‹ ぱすてく

システムアーキテクト試験

平成30年度 秋期 科目A-2(午前Ⅱ)

平成30年度 秋期に実施されたシステムアーキテクト試験 午前Ⅱ(2026年度からの科目A-2)の全25問に,運営者が独自に書いた解説を付けています。正解の理由に加えて,多くの問題でほかの選択肢がなぜ誤りなのかも説明しています。

この試験について:システムアーキテクト試験について

この年度を解いてみる

問1

CRUD マトリックスの説明はどれか。

正解 イ

解説

CRUD マトリックスは,業務の機能(プロセス)を行,エンティティ(データ)を列にとり,各機能が各エンティティに対して生成(Create),参照(Read),更新(Update),削除(Delete)のどの操作をするかを記入して一覧化した表である。データを生成する機能や使われないデータの有無などを確認できる。イが該当する。

アは条件と動作の組合せを表形式で表す決定表(デシジョンテーブル),ウは機能と入出力データの関係を示してデータの流れを明確にする DFD,エはデータをエンティティ,関連,属性でモデル化する E-R 図の説明である。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)

問2

共通フレーム 2013 によれば,システム要件の分析を供給者に委託した場合,要件の分析結果を承認する権限をもつのは誰か。

正解 エ

解説

共通フレーム 2013 の元になった JIS X 0160:2012(ISO/IEC 12207:2008)の取得プロセスでは,取得者がシステム又はソフトウェアの要件の分析を供給者に委託したとしても,要件の分析結果を承認する権限は取得者がもつとされている。システムを発注し受け入れる側が,要件の内容に責任をもつという考え方である。エが正しい。

イの開発者は,委託を受けて要件の分析や開発を行う供給者側の役割であり,分析結果を自ら承認する立場ではない。アの運用者はシステムを運用する役割,ウの企画者はシステム化の構想や計画を立てる役割であり,いずれも要件の分析結果の承認権限をもつ者として規定されてはいない。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)

用語解説:JIS X 0160 と共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス)

問3

開発のための CMMI 1.3 版のプロセス領域のうち,運用の考え方及び関連するシナリオを確立し保守するプラクティスを含むものはどれか。

正解 エ

解説

CMMI for Development 1.3 版の要件開発(RD)プロセス領域には,運用の考え方及び関連するシナリオを確立し保守する固有プラクティス(SP 3.1 Establish Operational Concepts and Scenarios)が含まれる。製品が使われる場面を想定したシナリオを作り,利害関係者のニーズを明らかにして要件を洗練するためのものである。エが該当する。

アの技術解(TS)は要件を満たす解を選定,設計,実装するプロセス領域,イの検証(VER)は作業成果物が指定された要件を満たすことを確認するプロセス領域,ウの成果物統合(PI)は構成要素から製品を組み立て,統合した製品が正しく動作することを確認して引き渡すプロセス領域である。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)

問4

システムやソフトウェアの品質に関する主張の正当性を裏付ける文書である“アシュアランスケース”を導入する目的として,適切なものはどれか。

正解 エ

解説

アシュアランスケースは,システムやソフトウェアが安全性や信頼性などの目標を満たすという主張を,それを支える根拠(証拠)と論理的な議論によって構造的に示す文書である。GSN(Goal Structuring Notation)などの表記法で,主張を下位の主張に分解し,テスト結果や解析結果などの証拠と結び付ける。エが適切である。

アはガイドワードを用いて設計意図からの逸脱を分析する HAZOP,イは構成要素の故障モードからボトムアップでシステムへの影響を解析する FMEA,ウは望ましくない事象からトップダウンで原因を解析する FTA の説明である。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)

問5

ソフトウェア要件定義プロセスで定義する内容の具体例として,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

ソフトウェア要件定義では,システム要件のうちソフトウェアに割り当てられたものを基に,ソフトウェア品目の機能,外部インタフェース,データなどの要件を定義する。サブシステム間で所属情報を受け渡すための共通の通信プロトコルは,ソフトウェア品目の外部インタフェースの要件に当たる。アが適切である。

