平成22年度 秋期に実施されたITストラテジスト試験
午前Ⅱの全25問です。問題文・正解・解説をそのまま読めます。
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問1
情報システムの全体計画立案時に業務をモデル化する目的はどれか。
ア 業務機能を整理し各部門の職務分担を決める。
イ 業務の実態を具体的かつ詳細に把握する。
ウ 現状の業務機能の問題点を抽出する。
エ 組織の活動と情報の関連を構造化して,企業のあるべき姿を示す。 正解
正解 エ
解説
情報システムの全体計画を立てる段階では,個々の業務の手順を細かく追うのではなく,組織の活動と,そこで生まれ使われる情報との関係を業務モデルとして構造化し,経営戦略に沿った企業のあるべき姿を関係者が共有できるようにする。その姿と現状とを比べてシステム化の対象範囲や優先順位を決めるので,エが適切である。
アの各部門の職務分担を決めることは組織設計の作業であり,モデル化の目的ではない。イの業務の実態を具体的かつ詳細に把握することや,ウの現状の業務機能の問題点の抽出は,個別のシステムを企画し要件を定義する段階で行う作業で,全体計画の立案時に求められる粒度ではない。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2
“システム管理基準”によれば,“全体最適化”に含まれる作業はどれか。
ア 委託先を含む開発体制の策定
イ 開発スケジュールの策定
ウ 個別システムのハードウェアの導入スケジュールの策定
エ 情報システム基盤の整備計画の策定 正解
正解 エ
解説
“システム管理基準”の“全体最適化”は,IT ガバナンスの方針,情報システム全体の最適化目標,組織体全体の情報システムのあるべき姿などを,経営戦略に基づいて定める分野である。情報システム基盤は組織体全体で共通に使うものなので,その整備計画の策定は全体最適化に含まれる。エが正しい。
アの委託先を含む開発体制の策定とイの開発スケジュールの策定は,“企画業務”の開発計画で,目的,対象業務,費用,スケジュール,開発体制などとして明確にする事項である。ウの個別システムのハードウェアの導入スケジュールも個別のシステムごとの計画であり,全体最適化の作業ではない。なお,“システム管理基準”はその後改訂され,現在の版はこの分野構成ではない。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)
問3
物流業務において,10%の物流コストの削減の目標を立てて,図のような業務プロセスの改善活動を実施している。図中の b に相当する活動はどれか。
ア CSF(Critical Success Factor)の抽出 正解
イ KGI(Key Goal Indicator)の設定
ウ KPI(Key Performance Indicator)の設定
エ MBO(Management by Objectives)の導入
正解 ア
解説
図は,最終目標を出発点として,a でその達成度を測る指標を定め,b で目標を達成する上で鍵になる要因を見極め,c でその要因の達成度を測る指標を定める流れになっている。b の横には“在庫の削減”“誤出荷の削減”という,物流コストの削減を実現するために重要な要因が挙げられているので,b は CSF の抽出に当たる。アが正しい。
a の横の“10%の物流コストの削減”は最終目標そのものを数値で表したものなので,a は KGI の設定である。c の横の“在庫日数 7 日以内”“誤出荷率 3%以内”は CSF の達成度を測る指標なので,c は KPI の設定である。エの MBO は,従業員が自ら目標を立てて達成度で評価する目標管理の手法で,この流れには当てはまらない。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)
問4
共通フレーム 2007 によれば,企画プロセスのシステム化計画の立案において定義するものはどれか。
ア 業務上実現すべき要件
イ システムの機能要件及び非機能要件
ウ 対象業務のシステム課題 正解
エ 利害関係者のニーズの識別と制約事項
正解 ウ
解説
共通フレーム 2007 の企画プロセスのうち,システム化計画の立案では,対象業務の内容を確認し,対象となる業務やシステムを分析して解決すべき課題を定義した上で,業務モデル,システム化の基本方針,全体開発スケジュール,費用とシステム投資効果などをまとめる。ここで定義するのは対象業務のシステム課題であり,ウが正しい。
アの業務上実現すべき要件(業務要件)と,エの利害関係者のニーズの識別及び制約事項は,企画プロセスの次に置かれた要件定義プロセスで定義する。イのシステムの機能要件及び非機能要件は,さらに後のシステム要件定義で定義する。なお,共通フレームはその後 2013 に改訂されている。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)
