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プロジェクトマネージャ試験

令和3年度 秋期 科目A-2(午前Ⅱ)

令和3年度 秋期に実施されたプロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ(2026年度からの科目A-2)の全25問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:プロジェクトマネージャ試験について

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問1

あるプロジェクトのステークホルダとして,プロジェクトスポンサ,プロジェクトマネージャ,プロジェクトマネジメントオフィス及びプロジェクトマネジメントチームが存在する。ステークホルダのうち,JIS Q 21500:2018(プロジェクトマネジメントの手引)によれば,主として標準化,プロジェクトマネジメントの教育訓練及びプロジェクトの監視といった役割を担うのはどれか。

正解 ウ

解説

JIS Q 21500:2018 は,プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)が担う活動として,標準化,プロジェクトマネジメントの教育訓練,プロジェクトの計画作成や監視などを挙げている。個々のプロジェクトを直接指揮するのではなく,組織として複数のプロジェクトを横断的に支える役割である。ウが正しい。

アのプロジェクトスポンサは,プロジェクトを許可し,経営的な決定を下し,資源を提供する立場。イのプロジェクトマネージャは,プロジェクトの活動を指揮し,管理し,完了させる責任を負う。エのプロジェクトマネジメントチームは,プロジェクトマネージャを補佐してマネジメントの作業を担う。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)

用語解説:JIS Q 21500(プロジェクトマネジメントの手引)

問2

表は,RACI チャートを用いた,あるプロジェクトの責任分担マトリックスである。設計アクティビティにおいて,説明責任をもつ要員は誰か。

アクティビティごとに要員の役割を R・A・C・I で示した表。要員は阿部・伊藤・佐藤・鈴木・田中・野村の順。要件定義は C・A・I・I・I・R,設計は R・I・I・C・C・A,開発は A・−・R・−・R・I,テストは I・I・C・R・A・C。

正解 エ

解説

RACI チャートでは,R(Responsible)が実行責任,A(Accountable)が説明責任,C(Consulted)が相談対応,I(Informed)が情報提供を表す。設計アクティビティの行で A が付いているのは野村なので,説明責任をもつのは野村で,エが正しい。

同じ行の阿部は R で実際に設計を行う担当,鈴木と田中は C で相談を受ける立場,伊藤と佐藤は I で結果を知らされる立場である。A は作業の結果に最終的な責任を負う人で,一つのアクティビティにつき1人に絞るのが原則なので,選択肢のように2人組になることはない。

責任分担マトリックス(RACI) 作業と人の表に,R(実行責任:作業をする),A(説明責任:最終的に責任を負う,1つの作業に1人),C(協議先:相談を受ける),I(報告先:結果を知らされる)を書き込む。 作業 PM 設計者 開発者 顧客 要件定義 A R I C 設計 A R C I 製造 A C R I R:実行責任 A:説明責任 C:協議先 I:報告先 役割と責任を作業ごとに明らかにする
A は1つの作業に1人だけ

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)

問3

PMBOK ガイド 第6版によれば,組織のプロセス資産に分類されるものはどれか。

正解 ア

解説

PMBOK ガイド第6版は,プロジェクトに影響を与える組織側の要素を,組織のプロセス資産(OPA)と組織体の環境要因(EEF)に分けている。組織のプロセス資産は,組織が使う計画,プロセス,方針,手続きと,過去の実績などを蓄えた知識ベースで,課題や欠陥をマネジメントする手続きはこれに含まれる。アが正しい。

イの施設や資本設備などのインフラストラクチャ,ウのステークホルダーのリスク許容度,エの組織構造・組織の文化・マネジメントの実務・持続可能性は,いずれもプロジェクトチームが直接は変えられない条件で,組織体の環境要因に分類される。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)

用語解説:PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系)

問4

アクティビティ A〜E によって実施する開発プロジェクトがある。図は,各アクティビティの依存関係を PDM(プレシデンスダイアグラム法)で表している。開発プロジェクトの最少の所要日数は何日か。ここで,FS−n は先行アクティビティが終了する n 日前に後続アクティビティが開始できることを,FS+n は先行アクティビティが終了した n 日後に後続アクティビティが開始できることを示している。

