平成24年度 秋期に実施されたシステムアーキテクト試験
午前Ⅱの全25問です。問題文・正解・解説をそのまま読めます。
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問1
DFD で用いられる図形要素を列記したものはどれか。
ア 関連,実体,データストア
イ 関連,データストア,データフロー
ウ 源泉と吸収,実体,プロセス
エ 源泉と吸収,データフロー,プロセス 正解
正解 エ
解説
DFD(データフロー図)は,業務やシステムをデータの流れに着目して表す図で,データの流れを表すデータフロー(矢印),データを加工・変換するプロセス(円),データを蓄えるデータストア(二本線),システムの外部にあるデータの発生源や行き先を表す源泉と吸収(外部実体,四角)の四つの図形要素で表す。この中から三つを挙げたエが正しい。
アとウの“実体”と,アとイの“関連”は,データを実体(エンティティ)とその間の関連(リレーションシップ)で表す E-R 図の要素であり,DFD の図形要素ではない。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2
ソフトウェア要求モデルに関する記述のうち,ペトリネットモデルの説明として,適切なものはどれか。
ア 外界の事象をデータ構造として表現する,データモデリングのアプローチをとる。その表現は,エンティティ,関連及び属性で構成される。
イ システムの機能を入力データから出力データへの変換とみなすとともに,機能を段階的詳細化に基づき階層的に分割していく。
ウ 対象となる問題領域に対して,プロセスではなくオブジェクトを用いて解決を図るというアプローチをとる。
エ 並行して進行する事象間の同期を表すことができ,その構造は 2 種類の節点をもつ有向2部グラフで表される。 正解
正解 エ
解説
ペトリネットは,プレース(状態や条件を表す節点)とトランジション(事象を表す節点)の 2 種類の節点を有向の枝で結んだ有向 2 部グラフで,プレースに置いたトークンがトランジションの発火によって移動する様子で,システムの振る舞いを表す。並行して進む事象の間の同期や排他,因果関係を表現できるので,並行処理を行うシステムの分析に用いられる。エが該当する。
アのエンティティ,関連及び属性でデータ構造を表すのは E-R モデル,イの入力から出力への変換として機能をとらえ段階的に階層分割していくのは構造化分析(DFD を用いる手法),ウのプロセスではなくオブジェクトを中心に問題領域をとらえるのはオブジェクト指向分析の説明である。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問2(表記を一部改変)
問3
要求分析・設計技法のうち,BPMN の説明はどれか。
ア イベント・アクティビティ・分岐・合流を示すオブジェクトと,フローを示す矢印などで構成された図によって,業務プロセスを表現する。 正解
イ 木構造に基づいた構造化ダイアグラムであり,トップダウンでの機能分割やプログラム構造図,組織図などを表現する。
ウ システムの状態が外部の信号や事象に対してどのように推移していくかを図で表現する。
エ プログラムをモジュールに分割して表現し,モジュールの階層構造と編成,モジュール間のインタフェースを記述する。
正解 ア
解説
BPMN(Business Process Model and Notation)は,OMG が標準化した業務プロセスの表記法である。イベント,アクティビティ,ゲートウェイ(分岐・合流)などのフローオブジェクトを,シーケンスフローなどの矢印で結んで業務プロセスを図に表す。業務担当者にも技術者にも理解しやすいフローチャートに似た表記を目指している。アが該当する。
イは木構造で機能や組織の階層を上から下へ分割して表す構造化チャート(階層図)の説明である。ウは外部の信号や事象によるシステムの状態の推移を表す状態遷移図,エはプログラムをモジュールに分割し,その階層構造とモジュール間のインタフェースを表す構造化設計のモジュール構造図の説明である。なお,BPMN は 1.x 版では Business Process Modeling Notation の略だったが,2.0 版で現在の名称になった。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問3(表記を一部改変)
問4
