,500。DB サーバ:20,000,3,000。

図 1

負荷分散装置①とその配下の Web サーバ①・②・③,負荷分散装置②とその配下の AP サーバ①・②,DB サーバが接続されている。

追加で買うのは Web サーバ 1 台なので,a は取得価額の「5,000」千円。

b は追加分を含めた全サーバの保守費である。今は Web サーバ 3 台,AP サーバ 2 台,DB サーバ 1 台で,1 台足すと Web サーバは 4 台。750 × 4 + 1,500 × 2 + 3,000 × 1 = 3,000 + 3,000 + 3,000 =「9,000」千円。

数値だけを答える。台数は図 1 から数える。

設問1(3)

2012 年 4 月に使用を開始したサーバについて,2014 年度のハードウェア償却費を計算し,千円単位で答えよ。

解答例

  • 625
解説

本文の根拠

〔システム運営費用〕

ハードウェア償却費については,耐用年数 5 年,償却率 0.5 の定率法の償却方式を適用している。

〔システム運営費用〕

ハードウェア償却費=(取得価額-前年度までの償却費の合計額)× 0.5

2012 年 4 月に使い始めた Web サーバは取得価額 5,000 千円で,2012 年度が 1 年目になる。

1 年目(2012 年度)は 5,000 × 0.5 = 2,500。2 年目(2013 年度)は (5,000 − 2,500) × 0.5 = 1,250。3 年目(2014 年度)は (5,000 − 3,750) × 0.5 = 625。

答えは「625」千円。定率法なので,毎年,残りの半分ずつになる。

設問2(1) 40字以内

本文中の下線(イ)について,2013 年度の大容量ディスクに関わる費用が,削減できる運用人件費より高いにもかかわらず,S 氏が大容量ディスクの早期使用開始を考えた理由を,減価償却費に着目して,40 字以内で述べよ。

解答例

  • 2015年度以降の減価償却費負担を減らし,費用削減効果を高めたいから
解説

本文の根拠

〔システム運営費用の見直し〕

2015 年度以降の年間システム運営費用を大幅に削減してほしい

〔システム運営費用の見直し〕

大容量ディスクの導入には,15,000 千円のハードウェアの購入と年間保守費 2,000 千円が必要である。

〔システム運営費用〕

5 年目までの各年度のハードウェア償却費は次の式で計算し,6 年目以降は償却費が発生しないものとしている。

定率法では,償却費は最初の年が一番大きく,年ごとに半分になる。大容量ディスクは 1 年目 7,500,2 年目 3,750,3 年目 1,875 千円である。

経営企画部が削減を求めているのは 2015 年度以降である。2013 年 4 月に始めれば,大きい 1・2 年目の償却費は 2013・2014 年度に済み,2015 年度は 1,875 千円まで下がる。遅く始めるほど大きい償却費が 2015 年度以降に残り,削減効果が小さくなる。

40字。解答例は「2015年度以降の減価償却費負担を減らし,費用削減効果を高めたいから」で34字。「減価償却費に着目して」とあるので,いつ償却費が重いかを書く。

採点講評(IPA)

設問2(1)は,特定の年度におけるシステム運営費用の内訳に基づいた解答が多く,正答率が低かった。定率法の償却方式による減価償却や早期の使用開始に着目して,正解を導き出してほしかった。

設問2(2)(a)

現行案と変更案のどちらが有利か。答案用紙の現行案・変更案のいずれかを○で囲んで示せ。

解答例

  • 変更案
解説

本文の根拠

〔システム運営費用の見直し〕

大容量ディスクという)を導入し,バックアップの実施と複写を自動化することでオペレーション要員を 1 名削減できることが判明した。

表 5

要員 1 人当たりの運用人件費は年間 6,000 千円で一定である。

2014 年度に,変更案で増える費用と減る費用を比べる。増えるのは大容量ディスクの保守費 2,000 千円と,2 年目の償却費 (15,000 − 7,500) × 0.5 = 3,750 千円で,合計 5,750 千円。

減るのはオペレーション要員 1 名分の人件費 6,000 千円。差し引きで変更案のほうが 250 千円安い。

答えは「変更案」。2013 年度(1 年目)は増える費用が 2,000 + 7,500 = 9,500 千円で,現行案のほうが安い。年度によって有利な案が入れ替わる。

設問2(2)(b)

両案の年間システム運営費用の差を,千円単位で答えよ。

解答例

  • 250
解説

本文の根拠

〔システム運営費用の見直し〕

S 氏が総合予約システムの計画を調査したところ,サーバ増強は当面不要で,サーバに関係する新たな保守費の増加,償却費の発生はないことを確認した。

サーバの保守費や償却費は両案で同じなので,差は大容量ディスクと人件費の分だけになる。

変更案は保守費 2,000 + 償却費 3,750 = 5,750 千円増え,人件費が 6,000 千円減る。差は 6,000 − 5,750 = 250 千円。

