平成26年度 秋期に実施されたシステムアーキテクト試験
午後Ⅱの全3問(論述式)です。問題文・設問と,問われていることの整理をそのまま読めます。
問1 業務プロセスの見直しにおける情報システムの活用について
業務プロセスの見直しでは,情報システムを活用することが多い。業務プロセスの見直しを行う際は,業務上の問題とその原因を明らかにする必要がある。例えば,次のようなものがある。
- 特定の業務プロセスに時間が掛かっていることが原因で全体の時間が延びている。
- 顧客への対応手順が支店ごとに異なることが原因でクレームが発生している。
- 判断のミスが多いことが原因で発注のロスが発生している。
システムアーキテクトは,原因を取り除くために情報システムの活用を検討する。情報システムの活用には,例えば次のようなものがある。
- 特定の業務プロセスに時間が掛かっていることが原因の場合,原因になっている業務プロセスを情報システムで自動化し,時間短縮を図る。
- 顧客への対応手順が支店ごとに異なることが原因の場合,業務プロセスの標準に基づいた情報システム機能を開発し,必ず対応手順が同じになるようにする。
- 判断のミスが多いことが原因の場合,ルール化した判断方法を情報システムに組み込み,人間による判断を排除する。
また,このような情報システムの活用では,例外的な状況でも業務プロセスが実行できるように,次のような対応を検討しておくことも重要である。
- まれに発生する例外データへの対応方法の用意
- 情報システムで判断できない場合の人間への判断材料の提示
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
業務プロセスの見直しでは,情報システムを活用することが多い。このような見直しでは,業務プロセスの問題とその原因を分析し,システムアーキテクトが問題とその原因を解消するための情報システムの活用方法を検討する。
本問は,業務プロセスの見直しにおける情報システムの活用について,業務プロセスの問題とその原因,原因を取り除くための情報システムの活用方法,例外的な状況でも業務プロセスが実行できるように想定した状況と対応を具体的に論述することを求めている。論述を通じて,システムアーキテクトに必要な情報システムの活用方法を検討する能力,経験などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが携わった業務プロセスの見直しについて,見直しの対象となった業務プロセス,及び関連する情報システムの概要を含めて,800字以内で述べよ。
問われていること
- 携わった業務プロセスの見直し
- 見直しの対象となった業務プロセス
- 関連する情報システムの概要
組み立ての注意
設問イで業務上の問題とその原因を述べるので,見直しの対象となった業務プロセスは,その問題がどこで起きているのかが分かるように書いておく。
採点講評は,業務プロセスの問題ではなく情報システムの問題を主題にした論述を挙げている。見直しの対象は業務プロセスであり,情報システムはそれに関連するものとして書く。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べた業務プロセスの見直しは,どのような業務上の問題とその原因に対応するためのものであったか。また,原因を取り除くためにどのように情報システムを活用したか。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 対応しようとした業務上の問題
- その問題の原因
- 原因を取り除くための情報システムの活用
組み立ての注意
前文の例は,いずれも「原因(特定の業務プロセスに時間が掛かっている,対応手順が支店ごとに異なる,判断のミスが多い)→ 問題(全体の時間が延びる,クレームが発生する,発注のロスが発生する)」の形で書かれ,情報システムの活用例もそれぞれの原因に対応している。問題,原因,活用のつながりが分かるように書く。
活用は「原因を取り除くために」と問われている。問題の症状ではなく原因に手を打つ形にする。採点講評は,問題の原因追究が不足している論述を挙げ,業務プロセスの面からの分析能力を高めることを求めている。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問イで述べた情報システムの活用で,例外的な状況でも業務プロセスが実行できるように,想定して検討した,起こり得る状況とその対応を,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
組み立ての注意
対応は,前文の例(まれに発生する例外データへの対応方法の用意,情報システムで判断できない場合の人間への判断材料の提示)のように書く。
起こり得る状況は,設問イで述べた情報システムの活用(自動化やルール化した判断など)が想定どおりに働かない場面として書くと,設問どうしがつながる。
採点講評(IPA)
問1(業務プロセスの見直しにおける情報システムの活用について)では,業務プロセスの問題とその原因を明らかにした上で,情報システムをどのように活用したかという具体的な論述を期待した。多くの解答が,業務プロセスの問題を解消するための情報システムの活用を論述していた。一方で,問題の原因追究が不足している論述や,業務プロセスの問題ではなく情報システムの問題を主題にした論述も散見された。システムアーキテクトには,業務プロセスと情報システムの両面から対象業務システムを分析することが求められる。そのため,情報システムだけでなく,業務プロセスの面からの分析能力を高めていってほしい。
全問共通
全問に共通して,設問に素直に答えている論述が多かった。また,問題文の引用で文字数を費やし,内容が薄くなってしまっている論述も少なかった。一方で,問題文に記載してある観点などを抜き出し,一般論と組み合わせただけの論述は引き続き散見された。問題文に記載した観点は例示である。自らが実際にシステムアーキテクトとして,検討し取り組んだことを具体的に論述してほしい。