ソフトウェアパターンのうち,GoF のデザインパターンの説明はどれか。
ア Java のパターンとして引数オブジェクト,オブジェクトの可変性などで構成される。
イ オブジェクト指向開発のためのパターンとして生成,構造,振舞いの 3 カテゴリから構成される。 正解
ウ 構造,分散システム,対話型システム及び適合型システムの 4 カテゴリから構成される。
エ 抽象度の異なる要素を分割して階層化するための Layers,コンポーネント分割のための Broker などで構成される。
正解 イ
解説
GoF(Gang of Four)のデザインパターンは,オブジェクト指向設計でよく現れる問題と解決策を23のパターンにまとめたもので,オブジェクトの生成に関わる“生成”,クラスやオブジェクトの組み合わせ方に関わる“構造”,オブジェクト間の責任分担や処理の流れに関わる“振る舞い”の三つに分類される。イが正しい。
ウとエは,ソフトウェアアーキテクチャのパターン集である POSA(Pattern-Oriented Software Architecture)の説明で,Layers や Broker はそのアーキテクチャパターンである。アは Java に特化した実装上の指針の説明で,GoF のパターンは特定の言語に依存しない。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問4(表記を一部改変)
問5
組込みシステムにおけるコデザインの説明として適切なものはどれか。
ア 開発工程を分析,設計,開発,検証の工程に分けて順次行い,検証から再度分析に戻り,この工程を繰り返す手法
イ 上流工程段階で,ハードウェアとソフトウェアとの機能分担を協調シミュレーションによって十分に検証する手法 正解
ウ ハードウェアとソフトウェアとの開発を独立に並行して行った後,両者を組み合わせて統合テストを行うことで,初めて仕様を満たしているかどうかの検証を行う手法
エ 要求定義,設計,製作,試験,保守の順序で開発を進め,各工程でそれぞれの成果物を確認し,前工程には戻らないことを前提に各工程を完了させていく手法
正解 イ
解説
コデザイン(ハードウェア/ソフトウェア協調設計)は,組込みシステムの開発で,ハードウェアとソフトウェアを別々に作り込むのではなく,上流工程の段階から両者をまとめて設計し,どの機能をハードウェアで実現し,どの機能をソフトウェアで実現するかの分担を,協調シミュレーションによって検証しながら決めていく手法である。後工程での手戻りを減らせる。イが適切である。
アは分析から検証までを繰り返す反復型の開発手法,エは前工程に戻らないことを前提に工程を順に完了させるウォーターフォールモデルの説明である。ウはハードウェアとソフトウェアを独立に開発して最後に統合する従来の進め方で,統合テストまで仕様との不整合が分からない。コデザインはこの問題を解消するための手法である。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問5(表記を一部改変)
問6
図において,“営業状況を報告してください”という同じ指示(メッセージ)に対して,営業課長と営業部員は異なる報告(サービス)を行っている。オブジェクト指向において,このような特性を表す用語はどれか。
正解 ウ
解説
多相性(ポリモーフィズム)は,同じメッセージを送っても,受け取るオブジェクトのクラスによって異なる振る舞いをする性質である。図では,営業部長が同じ“営業状況を報告してください”という指示を送り,営業課長は課全体の目標と実績を,営業部員は個人の目標と実績と担当顧客状況を報告している。受け手ごとに応答が異なるので,ウが該当する。
アのカプセル化は,データとそれを操作する手続を一つにまとめ,内部を外部から隠蔽すること,イの継承は,上位クラスの属性や操作を下位クラスが引き継ぐ仕組み,エの抽象化は,対象から共通する本質的な性質を取り出して,細部を捨ててモデル化することである。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問6(表記を一部改変)
問7
データが昇順に並ぶようにリストへデータを挿入するサブルーチンを作成した。このサブルーチンのテストに用いるデータの組合せのうち,網羅性の観点から適切なものはどれか。ここで,データは左側から順にサブルーチンへ入力する。
ア 1,3,2,4
イ 3,1,4,2 正解
