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ITストラテジスト試験

平成30年度 秋期 科目A-2(午前Ⅱ)

平成30年度 秋期に実施されたITストラテジスト試験 午前Ⅱ(2026年度からの科目A-2)の全25問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:ITストラテジスト試験について

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問1

IDEAL によるプロセス改善の取組みにおいて,図の b に当てはまる説明はどれか。ここで,ア〜エは a〜d のいずれかに対応する。

“開始”から a へ矢印が向かう。a から b(太枠)へ,b から c へ,c から d へ,d から a へ矢印が向かい,a→b→c→d→a のサイクルになっている。

正解 イ

解説

IDEAL は,カーネギーメロン大学ソフトウェアエンジニアリング研究所(SEI)が示したプロセス改善のモデルで,開始(Initiating),診断(Diagnosing),確立(Establishing),実行(Acting),学習(Learning)の五つのフェーズの頭文字を並べたものである。図では開始に続く a が診断,b が確立,c が実行,d が学習に当たる。確立では,診断で明らかになった課題に優先順位を付け,具体的な改善計画を作成するので,イが正しい。

アは解決策の作成と先行評価・試行・展開を行う実行(c),ウは活動を振り返って次のサイクルにつなげる学習(d),エは現状を調査して改善ポイントを洗い出す診断(a)に当たる説明である。

IDEAL のプロセス改善の5段階 開始(Initiating:改善の土台を作る),診断(Diagnosing:現状と目標の差を明らかにする),確立(Establishing:優先順位を決めて改善の計画を作る),実行(Acting:解決策を作って試し,展開する),学習(Learning:振り返って次のサイクルに生かす)の順に進み,学習から診断へ戻って繰り返す。 開始 診断 現状と目標の差 確立 計画を作る 実行 試して展開 学習 振り返る 図の b(開始の次の次)は確立:優先順位を決めて計画
開始 → 診断 → 確立 → 実行 → 学習 → 診断…

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)

問2

SOA の説明はどれか。

正解 エ

解説

SOA(Service Oriented Architecture,サービス指向アーキテクチャ)は,業務システムの機能を利用者から見た意味のある単位(サービス)に分割し,それらを組み合わせてシステムを構築する考え方。業務プロセスの変更に合わせてサービスを組み替えやすく,他システムとの連携も容易になる。

アは ERP,イはフィット&ギャップ分析,ウは BPM(ビジネスプロセスマネジメント)の説明。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)

用語解説:SOA(サービス指向アーキテクチャ)

問3

ある企業では,顧客データについて,顧客を性別・年齢層・職業・年収など複数の属性を組み合わせてセグメント化し,蓄積された大量の購買履歴データに照らして商品の購入可能性が最も高いセグメントを予測している。このときに活用される分析手法はどれか。

正解 エ

解説

決定木分析は,性別,年齢層,職業,年収などの属性を条件として,データを段階的に枝分かれさせて分類し,目的とする結果(ここでは商品を購入するかどうか)が起こりやすいグループを見つけ出す手法である。分類の過程が木構造で表されるので,どの属性の組合せのセグメントで購入可能性が高いかを予測・説明しやすい。エが該当する。

アの ABC 分析は,売上高などの大きい順に項目を並べて重点管理の対象を決める手法である。イの SWOT 分析は,自社の強み・弱みと外部環境の機会・脅威を整理する手法である。ウの競合分析は,競合他社の戦略や製品などを調べて自社と比較する手法である。

決定木分析 性別,年齢層,職業,年収などの属性で,データを段階的に枝分かれさせて分類し,枝の先ごとに購入率などの結果を見る。どの属性の組合せの顧客がよく買うかが,木の形で分かる。 全顧客 性別:女性 性別:男性 20代 購入率 高 30代以上 購入率 低 年収 高 購入率 中 年収 低 購入率 低 枝の分け方と購入率は例
属性で順に枝分かれさせ,枝の先で購入率を比べる

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)

問4

構造化インタビューの手法を用いた意見の収集形態はどれか。

正解 ウ

解説

構造化インタビューは,質問する項目とその順序をあらかじめ全て決めておき,どの対象者にも同じ質問を同じ順序で行う面接調査の方法である。インタビュアの技量やその場の流れに左右されずに回答を比べられ,結果を集計しやすいという利点がある。ウが正しい。

