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平成21年度 秋期 午後Ⅱ

平成21年度 秋期に実施されたネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱの全2問(記述式)です。事例本文・設問・解答例と解説をそのまま読めます。

この試験について:ネットワークスペシャリスト試験について

この年度を解いてみる

問1 無線 LAN システムの構築

無線 LAN システムの構築に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。

通信機器や通信サービスの販売会社である A 社は,分散していたオフィスを集約することになった。集約に当たっては,工事を極力少なくし,費用の削減や期間の短縮を図るために無線 LAN の活用を考えている。加えて,集約を契機に,座席はフリーアドレスとし,座席数は在席率を考慮して社員数より少なくし,代わりに不足気味のミーティングスポットを確保するなど,オフィススペースの有効活用と業務の効率向上を図りたいと考えている。

また,最近,来訪者から,“応接室,会議室及びロビー(以下,応接エリアという)で,無線 LAN を利用してインターネット経由で自社に接続したい”という要望が出ている。

現状,A 社内では VLAN を使用した部門ごとの LAN(以下,部門 LAN という)が用意されており,当該部門の業務サーバもそこに設置されている。社員は,各人に支給された PC を所属する部門 LAN に接続し,サーバを利用している。

〔要件の整理〕

システム部の B 主任と C 君は,集約後の無線 LAN システム構築の担当者に任命された。具体的な設計に当たり,B 主任は C 君に(1)〜(5)の考慮すべき要件を示した。

無線 LAN は有線 LAN と比べてセキュリティ面のリスクが高いので,要件(1)〜(4)の実現に当たっては,それに配慮した設計を行うことにする。

図1は,集約後の無線 LAN システム構成図である。

集約後の無線 LAN システム構成図。インターネット―ルータ―FW―L3SW と接続している。FW の下に DMZ があり,DMZ 内の L2SW に FW,外部メールサーバ,プロキシサーバ,VPN-GW が接続している。VPN-GW は L3SW にも接続している。L3SW の右には L2SW があり,その先に認証サーバと DHCP サーバが接続している。L3SW には業務サーバエリアの L2SW も接続しており,その下にサーバ … サーバが接続している。L3SW の下には,応接エリアの L2SW とオフィスエリアの L2SW が接続している。応接エリアの L2SW の下に無線 AP … 無線 AP があり,それぞれの無線 AP に PC … PC が無線で接続している。オフィスエリアも同じく,L2SW の下に無線 AP … 無線 AP があり,それぞれに PC … PC が無線で接続している。凡例:FW はファイアウォール,VPN-GW は VPN ゲートウェイ,L2SW はレイヤ2スイッチ,L3SW はレイヤ3スイッチ,無線 AP は無線 LAN アクセスポイント。注 業務サーバエリアには,メールや情報共有のための社内 Web サーバなどの共用サーバや,各部門専用の業務サーバが設置されている。
図1 集約後の無線 LAN システム構成図

C 君は,システム検討に当たり,まず無線 LAN を使う上でのセキュリティ確保の方式について検討し,その後,必要となる認証基盤の構築,無線 LAN 規格の混在による影響とその対応,及び社員の利便性を高めるポータビリティの実現,の順に検討を進めることにした。

〔セキュリティ確保の方式〕

無線 LAN は,電波の届く範囲ならどこからでもアクセスできるので,暗号化や利用者の認証が重要になる。C 君は,無線 LAN の使用に当たって,WEP(Wired Equivalent Privacy)方式では,認証方式,暗号方式及び鍵の秘匿性について脆弱性が問題になっていることから,セキュリティが強化された IEEE 802.11i 規格の採用を検討することにした。

IEEE 802.11i ではセキュリティを高めるため,IEEE 802.1X 認証方式を採用し,より強固な暗号鍵の生成と配送方式を規定している。IEEE 802.1X 認証方式は,IETF(Internet Engineering Task Force)が規定した EAP(Extensible Authentication Protocol)という,認証や暗号鍵配送用のフレームワークを利用している。EAP-TLS(Transport Layer Security)方式では,電子証明書を使用した認証を行う。C 君は,セキュリティ重視の観点から EAP-TLS 方式を採用することにした。

図2は,C 君が調査した IEEE 802.11i に基づく EAP-TLS 方式の認証と鍵配送の概略シーケンスを示している。

PC,無線 AP,認証サーバの3者の間のシーケンス図。①アソシエーションの確立処理(PC と無線 AP の間,ボックス)。② EAPOL 開始(PC→無線 AP)。③ EAP 要求(無線 AP→PC)。④ EAP 応答(PC→無線 AP)。⑤ RADIUS Access Request(無線 AP→認証サーバ)。⑥ RADIUS Access Challenge(認証サーバ→無線 AP)。⑦ EAP 要求(無線 AP→PC)。⑧ EAP 応答(PC→無線 AP)。⑨ RADIUS Access Request(無線 AP→認証サーバ)。認証サーバで“認証方式の決定”。⑩ RADIUS Access Challenge(認証サーバ→無線 AP)。⑪ EAP 要求(無線 AP→PC)。⑫ EAP 応答(PC→無線 AP)。⑬ RADIUS Access Request(無線 AP→認証サーバ)。⑭ RADIUS Access Challenge(認証サーバ→無線 AP)。⑮ EAP 要求(無線 AP→PC)。PC で“PMK 生成”。⑯ EAP 応答(PC→無線 AP)。⑰ RADIUS Access Request(無線 AP→認証サーバ)。⑱ RADIUS Accept(認証サーバ→無線 AP)。認証サーバで“PMK 生成”。⑲ EAP 成功(無線 AP→PC)。⑳ EAPOL-Key(無線 AP→PC)。㉑ EAPOL-Key(PC→無線 AP)。㉒ EAPOL-Key(無線 AP→PC)。㉓ EAPOL-Key(PC→無線 AP)。㉔フレーム転送(PC と無線 AP の間,ボックス)。…。㉕ EAPOL ログオフ(PC→無線 AP)。注1 “EAPOL 開始”は,送出されない場合もある。注2 ①及び㉔は,複数のシーケンスを一つのボックスで表現している。注3 各シーケンスで送信される内容に関しては,意図的に記述していない。注4 ⑳〜㉓のシーケンスを4ウェイハンドシェイクという。PMK:Pairwise Master Key,EAPOL:EAP over LANs,RADIUS:Remote Authentication Dial In User Service
図2 IEEE 802.11i に基づく EAP-TLS 方式の認証と鍵配送の概略シーケンス

EAP-TLS 方式において,PC と認証サーバ間でやり取りされる EAP パケットは,PC と無線 AP 間は EAPOL フレームのデータとして送られ,無線 AP と認証サーバ間は RADIUS パケットのデータとして送られる。

認証処理は,無線 AP から PC に EAP 要求を送信することから始まる。この応答として,PC は,利用者が入力した自分自身の識別情報を送信する。その後,PC と認証サーバとの間で認証方式の選択処理が行われる。認証方式(今回は EAP-TLS)が決定すると,PC と認証サーバ間で電子証明書が送受信され,相互の認証が行われる。単に,PC と認証サーバの電子証明書を相互に送受信しただけでは,相互認証はできないので,認証を可能にする追加の情報も送受信する。

EAP-TLS 方式では,暗号鍵作成のための機能強化も図られている。認証処理に加えて,暗号鍵を生成するための乱数などの情報が認証過程でやり取りされ,図2中の⑲のシーケンスが終了した時点で,256 ビットの PMK と呼ばれる暗号鍵が PC と認証サーバで共有される。PMK は,PC と無線 AP 間のデータを暗号化するために使われるので,認証サーバから無線 AP にも転送される。

実際のフレーム転送時に使われる 128 ビットの暗号鍵 TK(Temporal Key)は,4ウェイハンドシェイクと呼ばれる手順で PC と無線 AP 間で送受信される情報と,PMK を基に生成される。これによって,TK は①WEP 方式の暗号鍵とは異なり,予測されにくい暗号鍵となっている。

IEEE 802.1X は,スイッチのポートベースのアクセス制御を実現する技術である。有線 LAN で使用する場合は,スイッチの物理ポート単位に通信を制御している。IEEE 802.1X を実装するスイッチの配下に HUB を接続するような場合には,認証されていない PC との通信が行われることを防止するため,有線 LAN では独自の実装が必要である。一方,無線 LAN では,PC と無線 AP との論理的接続である [ ア ] をポート接続と見なすようにポートの概念を拡張している。これによって,②有線 LAN で使用する場合と比べて,接続制御上の問題が少なくなる。

このように,EAP-TLS 方式を使うことで,要件の一つである,許可された利用者の PC だけが社内ネットワークに接続できることになった。

〔認証基盤の構築〕

EAP-TLS 方式の実現には [ イ ] と呼ばれる認証基盤の構築が必要であり,認証局の設置,電子証明書の発行と配布,及び社員の異動や有効期限切れに伴う電子証明書のメンテナンスが必要になる。C 君は,電子証明書の初期配布やその後のメンテナンスを容易に行えるように配慮して,認証基盤を構築することにした。

