平成22年度 秋期に実施されたシステムアーキテクト試験
午前Ⅱの全25問です。問題文・正解・解説をそのまま読めます。
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問1
在庫管理業務を分析した DFD の中の a,b に入る語句の適切な組合せはどれか。
ア a:欠品確認,b:在庫引当
イ a:検査,b:入庫 正解
ウ a:納期確認,b:入庫
エ a:与信限度確認,b:在庫引当
正解 イ
解説
a には,発注先業者からの納品データ,発注で作った購買注文書控え,注文台帳の発注データが入り,注文台帳へ更新済み発注データを返す。納品された品物を注文内容と照合して確かめる処理なので“検査”である。b は,検査済みの納品データを受けて在庫台帳を更新し,経理部門へ買掛データを渡し,出庫へ出庫請求を出すので,品物を在庫に受け入れる“入庫”である。イが適切である。
アの欠品確認や在庫引当は,顧客注文に対して在庫を割り当てる処理で,図では在庫確認や出庫の側に当たり,納品データを受ける位置にはない。ウの納期確認は納品前に発注先へ納期を問い合わせる処理で,納品データと注文書控えを照合する a の入出力に合わない。エの与信限度確認は顧客への販売時に取引の可否を判断する処理で,仕入れの流れにある a には当たらず,b の在庫引当も買掛データを出さない。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2
新システムのモデル化を行う場合の DFD 作成の手順として,適切なものはどれか。
ア 現物理モデル → 現論理モデル → 新物理モデル → 新論理モデル
イ 現物理モデル → 現論理モデル → 新論理モデル → 新物理モデル 正解
ウ 現論理モデル → 現物理モデル → 新物理モデル → 新論理モデル
エ 現論理モデル → 現物理モデル → 新論理モデル → 新物理モデル
正解 イ
解説
DFD で既存システムを基に新システムをモデル化するときは,まず現状の業務を担当者や媒体などの実装を含めて表した現物理モデルを作り,そこから実装に依存しない本質的な処理だけを抜き出した現論理モデルにする。次に,新しい要求を反映した新論理モデルを作り,最後にそれを実現する具体的な手段を当てはめた新物理モデルにする。イが適切である。
論理モデルは物理モデルから実装の制約を取り除いたものなので,ウやエのように現論理モデルから始めることはできない。アとウのように新物理モデルを先に作ると,実現手段を決めてから本質的な要求を整理することになり,手順が逆である。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)
問3
デザインパターンの中のストラテジパターンを用いて,帳票出力のクラスを図のとおりに設計した。この帳票出力ストラテジクラスの説明として,適切なものはどれか。
ア クライアントは,どの帳票出力ストラテジクラスがどのフォーマットに対応するかを意識せずに利用できる。
イ 新規フォーマット用のアルゴリズムの追加が容易である。 正解
ウ 帳票出力ストラテジクラスの中で,どのフォーマットで帳票を出力するかの振分けを行っている。
エ 帳票出力のアルゴリズムは,コンテキストクラスの中に記述する。
正解 イ
解説
ストラテジパターンは,アルゴリズムをそれぞれ別のクラスとしてカプセル化し,共通のインタフェース(帳票出力ストラテジ)を通して交換できるようにするパターンである。コンテキストは具体的なクラスを意識せず帳票出力ストラテジの帳票出力() を呼び出すだけなので,新しいフォーマットに対応するときは,帳票出力ストラテジを汎化したクラスを追加すればよく,既存のクラスを変更せずに済む。イが適切である。
アは誤りで,どの具体的なストラテジを使うかはクライアントが選んでコンテキストに設定するので,クライアントはどのクラスがどのフォーマットに対応するかを知っている必要がある。ウのフォーマットごとの振分けは,条件分岐ではなく,どのサブクラスのオブジェクトを使うかによって決まる。エのアルゴリズムは各ストラテジクラスに記述し,コンテキストには記述しない。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)
問4
オブジェクト指向におけるオブジェクト間の代表的な関係には,is-a と part-of の二つがある。表に示すオブジェクト間の関係の組合せのうち,適切なものはどれか。
ア タイヤと自動車:is-a,人間と動物:part-of,辞書と書物:is-a
イ タイヤと自動車:is-a,人間と動物:part-of,辞書と書物:part-of
ウ タイヤと自動車:part-of,人間と動物:is-a,辞書と書物:is-a 正解
エ タイヤと自動車:part-of,人間と動物:is-a,辞書と書物:part-of
正解 ウ
解説
