平成27年度 秋期に実施されたITサービスマネージャ試験
午後Ⅱの全2問(論述式)です。問題文・設問と,問われていることの整理をそのまま読めます。
問1 ITサービスに係る費用の最適化を目的とした改善について
ITサービスに係る費用の最適化を目的として,ITサービスマネージャは,顧客の要求事項,サービス提供者の経営環境,技術の変化などに応じ,顧客と合意したサービス目標に照らして,適切な費用改善策を立案し,実施する必要がある。
適切な費用改善策を立案し実施するためには,まず,現状のサービスを提供するために要している費用の状況を把握し,改善目標を設定する。次に,パレート図,特性要因図などを用いて,非効率な活動がないか,必要な資源の選定・活用において改善の機会がないかなどについて分析する。その上で,運用効率や生産性の向上に向けて,次のような観点から施策を検討する必要がある。
- サービス管理手順の簡素化,自動化ツールの活用など,プロセスの見直し
- 他サービスとの要員配置の調整,外部要員の活用など,体制の見直し
- 外部の供給者に委託しているサービスのサービス時間や費用など,契約内容の見直し
ITサービスマネージャは,関係部門とも協議し,費用対効果,実行可能性などを十分に検討した上で費用改善策を決定し,実施することが重要である。
費用改善策を実施した後は,改善目標を達成できたかどうかを監視・分析する必要がある。また,様々な環境の変化に応じて,費用の最適化に向けた継続的な取組みを推進していくことも重要である。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
ITサービスに係る費用の最適化を目的として,顧客と合意したサービス目標に照らして,適切な費用改善策を立案し,実施することは,ITサービスマネージャの重要な業務である。
本問は,ITサービスに係る費用の改善に至った背景,並びに費用改善策及び改善策を立案し実施する上で検討した内容について,具体的に論述することを求めている。併せて,費用改善策を実施した後,改善目標を達成できたかどうかを監視・分析した内容と,費用の最適化に向けた継続的な取組みについても論述することを求めている。論述を通じて,ITサービスマネージャとして有すべき問題分析能力,対策立案能力,改善提案能力などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが携わったITサービスの概要と,ITサービスに係る費用の最適化を目的とした改善を行うに至った背景について,800字以内で述べよ。
問われていること
- 携わったITサービスの概要
- 費用の最適化を目的とした改善を行うに至った背景
組み立ての注意
前文は,背景になり得るものとして,顧客の要求事項,サービス提供者の経営環境,技術の変化などを挙げている。
採点講評は,全問共通の講評で,“ITサービスの概要”についてシステム機能の記述に終始したものが見受けられたとしている。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べた背景を契機として実施した費用改善策と,改善策を立案し実施する上で検討した内容について,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 背景を契機として実施した費用改善策
- 改善策を立案し実施する上で検討した内容
組み立ての注意
前文の流れは,費用の状況の把握と改善目標の設定 → パレート図・特性要因図などでの分析 → プロセス・体制・契約内容の見直しという観点での施策の検討 → 費用対効果・実行可能性を検討して決定。
採点講評は,パレート図や特性要因図などの言葉だけで費用構造の分析を具体的に述べていないもの,適切な分析もせずに対策が先にありきと推察されるもの,費用対効果や実行可能性の検討が不十分なものを挙げている。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問イで述べた費用改善策を実施した後,改善目標を達成できたかどうかを監視・分析した内容と,費用の最適化に向けた継続的な取組みについて,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 改善目標を達成できたかどうかを監視・分析した内容
- 費用の最適化に向けた継続的な取組み
組み立ての注意
採点講評は,継続的な取組みについて改善策における課題の論述がほとんどで,施策の有効性を一時的なものにしないという視点からの論述が少なかったとしている。全問共通の講評も,“継続”して行っていくための考えや仕組みを述べたものはほとんどなかったとしている。継続的な取組みは,前文にある「様々な環境の変化に応じて」続けていくための仕組みとして書く。
採点講評(IPA)
問1(ITサービスに係る費用の最適化を目的とした改善について)では,ITサービスに係る費用の改善に至った背景,並びに費用改善策及び改善策を立案し実施する上で検討した内容などについて論述することを求めた。ITサービスマネージャとして費用改善を実施した経験のある受験者にとっては取り組みやすかったようで,改善策の策定とその確実な実施のための深い検討がうかがえる良質な論述が多かった。しかし,パレート図や特性要因図などの言葉だけで費用構造の分析を具体的に述べていないものや,適切な分析もせずにツールを用いて作業を効率化するなど対策が先にありきと推察されるもの,改善策の決定に当たって費用対効果や実行可能性の検討が不十分なもの,などが見受けられた。これらは実務経験が不足しているために踏み込んだ論述ができなかったものと推察される。また,設問ウの継続的な取組みについては,改善策における課題についての論述がほとんどで,施策の有効性を一時的なものにしないという視点からの論述が少なかったのは残念である。費用の最適化はITサービスマネージャにとって重要なテーマであり,常日頃からの積極的かつ継続的な取組みを期待したい。
全問共通
“ITサービスの概要”についてシステム機能の記述に終始したものが,問1,問2ともに見受けられた。また,両問とも,設問ウで改善の継続について論述を求めたが,“継続”して行っていくための考えや仕組みを述べたものはほとんどなかった。JISやITILを基に,継続的改善についての理解と実践を期待したい。なお,クラウドサービスの利用が広まってきているようで,これを題材とした論述が多かった。