答えは「250」千円。両案に共通する費目は比べる前に消しておくと,計算が短くなる。

設問3(1) 40字以内

本文中の下線(ウ)について,S 氏が指摘した理由を,40 字以内で述べよ。

解答例

  • インターネット接続費用は総合予約システムだけで使用している費用ではないから
解説

本文の根拠

表 6

インターネット接続:総合予約システムをインターネットに接続する。総合予約システム以外に,電子メールシステムを使った営業部門と利用者間の情報授受にも使用されている。

表 6 を見ると,専用線は総合予約システムだけで使っている。これは全額を総合予約システムに割り当ててよい。

インターネット接続は,総合予約システムのほかに電子メールシステムでも使っている。全額を総合予約システムに付けると,電子メールシステムの分まで負担させることになり,費用の実態と合わない。

40字。解答例は「インターネット接続費用は総合予約システムだけで使用している費用ではないから」で37字。専用線ではなくインターネット接続のほうが問題だと,費目を特定して書く。

設問3(2) 40字以内

本文中の下線(ウ)の費用割当て案の改善には,どのような仕組みが必要か,40 字以内で述べよ。

解答例

  • 総合予約システムと電子メールシステムでインターネット接続費用を配賦する仕組み
解説

本文の根拠

〔ネットワーク関連費用の管理方針変更〕

経営企画部は,財務管理をよりきめ細かく行うために,情報システム部が一括管理しているネットワーク関連費用を,社内システムに適切に割り当てることができないか,検討を始めた。

インターネット接続は複数のシステムで共用している。共用している費用を各システムに割り当てるには,使った量などの基準で分ける「配賦」が要る。

総合予約システムと電子メールシステムの間で,インターネット接続費用を配賦する仕組みを作れば,それぞれのシステムに見合った費用を割り当てられる。

40字。解答例は「総合予約システムと電子メールシステムでインターネット接続費用を配賦する仕組み」で37字。「配賦」の語と,配賦する相手の2つのシステムを入れる。

採点講評(IPA)

設問3(2)は,システムごとの回線使用量を把握可能とすることだけに言及した解答が多くみられた。ITサービス財務管理という視点においては,技術的な面だけにとどまらず,サービスへの費用の割当ての重要性を理解しておいてほしい。

出典:平成24年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問2(表記を一部改変)

問3 アプリケーションの受入れ

アプリケーションの受入れに関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

E 社は,旅行代理店向けにサービスを提供する会社である。E 社は,旅行代理店のシステムから宿泊予約が成立した旨の通知を受け,全国に約 1 万軒あるホテル,旅館など(以下,宿泊施設という)に宿泊予約者の情報を送信するサービス(以下,宿泊通知サービスという)を提供している。

〔宿泊通知サービスの概要〕

宿泊通知サービスは,旅行代理店ごとに契約している宿泊施設の宛先を,あらかじめ登録することによって,複数の旅行代理店のシステムから受信した,宿泊予約者の情報(以下,宿泊通知という)を,宿泊施設の PC 及びファクシミリ装置(以下,FAX という)宛てに送信することができる。宿泊施設の PC では,E 社が開発した専用ソフトウェアを利用して,通知を受信したり,過去に受信した通知を再度取り出したりすることができる。宿泊通知サービスのシステム構成を,図 1 に示す。

旅行代理店1〜n のシステムが VPN を経由して宿泊通知管理システム内の宿泊通知管理サーバにつながる構成図。宿泊通知管理サーバには宛先ファイル,送信ファイル,蓄積ファイル,課金ファイル,ログファイルと FAX 送信サーバが接続されている。宿泊通知管理サーバは別の VPN を経由して宿泊施設1〜m の PC につながり,FAX 送信サーバは公衆電話網を経由して宿泊施設1〜p の FAX につながる。
図 1 宿泊通知サービスのシステム構成

旅行代理店のシステムは,VPN 経由で宿泊通知管理システムに接続する。旅行代理店のシステムからの通知を宿泊通知管理サーバが受信した後,宿泊施設に送信する。宿泊施設の PC への通知は,VPN 経由で PC の専用ソフトウェアに送信される。宿泊施設の FAX への通知は,FAX 送信サーバから公衆電話網経由で送信される。

宿泊通知管理システムは,E 社のシステム部が運用している。旅行代理店及び宿泊施設からの問合せは,システム部が運営するサポートデスクで受け付けている。

〔宿泊通知サービスの機能〕

宿泊通知サービスの機能を表 1 に示す。

項番・機能・概要の表。項番1 PC 宛て送信:登録済の宿泊施設の PC 宛てに宿泊通知を送信する。項番2 FAX 宛て送信:登録済の宿泊施設の FAX 宛てに宿泊通知を送信する。項番3 送信結果の回答:PC 宛て及び FAX 宛ての宿泊通知の送信結果を,旅行代理店のシステムに後日まとめて回答する。項番4 蓄積データ取出し:過去 6 か月以内に受信した宿泊通知を再度取り出すことができる。
表 1 宿泊通知サービスの機能