アは,専門家に匿名で意見を求め,要約して返してまた意見を求めることを繰り返すデルファイ法である。イは,熟練した進行役が議論を導きながら少人数の参加者から意見を引き出すグループインタビュー(フォーカスグループインタビュー)である。エは,批判厳禁・自由奔放・質より量・便乗歓迎を基本ルールとするブレーンストーミングの説明である。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)

問5

共通フレーム 2013 によれば,要件定義プロセスの活動内容には,利害関係者の識別,要件の識別,要件の評価,要件の合意などがある。このうちの要件の識別において実施する作業はどれか。

正解 エ

解説

共通フレーム 2013 の要件定義プロセスの“要件の識別”では,利害関係者から要求(ニーズ,要望,期待)や制約条件を引き出し,想定される運用シナリオなどを明らかにして,利害関係者の要件を定める。対応する JIS X 0160:2012 の利害関係者要求事項定義プロセスでも,要求事項の識別に,要求と制約条件の抽出や運用シナリオの定義が含まれる。エが該当する。

アのライフサイクルの全期間を通じた関係者の明確化は“利害関係者の識別”,イの抽出した要件の矛盾や曖昧さをなくして一貫性のある集合に整理するのは“要件の評価”,ウの問題点の解決方法を利害関係者に説明して合意を得るのは“要件の合意”で行う作業である。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)

用語解説:JIS X 0160 と共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス)

問6

多角化戦略のうち,M&A による垂直統合に該当するものはどれか。

正解 ウ

解説

垂直統合は,原材料の調達から製造・販売まで続く流れ(サプライチェーン)の川上や川下の企業を取り込むこと。製鉄メーカが原料である鉄鉱石の採掘会社を買収するのは,川上へ広げる典型的な垂直統合に当たる。ウが正しい。

イの自動車メーカによる軽自動車メーカの買収は,同じ段階の同業を取り込む水平統合。アの銀行による保険会社の買収は関連する事業分野への集中型多角化,エの電機メーカによる不動産会社の買収は関連のない分野への集成型(コングロマリット型)多角化である。

垂直統合と水平統合 原材料の調達から製造,販売へと続く流れの,川上や川下の企業を取り込むのが垂直統合(例:製鉄メーカが鉄鉱石の採掘会社を買収する)。同じ段階の企業(同業他社)を取り込むのが水平統合。 原料 企業 企業 企業 製造 自社 企業 企業 卸・販売 企業 企業 企業 垂直統合 (色の列) ← 水平統合:同じ段階の他社 →
流れの上下をつなぐのが垂直,同じ段階を広げるのが水平

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)

問7

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)マトリックスの a,b に入れる語句の適切な組合せはどれか。

2×2 のマトリックス。縦軸は a(上が高,下が低),横軸は b(左が高,右が低)。左上が“花形”,右上が“問題児”,左下が“金のなる木”,右下が“負け犬”。

正解 ウ

解説

PPM は,縦軸に市場成長率,横軸に相対的市場占有率をとって事業を四つに分ける。図では縦軸の上が高,横軸の左が高になっており,左上が花形(成長率も占有率も高い),右上が問題児(成長率は高いが占有率が低い),左下が金のなる木(成長率は低いが占有率が高い),右下が負け犬に当たる。この配置に合うのは a が市場成長率,b が市場占有率のウ。

エのように a と b を入れ替えると,成長率が高く占有率の低い区画が「金のなる木」になってしまい,四つの区画の意味と合わなくなる。アとイの売上高利益率は PPM の軸には使わない。

PPM の4つの区分 縦軸に市場成長率,横軸に相対的市場シェア(左が高い)をとる。成長率もシェアも高い花形,成長率が高くシェアが低い問題児,成長率が低くシェアが高い金のなる木,どちらも低い負け犬に分ける。金のなる木が生んだ資金を,花形や問題児に回す。 花形 成長に合わせた投資も要る 問題児 シェアを取るには投資が要る 金のなる木 投資が少なく資金を生む 負け犬 撤退を考える 高 低 成長率 市場 高 低 相対的市場シェア 金のなる木の資金を,花形と問題児へ回す
金のなる木が生む資金を,花形と問題児に回す