is-a は「A は B の一種である」という汎化・特化(継承)の関係,part-of は「A は B の一部である」という集約(全体と部分)の関係である。タイヤは自動車の部品なので part-of,人間は動物の一種なので is-a,辞書は書物の一種なので is-a となり,ウが適切である。
アとイは,タイヤと自動車を is-a,人間と動物を part-of としており,二つの関係を取り違えている。エは辞書と書物を part-of としているが,辞書は書物を構成する部分ではなく,書物の一種である。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)
問5
プログラムの構造化設計におけるモジュール分割技法の説明のうち,適切なものはどれか。
ア STS 分割は,プログラムをデータの流れに着目して分割する技法であり,入力データの処理,入力から出力への変換処理及び出力データの処理の三つの部分で構成することで,モジュールの独立性が高まる。 正解
イ TR 分割は,プログラムをデータの構造に着目して分割する技法であり,オンラインリアルタイム処理のように,入力トランザクションの種類に応じて処理が異なる場合に有効である。
ウ 共通機能分割は,プログラムをデータの構造に着目して分割する技法であり,共通の処理を一つにまとめ,モジュール化する。
エ ジャクソン法は,プログラムをデータの流れに着目して分割する技法であり,バッチ処理プログラムの分割に適している。
正解 ア
解説
STS 分割は,データの流れに着目したモジュール分割技法で,プログラムを入力データを処理する部分(源泉:Source),入力から出力への変換(Transform),出力データを処理する部分(吸収:Sink)の三つに分ける。各部分の結合が弱くなるので,モジュールの独立性が高まる。アが適切である。
イの TR 分割(トランザクション分割)も,データの流れに着目する技法であり,データの構造に着目する技法ではない。入力トランザクションの種類ごとに処理が分かれる場合に有効である点は正しい。ウの共通機能分割は,複数箇所で使われる共通の処理をモジュールとして切り出す技法で,データの構造に着目する技法ではない。エのジャクソン法は,入出力データの構造に着目してプログラムの構造を導く技法であり,データの流れに着目する技法ではない。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)
問6
オブジェクト指向の概念で,上位のクラスのデータやメソッドを下位のクラスで利用できる性質を何というか。
ア インヘリタンス 正解
イ カプセル化
ウ 多相性
エ 抽象化
正解 ア
解説
インヘリタンス(継承)は,上位のクラス(スーパクラス)で定義したデータ(属性)やメソッドを,下位のクラス(サブクラス)が引き継いで利用できる性質である。共通部分を上位クラスにまとめ,下位クラスでは差分だけを定義すればよい。アが正しい。
イのカプセル化は,データとそれを操作するメソッドを一つにまとめ,内部を外部から隠す性質である。ウの多相性(ポリモーフィズム)は,同じメッセージを送っても受け取ったオブジェクトのクラスに応じて異なる動作をする性質である。エの抽象化は,対象から共通する本質的な性質を取り出してクラスとして定義することである。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)
問7
プログラムのテストに関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア 静的テストとは,プログラムを実行することなくテストする手法であり,コード検査,静的解析などがある。 正解
イ 単体テストでは,スタブから被検査モジュールを呼び出し,被検査モジュールから呼び出されるモジュールの代わりにドライバを使用する。
ウ トップダウンテストは,仮の下位モジュールとしてのスタブを結合してテストするので,テストの最終段階になるまで全体に関係するような欠陥が発見されにくい。
エ ブラックボックステストは,分岐,反復などの内部構造を検証するため,すべての経路を通過するように,テストケースを設定する。
正解 ア
解説
静的テストは,プログラムを実行せずに,ソースコードや設計書を調べて欠陥を見つける手法である。人が読んで確かめるコード検査(インスペクションやウォークスルー)や,ツールで構文や制御の流れ・データの流れを解析する静的解析などがある。アが適切である。
イはスタブとドライバが逆で,単体テストでは被検査モジュールをドライバから呼び出し,被検査モジュールが呼び出す下位モジュールの代わりにスタブを使う。ウのトップダウンテストは上位モジュールから結合するので,全体の制御構造に関わる欠陥は早い段階で見つかりやすい。欠陥が最終段階まで見つかりにくいのはボトムアップテストの特徴である。エは内部構造に基づいてテストケースを設定するホワイトボックステストの説明であり,ブラックボックステストは内部構造を見ずに入力と出力の仕様から設計する。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)