〔宿泊通知管理システムのリニューアル〕

E 社では,サービス拡大のために,旅行代理店が宿泊通知の送信状況をリアルタイムに把握できる機能(以下,送信状況確認機能という)を追加することにした。宿泊通知管理システムは,利用開始から 7 年が経過し,その間に,接続する旅行代理店数及び宿泊通知件数が大幅に増加し,処理能力の増強やソフトウェア構成の大幅な見直しも必要となってきたので,リニューアルを行うことにした。現在の宿泊通知管理システムは,独立したハードウェアで稼働しているが,新システムではハードウェア費用を低減させるために,E 社が既に運用しているサーバ上に本番環境を構築することにした。このサーバでは,E 社がサービスを提供する多数のシステムが稼働している。深夜には,各サービス用システムでバッチ処理及びバックアップ処理が行われていて,ファイル書込み処理の負荷が高い。

システム部の F 部長は,IT サービスマネージャの K 氏に,新システムの受入れテストの実施,及びリスクが最小限となるようなシステム移行計画の作成を指示した。

〔旅行代理店のグループ分けと保有ファイル〕

宿泊通知サービスを利用する旅行代理店は,契約している宿泊施設が表 1 に示す蓄積データ取出し機能を利用しているかどうか,及び宿泊通知サービスに何らかのトラブルが発生した場合に旅行代理店のシステムから宿泊通知を再送できるかどうかによって,表 2 に示す四つのグループに分類できる。K 氏は,新システムに移行するファイルについて検討するために,宿泊通知管理システムが保有しているファイルを調査し,その結果を表 3 にまとめた。

旅行代理店のグループごとの蓄積データ取出しとトラブル時の宿泊通知の再送の表。グループ1:×,できる。グループ2:×,できない。グループ3:○,できる。グループ4:○,できない。注記:○:機能を利用する。×:機能を利用しない。
表 2 宿泊通知サービスを利用する旅行代理店のグループ分け
ファイル名と用途・特徴の表。宛先ファイル:旅行代理店ごとに,送信可能な宿泊施設の PC 又は FAX の宛先が記録されたファイル。データ量が多く頻繁に追加,変更及び削除が発生し,データの更新頻度が高い。送信ファイル:旅行代理店のシステムから受信し,PC 又は FAX に送信中の宿泊通知が記録されたファイル。宿泊通知ごとにファイルが作成され,送信完了後に削除される。蓄積ファイル:PC からの取出しのために,過去に送信した宿泊通知が記録されたファイル。旅行代理店ごとに 1 日 1 ファイルが作成される。課金ファイル:旅行代理店への請求用データが記録されたファイル。1 日に 1 回,課金システムに送信して課金処理を行う。ログファイル:システムのログ情報が記録されたファイル。システム障害時の調査などで利用する。
表 3 宿泊通知管理システムが保有しているファイル

〔受入れテストの実施〕

K 氏は,新システムへの切替えが可能かどうかを評価するために,受入れテストを行った。受入れテストでは,機能確認テスト,障害テスト及び負荷テストを実施する。K 氏は,本番環境と同一の性能がある開発環境を利用して,機能確認テストと障害テストを実施した。機能確認テストでは,表 1 に示す機能,及び新機能である送信状況確認機能について,正常系,異常系の動作を検証し,問題がないことを確認した。さらに,旅行代理店との間で取り決めているメンテナンス日に本番環境を使って,大量の宿泊通知を送信する負荷テスト用ソフトウェアを利用し,疑似的な複数の旅行代理店のシステムからテスト用の宛先に大量のテストデータを送信し,新機能である送信状況確認機能を利用する負荷テストを実施した。現在のシステム構築時に想定した旅行代理店数及び宿泊通知件数のテストデータを用いて負荷をかけても,処理性能に問題がないことを確認した。K 氏は,以上のテスト結果から,新システムは切替え可能な品質であると判断した。

〔新システムへの移行方式の検討〕

K 氏は,旅行代理店向けのサービス提供に支障が出ないように,1 か月程度,新旧システムを並行稼働させ,旅行代理店ごとに順次新システムに移行するシステム移行計画をまとめた。接続方式には変更がなく,宿泊施設の PC の専用ソフトウェアも変更する必要がないので,旅行代理店のシステムの接続先を,現システムから新システムに変更することで,旅行代理店ごとに移行することができる。切替え回数を減らすために,表 2 のグループ単位で複数の旅行代理店をまとめて新システムに移行することにした。この方式では,新システム移行後に不具合が見つかり,切戻しが必要となった場合でも,グループ単位で現システムに戻すことができる。K 氏はリスクを低減するために,表 2 のグループについて,(ア)前半でグループ 1,グループ 3 の順に切り替え,後半でグループ 2,グループ 4 の順に切り替えることにした

〔ファイル移行計画の検討〕

宿泊通知サービスのサービス提供時間は,午前 4 時から翌日午前 3 時までであり,システム移行に利用できる時間は 1 時間しかない。表 3 の全てのファイルを移行するには,1 時間では足りない。ファイル移行時間を短縮するために,並行稼働開始前に,新システムに全ての宛先ファイルを移行しておき,全ての旅行代理店の新システムへの移行が完了するまで,新旧のシステムで宛先の追加,変更及び削除について同一の処理を行うことにした。また,ログファイルは新旧のシステムで形式が異なるので移行は不要と判断した。

