令和3年度 春期に実施されたITストラテジスト試験
午前Ⅱ(2026年度からの科目A-2)の全25問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。
この試験について:ITストラテジスト試験について
この年度を解いてみる
問1
経済産業省が策定した“「DX 推進指標」とそのガイダンス”における DX 推進指標の説明はどれか。
ア IT ベンダが,情報システムを開発する際のプロジェクト管理能力,エンジニアリング能力を高めていくために,現状のプロセス状況を 5 段階に分けて評価し,不十分な部分を改善することを目指すもの
イ 経営者や社内関係者が,データとデジタル技術を活用して顧客視点で新たな価値を創出していくために,現状とあるべき姿に向けた課題・対応策に関する認識を共有し,必要なアクションをとるための気付きの機会を提供することを目指すもの 正解
ウ 社内 IT 部門が,不正侵入やハッキングなどのサイバー攻撃から自社のデータを守るために,安全なデータの保管場所,保管方法,廃棄方法を具体的に選定するための指針を提供することを目指すもの
エ 内部監査人が,企業などの内部統制の仕組みのうち,IT を用いた業務処理に関して,情報システムの開発・運用・保守に係るリスクを評価した上で,内部統制システムを整備することを目指すもの
正解 イ
解説
経済産業省が 2019 年 7 月に取りまとめた“「DX 推進指標」とそのガイダンス”は,企業が自らの DX の取組状況を診断するための自己診断の指標である。経営者や社内の関係者が,データとデジタル技術を活用して顧客視点で新たな価値を創出していくために,あるべき姿と現状とのギャップや対応すべき課題について認識を共有し,必要なアクションをとるための気付きの機会を提供することを目指している。イが正しい。
アは,開発を行う組織のプロセスの成熟度を 5 段階で評価して改善を促す CMMI の説明である。ウは,データの保管場所・方法・廃棄を定めるセキュリティ上の指針に当たる。エは,IT に関わる内部統制の整備を扱うもので,システム管理基準などが該当する。なお,DX 推進指標はその後 IPA が自己診断結果の収集・分析を担い,設問や成熟度レベルも改訂されている。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)
用語解説:内部統制(全般統制・業務処理統制) システム監査(監査手続・監査証拠・フォローアップ)
問2
情報システムの導入と活用によって生み出されるキャッシュフローの現在価値を計算することによって,投資効果を評価したい。このときに使われる指標はどれか。
正解 ウ
解説
NPV(Net Present Value,正味現在価値)は,投資によって将来得られるキャッシュフローを割引率で現在価値に換算して合計し,そこから投資額を差し引いた値である。値が正であれば投資する価値があると判断でき,お金の時間的価値を考慮して投資効果を評価できる。ウが正しい。
アの BSC(バランススコアカード)は,財務,顧客,業務プロセス,学習と成長の四つの視点から戦略の実行と業績を評価する手法である。イの EVA(経済付加価値)は,税引後営業利益から資本コストを差し引いた値で,企業が生み出した価値を測る指標である。エの ROI(投資利益率)は,利益を投資額で割った比率で,キャッシュフローを現在価値に割り引かない。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)
用語解説:バランススコアカードと KPI・KGI・CSF 投資評価(NPV・IRR・ROI)
問3
IT 投資ポートフォリオにおいて,情報化投資の対象を,戦略,情報,トランザクション,インフラの四つのカテゴリに分類した場合,トランザクションカテゴリに対する投資の直接の目的はどれか。
ア 管理品質向上のために,マネジメント,レポーティング,分析などを支援する。
イ 市場における競争優位やポジショニングを獲得する。
ウ 複数のアプリケーションソフトウェアによって共有される基盤部分を提供する。
エ ルーチン化された業務のコスト削減や処理効率向上を図る。 正解
正解 エ
解説
IT 投資ポートフォリオは,情報化投資を目的の違いによって幾つかのカテゴリに分け,カテゴリ間の配分の偏りを見ながら投資を判断する考え方である。戦略は競争優位の獲得,情報は経営の意思決定や管理の支援,トランザクションは受注処理や会計処理のようにルーチン化された定型業務の処理,インフラは複数の業務システムが共通に使う基盤を担う。トランザクションカテゴリへの投資の直接の目的は,その定型業務のコスト削減や処理効率の向上なので,エが該当する。
アはマネジメントやレポーティング,分析を支援する情報カテゴリ,イは市場での競争優位やポジショニングの獲得を狙う戦略カテゴリ,ウは複数のアプリケーションソフトウェアに共有される基盤部分を提供するインフラカテゴリに対する投資の目的である。
IT 投資ポートフォリオの4つのカテゴリ
情報化投資を目的で分けると,戦略は市場での競争優位の獲得,情報は経営の意思決定や管理(マネジメント・レポーティング・分析)の支援,トランザクションは受注や会計などルーチン化された業務のコスト削減と処理効率の向上,インフラは複数の業務システムが共有する基盤の提供。
戦略
競争優位・ポジショニング
情報
管理・レポーティング・分析
トランザクション
定型業務のコスト削減・効率化
インフラ