問5
情報システムの全体計画立案のために E-R モデルを用いて全社のデータモデルを作成する手順はどれか。
ア 管理層の業務から機能を抽出し,機能をエンティティとする。次に,機能の相互関係に基づいてリレーションシップを定義する。さらに,全社の帳票類を調査して整理し,正規化された項目に基づいて属性を定義し,全社のデータモデルとする。
イ 企業の全体像を把握するために,基本的なエンティティだけを抽出し,それらの相互間のリレーションシップを含めて,鳥瞰図を作成する。次に,エンティティを詳細化し,すべてのリレーションシップを明確にしたものを全社のデータモデルとする。 正解
ウ 業務層の現状システムを分析し,エンティティとリレーションシップを抽出する。それぞれについて適切な属性を定め,これらを基に E-R 図を作成し,それを抽象化して,全社のデータモデルを作成する。
エ 全社のデータとその処理過程を分析し,重要な処理を行っている業務を基本エンティティとする。次に,基本エンティティ相互のデータの流れをリレーションシップとしてとらえ,適切な識別名を与える。さらに,基本エンティティと関係あるデータを属性とし,全社のデータモデルを作成する。
正解 イ
解説
全社のデータモデルは,全体計画の立案に使うため,まず企業全体を見渡せることが重要である。そこで,トップダウンで企業活動の中心となるエンティティだけを抽出し,それらの間のリレーションシップを含めた鳥瞰図を作成して全体像を把握する。次に,エンティティを詳細化し,全てのリレーションシップを明確にして全社のデータモデルに仕上げる。イが適切である。
アは機能をエンティティとしており,業務の機能とデータを取り違えている。ウは業務層の現状システムからボトムアップに積み上げるので,現状の個別システムの構造に引きずられ,全社の視点をもったモデルになりにくい。エは業務(処理)をエンティティ,データの流れをリレーションシップとしており,データフローの考え方と E-R モデルを混同している。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)
問6
IT 投資案件 X において,投資効果を NPV で評価する場合の算出式はどれか。
ア -200+100/0.025+90/0.0252 +80/0.0253 +60/0.0254 +50/0.0255
イ -200+100/0.0255 +90/0.0254 +80/0.0253 +60/0.0252 +50/0.025
ウ -200+100/1.025+90/1.0252 +80/1.0253 +60/1.0254 +50/1.0255 正解
エ -200+100/1.0255 +90/1.0254 +80/1.0253 +60/1.0252 +50/1.025
正解 ウ
解説
NPV(正味現在価値)は,各年のキャッシュインを割引率で現在価値に換算して合計し,そこから投資額を差し引いた値である。割引率が 2.5%のとき,n 年後の金額の現在価値は 1.025 の n 乗で割って求める。0 年目のキャッシュアウト 200 をそのまま引き,1 年後の 100 を 1.025 で,2 年後の 90 を 1.025 の 2 乗で,以下同様に 3 年後の 80,4 年後の 60,5 年後の 50 を割って足すウが正しい。
アとイは 1.025 ではなく割引率そのものの 0.025 で割っており,現在価値への換算になっていない。エは 1.025 の累乗で割ってはいるが,1 年後の 100 を 5 乗で,5 年後の 50 を 1 乗で割っており,年数と乗数の対応が逆になっている。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)
問7
アンゾフの成長マトリクスを説明したものはどれか。
ア 外部環境と内部環境の観点から,強み,弱み,機会及び脅威の四つの要因について情報を整理し,企業を取り巻く環境を分析する手法である。
イ 企業のビジョンと戦略を実現するために,財務,顧客,内部ビジネスプロセス及び学習と成長の四つの視点から事業活動を検討し,アクションプランまで具体化していくマネジメント手法である。
ウ 事業を,市場浸透,市場拡大,製品開発及び多角化の四つのタイプに分類し,事業の方向性を分析する手法である。 正解
エ 製品を,導入期,成長期,成熟期及び衰退期の四つの段階に分類し,企業にとって最適な戦略を分析する手法である。
正解 ウ
解説
アンゾフの成長マトリクスは,製品(既存・新規)と市場(既存・新規)の二つの軸の組合せで,企業の成長戦略を四つに分ける枠組みである。既存製品を既存市場で深耕する市場浸透,既存製品を新しい市場に広げる市場拡大(市場開拓),既存市場に新製品を投入する製品開発,新製品を新市場に出す多角化からなり,この四つに分類して事業の方向性を検討する。ウが正しい。