問8
三つの整数型の入力データ A,B,C が,A≧15 かつ B≧10 かつ C≧5 のときだけ入力データを処理する仕様のプログラムを,同値分割法によってテストする。このときの最少のデータの組合せとして適切なものはどれか。ここで,(x,y,z) は,入力データ A の値が x,B の値が y,C の値が z であることを表すものとする。
ア (0,0,0),(20,15,10)
イ (0,0,0),(0,0,10),(0,15,0),(20,0,0)
ウ (0,15,10),(20,15,0),(20,0,10),(20,15,10) 正解
エ (0,0,0),(0,0,10),(0,15,0),(20,0,0),(0,15,10),(20,15,0),(20,0,10),(20,15,10)
正解 ウ
解説
同値分割法では,入力を同じ扱いを受けるクラスに分け,各クラスから代表値を一つ選ぶ。処理される有効同値クラスは A≧15 かつ B≧10 かつ C≧5 の一つで,例えば (20,15,10) である。無効同値クラスは A<15,B<10,C<5 の三つで,どの条件が正しく判定されているかを確かめるため,一つの条件だけを満たさないデータを作る。(0,15,10),(20,0,10),(20,15,0) と有効な (20,15,10) の 4 組が最少で,ウが適切である。
アは無効なデータが (0,0,0) だけなので,三つの条件のうちどれか一つの判定が誤っていても検出できない。イは有効同値クラスのデータがなく,無効なデータも二つの条件を同時に満たさないものばかりで,各条件を個別に確かめられない。エは 3 条件の成否の組合せ 8 通りをすべて網羅したもので,同値分割法の最少の組合せではない。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)
問9
受注処理の入力データをチェックするプログラムを,実験計画法に基づいてテストする。直交表を用いてテストケースを作成する場合,テストケースの a 〜 c の組合せとして,適切なものはどれか。
ア a:存在しない,b:存在しない,c:数字だけ
イ a:存在しない,b:存在する,c:数字以外の文字も含む
ウ a:存在する,b:存在しない,c:数字以外の文字も含む
エ a:存在する,b:存在する,c:数字以外の文字も含む 正解
正解 エ
解説
直交表の各列を入力項目に,各列の値 0,1 を入力項目の水準に対応させる。テストケースの行 1〜3 と直交表を照らし合わせると,得意先コードと商品コードは 0 が“存在しない”,1 が“存在する”,受注数量は 0 が“数字以外の文字も含む”,1 が“数字だけ”に当たる。行 4 は 1,1,0 なので,a は“存在する”,b は“存在する”,c は“数字以外の文字も含む”になる。エが適切である。
アは 0,0,1 に,イは 0,1,0 に,ウは 1,0,0 に当たり,いずれも直交表の行 4 の 1,1,0 と一致しない。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)
問10
プログラムの動的テストに用いられるテスト支援ツールはどれか。
ア カバレージモニタ 正解
イ 記号実行ツール
ウ コードオーディタ
エ プログラム図式生成ツール
正解 ア
解説
動的テストは,プログラムを実際に実行して行うテストである。カバレージモニタは,テスト実行中にどの命令や分岐が実行されたかを記録し,テストの網羅率を測定するツールなので,動的テストに用いる。アが正しい。
イの記号実行ツールは,変数に具体的な値ではなく記号を与えてプログラムの経路を解析するもので,プログラムを実際には実行しない静的な検証に用いる。ウのコードオーディタは,ソースコードがコーディング規約に従っているかを検査するツール,エのプログラム図式生成ツールは,ソースコードからフローチャートなどの図を作るツールで,どちらも実行せずに使う静的解析のツールである。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)
問11
次の流れ図において,①→②→③→⑤→②→③→④→②→⑥ の順に実行させるために,①において m と n に与えるべき初期値 a と b の関係はどれか。ここで,a,b はともに正の整数とする。
ア a = 2b
イ 2a = b
ウ 2a = 3b
エ 3a = 2b 正解
正解 エ
解説