イの画面の応答時間は,利用者から見たシステム全体の性能の要件であり,システム要件定義で定義する。ウのソフトウェアで実現する部分と人手作業の組合せを決めるのは,システム要件をハードウェア,ソフトウェア,手作業に割り当てるシステム方式設計の内容である。エの受付端末の設置場所は,ハードウェアや設備に関する要件であり,ソフトウェアの要件ではない。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)

問6

JIS X 25010:2013(システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)-システム及びソフトウェア品質モデル)で定義されたシステム及び/又はソフトウェア製品の品質特性に関する説明のうち,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

JIS X 25010:2013 は,機能適合性を“明示された状況下で使用するとき,明示的ニーズ及び暗黙のニーズを満足させる機能を,製品又はシステムが提供する度合い”と定義している。アが適切である。

イの“明記された状態(条件)で使用する資源の量に関係する性能の度合い”は性能効率性の定義である。ウの“有効性,効率性及び満足性をもって明示された目標を達成するために,明示された利用者が製品又はシステムを利用することができる度合い”は使用性の定義(利用時の品質に関する記述)であり,エの“明示された時間帯で,明示された条件下に,システム,製品又は構成要素が明示された機能を実行する度合い”は信頼性の定義である。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)

用語解説:JIS X 25010(システム及びソフトウェア品質モデル)

問7

ソフトウェアの要件定義や分析・設計で用いられる技法に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 ア

解説

決定表(デシジョンテーブル)は,条件とその組合せ,それに対応する処理を表形式で対比させて論理を表現するもので,複雑な条件判定を漏れなく整理できるため,要件定義の記述手段として有効である。アが適切である。

イの“状態”とその遷移の“要因”との関係を表すのは状態遷移図で,構造化チャートはプログラムの階層構造を表す図である。ウの DFD にコントロール変換とコントロールフローを付加したものは,リアルタイムシステムの分析に使う制御フロー図(拡張 DFD)で,状態遷移図ではない。エのデータの源泉,吸収,流れ,処理,格納を基本要素とするのは DFD(データフロー図)である。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)

問8

ソフトウェアを実装する一連のプロセスのアクティビティで実施するタスクの内容のうち,ソフトウェア構築プロセスのものはどれか。

正解 ウ

解説

ソフトウェア構築プロセスでは,各ソフトウェアユニット及びデータベースを作成し,それらをテストするための手順とデータを作成する。さらにユニットのテストを行い,要求事項を満たすことを確認する。ウが該当する。

アのソフトウェアコンポーネントをコーディングできるソフトウェアユニットまで詳細化して要求事項を割り当てる作業と,イのソフトウェア品目の外部インタフェースやコンポーネント間のインタフェースの詳細を設計する作業は,ソフトウェア詳細設計プロセスのタスクである。エのユニットとコンポーネントを結合し,集合体ごとにテストするのはソフトウェア結合プロセスのタスクである。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)

問9

ブラックボックステストにおけるテストケースの設計に関する記述として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

ブラックボックステストは,プログラムの内部構造を考慮せず,仕様書に記述された機能に基づいて,入力と出力の関係が正しいかを確認するテストである。プログラムが果たすべき機能を仕様書で調べてテストケースを設計するウが適切である。

エのプログラムの全命令が少なくとも1回は実行されるように設計するのは,内部構造に着目するホワイトボックステストの命令網羅である。アの無作為な抽出やイの使用頻度が高い実データの抽出だけでは,仕様の境界値や異常な入力を網羅的に確かめることができない。

同値分割と限界値分析 1ページに30件ずつ印字するプログラムの例。印字件数を,0件,1〜30件(1ページ),31件以上(2ページ以上)の同値クラスに分ける。同値分割では各クラスから代表の値(例えば15件,45件)を1つずつ選ぶ。限界値分析では誤りの多い境目の値,0件・1件・30件・31件を選ぶ。 1〜30件(1ページ) 31件〜(2ページ以上) 0件 0 1 30 31 15 45 限界値分析:境目の両側 0・1・30・31 同値分割:各グループの代表(15,45 など) 印字する件数
同値分割は各グループの代表,限界値分析は境目の両側を選ぶ

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)

用語解説:テスト技法(ブラックボックス・ホワイトボックス)

