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システムアーキテクト試験

令和3年度 春期 科目A-2(午前Ⅱ)

令和3年度 春期に実施されたシステムアーキテクト試験 午前Ⅱ(2026年度からの科目A-2)の全25問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:システムアーキテクト試験について

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問1

システムやソフトウェアの品質に関する主張の正当性を裏付ける文書である“アシュアランスケース”を導入する目的として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

アシュアランスケースは,システムやソフトウェアが安全性や信頼性などの目標を満たすという主張を,それを支える根拠(証拠)と論理的な議論によって構造的に示す文書である。GSN(Goal Structuring Notation)などの表記法で,主張を下位の主張に分解し,テスト結果や解析結果などの証拠と結び付ける。イが適切である。

アは構成品目の故障モードから影響を分析する FMEA(故障モード影響解析),ウはガイドワードを用いて意図からの逸脱を洗い出す HAZOP,エは障害を頂点に原因をゲートで結んだ樹形図で分析する FTA(故障の木解析)の説明である。

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)

問2

勤怠管理システムのプロトタイプの作成例のうち,垂直型プロトタイプに該当するものはどれか。

正解 イ

解説

プロトタイプは,作り込む範囲によって水平型と垂直型に分けられる。水平型は多くの機能の画面などの外側を広く浅く作るもので,垂直型は一部の機能に絞り,画面から内部の処理までを深く作り込んで実際に動かせるようにするものである。有給休暇取得申請という 1 機能について,操作して申請できる画面と処理を開発するのは垂直型に当たる。イが該当する。

アの全ての画面を手書きで紙に描くのは,ペーパープロトタイプによる水平型の作成例である。ウの全ての帳票のサンプルを手作業で作るのも,処理を作らずに出力の外見を広く確かめる水平型に近い。エの外付け機器の模型を厚紙で作るのは,ハードウェアの形や大きさを確かめるためのモックアップである。

水平型プロトタイプと垂直型プロトタイプ 水平型は,多くの機能の画面など外側を広く浅く作り,全体の見た目や操作の流れを確かめる(紙に画面を描くなど)。垂直型は,一部の機能に絞って,画面から内部の処理まで深く作り込み,実際に動かせるようにする。 水平型 画面 処理 データ 垂直型 全機能の画面だけ 1機能を画面から処理まで 勤怠管理の申請1機能を動くように作る → 垂直型
広く浅くが水平型,1機能を深くが垂直型

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)

問3

プログラムのウォークスルーに関する記述として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

ウォークスルーは,プログラムの作成者(プログラマ)が主催し,複数の関係者を集めて行うレビュー技法である。参加者は,テストデータなどを使ってソースプログラムの処理を順に追跡し,誤りを探す。見つけた誤りの修正は会議の場では行わず,作成者が後で行う。ウが適切である。

アは作成者以外のプログラマが一人で行う机上チェック(机上デバッグ)であり,関係者が集まるレビューではない。イはテストで見つかった誤りの原因を調べて修正方法を決めるデバッグの作業で,レビュー技法ではない。エのモデレータが主催し,誤りの発見を第一目的とするのは,インスペクションの特徴である。

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)

問4

イベント駆動型のアプリケーションプログラムにおけるイベント処理のタイミングを設計するのに有用なものはどれか。

正解 ウ

解説

シーケンス図は,UML の相互作用図の一つで,オブジェクトを横に並べ,縦方向を時間の流れとして,オブジェクト間でやり取りされるメッセージを発生の順に表す図である。イベント駆動型のプログラムで,どのイベントがどの時点で発生し,どのオブジェクトがどの順序で処理するかという,イベント処理のタイミングを設計するのに有用である。ウが該当する。

アの DFD はプロセス間のデータの流れ,イの E-R 図はエンティティと関連によるデータの構造を表す図で,いずれも時間の流れを表さない。エの状態遷移図は,イベントによって状態がどのように遷移するかを表す図であり,複数のオブジェクトの間でイベントがどの順序・タイミングでやり取りされるかは表さない。

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)

用語解説:データベースの設計(正規化・E-R 図・参照制約) UML(統一モデリング言語)