ウ 3,4,2,1
エ 4,3,2,1
正解 イ
解説
昇順のリストへデータを挿入するサブルーチンでは,空のリストへの挿入,先頭への挿入,末尾への挿入,途中への挿入の各場合を網羅してテストする必要がある。イの 3,1,4,2 では,3 は空のリストへ,1 は先頭へ,4 は末尾へ,2 は 1 と 3 の間へ挿入され,全ての場合を確認できる。イが適切である。
アの 1,3,2,4 は,空のリスト,末尾,途中,末尾への挿入で,先頭への挿入を確認できない。ウの 3,4,2,1 は,空のリスト,末尾,先頭,先頭への挿入で,途中への挿入を確認できない。エの 4,3,2,1 は,空のリストへの挿入の後は全て先頭への挿入になる。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問7(表記を一部改変)
問8
プログラムテスト仕様書の作成手順として,作業項目を適切な順序に並べたものはどれか。
a テスト環境,テスト方法などのプログラムテストに関する概要を記述する。 b テストケースごとのテストデータの作成と予想結果の作成を行う。 c テストケースを設定する。 d テスト項目を全て列挙する。 e テストを実行するときの個々の詳細な手順を設定する。
ア a,d,c,b,e 正解
イ a,d,e,c,b
ウ a,e,c,b,d
エ a,e,d,c,b
正解 ア
解説
プログラムテスト仕様書は,全体から詳細へと順に具体化して作成する。まず a でテスト環境やテスト方法などの概要を記述し,d でテストすべき項目を全て列挙する。次に c で各テスト項目を確かめるためのテストケースを設定し,b でテストケースごとのテストデータと予想結果を作成する。最後に e で,テストを実行するときの個々の詳細な手順を設定する。a,d,c,b,e の順となり,アが適切である。
イとエはテストケースを設定する前に実行手順を決めており,何をどのデータで確かめるかが決まらないうちに手順を作ることになる。ウはテスト項目の列挙を最後に置いており,テストケースやテストデータを作る根拠となる項目が後から決まることになるので,いずれも順序が適切でない。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問8(表記を一部改変)
問9
プログラムのテストに関する記述のうち,適切なものはどれか。
ア 静的テストとは,プログラムを実行することなくテストする手法であり,コード検査,静的解析などがある。 正解
イ 単体テストでは,スタブから被検査モジュールを呼び出し,被検査モジュールから呼び出されるモジュールの代わりにドライバを使用する。
ウ トップダウンテストは,仮の下位モジュールとしてのスタブを結合してテストするので,テストの最終段階になるまで全体に関係するような欠陥が発見されにくい。
エ ブラックボックステストでは,分岐,反復などの内部構造を検証するので,全ての経路を通過するように,テストケースを設定する。
正解 ア
解説
静的テストは,プログラムを実行せずに,ソースコードや設計書を調べて欠陥を見つける手法である。人が読んで確かめるコード検査(インスペクションやウォークスルー)や,ツールで構文や制御の流れ・データの流れを解析する静的解析などがある。アが適切である。
イはスタブとドライバが逆で,単体テストでは被検査モジュールをドライバから呼び出し,被検査モジュールが呼び出す下位モジュールの代わりにスタブを使う。ウのトップダウンテストは上位モジュールから結合するので,全体の制御構造に関わる欠陥は早い段階で見つかりやすい。欠陥が最終段階まで見つかりにくいのはボトムアップテストの特徴である。エは内部構造に基づいてテストケースを設定するホワイトボックステストの説明であり,ブラックボックステストは内部構造を見ずに入力と出力の仕様から設計する。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問9(表記を一部改変)
問10
学生レコードのデータが正しいかどうかを検証したい。学生レコードを構成するデータ項目には,学籍番号,出身高校コード,学年が含まれ,それぞれを入力とする原因-結果グラフは図のとおりである。テストケースを設計するために,このグラフから作成した決定表として正しいものはどれか。ここで,原因-結果グラフの要素間の関係には,次の表記を用いる。
正解 ウ
解説