K 氏は開発環境のサーバを利用してファイル移行テストを実施し,1 時間以内に移行が完了することを確認した。

〔新システムへの切替え〕

K 氏は,システム移行計画を F 部長に報告し,承認を得たので,新機能である送信状況確認機能と旅行代理店ごとの移行計画について,サポートデスクに説明した。サポートデスクは,旅行代理店からの問合せに対応できるように必要な問合せ対応マニュアルを整備した。

K 氏は,新システムへの移行を開始した。グループ 1 の切替えが予定どおり終了したところで,グループ 3 の旅行代理店から送信状況確認機能の早期リリース要請を受けた。そこで,K 氏は,F 部長と相談し,システム移行計画を当初予定から 1 週間前倒しして,グループ 3 の切替えを実施した。

グループ 3 の切替えを行ったところ,サービス利用量が最大となる午前 9 時頃に処理が遅延する障害が発生した。原因を調査した結果,複数の旅行代理店が,宛先が異なる PC 及び FAX に大量の通知を送信したときに,新機能である送信状況確認機能を利用したところ,処理が遅延していたことが分かった。また,この障害発生時に,サポートデスクでは一部の旅行代理店からの問合せに対して,K 氏から説明された時点の移行計画に基づいて現システムの調査をしたので,回答に時間を要するなど,(イ)対応に手間取った

出題趣旨(IPA)

アプリケーションの受入れでは,運用開始後のシステムの利用方法を想定し,切替え前に機能や設定に問題がないことを適切に検証する必要がある。さらに,システムの切替えに当たっては,提供中のサービスに影響を与えないように,リスクを最小限にする移行計画を策定する必要がある。本問では,ITサービスマネージャとして,受入れ基準,システムを安全,確実に切り替えるための移行計画の策定能力を問う。

設問と解答例

設問1 50字以内

〔新システムへの移行方式の検討〕について,本文中の下線(ア)のように後半でグループ 2 とグループ 4 を切り替えることにした理由を,50 字以内で述べよ。

解答例(2通り)

  • 後半のグループは切戻し時に宿泊通知の再送ができないので,本番業務に影響を与えるリスクがあるから
  • 前半のグループは切戻し時に宿泊通知の再送ができるので,本番業務に影響を与えるリスクが少ないから
解説

本文の根拠

表 2

グループ1:×,できる。グループ2:×,できない。グループ3:○,できる。グループ4:○,できない。

〔新システムへの移行方式の検討〕

この方式では,新システム移行後に不具合が見つかり,切戻しが必要となった場合でも,グループ単位で現システムに戻すことができる。

グループ 1・3 は,トラブルが起きたら旅行代理店のシステムから宿泊通知を再送できる。グループ 2・4 はできない。

新システムに不具合があって現システムへ切り戻すとき,再送できるグループなら送り直せば取り戻せる。再送できないグループは,通知が失われて本番の業務に影響が出る。そこで,影響の小さいグループ 1・3 を先に切り替えて新システムの不具合を出し切り,影響の大きいグループ 2・4 はあとに回す。

50字。解答例は「後半のグループは切戻し時に宿泊通知の再送ができないので,本番業務に影響を与えるリスクがあるから」で46字。「再送できない」ことと「業務への影響」をつなげる。

採点講評(IPA)

設問1は,正答率が高かった。安全にシステムを切り替えるために,リスクを考慮して段階的に切替えを実施していくという考え方は,おおむね理解されているようであった。

設問2(1) 40字以内

宛先ファイルを並行稼働開始前に新システムに移行し,新旧システムで宛先の追加,変更及び削除について同一の処理を行うことによる利点を,ファイル移行時間短縮以外の観点から 40 字以内で述べよ。

解答例

  • 運用開始後に切戻しを行った場合でも,宛先ファイルの移行が不要な点。
解説

本文の根拠

表 3

宛先ファイル:旅行代理店ごとに,送信可能な宿泊施設の PC 又は FAX の宛先が記録されたファイル。データ量が多く頻繁に追加,変更及び削除が発生し,データの更新頻度が高い。

〔ファイル移行計画の検討〕

全ての旅行代理店の新システムへの移行が完了するまで,新旧のシステムで宛先の追加,変更及び削除について同一の処理を行うことにした。

移行中は,旅行代理店をグループごとに切り替え,不具合があれば現システムに戻す。宛先ファイルは更新が多いので,普通なら,戻すたびに新システムで変わった宛先を現システムに移し直さなければならない。

新旧で同じ更新を続けていれば,どちらの宛先ファイルも常に同じ中身になる。切戻しになっても宛先ファイルを移す作業が要らない。

40字。解答例は「運用開始後に切戻しを行った場合でも,宛先ファイルの移行が不要な点。」で32字。移行時間の短縮以外という条件なので,切戻しの場面での利点を書く。

採点講評(IPA)

設問2(1)は,新旧システムで内容が同一となってバックアップとして利用できるなどとした誤った解答が多く,正答率が低かった。移行計画を策定する場合は,トラブル発生時の切戻しが容易になるよう事前に検討しておくことが,ITサービスを安定して提供するために重要であることを認識してほしい。