認証サーバとしては,認証局機能と RADIUS 機能の両方の機能を備えたアプライアンス型の認証サーバ製品を使い,プライベート認証局を設置することにした。

社員への電子証明書の配布については,個別対応の負担をできるだけ軽減する必要があるので,電子証明書のダウンロード用 Web サーバ(以下,配布サーバという)を用意し,そこからダウンロードさせることを検討した。配布サーバには,必要なファイルを認証サーバからコピーして格納しておく。配布サーバの設置に関しては,社員の社内ネットワーク接続方法に関係するので,C 君は,ポータビリティの実現と併せて検討することにした。

C 君が考えた電子証明書の運用手順の概略は,次のとおりである。

証明書類の継続更新処理は,電子証明書の有効期限内であれば,有効期限の1か月前から,申請手続なく社員各自が,配布サーバから更新済の証明書をダウンロードできるようにする。有効期限内に更新処理を行わなかった場合は,利用申請書を再度提出する(1)〜(3)の運用手順が必要になる。

電子証明書の有効期限内であっても,異動などに伴い,社内ネットワークに接続できないようにする必要が生じた場合は, [ エ ] を作成して電子証明書を無効にする。

C 君が,(1)〜(3)の運用手順及び証明書類の継続更新処理手順の案を B 主任に報告したところ,③“PC に証明書類をセットするだけでは,ユーザ認証という観点では問題がある”という指摘を受けた。そこで C 君は,対策として PC の運用方法を改善することにした。更に調べてみると,証明書類をより安全に管理するための USB 接続のデバイス(以下,トークンという)があることが分かった。トークンは,証明書類を格納するが,USB メモリとは異なり,パスワードによる不正利用防止機能及びトークン内での暗号処理機能を実現している。A 社では,社外に持ち出す PC をシンクライアント化し,トークンを利用することにした。

〔無線 LAN 規格の混在による影響とその対応〕

A 社で使用している PC は,ほとんどノート型である。デスクトップ型の PC については集約時に,最新型のノート PC に入れ替える予定である。ノート PC が対応する無線 LAN 規格には IEEE 802.11a,IEEE 802.11b 及び IEEE 802.11g と複数種あり,中には IEEE 802.11b にだけ対応する PC もあった。特に同一周波数帯域を使用する IEEE 802.11b と IEEE 802.11g の場合には,混在による影響が懸念された。そこで C 君は,その影響について調べてみた。

無線 LAN では,イーサネットと異なる [ オ ] 方式と呼ばれるアクセス方式が使われている。通信を開始する無線端末が,ほかの端末が電波を出していないかを,事前に確認する方式である。しかし,電波の伝搬にかかわる無線端末の位置関係,障害物の影響などの空間的な原因や無線 LAN 規格の混在が原因で,事前の確認ができない場合もある。これを回避する方法として考えられたのが,RTS(Request To Send)及び CTS(Clear To Send)という制御フレームを利用する方式(以下,RTS/CTS 方式という)である。この RTS/CTS 方式を使用した衝突回避の通信シーケンス例を図3に示す。

無線 AP,送信無線端末,ほかの無線端末の3本の時間軸(左から右へ時刻 t<sub>1</sub>〜t<sub>9</sub>)。無線 AP が先行データフレームを t<sub>1</sub> まで送信する。t<sub>1</sub> から t<sub>2</sub> までが DIFS(50μ秒)。t<sub>2</sub> から送信無線端末のバックオフ時間があり,その後,送信無線端末が RTS を t<sub>3</sub> まで送信する。RTS によって,ほかの無線端末に送信抑止時間の通知が届く。t<sub>3</sub> から t<sub>4</sub> までが SIFS(10μ秒)。t<sub>4</sub> から t<sub>5</sub> まで無線 AP が CTS を送信し,CTS によって,ほかの無線端末に送信抑止時間の通知が届く。t<sub>5</sub> から t<sub>6</sub> までが SIFS(10μ秒)。t<sub>6</sub> から t<sub>7</sub> まで送信無線端末がデータフレームを送信する。t<sub>7</sub> から t<sub>8</sub> までが SIFS(10μ秒)。t<sub>8</sub> から t<sub>9</sub> まで無線 AP が ACK を送信する。DIFS:Distributed Inter Frame Space,SIFS:Short Inter Frame Space,ACK:ACKnowledgement。注1 制御フレームの MAC フレーム長は,RTS が 20 バイト,CTS が 14 バイト,ACK が 14 バイトである。注2 DIFS 及び SIFS の値は,IEEE 802.11b と IEEE 802.11g が混在している場合の例である。
図3 RTS/CTS 方式を使用した衝突回避の通信シーケンス例

図3は,送信無線端末が無線 AP に向けてデータを送る場合の例を示している。データ送信に先立ち,送信無線端末が RTS を送信し,RTS を受信した無線 AP が CTS を送信する。RTS 及び CTS には送信抑止時間が含まれており,これらの制御フレームを受信したほかの無線端末は,指定された時間の送信を抑止し,アクセスの衝突を回避する。

RTS/CTS 方式では,RTS 及び CTS の2個のフレームを送信するので利用効率が低下する。そこで,送信無線端末が RTS の代わりに,CTS を送信する方式(以下,自己 CTS 方式という)も考えられている。

C 君は,RTS や CTS のような衝突回避に使われる制御フレームの送信に必要な時間を試算してみた。これらは無線 AP に接続する無線端末が認識できるように,互換性のあるフレーム形式で送信される必要がある。そのために,MAC フレームの先頭に付加されるプリアンブル部 144 ビットと物理ヘッダ部 48 ビットは,固定の 1M ビット/秒で送られる。MAC フレーム部は,IEEE 802.11b と IEEE 802.11g が混在した場合,11M ビット/秒で送られる。したがって,14 バイトの CTS フレームの送信には,合計 a μ秒の時間がかかる。一方,データフレームについては,1,500 バイトのフレームを 54M ビット/秒で送る場合,約 230μ秒かかることから,制御フレームのオーバヘッドは非常に大きいことが分かる。

C 君は,混在による性能低下が大きいので,共存時に性能低下が大きい IEEE 802.11b の利用をやめ,IEEE 802.11b だけに対応する PC の利用者には,IEEE 802.11g 対応の無線 LAN カードを支給することにした。IEEE 802.11g より高速の伝送が可能な新規格である IEEE [ カ ] 規格の標準化が進んでいることから,支給する無線 LAN カードには,将来制御用ソフトウェアの更新によって,新規格にも対応可能な無線 LAN カードを選定した。

このように,A 社では,使用する無線 LAN 規格を IEEE 802.11a と IEEE 802.11g に統合し,さらに,将来の無線 LAN 高速化への対応を図った。

〔ポータビリティの実現〕

応接エリアでは,社員だけでなく来訪者も無線 LAN を使用することになるので,社員か来訪者かによって接続先を切り替える制御が必要になる。C 君は社員用の ESS-ID とは別に,来訪者用の ESS-ID を設定することにした。応接エリアの無線 AP に接続された来訪者の PC からのトラフィックは,インターネット接続用のルータに転送する。無線 LAN を利用したい来訪者には,接続のための設定情報が書かれたカードを受付で渡し,持ち込んだ PC にその情報を設定してもらうことにした。

部門 LAN を経由したサーバの利用では,ポータビリティを実現するためには,どの無線 AP に接続しても,社員の所属部門を認識し,所属部門の部門 LAN に接続できる仕組みが必要である。その際に,PC 側の操作が必要だと,使い勝手が悪いので,PC 側の操作を不要にしたい。

C 君は,PC を無線 LAN に接続したときに,社員の所属を区別する VLAN ID を付与できればよいと考えた。VLAN ID 付与の方式として,無線 AP への設定を工夫する方式と,IEEE 802.1X 認証の仕組みを活用する方式の二つを考え,B 主任に相談した。

B 主任からは,“無線 LAN のアクセス認証に EAP-TLS を使用しているのだから,それを生かした方式の方がよいのではないか”というアドバイスを受けた。

また,C 君は,④認証基盤の構築で用意した配布サーバへの最初のアクセス制御にも IEEE 802.1X 認証の仕組みを利用することを考えたが,これについても B 主任から“セキュリティに関して大丈夫か”との指摘を受けた。C 君は,当初考えていた配布サーバへのユーザ ID とパスワードによるアクセス保護に加え,不正にダウンロードされにくい対策をとることにして,B 主任の了承を得た。

IEEE 802.1X 認証の仕組みを活用する方式では,⑤社員の所属部門が変わった場合の運用が容易なこともあり,C 君は,この方式で進めることにした。

このようにして,C 君は A 社の無線 LAN システムの設計を終え,集約先オフィスへのシステム導入の準備を開始した。

出題趣旨(IPA)

無線LANは,高速化のための技術(IEEE 802.11n)やセキュリティの改善(IEEE 802.11i)によって利用価値が高まっており,座席のフリーアドレス化やモバイル機器の活用など,オフィスの利用効率向上や業務効率の改善の手段として期待されている。しかし,セキュリティを確保した上で適切に利用するには,無線LANの特性に配慮したシステム構築が必要となる。本問では,オフィスの移転に伴う無線化を例に,無線LANを使用したシステム構築に当たって,電波という伝送媒体の特性を理解したシステム構成設計,セキュリティ確保への配慮,運用時の注意事項に関するシステム構築能力を問う。