共有される基盤
カテゴリ間の配分の偏りを見ながら投資を判断する
トランザクション=定型業務のコスト削減・効率向上(エ)
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)
問4
クラウドサービスなどの提供を迅速に実現するためのプロビジョニングの説明はどれか。
ア 企業の情報システムの企画,設計,開発,導入,保守などのサービスを,一貫して又は工程の幾つかを部分的に提供する。
イ 業種や事業内容などで共通する複数の企業や組織が共同でデータセンタを運用して,それぞれがインターネットを通して各種サービスを利用する。
ウ 自社でハードウェア,ネットワークなどの環境を用意し,業務パッケージなどを導入して利用する運用形態にする。
エ 利用者の需要を予想し,ネットワーク設備やシステムリソースなどを計画的に調達して強化し,利用者の要求に応じたサービスを提供できるように備える。 正解
正解 エ
解説
プロビジョニングは,利用者の需要を予測してサーバやネットワークなどのリソースをあらかじめ調達・配備しておき,要求が発生したときにすぐサービスを提供できるように備えること。
アはシステムインテグレーション,イは複数企業が共同でデータセンターを運用する形態の説明。ウは自社で環境を用意するオンプレミスの運用形態。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)
問5
システム化構想の段階で,ビジネスモデルを整理したり,分析したりするときに有効なフレームワークの一つであるビジネスモデルキャンバスの説明として,適切なものはどれか。
ア 企業がどのように,価値を創造し,顧客に届け,収益を生み出しているかを,顧客セグメント,価値提案,チャネル,顧客との関係,収益の流れ,リソース,主要活動,パートナ,コスト構造の九つのブロックを用いて図示し,分析する。 正解
イ 企業が付加価値を生み出すための業務の流れを,購買物流,製造,出荷物流,販売・マーケティング,サービスという五つの主活動と,調達,技術開発など四つの支援活動に分類して分析する。
ウ 企業の強み・弱み,外部環境の機会・脅威を分析し,内部要因と外部要因をそれぞれ軸にした表を作成することによって,事業機会や事業課題を発見する。
エ 企業目標の達成を目指し,財務,顧客,内部ビジネスプロセス,学習と成長の四つの視点から戦略マップを作成して,四つの視点においてバランスのとれた事業計画を策定し進捗管理をしていく。
正解 ア
解説
ビジネスモデルキャンバスは,A. オスターワルダーらが提唱したフレームワークで,顧客セグメント,価値提案,チャネル,顧客との関係,収益の流れ,リソース,主要活動,パートナ,コスト構造の九つのブロックを 1 枚の図に配置し,企業がどのように価値を創造し,顧客に届け,収益を得るかを可視化して分析する。アが適切である。
イは M. E. ポーターのバリューチェーン(価値連鎖)分析,ウは強み・弱み・機会・脅威を整理する SWOT 分析の説明である。エは財務,顧客,内部ビジネスプロセス,学習と成長の四つの視点で戦略を管理するバランススコアカードの説明である。
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルを9つの要素で1枚に描く。中心に価値提案を置き,右側に顧客セグメント・チャネル・顧客との関係,左側に主要活動・主要リソース・パートナ,下にコスト構造と収益の流れを置く。
パートナ
主要活動
リソース
価値提案
顧客との関係
チャネル
顧客セグメント
コスト構造
収益の流れ
中央が価値提案。右が顧客側,左がそれを支える側,下がお金
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)
用語解説:バランススコアカードと KPI・KGI・CSF
問6
ファイブフォース分析は,業界構造を,業界内で競争が激化する五つの要因を用いて図のように説明している。図中の a に入る要因はどれか。
ア 規模の経済性
イ 業者間の敵対関係 正解
ウ 仕入先の集中度
エ 流通チャネルの確保
正解 イ
解説
ポーターのファイブフォース分析は,業界の収益性を左右する力を,新規参入の脅威,代替品の脅威,売り手の交渉力,買い手の交渉力,業界内の既存企業どうしの競争という五つに整理したものである。図では周囲の四つの力が中央の a に向かっており,これら四つの力を受けて激しさが決まるのが業界内の競争である。したがって a には業者間の敵対関係が入り,イが正しい。
アの規模の経済性とエの流通チャネルの確保は,新規参入の脅威の大きさを決める参入障壁の要素である。ウの仕入先の集中度は,売り手の交渉力を強める要因である。いずれも五つの力そのものではなく,個々の力の強さを左右する要因にすぎない。
ファイブフォース分析
業界の収益性を決める5つの競争要因として,業界内の競争(既存の競合企業どうしの敵対関係)を中心に,新規参入の脅威,代替品の脅威,売り手(供給業者)の交渉力,買い手(顧客)の交渉力を置いて分析する。
業界内の競争
既存企業どうし
新規参入の脅威
代替品の脅威
売り手の交渉力
買い手の交渉力
中心が業界内の競争。上下に脅威2つ,左右に交渉力2つ
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)
問7
ブルーオーシャン戦略の特徴はどれか。
ア 価値を高めながらコストを押し下げる。 正解
イ 既存の市場で競争する。