流れ図は,m と n が等しくなるまで大きい方から小さい方を引き続ける(ユークリッドの互除法による最大公約数の計算)。指定の順序では,1 回目の③で m<n なので⑤で n-m→n,2 回目の③で m>n なので④で m-n→m となり,その後の②で m=n となる必要がある。3a=2b となる a=2,b=3 で試すと,m=2,n=3 → ⑤で n=1 → ④で m=1 → ②で m=n となり,指定どおりに実行される。エになる。
アの a=2b(例 a=2,b=1)とウの 2a=3b(例 a=3,b=2)は,最初の③で m>n となり④に進むので順序が合わない。イの 2a=b(例 a=1,b=2)は,⑤で n=1 となった直後の②で m=n となり,④を通らずに⑥へ進む。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)
問12
共通フレーム 2007 において,システム結合テストの評価で考慮すべき基準となっているものはどれか。
ア システム結合及びテストの実現可能性
イ システム要件との外部一貫性
ウ システム要件のテスト網羅性 正解
エ システム要件への追跡可能性
正解 ウ
解説
共通フレームは JIS X 0160(ISO/IEC 12207)を基にしており,そのシステム結合では,結合したシステムを,システム要件(要求事項)のテスト網羅性,使用したテスト方法及び作業標準の適切性,期待した結果への適合性,システム適格性確認テストの実現可能性,運用及び保守の実現可能性を考慮して評価する。ウが正しい。
イのシステム要件との外部一貫性は,ソフトウェア要件定義の評価基準に挙げられている。エのシステム要件への追跡可能性は,システム方式設計などの評価基準である。アの“システム結合及びテストの実現可能性”は,システム結合テストの評価基準には挙げられていない(評価基準にある実現可能性は,システム適格性確認テストと運用及び保守の実現可能性である)。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)
問13
構成管理ツールを使用して開発用のソースコードを取得する際に,リポジトリ上の位置やリビジョンなどの構成情報を保持したままでソースコードを入手したい。このとき,構成管理ツールに対して行う操作はどれか。
ア インポート
イ エクスポート
ウ コミット
エ チェックアウト 正解
正解 エ
解説
構成管理ツールのチェックアウトは,リポジトリから作業用のコピーを取り出す操作で,取り出したファイルにはリポジトリ上の位置やリビジョンなどの構成情報が保持される。このため,変更した内容を後からリポジトリに反映したり,更新を取り込んだりできる。エが正しい。なお,Git では,リポジトリを複製する clone で同様に構成情報ごとソースコードを入手する。
アのインポートは,構成管理されていないファイルをリポジトリに新しく登録する操作である。イのエクスポートは,構成情報を含まない素のファイルとしてソースコードを取り出す操作で,配布用の取出しなどに使う。ウのコミットは,作業用コピーで行った変更をリポジトリに登録する操作である。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)
問14
情報システムの導入に伴って変化するキャッシュフローの現在価値を計算することで,投資効果を評価する指標はどれか。
正解 ウ
解説
NPV(Net Present Value,正味現在価値)は,投資によって将来得られるキャッシュフローを割引率で現在価値に換算して合計し,そこから投資額を差し引いた値である。値が正であれば投資する価値があると判断でき,お金の時間的価値を考慮して投資効果を評価できる。ウが正しい。
アの BSC(バランススコアカード)は,財務,顧客,業務プロセス,学習と成長の四つの視点から戦略の実行と業績を評価する手法である。イの EVA(経済付加価値)は,税引後営業利益から資本コストを差し引いた値で,企業が生み出した価値を測る指標である。エの ROI(投資利益率)は,利益を投資額で割った比率で,キャッシュフローを現在価値に割り引かない。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)
問15
情報システムの全体計画立案のために E-R モデルを用いて全社のデータモデルを作成する手順はどれか。
ア 管理層の業務から機能を抽出し,機能をエンティティとする。次に,機能の相互関係に基づいてリレーションシップを定義する。さらに,全社の帳票類を調査して整理し,正規化された項目に基づいて属性を定義し,全社のデータモデルとする。
イ 企業の全体像を把握するために,基本的なエンティティだけを抽出し,それらの相互間のリレーションシップを含めて,鳥瞰図を作成する。次に,エンティティを詳細化し,すべてのリレーションシップを明確にしたものを全社のデータモデルとする。 正解
ウ 業務層の現状システムを分析し,エンティティとリレーションシップを抽出する。それぞれについて適切な属性を定め,これらを基に E-R 図を作成し,それを抽象化して,全社のデータモデルを作成する。