原因-結果グラフでは,“学生レコードを受け付ける”は三つの原因の論理積なので,学籍番号,出身高校コード,学年が全て正しい(全て Y)ときだけ受け付ける。“学生レコードを受け付けない”は三つの原因の否定の論理和なので,どれか一つでも正しくない(N)ときに受け付けない。決定表にすると,全て Y の列で“受け付ける”に X,いずれか一つが N でほかは問わない(-)列で“受け付けない”に X が付く。ウが正しい。
アは全て N のときに受け付けるとしており,論理積の条件と逆である。イは出身高校コードと学年が N でも受け付けるとしている。エは第3列で出身高校コードが Y のときに受け付けないとしており,否定の関係と合わない。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問10(表記を一部改変)
問11
共通フレーム 2007 における,システム適格性確認テストで確認する内容を明確にするアクティビティはどれか。
ア システム方式設計
イ システム要件定義 正解
ウ ソフトウェア方式設計
エ ソフトウェア要件定義
正解 イ
解説
共通フレーム 2007 の開発プロセスでは,システム要件定義のアクティビティで,システムの機能・能力や設計上の制約などとともに,適格性確認要件(システムが要件を満たしていることを評価する基準)を定義する。システム適格性確認テストは,このシステム要件定義で明確にした要件に照らして行う。イが該当する。
アのシステム方式設計は,システム要件をハードウェア・ソフトウェア・手作業に割り振る最上位の構造を決めるアクティビティである。エのソフトウェア要件定義はソフトウェア適格性確認テストで確認する内容を明確にし,ウのソフトウェア方式設計ではソフトウェア結合のための暫定的なテスト要件を定める。なお,現行の共通フレーム 2013 では,これらのアクティビティは“システム要件定義プロセス”のようなプロセスとして整理し直されている。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問11(表記を一部改変)
問12
本番稼働中のシステムに発生したソフトウェア障害への対処として,最初に行う作業はどれか。
ア 修正に関する選択肢を検討する。
イ 修正の内容を文書化して承認を得る。
ウ 修正量,修正費用及び修正時間を見積もる。
エ 障害の内容を把握するための検証を行う。 正解
正解 エ
解説
本番稼働中のシステムに障害が起きたら,まず障害の内容を把握するために,問題を再現するか検証して,何が起きているかを確かめる。内容が分からないうちは,修正の方法も規模も決められない。JIS X 0160 のソフトウェア保守プロセスでも,問題の分析の中に“問題を再現するか又は検証する”タスクがあり,その後に修正の選択肢の作成,文書化,承認が続く。エが最初に行う作業である。
アの修正の選択肢の検討,ウの修正量・修正費用・修正時間の見積りは,障害の内容を把握したうえで行う分析の作業である。イの修正内容の文書化と承認は,選択肢を検討して修正方針を決めた後に行う作業である。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問12(表記を一部改変)
問13
マッシュアップに該当するものはどれか。
ア 既存のプログラムから,そのプログラムの仕様を導き出す。
イ 既存のプログラムを部品化し,それらの部品を組み合わせて,新規プログラムを開発する。
ウ クラスライブラリを利用して,新規プログラムを開発する。
エ 公開されている複数のサービスを利用して,新たなサービスを提供する。 正解
正解 エ
解説
マッシュアップは,Web API などで公開されている複数のサービスを組み合わせて,新しいサービスを作り出す手法である。例えば地図サービスと店舗情報のサービスを組み合わせて,店舗の場所を地図に示すサービスを作る。エが正しい。
アは既存のプログラムを解析して仕様を導き出すリバースエンジニアリング。イは既存のプログラムを部品化して組み合わせるソフトウェア部品の再利用,ウはクラスライブラリを使った開発で,いずれも自組織のプログラム資産を再利用する方法であり,外部に公開されたサービスを組み合わせるマッシュアップとは異なる。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問13(表記を一部改変)
問14
