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平成22年度 秋期 午後Ⅱ

平成22年度 秋期に実施されたネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱの全2問(記述式)です。事例本文・設問・解答例と解説をそのまま読めます。

この試験について:ネットワークスペシャリスト試験について

この年度を解いてみる

問1 業務システムの再構築

業務システムの再構築に関する次の記述を読んで,設問1〜6に答えよ。

T 社は,コンピュータ関連製品の卸売会社である。従業員数は400名で,東京に本社が,大阪,福岡に営業所がある。T 社の営業員200名及び技術員100名は,外出先で活動することが多い。営業員は,担当する販売代理店への営業活動を行い,技術員は,自社の取扱商品の技術サポートを行っている。営業員と技術員は,外出先にデータ通信カードを装着した PC を携帯し,インターネット経由で SSL-VPN 装置に接続して,T 社内のシステムを利用している。

T 社では,販売,購買,会計などの業務システムを運用している。現在のネットワークシステム構成を,図1に示す。

現在のネットワークシステム構成図。本社では,インターネットにルータ1 が接続し,ルータ1 の下に FW がある。FW には DMZ の L2SW が接続し,DMZ の L2SW に SSL-VPN 装置が接続している。FW の下に L3SW がある。L3SW には,GSV 2台,ファイルサーバ(TP が接続),BSV(TP が接続),L2SW 2台(それぞれ複数の PC が接続),ルータ2 が接続している。ルータ2 は IP-VPN に接続している。大阪営業所では,IP-VPN にルータ3 が接続し,ルータ3 に L2SW が接続している。L2SW にはファイルサーバ(TP が接続)と複数の PC が接続している。福岡営業所も同様で,IP-VPN にルータ4 が接続し,ルータ4 の L2SW にファイルサーバ(TP が接続)と複数の PC が接続している。凡例:FW:ファイアウォール,GSV:業務サーバ,TP:テープ装置,L2SW:レイヤ2スイッチ,L3SW:レイヤ3スイッチ,BSV:GSV で稼働する業務システム用のバックアップサーバ。注 IP-VPN の回線速度は,すべて10M ビット/秒である。
図1 現在のネットワークシステム構成(抜粋)

T 社では,業務システムの機能強化を目的に,システムの再構築を行うことにした。機能強化策の一つとして,取扱商品を大幅に増やすために,商品マスタを50万レコードに拡大する。併せて,以前から改善が求められていた,ファイルサーバのデータバックアップの見直しも行う。これらを推進するためのプロジェクトマネージャとして,情報システム部の W 部長が任命された。W 部長は,販売,購買,会計などの業務の責任者及びシステム基盤設計,構築,運用の責任者を選出して,新業務システム開発プロジェクトを発足させた。

新業務システムの概要設計完了後,W 部長は,部下の Y 課長に対してシステム基盤と運用管理方式の設計を指示した。Y 課長は,環境の変化に柔軟に対応できるようにすることと,運用負荷を抑えるために,新業務システムを稼働させるシステム基盤に,サーバ仮想化技術を活用することにした。

〔システム基盤の設計〕

サーバの仮想化を実現させる仕組み(以下,仮想化機構という)を動作させるサーバのことを,物理サーバという。仮想化機構によって,物理サーバ上に作成されるサーバ機能を,仮想サーバという。仮想サーバは,物理サーバ上に複数作成できる。仮想サーバが使用するディスクは,物理サーバのローカルディスクと SAN に接続されたディスク装置(以下,SAN ストレージという)に作成することができる。仮想サーバが使用するディスクを SAN ストレージに作成すると,複数の仮想サーバで共用できる。

SAN には,FC-SAN と a がある。a を構成する代表的な技術が iSCSI(internet SCSI)である。最近は,iSCSI プロトコルが PC とサーバ OS に実装されているので,iSCSI を容易に利用できるようになった。iSCSI は,信頼性のあるデータ通信を行うために b プロトコルを使用する。iSCSI では,サーバで稼働し,c コマンドを発行して処理を要求するイニシエータと,ストレージ装置で稼働して,その処理を実行する d 間で,ブロックデータの入出力を実現させている。今回は,稼働実績を重視して,FC-SAN を利用することにした。

新業務システムは,アプリケーションサーバ(以下,AP サーバという),データベースサーバ(以下,DB サーバという)及び SAN ストレージで構成する。AP サーバは,仮想サーバで稼働させる。DB サーバは,AP サーバのアプリケーションプログラムから使用される。T 社では,仮想化機構を活用したシステム構築は初めての経験だったので,DB サーバは,2台でアクティブスタンバイ型のクラスタシステムを構成し,仮想化機構を利用しないことにした。クラスタシステムでは,ハートビートパケットで各サーバの生存を確認するが,①各サーバが稼働しているにもかかわらず,ハートビートパケットを受信できなくなると,サービスを正常に提供できなくなる危険性がある。この障害を避けるために,②各サーバの生存確認を確実に行うための対応策を実施する。

仮想化機構には,物理サーバの障害時や負荷増大時の対策機能が備わっている。しかし,この機能だけでは不十分なので,負荷分散装置(以下,LB という)を利用して,AP サーバの冗長性を高めるとともに,e も向上させることにした。利用する LB には,負荷分散時に送信元 IP アドレスを LB のものに付け替えるソース NAT 機能があるが,AP サーバを使用する PC を特定するために,この機能は利用しない。また,LB による AP サーバの稼働状態管理を確実に行うために,AP サーバからの返送パケットは,LB を経由させることにする。

AP サーバを稼働させる物理サーバ(以下,SGSV という)は,障害時の影響を低減させるために,3台構成にする。各 SGSV では,AP サーバを2台ずつ,全体で6台を稼働させて,能力面で余裕をもった構成にする。そのほかに,テスト用の物理サーバ(以下,TSV という)も用意する。新業務システムの構成を,図2に示す。

新業務システムの構成図。SAN ストレージの下に FCSW が2台あり,SAN ストレージと2台の FCSW はたすき掛けで接続している。2台の FCSW はそれぞれ,TSV,SGSV 3台,DB サーバ2台のすべてに接続している。TSV と SGSV 3台は網掛けの破線の枠で囲まれている。DB サーバ2台は互いに接続し,“クラスタシステム”の破線の枠で囲まれている。LB,TSV,SGSV 3台,DB サーバ2台はそれぞれ L3SW に接続している。L3SW の下に L2SW が2台あり,それぞれに複数の PC が接続している。注1 網掛け中の物理サーバでは,仮想化機構が稼働する。注2 各 SGSV では,2台の AP サーバが稼働する。注3 LB は,SGSV で稼働する AP サーバの負荷分散だけを行う。注4 TSV では,テスト用の AP サーバと DB サーバが稼働する。FCSW:ファイバチャネルスイッチ
図2 新業務システムの構成

〔データバックアップの検討〕

現在,営業所ごとにファイルサーバのデータを TP にバックアップしており,テープの管理やエラー時の対応などで,営業所員に負担を強いている。この問題を解決するために,TP へのバックアップを止め,すべての営業所のバックアップデータを本社に集めて,新業務システムのデータバックアップと統合するのが効果的と判断した。

遠隔地にバックアップする場合は,バックアップとリストアを高速化するために,通信帯域の確保が必要になる。そこで,通信帯域をあまり必要としないバックアップ方式を調査したところ,重複除外機能をもつバックアップシステムを利用すれば,バックアップデータ量を飛躍的に削減できることが分かった。

重複除外機能は,サーバデータをブロックに分割し(以下,ブロックデータという),更新されたブロックデータが既にバックアップサーバに存在した場合,そのブロックデータをバックアップしない働きをもつ。重複除外機能をもつバックアップシステムは,バックアップ対象のデータをもつサーバに導入されるエージェントと,バックアップデータを保存するバックアップサーバから構成される。バックアップ対象のサーバでの重複除外処理の概要を,図3に示す。

バックアップ対象のサーバでの重複除外処理の概要図。左の“バックアップ対象のサーバ”の枠の中に,“サーバデータ”のディスクがあり,ブロックデータ Dz,Dx,…,Db,Da が入っている。このうち Dz と Dx は破線の枠①で囲まれている。サーバの枠の中には“エージェントの処理の一部”の一点鎖線の枠があり,その中に破線の枠②(Hz,Hx)と破線の枠③(Hy,Hx,…,Hb,Ha)がある。Dz と Hz,Dx と Hx はそれぞれ点線の両矢印(対応関係)で結ばれている。Hz から右の“バックアップサーバ”へ実線の矢印(バックアップ)が引かれ,矢印の上に Dz が示されている。① 更新されたので,バックアップ対象となったブロックデータ。② バックアップ対象のブロックデータから生成されたハッシュ値。③ 既にバックアップされているサーバデータ中のブロックデータのハッシュ値。注 実線の矢印:バックアップ,点線の両矢印:対応関係,Di:ブロックデータ,Hi:Di のハッシュ値。
図3 バックアップ対象のサーバでの重複除外処理の概要

エージェントは,ハッシュ値同士の比較によって,更新されたブロックデータがバックアップ済かどうかをチェックする。図3中に示した②の Hx と Hz のうち,Hx は,③のハッシュ値の中に存在するので,Dx はバックアップされない。Hz は,③のハッシュ値の中に存在しないので,Dz がバックアップサーバに送られて,バックアップされる。このように,更新されたブロックデータから生成された Hx と Hz が,③のサーバデータのハッシュ値に存在するかどうかをチェックすることで,Dx と Dz が,既にバックアップされたブロックデータと重複しているかどうか判断される。

ハッシュ値は,低い確率ではあるが,③ハッシュ値の衝突が発生するので,発生確率を更に低くするために,様々な対応策が考えられている。今回使用する重複除外機能をもつバックアップシステムでは,独自の対応策が実施されている。

〔セキュリティ強化策と回線の検討〕

外出先から T 社内のシステムを利用するときの認証は,ログイン ID と固定パスワードだけで行われているので,セキュリティ上の問題を洗い出し,強化策を検討することにした。

調査した結果,ワンタイムパスワード方式の認証システムを導入し,既設の SSL-VPN 装置の代わりに,PC のセキュリティチェック機能をもち,認証システムと連携も可能な SSL-VPN 装置(以下,新 SSL-VPN 装置という)を導入すれば,少ない変更でセキュリティを強化できることが分かった。認証システムは,認証受付サーバと認証サーバで構成される。認証システムと新 SSL-VPN 装置の構成を,図4に示す。

認証システムと新 SSL-VPN 装置の構成図。インターネットに PC が接続している。本社では,インターネットにルータ1 が接続し,ルータ1 の下に FW,FW の下に L3SW がある。L3SW には認証サーバが接続している。FW には DMZ の L2SW が接続し,DMZ の L2SW には新 SSL-VPN 装置と認証受付サーバが接続している。注1 認証受付サーバは,ワンタイムパスワード方式の認証機能と認証データを新 SSL-VPN 装置に引き渡す連携機能をもつ。注2 認証サーバは,ランダムな数表の発行や認証処理を行う。RADIUS サーバ機能ももつ。
図4 認証システムと新 SSL-VPN 装置の構成

新 SSL-VPN 装置と認証システムとの連携処理手順を,次に示す。

次に,本社と各営業所間の回線が,継続して利用できるかどうかを検討した。

ルータ2 のログから送受信データ量を確認したところ,本社と営業所間で発生するトラフィックは,日中最大となり,7M ビット/秒であった。このうち,既存の業務システム利用のトラフィックが40%である。このトラフィックは,新業務システムの利用で,1.3倍になることが見込まれる。これらの条件から,本社と営業所間の最大トラフィックは,[ ア ] M ビット/秒であり,増加量は少ないことが判明した。

各営業所のデータバックアップは,夜間に行う。各営業所のファイルサーバのデータ量は1T バイトである。2回目以降のバックアップデータ量は,ベンダの情報によれば,重複除外機能によって全体の0.5%以下に削減される。これらの条件から,許容時間内にバックアップを完了できる見込みである。

以上の検討によって,本社と各営業所間の回線が,継続して利用可能と判断した。

〔システムの運用管理方式の設計〕

新業務システムでは,統合監視システムを利用して,ネットワーク機器とサーバの稼働状態の監視を行う。

統合監視システムには,④監視対象機器を発見して,接続構成図を自動作図する機能があるので,管理者は,接続構成図の中から,監視するネットワーク機器を選択することができる。ネットワーク機器の監視は SNMP で行われ,ネットワーク機器の稼働状態を,MIB 情報の定期的な収集によって監視するとともに,Trap の受信によって異常を検知する。