問5

マイクロサービスアーキテクチャを利用してシステムを構築する利点はどれか。

正解 ウ

解説

マイクロサービスアーキテクチャは,システムを,独立して開発・配備できる小さなサービスの集まりとして構成し,サービス間を API で連携させる設計方式である。各サービスは互いに疎結合なので,一つのサービスを変更しても他のサービスへの影響が小さく,サービスごとに変更や配備を行いやすい。ウが利点である。

アについて,各サービスは独立しているので,サービスごとに異なるプログラム言語やミドルウェアを選べる反面,統一はしにくくなる。イについて,各サービスが自らのデータを保有するので,サービスをまたがるデータの整合性の確保はかえって難しくなる。エについて,処理がサービス間のネットワーク越しの呼出しに分かれるので,呼出しの回数とオーバヘッドは増える傾向にある。

SOA とマイクロサービス システムの機能を,標準的なインタフェースで呼び出せるサービスという部品に分け,サービスを組み合わせて業務のシステムを作る(SOA)。マイクロサービスは,さらに小さな独立したサービスに分け,それぞれを別々に開発・配置・拡張できるようにする。部品どうしは疎結合で,1つを変えても他への影響が小さい。 業務アプリ 受注 サービス 在庫 サービス 請求 サービス 配送 サービス 標準のインタフェースで呼び出す(疎結合)
サービスという部品を組み合わせる。部品どうしは疎結合

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)

用語解説:SOA(サービス指向アーキテクチャ)

問6

オブジェクト指向における汎化の説明として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

汎化は,複数のクラスに共通する属性や操作を取り出し,それらをまとめた上位のクラス(スーパークラス)を定義することである。例えば“普通預金”と“定期預金”に共通する口座番号や残高をまとめて“口座”クラスを作る。イが正しい。

アは逆向きの特化(特殊化)で,上位のクラスに性質を加えて下位のクラスを作る。ウは“全体と部分”の関係を表す集約の説明。エはメソッド名が同じというだけで性質の共通性を見ておらず,汎化の説明にならない。

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)

問7

あるプログラムについて,流れ図で示される部分に関するテストケースを,判定条件網羅(分岐網羅)によって設定する。この場合のテストケースの組合せとして,適切なものはどれか。ここで,( ) で囲んだ部分は,一組みのテストケースを表すものとする。

流れ図。処理1 の後,判定 A > 6 or B = 0 を行う。Yes なら処理2 を実行し,No なら処理2 を実行せずに,処理2 の後に合流する。

正解 ア

解説

判定条件網羅(分岐網羅)では,各判定条件の結果が真となる場合と偽となる場合を,それぞれ少なくとも 1 回実行するテストケースを設定する。判定条件“A > 6 or B = 0”について,アの (A=1,B=1) は A > 6 も B = 0 も成り立たないので No(偽),(A=7,B=1) は A > 6 が成り立つので Yes(真)となり,両方の分岐を通る。アが適切である。

イの (A=4,B=0) は B = 0 で Yes,(A=8,B=1) は A > 6 で Yes となり,No の分岐を通らない。ウの (A=4,B=1) と (A=6,B=1) はどちらも A > 6 も B = 0 も成り立たず,Yes の分岐を通らない(A=6 は A > 6 を満たさない)。エの (A=7,B=1) と (A=1,B=0) はどちらも Yes となり,No の分岐を通らない。

命令網羅・分岐網羅・条件網羅 「A かつ B」なら処理 X を行う流れ図。命令網羅は全ての命令を一度は通すので,A も B も真の1件で足りる。分岐網羅は判定の真と偽を両方通すので,(真,真)と(偽,真)の2件が要る。条件網羅は A と B のそれぞれが真と偽を取ればよいので(真,偽)と(偽,真)でも満たせるが,このとき判定は2回とも偽で,処理 X を一度も通らない。 A かつ B 真 処理 X 偽 命令網羅 (A,B)=(真,真)の1件 分岐網羅 (真,真)(偽,真)の2件 条件網羅 (真,偽)(偽,真)でもよい 条件網羅の例では判定が2回とも偽になり,処理 X を通らない 判定条件/条件網羅は,判定と各条件の真偽を両方そろえる
条件網羅を満たしても,分岐網羅や命令網羅を満たすとは限らない