設問と解答例

設問1(1) 解答欄2つ

PC がクライアント証明書を送出するシーケンスはどれか。図2中のシーケンス番号で答えよ。また,このときに,電子証明書とともに送る認証用データは何か。10字以内で答えよ。

〔シーケンス番号〕解答例

  • ⑫

〔認証用データ〕解答例

  • クライアント署名
解説

本文の根拠

〔セキュリティ確保の方式〕

その後,PC と認証サーバとの間で認証方式の選択処理が行われる。認証方式(今回は EAP-TLS)が決定すると,PC と認証サーバ間で電子証明書が送受信され,相互の認証が行われる。

〔セキュリティ確保の方式〕

単に,PC と認証サーバの電子証明書を相互に送受信しただけでは,相互認証はできないので,認証を可能にする追加の情報も送受信する。

図2

⑨ RADIUS Access Request(無線 AP→認証サーバ)。認証サーバで“認証方式の決定”。⑩ RADIUS Access Challenge(認証サーバ→無線 AP)。⑪ EAP 要求(無線 AP→PC)。⑫ EAP 応答(PC→無線 AP)。

図2では,③④で PC が識別情報を送り,⑤〜⑨で認証方式を選び,⑨の後に認証サーバが“認証方式の決定”をする。そこから EAP-TLS のハンドシェークが始まり,⑩⑪で認証サーバからサーバ証明書とクライアント証明書の要求が届き,PC はその応答の⑫でクライアント証明書を返す(EAP-TLS は RFC 5216。TLS のメッセージを EAP に載せて運ぶ)。このとき一緒に送るのが,それまでのハンドシェークの内容に PC の秘密鍵で付けた署名(TLS の CertificateVerify)で,解答例は“クライアント署名”としている。

本文の“電子証明書を相互に送受信しただけでは,相互認証はできないので,認証を可能にする追加の情報も送受信する”が署名を指している。証明書は公開情報なので誰でも送れる。証明書の公開鍵で検証できる署名を付けて初めて,送り手がその証明書に対応する秘密鍵を持っていることが確かめられる。

間違えやすい点。⑯を選ぶと,⑮は認証サーバ側の TLS の終わり(Finished)を運ぶ要求,⑯はそれへの応答で,PC が“PMK 生成”をした後に当たる。証明書の送出は認証方式の決定直後の往復で行われる。認証用データを“乱数”や“パスワード”とすると,証明書の持ち主であることを示すものにならない。10字以内なので“クライアント署名”“デジタル署名”程度に収める。

設問1(2) 40字以内

本文中の下線①に関して,どのような手段によって,WEP 方式に比べて暗号鍵の予測を困難にしているのか。40字以内で述べよ。

解答例

  • 送り合った乱数を使ってミキシングすることでランダム性を実現したこと
解説

本文の根拠

〔セキュリティ確保の方式〕

実際のフレーム転送時に使われる 128 ビットの暗号鍵 TK(Temporal Key)は,4ウェイハンドシェイクと呼ばれる手順で PC と無線 AP 間で送受信される情報と,PMK を基に生成される。

〔セキュリティ確保の方式〕

暗号鍵を生成するための乱数などの情報が認証過程でやり取りされ,

IEEE 802.11i の4ウェイハンドシェイクでは,無線 AP と PC がそれぞれ乱数(ANonce と SNonce)を送り合い,PMK と両者の乱数・MAC アドレスを混ぜ合わせて(擬似乱数関数にかけて)PTK を作る。TK はその一部である。乱数は接続のたびに変わるので,TK も接続のたびに変わり,予測しにくい。WEP は全端末が同じ固定の WEP キーを使い,24 ビットの IV を付けるだけなので,鍵が長期間変わらず,IV の重複から鍵を推定されるおそれがあった。

本文の“4ウェイハンドシェイクと呼ばれる手順で PC と無線 AP 間で送受信される情報と,PMK を基に生成される”が手段を述べている。設問はその“送受信される情報”が何で,どう使うかを答えさせている。

解答例(33字)は“送り合った乱数”と“ミキシング(混ぜ合わせ)”の2点を入れている。40字以内なので,乱数を交換すること,それを PMK と混ぜて鍵を作ること,の2点を落とさない。“PMK を使うから”だけでは,PMK も認証のたびに作られるとはいえ,4ウェイハンドシェイクの役割に触れていない。

設問1(3) 解答欄1つ

本文中の [ ア ] に入れる適切な字句を答えよ。

〔ア〕解答例

  • アソシエーション
解説

本文の根拠

〔セキュリティ確保の方式〕

一方,無線 LAN では,PC と無線 AP との論理的接続である [ ア ] をポート接続と見なすようにポートの概念を拡張している。

図2

①アソシエーションの確立処理(PC と無線 AP の間,ボックス)。

無線 LAN で端末が無線 AP に参加する論理的な接続をアソシエーションという(IEEE 802.11)。IEEE 802.1X を無線 LAN で使うときは,アソシエーション1本を1つのポートと見なし,認証が済むまでそのアソシエーションのデータフレームを通さない。

根拠は“PC と無線 AP との論理的接続”という言い換えと,図2の最初の“①アソシエーションの確立処理”である。802.1X の認証(②以降)はアソシエーションができてから始まる。

間違えやすい点。“ESS-ID”や“SSID”は無線 LAN(ネットワーク)の識別子で,端末ごとの接続ではない。“リンク”“セッション”では用語として足りない。講評によると正答率は低かった。

採点講評(IPA)

設問1は,無線LANのセキュリティ確保について出題した。無線APへの接続制御に関する(3),(4)の正答率は低かった。無線LANでのポート概念やその接続制御に関して確実に理解してほしい。

設問1(4) 30字以内

本文中の下線②に関して,有線 LAN で使用する場合と比べて,接続制御上の問題が少ない理由を30字以内で述べよ。

解答例

  • 認証が端末と無線APの1対1の関係で行われるから
解説

本文の根拠

〔セキュリティ確保の方式〕

IEEE 802.1X を実装するスイッチの配下に HUB を接続するような場合には,認証されていない PC との通信が行われることを防止するため,有線 LAN では独自の実装が必要である。

〔セキュリティ確保の方式〕

これによって,②有線 LAN で使用する場合と比べて,接続制御上の問題が少なくなる。

有線 LAN の 802.1X は物理ポート単位に通信を許可する。ポートの先に HUB があると,1台が認証に成功した時点でそのポートが開き,同じ HUB につながる認証していない PC も通信できてしまう。無線 LAN ではアソシエーション(端末1台と無線 AP の間の接続)をポートと見なすので,認証は常に端末と無線 AP の1対1で行われ,1台の認証が他の端末に及ばない。

本文は有線 LAN の問題を“HUB を接続するような場合”として具体的に挙げている。その問題が無線 LAN では構造上起きないことを,設問1(3)のアソシエーションと結び付けて答える。

解答例は“認証が端末と無線 AP の1対1の関係で行われるから”(24字)。30字以内なので,“1対1”の関係にあることを必ず入れる。“暗号化されるから”は接続制御の理由にならない。講評によると正答率は低かった。

採点講評(IPA)

設問1は,無線LANのセキュリティ確保について出題した。無線APへの接続制御に関する(3),(4)の正答率は低かった。無線LANでのポート概念やその接続制御に関して確実に理解してほしい。

設問2(1) 解答欄3つ

本文中の [ イ ] 〜 [ エ ] に入れる適切な字句を答えよ。

〔イ〕解答例

  • PKI
  • 公開鍵基盤

〔ウ〕解答例

  • 秘密鍵

〔エ〕解答例

  • (証明書)失効リスト
  • CRL(Certificate Revocation List)
解説

本文の根拠

〔認証基盤の構築〕

EAP-TLS 方式の実現には [ イ ] と呼ばれる認証基盤の構築が必要であり,認証局の設置,電子証明書の発行と配布,及び社員の異動や有効期限切れに伴う電子証明書のメンテナンスが必要になる。

〔認証基盤の構築〕

各自のクライアント証明書,クライアントの [ ウ ] 及び認証局証明書(以下,証明書類という)をダウンロードして PC にセットする。

〔認証基盤の構築〕

電子証明書の有効期限内であっても,異動などに伴い,社内ネットワークに接続できないようにする必要が生じた場合は, [ エ ] を作成して電子証明書を無効にする。

イ:認証局を置き,電子証明書を発行・配布・失効させて公開鍵の持ち主を保証する仕組みを PKI(公開鍵基盤)という。ウ:クライアントが自分を証明するには,クライアント証明書(公開鍵を含む)と対になる秘密鍵が必要である。設問1(1)の署名はこの秘密鍵で作る。エ:有効期限前に証明書を無効にするときは,認証局が CRL(証明書失効リスト)に載せる(X.509 の CRL は RFC 5280)。認証サーバは CRL を見て失効した証明書での接続を拒む。