IT 投資案件において,投資効果を PBP(Pay Back Period)で評価する。投資額が 500 のとき,期待できるキャッシュインの四つのシナリオ a〜d のうち,最も投資効率が良いものはどれか。
正解 エ
解説
PBP(回収期間)は,投資額をキャッシュインの累計で回収し終えるまでの期間で,短いほど投資効率が良いと評価する。投資額 500 に対する累計は,a が 100,250,450,700 で 4 年目に回収(約 3.2 年),b が 100,300,600 で 3 年目に回収(約 2.7 年),c が 200,350,450,600 で 4 年目に回収(約 3.3 年),d が 300,500 でちょうど 2 年目に回収する。最も短い d が最も投資効率が良く,エになる。
a はキャッシュインの合計(1,000)が最も大きいが,前半の金額が小さいので回収が遅い。PBP は回収後のキャッシュインを評価に含めないので,合計額の大小では決まらない。b と c も d より回収に時間がかかる。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問14(表記を一部改変)
問15
情報システムの全体計画立案のために E-R モデルを用いて全社のデータモデルを作成する手順はどれか。
ア 管理層の業務から機能を抽出し,機能をエンティティとする。次に,機能の相互関係に基づいてリレーションシップを定義する。さらに,全社の帳票類を調査して整理し,正規化された項目に基づいて属性を定義し,全社のデータモデルとする。
イ 企業の全体像を把握するために,主要なエンティティだけを抽出し,それらの相互間のリレーションシップを含めて,鳥瞰図を作成する。次に,エンティティを詳細化し,全てのリレーションシップを明確にしたものを全社のデータモデルとする。 正解
ウ 業務層の現状システムを分析し,エンティティとリレーションシップを抽出する。それぞれについて適切な属性を定め,これらを基に E-R 図を作成し,それを抽象化して,全社のデータモデルを作成する。
エ 全社のデータとその処理過程を分析し,重要な処理を行っている業務を基本エンティティとする。次に,基本エンティティ相互のデータの流れをリレーションシップとして捉え,適切な識別名を与える。さらに,基本エンティティと関係あるデータを属性とし,全社のデータモデルを作成する。
正解 イ
解説
全社のデータモデルは,全体計画の立案に使うため,まず企業全体を見渡せることが重要である。そこで,トップダウンで企業活動の中心となるエンティティだけを抽出し,それらの間のリレーションシップを含めた鳥瞰図を作成して全体像を把握する。次に,エンティティを詳細化し,全てのリレーションシップを明確にして全社のデータモデルに仕上げる。イが適切である。
アは機能をエンティティとしており,業務の機能とデータを取り違えている。ウは業務層の現状システムからボトムアップに積み上げるので,現状の個別システムの構造に引きずられ,全社の視点をもったモデルになりにくい。エは業務(処理)をエンティティ,データの流れをリレーションシップとしており,データフローの考え方と E-R モデルを混同している。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問15(表記を一部改変)
問16
ソフトシステムズ方法論の説明はどれか。
ア 様々な立場の人々の異なった考えを,七つのステージを経て合意形成を行い,問題を解決していく手法 正解
イ 事前に質問項目を準備することなく,回答に応じて柔軟に次の質問項目を設定することによって,より深く回答者の意見を収集する手法
ウ 実際の作業現場などの会話を記録し,身体の動きも含め詳細な分析を行うことによって,現場での活動をあるがままに理解しようとする手法
エ 質問に対する回答の結果を,全ての回答者へフィードバックすることを繰り返すことによって,集団の意見を集約する手法
正解 ア
解説
ソフトシステムズ方法論(SSM)は,P. チェックランドが提唱した問題解決の手法で,利害関係者がそれぞれ異なる世界観をもつ,構造のはっきりしない問題状況を対象とする。問題状況の表現,根底定義,概念モデルの作成,現実との比較,望ましく実行可能な変化の議論などの七つのステージを経て,関係者の合意(折り合い)を形成し,改善の行動につなげる。アが該当する。