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)

用語解説:テスト技法(ブラックボックス・ホワイトボックス)

問8

サブルーチンへの引数の受渡し方のうち,引数として渡した変数の値が,サブルーチンの実行後に変更されないことが保証されているものはどれか。

正解 ア

解説

値呼出し(call by value)は,実引数の値を複写してサブルーチンに渡す方式である。サブルーチンは受け取った複写の値を使って処理するので,サブルーチンの中で仮引数の値を変更しても,呼出し元の変数の値は変わらない。アが該当する。

イの結果呼出しは,サブルーチンの終了時に仮引数の値を呼出し元の変数に書き戻す方式で,変数の値は変わり得る。ウの参照呼出しは,変数の番地(参照)を渡す方式で,サブルーチンでの変更が呼出し元の変数にそのまま反映される。エの名前呼出しは,実引数の式を仮引数の位置に置き換えて参照のたびに評価する方式で,仮引数への代入は呼出し元の変数を変更する。

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)

問9

共通フレーム 2013 において,システム適格性確認テストで適合を評価する対象となるのは,どのアクティビティで定義又は設計した内容か。

正解 イ

解説

共通フレーム 2013 のシステム適格性確認テストプロセスでは,システムに対して指定された適格性確認要件に従ってテストを行い,システム要件のそれぞれについて実装が適合しているかを評価して,システムの納入準備ができていることを確認する。したがって,適合を評価する対象はシステム要件定義で定義した内容であり,イが正しい。

開発の各段階とテストを V 字モデルで対応させると,アのシステム方式設計で設計した内容はシステム結合テスト,ウのソフトウェア方式設計で設計した内容はソフトウェア結合テスト,エのソフトウェア要件定義で定義した内容はソフトウェア適格性確認テストで確認するものに当たる。

V 字モデル(共通フレーム) 左側を上から下へ,システム要件定義・システム方式設計・ソフトウェア要件定義・ソフトウェア方式設計・ソフトウェア詳細設計と詳細にしていき,ソフトウェア構築のあと,右側を下から上へ,ソフトウェアユニットテスト・ソフトウェア結合テスト・ソフトウェア適格性確認テスト・システム結合テスト・システム適格性確認テストと進める。各テストは同じ高さの設計で決めたことを確かめる。 システム 要件定義 システム 適格性確認テスト システム 方式設計 システム 結合テスト ソフトウェア 要件定義 ソフトウェア 適格性確認テスト ソフトウェア 方式設計 ソフトウェア 結合テスト ソフトウェア 詳細設計 ソフトウェア ユニットテスト ソフトウェア構築
テストは,同じ高さの設計で決めたことを確かめる

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)

用語解説:JIS X 0160 と共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス)

問10

JIS X 25010:2013(システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)-システム及びソフトウェア品質モデル)で規定された品質副特性の説明のうち,信頼性に分類されるものはどれか。

正解 ウ

解説

JIS X 25010:2013 は,信頼性の品質副特性として成熟性,可用性,障害許容性(耐故障性),回復性の四つを挙げている。ウの,中断や故障のときに影響を受けたデータを回復し,システムを希望する状態に戻せる度合いは回復性の定義で,信頼性の副特性に当たる。

アは運用操作性の定義で,使用性の副特性。イは解析性の定義で,保守性の副特性。エは相互運用性の定義で,互換性の副特性である。

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)

用語解説:JIS X 25010(システム及びソフトウェア品質モデル)

問11

共通フレーム 2013 によれば,保守プロセスの“修正の実施”アクティビティの中で,ソフトウェア製品の修正及びテストを実施するとき,修正を実施するために開始するプロセスはどれか。

正解 イ

解説

共通フレーム 2013 の保守プロセスでは,保守者は“修正の実施”アクティビティの中でソフトウェア製品の修正及びテストを実施し,修正のためにシステム開発プロセス及びソフトウェア実装プロセスを開始する。保守での修正も,要件の見直しから設計,実装,テストまでを開発と同じプロセスで行うということである。イが正しい。