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)

問8

FSP(Frequent Shoppers Program)の説明はどれか。

正解 ウ

解説

FSP(Frequent Shoppers Program)は,小売業などが会員カードを発行して顧客一人ひとりの購買情報を集め,購買実績に応じて割引ポイントの付与や会員割引といった特典を与える仕組みである。売上への貢献が大きい優良顧客を見分けて厚く遇し,囲い込んで維持・拡大することを狙う。ウが該当する。

アは,広告経由の購入という成果に応じて報酬を支払うアフィリエイト広告である。イは,特売を繰り返す代わりに恒常的な低価格を掲げるエブリデーロープライス(EDLP)戦略である。エは,直近購買日・購買頻度・購買金額の 3 要素で顧客を分類する RFM 分析の説明である。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)

問9

スキミングプライシングの説明はどれか。

正解 ウ

解説

スキミングプライシング(上澄み吸収価格戦略)は,新製品の導入期にあえて高い価格を設定し,価格が高くても購入する層から短期間で利益を回収する手法である。開発費を早く回収して先行者利益を確保し,競合が現れる段階で段階的に価格を下げていく。ウが正しい。

アは,消費者がその製品に感じる価値や値頃感に合わせて価格を決める知覚価値価格設定である。イは,導入期に低価格を付けてまず市場シェアの獲得を優先するペネトレーションプライシング(市場浸透価格戦略)である。エは,同じ製品でも市場セグメントごとに異なる価格を付ける差別価格設定の説明である。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)

問10

消費者市場のセグメンテーション変数のうち,人口統計的変数はどれか。

正解 ウ

解説

消費者市場のセグメンテーション変数は,地理的変数,人口統計的変数,心理的変数,行動変数に大別される。人口統計的変数(デモグラフィック変数)は,年齢,性別,職業,所得,家族構成など,人口統計で把握できる属性なので,ウが該当する。

アの使用頻度やロイヤルティは購買行動に関する行動変数,イの都市規模や人口密度は地理的変数,エのパーソナリティやライフスタイルは心理的変数(サイコグラフィック変数)である。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)

問11

商品のブランド戦略の一つであるラインエクステンションを説明したものはどれか。

正解 ウ

解説

ラインエクステンション(ライン拡張)は,実績のあるブランド名を同じ商品カテゴリの中で広げ,味や香り,容量,機能などが異なるシリーズ商品を加えて品ぞろえを豊富にする戦略である。既存ブランドの認知度をそのまま生かせるので,新規ブランドを立ち上げるよりも少ない費用で売場での占有率を高められる。ウが正しい。

アは,デザインや容量を見直した商品を投入して既存ブランドを活性化させるリニューアルの説明である。イは,他社の有力ブランドと組んで相乗効果を狙うブランドアライアンス(コ・ブランディング)である。エは,確立したブランド名を現行商品とは別のカテゴリに持ち込むブランドエクステンション(ブランド拡張)の説明である。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)

問12

ジェフリー・A・ムーアはキャズム理論において,利用者の行動様式に変化を強いるハイテク製品では,イノベータ理論の五つの採用者区分の間に断絶があると主張し,その中でも特に乗り越えるのが困難な深く大きな溝を“キャズム”と呼んでいる。“キャズム”が存在する場所はどれか。

正解 イ

解説

イノベータ理論では,新製品の採用者をイノベータ,アーリーアダプタ,アーリーマジョリティ,レイトマジョリティ,ラガードの五つに区分する。ムーアは,新しさ自体に価値を見いだす初期市場と,実用性や周囲での実績を重んじるメインストリーム市場とでは購買の動機が大きく異なるため,その境目に深く大きな溝があるとした。境目はアーリーアダプタとアーリーマジョリティの間なので,イが正しい。

他の三つの区分の間にも断絶(クラック)はあるとされるが,ムーアがキャズムと呼んだのは初期市場とメインストリーム市場との境目だけである。ア,ウ,エはいずれも初期市場の内部,又はメインストリーム市場の内部の区切りであり,該当しない。