問10

製品を出荷前に全数検査することによって,出荷後の故障品数を減少させ,全体の費用を低減したい。次の条件で全数検査を行ったときに低減できる費用は何万円か。ここで,検査時に故障が発見された製品は修理して出荷するものとする。

〔条件〕

正解 ア

解説

全数検査を実施すると,検査費用は 500個×1万円=500万円。検査で見つかる故障品は 500×2%=10個で,出荷前の修理費用は 10×50万円=500万円。それでも出荷後に故障する製品が 500×1%=5個あり,その修理費用は 5×200万円=1,000万円。合計は 500+500+1,000=2,000万円になる。

全数検査をしなければ,出荷後に 500×3%=15個が故障し,修理費用は 15×200万円=3,000万円。低減できる費用は 3,000−2,000=1,000万円で,アが正しい。検査費用や出荷前の修理費用を足し忘れると,低減額を大きく見誤る。

全数検査をする・しないの費用の比較 全数検査をすると,検査費用 500 個×1 万円=500 万円,出荷前に見つかる 10 個の修理 500 万円,それでも出荷後に故障する 5 個の修理 1,000 万円で,合計 2,000 万円。しなければ出荷後に 15 個が故障して 3,000 万円。低減できるのは 1,000 万円。 検査しない 出荷後の修理 15 個 3,000 全数検査 検査 500 出荷前 500 出荷後 1,000 2,000 単位:万円。検査で 10 個(2%)を出荷前に直し,出荷後は 5 個(1%) 低減できる費用 = 3,000 − 2,000 = 1,000 万円(ア) 検査費用や出荷前の修理を足し忘れると,低減額を大きく見誤る
3,000 万円 − 2,000 万円 = 1,000 万円の低減

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)

問11

次の流れ図において,①→②→③→⑤→②→③→④→②→⑥ の順に実行させるために,①において m と n に与えるべき初期値 a と b の関係はどれか。ここで,a,b はともに正の整数とする。

流れ図。開始→①(a→m,b→n)→②(m:n の比較)。②で=なら⑥(m の値を印字)→終了。②で≠なら③(m:n の比較)。③で>なら④(m-n→m),③で<なら⑤(n-m→n)。④と⑤の後は②の直前に戻る。

正解 エ

解説

流れ図は,m と n が等しくなるまで大きい方から小さい方を引き続ける(ユークリッドの互除法による最大公約数の計算)。指定の順序では,1 回目の③で m<n なので⑤で n-m→n,2 回目の③で m>n なので④で m-n→m となり,その後の②で m=n となる必要がある。3a=2b となる a=2,b=3 で試すと,m=2,n=3 → ⑤で n=1 → ④で m=1 → ②で m=n となり,指定どおりに実行される。エになる。

アの a=2b(例 a=2,b=1)とウの 2a=3b(例 a=3,b=2)は,最初の③で m>n となり④に進むので順序が合わない。イの 2a=b(例 a=1,b=2)は,⑤で n=1 となった直後の②で m=n となり,④を通らずに⑥へ進む。

a=2,b=3 で流れ図をたどる m と n が等しくなるまで,大きいほうから小さいほうを引く。m=2,n=3 で始めると,① の後 ② で m≠n,③ で m<n なので ⑤ で n=3−2=1。② で m≠n,③ で m>n なので ④ で m=2−1=1。② で m=n となり ⑥ で印字する。指定の順 ①→②→③→⑤→②→③→④→②→⑥ になるので,3a=2b が答え。 手順 m n 判定 ① 2 3 初期値 ②③ 2 3 m≠n,m<n ⑤ 2 1 n ← 3−2 ②③ 2 1 m≠n,m>n ④ 1 1 m ← 2−1 ②⑥ 1 1 m=n → 印字 a=2,b=3(3a=2b)で指定どおりの順になる
③ で一度目は m<n,二度目は m>n になる組を選ぶ

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)

問12

共通フレーム 2013 において,システム適格性確認テストで適合を評価する対象となるのは,どのアクティビティで定義又は設計した内容か。

正解 イ

解説

共通フレーム 2013 のシステム適格性確認テストプロセスでは,システムに対して指定された適格性確認要件に従ってテストを行い,システム要件のそれぞれについて実装が適合しているかを評価して,システムの納入準備ができていることを確認する。したがって,適合を評価する対象はシステム要件定義で定義した内容であり,イが正しい。