アの構成管理プロセスは,修正の対象となるソフトウェアの構成品目やベースラインを識別し,変更を管理・記録する支援プロセスである。ウのテーラリング(修整)プロセスは,組織やプロジェクトの特性に合わせてプロセスを取捨選択し修整するためのプロセスである。エの問題解決プロセスは,検出された問題を分析し解決するための支援プロセスで,修正作業そのものを行うプロセスではない。

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)

用語解説:JIS X 0160 と共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス)

問12

表はシステムの特性や制約に応じた開発方針と,開発方針に適した開発モデルの組みである。a〜c に該当する開発モデルの組合せはどれか。

開発方針と開発モデルの表。最初にコア部分を開発し,順次機能を追加していく。:a。要求が明確なので,全機能を一斉に開発する。:b。要求に不明確な部分があるので,開発を繰り返しながら徐々に要求内容を洗練していく。:c。

正解 イ

解説

a の最初にコア部分を開発し,順次機能を追加していくのは,システムをいくつかの段階に分けて段階的に開発する段階的モデル(インクリメンタルモデル)である。b の要求が明確で全機能を一斉に開発するのは,工程を順に一度で進めるウォータフォールモデルである。

c の要求に不明確な部分があり,開発を繰り返しながら徐々に要求内容を洗練していくのは,作って評価しながら全体を改良していく進化的モデルである。したがって,イの組合せが正しい。

開発モデルの比べ方 ウォータフォールは工程を順に1回ずつ進める。インクリメンタルは,最初に全体の要件を決め,機能を分けて少しずつ作って足していく。進化的モデルは,作ったものへの利用者の反応を見て要件そのものを見直しながら作り直していく。スパイラルは,計画→リスク分析→開発→評価の周回を繰り返し,周ごとにリスクを確かめて広げていく。 ウォータフォール 要件 設計 製造 テスト インクリメンタル 要件(全体を先に決める) 機能1 機能2 機能3 少しずつ作って足す 進化的 版1 版2 版3 反応を見て要件も見直す スパイラル 計画 リスク分析 開発 評価
インクリメンタルは要件を先に決めて分割,進化的は要件も育てる

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)

問13

システム化構想の段階で,ビジネスモデルを整理したり,分析したりするときに有効なフレームワークの一つであるビジネスモデルキャンバスの説明として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

ビジネスモデルキャンバスは,A. オスターワルダーらが提唱したフレームワークで,顧客セグメント,価値提案,チャネル,顧客との関係,収益の流れ,リソース,主要活動,パートナ,コスト構造の九つのブロックを 1 枚の図に配置し,企業がどのように価値を創造し,顧客に届け,収益を得るかを可視化して分析する。アが適切である。

イは M. E. ポーターのバリューチェーン(価値連鎖)分析,ウは強み・弱み・機会・脅威を整理する SWOT 分析の説明である。エは財務,顧客,内部ビジネスプロセス,学習と成長の四つの視点で戦略を管理するバランススコアカードの説明である。

ビジネスモデルキャンバス ビジネスモデルを9つの要素で1枚に描く。中心に価値提案を置き,右側に顧客セグメント・チャネル・顧客との関係,左側に主要活動・主要リソース・パートナ,下にコスト構造と収益の流れを置く。 パートナ 主要活動 リソース 価値提案 顧客との関係 チャネル 顧客セグメント コスト構造 収益の流れ
中央が価値提案。右が顧客側,左がそれを支える側,下がお金

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)

用語解説:バランススコアカードと KPI・KGI・CSF

問14

要件定義において,システムが提供する機能単位と利用者又は外部システムとの間の相互作用や,システム内部と外部との境界を明示するために使用される図はどれか。

正解 エ

解説

ユースケース図は,システムの外部にいる利用者や外部システム(アクタ)と,システムが提供する業務の機能(ユースケース)を分けて描き,その関係を表す UML の図である。要件定義で,利用者を含めた業務全体の範囲やシステム化の対象を明らかにするのに使われる。エが正しい。

