‹

平成26年度 秋期 午後Ⅱ

平成26年度 秋期に実施されたITサービスマネージャ試験 午後Ⅱの全2問(論述式)です。問題文・設問と,問われていることの整理をそのまま読めます。

この試験について:ITサービスマネージャ試験について

この年度を解いてみる

問1 ITサービスの移行について

ITサービスの安全かつ円滑な開始に向け,顧客やIT部門の関係者と連携してITサービスの移行を確実に実施するための計画(以下,移行実施計画という)を策定することは,ITサービスマネージャの重要な業務である。

移行実施計画では,①ITサービスの受入基準に従って移行の対象となるITサービスを検証する方法と,②移行手順及び移行体制を整え稼働環境に展開する方法,などを計画する。その際に,対象となるITサービスの特徴や各種制約など移行の実施において考慮すべき点とその対応策を明確にすることが重要である。

具体的には,まず,①については,リリースの内容,運用手順,運用体制,キャパシティなどの検証において考慮すべき点を,②については,稼働環境に展開する上で,時間,環境,体制の制約など考慮すべき点を洗い出す。次に,考慮すべき点について,関係者と十分に協議し,対応策を決定する。また,対応策が確実に実施されるよう工夫することも重要である。

移行の実施後は,移行実施計画に沿って実施した結果についてレビューを行い,その結果を例えば組織のナレッジとして蓄積し,共有するなど,活用することも重要である。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。

出題趣旨(IPA)

ITサービスの安全かつ円滑な開始に向け,ITサービスの移行実施計画を策定することは,ITサービスマネージャの重要な業務である。

本問は,移行実施計画策定の際に洗い出した考慮すべき点のうち特に重要と考えたものと,それに基づいて関係者と協議し決定した対応策,決定した理由,及び対応策が確実に実施されるための工夫について,具体的に論述することを求めている。併せて,移行実施後のレビュー結果とその結果の活用についても論述することを求めている。論述を通じて,ITサービスマネージャとして有すべき問題分析能力,対策立案能力,計画立案能力などを評価する。

設問と問われていること

設問ア 800字以内

移行の対象としてあなたが携わったITサービスの概要と,移行実施計画の策定に当たって洗い出した考慮すべき点のうち,特に重要と考えたものについて,800字以内で述べよ。

問われていること

  • 移行の対象として携わったITサービスの概要
  • 洗い出した考慮すべき点のうち,特に重要と考えたもの

組み立ての注意

前文は,考慮すべき点を,①検証の方法(リリースの内容,運用手順,運用体制,キャパシティなど)と,②稼働環境への展開の方法(時間,環境,体制の制約など)に分けて挙げている。特に重要と考えたものは,どちらの観点のものか,なぜ重要なのかが分かるように書く。

採点講評は,全問共通の講評で,“ITサービスの概要”について十分な内容を記述していないものが見受けられたとし,JISではサービスを“顧客に価値を提供する手段”としていることを挙げている。

設問イ 800字以上1,600字以内

設問アで述べた考慮すべき点について関係者と協議し,決定した対応策,決定した理由,及び対応策が確実に実施されるための工夫について,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

問われていること

  • 関係者と協議し決定した対応策
  • 決定した理由
  • 対応策が確実に実施されるための工夫

組み立ての注意

対応策は,前文にあるとおり関係者(顧客やIT部門の関係者)と十分に協議して決定したものとして書く。

採点講評は,開発部門が担当すべき移行作業に終始しITサービスマネージャの視点のない論述や,“移行実施計画”を“移行設計”と誤解した論述があったとしている。

設問ウ 600字以上1,200字以内

設問アで述べたITサービスの移行実施後のレビュー結果とその活用について,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

問われていること

  • 移行実施後のレビュー結果
  • レビュー結果の活用

組み立ての注意

前文の活用の例は,組織のナレッジとして蓄積し,共有すること。

採点講評は,レビュー結果の活用について問題文中の例をやや詳しく述べたものがほとんどで,深い考察や広範な見識に基づいた活用の論述が少なかったとしている。

採点講評(IPA)

問1(ITサービスの移行について)では,ITサービスの移行実施計画を策定する際に特に重要とした考慮点と対応策,移行実施後に行ったレビューの結果の活用などについて論述することを求めた。ITサービスマネージャとして移行の実施を経験している受験者にとっては取り組みやすかったものと考えられる。関係者との協議や確実な実施のための工夫を具体的に論述するなど,ITサービスの安全かつ円滑な開始に向けて精力的に取り組む姿のうかがえる良質な論述が多かった。しかし,開発部門が担当すべき移行作業に終始しITサービスマネージャの視点のない論述や,“移行実施計画”を“移行設計”と誤解した論述が見受けられた。これは,ITサービスマネージャの役割が正確に理解できていない,JISで規定しているITサービスの移行に関する知識が不足している,などによるものと推測される。設問ウの移行実施後のレビュー結果の活用については問題文中の例をやや詳しく述べたものがほとんどで,深い考察や広範な見識に基づいた活用についての論述が少なかった。ITサービスの移行はサービスマネージメントシステムの対象の一つであり,シラバス(情報処理技術者試験における知識・技能の細目)を確認した上で,JISやITILを理解して取り組むことを期待したい。