ウ 既存の需要を喚起する。
エ 競合他社を打ち負かす。
正解 ア
解説
ブルーオーシャン戦略は,W・チャン・キムとレネ・モボルニュが示した戦略論で,競争相手がひしめく既存市場(レッドオーシャン)で戦うのではなく,競争のない新しい市場を切り開くことを説く。業界で当然とされてきた要素を減らす・取り除く一方,買い手にとっての価値を高める要素を増やす・付け加えることで,価値を高めながら同時にコストを押し下げるバリューイノベーションを目指す点が特徴なので,アが正しい。
イの既存の市場で競争すること,エの競合他社を打ち負かすことは,いずれも既存市場で戦うレッドオーシャン戦略の特徴である。ウの既存の需要を喚起することもレッドオーシャン側の考え方で,ブルーオーシャン戦略では,これまで顧客でなかった層を取り込んで新しい需要そのものを創り出す。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)
問8
AIDMA モデルの活用方法はどれか。
ア 消費者が製品を購入するまでの心理の過程を,注意,興味,欲求,記憶,行動に分け,各段階のコミュニケーション手段を検討する。 正解
イ 製品と市場の視点から,事業拡大の方向性を市場浸透・製品開発・市場開拓・多角化に分けて,戦略を検討する。
ウ 製品の相対的市場占有率と市場成長率から,企業がそれぞれの事業に対する経営資源の最適配分を意思決定する。
エ 製品の導入期・成長期・成熟期・衰退期の各段階に応じて,製品の改良,新品種の追加,製品廃棄などを計画する。
正解 ア
解説
AIDMA モデルは,消費者が広告に接してから購入に至るまでの心理の過程を,注意(Attention),興味(Interest),欲求(Desire),記憶(Memory),行動(Action)の五つの段階に分けて捉えるモデルである。消費者が今どの段階にいるかによって効く働きかけは異なるので,段階ごとに適した広告や販促などのコミュニケーション手段を検討するのに使う。アが正しい。
イは,製品と市場の新旧の組合せで成長の方向性を四つに分けるアンゾフの成長マトリクスである。ウは,相対的市場占有率と市場成長率の二軸で事業を分類し,経営資源の配分を決める PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)である。エは,製品ライフサイクルの各段階に応じた製品戦略の説明である。
AIDMA:購入までの心理の5段階
AIDMA モデルは,消費者が広告に接してから購入に至るまでの心理の過程を,注意(Attention),興味(Interest),欲求(Desire),記憶(Memory),行動(Action)の五つに分ける。消費者がどの段階にいるかで効く働きかけが違うので,段階ごとに広告や販促などのコミュニケーション手段を検討する。
注意
Attention
興味
Interest
欲求
Desire
記憶
Memory
行動
Action
アンゾフの成長マトリクス・PPM・製品ライフサイクルとは別
段階ごとにコミュニケーション手段を変える(ア)
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)
問9
バイラルマーケティングを説明したものはどれか。
ア インターネット上で成果報酬型広告の仕組みを用いるマーケティング手法である。
イ 個々の顧客を重要視し,個別ニーズへの対応を図るマーケティング手法である。
ウ セグメントごとに差別化した,異なる商品を提供するマーケティング手法である。
エ 人から人へと評判が伝わることを積極的に利用するマーケティング手法である。 正解
正解 エ
解説
バイラルマーケティングは,商品やサービスの評判が利用者の口コミや紹介によって人から人へ伝わっていく様子を,ウイルス(virus)の感染になぞらえた手法である。企業が広告を出して直接伝えるのではなく,利用者が周囲に伝えたくなる仕掛けや紹介の仕組みを用意し,その広がりを積極的に利用する。エが正しい。
アは,掲載した広告経由の購入などの成果に応じて報酬を支払うアフィリエイトマーケティングである。イは,顧客一人ひとりを重視して個別のニーズに応えるワントゥワンマーケティングである。ウは,市場をセグメントに分けてそれぞれに異なる商品を用意する差別化マーケティングの説明である。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)
問10
市場を消費者特性でセグメント化する際に,基準となる変数を,地理的変数,人口統計的変数,心理的変数,行動的変数に分類するとき,人口統計的変数に分類されるものはどれか。
ア 社交性などの性格
イ 職業 正解
ウ 人口密度
エ 製品の使用割合
正解 イ
解説
人口統計的変数(デモグラフィック変数)は,年齢,性別,所得,職業,学歴,家族構成など,人口統計で把握できる消費者の属性をいう。職業はこれに当たるので,イが正しい。
アの社交性などの性格はライフスタイルや価値観と並ぶ心理的変数(サイコグラフィック変数)。ウの人口密度は都市部か地方かなどを表す地理的変数(ジオグラフィック変数)。エの製品の使用割合は購買や使用の状況を表す行動的変数である。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)
問11
マーケティング戦略の策定プロセスを幾つかのブロックに分けて順番に並べたとき,図の d に入るものはどれか。ただしア〜エは a〜d のいずれかに入るものとする。