サーバの監視は,あらかじめ設定された間隔で,各サーバから監視対象の情報を収集して行う。収集した情報の中に異常が発見されたときには,その内容がメッセージ表示画面に表示される。監視項目には,CPU,メモリなどの使用率,サービスとプロセスの稼働状態及びイベントログの内容がある。仮想サーバを活用したシステムでは,仮想サーバの稼働状態監視だけでは十分でないので,⑤通常のサーバ監視よりも複雑な監視が必要になる。イベントログの監視では,フィルタ機能の活用が必要になり,フィルタの条件設定には,⑥運用後のチューニングが必要になる。

新業務システム構築後のネットワークシステム構成を,図5に示す。

新業務システム構築後のネットワークシステム構成図。本社では,インターネットにルータ1 が接続し,ルータ1 の下に FW,FW の下に L3SW がある。FW には DMZ の L2SW が接続し,DMZ の L2SW には新 SSL-VPN 装置と認証受付サーバが接続している。L3SW には,LB,統合監視システム,DB サーバ2台,SGSV 3台,TSV,認証サーバ,バックアップサーバ,ファイルサーバ,ルータ2,L2SW 2台(それぞれ複数の PC が接続)が接続している。DB サーバ2台は互いに接続している。SAN ストレージには FCSW が2台接続し,2台の FCSW はそれぞれ DB サーバ2台,SGSV 3台,TSV に接続している。ルータ2 は IP-VPN に接続している。大阪営業所では,IP-VPN にルータ3 が接続し,ルータ3 の L2SW にファイルサーバと複数の PC が接続している。福岡営業所では,IP-VPN にルータ4 が接続し,ルータ4 の L2SW にファイルサーバと複数の PC が接続している。本社,営業所とも TP は無くなっている。
図5 新業務システム構築後のネットワークシステム構成(抜粋)

〔システムの切替え〕

W 部長は,プロジェクトメンバと共同で,システム切替えまでの準備作業のスケジュールと,切替時の作業スケジュール(以下,システム切替スケジュールという)を立案した。そして,W 部長は,プロジェクトメンバを各作業の責任者として,システム切替えまでの準備作業を実施させた。

各種テストの終了後,受注から代金回収までの,一連の業務の流れに沿って処理を進める方式で,総合テストを実施し,問題なく完了した。

負荷テストは,Y 課長が担当した。負荷テストでは,新業務システムの処理能力を確認するために,本番と同じ6台の AP サーバを稼働させて実施した。LB には,処理を平均的に分散させるために,ラウンドロビン方式が設定されている。

負荷テストは,11:00から12:00までの間に,主要業務の販売と購買のシステムを利用する社員に,日常的に行われる業務を処理してもらって行った。負荷テストは順調に進み,ほぼ期待どおりの結果が得られ完了した。負荷テストにおける,ある時間内での CPU 使用率を,表に示す。

単位は%。測定項目“CPU 使用率”の値。物理サーバ1:仮想サーバ1 は10〜40,仮想サーバ2 は20〜60。物理サーバ2:仮想サーバ3 は50〜100,仮想サーバ4 は60〜100。物理サーバ3:仮想サーバ5 は20〜50,仮想サーバ6 は10〜50。
表 負荷テストにおける,ある時間内での CPU 使用率

負荷テストで,6台の仮想サーバに処理が振り分けられたことを確認できた。しかし,CPU 使用率の高い状態が続いた仮想サーバが存在していた。振り分けられた処理との関係を調べたところ,メモリに読み込んだ商品マスタの大量のデータに対して,検索を伴う処理を実行した仮想サーバが,高負荷になることが判明した。新業務システムの中には,仮想サーバに大きな負荷を与えるプログラムがあるので,このようなプログラムを実行するサーバに負荷を集中させることなく,負荷を平準化するために,負荷分散方式の見直しを行うことにした。

データ移行テストでは,既存の業務システムから新業務システムへのトランザクションデータの移行が,正しく行えるかどうかを確認する。データ移行は,移行データの作成,移行データの取込み,及び移行データの確認の3段階で行われる。移行データは,既存の業務システムからトランザクションデータを抽出し,各種マスタとテーブルを参照して,加工処理が施されて作成される。移行データの取込みでは,取込みプログラムで,移行データを新業務システムに取り込む。移行データの確認では,新業務システムに取り込まれたデータの正当性を,新業務システムのプログラムでチェックする。データ移行テストを何回か繰り返した結果,問題なくデータ移行を行えることが確認できた。

以上の準備作業を行った後,システム切替え当日,システム切替スケジュールに従って,作業を実施した。システム切替スケジュールを,図6に示す。

列は作業内容,月末(金曜),稼働2日前(土曜),稼働1日前(日曜)。各作業の期間を矢印で示している。月締め処理:月末(金曜)の後半の短い期間。移行データの作成:月末(金曜)の終わり近くから稼働2日前(土曜)の中ほどまで。移行データの取込み:移行データの作成の開始より少し後の月末(金曜)の終わり近くから,稼働1日前(日曜)の初めまで。移行データの確認:稼働1日前(日曜)の前半から中ほどまで。業務開始準備:稼働1日前(日曜)の後半。
図6 システム切替スケジュール

システムの切替えは,月末の金曜日から3日間掛けて実施した。金曜日の業務終了後に,月末の締め処理を行い,その後にデータ移行作業を開始した。移行データの確認後,月曜日の業務開始のための準備作業を行い,システム切替作業を終了した。データ移行作業の途中で問題が幾つか発生したが,必要な対応措置をとり,無事に新業務システムを稼働させることができた。

出題趣旨(IPA)

仮想化技術を適用したシステム構築が急速に拡大している。仮想化技術を適用したシステムは,その延長上にクラウドコンピューティングへの発展が予想でき,クラウドシステム構築においては,ネットワーク技術者が果たすべき役割は大きいものがある。本問では,仮想化技術を適用した基幹システムの再構築事例を取り上げて,ネットワーク技術者が保有すべき,サーバの冗長化や負荷分散方式の設計技術や,インターネット経由でのシステム利用法の改善,システム運用管理などの技術分野について問う。さらに,ネットワーク技術者の直接の業務ではないが,業務システム開発時には直面することが多いデータ移行やシステム切替えなど,プロジェクト推進のために理解していることが望まれる技術分野について,幅広く問う。

設問と解答例

設問1 解答欄5つ

本文中の a 〜 e に入れる適切な字句を答えよ。

〔a〕解答例

  • IP-SAN

〔b〕解答例

  • TCP

〔c〕解答例

  • SCSI

〔d〕解答例

  • ターゲット

〔e〕解答例

  • スケーラビリティ
  • 拡張性
解説

本文の根拠

〔システム基盤の設計〕

SAN には,FC-SAN と a がある。a を構成する代表的な技術が iSCSI(internet SCSI)である。

〔システム基盤の設計〕

iSCSI は,信頼性のあるデータ通信を行うために b プロトコルを使用する。

〔システム基盤の設計〕

iSCSI では,サーバで稼働し,c コマンドを発行して処理を要求するイニシエータと,ストレージ装置で稼働して,その処理を実行する d 間で,ブロックデータの入出力を実現させている。

〔システム基盤の設計〕

負荷分散装置(以下,LB という)を利用して,AP サーバの冗長性を高めるとともに,e も向上させることにした。

a:SAN はファイバチャネルで組む FC-SAN と,IP ネットワーク(イーサネット)の上に組む IP-SAN に分かれる。IP-SAN の代表的なプロトコルが iSCSI である。b:iSCSI は SCSI のコマンドとデータを TCP のコネクションに載せて運ぶ(RFC 7143,旧 RFC 3720)。再送や順序制御を TCP に任せることで“信頼性のあるデータ通信”を得ている。c:サーバ側のイニシエータは SCSI コマンドを発行してディスクの読み書きを要求する。d:その要求を受けて実行するストレージ側の相手をターゲットという(SCSI の用語をそのまま引き継いでいる)。e:LB の配下に AP サーバを足せば処理能力を増やせるので,冗長性と並べて挙がる効果はスケーラビリティ(拡張性)である。

根拠は各空欄の前後である。a は“FC-SAN と”並ぶものであり,iSCSI で構成されるもの。b は“信頼性のあるデータ通信”,c は“コマンドを発行して処理を要求する”,d は“イニシエータ”と対になる語である。e は LB の効果として“冗長性”と並べて書かれている。

間違えやすい点。b を IP とすると,IP 自体は信頼性を提供しないので合わない。d を“ストレージ”や“サーバ”とすると,iSCSI の役割名を答えていない。e を“可用性”とすると冗長性とほぼ同じ意味になり,“も向上させる”という追加の効果にならない。e はスケーラビリティ,拡張性のどちらでもよい。講評によると d,e の正答率が極端に低く,e の拡張性は LB が生み出す基本的な効果として知っておいてほしい,とされている。

採点講評(IPA)

設問1は,d,eの正答率が極端に低かった。eの拡張性は,負荷分散装置が生み出す基本的な効果なので,知識としてもっていてほしい。

設問2(1) 解答欄2つ

本文中の下線①の状況の発生で,サービスが正常に提供できなくなる DB サーバの状態を,40字以内で述べよ。また,下線②の対応策の内容を,25字以内で述べよ。

〔状態〕解答例

  • 一つのサービスが,クラスタシステム内の複数のノードで同時に起動する。

〔対応策〕解答例

  • ハートビートのやり取りの回線を複数にする。
解説

本文の根拠

〔システム基盤の設計〕

DB サーバは,2台でアクティブスタンバイ型のクラスタシステムを構成し,仮想化機構を利用しないことにした。

〔システム基盤の設計〕

クラスタシステムでは,ハートビートパケットで各サーバの生存を確認するが,①各サーバが稼働しているにもかかわらず,ハートビートパケットを受信できなくなると,サービスを正常に提供できなくなる危険性がある。

図2

DB サーバ2台は互いに接続し,“クラスタシステム”の破線の枠で囲まれている。

アクティブスタンバイ型のクラスタでは,待機系はハートビートが途絶えたら“稼働系が停止した”と判断して,自分がサービスを引き継ぐ。ところが両方のサーバが動いているのにハートビートの経路だけが切れると,待機系も稼働系も“相手が止まった”と判断し,同じサービスが二つのノードで同時に起動してしまう(スプリットブレインと呼ばれる状態)。共有の SAN ストレージに両方から書き込めばデータが壊れる。対応策は,ハートビートをやり取りする回線を複数にして,1本が切れただけでは生存確認が途絶えないようにすることである。

根拠は下線①の“各サーバが稼働しているにもかかわらず”という条件と,図2で DB サーバ2台が互いに直接つながれていることである。この1本がハートビートの経路であり,ここが単一障害点になっている。

字数の詰め方。状態は“一つのサービスが”“複数のノードで同時に起動する”の2点を残す(解答例は34字)。“スプリットブレイン”という名称だけでは状態の説明にならないので,何が起きるかを書く。対応策は“ハートビートの回線を複数にする”が核で,解答例は21字である。

設問2(2) 解答欄2つ

図2で,PC からの処理要求が AP サーバと DB サーバで処理されて,処理結果が PC に転送されてくる経路を,次の【転送経路】に示す。(a),(b)に入れるサーバと機器を,図2中の名称を用いて,【転送経路】の表記方法に従い,すべて記述せよ。【転送経路】PC→[ (a) ]→AP サーバ→L3SW→DB サーバ→L3SW→AP サーバ→[ (b) ]→PC

〔(a)〕解答例

  • L2SW→L3SW→LB→L3SW

〔(b)〕解答例

  • L3SW→LB→L3SW→L2SW
解説

本文の根拠

〔システム基盤の設計〕

利用する LB には,負荷分散時に送信元 IP アドレスを LB のものに付け替えるソース NAT 機能があるが,AP サーバを使用する PC を特定するために,この機能は利用しない。

〔システム基盤の設計〕

また,LB による AP サーバの稼働状態管理を確実に行うために,AP サーバからの返送パケットは,LB を経由させることにする。

図2

LB,TSV,SGSV 3台,DB サーバ2台はそれぞれ L3SW に接続している。L3SW の下に L2SW が2台あり,それぞれに複数の PC が接続している。