PDM の図。開始からアクティビティ A(2日)へつながる。A からはアクティビティ B(3日)と,FS+2 の関係でアクティビティ D(4日)へつながる。B からは FS−2 の関係でアクティビティ C(4日)へつながる。C と D はアクティビティ E(4日)へつながり,E から終了へ向かう。凡例は,四角の中にアクティビティ名と所要日数を書くことを示している。

正解 ウ

解説

開始時点を0日として日程をたどる。A は0〜2日。B は A の後なので2〜5日。C は B が終わる2日前に始められるので,5−2=3日から4日間で7日に終わる。D は A が終わった2日後なので,2+2=4日から4日間で8日に終わる。E は C と D の両方が終わってから始めるので,遅い方の8日から4日間で12日に終わる。

最少の所要日数は12日で,ウが正しい。D の“FS+2”を見落として A の直後に始めると D は6日に終わり,E は C の7日から始まって11日(イ)になる。“FS−2”は先行が終わる前に後続を始められる前倒し(リード),“FS+2”は待ち時間(ラグ)である。

PDM のリードとラグ A(2日)のあと B(3日)は 2〜5 日。C は B と FS−2(B が終わる2日前から始められる)なので 3〜7 日。D は A と FS+2(A が終わって2日後)なので 4〜8 日。E は C と D の両方が終わる 8 日目から 4 日で 12 日。 A A B B C C D D E E 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 最少 12 日(D の FS+2 が効く)
FS−n は前倒し(リード),FS+n は待ち(ラグ)

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)

問5

工程管理図表の特徴に関する記述のうち,ガントチャートのものはどれか。

正解 ウ

解説

ガントチャートは,作業を縦に並べ,各作業の予定期間と実績を横棒で表す図である。計画に対して実績がどこまで進んでいるかが一目で分かるので,個人やグループの作業の進捗管理に向く。一方で,作業どうしの前後関係は図に表れないため,相互関係の把握には適さない。ウが正しい。

アは計画と実績の累積値の推移を曲線で表す S 字カーブなど。イは作業の順序や相互関係を表し重要作業(クリティカルパス)を把握するアローダイアグラム(PERT 図)。エはマイルストーンの予定と実績を示すマイルストーンチャートの説明である。

ガントチャートとアローダイアグラム ガントチャートは作業ごとの予定と実績の期間を横棒で示し,進み具合は一目で分かるが,作業どうしの前後関係(どの作業が終わったら次を始められるか)は表しにくい。アローダイアグラムは作業の前後関係を矢印でつなぐので,クリティカルパスや余裕が分かる。 ガントチャート A B C 前後関係は分からない アローダイアグラム A B C 前後関係とクリティカルパス 進捗の見やすさはガントチャートが上
期間はガントチャート,前後関係はアローダイアグラム

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)

問6

プロジェクトマネジメントにおけるクラッシングの例として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

クラッシングは,コストの追加を受け入れてでもアクティビティの所要期間を短くする技法。クリティカルパス上のアクティビティに人的資源を追加するのがその典型である。

エは,本来は順に行う作業を重ねて進めるファストトラッキング。イはコスト削減策,ウは完了予定日を動かしただけで,どちらも期間短縮の技法ではない。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)

用語解説:クリティカルパス

問7

プロジェクトのスケジュール管理で使用する“クリティカルチェーン法”の実施例はどれか。

正解 ア

解説

クリティカルチェーン法は,資源の制約まで考えて最も長い作業の連なり(クリティカルチェーン)を求め,各作業の見積りに含まれていた余裕を取り上げてまとめ直す手法である。まとめた余裕は,チェーンの最後に置くプロジェクトバッファと,チェーンに合流する作業の後に置く合流バッファとして管理し,遅れはバッファの消費で吸収する。アが正しい。

イとウは,クリティカルパス上の作業に資源や道具を投入して期間を縮めるクラッシング。エは先行作業の完了を待たずに後続作業を並行させるファストトラッキング。いずれもスケジュール短縮技法ではあるが,バッファの置き方を扱うクリティカルチェーン法とは別のものである。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)