ア 環境分析
イ マーケティングミックス決定 正解
ウ ターゲット特定
エ 市場細分化
正解 イ
解説
マーケティング戦略の策定は,まず市場や競合,自社の状況を調べる a の環境分析から始まる。次に市場を似た性質の顧客の集まりに分ける b の市場細分化(セグメンテーション),その中から狙う層を選ぶ c のターゲット特定(ターゲティング),選んだ層の中で自社の製品をどう位置付けるかを決めるポジション決定(ポジショニング)と進む。位置付けが決まれば,それを実現する製品・価格・流通・販促の組合せを決める段階になるので,d にはマーケティングミックス決定が入り,イが正しい。
アの環境分析は a,エの市場細分化は b,ウのターゲット特定は c に入る。市場細分化・ターゲット特定・ポジション決定の三つは頭文字をとって STP と呼ばれ,マーケティングミックスの決定はその後に続く段階である。
マーケティング戦略の策定プロセス
環境分析で市場・競合・自社を調べ,市場を似た顧客の集まりに分け(市場細分化),狙う層を決め(ターゲット特定),自社の位置づけを決め(ポジション決定),製品・価格・流通・販売促進の組合せを決めて(マーケティングミックス決定),実行計画を立てる。
a 環境分析
b 市場細分化
c ターゲット
特定
ポジション
決定
d マーケティング
ミックス決定
実行計画
策定
d=マーケティングミックス(4P)の決定
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)
問12
マーケティング調査におけるエスノグラフィーの活用事例はどれか。
ア 業界誌や業界新聞,調査会社の売れ筋ランキングなどから消費者の動向を探る。
イ 広告の一部に資料請求の項目を入れておき,それを照会してきた人数を調べる。
ウ 消費行動の現場で観察やインタビューを行い,気付かなかった需要を発掘する。 正解
エ 同等の条件下で複数パターンの見出しを広告として表示し,反応の違いを測る。
正解 ウ
解説
エスノグラフィーは,もともと文化人類学などで用いられてきた調査手法で,調査者が対象者の生活や行動の現場に入り込み,観察やインタビューを通じてありのままの行動を理解する。マーケティング調査では,消費者自身も意識していない潜在的な需要を発掘するために活用される。ウが該当する。
アは,既存の資料や統計を用いる二次データの調査(デスクリサーチ)である。イは,広告への反応を資料請求の件数で測るレスポンス測定である。エは,条件をそろえて複数の案の反応を比べる A/B テストである。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)
問13
SECI モデルにおいて,新たに創造された知識を組織に広め,新たな暗黙知として習得するプロセスはどれか。
ア 共同化(Socialization)
イ 表出化(Externalization)
ウ 連結化(Combination)
エ 内面化(Internalization) 正解
正解 エ
解説
SECI モデルは,野中郁次郎らが提唱した,暗黙知と形式知の相互変換によって組織の知識が創造される過程を表したモデルで,四つのプロセスからなる。共同化は経験の共有によって暗黙知を伝え,表出化は暗黙知を言葉や図などの形式知に表し,連結化は形式知を組み合わせて新たな形式知を作る。内面化は,新たに創造された形式知を実践を通じて個人が体得し,新たな暗黙知として習得するプロセスである。エが該当する。
内面化で身に付いた暗黙知は,再び共同化によって他者に伝えられ,知識創造のらせんが続いていく。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)
用語解説:SECI モデル(知識創造プロセス)
問14
技術経営における課題のうち,“死の谷”の説明として,適切なものはどれか。
ア コモディティ化が進んでいる分野で製品を開発しても,他社との差別化ができず,価格競争に陥り,利益の獲得が難しいこと
イ 新製品が市場に浸透していく過程において,実用性を重んじる顧客が受け入れず,より大きな市場を形成できないこと
ウ 先進的な製品開発に成功しても,事業化するためには更なる困難があること 正解
エ プロジェクトのマネジメントが適切に行われないために,プロジェクトの現場に生じた過大な負担がメンバを過酷な状態に追い込み,失敗に向かってしまうこと
正解 ウ
解説
技術経営では,研究開発の成果が事業として実を結ぶまでの難所を,研究から開発へ進む際の“魔の川”,開発から事業化へ進む際の“死の谷”,事業化から産業化へ進む際の“ダーウィンの海”と呼び分ける。死の谷は,先進的な製品の開発そのものには成功しても,量産の体制や販路の確保,資金の調達といった壁を越えられず,事業として立ち上がらないことを指す。ウが適切である。
アは,技術が広く行き渡って差別化ができなくなるコモディティ化の問題である。イは,実用性を重んじる層に受け入れられずに大きな市場へ広がらないことで,ムーアのいうキャズムに当たる。エは,過大な負担がメンバを追い詰めて破綻に向かうデスマーチの説明である。
魔の川・死の谷・ダーウィンの海
研究から開発へ進む間の障壁が魔の川,開発から事業化(量産や販路づくり)までの障壁が死の谷,事業化してから競合との競争に勝ち残って産業化するまでの障壁がダーウィンの海。
研究
開発
事業化
産業化
魔の川
製品にできない
死の谷
資金・量産の壁
ダーウィンの海