根拠は各空欄の前後である。イは“認証局の設置,電子証明書の発行と配布”,ウは“クライアント証明書”“認証局証明書”と並ぶ PC に置くもの,エは“有効期限内であっても…電子証明書を無効にする”が手掛かりになる。

間違えやすい点。ウを“公開鍵”とすると,公開鍵はクライアント証明書の中に入っているので別に配る必要がない。イは PKI と公開鍵基盤,エは“(証明書)失効リスト”と CRL のどちらでもよい。

設問2(2) 40字以内

本文中の下線③に関して,B 主任が指摘した問題点を40字以内で述べよ。

解答例

  • 許可されていない利用者でも当該PCを使えばネットに接続できること
解説

本文の根拠

〔認証基盤の構築〕

C 君が,(1)〜(3)の運用手順及び証明書類の継続更新処理手順の案を B 主任に報告したところ,③“PC に証明書類をセットするだけでは,ユーザ認証という観点では問題がある”という指摘を受けた。

〔要件の整理〕

(4) 許可された利用者の PC だけが社内ネットワークに接続できる。

証明書類(クライアント証明書と秘密鍵)が PC に入っていれば,EAP-TLS の認証は PC が自動で済ませる。すると,その PC を使う人が誰であっても,許可された利用者として社内ネットワークにつながってしまう。確かめているのは“証明書類が入った PC であること”であって,“使っている人が許可された利用者であること”ではない。

要件(4)は“許可された利用者の PC だけ”としている。B 主任の“ユーザ認証という観点では問題がある”は,PC(機器)の認証になっていて,利用者本人の認証になっていないことを指している。

解答例は“許可されていない利用者でも当該 PC を使えばネットに接続できること”(32字)。40字以内なので,“許可されていない利用者”と“その PC を使えば接続できる”の2点を入れる。“証明書が盗まれる”は PC の盗難と重なるが,指摘の中心は利用者を確かめていないことである。

設問2(3) 25字以内

B 主任が指摘した問題点への対策として,C 君が考えた PC の運用方法の具体的な改善案を25字以内で述べよ。

解答例

  • PCへの利用者パスワードの設定を徹底する。
解説

本文の根拠

〔認証基盤の構築〕

そこで C 君は,対策として PC の運用方法を改善することにした。

PC に入った証明書類を本人以外が使えないようにするには,PC を使い始めるときに利用者を確かめればよい。そのための PC の運用上の対策が,PC へのログオンに利用者パスワードを設定し,必ず使わせること(設定の徹底)である。パスワードを知らない人は PC を起動しても使えず,証明書類による接続までたどり着けない。

本文は“PC の運用方法を改善する”としており,認証方式や機器を変えるのではなく運用で対処する案を求めている。トークンの利用は本文で別に書かれている(社外に持ち出す PC 向け)。

解答例は“PC への利用者パスワードの設定を徹底する。”(21字)。25字以内なので,“利用者パスワード”と“徹底する”を入れる。“トークンを使う”は運用方法の改善ではなく,本文でも別の対策として扱われている。

設問2(4) 30字以内

トークン内で暗号処理を行うことで,セキュリティ管理上得られる利点を30字以内で述べよ。

解答例

  • 秘密鍵を読み出すことなく処理できるので秘匿性が増す。
解説

本文の根拠

〔認証基盤の構築〕

トークンは,証明書類を格納するが,USB メモリとは異なり,パスワードによる不正利用防止機能及びトークン内での暗号処理機能を実現している。

EAP-TLS の署名(設問1(1))には秘密鍵が要る。USB メモリに入れた秘密鍵は,署名のたびに PC に読み出されるので,PC 上のマルウェアなどにコピーされるおそれがある。トークンは署名などの暗号処理をトークンの中で行い,結果だけを PC に返すので,秘密鍵をトークンの外に出さずに済む。秘密鍵が複製されなければ,持ち主はトークンを持つ人1人に限られる。

本文は“USB メモリとは異なり”“トークン内での暗号処理機能”と,違いを暗号処理の場所に置いている。そこから,秘密鍵を外に出さないという利点を導く。

解答例は“秘密鍵を読み出すことなく処理できるので秘匿性が増す。”(26字)。30字以内なので,“秘密鍵を読み出さない(外に出さない)”ことを必ず書く。“パスワードで守られる”は不正利用防止機能の利点で,暗号処理機能の利点ではない。講評は,利用者認証には秘密鍵の所有に加えて唯一の所有者であることが必要だとしている。

採点講評(IPA)

設問2は,電子証明書を利用した認証を実現するためのPKI構築について出題した。秘密鍵の漏えい防止に関する(4)の正答率は低かった。利用者認証には,認証要求者が秘密鍵を所有していることに加え,唯一の所有者であることが必要である。利用者認証の本質的な理解を深めてほしい。

設問3(1) 解答欄2つ

本文中の [ オ ] , [ カ ] に入れる適切な字句を答えよ。

〔オ〕解答例

  • CSMA/CA

〔カ〕解答例

  • 802.11n
解説

本文の根拠

〔無線 LAN 規格の混在による影響とその対応〕

無線 LAN では,イーサネットと異なる [ オ ] 方式と呼ばれるアクセス方式が使われている。通信を開始する無線端末が,ほかの端末が電波を出していないかを,事前に確認する方式である。

〔無線 LAN 規格の混在による影響とその対応〕

IEEE 802.11g より高速の伝送が可能な新規格である IEEE [ カ ] 規格の標準化が進んでいることから,

オ:無線 LAN のアクセス方式は CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)である。送信前にキャリアを確かめ,空いていてもランダムな待ち時間(図3のバックオフ時間)を置いてから送ることで衝突を避ける。イーサネットは CSMA/CD(衝突を検出して再送する)である。カ:802.11g(最大 54M ビット/秒)より高速な新規格は IEEE 802.11n で,MIMO などで高速化している。802.11n は 2009 年に標準化された。

根拠は,オが“イーサネットと異なる”“事前に確認する方式”,カが“802.11g より高速”“標準化が進んでいる”という記述である。

間違えやすい点。オを CSMA/CD とするとイーサネットの方式になる。カは“IEEE [ カ ]”なので“802.11n”と書く(IEEE を重ねない)。802.11a は 54M ビット/秒で 802.11g と同じ速度で,すでに本文に出てくる。

採点講評(IPA)

設問3は,複数無線LAN規格の混在時の影響について出題した。正答率は高かった。

設問3(2) 25字以内

自己 CTS 方式の場合,RTS/CTS 方式と比べて衝突を回避できない場合は,どのような場合か。25字以内で述べよ。

解答例

  • 端末間で電波が直接届かない位置関係にある場合
解説

本文の根拠

〔無線 LAN 規格の混在による影響とその対応〕

しかし,電波の伝搬にかかわる無線端末の位置関係,障害物の影響などの空間的な原因や無線 LAN 規格の混在が原因で,事前の確認ができない場合もある。

〔無線 LAN 規格の混在による影響とその対応〕

そこで,送信無線端末が RTS の代わりに,CTS を送信する方式(以下,自己 CTS 方式という)も考えられている。

RTS/CTS 方式では,送信無線端末の RTS に答えて無線 AP が CTS を送る。無線 AP の電波は,その AP に接続する全端末に届くので,送信無線端末の電波が届かない端末も CTS で送信を控える。自己 CTS 方式では送信無線端末が自分で CTS を送るため,その電波が届かない端末(隠れ端末)は CTS を受け取れず,送信抑止時間を知らないまま送信し,無線 AP のところで衝突する。

本文は,事前の確認ができない原因として“無線端末の位置関係,障害物の影響など”を挙げている。これが端末どうしの電波が届かない状態(隠れ端末問題)である。

解答例は“端末間で電波が直接届かない位置関係にある場合”(22字)。25字以内なので,“端末間で”“電波が届かない”を入れる。“規格が混在する場合”は,自己 CTS は本来 802.11b と 802.11g の混在時に 802.11b 端末を黙らせるための方式でもあり,RTS/CTS より劣る場面の説明にならない。

採点講評(IPA)

設問3は,複数無線LAN規格の混在時の影響について出題した。正答率は高かった。

設問3(3)

図3中の制御フレームのうち,同一の無線 AP に接続するすべての無線端末で受信される必要のあるフレームはどれか。図3中の字句で答えよ。

解答例

  • CTS
解説

本文の根拠

〔無線 LAN 規格の混在による影響とその対応〕

データ送信に先立ち,送信無線端末が RTS を送信し,RTS を受信した無線 AP が CTS を送信する。RTS 及び CTS には送信抑止時間が含まれており,これらの制御フレームを受信したほかの無線端末は,指定された時間の送信を抑止し,アクセスの衝突を回避する。

図3

t4 から t5 まで無線 AP が CTS を送信し,CTS によって,ほかの無線端末に送信抑止時間の通知が届く。

図3で無線 AP が送る制御フレームは CTS である。無線 AP から送られる CTS は,その AP に接続するすべての無線端末に届く位置関係にあり,全端末が受信して送信を控えなければ衝突を防げない。RTS は送信無線端末が送るので,隠れ端末には届かないことがあり,全端末で受信されることを前提にしていない(設問3(2))。ACK は宛先の端末への確認応答で,全端末が受け取る必要はない。