アは,強み・弱み・機会・脅威の四つの要因で環境を整理する SWOT 分析である。イは,財務,顧客,内部ビジネスプロセス,学習と成長の四つの視点から戦略を具体化するバランススコアカード(BSC)である。エは,製品ライフサイクルの段階に応じて戦略を考える手法の説明である。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)
問8
バリューチェーンは,付加価値を生み出す事業活動を五つの主活動と四つの支援活動に分類する。支援活動に該当するものはどれか。
ア 技術開発 正解
イ 購買物流
ウ サービス
エ 出荷物流
正解 ア
解説
ポーターのバリューチェーンでは,事業活動を,購買物流,製造,出荷物流,販売・マーケティング,サービスの五つの主活動と,全般管理(企業インフラストラクチャ),人事・労務管理,技術開発,調達活動の四つの支援活動に分ける。技術開発は主活動を支える側なので,アが正しい。
イの購買物流は原材料の受入れや保管,エの出荷物流は完成品の保管や配送であり,いずれも製品の流れに沿った主活動である。ウのサービスは,販売後の据付けや修理などによって製品の価値を保ち高める活動で,これも主活動に含まれる。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)
問9
事業戦略のうち,収穫戦略に該当するものはどれか。
ア 売上高をできるだけ維持しながら,製品や事業にかけるコストを徐々に引き下げていくことによって,短期的なキャッシュフローの増大を図る。 正解
イ 事業を分社化し,その会社を売却することによって投下資金の回収を図る。
ウ 新規事業に進出することによって企業を成長させ,利益の増大を図る。
エ 低価格戦略と積極的なプロモーションによって,新製品のマーケットシェアの増大を図る。
正解 ア
解説
収穫戦略(ハーベスト戦略)は,成長が見込めなくなった製品や事業について,新たな投資や販売促進を抑えながら売上高はできるだけ維持し,掛けるコストを徐々に引き下げることで,短期的なキャッシュフローの増大を図る戦略である。いずれは撤退することを前提としつつ,すぐに売却や清算をするのではなく,収益を刈り取りながら縮小していく点が特徴である。アが該当する。
イは事業を分社化して売却し,投下資金を回収する撤退戦略(ダイベストメント)である。ウは新規事業への進出によって企業の成長を図る多角化戦略である。エは低価格と積極的なプロモーションによって新製品のシェア拡大を狙う市場浸透価格戦略(ペネトレーションプライシング)である。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)
問10
マーケットバスケット分析を説明したものはどれか。
ア POS システムで収集した販売情報から,顧客が買物をした際の購入商品の組合せなどを分析する。 正解
イ 網の目状に一定の経線と緯線で区切った地域に対して,人口,購買力など様々なデータを集計し,より細かく地域の分析を行う。
ウ 一定の目的で地域を幾つかに分割し,各地域にオピニオンリーダを選んで反復調査を行い,地域の傾向や実態を把握する。
エ 商品ごとの販売金額又は粗利益額を高い順に並べ,その累計比率から商品を三つのランクに分けて商品分析を行い,売れ筋商品を把握する。
正解 ア
解説
マーケットバスケット分析は,POS システムなどで収集した購買データから,一緒に買われやすい商品の組合せを見つけ出す分析手法である。“商品 A を買った顧客は商品 B も買う傾向がある”といった関係を見つけ,売場の配置や併売の促進などに活用する。アが該当する。
イは地域をメッシュ状に区切って人口などを集計するグリッド分析(メッシュ分析),ウは地域ごとに選んだ調査対象者に繰り返し調査を行うパネル調査の説明である。エは,販売金額などの累計比率から商品を A,B,C の三つのランクに分ける ABC 分析の説明である。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)
問11
市場で競合する二つの銘柄 A,B 間の推移確率行列は,表のとおりである。例えば,今回 A を購入した人が次回に B を購入する確率は,20%である。A と B の市場シェアが,それぞれ 50%であるとき,全員が 2 回購入した後の市場シェアはどうなるか。
ア A のシェアは 10%上がり,B のシェアは 10%下がる。
イ A のシェアは 10%下がり,B のシェアは 10%上がる。
ウ A のシェアは 14%上がり,B のシェアは 14%下がる。 正解
エ A のシェアは 14%下がり,B のシェアは 14%上がる。
