令和5年度 春期に実施されたシステムアーキテクト試験
午前Ⅱの全25問です。問題文・正解・解説をそのまま読めます。
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問1
システムやソフトウェアの品質に関する主張の正当性を裏付ける文書である“アシュアランスケース”を導入する目的として,適切なものはどれか。
ア システムの構成品目の故障モードに着目してシステムの信頼性を定性的に分析することによって,故障の原因及び影響を明らかにする。
イ システムやソフトウェアに関する主張と証拠を示して論理的に説明することによって,目標の品質が達成できることを示す。 正解
ウ システムやソフトウェアの振る舞いに対してガイドワードを用いて分析することによって,システムやソフトウェアが意図する振る舞いから逸脱するケースを明らかにする。
エ 障害とその中間的な原因から基本的な原因までの全てをゲートで関連付けた樹形図で表すことによって,原因又は原因の組合せを明らかにする。
正解 イ
解説
アシュアランスケースは,システムやソフトウェアが安全である,信頼できるといった主張(クレーム)を,それを支える根拠(証拠)とともに論理的に構造化して示す文書である。第三者に対して目標の品質が達成できることを説明し,納得してもらうために用いる。イが適切である。
アは構成品目の故障モードから影響を分析する FMEA(故障モード影響解析),ウはガイドワードを用いて意図からの逸脱を洗い出す HAZOP,エは障害を頂点に原因をゲートで結んだ樹形図で分析する FTA(故障の木解析)の説明である。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2
図は,階層化された DFD における,あるレベルの DFD の一部である。プロセス 1 を子プロセスに分割して詳細化した DFD のうち,適切なものはどれか。ここで,プロセス 1 の子プロセスは,プロセス 1−1,1−2 及び 1−3 とする。
正解 イ
解説
DFD を階層化して詳細化するときは,親のプロセスに出入りするデータフローと,子の DFD 全体に出入りするデータフローが一致していなければならない(バランシング)。親のプロセス 1 には外部から 2 本が入り,プロセス 2 とプロセス 3 へ 2 本が出ている。イは子の DFD 全体への入力が 2 本,出力が 2 本で一致し,どの子プロセスにも入力と出力があるので適切である。
アは入力が 1 本しかなく,ウは出力が 1 本しかないので,親のデータフローと一致しない。エは入力と出力の本数は合っているが,プロセス 1−2 に入力がない。データを受け取らずにデータを出力するプロセスは DFD では成り立たない。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)
問3
複数のシステムの組合せによって実現する SoS(System of Systems)をモデル化するのに適した表記法である SysML の特徴はどれか。
ア オブジェクト図によって,インスタンスの静的なスナップショットが記述できる。
イ 単純な図形及び矢印によって,システムのデータの流れが記述できる。
ウ パラメトリック図によって,モデル要素間の制約条件が記述できる。 正解
エ 連接,反復,選択の記述パターンによって,ソフトウェアの構造が分かりやすく視覚化できる。
正解 ウ
解説
SysML は,UML を基にシステムズエンジニアリング向けに拡張したモデリング言語で,ハードウェアや人を含むシステム全体を表現する。UML にない図として,要求を表す要求図や,モデル要素の間の数式などの制約条件を表すパラメトリック図が追加されている。ウが SysML の特徴である。
アのオブジェクト図は UML の図で,SysML には含まれない。イの単純な図形と矢印でデータの流れを表すのは DFD,エの連接・反復・選択の記述パターンで構造を視覚化するのは構造化チャート(PAD や NS チャートなど)の特徴である。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)
問4
ヒューマンインタフェースをもつシステムにおいて,機能とヒューマンインタフェースとの相互依存を弱めることによって,修正性や再利用性を向上させることを目的としたアーキテクチャパターンはどれか。
ア MVC 正解
イ イベントシステム
ウ マイクロカーネル
エ レイヤー
正解 ア
解説
MVC は,アプリケーションを,データと処理を担うモデル(Model),画面表示を担うビュー(View),利用者の入力を受けて両者を制御するコントローラ(Controller)に分けるアーキテクチャパターンである。機能とヒューマンインタフェースの依存を弱めるので,画面だけの修正や機能の再利用が容易になる。アが該当する。