本文は“RTS を受信した無線 AP が CTS を送信する”と送り手を書き分けている。図3でも CTS は無線 AP の時間軸にあり,ほかの無線端末への“送信抑止時間の通知”が出ている。

間違えやすい点。“RTS と CTS”と両方を挙げると,RTS が届かない端末がいても RTS/CTS 方式は機能するという設計の要点を外す。設問は“図3中の字句”で答えさせているので“CTS”と書く。

採点講評(IPA)

設問3は,複数無線LAN規格の混在時の影響について出題した。正答率は高かった。

設問3(4) 50字以内

図3において,ACK を送信しなければならない理由を,無線 LAN の技術的特性に触れて,50字以内で述べよ。

解答例

  • 無線LANでは衝突の検出ができないので,確実に届いたことを通知する必要があるから
解説

本文の根拠

〔無線 LAN 規格の混在による影響とその対応〕

無線 LAN では,イーサネットと異なる [ オ ] 方式と呼ばれるアクセス方式が使われている。

図3

t8 から t9 まで無線 AP が ACK を送信する。

イーサネット(CSMA/CD)は送信しながら回線を監視し,衝突を検出したら再送する。無線 LAN では,送信中は自分の強い電波で他の電波を聞き分けられず,隠れ端末の電波はそもそも届かないので,送信側は衝突を検出できない。そこで受信側が,データフレームを正しく受け取ったときに ACK を返し,送信側は ACK が来なければ衝突などで届かなかったと判断して再送する(IEEE 802.11 の DCF)。

本文はアクセス方式が“イーサネットと異なる”CSMA/CA だとしている。CA(衝突回避)で衝突を減らしても,衝突の検出(CD)ができないので,届いたかどうかは ACK で確かめるしかない。

解答例は“無線 LAN では衝突の検出ができないので,確実に届いたことを通知する必要があるから”(40字)。50字以内なので,“衝突の検出ができない”という技術的特性と,“届いたことを通知する”という ACK の役割の2点を入れる。

採点講評(IPA)

設問3は,複数無線LAN規格の混在時の影響について出題した。正答率は高かった。

設問3(5) 解答欄1つ

本文中の a に入れる数値を求めよ。答えは,小数点以下を切り上げて整数で求めよ。

〔a〕解答例

  • 203
解説

本文の根拠

〔無線 LAN 規格の混在による影響とその対応〕

MAC フレームの先頭に付加されるプリアンブル部 144 ビットと物理ヘッダ部 48 ビットは,固定の 1M ビット/秒で送られる。MAC フレーム部は,IEEE 802.11b と IEEE 802.11g が混在した場合,11M ビット/秒で送られる。したがって,14 バイトの CTS フレームの送信には,合計 a μ秒の時間がかかる。

図3

注1 制御フレームの MAC フレーム長は,RTS が 20 バイト,CTS が 14 バイト,ACK が 14 バイトである。

プリアンブル部と物理ヘッダ部は 144+48=192 ビットで,1M ビット/秒で送るので 192μ秒かかる。MAC フレーム部は 14 バイト=112 ビットで,11M ビット/秒で送るので 112÷11=10.18…μ秒かかる。合計は 202.18…μ秒で,小数点以下を切り上げて 203 になる。

数値はすべて本文と図3の注1にある。検算として,1,500 バイトのデータフレームを 54M ビット/秒で送ると 12,000÷54≒222μ秒で,本文の“約 230μ秒”とおおむね合う。14 バイトの CTS に 203μ秒かかるのは,1M ビット/秒で送る 192 ビットの部分が大半を占めるためである。

間違えやすい点。バイトとビットの換算(×8)を忘れる,プリアンブル部と物理ヘッダ部も 11M ビット/秒で計算する(約 28μ秒になる)などである。“切り上げ”なので 202 ではなく 203 とする。

採点講評(IPA)

設問3は,複数無線LAN規格の混在時の影響について出題した。正答率は高かった。

設問4(1)

IEEE 802.1X 認証を用いた場合,VLAN ID が有効になる契機は,図2中のどのシーケンスによるものか。図2中のシーケンス番号で答えよ。

解答例

  • ⑱
解説

本文の根拠

〔ポータビリティの実現〕

C 君は,PC を無線 LAN に接続したときに,社員の所属を区別する VLAN ID を付与できればよいと考えた。

図2

⑱ RADIUS Accept(認証サーバ→無線 AP)。認証サーバで“PMK 生成”。

IEEE 802.1X で VLAN を割り当てるときは,認証サーバが認証に成功した利用者に対して返す RADIUS の Access-Accept に,VLAN ID を示す属性(Tunnel-Type,Tunnel-Medium-Type,Tunnel-Private-Group-ID)を入れて無線 AP に知らせる(RFC 3580)。無線 AP はそれを受けて,その端末のフレームを指定の VLAN に流す。したがって契機は⑱ RADIUS Accept である。

図2で認証サーバから無線 AP に認証の結果(成功)を伝えるのは⑱だけで,それより前の Access Challenge は認証の途中のやり取りである。本文の“VLAN ID を付与”は,この認証結果とともに行われる。

間違えやすい点。⑲ EAP 成功は無線 AP から PC への通知で,VLAN ID は PC に知らせるものではない(PC 側の操作を不要にしたいという本文の条件とも合う)。⑳〜㉓の4ウェイハンドシェイクは暗号鍵の共有で,VLAN とは関係しない。

採点講評(IPA)

設問4は,IEEE 802.1X方式によるポータビリティの実現方法について出題した。全体として,正答率は低かった。本問では,認証技術とVLAN制御を組み合わせ,システムの構築を具体的に考えて解答してほしかった。ネットワークスペシャリストにふさわしい応用力を磨いてほしい。

設問4(2) 55字以内

C 君が採用した IEEE 802.1X 認証の仕組みを活用する案は,どのようなやり方と考えられるか。55字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • ESS-IDには同一のIDを設定し,認証サーバから通知されたVLAN IDを無線APにセットする。
解説

本文の根拠

〔ポータビリティの実現〕

部門 LAN を経由したサーバの利用では,ポータビリティを実現するためには,どの無線 AP に接続しても,社員の所属部門を認識し,所属部門の部門 LAN に接続できる仕組みが必要である。その際に,PC 側の操作が必要だと,使い勝手が悪いので,PC 側の操作を不要にしたい。

〔ポータビリティの実現〕

B 主任からは,“無線 LAN のアクセス認証に EAP-TLS を使用しているのだから,それを生かした方式の方がよいのではないか”というアドバイスを受けた。

社員用の ESS-ID は部門によらず全無線 AP で同じ一つにしておく。社員が接続すると EAP-TLS で認証され,認証サーバは利用者ごとに登録した VLAN ID を RADIUS Accept で無線 AP に通知する(設問4(1))。無線 AP はその VLAN ID をその端末の通信に設定するので,どの無線 AP につないでも所属部門の部門 LAN に入れる(ダイナミック VLAN)。

本文の条件は,どの無線 AP でも所属部門を認識すること,PC 側の操作を不要にすることの2つである。ESS-ID を一つにすれば PC は部門ごとに ESS-ID を選び直す必要がなく,所属の判断は認証サーバが EAP-TLS の認証結果に基づいて行う。これが B 主任の言う“EAP-TLS を生かした方式”である。

解答例(49字)は“ESS-ID には同一の ID を設定”と“認証サーバから通知された VLAN ID を無線 AP にセット”の2点からなる。55字以内なので,PC 側の設定(ESS-ID)と,VLAN ID を誰が決め誰に知らせるかの両方を書く。

採点講評(IPA)

設問4は,IEEE 802.1X方式によるポータビリティの実現方法について出題した。全体として,正答率は低かった。本問では,認証技術とVLAN制御を組み合わせ,システムの構築を具体的に考えて解答してほしかった。ネットワークスペシャリストにふさわしい応用力を磨いてほしい。

設問4(3) 40字以内

本文中の下線④に関して,配布サーバへのアクセスの制御をどのように実現しようとしたのか。40字以内で述べよ。

解答例

  • 無線APが認証失敗の時に割り当てるVLANに配布サーバを設置する。
解説

本文の根拠

〔ポータビリティの実現〕

また,C 君は,④認証基盤の構築で用意した配布サーバへの最初のアクセス制御にも IEEE 802.1X 認証の仕組みを利用することを考えたが,

〔認証基盤の構築〕

(3) 社員は,移転先で初めて社内ネットワークに接続するとき,配布サーバに接続し,各自のクライアント証明書,クライアントの [ ウ ] 及び認証局証明書(以下,証明書類という)をダウンロードして PC にセットする。

移転先で初めて接続するとき,PC にはまだ証明書類がないので EAP-TLS の認証は失敗する。そこで無線 AP(802.1X)の機能で,認証に失敗した端末を特定の VLAN(認証失敗時の VLAN)に入れるようにし,その VLAN に配布サーバだけを置く。証明書類を持たない PC は配布サーバにしか接続できず,証明書類を入手して認証に成功すると所属部門の VLAN に移る。