設問2(2) 30字以内

ファイル移行計画を見直すことで,切替え当日のファイル移行時間を短縮することができる。作業内容を具体的に,30 字以内で述べよ。

解答例

  • 過去分の蓄積ファイルを事前に新システムに移行する。
解説

本文の根拠

表 3

蓄積ファイル:PC からの取出しのために,過去に送信した宿泊通知が記録されたファイル。旅行代理店ごとに 1 日 1 ファイルが作成される。

〔ファイル移行計画の検討〕

ファイル移行時間を短縮するために,並行稼働開始前に,新システムに全ての宛先ファイルを移行しておき

切替え当日に移す必要があるのは,宛先ファイル(事前に移行済み)とログファイル(移行不要)を除いた,送信・蓄積・課金ファイルである。

蓄積ファイルは 1 日 1 ファイルで,過去の日の分はもう書き換わらない。当日より前の分を切替えの前に新システムへ移しておけば,当日は当日分だけを移せばよい。蓄積ファイルは最大 6 か月分あるので,減らせる量が大きい。

30字。解答例は「過去分の蓄積ファイルを事前に新システムに移行する。」で24字。「過去分」と「事前に」の2語が要点になる。

採点講評(IPA)

設問2(2)は正答率が高かった。切替え当日の作業量軽減対策については,よく理解されているようだった。

設問2(3) 40字以内

K 氏が実施したファイル移行テストではテスト要件として不十分な内容がある。テスト要件として適切な内容を 40 字以内で述べよ。

解答例

  • 本番環境で発生する負荷の高い状況でも1時間以内にファイル移行が完了できること
解説

本文の根拠

〔宿泊通知管理システムのリニューアル〕

新システムではハードウェア費用を低減させるために,E 社が既に運用しているサーバ上に本番環境を構築することにした。このサーバでは,E 社がサービスを提供する多数のシステムが稼働している。深夜には,各サービス用システムでバッチ処理及びバックアップ処理が行われていて,ファイル書込み処理の負荷が高い。

〔ファイル移行計画の検討〕

K 氏は開発環境のサーバを利用してファイル移行テストを実施し,1 時間以内に移行が完了することを確認した。

〔ファイル移行計画の検討〕

宿泊通知サービスのサービス提供時間は,午前 4 時から翌日午前 3 時までであり,システム移行に利用できる時間は 1 時間しかない。

ファイルを移す 1 時間は午前 3 時〜4 時の深夜である。本番のサーバは他のシステムと共用で,深夜はバッチやバックアップのファイル書込みで負荷が高い。

移行テストは開発環境のサーバで行ったので,この負荷がない。ファイルの移行も書込みなので,本番の深夜では遅くなるおそれがある。本番で起こる高い負荷をかけた状態で,1 時間以内に終わるかを確かめる必要がある。

40字。解答例は「本番環境で発生する負荷の高い状況でも1時間以内にファイル移行が完了できること」で37字。「負荷の高い状況」と「1 時間以内」の2つの条件をそろえる。

設問3(1) 40字以内

処理が遅延する障害が発生したのは,受入れテストに問題があったからである。受入れテストの問題点を,40 字以内で述べよ。

解答例

  • 負荷テストにおいて旅行代理店数及び宿泊通知件数の増加を考慮していない。
解説

本文の根拠

〔宿泊通知管理システムのリニューアル〕

宿泊通知管理システムは,利用開始から 7 年が経過し,その間に,接続する旅行代理店数及び宿泊通知件数が大幅に増加し

〔受入れテストの実施〕

現在のシステム構築時に想定した旅行代理店数及び宿泊通知件数のテストデータを用いて負荷をかけても,処理性能に問題がないことを確認した。

負荷テストは,7 年前に今のシステムを作ったときの旅行代理店数と宿泊通知件数で行っている。その後,どちらも大幅に増えた。

実際に遅延が起きたのは,利用量が最大の午前 9 時ごろ,複数の旅行代理店が大量に送ったときである。今の規模で負荷をかけていれば,テストの段階で見つけられた。

40字。解答例は「負荷テストにおいて旅行代理店数及び宿泊通知件数の増加を考慮していない。」で34字。どの数字を増加分として考えるべきだったかを,本文の語で書く。

採点講評(IPA)

設問3(1)は,機能確認テストが不十分というような誤った解答が多く,正答率は低かった。負荷テストの実施内容が不十分な場合,システムの切替え後にトラブルが発生すると業務への影響が大きくなる。テストの実施方法や負荷が適正かの見極めについて,十分に理解しておいてほしい。

設問3(2) 40字以内

本文中の下線(イ)の再発防止のために実施すべき内容を,40 字以内で述べよ。

解答例

  • 移行計画が変更された場合は,サポートデスクに最新のリリース計画を説明する。
解説

本文の根拠

〔新システムへの切替え〕

K 氏は,F 部長と相談し,システム移行計画を当初予定から 1 週間前倒しして,グループ 3 の切替えを実施した。

〔新システムへの切替え〕

サポートデスクでは一部の旅行代理店からの問合せに対して,K 氏から説明された時点の移行計画に基づいて現システムの調査をしたので,回答に時間を要するなど

移行計画は 1 週間前倒しになったのに,サポートデスクには伝わっていなかった。サポートデスクは古い計画のまま,グループ 3 はまだ現システムだと思って調べてしまった。