用語解説:クリティカルパス

問8

あるプロジェクトは4月から9月までの6か月間で開発を進めており,現在のメンバ全員が9月末まで作業すれば完了する見込みである。しかし,他のプロジェクトで発生した緊急の案件に対応するために,8月初めから,4人のメンバがプロジェクトから外れることになった。9月末に予定どおり開発を完了させるために,7月の半ばからメンバを増員する。条件に従うとき,人件費は何万円増加するか。

〔条件〕

正解 ウ

解説

開発を予定どおり終えるには,外れる4人が8・9月に行うはずだった作業 4人×2か月=8人月に加え,引継ぎで元のメンバ4人が作業できない0.5か月分 4人×0.5か月=2人月も取り戻す必要がある。合わせて10人月の作業を8・9月の2か月で行うので,増員するメンバは 10÷2=5人。この5人は7月後半の引継ぎから9月末まで2.5か月在籍するので,人件費は 5人×2.5か月=12.5人月で1,250万円になる。

一方,外れる4人の8・9月分 4人×2か月=8人月,800万円はこのプロジェクトに計上しなくなる。増加額は 1,250−800=450万円で,ウが正しい。引継ぎ期間中に元のメンバの作業が止まる分を見落とすと,増員は4人で 4×2.5=10人月,増加額は200万円(ア)と誤る。

引継ぎのある増員と人件費 4 人が 8 月初めに抜け,7 月後半の 0.5 か月は引継ぎで元の 4 人も増員も開発をしない。取り戻すのは 4 人×2 か月=8 人月と,引継ぎで止まる 4 人×0.5 か月=2 人月の計 10 人月。8・9 月の 2 か月で行うので増員は 5 人。5 人×2.5 か月=12.5 人月(1,250 万円)が増え,抜ける 4 人の 8 人月(800 万円)が減るので,差し引き 450 万円の増加。 7月前半 7月後半 8月 9月 抜ける4人 増員5人 開発 引継ぎ 引継ぎ 開発(10人月) 取り戻す:4×2=8 人月+4×0.5=2 人月 = 10 人月 → 2か月で 5 人 増える:5×2.5=12.5 人月(1,250万円) 減る:4×2=8 人月(800万円) 差し引き 450 万円の増加
引継ぎの間は元のメンバも作業しない。その分も取り戻す

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)

問9

ソフトウェアの規模の見積り方法のうち,利用者機能要件と機能プロセスに着目して,機能プロセスごとに①〜③の手順で見積りを行うものはどれか。

正解 イ

解説

COSMIC 法(JIS X 0143)は,利用者機能要件を機能プロセスに分け,機能プロセスの中のデータ移動をエントリ,エグジット,読込み,書込みの四つの型に分類して数え,1データ移動を1単位(1 CFP)として合計することで機能規模を測る手法である。問題の①〜③はこの手順そのもので,イが正しい。

アの COCOMO は,規模などから開発工数を求める式による見積り手法。ウの積み上げ法は,WBS で分解した作業ごとの工数を見積もって足し上げる手法。エの類推法は,過去の類似プロジェクトの実績を基に見積もる手法である。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)

問10

JIS Q 21500:2018(プロジェクトマネジメントの手引)によれば,プロセス“リスクの特定”及びプロセス“リスクの評価”は,どのプロセス群に属するか。

正解 イ

解説

JIS Q 21500:2018 の表1(プロセス群及び対象群に関連するプロジェクトマネジメントのプロセス)では,リスク対象群のプロセスのうち「リスクの特定」(4.3.28)と「リスクの評価」(4.3.29)がいずれも計画のプロセス群に置かれている。どんなリスクがあるかを洗い出し,その大きさを評価するのは,対応を計画するための準備だからである。よってイ。

同じリスク対象群でも,「リスクへの対応」(4.3.30)は実行のプロセス群,「リスクの管理」(4.3.31)は管理のプロセス群に属する。終結のプロセス群にはリスク対象群のプロセスは置かれていない。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)

