平成21年度 秋期に実施されたITサービスマネージャ試験
午後Ⅱの全3問(論述式)です。問題文・設問と,問われていることの整理をそのまま読めます。
問1 変更管理プロセスの確実な実施について
新商品の販売や制度変更への対応,提供機能の改善など,システムに対する様々な変更要求が発生する。一方,システムに対する変更にはリスクが存在し,事業に重大な影響を及ぼすこともある。このため,ITサービスマネージャは,変更要求の受付からその終了に至るまでの,変更を管理するための一連の手続(以下,変更管理プロセスという)を定め,確実に実施することが重要である。
変更管理プロセスに問題があると,例えば,次のような事象が発生する。
- 変更要求の処理に時間が掛かる。
- 変更の失敗が度重なる。
このような場合には,その原因となる変更管理プロセスの問題を特定し,その改善策を立案・実施することによって,再発を防止しなければならない。
また,変更管理プロセスが確実に実施されていることを,定期的に確認する必要がある。このための方策としては,例えば,次のようなことが考えられる。
- 重要業績評価指標(KPI)などを用いて,実施状況をレビューする。
- 内部監査などによって,遵守状況をチェックする。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
発生する変更要求に適確に対応し,品質の高いITサービスを提供するためには,変更管理プロセスを確実に実施することが重要である。
本問は,変更管理プロセスにどのような問題があり,それに対してどのような再発防止策を立案・実施したか,また変更管理プロセスが確実に実施されていることを定期的に確認するためにどのような方策を行っているかについて,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,ITサービスマネージャに必要な,問題の発見能力や解決能力,プロセス実施状況や遵守状況の評価能力などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが携わったITサービスの概要と,変更管理プロセスについて,800字以内で述べよ。
問われていること
組み立ての注意
変更管理プロセスは,前文で「変更要求の受付からその終了に至るまでの,変更を管理するための一連の手続」と定義されている。設問イでは,このプロセスのどこに問題があったかを書くので,受付から終了までの流れが分かるように書く。
採点講評は,全問共通の講評で,答案用紙の“あなたが携わったITサービスマネジメントの概要”の記入漏れも見受けられたとしている。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べた変更管理プロセスで,どのような事象が発生したか。その原因となる変更管理プロセスの問題は何であったか。また,再発を防止するためにどのような改善策を立案・実施したか。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 発生した事象
- その原因となる変更管理プロセスの問題
- 再発を防止するために立案・実施した改善策
組み立ての注意
前文の事象の例は,変更要求の処理に時間が掛かること,変更の失敗が度重なること。事象 → その原因となる変更管理プロセスの問題 → 再発防止の改善策の順につなげて書く。
採点講評は,変更管理プロセスを理解できていない,あるいは理解が不足していると推測される論述が多かったとしている。
設問ウ
600字以上1,200字以内
変更管理プロセスが確実に実施されていることを,定期的に確認するために行っている方策について,今後の課題とともに,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 変更管理プロセスが確実に実施されていることを定期的に確認するために行っている方策
- 今後の課題
組み立ての注意
前文の方策の例は,重要業績評価指標(KPI)などを用いた実施状況のレビューと,内部監査などによる遵守状況のチェック。
採点講評は,“定期的に確認する”という趣旨にそぐわないものが少なからず見受けられたとしている。確認の頻度や仕組みが分かるように書く。
採点講評(IPA)
問1(変更管理プロセスの確実な実施について)では,変更管理プロセスで発生した問題に対する再発防止策と変更管理プロセスを定期的に確認するための方策について論述することを求めた。変更管理プロセスを理解した上で関連した業務経験のある受験者にとっては,本問は難しくなかったと推察される。ただ,“定期的に確認する”という趣旨にそぐわないものが少なからず見受けられた。ITサービスマネージャであれば変更管理プロセスを理解しているとの想定で出題したが,理解できていない,あるいは理解が不足していると推測される論述が多かったのは意外である。変更管理は安定したITサービス提供の要であり,知識の習得とそれに基づく実践を期待したい。
全問共通
新制度での試験でもあり,ITサービスマネージャとしての能力を問うことに重点を置いた。作業を確実に実施したということに終始し,大局的な考察や評価などマネジメントの視点に欠ける論述が少なからずあったのは,従前のテクニカルエンジニア(システム管理)試験と同様であった。ITサービスマネージャにはマネジメントは重要なスキルである。マネジメントの視点をもって業務を遂行してもらいたい。
なお,今回から出題の形式(設問ウで解答を求める事項)及び答案用紙の形式(論述を開始する位置)の変更を行ったが,これらの指示に従っていないものが見受けられた。また,答案用紙の“あなたが携わったITサービスマネジメントの概要”の記入漏れも見受けられた。問題文はもとより,問題冊子の注意事項についてもよく理解した上で論述に当たってもらいたい。
出典:平成21年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2 ITサービスの改善計画の立案におけるサービスデスクの活用について