図2で LB は L3SW に1本だけでつながっている。PC からの要求は PC→L2SW→L3SW と上がり,負荷分散のために L3SW から LB へ渡され,LB が振り分け先を決めて L3SW に戻し,AP サーバへ届く。したがって (a) は L2SW→L3SW→LB→L3SW である。AP サーバは L3SW を経て DB サーバに問い合わせ,結果を受け取る。PC への返送は,本文の指定どおり LB を経由させるので,AP サーバ→L3SW→LB→L3SW→L2SW→PC となり,(b) は L3SW→LB→L3SW→L2SW である。

根拠は,LB が L3SW にしか接続していないこと(図2)と,“返送パケットは,LB を経由させる”という記述である。ソース NAT を使わないので,AP サーバから見た送信元は PC のアドレスのままであり,何もしなければ返送は LB を通らず L3SW から直接 PC へ向かってしまう。だから経由させる設定がわざわざ書かれている。

間違えやすい点。(b) で LB を省くと,“返送パケットは,LB を経由させる”という条件を落としている。また LB は L3SW にしかつながっていないので,LB と L2SW を直接つなぐ経路は書けない。“すべて記述せよ”とあるので,L3SW を2回通ることも省かずに書く。

設問3(1) 30字以内

重複除外処理にハッシュ関数を利用する利点を,30字以内で述べよ。

解答例

  • データが同一かどうかのチェックが高速化できる。
解説

本文の根拠

〔データバックアップの検討〕

エージェントは,ハッシュ値同士の比較によって,更新されたブロックデータがバックアップ済かどうかをチェックする。

〔データバックアップの検討〕

このように,更新されたブロックデータから生成された Hx と Hz が,③のサーバデータのハッシュ値に存在するかどうかをチェックすることで,Dx と Dz が,既にバックアップされたブロックデータと重複しているかどうか判断される。

ハッシュ関数は,どんな長さのデータからも短い固定長の値を作る。ブロックデータそのものを既存の全ブロックと突き合わせるには大量のデータを読んで比べなければならないが,ハッシュ値同士なら短い値を比べるだけで済み,同一かどうかのチェックが高速になる。既存ブロックのハッシュ値の一覧(図3の③)もデータ本体より小さく,エージェント側で持っておける。

根拠は,エージェントが“ハッシュ値同士の比較によって”バックアップ済かどうかをチェックするという記述と,図3で③のハッシュ値の一覧がエージェントの処理の中に置かれていることである。

字数の詰め方。何が良くなるか(チェックが高速化できる)を主語に書く。“データが同一かどうかのチェック”と比較の対象を明示すると伝わる(解答例は23字)。“データ量が減る”は重複除外そのものの効果であり,ハッシュ関数を使う利点とは別なので避ける。講評では,設問3は予想以上の正答率だったとされている。

採点講評(IPA)

設問3の,ハッシュ関数をデータ照合に利用する利点,問題点及び改善策については,予想以上の正答率だった。ハッシュ関数が利用される分野が広がっていることもあり,よく理解されていた。

設問3(2) 30字以内

本文中の下線③の衝突によって引き起こされる問題を,30字以内で述べよ。

解答例

  • 異なったデータを同じデータと判断してしまう問題
解説

本文の根拠

〔データバックアップの検討〕

ハッシュ値は,低い確率ではあるが,③ハッシュ値の衝突が発生するので,発生確率を更に低くするために,様々な対応策が考えられている。

〔データバックアップの検討〕

Hx は,③のハッシュ値の中に存在するので,Dx はバックアップされない。

ハッシュ値の衝突とは,異なるデータから同じハッシュ値が生成されることである。重複除外では“ハッシュ値が一致すれば同じデータ”とみなしてバックアップを省くので,衝突が起きると,実際には新しい内容のブロックを既存のブロックと同じと判断してしまい,そのブロックはバックアップされない。リストアすると別の内容が戻ることになる。

根拠は,“Hx は,③のハッシュ値の中に存在するので,Dx はバックアップされない”という判定の仕組みである。ハッシュ値が一致しただけでデータ本体は比べていないので,衝突がそのまま誤判定になる。

字数の詰め方。“異なったデータを同じデータと判断してしまう”が核である(解答例は23字)。余裕があれば“その結果バックアップされない”まで書いてもよいが,30字に収めるには判断の誤りだけを書けば足りる。

採点講評(IPA)

設問3の,ハッシュ関数をデータ照合に利用する利点,問題点及び改善策については,予想以上の正答率だった。ハッシュ関数が利用される分野が広がっていることもあり,よく理解されていた。

設問3(3) 50字以内

上記(2)の問題の発生確率を更に低くする方法について,考えられる方法を,50字以内で述べよ。

解答例(2通り)

  • ブロックデータのCRCも合わせて生成し,ハッシュ値とCRCの両方を比較して判断する。
  • ブロックデータを2分割し,それぞれのハッシュ値を生成して,それらをつなぎ合わせて比較する。
解説

本文の根拠

〔データバックアップの検討〕

ハッシュ値は,低い確率ではあるが,③ハッシュ値の衝突が発生するので,発生確率を更に低くするために,様々な対応策が考えられている。

図3

② バックアップ対象のブロックデータから生成されたハッシュ値。

1種類のハッシュ値だけで判定すると,その値が偶然一致したときに誤る。そこで,同じブロックから性質の違う検査値を別に作り,両方が一致したときだけ同一とみなせば,誤判定の確率は更に下がる。解答例の一つは CRC を併せて生成し,ハッシュ値と CRC の両方を比べる方法である。もう一つは,ブロックを2分割してそれぞれのハッシュ値を作り,つなぎ合わせて比べる方法で,比べる値が長くなるぶん偶然の一致が起きにくくなる。どちらも“比較に使う情報を増やす”という考え方である。

根拠は下線③の“発生確率を更に低くするために”である。衝突をなくすことはできないので,確率を下げる工夫を答える。

字数の詰め方。何を追加で作り,何と何を比べるかの2点を書く。解答例はそれぞれ42字,45字である。“ハッシュ値を長くする”“別のハッシュ関数を使う”のような書き方でも,何をどう比べるかまで書けば同じ考え方になる。どちらの解答例でも正解になる。

採点講評(IPA)

設問3の,ハッシュ関数をデータ照合に利用する利点,問題点及び改善策については,予想以上の正答率だった。ハッシュ関数が利用される分野が広がっていることもあり,よく理解されていた。

設問4(1) 解答欄2つ

手順(ⅱ)の PC のチェックは,すべての PC に対して行われる。新 SSL-VPN 装置が PC に対して行う処理を,25字以内で述べよ。また,認証受付サーバと認証サーバ間の通信が発生する箇所を,連携処理手順(ⅰ)〜(ⅵ)の中から,すべて選んで答えよ。

〔PCに対して行う処理〕解答例

  • 検疫のためのプログラムをダウンロードする。

〔通信が発生する箇所〕解答例

  • (ⅲ),(ⅳ)
解説

本文の根拠

〔セキュリティ強化策と回線の検討〕

(ⅱ) 新 SSL-VPN 装置は,セキュリティポリシに従って,PC をチェックする。チェック項目には,セキュリティパッチ,稼働プロセス,ウイルス対策ソフトなどが設定できる。

〔セキュリティ強化策と回線の検討〕

利用者が,ログイン ID を入力すると,認証受付サーバは,ログイン ID を基に,ランダムな数表を取得し,次の処理に移る。

〔セキュリティ強化策と回線の検討〕

入力された数値がチェックされ,正しければ,新 SSL-VPN 装置にリダイレクトされ,ログイン ID とパスワードが,新 SSL-VPN 装置に送信される。

図4

注2 認証サーバは,ランダムな数表の発行や認証処理を行う。RADIUS サーバ機能ももつ。

PC のセキュリティパッチや稼働プロセス,ウイルス対策ソフトの状態は,PC の内部を調べないと分からない。ブラウザで接続してきただけの PC を外から調べることはできないので,新 SSL-VPN 装置はまず検疫(チェック)用のプログラムを PC にダウンロードさせ,それを PC 上で動かして結果を受け取る。これが“PC に対して行う処理”である。

認証受付サーバと認証サーバの間の通信は,認証サーバの役目(図4 注2:“ランダムな数表の発行や認証処理”)を認証受付サーバが使う場面で起きる。(ⅲ) では認証受付サーバがランダムな数表を“取得”し,これは発行元の認証サーバから受け取る。(ⅳ) では入力された数値が“チェックされ”,この照合も数表を持つ認証サーバが行う。(ⅴ) の RADIUS による認証要求は新 SSL-VPN 装置から認証サーバへの通信で,認証受付サーバは関わらない。したがって (ⅲ),(ⅳ) である。

字数の詰め方。処理は“検疫のためのプログラムをダウンロードする”のように,PC に対して何をするかを書く(解答例は21字)。“PC をチェックする”では設問文の言い換えにとどまる。箇所は“すべて”とあるので (ⅲ) と (ⅳ) の両方を挙げ,(ⅴ) を入れないこと。

設問4(2) 解答欄2つ

セキュリティ強化策によって,セキュリティ面で改善される点を二つ挙げ,それぞれ25字以内で述べよ。

〔①〕解答例

  • パスワードの安全性が高まる。
  • PCのセキュリティチェックが行われる。

〔②〕解答例

  • パスワードの安全性が高まる。
  • PCのセキュリティチェックが行われる。

〔備考〕二つの点を①②に一つずつ答える(順不同)

解説

本文の根拠

〔セキュリティ強化策と回線の検討〕

外出先から T 社内のシステムを利用するときの認証は,ログイン ID と固定パスワードだけで行われているので,セキュリティ上の問題を洗い出し,強化策を検討することにした。

〔セキュリティ強化策と回線の検討〕

調査した結果,ワンタイムパスワード方式の認証システムを導入し,既設の SSL-VPN 装置の代わりに,PC のセキュリティチェック機能をもち,認証システムと連携も可能な SSL-VPN 装置(以下,新 SSL-VPN 装置という)を導入すれば,少ない変更でセキュリティを強化できることが分かった。

強化策は二つの部品でできている。一つはワンタイムパスワード方式の認証システムで,毎回ランダムな数表から読み取った値を入力するので,固定パスワードのように盗み見や漏えいで使い回されることがなく,パスワードの安全性が高まる。もう一つは新 SSL-VPN 装置の PC チェック機能で,パッチ未適用やウイルス対策ソフトの無い PC を接続させないようにできる。

根拠は,現状が“ログイン ID と固定パスワードだけ”であることと,強化策として“ワンタイムパスワード方式の認証システム”と“PC のセキュリティチェック機能をもち”の二つが挙がっていることである。

字数の詰め方。それぞれ“何がどう良くなるか”を1文で書く(解答例は14字,19字)。導入する機器名だけ(“ワンタイムパスワードの導入”)では,改善される点になっていない。①②の順はどちらでもよい。

設問4(3) 解答欄2つ

認証システムを導入したときに,FW に新たに許可設定すべき通信を二つ挙げ,それぞれ送信元とあて先を明確にして,25字以内で答えよ。

〔①〕解答例

  • 認証受付サーバから認証サーバへの通信
  • 新SSL-VPN装置から認証サーバへの通信
  • インターネットから認証受付サーバへの通信

〔②〕解答例

  • 認証受付サーバから認証サーバへの通信
  • 新SSL-VPN装置から認証サーバへの通信
  • インターネットから認証受付サーバへの通信

〔備考〕解答例は3項目を挙げている。①②には,このうち異なる二つを答える(順不同)

解説

本文の根拠

図4

本社では,インターネットにルータ1 が接続し,ルータ1 の下に FW,FW の下に L3SW がある。L3SW には認証サーバが接続している。FW には DMZ の L2SW が接続し,DMZ の L2SW には新 SSL-VPN 装置と認証受付サーバが接続している。