用語解説:JIS Q 21500(プロジェクトマネジメントの手引)

問11

どのリスクがプロジェクトに対して最も影響が大きいかを判断するのに役立つ定量的リスク分析とモデル化の技法として,感度分析がある。感度分析の結果を示した次の図を何と呼ぶか。

横棒グラフ。縦にリスク1からリスク5が並び,横軸は −10,000 から 20,000。各リスクの棒は 0 を境に左へマイナスの影響,右へプラスの影響が伸びる。棒の長さはリスク1が最も長く,リスク5に向かって順に短くなり,全体が上から下へ細くなる漏斗のような形になっている。

正解 ウ

解説

感度分析では,各リスクの不確実な要素を一つずつ変化させたとき,プロジェクトの目標(コストなど)がどれだけ振れるかを求める。その結果を,影響の大きいリスクから順に上から横棒で並べると,上が広く下が狭い竜巻(トルネード)のような形になる。これをトルネード図と呼ぶ。ウが正しい。

アの確率分布は,ある値がどれくらいの確率で起こるかを表したもの。イのデシジョンツリーダイアグラムは,選択肢とその結果を枝分かれで表し期待値を比べる図。エのリスクブレークダウンストラクチャ(RBS)は,リスクの発生源を分類して階層的に表したものである。

トルネード図 感度分析の結果を,結果(例えば利益)への影響の大きい要素から順に横棒で並べた図。上にある要素ほど結果を大きく動かすので,重点的に管理する。棒は,要素を楽観値から悲観値まで動かしたときの結果の幅を表す。 販売数 単価 原材料費 人件費 為替 悲観値のとき 楽観値のとき
上ほど影響が大きい。竜巻(トルネード)のような形になる

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)

問12

プロジェクトマネジメントで使用する分析技法のうち,傾向分析の説明はどれか。

正解 ウ

解説

傾向分析は,時間の経過に伴ってプロジェクトのパフォーマンスがどう変わってきたかを分析する技法。ある時点の値だけでなく変化の向きを見ることで,このままいくとどうなるかを予測できる。

アはディシジョンツリー分析,イは個々のリスクの影響度を調べる定性的リスク分析,エは特性要因図(フィッシュボーン図)による分析である。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)

問13

新しく編成するプロジェクトチームの開発要員投入計画に基づいて PC をレンタルで調達する。調達の条件を満たすレンタル費用の最低金額は何千円か。

〔開発要員投入計画〕と題した表(単位 人)。行は開発要員の区分,列は1月から12月までの時期。設計者は2月から11月まで順に 2,4,4,4,2,2,2,2,2,2。プログラマは4月から11月まで順に 3,3,5,5,3,3,2,2。テスタは6月から9月まで順に 4,4,4,6。計は1月から12月まで順に 0,2,4,7,7,11,11,9,11,4,4,0。

〔調達の条件〕

正解 イ

解説

開発要員は月初日に着任するので,2週間のセットアップを済ませるには前の月からレンタルする必要がある。離任は月末日で,1週間のデータ消去は次の月に掛かる。日割りはないので,PC を使う期間の前後に1か月ずつ料金が発生する。要員の間で引き渡すときは空きが要らないので,台数が一時的に減る月も,返さずに持ち続けるほうが安くなることがある。

必要台数を下から積み上げる。2台は2〜11月に使うので1〜12月の12か月,次の2台は3〜11月で2〜12月の11か月,次の3台は4〜9月で3〜10月の8か月,次の2台は6〜9月で5〜10月の6か月。最後の2台は6・7月と9月に使い8月は空くが,8月に返すと返却と再レンタルで7か月分掛かるので,5〜10月の6か月借り続ける。合計は 24+22+24+12+12=94台月で,94×5千円=470千円。イが正しい。