エ 全社のデータとその処理過程を分析し,重要な処理を行っている業務を基本エンティティとする。次に,基本エンティティ相互のデータの流れをリレーションシップとしてとらえ,適切な識別名を与える。さらに,基本エンティティと関係あるデータを属性とし,全社のデータモデルを作成する。
正解 イ
解説
全社のデータモデルは,全体計画の立案に使うため,まず企業全体を見渡せることが重要である。そこで,トップダウンで企業活動の中心となるエンティティだけを抽出し,それらの間のリレーションシップを含めた鳥瞰図を作成して全体像を把握する。次に,エンティティを詳細化し,全てのリレーションシップを明確にして全社のデータモデルに仕上げる。イが適切である。
アは機能をエンティティとしており,業務の機能とデータを取り違えている。ウは業務層の現状システムからボトムアップに積み上げるので,現状の個別システムの構造に引きずられ,全社の視点をもったモデルになりにくい。エは業務(処理)をエンティティ,データの流れをリレーションシップとしており,データフローの考え方と E-R モデルを混同している。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)
問16
“システム管理基準”によれば,企画業務で立案する開発計画で明確にすべきものはどれか。
ア システム化によって生じる組織及び業務の変更の方針
イ 情報セキュリティ基本方針
ウ 組織体全体の情報システムのあるべき姿
エ ユーザ部門及び情報システム部門の役割分担 正解
正解 エ
解説
システム管理基準(平成 16 年版)は,企画業務の開発計画について,“開発計画は,ユーザ部門及び情報システム部門の役割分担を明確にすること”としている。ほかに目的,対象業務,費用,スケジュール,開発体制,投資効果や,教育及び訓練計画なども開発計画で明確にする。エが正しい。なお,システム管理基準は平成 30 年に改訂され,現行版の構成は“IT ガバナンス”“企画フェーズ”などに改められている。
アのシステム化によって生ずる組織及び業務の変更の方針,イの情報セキュリティ基本方針,ウの組織体全体の情報システムのあるべき姿は,いずれも企画業務より前の“情報戦略”の全体最適化の方針・目標で明確にするものである。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)
問17
業務プロセスを可視化する手法として UML を採用した場合の活用シーンはどれか。
ア データ中心にプロセスを表現するために,データをエンティティとその属性で表し,エンティティ間の関連を図に示す。
イ データの流れによってプロセスを表現するために,データの発生,吸収の場所,蓄積場所,データの処理をデータの流れを示す矢印でつないで表現する。
ウ 複数の観点でプロセスを表現するために,目的に応じたモデル図法を使用し,オブジェクトモデリングのために標準化された記述ルールで表現する。 正解
エ プロセスの機能を網羅的に表現するために,一つの要件に対し発生する事象を条件分岐の形式で記述する。
正解 ウ
解説
UML はオブジェクト指向のモデリングのために標準化された記法で,クラス図,アクティビティ図,シーケンス図など目的の異なる複数の図を使い分け,同じ対象を複数の観点から表現する。ウが正しい。
アはエンティティと属性,関連で表す E-R 図によるデータ中心アプローチ,イはデータの発生と吸収,蓄積,処理をデータの流れでつなぐ DFD(データフロー図),エは一つの要件に対して発生する事象を条件分岐の形で記述するデシジョンツリーや決定表の説明で,いずれも UML の図法ではない。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)
問18
スーパコンピュータの特徴として,適切なものはどれか。
ア 処理装置内の演算器で一度に扱えるビット数を非常に大きくして,文字列処理の性能向上を図っている。
イ 大容量の磁気ディスク装置及び仮想記憶技術を用いることによって,非常に大きなメモリ空間を実現し,性能向上を図っている。
ウ 動的に再構成可能なハードウェア演算器を多数用意し,実行する命令に応じて最適化することによって,性能向上を図っている。
エ ベクトル命令を備えたプロセッサを数個〜数千個,又はマイクロプロセッサを数百〜数十万個結合することによって,性能向上を図っている。 正解
正解 エ
解説
スーパコンピュータは,科学技術計算などの大規模な数値計算を高速に行うためのコンピュータで,ベクトル演算を行うプロセッサを数個から数千個,又は汎用のマイクロプロセッサを数百から数十万個結合し,並列に処理させることで性能を高めている。エが適切である。なお,現在のスーパコンピュータでは,GPU などの演算加速器を併用するものも多い。