〔セキュリティ強化策と回線の検討〕

チェック結果が正常のときには,認証受付サーバにリダイレクトされる。

〔セキュリティ強化策と回線の検討〕

(ⅴ) 新 SSL-VPN 装置は,受信したログイン ID とパスワードを基に,RADIUS プロトコルで,認証サーバに対し認証を要求する。

図4で認証受付サーバと新 SSL-VPN 装置は DMZ に,認証サーバは FW の内側(L3SW 配下)にある。認証システムの導入で新しく生まれる通信のうち,FW を通るものを拾う。一つ目は,数表の取得と数値のチェック(設問4(1)の (ⅲ)(ⅳ))のための,DMZ の認証受付サーバから内部の認証サーバへの通信。二つ目は,(ⅴ) で新 SSL-VPN 装置が RADIUS で認証を要求する,DMZ の新 SSL-VPN 装置から内部の認証サーバへの通信(RADIUS は UDP を使う。RFC 2865)。三つ目は,PC がリダイレクトされて認証受付サーバの画面を開く,インターネットから DMZ の認証受付サーバへの通信である。解答例はこの三つを挙げており,このうち二つを答えればよい。

根拠は図4の機器の配置(どの機器が FW のどちら側にあるか)と,連携処理手順で誰が誰と通信するかである。インターネットから新 SSL-VPN 装置への通信は既設の SSL-VPN 装置でも許可されていたので,“新たに”には当たらない。

字数の詰め方。“○○から○○への通信”の形で送信元とあて先を両方書く(解答例は18〜21字)。機器名は図4の名称どおりに書く。①②の順はどちらでもよい。

設問4(4) 解答欄1つ

本文中の [ ア ] に入れる数値を求めよ。答えは,小数点以下を切り上げて整数で求めよ。

〔ア〕解答例

  • 8
解説

本文の根拠

〔セキュリティ強化策と回線の検討〕

本社と営業所間で発生するトラフィックは,日中最大となり,7M ビット/秒であった。このうち,既存の業務システム利用のトラフィックが40%である。このトラフィックは,新業務システムの利用で,1.3倍になることが見込まれる。

〔セキュリティ強化策と回線の検討〕

これらの条件から,本社と営業所間の最大トラフィックは,[ ア ] M ビット/秒であり,増加量は少ないことが判明した。

7M ビット/秒のうち業務システムのトラフィックは 7×0.4=2.8M ビット/秒,それ以外が 7−2.8=4.2M ビット/秒である。業務システム分だけが1.3倍になるので 2.8×1.3=3.64M ビット/秒。合計は 3.64+4.2=7.84M ビット/秒で,小数点以下を切り上げて 8 になる。

根拠は,日中最大 7M ビット/秒,そのうち業務システムが 40%,それが 1.3 倍という三つの数値である。図1の注にある IP-VPN の回線速度 10M ビット/秒に対しても収まるので,“継続して利用可能”という結論と合う。

間違えやすい点。全体を1.3倍にして 7×1.3=9.1(切り上げで 10)とすると,1.3倍になるのは業務システム分だけという条件を落としている。また 7.84 を四捨五入ではなく切り上げるので 8 である(この場合はどちらでも 8 になる)。

設問5(1) 50字以内

本文中の下線④の発見方法を,50字以内で述べよ。

解答例

  • 指定された範囲内のIPアドレスあてにpingを発行し,応答の有無でホストの存在を判断する。
解説

本文の根拠

〔システムの運用管理方式の設計〕

統合監視システムには,④監視対象機器を発見して,接続構成図を自動作図する機能があるので,管理者は,接続構成図の中から,監視するネットワーク機器を選択することができる。

〔システムの運用管理方式の設計〕

ネットワーク機器の監視は SNMP で行われ,ネットワーク機器の稼働状態を,MIB 情報の定期的な収集によって監視するとともに,Trap の受信によって異常を検知する。

監視システムがまだ知らない機器を見つけるには,あり得るアドレスに片端から問い合わせて,返事の有無で存在を判断すればよい。代表的なのが,指定した範囲の IP アドレスに ping(ICMP エコー要求,RFC 792)を順に送り,エコー応答が返ってきたアドレスにホストが存在すると判断する方法である。見つけた機器には SNMP で MIB を問い合わせて,機器の種類や接続先を調べ,接続構成図を作る。

根拠は下線④の“監視対象機器を発見して”である。監視を始める前の段階なので,機器の一覧はまだ無い。この状況で機器を知る方法を答える。

字数の詰め方。“どこに”(指定された範囲内の IP アドレス),“何を送り”(ping),“どう判断するか”(応答の有無)の3点を入れる(解答例は45字)。講評は,ping や arp のユニキャストとブロードキャストの動作,arp テーブルから何が分かるかも改めて考えてほしいとしている。

採点講評(IPA)

設問5(1)は,ノード発見の方法について問うた。プロトコルの基本動作を理解することは重要なので,ping,arpのユニキャストとブロードキャストの動作に加えて,arpテーブルから何が分かるかなどを,改めてじっくり考えてほしい。

設問5(2) 50字以内

本文中の下線⑤の監視では,性能管理を効果的に行うために,どのような監視方法が必要か。50字以内で述べよ。

解答例

  • 仮想サーバと,仮想サーバが稼働する物理サーバの稼働状態とを対比して監視できるようにする。
解説

本文の根拠

〔システムの運用管理方式の設計〕

監視項目には,CPU,メモリなどの使用率,サービスとプロセスの稼働状態及びイベントログの内容がある。

〔システムの運用管理方式の設計〕

仮想サーバを活用したシステムでは,仮想サーバの稼働状態監視だけでは十分でないので,⑤通常のサーバ監視よりも複雑な監視が必要になる。

図2

注2 各 SGSV では,2台の AP サーバが稼働する。

仮想サーバは1台の物理サーバの CPU やメモリを複数で分け合っている。ある仮想サーバの性能が落ちたとき,その仮想サーバの使用率だけを見ても,原因が自分の処理なのか,同じ物理サーバ上の別の仮想サーバが資源を使っているのかは分からない。そこで,仮想サーバの稼働状態と,それが動いている物理サーバの稼働状態を対比して監視できるようにする。

根拠は下線⑤の直前の“仮想サーバの稼働状態監視だけでは十分でない”と,図2の注2(1台の SGSV の上で2台の AP サーバが動く)である。

字数の詰め方。“仮想サーバ”と“それが稼働する物理サーバ”の両方を挙げ,“対比して”監視することを書く(解答例は44字)。“物理サーバも監視する”だけでは,二つを結び付けて見るという要点が抜ける。

設問5(3) 25字以内

本文中の下線⑥のチューニング内容を,25字以内で述べよ。

解答例

  • 障害に結びつくログだけを検出するようにする。
解説

本文の根拠

〔システムの運用管理方式の設計〕

収集した情報の中に異常が発見されたときには,その内容がメッセージ表示画面に表示される。

〔システムの運用管理方式の設計〕

イベントログの監視では,フィルタ機能の活用が必要になり,フィルタの条件設定には,⑥運用後のチューニングが必要になる。

イベントログには通常の動作を記録しただけのものも大量に含まれる。すべてを異常としてメッセージ表示すると,本当に対応すべきものが埋もれてしまう。逆に絞り過ぎると障害の兆候を見逃す。どのログが障害に結びつくかは実際に運用してみないと分からないので,運用しながらフィルタ条件を見直し,障害に結びつくログだけを検出するように調整する。これがチューニングの内容である。

根拠は下線⑥の“フィルタの条件設定には”と,異常が“メッセージ表示画面に表示される”という監視の流れである。

字数の詰め方。チューニングの目標(障害に結びつくログだけを検出する)を書く(解答例は22字)。“フィルタ条件を変更する”だけでは,何のために変えるかが抜ける。

設問6(1) 30字以内

負荷テストで判明した状況を基に,負荷分散効果をより高められる負荷分散方式を,30字以内で答えよ。

解答例

  • CPU使用率の低いAPサーバに処理を振り分ける。
解説

本文の根拠

〔システムの切替え〕

LB には,処理を平均的に分散させるために,ラウンドロビン方式が設定されている。

表

物理サーバ2:仮想サーバ3 は50〜100,仮想サーバ4 は60〜100。

〔システムの切替え〕

このようなプログラムを実行するサーバに負荷を集中させることなく,負荷を平準化するために,負荷分散方式の見直しを行うことにした。

ラウンドロビン方式は要求を順番に振り分けるだけで,各サーバが今どれだけ忙しいかは見ない。重い検索処理を受けた仮想サーバにも,次の順番が来れば新しい要求が送られるので,負荷の偏りが続く。負荷テストの表でも,仮想サーバ3・4 が 50〜100%,60〜100% と高く,ほかは 10〜60% にとどまっている。そこで,各 AP サーバの CPU 使用率を LB が把握し,使用率の低いサーバに処理を振り分ける方式にすれば,負荷が平準化される。

根拠は,ラウンドロビン方式が設定されていることと,表で CPU 使用率が仮想サーバによって大きく異なること,“負荷を平準化するために”という見直しの目的である。

字数の詰め方。振り分けの基準(CPU 使用率の低い AP サーバ)を具体的に書く(解答例は24字)。“負荷の低いサーバ”とだけ書くと何で負荷を測るのかが伝わらないので,負荷テストで測った CPU 使用率を基準として書く。

設問6(2) 25字以内

データ移行テストの目的を,25字以内で述べよ。

解答例(3通り)

  • データ抽出,加工ロジックの正当性の確認
  • 新業務システムにおけるマスタデータの完全性の確認
  • データ移行に要する時間の確認
解説

本文の根拠

〔システムの切替え〕

データ移行は,移行データの作成,移行データの取込み,及び移行データの確認の3段階で行われる。

〔システムの切替え〕

移行データは,既存の業務システムからトランザクションデータを抽出し,各種マスタとテーブルを参照して,加工処理が施されて作成される。

図6

移行データの取込み:移行データの作成の開始より少し後の月末(金曜)の終わり近くから,稼働1日前(日曜)の初めまで。

データ移行テストで確かめることは,本番の移行が正しく,時間内に終わるかどうかである。解答例は三つを挙げており,どれか一つを書けばよい。一つ目は,トランザクションデータを抽出し加工するロジックが正しいかの確認。二つ目は,加工で参照する新業務システムのマスタデータがそろっているか(完全性)の確認。三つ目は,移行に要する時間の確認で,図6のように金曜夜から日曜までの限られた時間に収まるかを見積もるために要る。

根拠は,移行データが“抽出し,各種マスタとテーブルを参照して,加工処理が施されて作成される”という記述(ロジックとマスタ)と,図6で移行作業が週末の限られた期間に組まれていること(時間)である。

字数の詰め方。“何の確認か”を名詞で締める形にすると25字に収まる(解答例は14〜24字)。“データ移行が正しく行えるかどうかを確認する”は本文の言い換えにとどまるので,何を確かめるのかまで具体的に書く。

設問6(3) 解答欄2つ

システム切替スケジュールの立案において明確にすべき事項を,問題発生時の措置の面から二つ挙げ,それぞれ40字以内で述べよ。

〔①〕解答例

  • データ移行時に予測できる問題を事前に明確化して,対応策を作っておく。
  • システム切替えを断念するときの判断基準と,それを決定する時間を明確化する。

〔②〕解答例

  • データ移行時に予測できる問題を事前に明確化して,対応策を作っておく。
  • システム切替えを断念するときの判断基準と,それを決定する時間を明確化する。

〔備考〕二つの事項を①②に一つずつ答える(順不同)

解説

本文の根拠

〔システムの切替え〕

移行データの確認後,月曜日の業務開始のための準備作業を行い,システム切替作業を終了した。

〔システムの切替え〕

データ移行作業の途中で問題が幾つか発生したが,必要な対応措置をとり,無事に新業務システムを稼働させることができた。

図6

列は作業内容,月末(金曜),稼働2日前(土曜),稼働1日前(日曜)。

切替えは金曜の業務終了後から日曜までに終え,月曜には業務を始めなければならない。途中で問題が起きたときに慌てないよう,スケジュールの立案時に二つを決めておく。一つは,データ移行時に起こり得る問題をあらかじめ洗い出し,それぞれの対応策を用意しておくこと。もう一つは,問題が解決できないときにシステム切替えを断念し,既存システムで月曜の業務を続ける判断をするための基準と,その判断を下す時刻を決めておくことである。