イのイベントシステムは,構成要素がイベントの発行と受信によって疎に連携するパターンである。ウのマイクロカーネルは,最小限の中核機能と追加の機能を分けて拡張性を高めるパターン,エのレイヤーは,機能を抽象度の異なる層に分けて上下の層とだけやり取りさせるパターンである。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)
問5
Java サーブレットを用いた Web アプリケーションソフトウェアの開発では,例えば,doGet や doPost などのメソッドを,シグネチャ(メソッド名,引数の型・個数・順序)は変えずに,目的とする機能を実現するための処理に置き換える。このメソッドの置き換えを何と呼ぶか。
ア オーバーライド 正解
イ オーバーロード
ウ カプセル化
エ 継承
正解 ア
解説
オーバーライドは,スーパークラスで定義されたメソッドを,サブクラスで同じシグネチャ(メソッド名,引数の型・個数・順序)のまま処理内容を再定義することである。Java サーブレットでは HttpServlet クラスの doGet や doPost をオーバーライドして,目的の処理を実装する。アが該当する。
イのオーバーロードは,同じ名前で引数の型や個数が異なるメソッドを複数定義することで,シグネチャが変わる。ウのカプセル化はデータと操作を一体にして内部を隠蔽すること,エの継承はスーパークラスの属性や操作をサブクラスが引き継ぐ仕組みであり,いずれもメソッドの置き換えそのものを指す用語ではない。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)
問6
デザインパターンの説明はどれか。
ア Java などのプログラム言語に依存した,コーディングの定石やノウハウを集めたものである。
イ 再利用性や柔軟性の高いプログラムを設計するために,参考となるオブジェクトの組合せ方をパターンとして分類したものであり,代表的なパターン集として GoF パターンがある。 正解
ウ ソフトウェアの開発方法をパターン集としてまとめたものであり,組織編成や開発管理のためのパターンがある。
エ ソフトウェアの基本構造を設計するためのパターンであり,その一つとして MVC パターンがある。
正解 イ
解説
デザインパターンは,オブジェクト指向設計で繰り返し現れる問題に対して,再利用性や柔軟性の高い設計にするためのクラスやオブジェクトの組合せ方を,パターンとして整理・分類したものである。代表的なものに,いわゆる GoF(Gang of Four)がまとめた 23 のパターンがある。イが該当する。
アは特定のプログラム言語に依存したコーディングの定石で,イディオムと呼ばれる。ウの組織編成や開発管理のパターンはプロセスパターンや組織パターン,エの MVC のようにソフトウェアの基本構造を設計するためのパターンはアーキテクチャパターンであり,デザインパターンより上位の粒度を扱う。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)
問7
ある通信販売事業者は,AI 技術を利用して人間のように受け答えする,Web のチャットをインタフェースとしたユーザーサポートシステムを開発している。テスト工程では,次の方法でテストする手法を採用した。このような,AI に関するテスト手法を何というか。
〔テストの方法〕
判定者は,このシステムと人間との,それぞれを相手に自然言語によるチャットを行う。このとき,判定者はどちらがこのシステムで,どちらが人間なのかは知らされていない。 判定者が一連のチャットを行った後に,チャットの相手のどちらがこのシステムで,どちらが人間かを判別できるかどうかを確認する。
ア 実験計画法
イ チューリングテスト 正解
ウ ファジング
エ ロードテスト
正解 イ
解説
チューリングテストは,判定者が相手を知らされないまま,機械と人間のそれぞれと自然言語で対話し,どちらが機械かを見分けられるかどうかによって,機械が人間のように振る舞えるかを判定する手法である。A. M. チューリングが提唱した。テストの方法がこれに当たり,イが該当する。
アの実験計画法は,少ない実験回数で要因の効果を効率よく調べるための統計的な手法である。ウのファジングは,予測できない入力データを大量に与えて脆弱性を検出するテスト手法,エのロードテストは,システムに負荷を掛けて性能を確認するテストである。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)
問8
JIS X 25010:2013(システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)−システム及びソフトウェア品質モデル)で定義されたシステム及び/又はソフトウェア製品の品質特性に関する説明のうち,適切なものはどれか。