本文(3)は“初めて社内ネットワークに接続するとき,配布サーバに接続し”証明書類をダウンロードするとしている。証明書類がない状態で配布サーバへの接続だけを許すには,認証の成否で割り当てる VLAN を分ければよい。B 主任が“セキュリティに関して大丈夫か”と指摘したのは,この VLAN には誰でも入れるためで,設問4(4)の対策につながる。

解答例は“無線 AP が認証失敗の時に割り当てる VLAN に配布サーバを設置する。”(33字)。40字以内なので,“認証失敗の時に割り当てる VLAN”と“配布サーバを設置”の2点を入れる。

採点講評(IPA)

設問4は,IEEE 802.1X方式によるポータビリティの実現方法について出題した。全体として,正答率は低かった。本問では,認証技術とVLAN制御を組み合わせ,システムの構築を具体的に考えて解答してほしかった。ネットワークスペシャリストにふさわしい応用力を磨いてほしい。

設問4(4) 40字以内

配布サーバ上に格納したクライアントの証明書類の管理について,C 君が採用した不正にダウンロードされにくい対策とはどのような方法と考えられるか。40字以内で述べよ。

解答例

  • ダウンロードされた証明書は,それ以降ダウンロードできないよう削除する。
解説

本文の根拠

〔ポータビリティの実現〕

C 君は,当初考えていた配布サーバへのユーザ ID とパスワードによるアクセス保護に加え,不正にダウンロードされにくい対策をとることにして,B 主任の了承を得た。

〔認証基盤の構築〕

(2) 社員には,配布サーバの URL と,ダウンロード専用の社員ごとのパスワードをメールや郵便で通知する。

認証失敗時の VLAN には誰でも接続できるので(設問4(3)),パスワードが漏れれば第三者に証明書類を取られるおそれがある。証明書類は本人が一度ダウンロードすれば足りるので,ダウンロードされたら配布サーバから削除し,二度とダウンロードできないようにする。本人が先にダウンロードしていれば,後から不正に取ろうとしても取れない。逆に本人がダウンロードできなければ,誰かに先に取られたことに気付ける。

本文は“ユーザ ID とパスワードによるアクセス保護に加え”としているので,パスワード以外の対策を答える。対象は設問文のとおり“配布サーバ上に格納したクライアントの証明書類の管理”である。

解答例は“ダウンロードされた証明書は,それ以降ダウンロードできないよう削除する。”(35字)。40字以内なので,“ダウンロード後に削除する”ことと,その結果“再ダウンロードできない”ことを入れる。“パスワードを複雑にする”は,本文が“加え”と言う追加の対策にならない。

採点講評(IPA)

設問4は,IEEE 802.1X方式によるポータビリティの実現方法について出題した。全体として,正答率は低かった。本問では,認証技術とVLAN制御を組み合わせ,システムの構築を具体的に考えて解答してほしかった。ネットワークスペシャリストにふさわしい応用力を磨いてほしい。

設問4(5) 45字以内

本文中の下線⑤に関して,無線 AP への設定を工夫する方式と比べた場合の運用上の利点を45字以内で述べよ。

解答例

  • 認証サーバ内の該当社員に付与するVLAN IDの設定を変更するだけで済む。
解説

本文の根拠

〔ポータビリティの実現〕

VLAN ID 付与の方式として,無線 AP への設定を工夫する方式と,IEEE 802.1X 認証の仕組みを活用する方式の二つを考え,B 主任に相談した。

〔ポータビリティの実現〕

IEEE 802.1X 認証の仕組みを活用する方式では,⑤社員の所属部門が変わった場合の運用が容易なこともあり,C 君は,この方式で進めることにした。

802.1X を活用する方式では,社員と VLAN ID の対応を認証サーバ1か所で持つ(設問4(2))。所属部門が変わっても,認証サーバでその社員に付与する VLAN ID を書き換えるだけで,次の接続から新しい部門 LAN に入る。無線 AP への設定を工夫する方式(部門ごとの ESS-ID と VLAN を全無線 AP に設定するなど)では,所属と VLAN の対応が無線 AP 側と PC 側の設定に分かれ,異動のたびに PC の設定変更などが必要になる。

本文は“どの無線 AP に接続しても”所属部門の部門 LAN に接続できることと,“PC 側の操作を不要にしたい”ことを求めている。所属の情報を認証サーバに集めれば,無線 AP や PC の設定に触れずに異動に対応できる。

解答例は“認証サーバ内の該当社員に付与する VLAN ID の設定を変更するだけで済む。”(37字)。45字以内なので,“認証サーバ”の“設定変更だけで済む”ことを書く。無線 AP の台数分の作業や PC の設定変更が要らないことを添えてもよい。

採点講評(IPA)

設問4は,IEEE 802.1X方式によるポータビリティの実現方法について出題した。全体として,正答率は低かった。本問では,認証技術とVLAN制御を組み合わせ,システムの構築を具体的に考えて解答してほしかった。ネットワークスペシャリストにふさわしい応用力を磨いてほしい。

出典:平成21年度 秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)

問2 サーバの移設

サーバの移設に関する次の記述を読んで,設問1〜5に答えよ。

D 社は,東京に本社がある精密機械製造会社であり,全国 10 か所に支店と工場(以下,拠点という)がある。D 社では,本社にあるサーバ室に設置されている約 200 台のサーバに,本社及び拠点のクライアントから TCP/IP で接続し,一部ではサーバ同士も接続する形態をとっている。サーバ室には,レイヤ3スイッチ(以下,L3SW という)と,サーバを接続するレイヤ2スイッチ(以下,L2SW という)が設置されている。D 社ネットワークシステムの概要を図1に示す。

D 社ネットワークシステムの概要図。本社の中にサーバ室があり,サーバ室には L3SW と,その下に L2SW … L2SW があり,各 L2SW にサーバ … サーバが接続している。L3SW にはサーバ室の外(本社内)の L2SW … L2SW も接続しており,それぞれに PC … PC が接続している。L3SW は広域イーサ網に接続し,広域イーサ網には拠点1 … 拠点10 が接続している。広域イーサ網:広域イーサネットサービス網
図1 D 社ネットワークシステムの概要

このたび D 社では,BCM(Business Continuity Management)の一環として,データセンタ事業者である E 社のデータセンタ(以下,DC という)に,サーバを移設することになった。予算の都合と早急な対策が必要であることから,情報システム部の F 部長に対し,“年度内に移設作業を終了させるように”という指示があった。そこで F 部長は,部内からメンバを集め,プロジェクトチームを発足させた。

〔システムの管理状況と移設方針〕

社内のシステムは,全体で 50 ほどあり,情報システム部以外の部署が管理するものが多く,構築した SI 業者もまちまちだった。そこで,プロジェクトのメンバは,各システムの担当者(以下,S 担という)から現状をヒアリングした。その結果,構成情報などの文書が導入時のままで,その後の変更が反映されていないことが分かった。現状を把握するのに時間がかかったが,概要がほぼ分かったところで,F 部長は,1日ですべてのシステムを移設することは困難であると判断し,24 ビットでマスクされたサブネットを基にグルーピングし,数回に分けて実施することにした。F 部長は,次に示すネットワークの移行方針を立てた。

〔システムの運用状況〕

サーバ室では,情報システム部に所属するオペレータ(以下,OP という)が,システム操作のほか,バックアップの取得や,監視サーバを用いた監視などの業務を行っている。監視サーバでは,サーバの稼働監視やジョブ監視などを行っており,障害を検知したときは,画面に障害状況を表示するとともに,該当する S 担に電子メールを送信する。OP の勤務体制は,平日8時から22時までの2交代なので,勤務時間外となる深夜,早朝及び休日は無人運転となる。無人運転中でも,監視サーバが障害を検知したときは S 担に電子メールが送信されるが,障害への対応は,OP や S 担の出社後になってしまう。その影響で業務の開始が遅れてしまうことがあり,利用部門から運用体制の改善を求められている。

WAN の障害検知については,通信事業者の監視サービスを利用している。通信事業者の監視センタからの連絡は,情報システム部のネットワーク担当者(以下,NW 担という)が受けており,NW 担と OP,S 担との連携がうまくいかないこともあった。

OP が検知した障害は,OP 自身がマニュアルに則して復旧作業を行っているが,マニュアルと実際の構成が異なっていることもあり,結果として S 担や NW 担が対応することが多い。

なお,それぞれの担当者では解決できない場合は,ネットワーク部分については NW 担が通信事業者又は保守業者に,それ以外は S 担が SI 業者に連絡して,対応してもらっている。

〔システムの運用委託方針〕

構成管理の不備と障害時の連携の不備については,D 社内でも以前から問題とされていた。そこで,DC を利用する目的の一つには,単なるサーバ設置だけでなく,これらの問題を解決するための運用委託も見据えていた。しかし,期間が限られていたので,移設作業を優先し,当面は,サーバ設置に伴う最低限必要な運用だけを E 社に委託することになった。その委託内容は次のとおりである。