要員の投入計画と PC のレンタル期間 要員は月初日に着任し月末日に離任するので,前の月にセットアップ(2週間)が要り,次の月にデータ消去(1週間)が掛かる。使う月の前後1か月ずつも料金が掛かる。必要台数を下から積み上げると,2台は1〜12月(12か月),2台は2〜12月(11か月),3台は3〜10月(8か月),2台は5〜10月(6か月),最後の2台も8月に返さず5〜10月(6か月)。合計 94 台月×5千円=470千円。 1 0 2 2 3 4 4 7 5 7 6 11 7 11 8 9 9 11 10 4 11 4 12 0 月 人数 2台 × 12か月 2台 × 11か月 3台 × 8か月 2台 × 6か月 2台 × 6か月 2×12 + 2×11 + 3×8 + 2×6 + 2×6 = 94 台月 94 × 5千円 = 470千円
使う月の前後1か月もレンタル。間で返すより持ち続けたほうが安いことがある

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)

問14

JIS Q 21500:2018(プロジェクトマネジメントの手引)によれば,プロセス“コミュニケーションのマネジメント”の目的はどれか。

正解 イ

解説

JIS Q 21500:2018 の対象群“コミュニケーション”は,コミュニケーションの計画,情報の配布,コミュニケーションのマネジメントの三つのプロセスからなる。“コミュニケーションのマネジメント”は,ステークホルダのコミュニケーションのニーズを確実に満たし,コミュニケーションの課題が起きたときに解決することを目的とする。イが正しい。

ウはニーズを決める“コミュニケーションの計画”,エは計画どおりに情報を提供する“情報の配布”の目的である。アはチームのパフォーマンスを高める,対象群“資源”の“プロジェクトチームのマネジメント”の目的である。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)

用語解説:JIS Q 21500(プロジェクトマネジメントの手引)

問15

オブジェクト指向開発におけるロバストネス分析で行うことはどれか。

正解 ウ

解説

ロバストネス分析は,ユースケースの記述から登場するクラスを洗い出し,利用者や外部システムとのやり取りを受け持つバウンダリクラス,処理の流れを制御するコントロールクラス,業務の情報を保持するエンティティクラスの三つに分類して,それらの関連を図(ロバストネス図)に表す手法である。ユースケースと設計のクラスの橋渡しになる。ウが正しい。

アの五つの作業項目を並行して進める手法はコードとヨードンのオブジェクト指向分析,イのオブジェクトモデル・動的モデル・機能モデルを作る手法はランボーらの OMT の説明である。エも別の手法の説明で,クラスを三つの役割に分類するというロバストネス分析の特徴を含まない。

ロバストネス分析の3つのオブジェクト ユースケースを,バウンダリ(画面など外とのやり取り),コントロール(処理の流れを制御する),エンティティ(データを保持する)の3種類のオブジェクトに分けて,その関係を図にする。アクタはバウンダリとだけやり取りし,バウンダリとエンティティは直接つながらず,間にコントロールが入る。 アクタ 利用者 バウンダリ 画面など コントロール 処理の制御 エンティティ データ バウンダリとエンティティは直接つながらない ユースケースから設計へ進める間の分析
アクタ → バウンダリ → コントロール → エンティティ

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)

問16

リーンソフトウェア開発の説明として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

リーンソフトウェア開発は,トヨタ生産方式などの製造業のリーン生産の考え方をソフトウェア開発に応用したもので,“ムダをなくす”“品質を作り込む”“知識を作り出す”“決定を遅らせる”“速く提供する”“人を尊重する”“全体を最適化する”の七つの原則を掲げる。イが正しい。

アは経験的プロセス制御に基づきスプリントで検査と適応を繰り返すスクラム。ウは“コミュニケーション”“シンプリシティ”“フィードバック”“勇気”“尊重”の五つの価値を掲げる XP(エクストリームプログラミング)。エは利用者にとって価値のある機能単位ごとに五つのプロセスを回す FDD(ユーザ機能駆動開発)の説明である。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)

用語解説:アジャイル開発(スクラム・XP)

問17

マッシュアップの説明はどれか。

正解 エ

解説

マッシュアップは,Web API などで公開されている複数のサービスを組み合わせて,新しいサービスを作り出す手法である。例えば地図サービスと店舗情報のサービスを組み合わせて,店舗の場所を地図に示すサービスを作る。エが正しい。