開発の各段階とテストを V 字モデルで対応させると,アのシステム方式設計で設計した内容はシステム結合テスト,ウのソフトウェア方式設計で設計した内容はソフトウェア結合テスト,エのソフトウェア要件定義で定義した内容はソフトウェア適格性確認テストで確認するものに当たる。

V 字モデル(共通フレーム) 左側を上から下へ,システム要件定義・システム方式設計・ソフトウェア要件定義・ソフトウェア方式設計・ソフトウェア詳細設計と詳細にしていき,ソフトウェア構築のあと,右側を下から上へ,ソフトウェアユニットテスト・ソフトウェア結合テスト・ソフトウェア適格性確認テスト・システム結合テスト・システム適格性確認テストと進める。各テストは同じ高さの設計で決めたことを確かめる。 システム 要件定義 システム 適格性確認テスト システム 方式設計 システム 結合テスト ソフトウェア 要件定義 ソフトウェア 適格性確認テスト ソフトウェア 方式設計 ソフトウェア 結合テスト ソフトウェア 詳細設計 ソフトウェア ユニットテスト ソフトウェア構築
テストは,同じ高さの設計で決めたことを確かめる

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)

用語解説:JIS X 0160 と共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス)

問13

スクラムを適用したアジャイル開発において,スクラムチームで何がうまくいき,何がうまくいかなかったのかを議論し,継続的なプロセス改善を促進するアクティビティはどれか。

正解 イ

解説

スプリントレトロスペクティブは,スプリントの最後に行うイベントで,スクラムチームが今回のスプリントでの人,関係,プロセス,ツールなどについて,何がうまくいき,何がうまくいかなかったかを振り返り,次のスプリントで実行する改善策を決める。継続的なプロセス改善を促す場である。イが該当する。

アのスプリントプランニングは,スプリントの開始時に,そのスプリントで何を達成するか,どのように作業するかを計画するイベントである。ウのスプリントレビューは,スプリントで作成したインクリメントを利害関係者に示して検査し,今後の対応を話し合うイベント,エのデイリースクラムは,開発者が毎日短時間で進捗とその日の計画を確認するイベントである。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)

用語解説:アジャイル開発(スクラム・XP)

問14

共通フレーム 2013 によれば,要件定義プロセスの活動内容には,利害関係者の識別,要件の識別,要件の評価,要件の合意などがある。このうちの要件の識別において実施する作業はどれか。

正解 エ

解説

共通フレーム 2013 の要件定義プロセスの“要件の識別”では,利害関係者から要求(ニーズ,要望,期待)や制約条件を引き出し,想定される運用シナリオなどを明らかにして,利害関係者の要件を定める。対応する JIS X 0160:2012 の利害関係者要求事項定義プロセスでも,要求事項の識別に,要求と制約条件の抽出や運用シナリオの定義が含まれる。エが該当する。

アのライフサイクルの全期間を通じた関係者の明確化は“利害関係者の識別”,イの抽出した要件の矛盾や曖昧さをなくして一貫性のある集合に整理するのは“要件の評価”,ウの問題点の解決方法を利害関係者に説明して合意を得るのは“要件の合意”で行う作業である。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)

用語解説:JIS X 0160 と共通フレーム(ソフトウェアライフサイクルプロセス)

問15

WTO 政府調達協定の説明はどれか。

正解 ウ

解説

WTO 政府調達協定は,政府機関などによる物品やサービスの調達について,締約国の供給者を内国の供給者と差別しない内外無差別の原則を定め,市場を開放して国際的な競争の機会を増大させるとともに,苦情申立て,協議,紛争解決の手続を定めた協定である。ウが該当する。

アは EU の特定有害物質の使用を制限する RoHS 指令,イは国などの公的機関による環境物品等の調達を推進するグリーン購入法の説明である。エのパリ条約やベルヌ条約の遵守と知的財産権保護の最恵国待遇を定めているのは,WTO の TRIPS 協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)である。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)

問16

NRE(Non-Recurring Expense)の例として,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