ア 機能適合性とは,明示された状況下で使用するとき,明示的ニーズ及び暗黙のニーズを満足させる機能を,製品又はシステムが提供する度合いのことである。 正解
イ 信頼性とは,明記された状態(条件)で使用する資源の量に関係する性能の度合いのことである。
ウ 性能効率性とは,明示された利用状況において,有効性,効率性及び満足性をもって明示された目標を達成するために,明示された利用者が製品又はシステムを利用することができる度合いのことである。
エ 保守性とは,明示された時間帯で,明示された条件下に,システム,製品又は構成要素が明示された機能を実行する度合いのことである。
正解 ア
解説
JIS X 25010:2013 は,機能適合性を“明示された状況下で使用するとき,明示的ニーズ及び暗黙のニーズを満足させる機能を,製品又はシステムが提供する度合い”と定義している。アが適切である。
イの“明記された状態(条件)で使用する資源の量に関係する性能の度合い”は性能効率性の定義である。ウの“有効性,効率性及び満足性をもって明示された目標を達成するために,明示された利用者が製品又はシステムを利用することができる度合い”は使用性の定義(利用時の品質に関する記述)であり,エの“明示された時間帯で,明示された条件下に,システム,製品又は構成要素が明示された機能を実行する度合い”は信頼性の定義である。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)
問9
UML 2.0 のステートマシン図の記法に適合している図はどれか。
正解 ア
解説
UML 2.0 のステートマシン図では,複合状態の中を破線で区切って並行に動作する複数の領域(直交領域)を表す。複合状態へ遷移すると,各領域の開始状態からそれぞれの状態へ同時に遷移する。遷移のきっかけとなるトリガは,状態 1 から状態 2 へ入る遷移に付ける。アはこの記法どおりである。
イは破線がないので,状態 2 の中に二つの開始状態があることになり,並行に動く領域として表現できていない。ウとエは,各領域の開始状態からの遷移にトリガ 1 を付けている。開始状態からの遷移は複合状態に入ると自動的に起こるものであり,トリガを付けることはできない。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)
問10
タイピングを行う人をドライバと呼び,その様子を見ながら指摘や助言をする人をナビゲータと呼んで,2 人が 1 台の PC を共有して共同でプログラムを作成する技法はどれか。
ア インスペクション
イ ウォークスルー
ウ パスアラウンド
エ ペアプログラミング 正解
正解 エ
解説
ペアプログラミングは,アジャイル開発の XP(エクストリームプログラミング)のプラクティスの一つで,2 人が 1 台の PC を共有し,コードを入力するドライバと,その内容を確認して指摘や助言をするナビゲータの役割を交代しながら,共同でプログラムを作成する技法である。エが該当する。
アのインスペクションは,モデレータが主導し公式な手順で記録を取りながら行うレビュー技法である。イのウォークスルーは作成者が主催して成果物を説明しながら行うレビュー,ウのパスアラウンドは成果物を複数の参加者に回覧してコメントを集めるレビューである。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)
問11
JIS X 0160:2021(ソフトウェアライフサイクルプロセス)によれば,ソフトウェアライフサイクルプロセスにおいて,提供するソフトウェアシステムが利害関係者要件(要求事項)に合致し,利用に適していることを,顧客とともに確信するに至るためのテストを何と呼ぶか。
ア ソフトウェア受入れテスト 正解
イ ソフトウェア検証
ウ ソフトウェア適格性確認テスト
エ ファズテスト
正解 ア
解説
JIS X 0160:2021 では,提供するソフトウェアシステムが利害関係者要件(要求事項)に合致し,利用に適していることを,顧客とともに確信するに至るためのテストをソフトウェア受入れテストという。取得者(顧客)が主体となり,運用環境に近い条件で実施する。アが該当する。
ウのソフトウェア適格性確認テストは,ソフトウェアがソフトウェア要件を満たしていることを開発者側が確認するテストである。イのソフトウェア検証は,成果物が指定された要件を満たしていることを客観的な証拠によって確認する活動全般を指す。エのファズテストは,予測できない入力を大量に与えて脆弱性を探すテストである。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)
問12