アのアクティビティ図は処理や業務の流れ,イのオブジェクト図はある時点のインスタンスとその間のつながり,ウのクラス図はクラスの属性や操作とクラス間の静的な関係を表す図である。

UML のおもな図の使い分け シーケンス図はオブジェクト間のメッセージを時間の順に,コミュニケーション図はオブジェクトのつながりに注目して相互作用を表す。ユースケース図はアクタとシステムの機能の関係(システムの範囲),アクティビティ図は処理の流れ(分岐・並行・同期),状態マシン図は1つのオブジェクトの状態の移り変わり,クラス図は静的な構造,オブジェクト図はある時点のインスタンスのつながりを表す。 図 表すもの シーケンス図 メッセージを時間の順に コミュニケーション図 オブジェクトのつながりと相互作用 ユースケース図 アクタと機能,システムの範囲 アクティビティ図 処理の流れ(分岐・並行・同期) 状態マシン図 1つのオブジェクトの状態の遷移 クラス図 クラスと関連(静的な構造) オブジェクト図 ある時点のインスタンスとリンク
時間の順はシーケンス図,範囲はユースケース図,業務の流れはアクティビティ図

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)

用語解説:UML(統一モデリング言語)

問15

WTO 政府調達協定の説明はどれか。

正解 ウ

解説

WTO 政府調達協定は,政府機関などによる物品やサービスの調達について,締約国の供給者を内国の供給者と差別しない内外無差別の原則を定め,市場を開放して国際的な競争の機会を増大させるとともに,苦情申立て,協議,紛争解決の手続を定めた協定である。ウが該当する。

アは EU の特定有害物質の使用を制限する RoHS 指令,イは国などの公的機関による環境物品等の調達を推進するグリーン購入法の説明である。エのパリ条約やベルヌ条約の遵守と知的財産権保護の最恵国待遇を定めているのは,WTO の TRIPS 協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)である。

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)

問16

B.H.シュミットが提唱した CEM(Customer Experience Management)における,カスタマーエクスペリエンスの説明として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

B. H. シュミットは,顧客が商品やサービスを知り,購入し,使用・利用する過程で得る感覚的・情緒的な経験を“経験価値”(カスタマーエクスペリエンス)と呼び,これを戦略的に管理する CEM を提唱した。経験価値は,SENSE(感覚),FEEL(情緒),THINK(知性),ACT(行動),RELATE(関係)の五つに分類される。商品やサービスの購入・使用・利用の際の満足や感動はこれに当たり,アが適切である。

イの購入時のトラブルは,顧客満足を損なう事象であって経験価値そのものではない。ウの購買履歴の数値は,顧客の購買行動のデータである。エの接客での対応経験は,顧客ではなく販売員の側が得る経験である。

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)

問17

格納型クロスサイトスクリプティング(Stored XSS 又は Persistent XSS)攻撃に該当するものはどれか。

正解 ア

解説

格納型(Stored/Persistent)クロスサイトスクリプティングは,攻撃者が Web サイトの掲示板などに攻撃用スクリプトを含むデータを書き込んでサーバに保存させ,そのページを閲覧した利用者の Web ブラウザでスクリプトを実行させる攻撃である。利用者に罠のリンクを踏ませなくても,閲覧しただけで被害が生じる。アが該当する。

イは,不正なスクリプトを含むリクエストを送らせるリンクを利用者にクリックさせ,その応答に含まれたスクリプトを実行させる反射型クロスサイトスクリプティングである。ウは乗っ取った多数の PC から大量のリクエストを送る DDoS 攻撃である。エは送信元を攻撃対象に偽装した DNS リクエストで大量の応答を送り付ける DNS リフレクション(DNS amplification)攻撃である。