根拠は,切替えが月末の金曜から3日間という期限付きの作業であること(図6)と,“データ移行作業の途中で問題が幾つか発生した”という実績である。

字数の詰め方。一つ目は“予測できる問題を事前に明確化し,対応策を作っておく”,二つ目は“断念するときの判断基準と,決定する時間を明確化する”が核である(解答例は34字,37字)。二つ目は基準だけでなく“いつ決めるか”まで書くと,期限のある切替えに即した答えになる。①②の順はどちらでもよい。講評では,必要事項を的確に指摘した解答が過半数を占め,予想以上の正答率だったとされている。

採点講評(IPA)

設問6(3)は,システム切替え時に明確化すべき事項について問うた。本文で記述したシステム切替えは,アプリケーション技術者寄りの分野だったが,ネットワーク技術者としての体験や学んだ知識を生かして,必要事項を的確に指摘した解答が過半数を占め,予想以上の正答率だった。

出典:平成22年度 秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)

問2 ヘルプデスクシステムの構築

ヘルプデスクシステムの構築に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。

D 社は,システム構築ベンダである。顧客企業のシステム開発を受託する以外に,自社で所有するデータセンタを活用したサービス事業も展開している。最近,D 社のアプリケーション開発部門が,新しいヘルプデスクソフトを開発した。D 社は,このソフトウェアの販売に当たり,顧客企業にとって導入期間の短縮及び初期コストの低減が可能なサービス型で提供できないか,検討することになった。その担当者として,データセンタサービス部門のサーバ技術者である S 君とネットワーク技術者である N 君が指名された。

S 君は,“比較的小規模で,多くの顧客企業にサービスを提供する場合は,サーバの仮想化を行って,複数企業でサーバを共用すれば,投資の削減,サービス立上げの迅速化,運用効率の向上などが可能になる”と考えた。サーバの仮想化では,仮想化を行う仕組み(以下,仮想化機構という)を動作させるサーバのことを物理サーバという。仮想化機構によって,物理サーバ上に複数の OS 実行環境(以下,仮想サーバという)を作成することができる。

D 社の仮想サーバを採用したヘルプデスクシステム及び利用環境での機器の種類と設置場所を図1に示す。

ヘルプデスクシステム及び利用環境での機器の種類と設置場所の図。“ヘルプデスクシステム”の破線の枠の中に,D 社開発拠点(IP-PBX,IP 電話機,仮想サーバ,PC,SW,VPN ルータ)と D 社データセンタ(SW,仮想サーバ,VPN ルータ,PC)がある。“利用環境”の破線の枠の中に,顧客企業(IP-PBX,IP 電話機,VPN ルータ,PC,SW),展示会場(ルータ,IP 電話機,VPN ルータ,PC,SW),客先デモ環境(モバイルルータ,VPN ルータ,PC,SW)がある。D 社開発拠点と顧客企業は電話網に接続している。D 社開発拠点,D 社データセンタ,顧客企業,展示会場,客先デモ環境は,広域イーサ網/インターネットに接続している。仮想サーバは網掛けで示されている。凡例:広域イーサ網:広域イーサネットサービス網,SW:レイヤ2スイッチ又はレイヤ3スイッチ,IP-PBX:VoIP 対応 PBX。注 網掛けは物理サーバを示す。
図1 ヘルプデスクシステム及び利用環境での機器の種類と設置場所

D 社のヘルプデスクシステムは,電話システムとの連携機能である CTI(Computer Telephony Integration)機能も利用できるように作られているのが特長で,コールセンタでの顧客サポート業務に利用すると効果的である。その連携のための構成機器が,図1に示した IP-PBX と IP 電話機である。ヘルプデスクソフトと IP-PBX の制御を行う CTI 制御ソフトは,それぞれ仮想サーバ上で動作させる。

図1のヘルプデスクシステムで実現したいことは,次の2点である。

N 君と S 君は,仮想サーバを使ったシステムの技術的特徴を整理した上で,まず,サーバ仮想化の検討を行った。

〔サーバ仮想化の検討〕

物理サーバ上に,仮想化機構を動作させるための OS を必要としない,[ ア ] 方式と呼ばれる方式は,仮想サーバの動作の安定性,仮想化を支援するハードウェアによる性能向上などを背景に普及しつつある。仮想化機構は,仮想サーバの実行制御,及び仮想サーバと外部のネットワークやストレージデバイスとの接続制御を行う。

仮想サーバを使用したシステムでは,1台の物理サーバ内で,多数の仮想サーバを動作させることができる。N 君によると,“仮想化を行った場合は,仮想化を行わずに物理的に独立したサーバだけでシステムを構成する場合と比較すると,NIC などの外部接続用ハードウェアを複数の仮想サーバで共有するので,[ イ ] と [ ウ ] の面でより注意が必要である”ということであった。

仮想サーバと,ほかの仮想サーバや外部のスイッチとの接続は,ソフトウェアで実現する仮想的なスイッチ(以下,仮想 SW という)が行う。今回採用予定の仮想 SW はレイヤ2スイッチであり,その使用構成を,図2に示す。

仮想 SW の使用構成図。物理サーバの枠の中に,仮想サーバが2台(それぞれ仮想 NIC を2つもつ),管理エージェント,仮想 SW が2台,物理 NIC が3つある。左の仮想 SW は仮想サーバポート(V)を2つとアップリンクポート(U)を1つもつ。右の仮想 SW は仮想サーバポート(V)を2つ,管理ポート(M)を1つ,アップリンクポート(U)を2つもつ。左の仮想サーバの左の仮想 NIC は左の仮想 SW の左の V に接続し,この接続に①が付いている。左の仮想サーバの右の仮想 NIC は右の仮想 SW の左の V に接続し,この接続に②が付いている。右の仮想サーバの左の仮想 NIC は左の仮想 SW の右の V に,右の仮想サーバの右の仮想 NIC は右の仮想 SW の右の V に接続している。管理エージェントは右の仮想 SW の M に接続している。左の仮想 SW の U は物理 NIC を介して外部スイッチに接続している。右の仮想 SW の2つの U はそれぞれ別の物理 NIC に接続し,それぞれの物理 NIC は別々の外部スイッチに接続している。この2本の物理 NIC と外部スイッチ間の接続に,それぞれ③,④が付いている。凡例:U:アップリンクポート,V:仮想サーバポート,M:管理ポート。
図2 仮想 SW の使用構成

物理サーバの NIC を物理 NIC という。仮想サーバの NIC に相当する機能部分を仮想 NIC という。

仮想 SW は用途別に3種類のポートを備えることができる。

仮想サーバポート(V)は,仮想サーバの仮想 NIC を接続するためのポートである。

アップリンクポート(U)は,物理 NIC と1対1で対応し,仮想 SW を外部のネットワークに接続するためのポートである。(ⅰ)仮想 SW にとって,物理 NIC は外部スイッチに接続するためのケーブルと見なせる。

管理ポート(M)は,仮想化機構と物理サーバの外部との通信を仲介する管理エージェントが,後述する管理システムと通信するために接続するポートである。

仮想化機構は仮想 SW も管理しており,送信元仮想 NIC の MAC アドレスを把握しているので,仮想 SW は通過するパケットから MAC アドレスを学習する動作を行わない仕様になっている。また,仮想 SW 間の接続はできないという仕様になっているが,仮想 SW に接続する仮想サーバの接続数には物理的な制限がないので,構成上の制約とはならない。加えて,アップリンクポート間ではパケットを転送することはできない仕様になっているが,アップリンクポートを通過するパケットは基本的に仮想サーバ及び管理エージェントを送信元かあて先とするパケットなので,これも構成上の制約とはならない。

次は,検討を開始した S 君と N 君の会話である。

以上の検討から,N 君の提案した技術を使うことにし,次に仮想サーバの外部ネットワーク接続方式について検討することにした。

〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕

論理的に束ねた複数の物理 NIC の,どの NIC を通して外部ネットワークとパケットを送受するかについての方式の検討が必要になった。

D 社で採用予定の仮想 SW では,外部接続に使用する物理 NIC を選択する方式(以下,物理 NIC 選択方式という)として,次の(1)〜(4)の4種類がある。(2)と(3)の方式では,選択のために使用する値からハッシュ値を求め,そのハッシュ値を基に物理 NIC を選択する。

N 君は,仮想 SW の物理 NIC 選択方式と外部スイッチの構成パターンについては,組み合わせる上で注意が必要と考え,S 君に説明するために,図3の外部スイッチの構成パターンを示した。

外部スイッチの構成パターンの図。3つのパターンとも,物理サーバの中の仮想 SW が仮想サーバポート V を2つ,アップリンクポート U を2つもち,2つの U がそれぞれ別の物理 NIC に接続している。L2SW<sub>1</sub>,L2SW<sub>2</sub>,L3SW<sub>1</sub>,L3SW<sub>2</sub> を外部スイッチと呼ぶ。L3SW<sub>1</sub> と L3SW<sub>2</sub> からは,それぞれ上位へ線が出ている。構成パターンⅠ:左の物理 NIC は L2SW<sub>1</sub> に(リンク①),右の物理 NIC は L2SW<sub>2</sub> に(リンク②)接続する。L2SW<sub>1</sub> は L3SW<sub>1</sub> に(リンク③),L2SW<sub>2</sub> は L3SW<sub>2</sub> に(リンク④)接続し,L3SW<sub>1</sub> と L3SW<sub>2</sub> は互いに接続する(リンク⑤)。構成パターンⅡ:構成パターンⅠの接続に加えて,L2SW<sub>1</sub> と L3SW<sub>2</sub> を接続し(リンク⑥),L2SW<sub>2</sub> と L3SW<sub>1</sub> を接続する(リンク⑦)。ポート識別記号は,左の物理 NIC がつながる L2SW<sub>1</sub> のポートが a,右の物理 NIC がつながる L2SW<sub>2</sub> のポートが b,L2SW<sub>1</sub> のリンク③のポートが c,リンク⑥のポートが d,L2SW<sub>2</sub> のリンク⑦のポートが e,リンク④のポートが f,L3SW<sub>1</sub> のリンク③のポートが g,リンク⑦のポートが h,L3SW<sub>2</sub> のリンク⑥のポートが i,リンク④のポートが j。構成パターンⅢ:構成パターンⅠの接続に加えて,L2SW<sub>1</sub> と L2SW<sub>2</sub> をスタック接続する。凡例:L2SW:レイヤ2スイッチ,L3SW:レイヤ3スイッチ,①〜⑦:リンク番号,a〜j:L2SW と L3SW のポート識別記号。
図3 外部スイッチの構成パターン

構成パターンⅠは2台の L2SW を独立させる構成,構成パターンⅡは L2SW と L3SW 間のリンクを冗長化させる構成,構成パターンⅢはスタック接続によって2台の外部スイッチを1台に見せる構成である。図3中の③〜⑦のリンクは,L3SW1 と L3SW2 のレイヤ2機能によって同一 VLAN となっている。また,L3SW1 と L3SW2 は,VRRP による冗長化構成を採っている。N 君は,表の物理 NIC 選択方式と外部スイッチの構成パターンとの組合せ検討表を S 君に示した。

行は物理 NIC 選択方式,列は外部スイッチの構成パターンⅠ,Ⅱ,Ⅲ。ポート ID ベース方式:Ⅰ,Ⅱ,Ⅲとも網掛け。MAC ベース方式:Ⅰ,Ⅱ,Ⅲとも網掛け。IP ベース方式:Ⅰは×,Ⅱは×,Ⅲは網掛け。明示的選択方式:Ⅰは△,Ⅱは○,Ⅲは○。○:接続上,問題のない構成,△:信頼性の観点から対策が必要な構成,×:接続できない構成。注 網掛けは設問の都合上省略していることを示す。
表 物理 NIC 選択方式と外部スイッチの構成パターンとの組合せ検討表

(ⅲ)構成パターンⅠで物理 NIC と外部スイッチとを接続した場合,冗長化ができていない部分があるので,外部スイッチへの対策が必要である。構成パターンⅡとⅢでは,(ⅳ)適切な場所にループを回避するための設定が必要になる。構成パターンⅠ〜Ⅲのうち,物理 NIC 選択方式によっては,組合せが不可能なものがある。IP ベース方式では,構成パターンⅠ及びⅡとは組み合わせられない。