正解 ウ
解説
1 回目の購入後の A のシェアは,今回 A を買った人が A を続ける分と,今回 B を買った人が A に移る分の合計で,0.5×0.8+0.5×0.4=0.6 になる。B は 0.5×0.2+0.5×0.6=0.4 である。続けて 2 回目の購入後は,A が 0.6×0.8+0.4×0.4=0.64,B が 0.6×0.2+0.4×0.6=0.36 になる。初めの 50%と比べると A は 14%上がり,B は 14%下がるので,ウになる。
アの 10%は,1 回購入した時点での変化(A が 60%,B が 40%)であって,2 回購入した後の値ではない。イとエは A と B の増減を逆にした値である。推移確率行列では,A から B へ移る確率 0.2 よりも B から A へ移る確率 0.4 の方が大きいので,A のシェアは上がる。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)
問12
計画的陳腐化を説明したものはどれか。
ア 機能がまだ十分に使用可能な製品を,新しいデザインに変更することによって,既存製品からの移行を進めていくこと 正解
イ 製品の誕生から廃棄までのうち,製品のニーズがなくなることによって,売上も利益も下降線をたどる段階のこと
ウ 製品の値引き販売をすることによって,多くの人の購入をねらうこと
エ 大規模な流通業者が,あえてブランド名を付けないことによって,旧タイプの製品を提供すること
正解 ア
解説
計画的陳腐化は,製品の機能がまだ十分に使える段階で,デザインや仕様を変えた新しいモデルを計画的に市場へ投入し,既存製品を古いものに見せることで買換えを促して需要を作り出す手法である。自動車や家電の年次モデルチェンジが典型的な例である。アが該当する。
イは,プロダクトライフサイクルのうち,需要がなくなって売上も利益も落ちていく衰退期の説明である。ウは,値引きによって購入者の数を増やそうとする価格面の販売促進策である。エは,大規模な流通業者が包装や広告を簡素にし,ブランド名を付けずに製品を安く提供するジェネリックブランド(ノーブランド商品)に近い説明であり,買換えを促すものではない。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)
問13
ワントゥワンマーケティングを説明したものはどれか。
ア 効率よく大量に生産することで,製品 1 個当たりのコストを低減させ,安価な製品を提供することによって,あらゆる顧客を対象にする。
イ 市場シェアの拡大よりも,顧客との好ましい関係を重視し,長期にわたって自社製品を購入する顧客の割合を高める。 正解
ウ 市場を複数のセグメントに細分化し,その中の幾つかのセグメントに対し,ニーズに合った製品又はマーケティングミックスを展開する。
エ 製品の安全性,適切な情報の提供などに加えて,自然環境の保全,地域との融和などを目的とした企業の社会的責任を重視する。
正解 イ
解説
ワントゥワンマーケティングは,市場をひとまとまりとして扱うのではなく,購買履歴や問合せの記録などから顧客一人ひとりの好みをつかみ,個別に働きかけるマーケティングである。新規の顧客を広く集めて市場シェアを伸ばすよりも,既存の顧客との関係を深めて長く買い続けてもらうことを重視する。イが正しい。
アは,効率よく大量に生産して安価な製品を不特定多数に提供するマスマーケティングの説明である。ウは,市場を細分化して幾つかのセグメントを狙うセグメントマーケティングの説明である。エは,環境保全や地域との融和まで含めて企業の社会的責任(CSR)を重視する経営の説明である。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)
問14
SFA を説明したものはどれか。
ア 営業活動に IT を活用して営業の効率と品質を高め,売上・利益の大幅な増加や,顧客満足度の向上を目指す手法・概念である。 正解
イ 卸売業・メーカが小売店の経営活動を支援することによって,自社との取引量の拡大につなげる手法・概念である。
ウ 企業全体の経営資源を有効かつ総合的に計画して管理し,経営の効率向上を図るための手法・概念である。
エ 消費者向けや企業間の商取引を,インターネットなどの電子的なネットワークを活用して行う手法・概念である。
正解 ア
解説
SFA(Sales Force Automation)は,商談の進捗,顧客との接触履歴,案件ごとの受注見込みなどを情報システムで記録・共有し,営業活動を支援する手法・概念である。担当者個人に抱え込まれていた情報を組織で使えるようにすることで,営業の効率と品質を高め,売上・利益の増加や顧客満足度の向上を目指す。アが正しい。
