令和7年度 春期に実施されたシステムアーキテクト試験
午後Ⅱの全2問(論述式)です。問題文・設問と,問われていることの整理をそのまま読めます。
問1 複数の情報システムのデータを収集する必要がある指標の提供について
近年,業務改善や収益向上などの業務目標達成のために,複数の情報システムのデータを活用した指標の提供を求められることが多い。例えば次のようなものがある。
- 製造業で,製品品質の改善状況を可視化するために,生産管理システムの製品製造時のデータと保守システムの製品出荷後の故障データを活用し,製品の故障率などの品質状況を指標として設計部門に提供する。
- 流通業で,売上拡大のために,物販システムの高額商品の販売履歴と旅行販売システムのクルーズパッケージ販売履歴を活用し,クロスセルの販売確率を指標として営業部門に提供する。
このような場合,システムアーキテクトは,業務目標と求められた指標の関係を理解した上で,指標の算出に必要なデータなどを分析し,データを収集し指標を提供する機能を設計する。設計に当たっては,例えば次のような事項を検討する。
- 指標を算出する手順
- 収集元データのコード体系や単位などの,データ定義の差を吸収する方法
また,このような指標の提供では,データの欠落が多いので利用に向いていなかったり,算出に必要なデータが企業内に存在していなかったりするといった,データの内容の問題が発生することも多い。そのため,必要なデータを社外から取得する,新たなデータ取得の仕組みを構築する,企業内の何らかのデータからみなし処理をするなどの工夫をすることも重要である。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
近年,業務改善や収益向上などの業務目標達成のために,複数の情報システムのデータを収集して指標の提供を求められることが増えている。システムアーキテクトは,このような複数の情報システムのデータを収集する必要のある状況において,業務目標と求められる指標の関係を理解した上で,指標の算出に必要なデータなどを分析し,データを収集し指標を提供する機能を設計する。
本問は,複数の情報システムのデータを収集する必要のある指標の提供について具体的に論述することを求めている。論述を通じて,システムアーキテクトに必要な,業務を理解する能力,情報システムを設計する能力,及び複数の情報システムからのデータ収集に関する経験を評価する。
設問と問われていること
設問ア
400字以上800字以内
あなたは,どのような業務目標達成のためにどのような指標を提供したか。また,その指標はどのような複数の情報システムからどのようなデータを収集して算出したか。400字以上800字以内で述べよ。
問われていること
- 達成しようとした業務目標
- 提供した指標
- 指標の算出のために収集した複数の情報システムとデータ
組み立ての注意
業務目標と指標の2つを,前文の例のように「〜のために,〜を指標として〜に提供する」という関係が分かる形で書く。採点講評は,業務目標と指標の関係が不明確な論述を挙げている。
収集元は「複数の」情報システムであることが問われている。前文の例も,生産管理システムと保守システム,物販システムと旅行販売システムのように,システムごとにどのデータを使ったかを挙げている。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べた指標を提供する機能の設計では,どのような事項を,どのように検討したか。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 指標を提供する機能の設計で検討した事項
- その事項をどのように検討したか
組み立ての注意
前文は,検討する事項の例として,指標を算出する手順と,収集元データのコード体系や単位などのデータ定義の差を吸収する方法を挙げている。
事項を挙げるだけでなく,どう検討したかまで書く。採点講評は全問に共通して,実施した事項の論述にとどまり,実施した理由や検討の経緯が読み取れない論述を挙げている。
問1の講評は,指標と関連の薄い要件定義を書いた論述も挙げている。検討した事項は,設問アの指標の算出と提供につながるものにする。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問イで述べた設計において,データの内容の問題にはどのようなものがあったか。また,それにどのように対応したか。600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 設計において直面したデータの内容の問題
- その問題への対応
組み立ての注意
データの内容の問題は,前文の例のように,データの欠落が多くて利用に向かない,算出に必要なデータが企業内に存在しない,といったデータそのものの問題にする。設問イの設計の話(データ定義の差の吸収など)とは分けて書く。
対応も,前文の例(社外からの取得,新たなデータ取得の仕組みの構築,企業内のデータからのみなし処理)のように,問題にしたデータの不足や欠落をどう補ったかとして書く。
採点講評(IPA)
問1では,複数の情報システムのデータを活用した指標の提供に関する経験についての論述を期待した。金融,製造,小売,医療,農業など多くの分野の論述があり,このような指標が一般的になってきていることがうかがえた。一方,業務目標と指標の関係が不明確な論述や,指標と関連の薄い要件定義を記述している論述も散見された。システムアーキテクトは,業務目標を正しく理解し,指標を算出するために必要なデータを特定して必要な指標を提供できるように心掛けてほしい。
全問共通
全問に共通して,自らの経験に基づき設問に素直に答えている論述が多かった。一方で,実施した事項を論述するだけにとどまり,実施した理由や検討の経緯が読み取れない論述も少なからず見受けられた。自らが実際にシステムアーキテクトとして検討し取り組んだことを,設問に沿って具体的に論述してほしい。
出典:令和7年度 春期 システムアーキテクト試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2 現行システムと新システム間の差異を踏まえたデータ移行について