出典:平成27年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2 外部サービス利用における供給者管理について
ITサービスを提供する際に,業務の一部や全てを外部委託すること,ITサービスの基盤に外部のデータセンタやクラウドサービスを活用することなど,供給者が提供するサービス(以下,外部サービスという)を利用することが広く行われている。
外部サービスを利用する上で,ITサービスマネージャは,顧客からの要求事項に応えるために供給者に対して次のような要求事項を明らかにしなければならない。
- 品質や性能,費用
- インシデント連絡や業務報告などのコミュニケーション
- 機密情報の取扱いなどの情報セキュリティ
ITサービスの提供時には,ITサービスマネージャは供給者管理を徹底し,ITサービスの可用性低下,業務の遅延,情報セキュリティ事故発生などの品質低下が起こらないようにする必要がある。
このため,ITサービスマネージャは,次のような活動を行うことが重要である。
- 供給者への要求事項に基づいて,例えば,故障発生などの品質項目,機密情報へのアクセスなどの情報セキュリティ項目について,範囲・間隔を定めて監視する。
- 評価基準を設け,監視結果や業務報告から外部サービスについて評価する。
- 供給者への要求事項に照らして不適合がある場合は,原因と再発防止策について報告を求める。
また,顧客からの要求事項などの変化に応じて供給者への要求事項を見直すだけでなく,品質項目の監視内容を見直すなど,供給者管理の改善の継続も重要である。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
ITサービスを提供する際に外部の供給者が提供する外部サービスを利用することが広く行われている。顧客の要求事項に応えるためには,外部サービスの供給者を適切に管理することが重要である。
本問は,顧客からの要求事項及び利用した外部サービス,並びに供給者に求めた要求事項及び供給者管理の活動内容について,具体的に論述することを求めている。併せて,供給者管理の活動の評価と,供給者管理の改善の継続についても論述することを求めている。論述を通じて,ITサービスマネージャとして有すべき管理プロセス設計能力,マネジメント能力,問題解決能力などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが携わったITサービスの概要,顧客からの要求事項,及び利用した外部サービスについて,800字以内で述べよ。
問われていること
- 携わったITサービスの概要
- 顧客からの要求事項
- 利用した外部サービス
組み立ての注意
外部サービスの例は,業務の一部や全ての外部委託,外部のデータセンタやクラウドサービスの活用。設問イでは,ここで述べた顧客からの要求事項に応えるために供給者に何を求めたかを書くので,要求事項は設問イで使うものを挙げておく。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べた顧客からの要求事項に応えるために,供給者に求めた要求事項と,供給者管理の活動内容について,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 顧客からの要求事項に応えるために供給者に求めた要求事項
- 供給者管理の活動内容
組み立ての注意
前文は,供給者への要求事項の例(品質や性能・費用,インシデント連絡や業務報告などのコミュニケーション,機密情報の取扱いなどの情報セキュリティ)と,活動の例(範囲・間隔を定めた監視,評価基準による評価,不適合時の原因と再発防止策の報告要求)を挙げている。
採点講評は,顧客からの要求と供給者への要求に整合性のみられないもの,供給者のサービスの監視や評価が表面的なものがあったとしている。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問イで述べた供給者管理の活動の評価と,供給者管理の改善の継続について,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
組み立ての注意
前文は,改善の継続の例として,顧客からの要求事項などの変化に応じた供給者への要求事項の見直しと,品質項目の監視内容の見直しを挙げている。
採点講評は,ITサービスを取り巻く環境の変化に応じて供給者管理を継続して改善していく取組みを期待したが,ほとんどが発生した不適合の改善についてであったとしている。
採点講評(IPA)
問2(外部サービス利用における供給者管理について)では,顧客からの要求事項及び利用した外部サービス,並びに供給者に求めた要求事項及び供給者管理の活動内容などについて論述することを求めた。外部サービスを利用して顧客にITサービスを提供するという経験は多くの受験者にあるようで,顧客からの要求を踏まえて的確に供給者の管理を実践している様子のうかがえる優秀な論述が多かった。一方で,顧客からの要求と供給者への要求に整合性のみられないもの,供給者の提供するサービスの監視や評価が表面的で管理の徹底ができているのか疑わしいもの,などが見受けられた。ITサービスマネージャとして供給者を管理した経験がないと,説得力のある論述を構成することは難しいようである。設問ウでは,ITサービスを取り巻く環境の変化に応じて,供給者管理を継続して改善していく取組みについての論述を期待したが,ほとんどが発生した不適合の改善についてであった。大局的な視点からの考察を期待したい。現在では,外部サービスの利用は必須となっているといえよう。供給者管理についてJISやITILによって理解を深め,安定的かつ効率的なサービスの提供に努めていただきたい。
全問共通
“ITサービスの概要”についてシステム機能の記述に終始したものが,問1,問2ともに見受けられた。また,両問とも,設問ウで改善の継続について論述を求めたが,“継続”して行っていくための考えや仕組みを述べたものはほとんどなかった。JISやITILを基に,継続的改善についての理解と実践を期待したい。なお,クラウドサービスの利用が広まってきているようで,これを題材とした論述が多かった。
出典:平成27年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)