競争に負ける
キャズムは新製品の普及(初期の市場→主流の市場)の溝
研究→開発が魔の川,開発→事業化が死の谷,事業化→産業化がダーウィンの海
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)
問15
JIT(Just In Time)の特徴はどれか。
ア 押し出し方式(プッシュシステム)である。
イ 各工程は使用した分だけを前工程に発注する。 正解
ウ 他の品目の需要に連動しない在庫システムである。
エ 毎回仕様が異なる受注生産型の工場に適している。
正解 イ
解説
JIT(Just In Time)は,必要なものを,必要なときに,必要な量だけ生産する方式である。後工程が使用した分だけを前工程に引き取りに行き,前工程は引き取られた分だけを生産する後工程引取り方式(プルシステム)をとり,その指示にかんばんを用いる。イが該当する。
アは誤りで,JIT は後工程からの引取りで生産を行うプルシステムであり,計画に基づいて前工程から後工程へ送り出す押し出し方式ではない。ウの他の品目の需要に連動しない在庫の管理は,発注点方式などで扱う独立需要品目の考え方であり,JIT の特徴ではない。エも誤りで,JIT は同じ製品を繰り返し生産する工場に適しており,毎回仕様が異なる受注生産には向かない。
かんばん方式(後工程引取り)
後工程が,使った分だけの部品を前工程へ引き取りに行き,その指示(かんばん)を受けた前工程は,引き取られた分だけを作って補充する。必要なものを必要なときに必要な量だけ作る JIT の考え方で,作り過ぎの在庫を減らす。
前工程
後工程
出荷
部品
かんばん
かんばん
使った分だけ引き取り,引き取られた分だけ作る
物は前から後へ,かんばん(指示)は後から前へ
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)
問16
TOC の特徴はどれか。
ア 個々の工程を個別に最適化することによって,生産工程全体を最適化する。
イ 市場の需要が供給能力を下回っている場合に有効な理論である。
ウ スループット(=売上高-資材費)の増大を最重要視する。 正解
エ 生産プロセス改善のための総投資額を制約条件として確立された理論である。
正解 ウ
解説
TOC(Theory of Constraints,制約条件の理論)は,ゴールドラットが示した考え方で,工程全体の産出量は最も能力の低い工程(制約条件)によって決まるとする。そこで,スループット(=売上高-資材費,すなわち企業が新たに生み出した金額)を増やすことを最重要視し,制約条件となっている工程を見つけて集中的に手を打つことで全体の流れを改善していく。ウが正しい。
アは誤りで,TOC は個々の工程を個別に最適化しても全体最適にはならないという立場をとる。イも誤りで,需要が供給能力を下回っている状態では生産工程が制約にならず,工程のボトルネックを解消しても産出量は増えない。エも誤りで,TOC のいう制約条件は総投資額ではなく,工程全体の産出量を抑えている部分を指す。
TOC(制約条件の理論)
全体の産出量は,最も能力の低い工程(制約条件)で決まる。ほかの工程だけを個別に良くしても全体は増えないので,制約の工程を見つけて集中的に改善し,ほかの工程はそれに合わせる。評価の軸はスループット(売上高−資材費)の増大。
100/日
工程1
60/日
工程2
90/日
工程3
80/日
工程4
制約条件
全体は 60/日(能力は例)。スループット=売上高−資材費
全体は一番細い工程で決まる。スループットを最重視
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)
問17
ある会社の生産計画部では,毎月 25 日に次の手続で翌月分の計画生産量を決定している。8 月分の計画生産量を求める式はどれか。
〔手続〕
(1) 当月末の予想在庫量を,前月末の実在庫量と当月分の計画生産量と予想販売量から求める。 (2) 当月末の予想在庫量と翌月分の予想販売量を基に,翌月末の予想在庫量が翌々月から 3 か月間の予想販売量と等しくなるように翌月分の計画生産量を決定する。
ア I6+P7−S7+S8
イ S8+S9+S10+S11−I7 正解
ウ S8+S9+S10+S11−I8
エ S9+S10+S11−I7
正解 イ
解説
手続(1)により,7月末の予想在庫量 I7 は 6月末の実在庫量に7月分の計画生産量を足し,7月分の予想販売量を引いた I6+P7−S7 で求まる。手続(2)により,8月末の予想在庫量 I8=I7+P8−S8 が,翌々月の9月から3か月間の予想販売量 S9+S10+S11 と等しくなるように P8 を決める。
I7+P8−S8=S9+S10+S11 を P8 について解くと,P8=S8+S9+S10+S11−I7 となり,イが正しい。ウは I8 を使っているが,I8 は P8 が決まってから求まる値なので式に使えない。エは8月分の予想販売量 S8 を加え忘れている。
8月分の計画生産量の求め方
7月末の予想在庫 I7=I6+P7−S7。8月末の予想在庫 I8=I7+P8−S8 が,9月から3か月間の予想販売量 S9+S10+S11 に等しくなるように P8 を決める。I7+P8−S8=S9+S10+S11 を P8 について解くと,P8=S8+S9+S10+S11−I7。
6月
7月
8月
9月
10月
11月
月末在庫
I6
I7
I8
生産
P7
P8
販売
S7
S8