アは既存のプログラムを解析して仕様を導き出すリバースエンジニアリング。イは既存のプログラムを部品化して組み合わせるソフトウェア部品の再利用,ウはクラスライブラリを使った開発で,いずれも自組織のプログラム資産を再利用する方法であり,外部に公開されたサービスを組み合わせるマッシュアップとは異なる。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)

問18

システムの改善に向けて提出された案1〜4について,評価項目を設定して採点した結果を,採点結果表に示す。効果及びリスクについては5段階評価とし,それぞれの評価項目の重要度に応じて,重み付け表に示すとおりの重み付けを行った上で,次式で総合評価点を算出する。総合評価点が最も高い改善案はどれか。

総合評価点 = 効果の総評価点 − リスクの総評価点
採点結果表と重み付け表。採点結果表(案1・案2・案3・案4の順):効果の作業コスト削減は 5・4・2・4,システム運用品質向上は 2・4・2・5,セキュリティ強化は 3・4・5・2。リスクの技術リスクは 4・1・5・1,スケジュールリスクは 2・4・1・5。重み付け表:効果の作業コスト削減は3,システム運用品質向上は2,セキュリティ強化は4,リスクの技術リスクは3,スケジュールリスクは8。

正解 ウ

解説

各評価項目の点数に重みを掛けて合計する。効果の総評価点は,案1が 5×3+2×2+3×4=31,案2が 4×3+4×2+4×4=36,案3が 2×3+2×2+5×4=30,案4が 4×3+5×2+2×4=30。リスクの総評価点は,案1が 4×3+2×8=28,案2が 1×3+4×8=35,案3が 5×3+1×8=23,案4が 1×3+5×8=43。

総合評価点は,案1が 31−28=3,案2が 36−35=1,案3が 30−23=7,案4が 30−43=−13 で,最も高いのは案3。ウが正しい。効果だけを比べると案2が最も高いが,重みの大きいスケジュールリスクの点数が高いため総合では伸びない。

効果とリスクを重み付けして総合評価点を出す 効果の総評価点は 案1 31,案2 36,案3 30,案4 30。リスクの総評価点は 案1 28,案2 35,案3 23,案4 43(スケジュールリスクの重み 8 が大きい)。総合評価点=効果−リスクで,案1 3,案2 1,案3 7,案4 −13。最も高いのは案3。効果だけなら案2 が最も高い。 案1 案2 案3 案4 効果(重み 4・2・3) 31 36 30 30 リスク(重み 8・3) 28 35 23 43 総合(効果−リスク) 3 1 7 −13 案3:効果は 30 だが,重み 8 のスケジュールリスクが 1 と低い 案2:効果は最高の 36 でも,リスクが 35 で総合は 1 点数 × 重み を項目ごとに足してから,効果からリスクを引く
総合評価点=効果の総評価点−リスクの総評価点。最も高いのは案3

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)

問19

情報システムの設計の例のうち,フェールソフトの考え方を適用した例はどれか。

正解 ウ

解説

フェールソフトは,故障が起きたときにシステムを止めるのではなく,機能や性能を落としてでも動き続けさせる(縮退運転する)考え方。ハードウェア障害時に構成を縮小して運転を続けるウがこれに当たる。

アとイは,障害時に安全な側へ倒して停止させるフェールセーフ。エは利用者の誤操作を未然に防ぐフールプルーフの例。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)

用語解説:信頼性設計(フェールセーフ・フェールソフト・フールプルーフ)

問20

システムの要件を検討する際に用いる UX デザインの説明として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

UX(User Experience:利用者体験)デザインは,システムが利用者にもたらす有効性や使いやすさにとどまらず,使ったときの快適さ,安心感,楽しさといった体験全体の価値を重視して設計する考え方である。ウが正しい。

アは設計段階からセキュリティや個人情報保護の対策を組み込むセキュリティバイデザインやプライバシーバイデザインの考え方。イは個々の機能をサービスとして組み合わせてシステムを作る SOA(サービス指向アーキテクチャ)。エは公開された API などを通じて他社のソフトウェアを活用して開発の生産性を高める考え方である。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)