イノベータ理論とキャズム 新しい製品を採用する人を,早い順にイノベータ(2.5%),アーリーアダプタ(13.5%),アーリーマジョリティ(34%),レイトマジョリティ(34%),ラガード(16%)に分ける。アーリーアダプタとアーリーマジョリティの間には大きな溝(キャズム)があり,これを越えないと市場に広がらない。 キャズム イノベータ アーリー アダプタ アーリー マジョリティ レイト マジョリティ ラガード
アーリーアダプタとアーリーマジョリティの間の溝がキャズム

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)

問13

ダブルビン方式の特徴はどれか。

正解 ウ

解説

ダブルビン方式は,部品などを二つの容器(ビン)に分けて保管し,一方の容器が空になったら,空になった容器 1 個分を発注する在庫管理の方式である。二つ目の容器に残る量が発注点に,空になった容器 1 個分が発注量に当たり,発注点と発注量が等しい。容器が空になったことで発注の時期が分かるので,都度在庫量を調査する必要がない。ウが適切である。

アは誤りで,ダブルビン方式は管理の手間が少ない反面,きめ細かな管理ができないので,単価が安く需要が安定している品目に適する。重点管理品には定期発注方式が適する。イは,発注間隔を一定にして発注量を毎回決める定期発注方式の特徴である。エも誤りで,容器に入れる量は,調達リードタイム中の需要量や安全在庫を考慮して決める必要がある。

ダブルビン方式 部品を2つの容器に分けて置き,1つ目の容器から使う。1つ目が空になったら,容器1つ分を発注し,届くまでは2つ目の容器を使う。2つ目の容器の量が発注点,容器1つ分が発注量なので,発注点と発注量が等しく,その都度在庫を数える必要がない。 空 容器1(使い切った) 在庫 容器2(発注点) 発注 容器1つ分 空になったのが合図。在庫を数えなくてよい
1つ目が空になったら1つ分を発注。発注点=発注量

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)

問14

知識創造プロセス(SECI モデル)において,表出化に該当するものはどれか。

正解 ア

解説

野中郁次郎らの知識創造プロセス(SECI モデル)は,共同化(Socialization),表出化(Externalization),連結化(Combination),内面化(Internalization)の四つの変換を繰り返すことで組織の知識が創られるとする。表出化は,個人が経験として身に付けた暗黙知を言葉や図に表し,他人が使える形式知に変える段階である。対応の仕方をマニュアルという文書にするアが該当する。

イは,同行させて目で見て体得させるもので,暗黙知から暗黙知への共同化に当たる。ウは,既にある二つのマニュアルという形式知を組み合わせて新しい形式知を作るもので連結化である。エは,マニュアルの内容を実践して自分のスキルという暗黙知にするもので内面化である。

SECI モデル 共同化は暗黙知を暗黙知のまま,一緒に働く経験を通して伝える。表出化は暗黙知を言葉や図にして形式知にする。連結化は形式知どうしを組み合わせて体系にする。内面化は形式知を実践して自分の暗黙知にする。この4つを順に回して,知識を個人から組織へ広げていく。 共同化 暗黙知→暗黙知 一緒に働いて体で覚える 表出化 暗黙知→形式知 言葉や図にする 内面化 形式知→暗黙知 実践して身につける 連結化 形式知→形式知 組み合わせて体系にする
共同化→表出化→連結化→内面化の順に回り,知識が個人から組織へ広がる

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)

用語解説:SECI モデル(知識創造プロセス)

問15

TLO(Technology Licensing Organization)法に基づき,承認又は認定された事業者の役割として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

TLO 法(大学等技術移転促進法)に基づいて承認又は認定された TLO(技術移転機関)は,大学などの研究成果を特許化し,その特許を企業にライセンスするなどして技術移転を支援し,大学と産業界の仲介役を果たす。ウが適切である。

アの企業からの委託研究や共同研究を受け入れる窓口は,大学の産学連携部門などの役割。イの研究者の応募に基づいて補助金を支給するのは,研究助成を行う機関の役割。エの民間企業が保有する休眠特許の発掘とライセンスは,大学の研究成果を対象とする TLO の役割ではない。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)