E 社は,今後の運用範囲の拡大にも対応できるように,監視オペレータのほかに D 社担当の運用 SE を選任し,E 社内部の情報を一元的にとりまとめる役割をもたせることにした。そして,移設作業完了後は,ITIL をベースに開発された [ ア ] マネジメントシステムの国際規格である ISO/IEC 20000 を適用して,課題を改善しながら,E 社へ委託する運用範囲を順次拡大していくことも合意された。

また,S 担が引き続き本社でサーバを操作できるように,リモート KVM スイッチを導入することも決定した。リモート KVM スイッチとは,IP ネットワークなどを介して遠隔地にある複数台のサーバを,一組のキーボード, [ イ ] 及びマウスで操作するものである。

D 社が導入することにしたリモート KVM スイッチは,Web ブラウザの URL 入力域に,http:// a / を指定してログインし,対象のサーバを画面上で選択し,操作するものである。

〔サーバの移設計画〕

ネットワークの移行方針とシステムの運用委託方針が決まったので,移設作業手順書の作成に取り掛かることになった。作成に当たっては,移設前と移設後の構成を把握することが重要である。移設後の構成については,現状の構成を整理しながら,物理的にどのように配置するかを決めていく。機器の配置が決まれば,ラックや電源,リモート KVM スイッチなどの数と構成,及び当日の作業手順も決定する。移設後の構成が出来上がった段階で,運用マニュアルにも反映させることにした。

機器の配置設計では,複数のラックに散らばっているサーバを,システム単位にまとめることを優先したが,必要となる電源容量も考慮しなければならない。ラックに供給される電源は,定められた範囲内で正しく利用しないと,電源容量の超過で [ ウ ] が落ちて,システムが停止してしまうことになる。

最初に,事前に導入する L3SW の配置を検討した。L3SW を2台導入して冗長化構成とし,さらに L3SW の電源ユニットも冗長化することにした。この L3SW の電源ユニットは,負荷分散が可能であり,保守性を高める [ エ ] 対応のものを2台組み込むと,片方が故障した場合には,システムの電源を落とさずに交換することができる。表1に L3SW の電源仕様を示す。

列は項目と仕様。入力電圧:AC100〜120V / AC200〜240V。最大入力電流:12A(100V のとき)/ [ b ] A(200V のとき)。最大消費電力:1,080W(100V,200V とも)。
表1 L3SW の電源仕様(抜粋)

E 社が提供するラックには,標準として,交流 100V で 30A の電源が用意されている。その電源には,20A まで使用可能な電源タップが二つ接続される。したがって,L3SW の電源ユニットの冗長化を生かすには,電源ケーブルの接続の仕方を考慮しなければならないので,図2に示す接続構成をとることにした。このようにして,L3SW の配置設計を終えた後,そのほかのサーバや L2SW などの配置設計を行った。

L3SW-1 と L3SW-2 があり,それぞれ電源ユニット#1 と電源ユニット#2 をもつ。L3SW-1 の電源ユニット#1 は左の電源タップ(100V,20A)に接続している。L3SW-1 の電源ユニット#2,L3SW-2 の電源ユニット#1 と電源ユニット#2 からはケーブルが短く出ているだけで,接続先は描かれていない。電源タップ(100V,20A)二つが,電源(100V,30A)に接続している。注 設問の関係上,接続の一部を省略している。
図2 冗長化構成時の電源ケーブル接続構成

第1回の移設作業では,8システムが対象となった。その中には,この移設プロジェクトの発足前に更改することが決定していたシステムがあったので,更改作業を移設作業と同時に行うことになった。そこで,新規サーバ(以下,サーバαという)を,移設日より前に DC に設置し,システムの構築を行うことにした。テスト実施時には,現行サーバとは別の IP アドレスを使用して,新規導入する L3SW に接続する。テスト終了後,ほかのシステムを移設する時点で,サーバαの IP アドレスを現行サーバの IP アドレスに変更するようにした。

以上を基に,F 部長は,作業内容をまとめて,移設作業当日のタイムチャート(図3)と移設作業手順書を作成した。移設作業は,複数のシステムを並行して実施するので,タイムチャート上にチェックポイント(設問の関係上,省略している)を設定した。これは,主要関係者が集まり,そこまでの状況確認をした上で,次工程に進むか否かを判断するポイントである。

列は項番・作業項目,場所,担当,金曜日,土曜日,日曜日。① 業務停止:本社,S 担,金曜日に実施。② [ c ]:本社,S 担,①の後,金曜日から土曜日にかけて実施。③ 電源オフ,取外し:本社,S 担,土曜日(②の後)。④ 梱包,搬出:本社,E 社,土曜日(③の後)。⑤ 移送:場所は“−”,E 社,土曜日(④の後)。⑥ 搬入,開梱:DC,E 社,土曜日(⑤の後)。⑦ 取付け,電源オン:DC,S 担,土曜日(⑥の後)。⑧ ネットワークの移行:DC/本社,NW 担,土曜日(③の後に始まり,⑦が終わる時点までの時間帯を示す太線)。⑨ [ d ]:DC,SI 業者,土曜日(⑤の途中ごろから,⑦が終わる時点までの時間帯を示す太線)。⑩ サーバ動作確認:DC,S 担,土曜日(⑦,⑧,⑨の後)。⑪ 業務確認:DC/本社,S 担ほか,日曜日。注 太線は,ほかの作業項目と異なり,この時間内に作業を完了させればよいことを示す。
図3 移設作業当日のタイムチャート

移設作業手順書には,作業中に発生し得るリスクを想定し,その回避策や軽減策,リスクが顕在化した場合にとるべき行動をまとめた [ オ ] プランも含まれる。

移設作業手順書の完成後,机上で検証し,できる範囲内で [ カ ] を行った。その目的は,作業手順だけでなく, [ キ ] や移設体制の確認,発生したトラブルなどの回避策を整理することなどがある。この結果を受けて,手順書やタイムチャートの修正,移設体制の見直しなどを行い,移設作業開始の当日を迎えることになった。

〔障害事例1〕

第1回の移設作業は,図3中の項番⑩まで問題なく終了し,監視サーバがすべてのサーバを監視できることも確認した。しかし,日曜日に項番⑪を行ったところ,図4に示すサーバ接続構成において,特定のサーバからサーバαへの接続が失敗するという障害が発生した。この構成は,VRRP と STP による冗長化をとっており,図4中の LAN 構成は,障害に関係する一つの VLAN だけを図示している。

上に広域イーサ網があり,L3SW-1(pri 4096)と L3SW-2(pri 9012)が接続している。L3SW-1 のポート①と L3SW-2 のポート③の間は 1G ビット/秒で接続している。L3SW-1 のポート②と L2SW-1(pri 32768)のポート⑤の間は 100M ビット/秒で接続している。L3SW-2 のポート④と L2SW-1 のポート⑥が接続している。L3SW-1 と L2SW-2(pri 32768)が接続している。L3SW-2 と L2SW-2 の間は 100M ビット/秒で接続している。L2SW-1 にはサーバγ(172.28.42.100)とサーバβ(172.28.42.200)が,L2SW-2 にはサーバα(172.28.42.201)が接続している。pri:ブリッジプライオリティ。注1 ①〜⑥は,ポートの識別用の番号を示す。注2 サーバの下の数字は,IP アドレスを示す。
図4 サーバ接続構成(抜粋)

F 部長は,該当の S 担と,当日の立会いを行っていた,サーバαのシステムを構築した SI 業者を交えて,その障害状況を次のように整理した。

SI 業者は,サーバαに原因があると推定し,更に情報を収集するためにトラフィックモニタを利用して調査しようと考えた。しかし,サーバαを接続する L2SW-2 には, [ ク ] 機能がなかったので,サーバのソフトを利用して調査した。サーバβ及びサーバγで,サーバαに対する ping コマンドを投入し,三つのサーバで情報を採取した。サーバβでコマンド投入したときの情報を基に作成したメッセージフローを,図5に示す。

なお,この図は L2SW が省略されており,サーバαに ARP キャッシュが存在しない状態のものである。

サーバβ,L3SW,サーバαの間のメッセージフロー。①サーバβ→L3SW,②L3SW→サーバα,③サーバα→L3SW,④L3SW→サーバβ,⑤サーバβ→L3SW,⑥L3SW→サーバα,⑦サーバα→L3SW,⑧L3SW→サーバα,⑨サーバα→L3SW,⑩L3SW→サーバβ。下の表(列は項番,フレームの種類,あて先 MAC アドレス,送信元 MAC アドレス):①は ARP 要求,ブロードキャスト,サーバβ。②は ARP 要求,ブロードキャスト,サーバβ。③は ARP 応答,サーバβ,サーバα。④は(設問の関係上,省略している。)。⑤は ICMP echo 要求,サーバα,サーバβ。⑥〜⑨は(設問の関係上,省略している。)。⑩は ICMP echo 応答,サーバβ,L3SW。
図5 メッセージフロー