イは質問項目を事前に固定しない非構造化インタビュー,ウは現場の会話や身体の動きを記録して活動をあるがままに理解しようとするエスノグラフィ(行動観察)の手法,エは回答結果のフィードバックを繰り返して意見を集約するデルファイ法の説明である。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問16(表記を一部改変)
問17
エンタープライズアーキテクチャの参照モデルのうち,BRM(Business Reference Model)で提供されるものはどれか。
ア アプリケーションを機能的な観点から分類・体系化したサービスコンポーネントから成る,アプリケーションの再利用を促進するためのモデル
イ 業務分類に従った業務・システム体系と各種業務モデルから成る,組織全体で業務やシステムの共通化の対象領域を洗い出すためのモデル 正解
ウ サービスコンポーネントを実際に活用するためのプラットフォームやテクノロジの標準仕様から成る,組織全体での技術の標準化を促進するためのモデル
エ 組織間で共有される可能性の高い情報について,名称,定義及び各種属性を総体的に記述したモデルから成る,情報の再利用・統合を促進するためのモデル
正解 イ
解説
エンタープライズアーキテクチャの参照モデルのうち,BRM(Business Reference Model,業務参照モデル)は,業務を分類・整理し,業務の体系や業務を構成する機能とその間を流れる情報をモデルとして示したものである。組織全体で共通化できる業務やシステムの対象領域を洗い出すために使う。イが該当する。
アのアプリケーションを機能の観点から分類したサービスコンポーネントのモデルは SRM(Service Component Reference Model),ウのプラットフォームや技術の標準仕様のモデルは TRM(Technical Reference Model),エの組織間で共有する情報の名称・定義・属性を記述したモデルは DRM(Data Reference Model)である。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問17(表記を一部改変)
問18
ストレージ技術におけるシン・プロビジョニングの説明として,適切なものはどれか。
ア 同じデータを複数台のハードディスクに書き込み,冗長化する。
イ 一つのハードディスクを,OS をインストールする領域とデータを保存する領域とに分割する。
ウ ファイバチャネルなどを用いてストレージをネットワーク化する。
エ 利用者の要求に対して仮想ボリュームを提供し,物理ディスクは実際の使用量に応じて割り当てる。 正解
正解 エ
解説
シン・プロビジョニングはストレージの仮想化技術の一つで,利用者(サーバ)には必要と見込まれる容量の仮想ボリュームを見せておき,物理ディスクの領域は実際にデータが書き込まれた分だけ割り当てる。物理容量を最初から全て用意する必要がなく,使用量の増加に合わせて追加できるので,ストレージの利用効率が上がる。エが適切である。
アは同じデータを複数のディスクに書き込むミラーリング(RAID 1),イは 1 台のディスクを複数の領域に分けるパーティション分割の説明である。ウは,ファイバチャネルなどでサーバとストレージをネットワーク接続する SAN(Storage Area Network)の説明である。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問18(表記を一部改変)
問19
ガーベジコレクションを行っている間は,全てのアプリケーションの実行が停止する Web アプリケーションサーバがある。Web アプリケーションサーバの仕様が次の場合,ガーベジコレクションによってアプリケーションの実行が停止している時間は CPU 稼働時間のうちの何%となるか。ここで,Web アプリケーションサーバの CPU 稼働時間はガーベジコレクションの処理時間とアプリケーションの処理時間から成り,その他の要因については考慮しないものとする。
〔Web アプリケーションサーバの仕様〕
ア 2.00
イ 2.50 正解
ウ 6.25
エ 8.33
正解 イ
解説
CPU 使用率は常に 80%なので,ガーベジコレクションの頻度である 5 秒間のうち,CPU 稼働時間は 5 秒×0.8=4 秒(4,000 ミリ秒)である。この中でガーベジコレクションの処理時間は 100 ミリ秒なので,アプリケーションの実行が停止している時間の割合は 100÷4,000=0.025,つまり 2.50%になる。イが正しい。