問16

XBRL に関する記述として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

XBRL(eXtensible Business Reporting Language)は,財務報告をはじめとする事業報告のデータを計算機が処理できる形で記述するための XML ベースの国際標準である。勘定科目などの要素の意味と要素間の関係をタクソノミで定義し,個々の数値にその意味を付けて受け渡すので,受け取った側は数値を人手で入力し直さずに処理できる。決算に伴う集計や法定書類の作成を自動化しやすくなるので,アが適切である。

イは誤りで,XBRL では基となるタクソノミに報告する企業が独自の要素を加える拡張タクソノミを作ることができる。ウも誤りで,XBRL は外部への開示に限らず,社内の管理会計の報告にも使える。エは,XBRL は報告データの記述と交換のための仕様であり,受発注や決済など商取引のデータ形式と手順を定める EDI の標準ではない。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)

問17

TOC の特徴はどれか。

正解 ウ

解説

TOC(Theory of Constraints,制約条件の理論)は,ゴールドラットが示した考え方で,工程全体の産出量は最も能力の低い工程(制約条件)によって決まるとする。そこで,スループット(=売上高-資材費,すなわち企業が新たに生み出した金額)を増やすことを最重要視し,制約条件となっている工程を見つけて集中的に手を打つことで全体の流れを改善していく。ウが正しい。

アは誤りで,TOC は個々の工程を個別に最適化しても全体最適にはならないという立場をとる。イも誤りで,需要が供給能力を下回っている状態では生産工程が制約にならず,工程のボトルネックを解消しても産出量は増えない。エも誤りで,TOC のいう制約条件は総投資額ではなく,工程全体の産出量を抑えている部分を指す。

TOC(制約条件の理論) 全体の産出量は,最も能力の低い工程(制約条件)で決まる。ほかの工程だけを個別に良くしても全体は増えないので,制約の工程を見つけて集中的に改善し,ほかの工程はそれに合わせる。評価の軸はスループット(売上高−資材費)の増大。 100/日 工程1 60/日 工程2 90/日 工程3 80/日 工程4 制約条件 全体は 60/日(能力は例)。スループット=売上高−資材費
全体は一番細い工程で決まる。スループットを最重視

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)

問18

ティアダウンの説明はどれか。

正解 ウ

解説

ティアダウンは,他社の製品を分解して部品の構成,材料,加工方法などを自社製品と並べて比べ,コストや性能の差がどこから生じているのかを目に見える形で明らかにする手法である。その結果を設計に反映して,より競争力の高い製品の開発につなげる。ウが正しい。

アは,市場が求める要求品質と提供側の技術特性を二元表(品質表)にして対応関係を明らかにする品質機能展開(QFD)である。イは,整理・整頓を中心に職場環境を整える 5S 活動である。エは,現場の作業者が知恵を出し合って物作りの仕組みから無駄を排除するカイゼン活動の説明である。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)

問19

リーダシップのコンティンジェンシー理論の説明はどれか。

正解 エ

解説

リーダシップのコンティンジェンシー理論(条件適合理論)は,どのような場面にも通用する唯一最適なリーダシップのスタイルは存在せず,有効なスタイルは部下の成熟度,仕事の構造化の程度,リーダと部下の関係といった状況によって変わるとする考え方である。フィードラーの理論などが代表で,リーダの特性や行動と状況との関係を分析する。エが正しい。

アは,命令統制型の管理を批判し,人は条件しだいで自ら進んで働くとして目標管理制度などによる動機付けを説いたマグレガーの Y 理論である。イは,高い成果を上げる人の行動特性をモデル化して評価や育成に使うコンピテンシーモデルである。ウは,マズローの欲求段階説の説明である。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)

問20

問題解決に当たって,現実にとらわれることなく理想的なシステムを想定した上で,次に,理想との比較から現状の問題点を洗い出し,具体的な改善案を策定する手法はどれか。

正解 エ

解説

ワークデザイン法は,G. ナドラーが提唱した問題解決の手法である。現状の分析から始めるのではなく,まずシステムの目的を明確にして,現実の制約にとらわれない理想的なシステムを想定し,それと現状を比較して問題点を洗い出し,理想に近づくような実現可能な改善案を策定する。エが該当する。