スクラムを適用したアジャイル開発において,スクラムチームで,人,関係,プロセス及びツールの観点から,何がうまくいき,何がうまくいかなかったのかを議論し,プロセス改善を促進するアクティビティはどれか。
ア スプリントレトロスペクティブ 正解
イ スプリントレビュー
ウ デイリースクラム
エ バックログリファインメント
正解 ア
解説
スクラムのスプリントレトロスペクティブは,スプリントの最後に行うイベントで,スクラムチームが,人,関係,プロセス,ツールの観点から今回のスプリントを振り返り,何がうまくいき,何がうまくいかなかったかを話し合って,次のスプリントで取り組む改善策を決める。アが該当する。
イのスプリントレビューは,スプリントで作成したインクリメント(成果物)を利害関係者に示して検査し,今後の対応を話し合うイベントである。ウのデイリースクラムは,開発者が毎日短時間で進捗と計画を確認するイベント,エのバックログリファインメントは,プロダクトバックログの項目を詳細化し見積りや並べ替えを行う活動である。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)
問13
製品 X と製品 Y を販売している企業が,見積作成と提案書作成に掛かる業務時間を,それぞれ 20%削減できるシステムの構築を検討している。Activity-Based Costing を用いて,次の条件が洗い出された。本システム構築による製品 X の見積作成と製品 X の提案書作成に関する月間総人件費削減効果は幾らか。
〔条件〕
製品 X の見積作成に掛かる月間業務時間は,50 時間 製品 X の提案書作成に掛かる月間業務時間は,50 時間 製品 Y の見積作成に掛かる月間業務時間は,100 時間 製品 Y の提案書作成に掛かる月間業務時間は,400 時間 製品 X と製品 Y の見積作成に掛かる月間総人件費は,60 万円 製品 X と製品 Y の提案書作成に掛かる月間総人件費は,360 万円 見積作成と提案書作成は,それぞれ人件費単価が異なる部門が担っている 製品 X と製品 Y の見積作成に掛かる人件費単価は,同じである 製品 X と製品 Y の提案書作成に掛かる人件費単価は,同じである
ア 4 万円
イ 8 万円
ウ 12 万円 正解
エ 14 万円
正解 ウ
解説
Activity-Based Costing では,活動ごとに人件費の単価を求めて,製品への配分を計算する。見積作成は製品 X と Y で合計 50+100=150 時間,総人件費 60 万円なので,1 時間当たり 60÷150=0.4 万円。製品 X の見積作成は 50×0.4=20 万円である。提案書作成は合計 50+400=450 時間,総人件費 360 万円なので,1 時間当たり 360÷450=0.8 万円。製品 X の提案書作成は 50×0.8=40 万円である。それぞれ 20%削減できるので,削減効果は (20+40)×0.2=12 万円であり,ウになる。
アの 4 万円は見積作成の削減分(20×0.2)だけ,イの 8 万円は提案書作成の削減分(40×0.2)だけの値である。エの 14 万円は,見積と提案書の総人件費 420 万円を総時間 600 時間で割った単価 0.7 万円で,製品 X の 100 時間分を一律に計算した値(70×0.2)であり,活動ごとの単価の違いを反映していない。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)
問14
WTO 政府調達協定の説明はどれか。
ア EU 市場で扱われる電気・電子製品,医療機器などにおいて,一定基準値を超える特定有害物質(鉛,カドミウム,六価クロム,水銀など 6 物質)の使用を規制することを定めたものである。
イ 国などの公的機関が率先して,環境物品等(環境負荷低減に資する製品やサービス)の調達を推進し,環境物品等への需要の転換を促進するために必要な事項を定めたものである。
ウ 政府機関などによる物品・サービスの調達において,締約国に対する市場開放を進めて国際的な競争の機会を増大させるとともに,苦情申立て,協議及び紛争解決に関する実効的な手続を定めたものである。 正解
エ 締約国に対して,工業所有権の保護に関するパリ条約や,著作権の保護に関するベルヌ条約などの主要条項を遵守することを義務付けるとともに,知的財産権保護のための最恵国待遇などを定めたものである。
正解 ウ
解説
WTO 政府調達協定は,政府機関などによる物品やサービスの調達について,締約国の供給者を内国の供給者と差別しない内外無差別の原則を定め,市場を開放して国際的な競争の機会を増大させるとともに,苦情申立て,協議,紛争解決の手続を定めた協定である。ウが該当する。