N 君は図3と表を用いて,S 君に各組合せの優劣を説明し,IP ベース方式と構成パターンⅢの組合せを提案した。S 君は N 君の説明に納得し,提案に同意した。

〔デモシステムの構築〕

マーケティング部門は,各種広告媒体に加え,展示会,客先でのデモが有効と考え,コールセンタでの利用を想定したデモを見せたいと N 君に要請した。デモ内容について検討した結果,展示会場から,D 社開発拠点の IP-PBX を通して展示会場の IP 電話機に電話を掛けると,PC にヘルプデスクソフトの問合せ対応画面をポップアップ表示する連係動作を見せることになった。そこで N 君は,D 社開発拠点と展示会場をインターネット VPN で接続するネットワーク構成を検討した。

N 君が検討した D 社開発拠点と展示会場間のネットワーク接続構成を,図4に示す。展示会場側のインターネット接続については,主催者がルータまで準備し,出展者に対して動的なグローバル IP アドレスでの接続を提供する(図4中の④の部分)。N 君は,これらの要件から,インターネット VPN の構築には IPsec-VPN 方式のトンネルモードとアグレッシブモードを使わなければいけないと考えた。

D 社開発拠点と展示会場間のネットワーク接続構成図。D 社開発拠点では,“サーバ,IP-PBX など”(網掛け)が VPN ルータに接続し(①),VPN ルータがインターネットに接続している(②)。展示会場では,インターネットに主催者提供のルータが接続し(③),ルータと VPN ルータが破線で接続している(④)。VPN ルータには PC と IP 電話機が接続している(PC との接続が⑤)。D 社開発拠点の VPN ルータと展示会場の VPN ルータの間は,“事前確認用接続(直結)”の一点鎖線で結ばれている(⑥)。注 網掛けは複数機器を含むことを示す。
図4 D 社開発拠点と展示会場間のネットワーク接続構成

展示会場での準備には,開催前日の限られた時間しかないので,D 社内で事前確認を行うことにした。会場に機器を持ち込んでも,サーバ,IP-PBX,IP 電話機及び PC の IP アドレスなどの設定を変更しなくても済むように,事前確認用接続を行って動作確認を行う。会場に機器を持ち込むときは,ネットワーク接続用機器の設定変更だけで済むようにする。併せて,接続要件を示して主催者側に確認する。N 君は,実際の事前確認では,あらかじめ開発拠点内で,図4中の④の代わりに⑥の接続を使って確認してから,展示会場に持ち込んだ。VPN ルータの設定は,多少変更が必要だったが,無事にデモを行うことができ,来場者にも好評であった。

続いて,客先でのデモ実現方式の検討に入った。まず,N 君はルータの代わりに,通信事業者が提供する,無線によるインターネット接続サービスに対応したモバイルルータを使えないか検討した。この場合,モバイルルータの配下の NAT 環境に VPN ルータを接続するので,帯域不足・遅延で通話は難しいものの,アプリケーションの画面を表示するには十分な帯域であり,ヘルプデスクシステムの特長を PR できることを確認した。

販売促進の結果,J 社から最初の受注をし,D 社データセンタにあるサービス提供用システム内に,J 社向けサービス提供用ヘルプデスクシステム(以下,J 社向けサービス提供用システムという)の構築に着手した。

〔J 社向けサービス提供用システムの構築〕

D 社が J 社にサービスを提供するための,J 社向けサービス提供用システムと開発システムを図5に示す。

J 社向けサービス提供用システムと開発システムの図。左が開発システム(D 社開発拠点),右がサービス提供用システム(D 社データセンタ)。D 社開発拠点:物理サーバ1 の中で仮想サーバ1 が仮想 SW に接続し,物理サーバ2 の中で仮想サーバ2 が仮想 SW に接続している。2台の仮想 SW とストレージ1 は,それぞれ2台の L2SW の両方に接続している。2台の L2SW は互いに接続し,それぞれ L3SW に接続している。2台の L3SW は互いに接続し,それぞれ VPN ルータと広域イーサ網に接続している。VPN ルータはインターネットに接続している。D 社データセンタ:物理サーバ3 と物理サーバ4 の中では,それぞれ複数の仮想サーバが仮想 SW に接続している。2台の仮想 SW とストレージ2 は,それぞれ2台の L2SW の両方に接続している。2台の L2SW は互いに接続し,それぞれ L3SW に接続している。2台の L3SW は互いに接続している。左の L3SW は広域イーサ網と左の VPN ルータに,右の L3SW は右の VPN ルータに接続している。2台の VPN ルータはインターネットに接続している。データセンタには現行監視システムと管理サーバもある。注 現行監視システムと管理サーバについては,冗長構成及びネットワーク接続は表示していない。
図5 J 社向けサービス提供用システムと開発システム(抜粋)

開発システムは,J 社向けサービス提供用システムとできるだけ同一の構成とするため,冗長化構成とした。

J 社向けサービス提供用システムは,次の手順で構築することにした。

また,障害が発生したときに代替サーバに速やかに切り替えて運用できるようにするため,仮想サーバ1を動作させている物理サーバ1に障害が発生した場合の代替サーバは,物理サーバ2とする。同様に,データセンタの物理サーバ3に障害が発生した場合の代替サーバは,物理サーバ4とする。このとき,速やかな自動切替えを実現するために必要なストレージ1とストレージ2は,コストパフォーマンスの良い iSCSI(internet SCSI)タイプを使用することにした。

J 社では社員の負担を軽減するために,導入システムの運用を極力,外部に委託したいと考えていた。そこで,D 社ではヘルプデスクシステムの監視に当たって,D 社データセンタ内の現行監視システムの監視対象に,今回新規に導入する仮想サーバを追加することにした。仮想サーバ上で動作するアプリケーションの状態監視については,これまで D 社が導入してきた手法と同様に,各仮想サーバの OS 上に監視エージェントを導入し,必要なプロセスの動作確認,イベントログの監視及びソフトウェアリソースの状態把握を行うことにした。

加えて,S 君は,仮想サーバと仮想 SW の接続設定,ポートの属性設定,動作モード設定などの構成制御のため,ベンダが提供する管理システムを導入することにした。管理システムは,図5中の管理サーバ上で動作し,図2に示した管理エージェントに接続して,各種管理を行う。この管理システムは,システムの構成制御に不可欠なものであり,可用性の確保が重要であった。

そこで N 君は,(ⅴ)管理システムの可用性に配慮した設計を行い,ヘルプデスクシステム用の監視機能を実現した。さらに,物理サーバに障害が発生したときに,代替の別の物理サーバ上の仮想サーバに処理を移行する際に,ネットワーク情報を継承させる必要があることを S 君にアドバイスした。

このようにして,D 社は,J 社向けのサービスを,開始できるようになった。今後は,新たな顧客企業のシステムを受注した場合に備え,仮想サーバを作成する際の基になるテンプレートを,D 社データセンタに用意しておいて,データセンタで短時間に顧客用仮想サーバが生成できるようにするなど,J 社向けヘルプデスクシステム構築の実績を生かしてデータセンタの提供機能を拡充し,効率よくシステム展開できるように準備を整えた。

出題趣旨(IPA)

セキュリティ技術,及びデータセンタを実現するための各種仮想化技術の進歩と,ネットワークの高速化によって,構築する情報システムは従来と異なる実現形態が可能になっている。その例として,情報システムそのものを構築せず,サービスとして提供する形態があり,それを事業として展開する会社も出てきている。本問では,ヘルプデスクシステム用のソフトを開発し,それをサービスとして提供したベンダを例として取り上げている。サービス提供までのシステム構築の一つのフェーズであるインフラ設計の過程で,サーバの仮想化技術やセキュリティ技術と活用しつつ,整合性を取って実施するネットワーク設計技術について問う。

設問と解答例

設問1(1) 解答欄5つ

本文中の [ ア ] 〜 [ オ ] に入れる適切な字句を答えよ。

〔ア〕解答例

  • ハイパーバイザ

〔イ〕解答例

  • 信頼性

〔ウ〕解答例

  • 通信帯域の確保

〔エ〕解答例

  • チーミング

〔オ〕解答例

  • リンク

〔備考〕イ,ウは順不同

解説

本文の根拠

〔サーバ仮想化の検討〕

物理サーバ上に,仮想化機構を動作させるための OS を必要としない,[ ア ] 方式と呼ばれる方式は,仮想サーバの動作の安定性,仮想化を支援するハードウェアによる性能向上などを背景に普及しつつある。

〔サーバ仮想化の検討〕

NIC などの外部接続用ハードウェアを複数の仮想サーバで共有するので,[ イ ] と [ ウ ] の面でより注意が必要である

〔サーバ仮想化の検討〕

N 君:外部のネットワークに接続する部分についても,信頼性や通信帯域の確保についてよく考えておく必要があります。

〔サーバ仮想化の検討〕

このため(ⅱ)NIC を論理的に束ねて一つに見せる [ エ ] 技術を活用する必要があります。この技術によって冗長化と負荷分散が実現できます。

〔サーバ仮想化の検討〕

N 君:スイッチ間の [ オ ] 状態を監視することで,仮想 SW は障害を認識できます。

ア:ホスト OS の上で仮想化ソフトを動かす方式(ホスト OS 型)に対し,ハードウェアの上で仮想化機構が直接動き,ホスト OS を必要としない方式をハイパーバイザ方式(ベアメタル型)という。イ・ウ:1枚の NIC を多数の仮想サーバが共有するので,NIC や回線が故障すると多数の仮想サーバが一度に通信できなくなり(信頼性),また1本の回線の帯域を多数で分け合う(通信帯域の確保)。エ:複数の NIC を論理的に束ねて一つに見せ,冗長化と負荷分散を行う技術をサーバ側ではチーミングという。オ:仮想 SW はアップリンクポートのリンク状態(リンクアップ/ダウン)を見て,外部スイッチとの接続の障害を認識する。

根拠は各空欄の前後である。ア は“OS を必要としない”,イ・ウ は N 君の次の発言の“信頼性や通信帯域の確保”,エ は“NIC を論理的に束ねて一つに見せる”,オ は“スイッチ間の”“状態を監視する”が手掛かりになる。

間違えやすい点。エ をリンクアグリゲーションとすると,スイッチ間を束ねる技術の名前になる。ここでは物理サーバの NIC を束ねる側なのでチーミングである。オ を“ポート”“ケーブル”とすると状態の名前にならない。イとウは順不同である。講評によると,設問1は (1) のアを除き正答率が高かった。

採点講評(IPA)

設問1は,(1)アを除き正答率は高かった。仮想化技術の基本的な知識は身につけてほしい。

設問1(2) 10字以内

本文中の下線(ⅰ)について,物理 NIC から外部スイッチに送信されるパケットの送信元 MAC アドレスは,どこのアドレスとなっているか。10字以内で答えよ。

解答例

  • 仮想NIC
解説

本文の根拠

〔サーバ仮想化の検討〕

(ⅰ)仮想 SW にとって,物理 NIC は外部スイッチに接続するためのケーブルと見なせる。

〔サーバ仮想化の検討〕

仮想化機構は仮想 SW も管理しており,送信元仮想 NIC の MAC アドレスを把握しているので,仮想 SW は通過するパケットから MAC アドレスを学習する動作を行わない仕様になっている。

仮想 SW はレイヤ2スイッチなので,フレームの MAC アドレスを書き換えずに転送する。物理 NIC は“ケーブルと見なせる”,つまりフレームをそのまま外へ送り出すだけで,自分の MAC アドレスに付け替えることはしない。したがって外部スイッチに届くパケットの送信元 MAC アドレスは,送信した仮想サーバの仮想 NIC のアドレスである。

根拠は下線 (ⅰ) の“ケーブルと見なせる”と,仮想化機構が“送信元仮想 NIC の MAC アドレスを把握している”という記述である。

字数の詰め方。“仮想 NIC”(解答例は5字)と答えれば足りる。“物理 NIC”とすると,下線 (ⅰ) の“ケーブルと見なせる”に反する。

設問1(3)

本文中の下線(ⅱ)について,この技術の適用部分を,図2中の番号で,すべて答えよ。

解答例

  • ③,④
解説

本文の根拠

〔サーバ仮想化の検討〕

アップリンクポート(U)は,物理 NIC と1対1で対応し,仮想 SW を外部のネットワークに接続するためのポートである。

図2

右の仮想 SW の2つの U はそれぞれ別の物理 NIC に接続し,それぞれの物理 NIC は別々の外部スイッチに接続している。この2本の物理 NIC と外部スイッチ間の接続に,それぞれ③,④が付いている。