NRE(Non-Recurring Expense)は,製品を開発する際に 1 回だけ発生する費用のことで,非反復費用とも呼ばれる。デバイスの設計,試作,量産の準備(金型やマスクの製作など)に掛かる経費がこれに当たり,製品 1 個ごとに繰り返し発生する材料費などの費用と区別される。イが適切である。

アの保守及び管理の費用は,運用している間に継続して発生する費用である。ウは損害を受けたときの金銭のやり取りで損害賠償金に当たる。エの特許使用の対価は,ライセンス契約に基づいて支払うロイヤリティ(実施料)である。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)

問17

IT 投資の評価手法のうち,バランススコアカードを用いた手法を説明したものはどれか。

正解 ウ

解説

バランススコアカードは,財務,顧客,内部業務プロセス,学習と成長の四つの視点ごとに目標と業績評価指標を設定し,戦略の実行状況を多面的に評価する手法である。IT 投資の評価に用いると,財務的な効果だけでなく,経営戦略との適合性を含めて投資効果を評価できる。ウが該当する。

アはキャッシュフローから正味現在価値を求める NPV 法による評価である。イは IT 投資を性質やリスクでカテゴリに分けて配分を管理する IT ポートフォリオによる評価,エは将来の選択肢の価値をオプション価格付け理論で評価するリアルオプションによる評価である。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)

用語解説:バランススコアカードと KPI・KGI・CSF 投資評価(NPV・IRR・ROI)

問18

ストレージのインタフェースとして用いられる FC(ファイバチャネル)の特徴として,適切なものはどれか。

正解 ウ

解説

FC(ファイバチャネル)は,サーバとストレージを高速に接続するためのシリアル伝送のインタフェースで,SAN の構築に用いられる。名前にファイバとあるが,伝送媒体には光ファイバケーブルのほか,銅線の電気ケーブルも用いることができる。ウが適切である。

アの TCP/IP の上位で SCSI コマンドを運ぶのは iSCSI であり,FC は TCP/IP を使わない独自のプロトコル体系である。イについて,FC の接続形態には,スイッチを用いるファブリック型のほか,ポイントツーポイント型やループ型(アービトレーテッドループ)もある。エについて,FC はシリアル伝送の物理層をもち,SCSI はその上位で SCSI コマンドを運ぶプロトコルとして使われるもので,パラレル SCSI を物理層として用いるものではない。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)

問19

1 台の CPU の性能を 1 とするとき,その CPU を n 台用いたマルチプロセッサの性能 P が,P = n/(1+(n-1)a) で表されるとする。ここで,a はオーバヘッドを表す定数である。例えば,a = 0.1,n = 4 とすると,P ≒ 3 なので,4 台の CPU から成るマルチプロセッサの性能は約 3 になる。この式で表されるマルチプロセッサの性能には上限があり,n を幾ら大きくしても P はある値以上には大きくならない。a = 0.1 の場合,P の上限は幾らか。

正解 イ

解説

P=n/(1+(n−1)a) の分子と分母を n で割ると,P=1/(1/n+a−a/n) となる。n を幾らでも大きくすると,1/n と a/n はいずれも 0 に近づくので,P は 1/a に近づく。

a=0.1 のとき,1/a=1/0.1=10 なので,マルチプロセッサの性能は幾ら CPU を増やしても 10 以上には大きくならない。イになる。

例えば n=100 でも P=100/(1+99×0.1)=100/10.9≒9.2 であり,10 には届かない。

マルチプロセッサの性能の上限 P=n÷(1+(n−1)a) で a=0.1 のとき,n=4 で P は約3.1,n=20 で約6.9,n=100 でも約9.2 にとどまる。n を大きくすると P は 1÷a=10 に近づくが,それを超えない。 台数 n 性能 P 10 上限 1÷a=10 n=4:3.1 n=20:6.9 n=100:9.2 5 0 a=0.1 の場合
台数を増やしても,オーバヘッド a で決まる 1÷a に頭打ちになる

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)

問20

IT インフラストラクチャのキャパシティプランニングの目的として,最も適切なものはどれか。

正解 エ

解説

キャパシティプランニングは,IT インフラストラクチャに求められるサービスの需要や将来の業務量の増加を予測し,CPU,メモリ,ストレージ,ネットワークなどのリソースを必要なときに必要な分だけ用意する計画を立てる活動である。過剰な投資を避けながら,性能の不足を防ぐことを目的とする。エが適切である。