アは EU の特定有害物質の使用を制限する RoHS 指令,イは国などの公的機関による環境物品等の調達を推進するグリーン購入法の説明である。エのパリ条約やベルヌ条約の遵守と知的財産権保護の最恵国待遇を定めているのは,WTO の TRIPS 協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)である。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)
問15
システム開発における発注者と受注者であるベンダーとの契約方法のうち,実費償還契約はどれか。
ア 委託業務の進行中に発生するリスクはベンダーが負い,発注者は注文時に合意した価格を支払う。
イ インフレ率や特定の製品の調達コストの変化に応じて,あらかじめ取り決められた契約金額を調整する。
ウ 契約時に,目標とするコスト,利益,利益配分率,上限額を合意し,目標とするコストと実際に発生したコストの差異に基づいて利益を配分する。
エ ベンダーの役務や技術に対する報酬に加え,委託業務の遂行に要した費用の全てをベンダーに支払う。 正解
正解 エ
解説
実費償還契約は,委託業務の遂行に要した費用を発注者が実費で負担し,これにベンダーの役務や技術に対する報酬(手数料や利益)を上乗せして支払う契約である。費用が膨らむリスクは主に発注者が負う。エが正しい。
アは契約時に合意した価格を支払う定額契約で,コスト増のリスクはベンダーが負う。イは物価や調達コストの変動に応じて金額を調整する経済価格調整付き定額契約。ウは目標コスト・利益・利益配分率・上限額を合意し,目標と実績の差に応じて利益を配分する定額インセンティブフィー契約で,いずれも実費償還ではない。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)
問16
パーソナルデータを用いた,個人をスコアリングするサービスの事例はどれか。
ア 口コミサイトなど,個人が提供する情報をコンテンツとする Web サイトの内容を解析することによって,そのサイトの信用度を格付するサービス
イ 個人情報を取り扱う情報システムに対して,ペネトレーションテストなど,種々の検証を実施し,セキュリティの確保の状態を評価するサービス
ウ 対象者の許諾の下で収集・提供されたデータを AI が分析することによって,個人への融資条件の決定などに使用される指標を提供するサービス 正解
エ ベンチャー企業の創業者の経営能力や経歴を様々な角度から数値化することによって,その企業の成長の可能性を投資家向けに予測するサービス
正解 ウ
解説
個人をスコアリングするサービスは,本人の同意の下で収集した購買履歴や属性などのパーソナルデータを AI などで分析し,個人の信用力などを数値化した指標(スコア)を算出して提供するサービスである。融資条件の決定などに使われるウが該当する。
アは Web サイトの信用度を格付するもので,評価の対象が個人ではない。イは情報システムのセキュリティ対策の状況を評価するサービスで,対象はシステムである。エは創業者の能力を数値化しているが,最終的に予測するのは企業の成長の可能性であり,個人をスコアリングするサービスの事例ではない。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)
問17
暗号技術のうち,共通鍵暗号方式のものはどれか。
ア AES 正解
イ ElGamal 暗号
ウ RSA
エ 楕円曲線暗号
正解 ア
解説
AES(Advanced Encryption Standard)は,暗号化と復号に同じ鍵を使う共通鍵暗号方式で,米国の標準暗号として採用され,無線 LAN の WPA2 や TLS など広く使われている。アが正しい。
イの ElGamal 暗号,ウの RSA,エの楕円曲線暗号は,いずれも暗号化に公開鍵,復号に秘密鍵を使う公開鍵暗号方式である。RSA は大きな数の素因数分解の難しさ,ElGamal 暗号と楕円曲線暗号は離散対数問題の難しさを安全性の根拠にしている。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)
問18
TPM 2.0 で定義されている機能はどれか。
ア TLS 通信におけるデータの暗号化及び復号を行う機能
イ サーバでの認証回数をシードと掛け合わせてワンタイムパスワードを生成する機能
ウ シードと呼ばれる値と,その値が作られた時刻からの経過時間から,ワンタイムパスワードを生成する機能
エ モジュール内で暗号化のための鍵を生成し,安全に保管する機能 正解
正解 エ
解説
TPM(Trusted Platform Module)は,PC などに搭載される耐タンパ性をもつセキュリティチップで,TPM 2.0 では,暗号鍵の生成と外部に取り出せない形での保管,署名や暗号化などの暗号処理,乱数の生成,起動時のソフトウェアの測定値の記録などの機能が定義されている。モジュール内で鍵を生成し安全に保管するエが該当する。