アの 2.00%は,100 ミリ秒を CPU 稼働時間ではなく経過時間の 5 秒(5,000 ミリ秒)で割った値で,CPU 使用率 80%を考慮していない。ウの 6.25%とエの 8.33%は,この仕様からの計算では得られない値である。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問19(表記を一部改変)
問20
自律コンピューティングの説明はどれか。
ア システム内の各コンピュータの役割は固定されず,状況に応じてサーバにもクライアントにもなる対等な関係のことである。
イ 従来は人手で対応してきたシステムの複雑さに起因する問題を,システムに自己管理機能を実装することによって,システムが自ら解決することを目指した技術のことである。 正解
ウ 生活や社会のいたるところにコンピュータが存在し,コンピュータ同士が連携して動作することによって,人間の生活を支援する情報環境のことである。
エ ネットワークに接続された各コンピュータ内の情報を探索して取得するために,オーバレイネットワークと呼ぶ仮想ネットワークを利用する技術のことである。
正解 イ
解説
自律コンピューティングは,システムの大規模化・複雑化によって人手での管理が難しくなった問題に対し,システム自身に自己管理の機能をもたせて解決しようとする考え方である。構成の自動設定(自己構成),障害の検知と回復(自己修復),性能の調整(自己最適化),攻撃からの防御(自己防衛)などを,運用者の介入を減らしてシステムが自ら行うことを目指す。イが該当する。
アは各コンピュータが対等でサーバにもクライアントにもなる P2P(ピアツーピア),ウはコンピュータが生活や社会のいたるところに存在して連携し人間を支援するユビキタスコンピューティングの説明である。エはオーバレイネットワーク上で各コンピュータの情報を探索する,P2P ネットワークにおける情報検索の技術の説明である。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問20(表記を一部改変)
問21
社員と年の対応関係を UML のクラス図で記述する。二つのクラス間の関連が次の条件を満たす場合,a,b に入る多重度の適切な組合せはどれか。ここで,年クラスのインスタンスは毎年存在する。
〔条件〕
(1) 全ての社員は入社年を特定できる。 (2) 年によっては社員が入社しないこともある。
ア a:0..*,b:0..1
イ a:0..*,b:1..1 正解
ウ a:1..*,b:0..1
エ a:1..*,b:1..1
正解 イ
解説
条件(1)の“全ての社員は入社年を特定できる”から,社員 1 人に対応する年(入社年)はちょうど一つなので,年側の多重度 b は 1..1 になる。条件(2)の“年によっては社員が入社しないこともある”から,一つの年に対応する社員は 0 人以上なので,社員側の多重度 a は 0..* になる。イが適切である。
ア,ウの b が 0..1 だと,入社年が特定できない社員の存在を許してしまい,条件(1)に反する。ウ,エの a が 1..* だと,どの年にも必ず 1 人以上の社員が入社することになり,条件(2)に反する。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問21(表記を一部改変)
問22
RDBMS のロックに関する記述のうち,適切なものはどれか。ここで,X,Y はトランザクションとする。
ア X が A 表内の特定行 a に対して共有ロックを獲得しているときは,Y は A 表内の別の特定行 b に対して専有ロックを獲得することができない。
イ X が A 表内の特定行 a に対して共有ロックを獲得しているときは,Y は A 表に対して専有ロックを獲得することができない。 正解
ウ X が A 表に対して共有ロックを獲得しているときでも,Y は A 表に対して専有ロックを獲得することができる。
エ X が A 表に対して専有ロックを獲得しているときでも,Y は A 表内の特定行 a に対して専有ロックを獲得することができる。
正解 イ
解説
共有ロックは読取りのためのロックで,ほかのトランザクションの共有ロックとは両立するが,専有ロックとは両立しない。X が A 表の行 a に共有ロックを掛けているときに,Y が A 表全体に専有ロックを獲得できると,行 a も Y に専有されてしまい,X のロックと矛盾する。したがって Y は A 表に専有ロックを獲得できない。イが適切である。