アは業務負荷から必要な人数を見積もる要員計画である。イはセキュリティリスクが顕在化したときの対応方針や対策を定めるインシデント対応計画,ウは 24 時間 365 日稼働のために冗長化するサーバを決める可用性(冗長構成)の設計であり,いずれもリソースの容量の計画ではない。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)

問21

関係モデルの候補キーの説明のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

関係モデルの候補キーは,関係の属性(又は属性の組)のうち,その値によってタプルを一意に識別でき,かつ余分な属性を含まない(極小である)ものである。したがって,候補キーの値はタプルごとに異なる。イが適切である。

アについて,候補キーはその関係自身の属性の中から選ぶ。ウは逆で,主キーは候補キーの中から一つを選んだものである。エについて,一つの関係に候補キーが複数あってもよく,その中から主キーとして選ばれなかったものは代替キーと呼ばれる。

関数従属から候補キーを求める 関係 R(A,B,C,D,E,F)で A→B,C→D,C→E,{A,C}→F が成り立つ。A が決まると B が,C が決まると D と E が,A と C の両方が決まると F が決まる。A と C で全ての属性が決まり,A だけ・C だけでは足りないので,候補キーは {A,C}。 A B C D E F A→B C→D,C→E {A,C}→F(両方そろって F が決まる) A と C が決まれば全部決まる → 候補キーは {A,C}
矢印の出どころをまとめると,全部を決められる最小の組(候補キー)が見える

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)

用語解説:データベースの設計(正規化・E-R 図・参照制約)

問22

磁気ディスク装置や磁気テープ装置などの外部記憶装置とサーバを,通常の LAN とは別の高速な専用ネットワークで接続してシステムを構成するものはどれか。

正解 エ

解説

SAN(Storage Area Network)は,サーバと外部記憶装置を,業務用の LAN とは別に用意した高速な専用ネットワークで接続する構成。ファイバチャネルなどを使い,記憶装置へのアクセスが LAN の通信と干渉しない。

アの DAFS はネットワーク越しにファイルを共有するためのプロトコル,イの DAS はサーバに記憶装置を直結する方式,ウの NAS は通常の LAN に接続して使うファイルサーバ専用機であり,いずれも専用ネットワークで接続する構成ではない。

DAS・SAN・NAS の違い DAS はサーバにディスクを直接つなぎ,ブロック単位で読み書きする。SAN は LAN とは別の専用ネットワーク(ファイバチャネルなど)でサーバとストレージをつなぎ,ブロック単位で読み書きする。NAS はふだんの LAN につなぐファイルサーバで,NFS や SMB でファイル単位で共有する。 DAS SAN NAS サーバ ディスク 直接つなぐ サーバ サーバ FC スイッチ ストレージ LAN とは別の専用網 PC サーバ ふだんの LAN NAS NFS・SMB で共有 ブロック単位 ブロック単位 ファイル単位 SAN は大量の読み書きが LAN を混ませない
見分けるのは「どの線でつなぐか」と「ブロックかファイルか」

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)

用語解説:SAN(Storage Area Network)

問23

格納型クロスサイトスクリプティング(Stored XSS 又は Persistent XSS)攻撃に該当するものはどれか。

正解 ア

解説

格納型(Stored/Persistent)クロスサイトスクリプティングは,攻撃者が Web サイトの掲示板などに攻撃用スクリプトを含むデータを書き込んでサーバに保存させ,そのページを閲覧した利用者の Web ブラウザでスクリプトを実行させる攻撃である。利用者に罠のリンクを踏ませなくても,閲覧しただけで被害が生じる。アが該当する。

イは,不正なスクリプトを含むリクエストを送らせるリンクを利用者にクリックさせ,その応答に含まれたスクリプトを実行させる反射型クロスサイトスクリプティングである。ウは乗っ取った多数の PC から大量のリクエストを送る DDoS 攻撃である。エは送信元を攻撃対象に偽装した DNS リクエストで大量の応答を送り付ける DNS リフレクション(DNS amplification)攻撃である。