問合せに答えるサポートデスクは,どの旅行代理店がどちらのシステムにいるかを正しく知っている必要がある。計画が変わったら,そのたびにサポートデスクへ最新の計画を説明する。

40字。解答例は「移行計画が変更された場合は,サポートデスクに最新のリリース計画を説明する。」で36字。「変更された場合は」と条件を付け,一度きりの説明で終わらないようにする。

出典:平成24年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(表記を一部改変)

問4 セキュリティ管理における脆弱性検査

セキュリティ管理における脆弱性検査に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

C 社は,健康食品の製造・販売会社である。インターネットを利用した販売を行うためのシステムとして,Web サーバ,データベースサーバ(以下,DB サーバという),メールサーバなどで構成される販売管理システムを運用している。

最近,インターネットを利用した同業他社の販売管理システムが不正アクセスを受け,顧客情報が漏えいする事件があった。そこで,情報システム部の J 部長は,セキュリティ対策の有効性を確認するために脆弱性検査を行う必要があると考え,IT サービスマネージャの D 氏に,脆弱性検査会社の R 社と協力して検査を行うよう指示した。

〔C 社販売管理システムの概要〕

販売管理システムの利用者には,顧客,営業部員などがいる。顧客は,顧客 PC からインターネット経由で Web サーバにアクセスし,商品を検索して購入する。営業部員は,社員 PC から Web サーバにアクセスし,受注,在庫確認などを行う。

販売管理システムの構成を図 1 に示す。

顧客 PC がインターネットを経由して C 社の FW につながる構成図。FW には外部接続セグメント,内部セグメント,社内 LAN の3つがつながっている。外部接続セグメントには Web サーバとメールサーバ,内部セグメントには DB サーバ,社内 LAN には複数の社員 PC が接続されている。外部接続セグメント:インターネットに接続するサーバを設置するセグメント。内部セグメント:社内 LAN 及び外部接続セグメントだけからアクセス可能なセグメント。社内 LAN:社員 PC を設置するセグメント。FW:ファイアウォール。
図 1 販売管理システムの構成

〔販売管理システムのセキュリティ対策〕

販売管理システムのセキュリティ対策は次のとおりである。

〔FW のアクセス制御要件〕

FW のアクセス制御要件は次のとおりである。

〔サーバの監視〕

販売管理システムのサーバの監視は,監視サービス会社に委託している。レスポンスの低下及びハードウェア障害を検知した場合は,自動的に監視サービス会社に通知され,監視サービス会社が迅速に初動対応を行っている。

月 1 回の定期保守の際,システム管理者が各サーバの時刻を確認し,FW の時刻と異なる場合は,手動で時刻を補正しているが,時刻が大きくずれていることも多い。

〔脆弱性検査の計画〕

D 氏は,R 社と打合せを行い,脆弱性検査を,次のように計画した。

検査の準備作業として,D 氏は,社内 LAN に設置する C 社の検査端末のプライベート IP アドレスを R 社に連絡するとともに,(ア)R 社の検査端末のグローバル IP アドレスを確認した

〔脆弱性検査の結果〕

R 社から C 社に対して,脆弱性検査の結果が報告された。報告の一部として,発見されたサーバとサービスを表 1 に,発見された脆弱性を表 2 に示す。

検査元・経由・検査先セグメント・発見されたサーバと,発見されたサービス(HTTP,HTTPS,TELNET,DNS,SMTP,POP)の表。R 社検査端末からインターネット経由で外部接続セグメントを検査:Web サーバで HTTP,HTTPS,TELNET,メールサーバで DNS,SMTP が発見された。C 社検査端末から社内 LAN 経由で外部接続セグメントを検査:Web サーバで HTTP,HTTPS,TELNET,メールサーバで DNS,SMTP,POP が発見された。C 社検査端末から社内 LAN 経由で内部セグメントを検査:DB サーバでは表中のサービスは発見されなかった。注記:○は,発見されたサービスを示す。
表 1 発見されたサーバとサービス
No.・緊急度・詳細内容と,脆弱性が発見された検査対象サーバ(Web サーバ,メールサーバ)の表。No.1 緊急度 高:脆弱性①:パッチ X が未適用であり,バッファオーバフローによって管理者権限を奪われる。Web サーバとメールサーバで発見。No.2 緊急度 高:脆弱性②:総当たり攻撃によってシステム管理者の利用者 ID とパスワードが発見される。Web サーバで発見。No.3 緊急度 高:脆弱性③:メールヘッダインジェクションによって意図しないメール送信が可能である。Web サーバで発見。以下省略。注記:○は,脆弱性が発見されたサーバを示す。
表 2 発見された脆弱性

〔脆弱性への対応〕

D 氏は,R 社からの報告を受け,(イ)過去のログを確認した。また,次の対策を検討し,J 部長の承認を得た。

〔外部監査人の指摘〕

C 社は,内部統制強化の一環として,システム運用に関して,外部監査人による監査を受けた。監査の結果,2 点の指摘を受けた。

D 氏は,②の対策として,NTP サーバの導入を J 部長に提案し,了承を得た。

出題趣旨(IPA)