アの系統図法は目的を達成するための手段を多段階に展開する手法,イの親和図法は言語データを似たもの同士でまとめて整理する手法である。ウの線形計画法は,一次式で表された制約条件の下で目的関数を最大又は最小にする解を求める手法である。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)

用語解説:デルファイ法と問題分析の技法

問21

X 社では,(1)〜(4) に示す算定方式で在庫補充量を決定している。第 n 週の週末時点での在庫量を B[n],第 n 週の販売量を C[n] としたとき,第 n 週の週末に発注する在庫補充量の算出式はどれか。ここで,n は3以上とする。

〔在庫補充量の算定方式〕

正解 ア

解説

第 n 週末に発注する在庫補充量は,(2) より“翌週の販売予測量−現在の在庫量+安全在庫量”である。(3) より翌週の販売予測量は先週と今週の販売量の平均 (C[n−1]+C[n])/2,(4) より安全在庫量はその 10%なので,販売予測量と安全在庫量の和は (C[n−1]+C[n])/2×1.1 になる。現在(第 n 週末)の在庫量は B[n] である。

したがって在庫補充量は (C[n−1]+C[n])/2×1.1−B[n] で,アが正しい。イは現在の在庫量として先週末の B[n−1] を引いている。ウは安全在庫量を今週の販売量 C[n] の 10%としている。エは販売予測量に先々週と先週の販売量を使っている。

在庫補充量の算定式 第 n 週の週末に,翌週の販売予測量(先週と今週の販売量の平均 (C[n−1]+C[n])÷2)に安全在庫量(予測の 10%)を足し,今の在庫 B[n] を引いた量を発注する。まとめると (C[n−1]+C[n])÷2×1.1−B[n]。 第 n−1 週 販売 C[n−1] 第 n 週 販売 C[n] 第 n+1 週 販売 予測 週末の在庫 B[n] 予測 = (C[n−1] + C[n]) ÷ 2 安全在庫 = 予測 × 0.1 補充量 = (C[n−1]+C[n])÷2×1.1 − B[n] 引くのは今週末の B[n](先週末の B[n−1] ではない)
予測×1.1 から今週末の在庫を引く

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)

問22

連結売上高総利益率は何%か。ここで,B 社は A 社の 100%子会社で,仕入れは全て親会社からであり,売上は全て親会社以外である。また,期首,期末とも在庫はない。

A 社損益計算書:売上高 4,000,子会社売上高 800,売上原価 3,000,売上総利益 1,800。B 社損益計算書:売上高 1,000,売上原価 800,売上総利益 200。

正解 ウ

解説

連結損益計算書では,親会社と子会社の間の取引をグループ内部の取引として相殺消去する。A 社の子会社売上高 800 万円は B 社の売上原価 800 万円と対応しており,グループ外への売上でも仕入でもないので,両方を消去する。

連結売上高は A 社の売上高 4,000+B 社の売上高 1,000=5,000 万円,連結売上原価は A 社 3,000+B 社 800−内部取引 800=3,000 万円となる。連結売上総利益は 5,000−3,000=2,000 万円なので,連結売上高総利益率は 2,000÷5,000=40%であり,ウになる。

アの約 34%は内部取引を消去せずに(1,800+200)÷(4,800+1,000)で計算した値,イの約 38%は A 社単独の 1,800÷4,800 で計算した値である。

連結での内部取引の消去 A 社から子会社 B 社への売上 800 と,B 社の売上原価 800 はグループの中の取引なので両方を消す。連結売上高は 4,000+1,000=5,000,連結売上原価は 3,000+800−800=3,000 で,売上総利益は 2,000。売上高総利益率は 2,000÷5,000=40%。 A 社 B 社 連結 売上高 4,000 1,000 5,000 子会社売上高 800 消す 売上原価 3,000 800 3,000 売上総利益 1,800 200 2,000 B 社の原価 800 は A 社からの仕入 2,000 ÷ 5,000 = 40%
親会社の子会社向け売上と,子会社の仕入(売上原価)を消す

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)