イは,卸売業やメーカが小売店の経営を支援して自社との取引を広げるリテールサポートの説明である。ウは,企業全体の経営資源を統合的に計画・管理する ERP の説明である。エは,ネットワークを使って商取引を行う電子商取引(EC)の説明である。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)
問15
コールセンタシステムにおける IVR を説明したものはどれか。
ア 企業ビル内などに設置して,外線電話と内線電話,内線電話同士を交換する装置
イ 顧客からの電話に自動応答し,顧客自身の操作によって情報の選択や配信,合成音声による応答などを行う仕組み 正解
ウ コンピュータと電話を統合し,顧客データベースと PBX を連動させて,発呼や着呼と同時に必要な顧客情報をオペレータの画面上に表示するシステム
エ 着信した電話を,あらかじめ決められたルールに従って,複数のオペレータのうちの 1 人だけに接続する仕組み
正解 イ
解説
IVR(Interactive Voice Response)は,かかってきた電話に自動で応答し,音声ガイダンスに従って顧客が電話機のボタンを押すと,その操作に応じて必要な情報を選んで流したり,合成音声で回答したりする仕組みである。オペレータにつなぐ前に用件を振り分けたり,定型的な問合せをオペレータを介さずに処理したりできる。イが正しい。
アは,外線と内線,内線同士を接続する構内交換機(PBX)である。ウは,コンピュータと電話を統合し,着信と同時に発信者の顧客情報をオペレータの画面に表示する CTI である。エは,着信をあらかじめ決めたルールで空いているオペレータ 1 人に振り分ける ACD(着信呼自動分配)の説明である。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)
問16
知識創造プロセス(SECI モデル)において,表出化に該当するものはどれか。
ア 顧客への対応の仕方を,業種別にマニュアル化する。 正解
イ 顧客を訪問し,要望についてのヒアリングを行う。
ウ 製品操作マニュアルと業務マニュアルから,運用マニュアルを作成する。
エ マニュアルに記載された方法を実践し,スキルを習得する。
正解 ア
解説
知識創造プロセス(SECI モデル)の表出化(Externalization)は,個人が経験を通じて身に付けていて言葉になっていない暗黙知を,言葉や図表にして形式知として取り出す段階である。担当者が体得している顧客への対応の仕方を,業種別のマニュアルという文書にするアが該当する。
イの顧客を訪問してヒアリングを行うのは,経験を共有して暗黙知を暗黙知のまま受け取る共同化である。ウの複数のマニュアルから運用マニュアルを作るのは,形式知どうしを組み合わせて新しい形式知を作る連結化である。エのマニュアルに記載された方法を実践してスキルを習得するのは,形式知を体得して暗黙知にする内面化である。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)
問17
TLO(Technology Licensing Organization)法に基づき,承認又は認定された事業者の役割として,適切なものはどれか。
ア 企業からの委託研究,又は共同研究を受け入れる窓口として,企業と大学との調整を行う。
イ 研究者からの応募に基づき,補助金を支給して先進的な研究を発展させる。
ウ 大学の研究成果の特許化及び企業への技術移転の支援を行い,産学の仲介役を果たす。 正解
エ 民間企業が保有する休眠特許を発掘し,他企業にライセンスを供与して活用を図る。
正解 ウ
解説
TLO 法(大学等技術移転促進法)に基づいて承認又は認定された TLO(技術移転機関)は,大学などの研究成果を特許化し,その特許を企業にライセンスするなどして技術移転を支援し,大学と産業界の仲介役を果たす。ウが適切である。
アの企業からの委託研究や共同研究を受け入れる窓口は,大学の産学連携部門などの役割。イの研究者の応募に基づいて補助金を支給するのは,研究助成を行う機関の役割。エの民間企業が保有する休眠特許の発掘とライセンスは,大学の研究成果を対象とする TLO の役割ではない。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)
問18
3PL(3rd Party Logistics)を説明したものはどれか。
ア 購買,生産,販売及び物流の一連の業務を,企業間で全体最適の視点から見直し,納期短縮や在庫削減を図る。
イ 資材の調達から生産,保管,販売に至るまでの物流全体を,費用対効果が最適になるように総合的に管理し,合理化する。
ウ 電子・電機メーカから,製品の設計や資材調達,生産,物流,修理などを一括して受託する。
エ 物流業務に加え,流通加工なども含めたアウトソーシングサービスを行い,また荷主企業の物流企画も代行する。 正解
正解 エ
解説