出典:平成26年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2 データ交換を利用する情報システムの設計について
ビジネスのスピード向上や業務運用の効率向上を目的として,企業間や企業内システム間でデータ交換を利用する情報システムを構築する企業が増加している。データ交換では,運用時間帯,データ送信順序などの制約事項が,あらかじめ決まっている場合が多い。システムアーキテクトは,これらの制約事項を踏まえて,データ交換を利用する情報システムを設計しなければならない。
例えば,データ交換を利用する受発注システムの場合,次のように情報システムの設計を行う。
- 大量の入力データがある場合でも,データの送信開始時刻に間に合わせるために,送信側で,送信データの作成を多重で処理できるように設計する。
- 受注データとマスタデータの送信順序が保証されない場合,データの整合性を維持するために,受信側で全ての受信データを一時保管した上で,その中からマスタデータを先に反映するように設計する。
さらに,次のように,データ交換に伴う異常を想定して,情報システムでの対応方法を用意しておくことも重要である。
- 一部の受信予定データが届かない場合,その後の処理全体が滞ることを避けるために,事前の取決めに従って,後続処理を開始できるようにする。
- 受注データの受信から加工までの処理を自動化する場合でも,受注数量が過去実績に比べて極端に多いなどの業務上の異常データが発生したときには,処理を中断して人手による確認ができるようにする。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
ビジネスのスピード向上や業務運用の効率向上を目的として,企業間や企業内システム間でデータ交換を利用する情報システムを構築する企業が増加している。データ交換では,運用時間帯,データ送信順序などの制約事項が,あらかじめ決まっている場合が多い。システムアーキテクトは,これらの制約事項を踏まえて,データ交換を利用する情報システムを設計しなければならない。
本問は,データ交換を利用する情報システムの構築において,どのような制約事項を踏まえ,どのように情報システムを設計したか,また,どのような異常を想定し,情報システムでどのような対応方法を用意したか,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,システムアーキテクトに必要なデータ交換を利用する情報システムの設計能力を評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが構築に携わった情報システムにおいて,データ交換を利用する目的を,対象業務,及び対象の情報システムの概要を含めて,800字以内で述べよ。
問われていること
- データ交換を利用する目的
- 対象業務
- 対象の情報システムの概要
組み立ての注意
目的は,前文の例(ビジネスのスピード向上,業務運用の効率向上)のように書く。
設問イで制約事項を述べるので,データ交換の相手(企業間か企業内システム間か)や,どのようなデータをやり取りするのかが分かるように書いておくと,後の論述がつながる。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べた情報システムの構築において,どのような制約事項を踏まえて,どのように情報システムを設計したか。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
組み立ての注意
制約事項は,前文の例(運用時間帯,データ送信順序など)のように,データ交換であらかじめ決まっているものとして書く。
前文の設計例は,いずれも「制約(送信開始時刻に間に合わせる,送信順序が保証されない)→ 設計(送信データの作成を多重で処理する,受信データを一時保管してマスタデータを先に反映する)」の形になっている。どの制約事項に対してどう設計したかのつながりが分かるように書く。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問アで述べた情報システムの構築において,データ交換に伴うどのような異常を想定し,情報システムでどのような対応方法を用意したか。その対応が必要になる理由とともに,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 想定したデータ交換に伴う異常
- 情報システムで用意した対応方法
- その対応が必要になる理由
組み立ての注意
異常と対応方法は,前文の例(一部の受信予定データが届かない場合に事前の取決めに従って後続処理を開始する,業務上の異常データが発生したときに処理を中断して人手による確認ができるようにする)のように書く。前文の例には,データが届かないという交換そのものの異常と,受注数量が極端に多いという業務上の異常の両方がある。
理由も問われている。前文の例の「その後の処理全体が滞ることを避けるために」のように,その対応がないと何が困るのかを書く。
採点講評(IPA)
問2(データ交換を利用する情報システムの設計について)では,設計内容が具体的に論述されているものが多かった。データ交換を利用する情報システムの設計を実際に経験した受験者が,論述したことがうかがえる。システムアーキテクトとして,引き続き,様々な制約事項を考慮した情報システムの設計能力を高めていってほしい。
全問共通
全問に共通して,設問に素直に答えている論述が多かった。また,問題文の引用で文字数を費やし,内容が薄くなってしまっている論述も少なかった。一方で,問題文に記載してある観点などを抜き出し,一般論と組み合わせただけの論述は引き続き散見された。問題文に記載した観点は例示である。自らが実際にシステムアーキテクトとして,検討し取り組んだことを具体的に論述してほしい。
出典:平成26年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)
