平成30年度 秋期に実施されたITサービスマネージャ試験
午後Ⅱの全2問(論述式)です。問題文・設問と,問われていることの整理をそのまま読めます。
問1 ITサービスマネジメントにおけるプロセスの自動化について
ITサービスマネジメントを実践する組織では,ITサービスマネジメントにおけるプロセスを効果的かつ効率よく実施するために,ツールを使ってプロセスの作業を自動化している。例えば,
- “インシデント及びサービス要求管理プロセス”において,知識ベース検索機能を備えたツールを使って,サービスデスクが利用者からの問合せに対応する。
- “サービスの報告プロセス”において,ツールを利用してデータを集計し,サービス報告書をまとめる。
さらに,自動化の範囲を次のように拡大し,プロセスに関する自動化を進め,プロセスを首尾一貫して実行する程度(以下,プロセス成熟度という)を向上させていく。
- (1) 自動化されずに人が行っている作業に新しい技術を適用する。
- サービスデスクが行っている利用者とのチャット対応作業の一部を,AIを活用し,人間に代わってコンピュータが対応する。
- 人間がデータを入力して作成しているサービス報告書の作成作業の一部を,RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を使って自動化する。
- (2) プロセス間の連携を自動化する。例えば,変更管理プロセスからの“変更の成功”通知で,構成管理プロセスにおいてCMDBを更新する運用を自動化する。
ITサービスマネージャは,自動化の範囲の拡大に当たって,次のような活動を行う。
- プロセスで使っているツールの利用状況を把握し,今後の取組内容を決める。
- 効果を評価するためのKPIとその目標値を定め,実施計画を作成する。
- 業務適用又は試行運用を開始し,期待する効果の達成度を評価する。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
ITサービスマネジメントを実践する組織では,ITサービスマネジメントプロセスを対象として自動化のためのツールや仕組みを導入し,効果的に活用している。さらに,自動化されずに人が行っている作業に新しい技術を適用する,又は他のプロセスと連携するなど,自動化の範囲を拡大して,プロセス成熟度を向上させている。
本問は,対象としたプロセスの自動化の状況と,自動化の範囲の拡大への取組内容及び実施計画について,KPIとその目標値を含めて論述することを求めている。併せて,プロセスの自動化及び組織におけるプロセス成熟度向上の評価について論述することも求めている。論述を通じて,ITサービスマネージャとして有すべき問題分析能力,計画企画能力,対策実施能力などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが携わったITサービスの概要と,自動化対象としたプロセスの概要及び自動化の状況について,800字以内で述べよ。
問われていること
- 携わったITサービスの概要
- 自動化対象としたプロセスの概要
- 自動化の状況
組み立ての注意
自動化の状況は,前文の例(知識ベース検索機能を備えたツールでの問合せ対応,ツールでのデータ集計によるサービス報告書の作成)のように,いまツールで自動化できている作業と,人が行っている作業の両方が分かるように書く。設問イの「自動化の範囲の拡大」の出発点になる。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べたプロセスに関する,自動化の範囲の拡大に当たっての活動における取組内容及び実施計画について,KPIとその目標値を含めて,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 自動化の範囲の拡大に当たっての活動における取組内容
- 実施計画
- KPIとその目標値
組み立ての注意
前文は,範囲の拡大の方向として,(1)人が行っている作業への新しい技術の適用(AI,RPA)と,(2)プロセス間の連携の自動化(変更管理から構成管理へのCMDB更新)を挙げている。活動の例は,ツールの利用状況を把握して取組内容を決める,KPIと目標値を定めて実施計画を作る,業務適用や試行運用で効果の達成度を評価する,の3つ。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問イで述べた活動によって実現したプロセスの自動化及び組織におけるプロセス成熟度向上の評価について,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 実現したプロセスの自動化の評価
- 組織におけるプロセス成熟度向上の評価
組み立ての注意
前文は,プロセス成熟度を「プロセスを首尾一貫して実行する程度」と定義している。
採点講評は,他プロセスとの連携や管理の一元化など,プロセス成熟度の高度化に向けたマネジメント活動を伺わせるものは少なく,対象プロセスの一過性の限定的な改善にとどまるものが多かったとしている。自動化の評価(設問イのKPIに照らして)とは別に,組織としてのプロセス成熟度がどう上がったかを書く。
採点講評(IPA)
問1(ITサービスマネジメントにおけるプロセスの自動化について)では,ITサービスマネジメントにおけるプロセスの自動化範囲の拡大に当たっての活動における取組内容及び実施計画,並びに,プロセスの自動化及び組織におけるプロセスの成熟度向上の評価について論述することを求めた。プロセスの自動化を,新しい技術によって実現した経験のある受験者にとっては取り組みやすいテーマであったようで,具体的なツールの事例が挙げられ,適切に論述されていた。また,KPIによる目標管理を日頃から行っている受験者にとっては論述しやすいテーマであったようで,適切な論述が多かった。一方,プロセス成熟度については,他プロセスとの連携や管理の一元化など,プロセス成熟度の高度化に向けたマネジメント活動を伺わせるものは少なく,対象プロセスの一過性の限定的な改善にとどまるものが多かった。ITサービスマネージャには,プロセス成熟度の向上に向けた,継続的な改善への取組みが望まれる。