XSS・CSRF・クリックジャッキング XSS(反射型)は,スクリプトを含む罠のリンクを利用者に開かせ,脆弱なサイトがそのスクリプトをそのままページに埋めて返すので,利用者のブラウザで実行される。CSRF は,ログイン中の利用者に罠のページを開かせ,その利用者の Cookie 付きで意図しない要求(書込み・送金など)を正規のサイトに送らせる。クリックジャッキングは,透明にした正規サイトを罠のページに重ね,別のボタンだと思わせて押させる。 XSS(反射型) 攻撃者 利用者のブラウザ 脆弱なサイト ① 罠のリンク ② 開く ③ そのまま返す 埋め込まれたスクリプトが利用者のブラウザで動く(Cookie を盗むなど) 対策:出力時のエスケープ,Cookie の HttpOnly 属性 CSRF 罠のページ 利用者のブラウザ 正規のサイト ログイン中 ① 開く ② 送信させる ③ Cookie 付き 本人が操作したものとして,書込みや送金が行われる 対策:推測できないトークンを埋めて確かめる,SameSite 属性 クリックジャッキング プレゼント 上に透明な正規サイト(「退会する」など)を 重ねて,下のボタンだと思わせて押させる 対策:X-Frame-Options,CSP の frame-ancestors
XSS はサイトの出力が汚される,CSRF は要求が偽造される,クリックジャッキングは画面が重ねられる

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)

用語解説:XSS・CSRF・クリックジャッキング

問18

ディジタル証明書が失効しているかどうかをオンラインで確認するためのプロトコルはどれか。

正解 ウ

解説

OCSP(Online Certificate Status Protocol)は,デジタル証明書が失効しているかどうかを,OCSP レスポンダにオンラインで問い合わせて確認するためのプロトコルである。失効リスト(CRL)全体を取得しなくても,個々の証明書の状態をその都度確認できる。ウが該当する。

アの CHAP は PPP で接続する際にチャレンジレスポンス方式で利用者を認証するプロトコル,イの LDAP はディレクトリサービスにアクセスするプロトコル,エの SNMP はネットワーク機器を監視・管理するプロトコルである。

CRL と OCSP の違い CRL は,認証局が有効期限内に失効させた証明書のシリアル番号と失効日時を一覧にし,署名を付けて公開するもの。利用者はリストを取ってきて自分で照らし合わせる。OCSP は,利用者が調べたい証明書を OCSP レスポンダ(VA)にオンラインで問い合わせ,有効か失効しているかの答えを受け取る。 CRL(証明書失効リスト) 認証局 CA 失効した証明書の一覧 No.1024 3/10 失効 No.2041 5/02 失効 利用者 ブラウザなど 署名して公開 取ってきて照合 載るのは有効期限内に失効した証明書のシリアル番号と日時 OCSP 利用者 ブラウザなど OCSP レスポンダ VA(検証局) この証明書は有効? 有効・失効・不明を返す その都度オンラインで問い合わせるので,最新の状態が分かる
CRL は一覧を取ってきて自分で調べる,OCSP はその都度問い合わせる

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)

用語解説:PKI(認証局・CRL・OCSP)

問19

2019 年 2 月から総務省,情報通信研究機構(NICT)及びインターネットサービスプロバイダが連携して開始した“NOTICE”という取組はどれか。

正解 イ

解説

NOTICE(National Operation Towards IoT Clean Environment)は,2019 年 2 月 20 日に始まった取組で,NICT がインターネット上の IoT 機器に対して,容易に推測されるパスワードなどでログインできるかを調べ,サイバー攻撃に悪用されるおそれのある機器を特定する。その情報をインターネットサービスプロバイダに通知し,プロバイダが利用者に注意喚起する。イが該当する。なお,NOTICE は当初 5 年間の時限措置として始まったが,2023 年の NICT 法の改正で延長され,2024 年 4 月からは脆弱性をもつ機器への対処も加えて続けられている。

アの企業のイントラネット内の Web サービスの脆弱性診断は,NOTICE の調査対象ではない。ウのスマートフォンのマルウェアに関する通知や,エの量子暗号技術を使った緊急情報の送信も,NOTICE の内容ではない。

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)

問20

スパムメール対策として,サブミッションポート(ポート番号 587)を導入する目的はどれか。

正解 エ

解説

サブミッションポート(587番)は,利用者がメールサーバへメールを投稿するための専用ポート。ここでは SMTP-AUTH による送信者認証を必須にできるので,認証を通った利用者だけが送信でき,スパムの踏み台にされにくくなる。