全問共通

問1,問2ともに,出題の趣旨から外れた論述が散見された。問題文をよく読み,趣旨を正確に把握した上で,設問で求められている内容を踏まえて,論述に取り組むよう注意を促したい。また,両問とも“ITサービスの概要”について,十分な内容を記述していないものが相変わらず見受けられた。JISではサービスを“顧客に価値を提供する手段”としている。この観点から,自ら携わっている業務について整理しておいてほしい。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)

問2 ITサービスの障害による業務への影響拡大の再発防止について

近年,複数のシステムが仮想化されたサーバで運用されたり,企業内外のシステムがネットワークで密接に連携したりするなど,システム環境は複雑化している。

このような複雑化した環境への理解不足や障害に対する検討不足があると,ITサービスの障害時に,例えば次のような事態を引き起こして,業務への影響が拡大することがある。

このような事態が発生した場合には,障害回復後,改めて障害対応の経過を整理した上で,例えば次のような視点から業務への影響が拡大した原因を分析して,再発防止策を立案する。

また,再発防止策を実施した後,業務への影響が拡大した事例を組織内で共有する,システム環境や業務の変化に応じて再発防止策を見直すなど,再発防止を確実にするための活動を行うことも重要である。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。

出題趣旨(IPA)

近年,システム環境は,サーバの仮想化やネットワークの連携などによって複雑化している。このような複雑化した環境に対する理解不足や障害に対する検討不足があると,ITサービスの障害時に業務への影響が拡大することがある。

本問は,業務への影響が拡大した事例と,影響が拡大した原因の分析の視点及び判明した原因を踏まえた再発防止策について,具体的に論述することを求めている。併せて,再発防止策を実施した後,再発防止を確実にするために行った活動についても論述することを求めている。論述を通じて,ITサービスマネージャとして有すべき問題発見能力,問題分析能力,対策立案能力を評価する。

設問と問われていること

設問ア 800字以内

あなたが携わったITサービスの概要と,ITサービスの障害による業務への影響が拡大した事例について,800字以内で述べよ。

問われていること

  • 携わったITサービスの概要
  • 障害による業務への影響が拡大した事例

組み立ての注意

題材は障害そのものではなく,障害時に業務への影響が「拡大した」事例。前文の例は,優先して回復すべきITサービスへの対応が後回しになる,連携しているシステムへの連絡が遅れる,回復作業で他のITサービスに影響を与える,の3つ。

設問イ 800字以上1,600字以内

設問アで述べた事例の再発防止策について,業務への影響が拡大した原因の分析の視点及び判明した原因を含め,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

問われていること

  • 事例の再発防止策
  • 業務への影響が拡大した原因の分析の視点
  • 判明した原因

組み立ての注意

前文の分析の視点の例は,障害対応手順がシステム環境に即していたか,指揮命令は迅速かつ的確だったか,業務に及ぼす影響を正しく把握できていたか。

採点講評は,再発防止策を業務への影響拡大に対してではなく,障害の発生に対するものと混同した論述が散見されたとしている。また,単純な手順書不備や知識不足,作業ミスなどを原因とするだけでなく,そのような状況となっている根本原因に踏み込んでほしかったとしている。

設問ウ 600字以上1,200字以内

設問イで述べた再発防止策を実施した後,再発防止を確実にするために行った活動について,工夫した点を含め,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

問われていること

  • 再発防止を確実にするために行った活動
  • 工夫した点

組み立ての注意

前文の例は,事例を組織内で共有すること,システム環境や業務の変化に応じて再発防止策を見直すこと。

採点講評は,取り巻く環境を踏まえるなど創意工夫のうかがえる活動を期待したが,問題文中の例をなぞった程度のものがほとんどであったとしている。

採点講評(IPA)

問2(ITサービスの障害による業務への影響拡大の再発防止について)では,業務への影響が拡大した原因の分析と再発防止策,再発防止を確実にするための活動について論述することを求めた。ITサービスの障害時に不測の事態が生じ業務への影響が拡大したという経験は多くの受験者にあるようで,多角的な視点から原因を究明し,再発防止策の立案・実施に注力する様子のうかがえる優秀な論述が多かった。一方で,単純な手順書不備や知識不足,作業ミスなどを原因として,その改善策にとどまる論述も見受けられたが,そのような状況となっている根本原因を究明し対策を立てるということに踏み込んでほしかった。これは,ITサービスマネージャとしての問題把握能力及び問題分析能力が十分でないことに起因するものと推測される。また,再発防止策を業務への影響拡大に対してではなく,障害の発生に対するものと混同した論述が散見された。設問ウの再発防止を確実にするための活動では,取り巻く環境を踏まえるなど創意工夫のうかがえる活動についての論述を期待したが,問題文中の例をなぞった程度のものがほとんどであった。安定したITサービスの提供に向けた積極的な取組みを期待したい。併せて,日頃の業務を通じて,問題把握能力・問題分析能力の向上に励むことを期待したい。

全問共通

問1,問2ともに,出題の趣旨から外れた論述が散見された。問題文をよく読み,趣旨を正確に把握した上で,設問で求められている内容を踏まえて,論述に取り組むよう注意を促したい。また,両問とも“ITサービスの概要”について,十分な内容を記述していないものが相変わらず見受けられた。JISではサービスを“顧客に価値を提供する手段”としている。この観点から,自ら携わっている業務について整理しておいてほしい。

出典:平成26年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)