アは行 a と別の行 b へのロックなので,対象が重ならず,Y は行 b に専有ロックを獲得できる。ウは表全体への共有ロックと専有ロックが競合するので,Y は専有ロックを獲得できない。エは X が表全体を専有しているので,Y は表内のどの行にも専有ロックを獲得できない。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問22(表記を一部改変)
問23
TCP/IP のクラス B の IPv4 アドレスをもつ一つのネットワークに,割り当てることができるホストアドレス数は幾つか。
ア 1,022
イ 4,094
ウ 32,766
エ 65,534 正解
正解 エ
解説
クラス B の IPv4 アドレスは,32 ビットのうち上位 16 ビットがネットワーク部,下位 16 ビットがホスト部である。ホスト部が全て 0 のアドレスはネットワークアドレス,全て 1 のアドレスはブロードキャストアドレスとして予約されているので,ホストに割り当てられる数は 216 -2=65,534 になる。エが正しい。
ほかの選択肢は,ホスト部のビット数が違う場合の値である。アの 1,022 はホスト部が 10 ビット(210 -2),イの 4,094 は 12 ビット(212 -2),ウの 32,766 は 15 ビット(215 -2)のときのホストアドレス数で,いずれもクラス B のホスト部 16 ビットとは合わない。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問23(表記を一部改変)
問24
ディザスタリカバリを計画する際の検討項目の一つである RPO(Recovery Point Objective)はどれか。
ア 業務の継続性を維持するために必要な人員計画と交代要員の要求スキルを示す指標
イ 業務を代替する遠隔地のシステム環境と,通常稼働しているシステム環境との設備投資の比率を示す指標
ウ 災害発生時からシステムを再稼働するまでの時間を示す指標
エ システムが再稼働したときに災害発生前のどれだけ最新の状態に復旧できるかを示す指標 正解
正解 エ
解説
RPO(Recovery Point Objective,目標復旧時点)は,災害などで失ったデータを,過去のどの時点の状態まで復旧させるかの目標値である。例えば“1 日前のデータまで”のように決め,バックアップやデータ複製の頻度・方式を選ぶ基準にする。システムが再稼働したときに,災害発生前のどれだけ新しい状態に戻せるかを示すので,エが該当する。
ウの災害発生から再稼働までの時間は RTO(Recovery Time Objective,目標復旧時間)である。アの人員計画と交代要員のスキル,イの代替システム環境と通常の環境との設備投資の比率は,事業継続計画で検討する事項ではあるが,RPO の定義ではない。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問24(表記を一部改変)
問25
SSH の説明はどれか。
ア MIME を拡張した電子メールの暗号化とディジタル署名に関する標準
イ オンラインショッピングで安全にクレジット決済を行うための仕様
ウ 対称暗号技術と非対称暗号技術を併用した電子メールの暗号化,復号の機能をもつ電子メールソフト
エ リモートログインやリモートファイルコピーのセキュリティを強化したツール及びプロトコル 正解
正解 エ
解説
SSH(Secure Shell)は,ネットワークを介したリモートログインやファイルのコピーを,暗号化と認証によって安全に行うためのツール及びプロトコルである。telnet や rlogin,rcp などの代わりに使われる。エが正しい。
アは電子メールの暗号化とディジタル署名の標準である S/MIME,イはクレジット決済を安全に行うための仕様である SET,ウは共通鍵暗号と公開鍵暗号を併用して電子メールを暗号化するソフトウェアである PGP の説明である。
出典:平成24年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問25(表記を一部改変)
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