S9
S10
S11
P8
= I8
I7 + P8 − S8 = S9 + S10 + S11
P8 = S8 + S9 + S10 + S11 − I7
8月末の在庫が,9〜11月の販売量の合計になるように作る
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)
問18
ダグラス・マグレガーが説いた行動科学理論において,“人間は本来仕事が嫌いである。したがって,報酬と制裁を使って働かせるしかない”とするのはどれか。
ア X 理論 正解
イ Y 理論
ウ 衛生要因
エ 動機づけ要因
正解 ア
解説
ダグラス・マグレガーは,経営者がもつ人間観を対比して X 理論と Y 理論を示した。X 理論は,人間は生まれつき仕事が嫌いで,できれば避けようとし,責任を負うよりも命じられることを好むという見方である。この見方に立つと,従業員を働かせるには報酬という飴と制裁という鞭で外から動かすしかないことになるので,アが正しい。
イの Y 理論は,条件しだいで人間は自ら目標に向かって働くという見方で,目標管理などによって自主性を生かす動機付けを説く。ウの衛生要因とエの動機づけ要因は,ハーズバーグの二要因理論の用語である。衛生要因は給与や作業条件のように満たされないと不満をもたらすもの,動機づけ要因は達成感や承認のように満たされると満足をもたらすものを指す。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)
問19
将来の科学技術の進歩の予測などについて,専門家などに対するアンケートを実施し,その結果をその都度回答者にフィードバックすることによって,ばらばらの予測を図のように収束させる方法はどれか。
ア ゴードン法
イ デルファイ法 正解
ウ ミニマックス法
エ モンテカルロ法
正解 イ
解説
デルファイ法は,多数の専門家に匿名でアンケートを行い,その集計結果を回答者に返したうえで同じ質問を改めて行う,ということを繰り返して予測をまとめる手法である。回答者は他の専門家の見方を知った上で自分の予測を考え直せるので,図のように回を重ねるごとに回答のばらつきが小さくなり,予測が収束していく。匿名で行うため,発言力の大きい人の意見に引きずられにくい。イが正しい。
アのゴードン法は,出題者だけが本当のテーマを知り,参加者には抽象化したテーマだけを与えて発想を広げるアイディア発想法である。ウのミニマックス法は,起こり得る最大の損失が最も小さくなる案を選ぶ意思決定の基準である。エのモンテカルロ法は,乱数を使った試行を多数繰り返して確率的な現象の値を求める手法である。
デルファイ法の進め方
複数の専門家に匿名でアンケートを行い,集計した結果を回答者に返して,同じ質問にもう一度答えてもらう。これを繰り返すと,ばらばらだった予測が収束していく。専門家どうしを直接議論させないので,声の大きい人に引っ張られにくい。
専門家
専門家
専門家
専門家
匿名で別々に回答
集計する
集計結果を返して,答え直してもらう
回数を重ねると予測の幅が狭まる
1回目
2回目
3回目
直接議論させず,集計を返して答え直してもらうことを繰り返す
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)
用語解説:デルファイ法と問題分析の技法
問20
合格となるべきロットが,抜取検査で誤って不合格となる確率のことを何というか。
ア 合格品質水準
イ 消費者危険
ウ 生産者危険 正解
エ 有意水準
正解 ウ
解説
抜取検査ではロットから取り出した標本だけで合否を判定するので,判定を誤ることがある。JIS Z 9015-0:1999 では,満足な製品を不合格とする危険率を生産者危険,不満足な製品を合格とする危険率を消費者危険と呼んでいる。合格となるべきロットが誤って不合格となるのは,出荷できたはずの品物が返されることになる生産者側の不利益なので,ウが正しい。
アの合格品質水準(AQL)は,抜取検査の目的に対して満足と見なせる工程平均の上限として定める品質の水準である。イの消費者危険は,不合格とすべきロットが誤って合格となる確率で,ウとは逆向きの誤りである。エの有意水準は統計的仮説検定の用語で,帰無仮説が正しいのにこれを棄却してしまう確率の基準である。
OC 曲線(検査特性曲線)
横軸にロットの不良率,縦軸にそのロットが抜取検査で合格する確率をとった曲線。不良率が低い良いロット(p0)でも合格率は1にならず,不合格になる確率 α が生産者危険。不良率が高い悪いロット(p1)でも合格する確率 β が消費者危険。
ロットの不良率
合格率
1
p0
p1
α 生産者危険
良いロットが落ちる
β 消費者危険
悪いロットが通る
良いロットを落とすのが生産者危険 α,悪いロットを通すのが消費者危険 β
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)
問21
利用者とシステム運用担当者によるブレーンストーミングを行って,利用者の操作に起因する PC でのトラブルについて,主要なトラブルごとに原因となったと思われる操作,利用状況などを拾い上げた。トラブル対策を立てるために,ブレーンストーミングの結果を利用して原因と結果の関係を整理するのに適した図はどれか。
ア 散布図
イ 特性要因図 正解
ウ パレート図
エ ヒストグラム
正解 イ
解説