アは SPF,イは DKIM による送信ドメイン認証。ウの POP before SMTP はサブミッションポート導入以前に使われた方式で,一定時間は認証なしで送信できてしまうなどの弱点があり,SMTP-AUTH に置き換えられた。

OP25B とサブミッションポート,IP25B ISP A の動的 IP アドレスの PC が,宛先のメールサーバへ25番ポートで直接送る通信は,ISP A の出口で止められる(OP25B)。PC は自分の ISP のメールサーバへサブミッションポート(587番)で接続し,SMTP-AUTH で認証を受けてから送る。メールサーバどうしの転送は25番を使う。IP25B は,他社 ISP の動的 IP アドレスから自社のメールサーバへ入ってくる25番の通信を止める。 ISP A のネットワーク PC 動的 IP アドレス ISP A の メールサーバ 宛先の メールサーバ 587番 SMTP-AUTH 25番 25番で直接送る OP25B IP25B:入ってくる側で止める 他社 ISP の PC 動的 IP アドレス ISP A の メールサーバ 25番で直接届けようとする通信を止める
OP25B は自社の動的 IP から外へ出る25番を,IP25B は他社の動的 IP から入ってくる25番を止める

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)

用語解説:ディジタル署名(デジタル署名) 電子メールのプロトコル(SMTP・POP・IMAP) 送信ドメイン認証(SPF・DKIM・DMARC)

問21

パイプラインの深さを D,パイプラインピッチを P 秒とすると,I 個の命令をパイプラインで実行するのに要する時間を表す式はどれか。ここで,パイプラインは 1 本だけとし,全ての命令は処理に D ステージ分の時間がかかり,各ステージは 1 ピッチで処理されるものとする。また,パイプラインハザードについては,考慮しなくてよい。

正解 イ

解説

パイプラインでは,最初の命令が D 個のステージを通り終えるのに D ピッチかかる。その後は,1ピッチごとに次の命令が1個ずつ完了するので,残りの I−1 個の命令には I−1 ピッチかかる。

合計は D+(I−1) ピッチで,1ピッチが P 秒なので,所要時間は (I+D−1)×P 秒となり,イが正しい。アは最後に1ピッチ余分に数えている。ウ,エは時間の単位であるピッチ P を掛けずに足しており,式として成り立たない。

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)

問22

SAN(Storage Area Network)におけるサーバとストレージの接続形態の説明として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

SAN は,サーバとストレージをファイバチャネルなどによる専用のネットワークで接続する構成。業務用の LAN とは別の経路になるので,ストレージへのアクセスが LAN の通信と干渉しない。

アはサーバに直結する DAS,ウとエは LAN 上でファイル共有プロトコル(CIFS や NFS)を使う NAS の説明である。

DAS・SAN・NAS の違い DAS はサーバにディスクを直接つなぎ,ブロック単位で読み書きする。SAN は LAN とは別の専用ネットワーク(ファイバチャネルなど)でサーバとストレージをつなぎ,ブロック単位で読み書きする。NAS はふだんの LAN につなぐファイルサーバで,NFS や SMB でファイル単位で共有する。 DAS SAN NAS サーバ ディスク 直接つなぐ サーバ サーバ FC スイッチ ストレージ LAN とは別の専用網 PC サーバ ふだんの LAN NAS NFS・SMB で共有 ブロック単位 ブロック単位 ファイル単位 SAN は大量の読み書きが LAN を混ませない
見分けるのは「どの線でつなぐか」と「ブロックかファイルか」

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)

用語解説:SAN(Storage Area Network)

問23

フォールトトレランスに関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

フォールトトレランスは,構成要素に障害(フォールト)が発生しても,システム全体としては必要な機能を継続できるようにする考え方である。その実現には冗長構成が用いられ,システム全体を二重化し,一方が故障しても他方で処理を続ける方式はその代表的な実現方法である。ウが適切である。