出典:平成30年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2 ITサービスの運用チームにおける改善の取組みについて
ITサービスマネージャは,運用チームの業務記録の内容,運用しているサービスの管理指標の傾向を把握・分析し,課題を明確にした上で改善に取り組むことが求められる。
例えば,次のような改善の取組みによって,作業生産性の向上,作業品質の向上,顧客満足の向上などを実現する。
- 故障対応時間の短縮が課題の場合には,故障対応のスキル不足を解消するために,実地訓練に取り組む。
- 作業手順の誤りや漏れをなくすことが課題の場合には,作業手順について,有識者とのレビューを義務付ける。
- サービスデスクの応対に対する利用者からの不満を解消することが課題の場合には,コミュニケーション力を向上させるための教育を行う。
改善の取組みに当たっては,目標達成に向けて運用チームの力を結集することが大切である。そのために,ITサービスマネージャは,次のような工夫を行う。
- 課題を明示することでチームメンバの議論を促して取組みへの動機付けを行う。
- 達成状況を“見える化”して改善に意欲的に取り組めるようにする。
また,改善の取組み後は,設定した目標に無理はなかったか,動機付けは十分であったかなどを振り返り,改善の取組みを評価する。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
ITサービスマネージャは,運用チームの業務記録の内容や運用しているサービスの管理指標の傾向を把握・分析し,課題を明確にした上で,改善の取組みを行うことで,作業の生産性や品質,顧客満足の向上などを実現することが求められる。改善の取組みに当たっては,課題と目標を明示して運用チームメンバの議論を促すなど,取組みへの動機付けと当事者意識の醸成を行い,運用チームの力を目標達成に向けて結集するようにマネジメントすることが大切である。
本問は,ITサービスの運用チームの改善の取組みについて問うている。具体的には,ITサービスの概要と運用チームの構成,及び業務記録・管理指標などの傾向を把握・分析することで気付いた課題について論述を求めている。また,課題を達成するためどのような改善の取組みを行ったか,課題に対して,設定した目標,運用チームの力を目標達成に向けて結集するように工夫した点を含めて論述することを求めている。併せて,改善の取組みの評価について,良かった点,悪かった点を含めて論述を求めている。論述を通じて,ITサービスマネージャとして有すべき問題分析能力,対策立案力,マネジメント力などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが携わったITサービスの概要と,運用チームの構成,及び運用チームの課題とその根拠について,800字以内で述べよ。
問われていること
- 携わったITサービスの概要
- 運用チームの構成
- 運用チームの課題とその根拠
組み立ての注意
前文は,課題を,運用チームの業務記録の内容や運用しているサービスの管理指標の傾向を把握・分析して明確にするとしている。根拠は,どの記録・指標のどんな傾向から課題と判断したのかとして書く。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べた課題を達成するために,どのような改善の取組みを行ったか。課題に対して,設定した目標,運用チームの力を結集するために工夫した点を含めて,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 課題を達成するために行った改善の取組み
- 課題に対して設定した目標
- 運用チームの力を結集するために工夫した点
組み立ての注意
前文は,工夫の例として,課題を明示してチームメンバの議論を促し動機付けを行うことと,達成状況を“見える化”することを挙げている。
採点講評は,取組みの具体性に欠ける論述,ツールの改善・導入が中心の論述,チームの力を結集するための工夫が読み取れない論述があり,工夫した点は表面的な内容にとどまるものが多かったとしている。工夫は,チームメンバがどう動いたかまで書く。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問イで述べた改善の取組みの結果はどうであったか。目標の達成状況,及び取組みの評価について,良かった点,悪かった点を含めて,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 改善の取組みの結果と目標の達成状況
- 取組みの評価(良かった点,悪かった点)
組み立ての注意
前文は,評価の観点の例として,設定した目標に無理はなかったか,動機付けは十分であったかを挙げている。目標の達成状況(結果)と,取組みそのものの評価を分けて書き,良かった点と悪かった点の両方を含める。
採点講評(IPA)
問2(ITサービスの運用チームにおける改善の取組みについて)では,ITサービスの運用チームの改善の取組みについて問うた。具体的には,運用チームの課題とその根拠,改善の取組みと設定した目標,運用チームの力を目標達成に向けて結集するために工夫した点,目標の達成状況と改善の取組みの評価について,論述を求めている。受験者にとって身近なテーマであったようで,課題,改善の取組み,目標設定については具体的で充実した論述が多かった。一方,取組みについて具体性に欠ける論述,ツールの改善・導入が中心の論述,チームの力を結集するための工夫が読み取れないような論述もあった。また,運用チームの力を目標達成に向けて結集するために工夫した点については,表面的な内容にとどまっている論述が多かった。変化に対応し,ITサービスマネージャとして適切なチームマネジメントを行うように努力してほしい。
出典:平成30年度 秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)