特性要因図は,結果(特性)を魚の頭に見立て,そこへ向かう背骨から大骨・小骨と枝分かれさせて原因(要因)を書き込んでいく図で,その形から魚の骨図とも呼ばれる。原因と結果の関係を階層的に整理できるので,ブレーンストーミングで挙がった操作や利用状況などの多数の要因を,主要なトラブルという特性ごとにまとめ直すのに適している。イが正しい。
アの散布図は,二つの変量の対応する値を点で打って相関の有無を見る図である。ウのパレート図は,項目を件数の多い順に並べた棒グラフと累積比率の折れ線を組み合わせ,重点的に取り組む項目を選ぶ図である。エのヒストグラムは,測定値を区間ごとの度数の柱で表して分布の形を見る図であり,いずれも原因と結果の関係を整理するものではない。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)
用語解説:デルファイ法と問題分析の技法
問22
インターネットのショッピングサイトで,商品の広告をする際に,商品の販売価格,商品の代金の支払時期及び支払方法,商品の引渡時期,売買契約の解除に関する事項などの表示を義務付けている法律はどれか。
ア 商標法
イ 電子契約法
ウ 特定商取引法 正解
エ 不正競争防止法
正解 ウ
解説
インターネットのショッピングサイトでの販売は,特定商取引法の通信販売に当たる。同法第 11 条は,通信販売について広告をするときは,商品の販売価格(送料が含まれない場合は販売価格及び送料),代金の支払の時期及び方法,商品の引渡時期,売買契約の申込みの撤回又は解除に関する事項などを表示しなければならないと定めている。ウが正しい。
アの商標法は,商品やサービスの目印である商標を登録して保護する法律である。イの電子契約法(電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律)は,消費者が画面の操作を誤って申込みをしてしまった場合の錯誤について,民法の特例を定めた法律である。エの不正競争防止法は,営業秘密の不正取得や他人の商品表示の冒用など,不正な競争行為を禁じる法律である。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)
問23
格納型クロスサイトスクリプティング(Stored XSS 又は Persistent XSS)攻撃に該当するものはどれか。
ア Web サイト上の掲示板に攻撃用スクリプトを忍ばせた書込みを攻撃者が行うことによって,その後に当該掲示板を閲覧した利用者の Web ブラウザで,攻撃用スクリプトが実行された。 正解
イ Web ブラウザへの応答を生成する処理に脆弱性のある Web サイトに向けて,不正な JavaScript コードを含むリクエストを送信するリンクを攻撃者が用意し,そのリンクを利用者がクリックするように仕向けた。
ウ 攻撃者が,乗っ取った複数の PC 上でスクリプトを実行して大量のリクエストを攻撃対象の Web サイトに送り付け,攻撃対象の Web サイトをサービス不能状態にした。
エ 攻撃者がスクリプトを使って,送信元 IP アドレスを攻撃対象の Web サイトの IP アドレスに偽装した大量の DNS リクエストを多数の DNS サーバに送信することによって,大量の DNS レスポンスが攻撃対象の Web サイトに送り付けられた。
正解 ア
解説
格納型(Stored/Persistent)クロスサイトスクリプティングは,攻撃者が Web サイトの掲示板などに攻撃用スクリプトを含むデータを書き込んでサーバに保存させ,そのページを閲覧した利用者の Web ブラウザでスクリプトを実行させる攻撃である。利用者に罠のリンクを踏ませなくても,閲覧しただけで被害が生じる。アが該当する。
イは,不正なスクリプトを含むリクエストを送らせるリンクを利用者にクリックさせ,その応答に含まれたスクリプトを実行させる反射型クロスサイトスクリプティングである。ウは乗っ取った多数の PC から大量のリクエストを送る DDoS 攻撃である。エは送信元を攻撃対象に偽装した DNS リクエストで大量の応答を送り付ける DNS リフレクション(DNS amplification)攻撃である。
XSS・CSRF・クリックジャッキング
XSS(反射型)は,スクリプトを含む罠のリンクを利用者に開かせ,脆弱なサイトがそのスクリプトをそのままページに埋めて返すので,利用者のブラウザで実行される。CSRF は,ログイン中の利用者に罠のページを開かせ,その利用者の Cookie 付きで意図しない要求(書込み・送金など)を正規のサイトに送らせる。クリックジャッキングは,透明にした正規サイトを罠のページに重ね,別のボタンだと思わせて押させる。
XSS(反射型)
攻撃者
利用者のブラウザ
脆弱なサイト
① 罠のリンク
② 開く ③ そのまま返す
埋め込まれたスクリプトが利用者のブラウザで動く(Cookie を盗むなど)
対策:出力時のエスケープ,Cookie の HttpOnly 属性
CSRF
罠のページ
利用者のブラウザ
正規のサイト
ログイン中
① 開く
② 送信させる
③ Cookie 付き
本人が操作したものとして,書込みや送金が行われる
対策:推測できないトークンを埋めて確かめる,SameSite 属性
クリックジャッキング
プレゼント
上に透明な正規サイト(「退会する」など)を
重ねて,下のボタンだと思わせて押させる
対策:X-Frame-Options,CSP の frame-ancestors
XSS はサイトの出力が汚される,CSRF は要求が偽造される,クリックジャッキングは画面が重ねられる