XSS・CSRF・クリックジャッキング XSS(反射型)は,スクリプトを含む罠のリンクを利用者に開かせ,脆弱なサイトがそのスクリプトをそのままページに埋めて返すので,利用者のブラウザで実行される。CSRF は,ログイン中の利用者に罠のページを開かせ,その利用者の Cookie 付きで意図しない要求(書込み・送金など)を正規のサイトに送らせる。クリックジャッキングは,透明にした正規サイトを罠のページに重ね,別のボタンだと思わせて押させる。 XSS(反射型) 攻撃者 利用者のブラウザ 脆弱なサイト ① 罠のリンク ② 開く ③ そのまま返す 埋め込まれたスクリプトが利用者のブラウザで動く(Cookie を盗むなど) 対策:出力時のエスケープ,Cookie の HttpOnly 属性 CSRF 罠のページ 利用者のブラウザ 正規のサイト ログイン中 ① 開く ② 送信させる ③ Cookie 付き 本人が操作したものとして,書込みや送金が行われる 対策:推測できないトークンを埋めて確かめる,SameSite 属性 クリックジャッキング プレゼント 上に透明な正規サイト(「退会する」など)を 重ねて,下のボタンだと思わせて押させる 対策:X-Frame-Options,CSP の frame-ancestors
XSS はサイトの出力が汚される,CSRF は要求が偽造される,クリックジャッキングは画面が重ねられる

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)

用語解説:XSS・CSRF・クリックジャッキング

問24

情報技術セキュリティ評価のための国際標準であり,コモンクライテリア(CC)と呼ばれるものはどれか。

正解 ウ

解説

コモンクライテリア(CC)は,IT 製品やシステムのセキュリティ機能が適切に設計され実装されているかを評価するための国際標準で,ISO/IEC 15408 として規格化されている。日本では IPA が認証機関となる IT セキュリティ評価及び認証制度(JISEC)の評価基準として用いられている。ウが該当する。

アの ISO 9001 は品質マネジメントシステムの要求事項,イの ISO 14004 は環境マネジメントシステムの実施に関する一般指針,エの ISO/IEC 27005 は情報セキュリティのリスクマネジメントに関する指針を定めた規格である。

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)

用語解説:ISO/IEC 15408(コモンクライテリア)と FIPS 140 JIS Q 27000 シリーズ(情報セキュリティマネジメント)

問25

Web アプリケーションにおけるセキュリティ上の脅威とその対策に関する記述のうち,適切なものはどれか。

正解 イ

解説

SQL インジェクションは,入力値に SQL 文の一部を紛れ込ませて,データベースへの問合せを不正に変える攻撃である。プレースホルダを使うと,SQL 文の構造を先に確定させてから入力値をパラメタとして埋め込むので,入力値が SQL 文の一部として解釈されなくなる。IPA の“安全なウェブサイトの作り方”でも根本的な対策として示されている。イが適切である。

アのセッション ID に推測困難な乱数を使うのはセッションハイジャックの対策,エのシェルを起動できないようにするのは OS コマンドインジェクションの対策であり,組合せが入れ替わっている。ウのファイルを外部から直接参照できないようにするのは,ディレクトリトラバーサルなどによる不正なファイル参照の対策であり,クロスサイトスクリプティングの対策は出力時のエスケープ処理などである。

SQL インジェクションとプレースホルダ 入力を文字列としてつなげて SQL 文を作ると,入力の「' OR '1'='1」が文の一部になり,条件が常に真になって全員の行が返る。プレースホルダを使うと SQL 文の形が先に決まり,入力はまるごと1つの値として当てはめられるので,命令として解釈されない。 文字列をつなげて SQL 文を作ると 入力:' OR '1'='1 SELECT * FROM 会員 WHERE id = '' OR '1'='1' 入力の引用符で文が閉じ,OR 以下が条件に加わる → 常に真で全員分が返る プレースホルダを使うと SELECT * FROM 会員 WHERE id = ? 形が先に決まる ' OR '1'='1 ← 1つの値として入る 入力 「id が ' OR '1'='1 の会員」を探すだけになる
根本の対策は,SQL 文の形を先に確定させるプレースホルダ

出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)

用語解説:インジェクション攻撃(SQL・OS コマンド) XSS・CSRF・クリックジャッキング