問21

常時10名以上の従業員を有するソフトウェア開発会社が,社内の情報セキュリティ管理を強化するために,秘密情報を扱う担当従業員の扱いを見直すこととした。労働法に照らし,適切な行為はどれか。

正解 ア

解説

就業規則に秘密保持の一般的な規定があるうえで,担当従業員の職務に合わせて守るべき秘密の内容を具体的に特定する個別合意を結ぶことは,就業規則の基準を下回るものではなく,秘密の範囲を明確にする適切な措置である。アが正しい。

イは誤りで,常時10人以上の労働者を使用する事業場で就業規則を変更するときは,労働者の過半数で組織する労働組合(無ければ過半数を代表する者)の意見を聴く必要がある(労働基準法第90条)。ウは誤りで,就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める個別の合意は,その部分が無効となる(労働契約法第12条)。エは誤りで,情報セキュリティに関する規定を就業規則に記載してはならないという決まりはない。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)

問22

技術者倫理におけるホイッスルブローイングの説明として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

ホイッスルブローイング(内部告発)は,組織の中で行われている法令違反や社会的規範から外れた行為を,組織の外部の行政機関や報道機関などの第三者に知らせることである。日本では公益通報者保護法が,一定の要件を満たす通報をした者を解雇などの不利益な取扱いから保護している。ウが正しい。

アは画期的なアイディアで経済や社会に変革をもたらすイノベーション。イは対話を通じて相手が自ら問題を解決できるように導くコーチング。エはリスクが発生したときの対処をあらかじめ準備しておくコンティンジェンシー計画の説明である。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)

問23

暗号技術のうち,共通鍵暗号方式はどれか。

正解 ア

解説

AES(Advanced Encryption Standard)は,暗号化と復号に同じ鍵を使う共通鍵暗号方式で,米国の標準暗号として採用され,無線 LAN の WPA2 や TLS など広く使われている。アが正しい。

イの ElGamal 暗号,ウの RSA,エの楕円曲線暗号は,いずれも暗号化に公開鍵,復号に秘密鍵を使う公開鍵暗号方式である。RSA は大きな数の素因数分解の難しさ,ElGamal 暗号と楕円曲線暗号は離散対数問題の難しさを安全性の根拠にしている。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)

用語解説:共通鍵暗号と公開鍵暗号

問24

テンペスト攻撃の説明とその対策として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

テンペスト攻撃は,ディスプレイやケーブルなどの機器から放射される微弱な電磁波を離れた場所で傍受し,画面の表示内容などを再現して盗み見る攻撃である。対策は,電磁波を遮断するシールドを施した機器や部屋を使うなどして,電磁波が外に漏れないようにすることである。イが正しい。

アは通信経路上でパケットを改ざんする中間者攻撃などの説明,ウはマクロ機能を悪用するマクロマルウェアの説明,エは無線 LAN の電波を傍受する盗聴の説明で,いずれもテンペスト攻撃ではない。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)

用語解説:ディジタル署名(デジタル署名)

問25

DNSSEC の機能はどれか。

正解 イ

解説

DNSSEC は,DNS の応答に含まれるリソースレコードにディジタル署名を付け,受け取った側がその署名を検証することで,応答が正当な権威 DNS サーバから送られたものであり,途中で改ざんされていないことを確かめる仕組みである。DNS キャッシュポイズニングへの対策になる。イが正しい。

アのように再帰的な問合せを受け付ける範囲を広げると,オープンリゾルバとなって DNS リフレクション攻撃に悪用されるおそれがあり,逆効果である。ウは権威 DNS サーバの冗長化による可用性の向上。エは共通鍵とハッシュ関数を使って DNS の更新要求などの送信者を認証する TSIG の説明である。

出典:令和3年度 秋期 プロジェクトマネージャ試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)

用語解説:ディジタル署名(デジタル署名) DNS のセキュリティ(DNSSEC・キャッシュポイズニング) ハッシュ関数 共通鍵暗号と公開鍵暗号