アのフェールソフトは,障害が起きた部分を切り離し,機能や性能を落としてでも運転を継続させる設計のことで,ソフトウェアの障害に対処する設計を指す語ではない。イについて,障害時に安全側に動作させるフェールセーフと,縮退運転するフェールソフトは,いずれもフォールトトレランスを実現する考え方として扱われる。エについて,フォールトトレランスは多重化などの冗長性によって実現するものであり,回復までの時間をゼロにすることを意味しない。

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)

用語解説:信頼性設計(フェールセーフ・フェールソフト・フールプルーフ)

問24

ある月の“月末商品在庫”表と“当月商品出荷実績”表を使って,ビュー“商品別出荷実績”を定義した。このビューに SQL 文を実行した結果の値はどれか。

月末商品在庫(商品コード,商品名,在庫数):S001,A,100/S002,B,250/S003,C,300/S004,D,450/S005,E,200。当月商品出荷実績(商品コード,商品出荷日,出荷数):S001,2021-03-01,50/S003,2021-03-05,150/S001,2021-03-10,100/S005,2021-03-15,100/S005,2021-03-20,250/S003,2021-03-25,150。

〔ビュー“商品別出荷実績”の定義〕

CREATE VIEW 商品別出荷実績(商品コード,出荷実績数,月末在庫数)
  AS SELECT 月末商品在庫.商品コード,SUM(出荷数),在庫数
    FROM 月末商品在庫 LEFT OUTER JOIN 当月商品出荷実績
    ON 月末商品在庫.商品コード = 当月商品出荷実績.商品コード
    GROUP BY 月末商品在庫.商品コード,在庫数

〔SQL 文〕

SELECT SUM(月末在庫数)AS 出荷商品在庫合計
  FROM 商品別出荷実績 WHERE 出荷実績数 <= 300

正解 ア

解説

ビューでは,月末商品在庫を左側とする外結合(LEFT OUTER JOIN)をとって商品コードごとに出荷数を合計する。S001 は 50+100=150,S003 は 150+150=300,S005 は 100+250=350 となる。出荷実績のない S002 と S004 は外結合で出荷数が NULL となり,SUM の結果も NULL になる。SQL 文の WHERE 出荷実績数 <= 300 を満たすのは S001(在庫数 100)と S003(在庫数 300)で,NULL との比較は真にならないので S002 と S004 は含まれない。合計は 100+300=400 となり,アになる。

S005 は出荷実績数が 350 で条件を満たさない。イの 500,ウの 600,エの 700 は,この計算からは得られない値である。

外結合と NULL の比較 月末商品在庫を左にして外結合し,商品コードごとに出荷数を合計する。S001 は 150,S003 は 300,S005 は 350。出荷のない S002 と S004 は合計が NULL になる。WHERE 出荷実績数 <= 300 で NULL との比較は真にならないので,残るのは S001(在庫100)と S003(在庫300)で,合計 400。 ビュー“商品別出荷実績” 商品コード 出荷実績数 月末在庫数 S001 150 100 S002 NULL 250 S003 300 300 S004 NULL 450 S005 350 200 ← ≦300 ← ≦300 NULL は× NULL は× 350 は× 100 + 300 = 400
NULL との比較は真にならない。条件に合うのは S001 と S003 だけ

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)

問25

PC から Web ブラウザを使用して Web サーバにアクセスしているときに,PC 側で使用している TCP のポート番号を調べるコマンドはどれか。

正解 イ

解説

netstat は,PC の TCP/UDP の通信の状態を表示するコマンドで,確立しているコネクションごとに,ローカル(PC 側)の IP アドレスとポート番号,相手(Web サーバ側)の IP アドレスとポート番号,接続の状態などを一覧で確認できる。Web ブラウザが使っている PC 側のポート番号はこれで調べられる。イが正しい。

アの ipconfig/ifconfig はネットワークインタフェースの IP アドレスやサブネットマスクなどの設定を表示するコマンドである。ウの nslookup/dig は DNS サーバに問い合わせて名前解決の結果を調べるコマンドである。エの tracert/traceroute は宛先までの経路上のルータを調べるコマンドである。

出典:令和3年度 春期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)