〔サーバ仮想化の検討〕

また,仮想 SW 間の接続はできないという仕様になっているが

チーミングは,一つの仮想 SW にぶら下がる複数の物理 NIC を束ねる。図2で物理 NIC を2枚使っているのは右の仮想 SW だけで,その2枚の外側の接続が③と④である。左の仮想 SW の物理 NIC は1枚しかなく,束ねる相手がない。①②は仮想 NIC と仮想 SW の間の接続であり,物理 NIC ではない。

根拠は,アップリンクポートが物理 NIC と1対1で対応することと,図2で右の仮想 SW が U を2つもつことである。仮想 SW 間は接続できないので,左右の仮想 SW の物理 NIC をまたいで束ねることもできない。

間違えやすい点。①②を選ぶと,仮想 NIC を束ねることになり,下線 (ⅱ) の“外部接続のかなめである物理 NIC”の話から外れる。“すべて”とあるので③と④の両方を書く。

設問2(1) 解答欄2つ

4種類の物理 NIC 選択方式のうち,動作させる仮想サーバが1台でも物理 NIC の負荷分散効果が得られる方式はどれか。方式名を答えよ。また,その理由を40字以内で述べよ。

〔方式名〕解答例

  • IPベース方式

〔理由〕解答例

  • 通信する相手のIPアドレスによって通過する物理NICが動的に変化するから
解説

本文の根拠

〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕

(1) 仮想 NIC が接続されている仮想 SW のポート ID を使用する(以下,ポート ID ベース方式という)。

〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕

(3) パケットの送信元とあて先の IP アドレスを使用する(以下,IP ベース方式という)。

〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕

(2)と(3)の方式では,選択のために使用する値からハッシュ値を求め,そのハッシュ値を基に物理 NIC を選択する。

仮想サーバが1台だけだと,その仮想 NIC のポート ID も MAC アドレスも一つに決まる。ポート ID ベース方式と MAC ベース方式では選ばれる物理 NIC が常に同じになり,明示的選択方式も指定した1枚しか使わないので,負荷は分散しない。IP ベース方式は送信元とあて先の IP アドレスの組からハッシュ値を求めるので,通信相手が変われば選ばれる物理 NIC も変わる。1台の仮想サーバでも,相手ごとに通信が複数の物理 NIC に散らばる。

根拠は4種類の方式の定義で,選択に使う値が仮想サーバ1台の中で変わり得るのは IP ベース方式のあて先 IP アドレスだけである。

字数の詰め方。理由は“通信する相手の IP アドレスによって”“通過する物理 NIC が動的に変化する”の2点を書く(解答例は36字)。方式名は本文の呼び名どおり“IP ベース方式”と書く。

設問2(2) 解答欄2つ

本文中の下線(ⅲ)について,冗長化できていない部分を図3中のリンク番号で,すべて答えよ。また,そのための対策として,外部スイッチにもたせるべき機能を,45字以内で述べよ。

〔冗長化できていない部分〕解答例

  • ③,④

〔外部スイッチにもたせるべき機能〕解答例

  • 上位リンクに障害が発生した場合,下位リンクを強制的にリンクダウンさせる機能
解説

本文の根拠

図3

構成パターンⅠ:左の物理 NIC は L2SW1 に(リンク①),右の物理 NIC は L2SW2 に(リンク②)接続する。L2SW1 は L3SW1 に(リンク③),L2SW2 は L3SW2 に(リンク④)接続し,L3SW1 と L3SW2 は互いに接続する(リンク⑤)。

〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕

(ⅲ)構成パターンⅠで物理 NIC と外部スイッチとを接続した場合,冗長化ができていない部分があるので,外部スイッチへの対策が必要である。

〔サーバ仮想化の検討〕

N 君:スイッチ間の [ オ ] 状態を監視することで,仮想 SW は障害を認識できます。

構成パターンⅠでは,L2SW1 から上位へはリンク③,L2SW2 から上位へはリンク④の1本ずつしかない。例えば③が切れても,物理 NIC と L2SW1 の間のリンク①はリンクアップのままなので,仮想 SW は障害に気付かず①へ送り続け,そのパケットは L2SW1 で行き場を失う。仮想 SW が見ているのは自分の直結リンクの状態(設問1のオ)だけだからである。そこで外部スイッチ側に,上位リンク(③)に障害が起きたら下位リンク(①)を強制的にリンクダウンさせる機能をもたせる。そうすれば仮想 SW はリンクダウンを検知して,もう一方の物理 NIC に切り替えられる。

根拠は,図3の構成パターンⅠで③④に迂回路がないことと,仮想 SW がリンク状態の監視で障害を認識するという N 君の説明である。

字数の詰め方。機能は“上位リンクの障害”を契機に“下位リンクを強制的にリンクダウンさせる”の因果を書く(解答例は37字)。リンク番号は“すべて”とあるので③と④を両方挙げる。

設問2(3) 解答欄2つ

本文中の下線(ⅳ)について,必要な設定を,15字以内で答えよ。また,構成パターンⅡでループを回避する設定が不要なポートを,図3中のポート識別記号 a〜j で,すべて答えよ。

〔必要な設定〕解答例

  • スパニングツリープロトコル

〔設定が不要なポート〕解答例

  • a,b
解説

本文の根拠

〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕

構成パターンⅡとⅢでは,(ⅳ)適切な場所にループを回避するための設定が必要になる。

〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕

図3中の③〜⑦のリンクは,L3SW1 と L3SW2 のレイヤ2機能によって同一 VLAN となっている。

〔サーバ仮想化の検討〕

加えて,アップリンクポート間ではパケットを転送することはできない仕様になっているが

構成パターンⅡでは③④⑤⑥⑦が同一 VLAN で,L2SW と L3SW の間がたすき掛けになっているので,レイヤ2のループができる。ループを回避するにはスパニングツリープロトコル(IEEE 802.1D)を設定し,どこかのポートをブロッキングにする。一方,仮想 SW はアップリンクポート間でパケットを転送しないので,物理 NIC を経由して L2SW1 と L2SW2 がつながることはない。物理 NIC につながるポート a,b はループの経路に含まれないので,ループを回避する設定は要らない。

根拠は,③〜⑦が“同一 VLAN”であることと,仮想 SW が“アップリンクポート間ではパケットを転送することはできない”仕様であることである。

字数の詰め方。必要な設定は“スパニングツリープロトコル”(解答例は13字)と技術名で答える。ポートは“すべて”とあるので a と b を両方書く。c〜j はループ上にあるので不要とは言えない。

設問2(4) 65字以内

IP ベース方式では,構成パターンⅠ及びⅡとは組み合わせられない理由を65字以内で述べよ。

解答例

  • 同一の送信元MACアドレスをもつパケットが二つのスイッチに送られるので,MACアドレスの学習が適切に行われないから
解説

本文の根拠

〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕

(3) パケットの送信元とあて先の IP アドレスを使用する(以下,IP ベース方式という)。

〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕

IP ベース方式では,構成パターンⅠ及びⅡとは組み合わせられない。

〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕

構成パターンⅠは2台の L2SW を独立させる構成,構成パターンⅡは L2SW と L3SW 間のリンクを冗長化させる構成,構成パターンⅢはスタック接続によって2台の外部スイッチを1台に見せる構成である。

IP ベース方式では,同じ仮想サーバのパケットでもあて先によって別の物理 NIC から出ていく。送信元 MAC アドレスはどちらも同じ仮想 NIC のアドレス(設問1(2))なので,同じ MAC アドレスのパケットが L2SW1 と L2SW2 の二つのスイッチに入ることになる。構成パターンⅠ・Ⅱでは二つの L2SW は別々のスイッチなので,上位の L3SW などはその MAC アドレスの所在を片方から学習しては別の方向から学習し直すことを繰り返し,戻りのパケットを正しく届けられない。これが組み合わせられない理由である。

根拠は,IP ベース方式があて先 IP アドレスで物理 NIC を選ぶことと,構成パターンⅠ・Ⅱが2台の L2SW を別々のスイッチとして使う構成であることである。構成パターンⅢはスタック接続で1台に見えるので,この問題を解消できる(設問2(5))。

字数の詰め方。“同一の送信元 MAC アドレスのパケットが二つのスイッチに送られる”という原因と,“MAC アドレスの学習が適切に行われない”という結果をつなげて書く(解答例は57字)。講評では,設問2(4)と(5)の正答率が低かったとされている。

採点講評(IPA)

設問2(4)と(5)の正答率が低かった。負荷分散と可用性を高めるリンクアグリゲーションについては,ネットワークの基礎的な技術として理解しておいてほしい。

設問2(5) 45字以内

IP ベース方式で構成パターンⅢを組み合わせる場合,どの外部スイッチにどのような設定が必要か。45字以内で述べよ。

解答例

  • L2SW1とL2SW2の物理NIC接続ポートにリンクアグリゲーションを設定する。
解説

本文の根拠

〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕

構成パターンⅢはスタック接続によって2台の外部スイッチを1台に見せる構成である。

図3

構成パターンⅢ:構成パターンⅠの接続に加えて,L2SW1 と L2SW2 をスタック接続する。

〔仮想サーバの外部ネットワーク接続方式の検討〕

N 君は図3と表を用いて,S 君に各組合せの優劣を説明し,IP ベース方式と構成パターンⅢの組合せを提案した。

スタック接続した L2SW1 と L2SW2 は1台のスイッチとして動くので,別々の筐体のポートどうしでもリンクアグリゲーションを組める。物理 NIC がつながる2ポート(図3の①②の先)をリンクアグリゲーションとして設定すれば,スイッチ側はその2本を一つの論理ポートとして扱い,同じ MAC アドレスのパケットがどちらから入っても同じ論理ポートで学習する。これで設問2(4)の MAC アドレス学習の問題がなくなり,サーバ側のチーミングと対になって負荷分散と冗長化ができる。

根拠は,構成パターンⅢが“2台の外部スイッチを1台に見せる構成”であることと,N 君が IP ベース方式と構成パターンⅢの組合せを提案したことである。

字数の詰め方。“どのスイッチの”(L2SW1 と L2SW2),“どのポートに”(物理 NIC 接続ポート),“何を設定するか”(リンクアグリゲーション)の3点を書く(解答例は39字)。講評は,負荷分散と可用性を高めるリンクアグリゲーションをネットワークの基礎的な技術として理解してほしいとしている。

採点講評(IPA)

設問2(4)と(5)の正答率が低かった。負荷分散と可用性を高めるリンクアグリゲーションについては,ネットワークの基礎的な技術として理解しておいてほしい。

設問3(1) 解答欄2つ

N 君が,D 社開発拠点と展示会場間のインターネット VPN の構築に,IPsec-VPN 方式のトンネルモードとアグレッシブモードを使用することにした理由を,それぞれ30字以内で述べよ。

〔トンネルモード〕解答例

  • LAN間接続をする必要があるから

〔アグレッシブモード〕解答例

  • 展示会場側では固定IPアドレスが使えないから
解説

本文の根拠

〔デモシステムの構築〕

そこで N 君は,D 社開発拠点と展示会場をインターネット VPN で接続するネットワーク構成を検討した。

〔デモシステムの構築〕

展示会場側のインターネット接続については,主催者がルータまで準備し,出展者に対して動的なグローバル IP アドレスでの接続を提供する(図4中の④の部分)。

図4

VPN ルータには PC と IP 電話機が接続している(PC との接続が⑤)。

トンネルモード:展示会場の PC・IP 電話機と D 社開発拠点のサーバ・IP-PBX の間の通信を,VPN ルータどうしで中継する。これは LAN と LAN を結ぶ接続であり,元の IP パケット全体を新しい IP ヘッダで包むトンネルモードが必要になる(トランスポートモードは IPsec を終端する端末どうしの通信を守る形で,ルータが他の機器の通信を中継する LAN 間接続には使えない。RFC 4301)。アグレッシブモード:IKE(IKEv1)のメインモードを事前共有鍵で使うと,相手を IP アドレスで識別するので,相手の IP アドレスが固定されている必要がある。展示会場では動的なグローバル IP アドレスしか使えないので,最初のメッセージで ID を送るアグレッシブモードを使う(RFC 2409)。