ITサービスの改善に当たっては,サービス提供者の視点だけではなくサービス利用者の視点を考慮することも重要である。ITサービスマネージャには,提供するITサービスに対して,提供者と利用者の両方の視点を考慮したITサービスの改善計画の立案に責任をもつことが求められる。
利用者の視点を考慮するためには,サービスデスクで得られた利用者からの電話や電子メールなどによるコンタクト記録を有効に活用する必要がある。具体的には,ITサービスの改善計画の立案に当たって,次のようなことを実施する。
- サービスデスクのコンタクト記録を確認し,提供しているITサービスへの要望を抽出する。次に,抽出した要望に対し,発生頻度や緊急度などの観点から利用者の満足度を評価するとともに事業への影響を考慮して,改善事項を選定する。
- 選定された改善事項に対し,対策に要する費用と期間,対策による効果,対策を実施する優先度などを評価して,対策案を検討する。
また,ITサービスマネージャは,ITサービスの改善に当たって,コンタクト記録の有効活用だけにとどまらず,利用者の満足度向上のために,サービスデスクを通じて利用者と主体的にコミュニケーションを図ることも重要である。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
ITサービスの改善に当たっては,サービス提供者の視点とともにサービスデスクに集まる利用者の声を有効活用し,利用者に満足のいくようなサービス改善計画を立案することが重要である。
本問は,ITサービスマネージャが,サービスの改善計画を立案する際に,サービスデスクに集まったコンタクト記録を活用してどのような検討を行ったか,また改善に対する利用者の満足度向上のために,利用者とどのようなコミュニケーションを図ったかについて,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,ITサービスマネージャに必要な,問題分析能力,対策立案能力,コミュニケーション能力などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが携わったITサービスの概要と,ITサービスの改善計画について,800字以内で述べよ。
問われていること
組み立ての注意
改善計画は,前文にあるとおり提供者と利用者の両方の視点を考慮したもの。設問イでは,この計画の立案でコンタクト記録をどう使ったかを書く。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べたITサービスの改善計画の立案に当たって,コンタクト記録の確認から改善事項の選定までをどのように行い,対策案の検討をどのように行ったか。改善事項の選定を中心に,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- コンタクト記録の確認から改善事項の選定までをどのように行ったか
- 対策案の検討をどのように行ったか
- 改善事項の選定(中心に)
組み立ての注意
前文の流れは,コンタクト記録から要望を抽出 → 発生頻度や緊急度などから利用者の満足度を評価し,事業への影響も考慮して改善事項を選定 → 費用と期間,効果,優先度などを評価して対策案を検討。中心に書くのは改善事項の選定。
採点講評は,ITサービスマネージャの立場から改善項目の選定や対策案の検討について論述したものは比較的少なかったとしている。
設問ウ
600字以上1,200字以内
ITサービスの改善に当たって,利用者の満足度向上のために,利用者とどのようなコミュニケーションを図ったか。600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 利用者の満足度向上のために図った利用者とのコミュニケーション
組み立ての注意
前文は,コンタクト記録の有効活用だけにとどまらず,サービスデスクを通じて利用者と主体的にコミュニケーションを図ることを求めている。コンタクト記録を読むことではなく,利用者に働きかけたことを書く。
採点講評(IPA)
問2(ITサービスの改善計画の立案におけるサービスデスクの活用について)では,サービスデスクを活用したITサービスの改善計画と利用者とのコミュニケーションについて論述することを求めた。サービスデスクに携わった経験のある受験者にはなじみのあるテーマだったようで,経験を踏まえた具体的な論述が多かった。しかし,ITサービスマネージャの立場から改善項目の選定や対策案の検討について論述したものは比較的少なく,受験者のマネジメント業務の経験不足が感じられた。また,改善の対象が小粒なため設問の要求を満たす論述が難しかったのであろうと推測される論述も少なからず見受けられた。一方,コミュニケーションについての論述からは,ITサービス改善に当たって利用者の満足度向上のために努力している姿がうかがわれた。
全問共通
新制度での試験でもあり,ITサービスマネージャとしての能力を問うことに重点を置いた。作業を確実に実施したということに終始し,大局的な考察や評価などマネジメントの視点に欠ける論述が少なからずあったのは,従前のテクニカルエンジニア(システム管理)試験と同様であった。ITサービスマネージャにはマネジメントは重要なスキルである。マネジメントの視点をもって業務を遂行してもらいたい。
なお,今回から出題の形式(設問ウで解答を求める事項)及び答案用紙の形式(論述を開始する位置)の変更を行ったが,これらの指示に従っていないものが見受けられた。また,答案用紙の“あなたが携わったITサービスマネジメントの概要”の記入漏れも見受けられた。問題文はもとより,問題冊子の注意事項についてもよく理解した上で論述に当たってもらいたい。
出典:平成21年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)
問3 事前予防的な問題管理について
ITサービスマネージャには,提供サービスに潜在する問題の発見と対策を行う事前予防的な問題管理が求められる。そのためには,インシデント,危うく障害となるところだった“ヒヤリハット”,顧客の意見などを時系列や発生要因などによって分析し,判明した発生の傾向や頻度に対して仮説検証などによる考察を深める必要がある。