問3 組込みシステムの開発における機能分割について
組込みシステムのシステムアーキテクトは,組込みシステムの開発において,製品開発の企画書などで示されたシステム要件に基づき,機能仕様を決定する。また,機能仕様を実現するために,各機能を適切に分割して最適なシステムアーキテクチャを設計することが求められている。
例えば,機能仕様で,データに対して機能Aと機能Bを実現することと,データ量の増減に合わせて処理装置を増減することが求められているとする。このときのシステムアーキテクチャの設計では,機能Aの処理装置と機能Bの処理装置を複数個ずつ組み合わせて実現するか,両機能を実装した処理装置を複数個で実現するかを決定することがある。また,システム要件で示された安全性を確保するために,ハードウェアで実装する機能とソフトウェアで実装する機能を明確にし,両者を組み合わせて必要かつ十分な安全性を実現することなどがある。
適切な機能分割を行うためには,安全性,信頼性,性能,開発スケジュール,開発・製造・保守などのコスト,製品展開,拡張性・再利用性,規格への適合性,知的財産などについて,複数の機能分割案を比較・検討する必要がある。その際には,必要な事項を調査し,可能な限り定量的に比較・検討を行うことが重要である。
また,システムアーキテクトは,機能分割の結果をシステムアーキテクチャ設計書,ハードウェア要求仕様書,ソフトウェア要求仕様書などにまとめる。このとき,決定に至った過程・経緯に対する追跡が行われることを考慮する必要がある。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
組込みシステム開発において,システムアーキテクトは,機能仕様を実現する最適なアーキテクチャの設計を行う。その際には,各機能を適切に分割して最適なアーキテクチャを設計することが求められている。
本問は,アーキテクチャの設計における適切な機能分割の実施とその評価について,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,システムアーキテクトとしてのアーキテクチャの設計における実践的能力を評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが開発に携わった組込みシステムの機能,性能などの概要と,機能分割の対象とした機能を,800字以内で述べよ。
問われていること
- 開発に携わった組込みシステムの機能,性能などの概要
- 機能分割の対象とした機能
組み立ての注意
機能分割の対象とした機能は,前文の例(機能Aと機能Bを別々の処理装置にするか同じ処理装置にするか,ハードウェアで実装するかソフトウェアで実装するか)のように,どう分けるかを決める必要があった機能として書く。
採点講評は,分割の対象とした機能の説明が曖昧な論述や,分割の必然性が読み取れない論述を挙げている。システム要件(データ量の増減への対応,安全性の確保など)から,なぜその機能を分割の対象にしたかが分かるようにする。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べた組込みシステムに対する機能分割案の比較・検討に際して,調査を必要とした事柄,及び機能分割案の内容・比較項目・検討結果について,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 調査を必要とした事柄
- 機能分割案の内容
- 比較項目
- 検討結果
組み立ての注意
問われているのは,調査を必要とした事柄と,機能分割案の内容・比較項目・検討結果。前文のとおり,機能分割案は複数を挙げて比較・検討する。
比較項目は,前文の例(安全性,信頼性,性能,開発スケジュール,開発・製造・保守などのコスト,製品展開,拡張性・再利用性,規格への適合性,知的財産など)から,そのシステムで効いたものを選ぶ。前文は,必要な事項を調査し,可能な限り定量的に比較・検討することを重要としている。
採点講評は,単なる機能モジュールの選択や新機能の追加に留まっている論述を挙げている。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問イで述べた機能分割案に対する評価,及び決定に至った過程・経緯に対する追跡への対応について,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 機能分割案に対する評価
- 決定に至った過程・経緯に対する追跡への対応
組み立ての注意
評価の対象は,設問イで述べた機能分割案。出題趣旨も,適切な機能分割の実施とその評価を求めている。
追跡への対応は,前文のとおり,機能分割の結果をシステムアーキテクチャ設計書,ハードウェア要求仕様書,ソフトウェア要求仕様書などにまとめる際に,決定に至った過程・経緯をどう追えるようにしたかとして書く。
採点講評(IPA)
問3(組込みシステムの開発における機能分割について)では,組込みシステム開発の際に求められるアーキテクチャ設計時の適切な機能分割についての実践的な論述を期待した。おおむね,設問の趣旨を理解し,機能分割についてシステムアーキテクトの観点から適切に論述されていた。一方で,分割の対象とした機能の説明が曖昧なものや分割の必然性が読み取れないもの,単なる機能モジュールの選択や新機能の追加に留まっているものなど,不十分な論述も散見された。
全問共通
全問に共通して,設問に素直に答えている論述が多かった。また,問題文の引用で文字数を費やし,内容が薄くなってしまっている論述も少なかった。一方で,問題文に記載してある観点などを抜き出し,一般論と組み合わせただけの論述は引き続き散見された。問題文に記載した観点は例示である。自らが実際にシステムアーキテクトとして,検討し取り組んだことを具体的に論述してほしい。
出典:平成26年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅱ 問3(表記を一部改変)