根拠は,“D 社開発拠点と展示会場を”インターネット VPN で接続すること(LAN 間接続)と,展示会場では“動的なグローバル IP アドレスでの接続を提供する”ことである。

字数の詰め方。それぞれの理由を1点に絞る。トンネルモードは“LAN 間接続をする必要がある”(解答例は16字),アグレッシブモードは“展示会場側では固定 IP アドレスが使えない”(解答例は22字)。講評は,設問3は全体的に正答率が低く,IPsec-VPN は LAN 間接続を実現する基本的な手法として理解を深めてほしいとしている。

採点講評(IPA)

設問3は,全体的に正答率が低かった。IPsec-VPNは,LAN間接続を実現する場合の基本的な手法であるが,仮想ネットワークという概念が,具体的にどのように実現されているかの理解を深めてほしい。

設問3(2) 50字以内

主催者が準備する展示会場側ルータと持ち込む VPN ルータの接続に関し,N 君は,アドレス上の観点でルータのどのポートに,どのような設定で接続することを想定したと考えられるか。50字以内で述べよ。

解答例

  • ルータのLAN側ポートに接続し,DHCPで割り当てられたグローバルアドレスを取得する。
解説

本文の根拠

〔デモシステムの構築〕

展示会場側のインターネット接続については,主催者がルータまで準備し,出展者に対して動的なグローバル IP アドレスでの接続を提供する(図4中の④の部分)。

図4

展示会場では,インターネットに主催者提供のルータが接続し(③),ルータと VPN ルータが破線で接続している(④)。

主催者のルータは,出展者向けの LAN 側ポートで,出展者の機器に動的なグローバル IP アドレスを配る。アドレスを動的に配る一般的な仕組みは DHCP なので,持ち込んだ VPN ルータのインターネット側ポートを主催者ルータの LAN 側ポートにつなぎ,DHCP クライアントとしてグローバルアドレスを受け取る設定にする。こうすれば VPN ルータ自身がグローバルアドレスをもち,その先の PC・IP 電話機のための IPsec トンネルを張れる。

根拠は,“動的なグローバル IP アドレスでの接続を提供する”という提供条件と,図4の④が主催者ルータと VPN ルータの間の接続であることである。

字数の詰め方。“どのポートに”(ルータの LAN 側ポート),“どのような設定で”(DHCP で割り当てられたグローバルアドレスを取得する)の二つを書く(解答例は43字)。設問は“アドレス上の観点で”とあるので,アドレスの取り方に絞って書けばよい。

採点講評(IPA)

設問3は,全体的に正答率が低かった。IPsec-VPNは,LAN間接続を実現する場合の基本的な手法であるが,仮想ネットワークという概念が,具体的にどのように実現されているかの理解を深めてほしい。

設問3(3) 55字以内

事前確認のための接続で,D 社開発拠点の VPN ルータの配下に接続する展示会場用の VPN ルータには,どのような設定が必要か。55字以内で述べよ。

解答例

  • プライベートアドレスを使用しデフォルトゲートウェイ設定をD社開発拠点のVPNルータのIPアドレスに設定する。
解説

本文の根拠

図4

D 社開発拠点の VPN ルータと展示会場の VPN ルータの間は,“事前確認用接続(直結)”の一点鎖線で結ばれている(⑥)。

〔デモシステムの構築〕

会場に機器を持ち込んでも,サーバ,IP-PBX,IP 電話機及び PC の IP アドレスなどの設定を変更しなくても済むように,事前確認用接続を行って動作確認を行う。

〔デモシステムの構築〕

N 君は,実際の事前確認では,あらかじめ開発拠点内で,図4中の④の代わりに⑥の接続を使って確認してから,展示会場に持ち込んだ。

事前確認では,展示会場用の VPN ルータのインターネット側ポートを,主催者ルータ(④)の代わりに D 社開発拠点の VPN ルータの配下(⑥)につなぐ。開発拠点内にはグローバルアドレスも DHCP を配る主催者ルータもないので,展示会場用 VPN ルータのインターネット側にはプライベートアドレスを設定し,デフォルトゲートウェイを D 社開発拠点の VPN ルータの IP アドレスにする。こうすると二つの VPN ルータの間でそのまま IPsec のトンネルを張ることができ,その内側の PC や IP 電話機のアドレスは本番と同じまま確認できる。会場では,このインターネット側の設定だけを設問3(2)のものに変えればよい(“VPN ルータの設定は,多少変更が必要だった”)。

根拠は,図4の⑥が D 社開発拠点の VPN ルータと直結していることと,“ネットワーク接続用機器の設定変更だけで済むようにする”という方針である。

字数の詰め方。“アドレスの種類”(プライベートアドレス)と“デフォルトゲートウェイの設定先”(D 社開発拠点の VPN ルータの IP アドレス)の2点を書く(解答例は54字)。

採点講評(IPA)

設問3は,全体的に正答率が低かった。IPsec-VPNは,LAN間接続を実現する場合の基本的な手法であるが,仮想ネットワークという概念が,具体的にどのように実現されているかの理解を深めてほしい。

設問3(4) 15字以内

モバイルルータを使用した構成では,VPN 接続のために展示会場で使用した VPN ルータには必要でない設定が,モバイルルータには必要であった。その設定を15字以内で答えよ。

解答例(3通り)

  • VPNパススルー
  • IPsecパススルー
  • NATトラバーサル
解説

本文の根拠

〔デモシステムの構築〕

この場合,モバイルルータの配下の NAT 環境に VPN ルータを接続するので,帯域不足・遅延で通話は難しいものの,アプリケーションの画面を表示するには十分な帯域であり,ヘルプデスクシステムの特長を PR できることを確認した。

〔デモシステムの構築〕

N 君は,これらの要件から,インターネット VPN の構築には IPsec-VPN 方式のトンネルモードとアグレッシブモードを使わなければいけないと考えた。

展示会場では VPN ルータ自身がグローバルアドレスを受け取ったので,IPsec のパケットはアドレス変換を受けなかった。モバイルルータを使う場合は,VPN ルータがモバイルルータ配下の NAT 環境に置かれる。IPsec の ESP にはポート番号がないので,ポート番号で対応を管理する NAPT はそのままでは変換・中継できない。そこでモバイルルータ側で IPsec のパケットを通す設定(VPN パススルー,IPsec パススルー)が必要になる。ESP を UDP に包んで NAT を越える NAT トラバーサル(RFC 3947,3948)を使う方法もあり,解答例はこれも挙げている。

根拠は“モバイルルータの配下の NAT 環境に VPN ルータを接続する”という記述である。展示会場の構成(設問3(2))との違いは,VPN ルータとインターネットの間に NAT が入ることにある。

字数の詰め方。機能名で答える(解答例は8〜10字)。三つの解答例のどれでもよい。

採点講評(IPA)

設問3は,全体的に正答率が低かった。IPsec-VPNは,LAN間接続を実現する場合の基本的な手法であるが,仮想ネットワークという概念が,具体的にどのように実現されているかの理解を深めてほしい。

設問4(1) 35字以内

物理サーバに障害が発生したときに,速やかに自動切替えを行うためのストレージ1及び2の使い方を,35字以内で述べよ。

解答例

  • 共有ディスクとし,仮想サーバのプログラムとデータを格納しておく。
解説

本文の根拠

〔J 社向けサービス提供用システムの構築〕

また,障害が発生したときに代替サーバに速やかに切り替えて運用できるようにするため,仮想サーバ1を動作させている物理サーバ1に障害が発生した場合の代替サーバは,物理サーバ2とする。

〔J 社向けサービス提供用システムの構築〕

このとき,速やかな自動切替えを実現するために必要なストレージ1とストレージ2は,コストパフォーマンスの良い iSCSI(internet SCSI)タイプを使用することにした。

図5

2台の仮想 SW とストレージ1 は,それぞれ2台の L2SW の両方に接続している。

物理サーバ1が止まったとき,物理サーバ2の上で仮想サーバ1をすぐ動かすには,仮想サーバ1のプログラム(OS やアプリケーションを含むイメージ)とデータを物理サーバ2からも読めなければならない。物理サーバのローカルディスクに置いていては,障害が起きた物理サーバの中に閉じ込められる。そこでストレージ1・2を両方の物理サーバから使える共有ディスクとし,仮想サーバのプログラムとデータを格納しておく。代替の物理サーバはそれを読み込んで仮想サーバを起動するだけで済む。

根拠は,代替サーバを別の物理サーバにすることと,“速やかな自動切替えを実現するために必要な”ストレージという記述,図5でストレージが両方の物理サーバと同じ L2SW につながっていることである。

字数の詰め方。“共有ディスクとする”という使い方と,“何を格納するか”(仮想サーバのプログラムとデータ)の2点を書く(解答例は32字)。講評は,設問4(1)の正答率が低く,共有ディスクを使ったクラスタリング方式はよく知られた技術なので,幅広い技術的視野をもってほしいとしている。

採点講評(IPA)

設問4(1)は正答率が低かった。サーバの可用性を確保するため,共有ディスクを使ったクラスタリング方式は,よく知られた技術であり,ネットワーク技術者としても,幅広い技術的視野をもってネットワークシステムを考えてほしい。

設問4(2) 35字以内

ストレージに iSCSI を利用することで,ネットワーク環境から考えられる利点を,35字以内で述べよ。

解答例

  • 既設のネットワーク環境を使って共有ストレージ環境が構築できる。
解説

本文の根拠

図5

2台の仮想 SW とストレージ2 は,それぞれ2台の L2SW の両方に接続している。

〔J 社向けサービス提供用システムの構築〕

このとき,速やかな自動切替えを実現するために必要なストレージ1とストレージ2は,コストパフォーマンスの良い iSCSI(internet SCSI)タイプを使用することにした。

iSCSI は SCSI のコマンドとデータを TCP/IP で運ぶ(RFC 7143)。ファイバチャネルのような専用のスイッチやケーブルを用意しなくても,サーバがすでにつながっているイーサネットと IP のネットワークの上でストレージを共有できる。図5でもストレージは,仮想 SW と同じ L2SW に接続されている。

根拠は,図5のストレージの接続先が既存の L2SW であることと,“コストパフォーマンスの良い”という iSCSI 選択の理由である。

字数の詰め方。“既設のネットワーク環境を使って”“共有ストレージ環境が構築できる”の2点を書く(解答例は31字)。“安い”だけではネットワーク環境から見た利点になっていない。

設問4(3) 35字以内

本文中の下線(ⅴ)について,N 君のネットワーク設計上の具体的な対策を,35字以内で述べよ。

解答例(3通り)

  • 管理ポートから管理サーバへのネットワークの冗長化
  • ほかのトラフィックの影響を受けない優先転送や通信帯域の確保
  • 管理サーバの冗長化
解説

本文の根拠

〔J 社向けサービス提供用システムの構築〕

管理システムは,図5中の管理サーバ上で動作し,図2に示した管理エージェントに接続して,各種管理を行う。この管理システムは,システムの構成制御に不可欠なものであり,可用性の確保が重要であった。

〔サーバ仮想化の検討〕

管理ポート(M)は,仮想化機構と物理サーバの外部との通信を仲介する管理エージェントが,後述する管理システムと通信するために接続するポートである。

図5

注 現行監視システムと管理サーバについては,冗長構成及びネットワーク接続は表示していない。

管理システムは,管理サーバから管理ポート経由で各物理サーバの管理エージェントにつないで仮想 SW や仮想サーバを制御する。これが使えなくなると構成制御ができないので,経路とサーバの両方で可用性を確保する。解答例は三つを挙げ,どれか一つを書けばよい。一つ目は,管理ポートから管理サーバまでのネットワークを冗長化すること。二つ目は,他のトラフィックに押されて管理通信が届かなくならないよう,優先転送や通信帯域の確保を行うこと。三つ目は,管理サーバそのものを冗長化することである。

根拠は,管理システムが“管理エージェントに接続して”動くことと“可用性の確保が重要”であること,図5の注で管理サーバの冗長構成とネットワーク接続が省略されていることである。

字数の詰め方。“何を”(管理ポートから管理サーバへのネットワーク,管理サーバなど)“どうするか”(冗長化,優先転送など)を書く(解答例は9〜29字)。設問は“ネットワーク設計上の具体的な対策”なので,監視の頻度を上げるといった運用面の対策では答えにならない。

出典:平成22年度 秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)