情報システムの刷新や企業統合などを背景にして,現行システムの取引先や仕訳などの重要なデータを新システムに移行することが多い。その際システムアーキテクトは,現行システムから新システムへのデータ移行方法を設計し,移行計画を立案する。
データ移行方法の設計では,現行システムのデータの意味や値のバリエーションなどを調査する。調査した結果から判明した現行システムと新システム(以下,現新システムという)の仕様やデータ構造などの差異を踏まえた,データマッピングやデータ変換ルールの策定,さらにデータクレンジングなどを検討する。現新システムのデータのもち方や粒度に差異がある場合,例えば次のように移行データの仕様や特性に応じてシステム面及び業務面での移行方法を検討する。
- 複数の現行システムに同じ取引先のデータが存在する場合,データの更新頻度が最も高いシステムのデータを移行元システムとして移行する。
- 仕訳データを移行する場合,勘定科目を統合するのであればバッチ処理で金額を合算し,分割するのであれば分割後の勘定科目ごとの金額を画面から入力する。
- 売上データを税込金額で保有している現行システムと税抜金額で保有している現行システムがある場合,税抜金額にそろえて移行する。
移行計画の立案では,適切な移行タイミングを検討することが重要である。さらに,移行日に全てのデータを一括して移行する方法や,事前に一部のデータを移行し,その後の差分を蓄積して移行日に反映する方法など,実施方法を検討することも重要である。その際,作業時間や作業品質などの観点を含めた移行計画の検討が必要である。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
情報システムの刷新や企業統合などに伴って新しくシステムを構築した場合,現行システムからの移行が必要になる。その際システムアーキテクトは,現行システムから新システムに取引先や仕訳などの重要なデータを移行する方法を検討し,移行計画を立案する。移行方法を検討する際には,現行システムと新システム(以下,現新システムという)の仕様やデータ構造の差異を踏まえて,データマッピングやデータ変換ルールの策定などの具体的な対応方法を検討する。また,移行計画の立案では,作業時間や作業品質の観点を踏まえて適切な移行タイミングと実施方法を選択することが重要である。
本問は,現新システムの差異を踏まえたデータ移行について具体的に論述することを求めている。論述を通じて,システムアーキテクトに必要な,移行方法を検討した経験,移行計画を立案する能力などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
400字以上800字以内
あなたが携わったデータ移行について,対象とする業務及び情報システムの概要,データ移行が必要となった背景について,400字以上800字以内で述べよ。
問われていること
- 対象とする業務及び情報システムの概要
- データ移行が必要となった背景
組み立ての注意
背景は,前文の例(情報システムの刷新,企業統合)のように,なぜ現行システムから新システムへ移すことになったのかを書く。
設問イで現新システムの差異を述べるので,現行システムと新システムがそれぞれどういうものかが分かるように書いておくと,後の論述がつながる。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べたデータ移行において,現新システムにはどのような仕様やデータ構造などの差異があったか。その差異を踏まえたシステム面及び業務面での移行方法を,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 現新システムの仕様やデータ構造などの差異
- 差異を踏まえたシステム面での移行方法
- 差異を踏まえた業務面での移行方法
組み立ての注意
差異 → 移行方法の順に書き,移行方法がどの差異に対応しているかが分かるようにする。採点講評は,現行システムと新システム間の差異を明確にせず,実施した事項の記述にとどまっている論述を挙げている。
移行方法は「システム面及び業務面」の両方が問われている。前文の例では,バッチ処理での合算や税抜金額へのそろえがシステム面,分割後の金額の画面からの入力が業務面に当たる。
前文は,差異の判明の前に,現行システムのデータの意味や値のバリエーションを調査することも挙げている。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問アで述べたデータ移行において,データの移行タイミングと実施方法を,移行計画を検討した観点を踏まえて,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- データの移行タイミング
- データ移行の実施方法
- 移行計画を検討した観点
組み立ての注意
実施方法は,前文の例(移行日に全てのデータを一括して移行する方法,事前に一部を移行して差分を移行日に反映する方法)のような選択肢のうち,何を選んだかとして書く。
「観点を踏まえて」とあるので,前文の作業時間や作業品質のような観点を示し,その観点からなぜそのタイミングと実施方法にしたのかを書く。採点講評の全問共通の指摘(実施した理由や検討の経緯が読み取れない)がここにも当てはまる。
採点講評(IPA)
問2では,現行システムと新システム間の差異を踏まえたデータ移行についての論述を期待した。多くの受験者がデータの移行タイミングと実施方法を具体的に論述できており,実際に手順を検討した経験があることがうかがえた。一方,現行システムと新システム間の差異を明確にせず,実施した事項の記述にとどまっている論述も散見された。システムアーキテクトは,移行データの仕様や特性に応じて,移行方法を適切に検討できるように心掛けてほしい。
全問共通
全問に共通して,自らの経験に基づき設問に素直に答えている論述が多かった。一方で,実施した事項を論述するだけにとどまり,実施した理由や検討の経緯が読み取れない論述も少なからず見受けられた。自らが実際にシステムアーキテクトとして検討し取り組んだことを,設問に沿って具体的に論述してほしい。
出典:令和7年度 春期 システムアーキテクト試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)