3PL(3rd Party Logistics)は,荷主でも実際の輸送を行う事業者でもない第三者が,荷主の物流業務を包括的に引き受ける形態である。輸送や保管だけでなく,流通加工や在庫管理までを含めたアウトソーシングサービスを提供し,さらに荷主企業の物流の企画や改善までを代行する点に特徴がある。エが正しい。
アは,購買から生産,販売,物流までを企業間で全体最適の視点から見直す SCM(サプライチェーンマネジメント)の説明である。イは,調達から販売までの物流全体を総合的に管理して合理化するロジスティクスの説明である。ウは,電子・電機メーカから設計や製造などを一括して受託する EMS の説明である。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)
問19
TOC(Theory of Constraints)の特徴はどれか。
ア 個々の工程を個別に最適化することによって,生産工程全体を最適化する。
イ 市場の需要が供給能力を下回っている場合に有効な理論である。
ウ スループット(=売上高-資材費)の増大を最重要視する。 正解
エ 生産プロセス改善のための総投資額を制約条件として確立された理論である。
正解 ウ
解説
TOC(Theory of Constraints,制約条件の理論)は,ゴールドラットが示した考え方で,工程全体の産出量は最も能力の低い工程(制約条件)によって決まるとする。そこで,スループット(=売上高-資材費,すなわち企業が新たに生み出した金額)を増やすことを最重要視し,制約条件となっている工程を見つけて集中的に手を打つことで全体の流れを改善していく。ウが正しい。
アは誤りで,TOC は個々の工程を個別に最適化しても全体最適にはならないという立場をとる。イも誤りで,需要が供給能力を下回っている状態では生産工程が制約にならず,工程のボトルネックを解消しても産出量は増えない。エも誤りで,TOC のいう制約条件は総投資額ではなく,工程全体の産出量を抑えている部分を指す。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)
問20
図は,製品 A の構成部品を示している。この製品 A を 10 個生産する場合,部品 C の手配数量は何個になるか。ここで,括弧内の数字は上位部品 1 個当たりの所要数量であり,部品 C の在庫は 5 個とする。
正解 ウ
解説
製品 A を 10 個作るには,部品 B が 2×10=20 個,A に直接使う部品 C が 1×10=10 個必要になる。部品 B の在庫は 0 個なので B は 20 個作る必要があり,B 1個に C を1個使うので,B のために C が 20 個必要になる。
部品 C の総所要量は 10+20=30 個で,在庫の 5 個を引くと,少なくとも 25 個を発注する必要がある。ウが正しい。B の中に含まれる C を見落とすと 10−5=5 個,在庫を引かないと 30 個(エ)と誤る。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)
問21
SRI(Socially Responsible Investment)を説明したものはどれか。
ア 企業が社会的責任を果たすために,環境保護への投資を行う。
イ 財務評価だけでなく,社会的責任への取組みも評価して,企業への投資を行う。 正解
ウ 先端技術開発への貢献度が高いベンチャ企業に対して,投資を行う。
エ 地域経済の活性化のために,大型の公共事業への投資を積極的に行う。
正解 イ
解説
SRI(Socially Responsible Investment,社会的責任投資)は,売上高や利益といった財務面の評価だけでなく,環境への配慮,人権や労働への取組み,法令遵守といった社会的責任への取組みも評価の基準に加えて投資先を選ぶ,投資家の側の投資手法である。イが正しい。
アは,企業が自ら行う環境保全のための投資であって,投資家による投資先の選び方ではない。ウは先端技術のベンチャ企業を対象とするベンチャキャピタルの投資,エは公共事業への投資であり,いずれも社会的責任への取組みを評価の基準にしてはいない。なお,SRI の考え方は,現在では環境・社会・ガバナンスを評価軸とする ESG 投資として広まっている。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)
問22
システム運用中に発生している各種トラブルの減少を図るための対策を立案している。トラブルを誘発する要因ごとに改善可能な課題がある。同じ時間やコストを掛けるなら,要因を層別し,より重要なものから手掛けていくことにしたい。この場合の分析に適している管理図法はどれか。
ア 特性要因図
イ パレート図 正解
ウ ヒストグラム
エ レーダチャート
正解 イ