問23

刑法の電子計算機使用詐欺罪に該当する行為はどれか。

正解 ウ

解説

刑法第246条の2の電子計算機使用詐欺罪は,人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報や不正な指令を与えて財産権の得喪や変更に係る不実の電磁的記録を作るなどして,財産上不法の利益を得る行為を罰する。インターネットを経由して銀行のシステムに虚偽の情報を与え,不正な振込や送金をさせるウが該当する。

アのねずみ講の開設は無限連鎖講の防止に関する法律で禁止される行為である。イは人を欺いて粗悪な商品を販売するもので,詐欺罪や景品表示法などの問題になるが,電子計算機に虚偽の情報を与えて財産上の利益を得るものではない。エは Web ページの改ざんによる業務妨害や信用毀損であり,電子計算機損壊等業務妨害罪や信用毀損罪などに当たり得る。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)

問24

格納型クロスサイトスクリプティング(Stored XSS 又は Persistent XSS)攻撃に該当するものはどれか。

正解 ア

解説

格納型(Stored/Persistent)クロスサイトスクリプティングは,攻撃者が Web サイトの掲示板などに攻撃用スクリプトを含むデータを書き込んでサーバに保存させ,そのページを閲覧した利用者の Web ブラウザでスクリプトを実行させる攻撃である。利用者に罠のリンクを踏ませなくても,閲覧しただけで被害が生じる。アが該当する。

イは,不正なスクリプトを含むリクエストを送らせるリンクを利用者にクリックさせ,その応答に含まれたスクリプトを実行させる反射型クロスサイトスクリプティングである。ウは乗っ取った多数の PC から大量のリクエストを送る DDoS 攻撃である。エは送信元を攻撃対象に偽装した DNS リクエストで大量の応答を送り付ける DNS リフレクション(DNS amplification)攻撃である。

XSS・CSRF・クリックジャッキング XSS(反射型)は,スクリプトを含む罠のリンクを利用者に開かせ,脆弱なサイトがそのスクリプトをそのままページに埋めて返すので,利用者のブラウザで実行される。CSRF は,ログイン中の利用者に罠のページを開かせ,その利用者の Cookie 付きで意図しない要求(書込み・送金など)を正規のサイトに送らせる。クリックジャッキングは,透明にした正規サイトを罠のページに重ね,別のボタンだと思わせて押させる。 XSS(反射型) 攻撃者 利用者のブラウザ 脆弱なサイト ① 罠のリンク ② 開く ③ そのまま返す 埋め込まれたスクリプトが利用者のブラウザで動く(Cookie を盗むなど) 対策:出力時のエスケープ,Cookie の HttpOnly 属性 CSRF 罠のページ 利用者のブラウザ 正規のサイト ログイン中 ① 開く ② 送信させる ③ Cookie 付き 本人が操作したものとして,書込みや送金が行われる 対策:推測できないトークンを埋めて確かめる,SameSite 属性 クリックジャッキング プレゼント 上に透明な正規サイト(「退会する」など)を 重ねて,下のボタンだと思わせて押させる 対策:X-Frame-Options,CSP の frame-ancestors
XSS はサイトの出力が汚される,CSRF は要求が偽造される,クリックジャッキングは画面が重ねられる

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)

用語解説:XSS・CSRF・クリックジャッキング

問25

個人情報の漏えいリスクに関するリスク対応のうち,リスク回避に該当するものはどれか。

正解 エ

解説

JIS Q 0073:2010(リスクマネジメント-用語)は,リスク回避を「ある特定のリスクにさらされないため,ある活動に参画しない又はある活動から撤退するという,情報に基づいた意思決定」と定義している。個人情報の漏えいリスクを生じさせているのは個人情報を保有すること自体なので,これをやめればリスクそのものがなくなる。取得済みの個人情報を消去し,新たな取得も行わないとするエが該当する。

アは,対策の費用と効果を勘案したうえでリスクをそのまま引き受けるリスク保有である。イは,入退室管理を厳重にして漏えいの起こりやすさを下げるリスク低減である。ウは,保管を外部のデータセンタに任せることでリスクを他者と分担するリスク共有(リスク移転)に当たる。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)