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)
用語解説:XSS・CSRF・クリックジャッキング
問24
ディジタル証明書が失効しているかどうかをオンラインで確認するためのプロトコルはどれか。
ア CHAP
イ LDAP
ウ OCSP 正解
エ SNMP
正解 ウ
解説
OCSP(Online Certificate Status Protocol)は,デジタル証明書が失効しているかどうかを,OCSP レスポンダにオンラインで問い合わせて確認するためのプロトコルである。失効リスト(CRL)全体を取得しなくても,個々の証明書の状態をその都度確認できる。ウが該当する。
アの CHAP は PPP で接続する際にチャレンジレスポンス方式で利用者を認証するプロトコル,イの LDAP はディレクトリサービスにアクセスするプロトコル,エの SNMP はネットワーク機器を監視・管理するプロトコルである。
CRL と OCSP の違い
CRL は,認証局が有効期限内に失効させた証明書のシリアル番号と失効日時を一覧にし,署名を付けて公開するもの。利用者はリストを取ってきて自分で照らし合わせる。OCSP は,利用者が調べたい証明書を OCSP レスポンダ(VA)にオンラインで問い合わせ,有効か失効しているかの答えを受け取る。
CRL(証明書失効リスト)
認証局
CA
失効した証明書の一覧
No.1024 3/10 失効
No.2041 5/02 失効
利用者
ブラウザなど
署名して公開
取ってきて照合
載るのは有効期限内に失効した証明書のシリアル番号と日時
OCSP
利用者
ブラウザなど
OCSP レスポンダ
VA(検証局)
この証明書は有効?
有効・失効・不明を返す
その都度オンラインで問い合わせるので,最新の状態が分かる
CRL は一覧を取ってきて自分で調べる,OCSP はその都度問い合わせる
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)
用語解説:PKI(認証局・CRL・OCSP)
問25
2019 年 2 月から総務省,情報通信研究機構(NICT)及びインターネットサービスプロバイダが連携して開始した“NOTICE”という取組はどれか。
ア NICT が依頼のあった企業のイントラネット内の Web サービスに対して脆弱性診断を行い,脆弱性が見つかった Web サービスの管理者に対して注意喚起する。
イ NICT がインターネット上の IoT 機器を調査することによって,容易に推測されるパスワードなどを使っている IoT 機器を特定し,インターネットサービスプロバイダを通じて利用者に注意喚起する。 正解
ウ スマートフォンにアイコンやメッセージダイアログを表示するなどし,緊急情報を通知する仕組みを利用して,スマートフォンのマルウェアに関してスマートフォン利用者に注意喚起する。
エ 量子暗号技術を使い,インターネットサービスプロバイダが緊急地震速報,津波警報などの緊急情報を安全かつ自動的に住民のスマートフォンに送信して注意喚起する。
正解 イ
解説
NOTICE(National Operation Towards IoT Clean Environment)は,2019 年 2 月 20 日に始まった取組で,NICT がインターネット上の IoT 機器に対して,容易に推測されるパスワードなどでログインできるかを調べ,サイバー攻撃に悪用されるおそれのある機器を特定する。その情報をインターネットサービスプロバイダに通知し,プロバイダが利用者に注意喚起する。イが該当する。なお,NOTICE は当初 5 年間の時限措置として始まったが,2023 年の NICT 法の改正で延長され,2024 年 4 月からは脆弱性をもつ機器への対処も加えて続けられている。
アの企業のイントラネット内の Web サービスの脆弱性診断は,NOTICE の調査対象ではない。ウのスマートフォンのマルウェアに関する通知や,エの量子暗号技術を使った緊急情報の送信も,NOTICE の内容ではない。
出典:令和3年度 春期 ITストラテジスト試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)
ITストラテジスト試験のほかの年度
科目A-2(午前Ⅱ)
令和7年度 春期
令和6年度 春期
令和5年度 春期
令和4年度 春期
令和3年度 春期
令和元年度 秋期
平成30年度 秋期
平成29年度 秋期
平成28年度 秋期
平成27年度 秋期
平成26年度 秋期
平成25年度 秋期
平成24年度 秋期
平成23年度 秋期
平成22年度 秋期
平成21年度 秋期
科目B-1(午後Ⅰ)
令和7年度 春期
令和6年度 春期
令和5年度 春期
令和4年度 春期
令和3年度 春期
令和元年度 秋期
平成30年度 秋期
平成29年度 秋期
平成28年度 秋期
平成27年度 秋期
平成26年度 秋期
平成25年度 秋期
平成24年度 秋期
平成23年度 秋期
平成22年度 秋期
平成21年度 秋期
科目B-2(午後Ⅱ)
令和7年度 春期
令和6年度 春期
令和5年度 春期
令和4年度 春期
令和3年度 春期
令和元年度 秋期
平成30年度 秋期
平成29年度 秋期
平成28年度 秋期
平成27年度 秋期
平成26年度 秋期
平成25年度 秋期
平成24年度 秋期
平成23年度 秋期
平成22年度 秋期
平成21年度 秋期
この試験について すべての試験区分の一覧