アの TLS 通信のデータの暗号化・復号は,TLS を実装したソフトウェアや専用のアクセラレータが行う処理である。イとウはワンタイムパスワードの生成方式で,イは認証回数を使うカウンタ方式(HOTP),ウは時刻を使う時刻同期方式(TOTP)の説明であり,TPM 2.0 で定義された機能ではない。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)
問19
迷惑メールの検知手法であるベイジアンフィルターの説明はどれか。
ア 信頼できるメール送信元を許可リストに登録しておき,許可リストにないメール送信元からの電子メールは迷惑メールと判定する。
イ 電子メールが正規のメールサーバから送信されていることを検証し,迷惑メールであるかどうかを判定する。
ウ 電子メールの第三者中継を許可しているメールサーバを登録したデータベースの掲載情報を基に,迷惑メールであるかどうかを判定する。
エ 利用者が振り分けた迷惑メールと正規のメールから特徴を学習し,迷惑メールであるかどうかを統計的に判定する。 正解
正解 エ
解説
ベイジアンフィルターは,利用者が迷惑メールと正規のメールに振り分けた結果から,それぞれに現れる単語などの特徴の出現確率を学習し,ベイズの定理を用いて,新しく届いたメールが迷惑メールである確率を統計的に計算して判定する手法である。エが該当する。
アは許可リスト(ホワイトリスト)方式,イは SPF や DKIM などの送信ドメイン認証による判定である。ウは第三者中継を許すメールサーバを登録した DNSBL(ブラックリスト)を利用する方式であり,いずれも学習による統計的な判定ではない。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)
問20
送信者 A は,署名生成鍵 X を使って文書ファイルのデジタル署名を生成した。送信者 A から,文書ファイルとその文書ファイルのデジタル署名を受信者 B が受信したとき,受信者 B ができることはどれか。ここで,受信者 B は署名生成鍵 X と対をなす,署名検証鍵 Y を保有しており,受信者 B と第三者は署名生成鍵 X を知らないものとする。
ア 文書ファイルが改ざんされた場合,デジタル署名,文書ファイル及び署名検証鍵 Y の整合性を確認することによって,その改ざん部分を判別できる。
イ 文書ファイルが改ざんされていないこと,及びデジタル署名が署名生成鍵 X によって生成されたことを確認できる。 正解
ウ 文書ファイルがマルウェアに感染していないことを認証局に問い合わせて確認できる。
エ 文書ファイルとデジタル署名のどちらかが改ざんされた場合,どちらが改ざんされたかを判別できる。
正解 イ
解説
受信者 B は,署名検証鍵 Y を使ってデジタル署名を検証し,文書ファイルから求めたハッシュ値と比較する。一致すれば,文書ファイルが改ざんされていないこと,及び署名が Y と対をなす署名生成鍵 X によって生成されたこと(X を知る送信者 A が署名したこと)を確認できる。イが適切である。
アは誤りで,デジタル署名の検証で分かるのは改ざんがあったかどうかだけで,文書のどの部分が改ざんされたかは判別できない。エも誤りで,検証に失敗しても文書ファイルと署名のどちらが改ざんされたかは区別できない。ウは誤りで,デジタル署名は文書がマルウェアに感染していないことを保証するものではなく,認証局もそれを確認する機関ではない。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)
問21
CPU 内部の命令読取り用バスとデータアクセス用バスとを分離するハーバードアーキテクチャを用いる目的として,適切なものはどれか。
ア CPU 以外のバスマスターを使用可能にする。
イ バスの信号線の本数を減らす。
ウ プログラムの実行時間を短縮する。 正解
エ メモリの内容を保護する。
正解 ウ
解説
ハーバードアーキテクチャは,プログラム(命令)を格納するメモリとデータを格納するメモリを分け,命令読取り用のバスとデータアクセス用のバスを別々にもつ構成である。命令の読出しとデータの読み書きを同時に並行して行えるので,バスの競合による待ちがなくなり,プログラムの実行時間を短縮できる。ウが適切である。
イは逆で,バスを分けると信号線の本数は増える。アの CPU 以外のバスマスターの使用は DMA などの仕組みに関するもので,バスの分離の目的ではない。エのメモリ内容の保護は,メモリ保護機構などによって実現するものである。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)
問22
Web ブラウザや HTTP を用いず,独自の GUI とデータ転送機構を用いた,ネットワーク対戦型のゲームを作成する。仕様の (2) の実現に用いることができる仕組みはどれか。
〔仕様〕