脆弱性検査は,脆弱性を発見するための有効な手段の一つである。本問では,脆弱性検査や仮想攻撃,ログの管理を通じて,情報セキュリティにおけるリスクを低減させ適切な管理策を選定する能力,情報システムへのアクセス管理策を策定する能力を問う。

設問と解答例

設問1(1) 40字以内

脆弱性検査を本番サービス実行中に行う予定である。これによる混乱を避けるために,事前に実施すべき対策が他にもある。対策を 40 字以内で述べよ。

解答例

  • 販売管理システムの監視サービス会社に対し,脆弱性検査の計画を通知する。
解説

本文の根拠

〔サーバの監視〕

販売管理システムのサーバの監視は,監視サービス会社に委託している。レスポンスの低下及びハードウェア障害を検知した場合は,自動的に監視サービス会社に通知され,監視サービス会社が迅速に初動対応を行っている。

〔脆弱性検査の計画〕

検査によってシステムへの負荷が増えるが,潜在する脆弱性を極力洗い出すために,R 社が検査可能な項目のほぼ全てを検査する。

〔脆弱性検査の計画〕

検査日程と,考えられる検査の影響を社内関連部門に事前に通知する。

検査は本番サービス中に行い,ほぼ全項目を試すので負荷が増える。レスポンスが落ちると,監視サービス会社に自動で通知され,監視サービス会社は障害だと思って初動対応を始めてしまう。

事前に知らせる相手は社内関連部門だけになっている。社外の監視サービス会社にも検査の計画を伝えておけば,検査による変化を障害と取り違えずに済む。

40字。解答例は「販売管理システムの監視サービス会社に対し,脆弱性検査の計画を通知する。」で34字。計画(4)が社内だけなので,「社外の誰に」を書く。

設問1(2) 40字以内

本文中の下線(ア)について,D 氏がグローバル IP アドレスを確認した目的を,40 字以内で述べよ。

解答例

  • 各サーバのログを,検査に伴うレコードと通常運用のレコードに区別するため
解説

本文の根拠

〔C 社販売管理システムの概要〕

Web サーバ,DB サーバ及びメールサーバでは,ログを取得している。情報システム部では,それらを販売管理システムのログとして管理している。

〔販売管理システムのセキュリティ対策〕

D 氏は,ログとその統計情報から不正アクセスの有無を点検している。

検査は攻撃をまねてサーバにアクセスするので,各サーバのログには不正アクセスそっくりの記録が大量に残る。D 氏はログから不正アクセスを点検しているので,そのままでは本物の攻撃と見分けられない。

検査端末の IP アドレスが分かっていれば,その送信元のレコードは検査によるものと区別できる。社外は R 社のグローバル IP アドレス,社内は C 社の検査端末のプライベート IP アドレスである。

40字。解答例は「各サーバのログを,検査に伴うレコードと通常運用のレコードに区別するため」で35字。何と何を分けるのかを書く。

採点講評(IPA)

設問1(2)はファイアウォールの設定を変更し検査端末がサーバへアクセスしやすくするなどの誤った解答が多く,正答率は低かった。本番環境で脆弱性検査を行う場合は,サーバのログを,検査に伴うレコードと通常運用のレコードに区別し,解析などを行う必要があることを意識しておいてほしい。

設問2(1) 40字以内

本文中の下線(イ)について,過去のログを確認する目的を,40 字以内で述べよ。

解答例

  • 不正アクセスがあった場合,対策の内容と対策の緊急度を決めるため
解説

本文の根拠

表 2

脆弱性②:総当たり攻撃によってシステム管理者の利用者 ID とパスワードが発見される。

〔販売管理システムのセキュリティ対策〕

D 氏は,ログとその統計情報から不正アクセスの有無を点検している。

検査で見つかったのは「こういう攻撃ができる」という弱点で,実際に攻撃されたかどうかは分からない。管理者権限を奪われる,管理者のパスワードが見つかるなど,悪用されていれば被害が大きいものばかりである。

過去のログを見て,すでに不正アクセスがあったかを確かめる。あった場合は,弱点をふさぐだけでなく被害への対応も要り,急ぎ度合いも変わる。

40字。解答例は「不正アクセスがあった場合,対策の内容と対策の緊急度を決めるため」で30字。「対策の内容」と「緊急度」の両方を入れる。

採点講評(IPA)

設問2は,正答率が高かった。脆弱性が発見された場合は既に不正アクセスが発生していないか確認し対策をとることや,脆弱性検査結果に基づいてセキュリティ要件と実装されたシステム内容の差異を分析し対策をとることについては,おおむね理解されているようであった。

設問2(2) 40字以内

本文中の下線(ウ)について,追加する機能を 40 字以内で述べよ。

解答例

  • 連続して利用者認証に失敗した場合に,該当する利用者IDをロックする機能
解説

本文の根拠

表 2

脆弱性②:総当たり攻撃によってシステム管理者の利用者 ID とパスワードが発見される。

〔販売管理システムのセキュリティ対策〕

利用者認証は,利用者 ID とパスワードの組合せで行う。

総当たり攻撃は,パスワードを次々に試して当たるまで繰り返す手口である。パスワードを強くしても,何度でも試せる限り,いずれ見つかるおそれがある。

試せる回数を絞ればよい。ログインに続けて失敗したら,その利用者 ID をロックして,それ以上試せないようにする。

40字。解答例は「連続して利用者認証に失敗した場合に,該当する利用者IDをロックする機能」で35字。「連続して失敗したら」という条件と,「ロックする」という動作の両方を書く。