アの演算器で一度に扱えるビット数を大きくして文字列処理の性能を高めるものは,数値計算の性能を追求するスーパコンピュータの特徴ではない。イの仮想記憶は主記憶より遅い磁気ディスクを使って大きな記憶空間を見せる技術で,性能向上の手段ではない。ウの動的に再構成可能なハードウェア演算器を用いるのは,FPGA などを使うリコンフィギャラブルコンピューティングの特徴である。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)
問19
Web システムにおいて,ロードバランサ(負荷分散装置)が定期的に行っているアプリケーションレベルの稼働監視に関する記述として,最も適切なものはどれか。
ア Web サーバで OS のコマンドを実行し,その結果が正常かどうかを確認する。
イ Web サーバの特定の URL にアクセスし,その結果に含まれる文字列が想定値と一致するかどうかを確認する。 正解
ウ Web サーバの特定のポートに対して接続要求パケットを発行し,確認応答パケットが返ってくるかどうかを確認する。
エ ネットワークの疎通を確認するコマンドを実行し,Web サーバから応答が返ってくるかどうかを確認する。
正解 イ
解説
ロードバランサによるアプリケーションレベルの稼働監視は,Web サーバの特定の URL に実際に HTTP でアクセスし,応答の内容に想定した文字列が含まれているかを確認して,アプリケーションが正しく動作しているかを判断する。イが最も適切である。
ウは特定のポートへの接続確認で,TCP の接続が確立できることは分かるが,アプリケーションが正常に応答するかまでは分からない。エは ping などによるネットワークの疎通確認である。アの Web サーバで OS のコマンドを実行する方法は,負荷分散装置が外部から行う稼働監視ではなく,アプリケーションの応答も確認できない。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)
問20
フェールソフトの説明として,適切なものはどれか。
ア システムの一部に故障や異常が発生したとき,データの消失,装置の損傷及びオペレータに対する危害が起こらないように安全な状態に保つ。
イ システムの運用中でも故障部分の修復が可能で,24 時間 365 日の連続運転を可能にする。
ウ 装置の一部が故障しても,システムの全面的なサービス停止にならないようにする。 正解
エ 利用者が決められた順序でしか入力できないようにするなどして,単純なミスが起こらないようにする。
正解 ウ
解説
フェールソフトは,システムの一部に故障が発生したとき,故障した部分を切り離すなどして,機能や性能を落としながらもシステム全体としては処理を続け,全面的な停止を避ける考え方である。ウが適切である。
アの故障や異常が発生したときにシステムを安全な状態に保つのはフェールセーフである。イの運用中でも故障部分を修復でき,連続運転を可能にするのは,活性保守の仕組みをもつ無停止型(フォールトトレラント)システムの特徴である。エの決められた順序でしか入力できないようにするなどして人の単純なミスを防ぐのはフールプルーフである。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)
問21
概念データモデルの解釈として,適切なものはどれか。ここで,モデルの表記には UML を用いる。
ア 1 件の“在庫取引”データを記録する際,2 件の“在庫品”データも更新する。 正解
イ “在庫品”データは,現在の在庫数量だけでなく,過去の在庫数量も保持する。
ウ 倉庫別,品目別に入出庫状況を把握することはできない。
エ 品目の異なる“在庫品”データ間で“在庫取引”データを記録できる。
正解 ア
解説
“在庫品”は品目と倉庫の組ごとの在庫で,“在庫取引”は移動元と移動先の二つの“在庫品”とそれぞれ多対 1 で関連している。1 件の“在庫取引”は,移動元の在庫品から移動先の在庫品へ移動数量だけ在庫を動かすことを表すので,記録する際には移動元の在庫数量を減らし,移動先の在庫数量を増やす,2 件の“在庫品”の更新が必要になる。アが適切である。
イの過去の在庫数量は,“在庫品”の属性が在庫数量だけなので保持しておらず,履歴は“在庫取引”に記録される。ウは,“在庫品”が品目と倉庫に関連し,“在庫取引”がその在庫品に関連しているので,倉庫別,品目別に入出庫状況を把握できる。エは,“同一品目間の移動だけを許す”という制約に反するので記録できない。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)
問22
商品の販売状況分析を商品軸,販売チャネル軸,時間軸,顧客タイプ軸で行う。データ集計の観点を,商品,販売チャネルごとから,商品,顧客タイプごとに切り替える操作はどれか。
ア ダイス 正解
イ データクレンジング
ウ ドリルダウン
エ ロールアップ
正解 ア
解説