例えば,時系列分析によって,CPU使用率のしきい値超えのインシデントが増えたことが判明した場合は,なぜ増えたのかについて,次のような仮説を立てて検証する。
- トランザクションの変化はないか,特定のトランザクションが増えていないか。
- プログラムの変更はなかったか,そのプログラムがCPUを占有していないか。
検証の結果,後者の仮説が正しい場合は,CPUを占有するプログラムの変更をなぜチェックできなかったのかについて,更に仮説を立てて検証する。
また,発生要因分析によって,LANケーブル誤切断のインシデントが多いことが判明した場合は,なぜ誤切断したのかについて,次のような仮説を立てて検証する。
- 作業環境に問題はないか,LANケーブルが乱雑に放置されていないか。
- マニュアルに問題はないか,記述のあいまいなところや間違いはないか。
このように,仮説と検証を繰り返すことによって考察を深め,提供サービスに潜在する問題を発見する。発見した問題に対しては,適切な対策を実施する必要がある。
なお,事前予防的な問題管理を定着させるためには,インシデントの件数が基準値を超えた場合に分析を義務付けることや,実施した分析や対策の発表の場を設けて,優れた分析や対策を行った者を表彰するなどの取組も有効である。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
安定した品質の高いITサービスを提供するためには,潜在する問題を事前に発見し,予防的に対策を行うことが重要である。
本問は,インシデントなどを分析することでどのような発生傾向や頻度が判明したか,それらに対してどのような考察によって潜在する問題を発見しどのような対策を実施したか,また事前予防的な活動を定着させるためにどのような取組を行ったかについて,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,ITサービスマネージャに必要な,問題分析能力,対策立案能力,対策遂行能力などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが携わったITサービスの概要と,分析して判明したインシデントなどの発生の傾向や頻度について,800字以内で述べよ。
問われていること
- 携わったITサービスの概要
- 分析して判明したインシデントなどの発生の傾向や頻度
組み立ての注意
前文は,分析の対象としてインシデント,“ヒヤリハット”,顧客の意見などを,分析の切り口として時系列や発生要因などを挙げている。どの対象をどう分析して,どんな傾向や頻度が判明したかを書く。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べたインシデントなどの発生の傾向や頻度に対し,どのように考察を深め,潜在する問題を発見したか。また,発見した問題を解決するためにどのような対策を実施したか。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- どのように考察を深め,潜在する問題を発見したか
- 発見した問題を解決するために実施した対策
組み立ての注意
前文は,仮説を立てて検証し,その結果について更に仮説を立てて検証する,という繰り返しで考察を深める例を2つ挙げている。
採点講評は,インシデントを分析することによる直接的な原因の発見にとどまるものがほとんどで,深く考察することによる根本原因の究明に及ぶものは少なかったとしている。
設問ウ
600字以上1,200字以内
事前予防的な問題管理を定着させるためにどのような取組を行ったか。今後改善すべき点とともに,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 事前予防的な問題管理を定着させるために行った取組
- 今後改善すべき点
組み立ての注意
前文の取組の例は,インシデントの件数が基準値を超えた場合の分析の義務付けと,分析や対策の発表の場を設けて優れたものを表彰すること。
採点講評は,定着化のための取組では問題文からの引用程度のものが多く,組織に定着していることをうかがわせる深い論述はほとんどなかったとしている。
採点講評(IPA)
問3(事前予防的な問題管理について)では,発生したインシデントなどの根本原因を事前予防的に発見し,対策を行う活動について論述することを求めた。本問は選択率が高く,障害に関連するテーマへの関心の高さがうかがわれた。論述内容はインシデントを分析することによる直接的な原因の発見にとどまるものがほとんどであり,深く考察することによる根本原因の究明に及ぶものは少なかった。また,定着化のための取組では問題文からの引用程度のものが多く,組織に定着していることをうかがわせる深い論述はほとんどなかった。ITサービスマネージャとして,日ごろから発生した問題について深く考察する習慣や,継続的な品質向上に主導的に取り組んだ経験などがないと,本問の論述は難しかったようである。
全問共通
新制度での試験でもあり,ITサービスマネージャとしての能力を問うことに重点を置いた。作業を確実に実施したということに終始し,大局的な考察や評価などマネジメントの視点に欠ける論述が少なからずあったのは,従前のテクニカルエンジニア(システム管理)試験と同様であった。ITサービスマネージャにはマネジメントは重要なスキルである。マネジメントの視点をもって業務を遂行してもらいたい。
なお,今回から出題の形式(設問ウで解答を求める事項)及び答案用紙の形式(論述を開始する位置)の変更を行ったが,これらの指示に従っていないものが見受けられた。また,答案用紙の“あなたが携わったITサービスマネジメントの概要”の記入漏れも見受けられた。問題文はもとより,問題冊子の注意事項についてもよく理解した上で論述に当たってもらいたい。
出典:平成21年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅱ 問3(表記を一部改変)