解説
パレート図は,項目ごとの件数や金額を大きい順に棒グラフで並べ,その累計比率を折れ線で重ねた図である。層別した要因のうちどれが全体の大半を占めているかが一目で分かるので,限られた時間やコストを,効果の大きい要因から順に割り当てる重点指向の分析に適している。イが正しい。
アの特性要因図は,一つの結果に対する要因を魚の骨の形に整理して原因を洗い出す図で,要因の大きさの比較はできない。ウのヒストグラムは,測定値のばらつきの分布を柱状に表す図である。エのレーダチャートは,複数の評価項目の大きさとバランスを多角形で表す図である。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)
問23
ある外注部品が不良品である確率は 0.1 であり,受入れ後の費用は,良品には掛からないが,不良品には 1 個につき 2,000 円掛かる。そこで,検査機を導入して全部品を受入検査することにした。部品 1 個の検査費が 40 円,検査機が不良品を不良品と判定する確率が 0.9 とするとき,この受入検査で,部品 1 個当たりの費用は何円減ると期待できるか。ここで,検査機は良品をすべて良品と判定するものとする。また,検査機で不良品と判定されたものは受け入れない(2,000 円は掛からない)。
正解 ア
解説
検査をしない場合の部品 1 個当たりの費用は,不良品である確率 0.1 に不良品 1 個当たりの費用 2,000 円を掛けて,0.1×2,000=200 円である。検査をする場合は,検査費が 1 個につき 40 円掛かり,不良品のうち見逃されるのは 0.1×(1−0.9)=0.01 の割合なので,受入れ後の費用の期待値は 0.01×2,000=20 円になる。合計は 40+20=60 円で,減ると期待できるのは 200−60=140(円)であり,アになる。
エの 180 は,検査で防げる費用 0.1×0.9×2,000=180 円だけを見て,検査費 40 円を差し引いていない値である。イの 144 とウの 176 は,この計算からは得られない値である。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)
問24
合格となるべきロットが,抜取検査で誤って不合格となる確率のことを何というか。
ア 合格品質水準
イ 消費者危険
ウ 生産者危険 正解
エ 有意水準
正解 ウ
解説
抜取検査ではロットから取り出した標本だけで合否を判定するので,判定を誤ることがある。JIS Z 9015-0:1999 では,満足な製品を不合格とする危険率を生産者危険,不満足な製品を合格とする危険率を消費者危険と呼んでいる。合格となるべきロットが誤って不合格となるのは,出荷できたはずの品物が返されることになる生産者側の不利益なので,ウが正しい。
アの合格品質水準(AQL)は,抜取検査の目的に対して満足と見なせる工程平均の上限として定める品質の水準である。イの消費者危険は,不合格とすべきロットが誤って合格となる確率で,ウとは逆向きの誤りである。エの有意水準は統計的仮説検定の用語で,帰無仮説が正しいのにこれを棄却してしまう確率の基準である。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)
問25
次の三つの条件を満たす契約はどれか。
役務を提供する側には,仕事を完成して引き渡す責任はない。 作業のために必要な労働に対する指揮命令は役務を提供する側で行う。 労働条件は役務を提供する側で定められる。
ア 請負契約
イ 出向契約
ウ 準委任契約 正解
エ 派遣契約
正解 ウ
解説
準委任契約は,法律行為でない事務の委託を受ける契約で,委任の規定が準用される(民法第 656 条)。委任の目的は事務の処理そのものなので仕事を完成して引き渡す責任はなく,役務を提供する側が自ら雇用する労働者を自らの指揮命令の下で働かせ,その労働条件も役務を提供する側で定める。三つの条件をすべて満たすのはウである。
アの請負契約は,当事者の一方がある仕事を完成することを約する契約なので(民法第 632 条),一つ目の条件を満たさない。エの派遣契約による労働者派遣は,自己の雇用する労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させるものなので(労働者派遣法第 2 条第 1 号),二つ目の条件を満たさない。イの出向契約は,出向先とも雇用関係を結んで出向先の指揮命令を受け,労働条件も出向先の定めによるところがあるので,二つ目と三つ目の条件を満たさない。
出典:平成22年度 秋期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)
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