(1) ゲームは囲碁や将棋のように 2 人のプレーヤの間で行われ,ゲームの状態はサーバで管理する。プレーヤはそれぞれクライアントプログラムを操作してゲームに参加する。 (2) プレーヤが新たな手を打ったとき,クライアントプログラムはサーバにある関数を呼び出す。サーバにある関数は,その手がルールに従っているかどうかを調べて,ルールに従った手であればゲームの状態を変化させ,そうでなければその手が無効であることをクライアントプログラムに知らせる。 (3) ゲームの状態に変化があれば,サーバは各クライアントプログラムにその旨を知らせることによって GUI に反映させる。
正解 ウ
解説
仕様の (2) は,クライアントプログラムがネットワーク越しにサーバにある関数を呼び出し,その結果を受け取る処理である。RPC(Remote Procedure Call)は,別のコンピュータ上の手続(関数)を,自分のプログラム内の手続と同じように呼び出すための仕組みであり,Web ブラウザや HTTP を用いない独自のデータ転送機構でも利用できる。ウが該当する。
アの CGI は Web サーバから外部のプログラムを起動する仕組み,イの PHP は主に Web サーバ上で動く HTML 埋め込み型のスクリプト言語であり,いずれも HTTP と Web サーバを前提とする。エの XML はデータを記述するためのマークアップ言語で,関数を呼び出す仕組みではない。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)
問23
クラウドサービスに関係するデータのうち,クラウドサービス派生データに関する記述はどれか。
ア あるクラウドサービスから別のクラウドサービスへ移行するときに,データの再入力が不要で,移行先でも活用されるデータ
イ クラウドサービスの提供者の管理下にあり,データセンター全体の構成や,ストレージのリソース配分などのクラウドサービスの維持に使用するデータ
ウ 利用者がクラウドサービスの公開インタフェースを使って入力したデータやサービスを実行して作成したデータ
エ 利用者がクラウドサービスを利用した時間や作業内容などが記録されたログデータ 正解
正解 エ
解説
クラウドサービス派生データは,利用者がサービスを使ったことに伴って副次的に生まれるデータのこと。利用時間や操作内容を記録したログデータがこれに当たり,利用者との関わりから生じる点でサービス提供者自身のデータとは区別される。
アはデータポータビリティに関する記述,イはクラウドサービス提供者データ,ウはクラウドサービスカスタマデータ(利用者が入力・作成したデータ)の説明。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)
問24
DBMS がトランザクションのコミット処理を完了するタイミングはどれか。
ア アプリケーションプログラムの更新命令完了時点
イ チェックポイント処理完了時点
ウ ログバッファへのコミット情報書込み完了時点
エ ログファイルへのコミット情報書込み完了時点 正解
正解 エ
解説
コミットを完了とみなしてよいのは,コミット情報が不揮発の記憶媒体,すなわちログファイルに書き終わった時点。ここまで進んでいれば,直後にシステムが停止してもログからロールフォワードして最新の状態に復旧できる。
アの更新命令完了時点やウのログバッファへの書込み完了時点では,情報はまだ主記憶上にあり,障害で失われる。イのチェックポイント処理はバッファの内容をまとめて書き出す処理で,個々のトランザクションのコミットの成立とは関係がない。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)
問25
CSMA/CD 方式の LAN で使用されるスイッチングハブ(レイヤー2 スイッチ)は,フレームの蓄積機能,速度変換機能や交換機能をもっている。このようなスイッチングハブと同等の機能をもち,同じプロトコル階層で動作する装置はどれか。
ア ゲートウェイ
イ ブリッジ 正解
ウ リピータ
エ ルータ
正解 イ
解説
スイッチングハブはデータリンク層(第2層)で MAC アドレスを見てフレームを転送する装置。同じ第2層で動作し,フレームをいったん蓄積してから転送するのがブリッジで,スイッチングハブは多ポートのブリッジといえる。イが正しい。
アのゲートウェイはトランスポート層より上位でプロトコルの変換を行う装置。ウのリピータは物理層(第1層)で信号を増幅・整形するだけで,宛先は見ない。エのルータはネットワーク層(第3層)で IP アドレスを見て経路を選ぶ装置である。
出典:令和5年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)
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