OLAP のダイスは,多次元データを見る分析軸を別の軸に入れ替える操作。商品・販売チャネルの組合せで見ていたものを商品・顧客タイプの組合せに切り替えるのがこれに当たる。
ウのドリルダウンは同じ軸のまま,より細かい階層へ掘り下げる操作。エのロールアップは逆に上位の階層へ集約する操作。イのデータクレンジングは,分析の前に表記の揺れや誤りを整える処理であり,集計の観点を変える操作ではない。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)
問23
10 mW/MHz 以下の電力密度であれば無線局の免許が不要であり,Bluetooth や,IEEE 802.11b 及び IEEE 802.11g の無線 LAN で使用されている周波数帯はどれか。
ア 13.56 MHz 帯
イ 950 MHz 帯
ウ 2.4 GHz 帯 正解
エ 5.2 GHz 帯
正解 ウ
解説
2.4 GHz 帯(2,400〜2,483.5 MHz)は,産業・科学・医療用の ISM バンドの一つで,電波法施行規則第 6 条第 4 項が定める小電力データ通信システムの無線局は,技術基準に適合した無線設備(適合表示無線設備)だけを使うものであれば,免許を受けずに開設できる(電波法第 4 条)。Bluetooth や IEEE 802.11b,IEEE 802.11g の無線 LAN はこの周波数帯を使う。ウが正しい。
アの 13.56 MHz 帯は,非接触 IC カードや HF 帯の RFID(電子タグ)で使われる周波数帯である。イの 950 MHz 帯は,出題当時 UHF 帯の RFID などで使われていた周波数帯である。エの 5.2 GHz 帯は IEEE 802.11a などの無線 LAN が使う周波数帯で,Bluetooth や IEEE 802.11b,11g は使わない。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)
問24
CSMA/CD 方式に関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア 衝突発生時の再送動作によって,衝突の頻度が増すとスループットが下がる。 正解
イ 送信要求の発生したステーションは,共通伝送路の搬送波を検出してからデータを送信するので,データ送出後の衝突は発生しない。
ウ ハブによって複数のステーションが分岐接続されている構成では,衝突の検出ができないので,この方式は使用できない。
エ フレームとしては任意長のビットが直列に送出されるので,フレーム長がオクテットの整数倍である必要はない。
正解 ア
解説
CSMA/CD では,衝突が起きると送信を中断してランダムな時間だけ待ってから再送する。伝送路が混んで衝突が増えると,この待ち時間と再送が積み重なって実際に流れるデータ量が減るので,スループットが下がる。アが正しい。
イは,搬送波を検出して空いていることを確かめてから送信しても,信号が届くまでの遅延の間に別のステーションも送信を始めれば衝突は起こるので誤り。ウは,リピータハブで分岐接続した構成でも衝突は検出できるので誤り(ハブ配下は一つの衝突ドメインになる)。エは,イーサネットのフレームはオクテット単位で構成されるので誤りである。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)
問25
ディジタル署名を利用する目的として,適切なものはどれか。
ア 受信者が署名鍵を使って,暗号文を元のメッセージに戻すことができるようにする。
イ 送信者が固定文字列を付加したメッセージを,署名鍵を使って暗号化することによって,受信者がメッセージの改ざん部位を特定できるようにする。
ウ 送信者が署名鍵を使って署名を作成し,それをメッセージに付加することによって,受信者が送信者を確認できるようにする。 正解
エ 送信者が署名鍵を使ってメッセージを暗号化することによって,メッセージの内容を関係者以外に分からないようにする。
正解 ウ
解説
ディジタル署名では,送信者が自分の署名鍵(秘密鍵)でメッセージのハッシュ値などから署名を作成してメッセージに付け,受信者は送信者の検証鍵(公開鍵)で署名を検証する。署名鍵をもつのは送信者だけなので,検証に成功すれば送信者を確認でき,メッセージが改ざんされていないことも確かめられる。ウが適切である。
アの受信者が暗号文を元に戻すのは暗号化通信での復号であり,署名鍵は送信者だけがもつ鍵で受信者は使わない。イのディジタル署名で分かるのは改ざんの有無で,改ざんされた部位までは特定できない。エのメッセージの内容を関係者以外に分からないようにするのは暗号化による機密性の確保で,ディジタル署名の目的ではない。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)
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