採点講評(IPA)

設問2は,正答率が高かった。脆弱性が発見された場合は既に不正アクセスが発生していないか確認し対策をとることや,脆弱性検査結果に基づいてセキュリティ要件と実装されたシステム内容の差異を分析し対策をとることについては,おおむね理解されているようであった。

設問2(3) 解答欄3つ

本文中の ac に入れる適切な字句を,表 1 の中から選んで答えよ。なお,a は“経由”列から,b は“発見されたサーバ”列から選べ。

〔a〕解答例

  • インターネット

〔b〕解答例

  • Webサーバ

〔c〕解答例

  • TELNET
解説

本文の根拠

〔FW のアクセス制御要件〕

インターネットから Web サーバへは,HTTP サービス,HTTPS サービスへのアクセスだけを許可する。

表 1

R 社検査端末からインターネット経由で外部接続セグメントを検査:Web サーバで HTTP,HTTPS,TELNET,メールサーバで DNS,SMTP が発見された。

表 1 のうち,インターネットから見えたサービスを要件と比べる。メールサーバは DNS と SMTP で,要件どおりである。Web サーバは HTTP・HTTPS に加えて TELNET が見えている。要件ではインターネットから Web サーバへは HTTP・HTTPS だけなので,TELNET が余計に通っている。

社内 LAN から見えた TELNET や POP は,社内からは全サービスを許可する要件なので問題ない。

a は「インターネット」,b は「Web サーバ」,c は「TELNET」。a は「経由」列,b は「発見されたサーバ」列から選ぶという指定どおりの語で書く。

採点講評(IPA)

設問2は,正答率が高かった。脆弱性が発見された場合は既に不正アクセスが発生していないか確認し対策をとることや,脆弱性検査結果に基づいてセキュリティ要件と実装されたシステム内容の差異を分析し対策をとることについては,おおむね理解されているようであった。

設問3(1) 30字以内

本文中の下線(エ)の指摘について,改善策を 30 字以内で述べよ。

解答例

  • システム管理者以外の情報システム部員が作業内容を確認する。
解説

本文の根拠

〔販売管理システムのセキュリティ対策〕

システム管理者が特権 ID を利用した作業を行う場合は,J 部長に申請する。

〔販売管理システムのセキュリティ対策〕

特権 ID を使用した操作が実施されると,操作日時と操作内容が記載された電子メール(以下,特権 ID 行使メールという)がシステム管理者に通知される。

〔販売管理システムのセキュリティ対策〕

システム管理者は,通知を受けた特権 ID 行使メールを基に販売管理システムのログを参照し,特権 ID を使った操作に問題がないことを確認する。

特権 ID を使った操作は,特権 ID 行使メールとログで確かめる仕組みになっている。ところが確かめるのはシステム管理者自身である。

システム管理者が自分で特権 ID を使った場合,自分の操作を自分で確かめることになり,不正があっても見逃せてしまう。操作した人と確かめる人を分けるため,システム管理者以外の情報システム部員に作業内容を確認してもらう。

30字。解答例は「システム管理者以外の情報システム部員が作業内容を確認する。」で28字。「誰が」確認するかを変えることが要点になる。

設問3(2) 40字以内

D 氏が,NTP サーバの導入を提案した理由を 40 字以内で述べよ。

解答例

  • 全サーバの時刻が一致していないと,取得したログの分析に支障があるから
解説

本文の根拠

〔サーバの監視〕

月 1 回の定期保守の際,システム管理者が各サーバの時刻を確認し,FW の時刻と異なる場合は,手動で時刻を補正しているが,時刻が大きくずれていることも多い。

〔外部監査人の指摘〕

販売管理システムのログを分析し,特権 ID を使用した操作の正当性を確認する際に,ログの分析に支障を来すおそれがある。

販売管理システムのログは Web サーバ・DB サーバ・メールサーバの3台で取っている。時刻は月 1 回手で直すだけで,大きくずれていることも多い。

サーバごとに時刻が違うと,特権 ID 行使メールの時刻と各サーバのログを突き合わせても,同じ出来事の記録がつながらない。NTP サーバで全サーバの時刻を自動で合わせれば,ログを時刻でたどれるようになる。

40字。解答例は「全サーバの時刻が一致していないと,取得したログの分析に支障があるから」で33字。「時刻の不一致」と「ログ分析への支障」をつなげて書く。

採点講評(IPA)

設問3(2)は,正答率が低かった。ログを使った調査では,複数のサーバのログをつき合わせて原因究明をする場合がある。この際,全てのサーバの時刻が同期していない場合,原因究明で支障が出る可能性が高いことを,十分理解しておいてほしい。

出典:平成24年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問4(表記を一部改変)