解析の結果,サーバαが保持する経路情報に誤りがあることが分かった。障害発生時の経路情報を,表2に示す。

列はあて先ネットワーク,ネットマスク,ゲートウェイ,インタフェース。1行目:0.0.0.0,0.0.0.0,172.28.42.254,172.28.42.201。2行目:127.0.0.0,255.0.0.0,127.0.0.1,127.0.0.1。3行目:172.28.42.0,255.255.255.128,172.28.42.126,172.28.42.201。4行目:172.28.42.0,255.255.255.0,172.28.42.201,172.28.42.201。5行目:172.28.42.128,255.255.255.128,172.28.42.254,172.28.42.201。6行目:172.28.42.201,255.255.255.255,127.0.0.1,127.0.0.1。7行目:172.28.42.255,255.255.255.255,172.28.42.201,172.28.42.201。8行目:224.0.0.0,240.0.0.0,172.28.42.201,172.28.42.201。9行目:255.255.255.255,255.255.255.255,172.28.42.201,172.28.42.201。
表2 経路情報

原因を追究した結果,何らかの理由で現行サーバに追加されていた不要ファイルが,サーバαにコピーされていたことが判明した。システムを更改したことで,この不要ファイルが使用されてしまうという事象が発生してしまったらしい。更に詳しく調査してみると,変更作業中に,SI 業者の担当者が新旧のサーバを比較したところ,このファイルがサーバαになかったので,独断でコピーしていたことが分かった。その後,SI 業者が該当ファイルを削除し,サーバαを再起動して,問題がないことが確認できたので,移設作業は完了となった。F 部長は,今回発生した障害の原因を分析し,その対策を次回以降の作業に反映させることにした。

〔障害事例2〕

E 社による暫定運用が始まってからしばらくすると,本社及び拠点から,DC の一部のサーバに接続できなくなり,最終的にはすべてのサーバに接続できなくなるという障害が発生した。この障害対応では,検知から復旧までに時間がかかってしまった。その経緯を,表3に示す。

列は時刻と対応。1:26 監視サーバからの電子メールを,E 社監視オペレータが受信。1:30 E 社監視オペレータが,該当の S 担への連絡を開始。1:34 S 担から E 社監視オペレータに,該当サーバの状況確認を指示。1:40 E 社監視オペレータから S 担へ,確認した状況を報告。S 担は,サーバに問題がないと判断し,出社後対応するので対応不要の旨を E 社監視オペレータに伝達。7:48 OP が,監視システムで検知している状況(DC の全サーバダウン)を NW 担へ連絡。8:25 NW 担が出社し,L3SW の保守業者及び通信事業者に状況確認したところ,問題なしとの報告あり。9:24 NW 担から E 社運用 SE に,E 社側設置機器の状況確認を依頼。9:35 E 社運用 SE が関係者を招集し,D 社と E 社間で対応策の協議を開始。10:02 E 社運用 SE の提案で,L2SW,L3SW のログ取得を決定。11:45 事象を特定し,E 社運用 SE から E 社監視オペレータへ障害復旧処置を指示。12:07 復旧を確認し,対策会議を終了したが,NW 担による調査は継続。
表3 障害対応の経緯

E 社の監視オペレータは,用意された手順書どおりに対応しており,問題はなかった。しかし,サーバに問題がないと判断してからの D 社の動きが従来と変わっていなかった。D 社の社員が出社し,調査が始まったものの,関係者間での情報共有が遅れ,原因特定までに時間がかかってしまった。

最終的には,NW 担からの連絡で,保守業者が調査した結果,図4のサーバ接続構成において,最初に接続できなくなったサーバが接続されている L2SW-1 にポート障害が発生したことが原因であることが判明した。ポート障害によって,L2SW-1 の CPU 負荷が高くなり,BPDU(Bridge Protocol Data Unit)を処理できなくなったのである。L2SW-1 に接続されているサーバの業務調整を行い,保守業者が L2SW を交換して,この障害は解決した。

〔連絡体制の整備〕

今回の障害対応によって,連絡体制の不備が明らかになった。そこで,E 社は,関係する事業者を含めた連絡体制の整備を,F 部長に提案した。E 社が提案した障害時連絡体制を,図6に示す。ポイントは,それぞれの会社内での一元管理である。

窓口担当者を中心に,S 担と F 部長が窓口担当者に接続している。窓口担当者は運用 SE に接続し,運用 SE は監視オペレータに接続している。注1 設問の関係上,一部を省略している。注2 S 担は,システムごとに存在する。
図6 E 社が提案した障害時連絡体制

F 部長は,運用 SE の役割に,E 社設置機器の保守業者と通信事業者への対応も含めるよう要望した。その結果,F 部長の要望を反映させた連絡体制が完成した。F 部長は,今回新設される窓口担当者に,情報システム部のメンバを選任した。窓口担当者の役割は,D 社内部の情報を一元管理することである。

D 社側連絡体制の整備を待って,新体制での運用が始まった。その後,移設作業は大きな問題もなく完了し,両社は運用改善に向け,新たなプロジェクトチームを作り,検討を開始した。

出題趣旨(IPA)

ネットワークの存在が当たり前になった現在,ネットワーク技術者は,ネットワークの新規構築よりも,既存のネットワークを再構築,又は一部を変更することの方が多くなってきている。これからのネットワーク技術者は,既存環境の調査から始まり,企画・設計,導入・移行,運用(障害対応),改善までのライフサイクル全体にかかわることが必要である。本問では,サーバの移設作業を題材とし,昨今取り上げられることの多いグリーンITにかかわる電源管理を取り入れるとともに,ネットワークの障害対応や運用体制など,ライフサイクルの全フェーズに通ずる幅広いスキルを問う。

設問と解答例

設問1 解答欄8つ

本文中の [ ア ] 〜 [ ク ] に入れる適切な字句を答えよ。

〔ア〕解答例

  • ITサービス

〔イ〕解答例

  • ディスプレイ

〔ウ〕解答例

  • ブレーカ

〔エ〕解答例

  • ホットスワップ

〔オ〕解答例

  • コンティンジェンシ

〔カ〕解答例

  • リハーサル

〔キ〕解答例

  • 作業時間

〔ク〕解答例

  • ミラーリング
解説

本文の根拠

〔システムの運用委託方針〕

そして,移設作業完了後は,ITIL をベースに開発された [ ア ] マネジメントシステムの国際規格である ISO/IEC 20000 を適用して,

〔システムの運用委託方針〕

リモート KVM スイッチとは,IP ネットワークなどを介して遠隔地にある複数台のサーバを,一組のキーボード, [ イ ] 及びマウスで操作するものである。

〔サーバの移設計画〕

ラックに供給される電源は,定められた範囲内で正しく利用しないと,電源容量の超過で [ ウ ] が落ちて,システムが停止してしまうことになる。

〔サーバの移設計画〕

この L3SW の電源ユニットは,負荷分散が可能であり,保守性を高める [ エ ] 対応のものを2台組み込むと,片方が故障した場合には,システムの電源を落とさずに交換することができる。

〔サーバの移設計画〕

移設作業手順書には,作業中に発生し得るリスクを想定し,その回避策や軽減策,リスクが顕在化した場合にとるべき行動をまとめた [ オ ] プランも含まれる。

〔サーバの移設計画〕

移設作業手順書の完成後,机上で検証し,できる範囲内で [ カ ] を行った。その目的は,作業手順だけでなく, [ キ ] や移設体制の確認,発生したトラブルなどの回避策を整理することなどがある。

〔障害事例1〕

しかし,サーバαを接続する L2SW-2 には, [ ク ] 機能がなかったので,サーバのソフトを利用して調査した。

ア:ISO/IEC 20000 は ITIL を基にした IT サービスマネジメントシステムの国際規格である(国内では JIS Q 20000)。イ:KVM は Keyboard,Video(ディスプレイ),Mouse の頭文字で,一組のキーボード・ディスプレイ・マウスで複数のサーバを操作する。ウ:電源容量を超えて電流が流れると,ブレーカが落ちて電源が切れる。エ:電源を入れたまま部品を抜き差しできることをホットスワップという。オ:リスクが顕在化したときにとる行動を前もって決めておく計画をコンティンジェンシプランという。カ:本番の前に手順どおりに作業を試してみることをリハーサルという。キ:リハーサルで確かめるものとして,手順・体制と並ぶのは,各作業にかかる時間(作業時間)である。図3のタイムチャートはこの時間を基に組まれている。ク:スイッチの特定のポートを流れるフレームを別のポートに複製して,トラフィックモニタで観察できるようにする機能をポートミラーリングという。

根拠は各空欄の前後の説明である。アは“ISO/IEC 20000”,イは“一組のキーボード,…及びマウス”,エは“電源を落とさずに交換する”,クは“トラフィックモニタを利用して調査”が手掛かりになる。

間違えやすい点。アを“サービス”“情報セキュリティ”とすると規格が違う(情報セキュリティマネジメントシステムは ISO/IEC 27001)。講評によると,アの正答率が非常に低かった。キは“タイムチャート”“スケジュール”でも意味は近いが,リハーサルで実測できるのは作業時間である。

採点講評(IPA)

設問1は,アの正答率が非常に低かった。ネットワークはITサービスの構成要素であり,その運用管理にかかわる用語や考え方について,基本的なものは知っておいてほしい。

設問2(1) 解答欄1つ

リモート KVM スイッチを利用して図4中のサーバβの操作を行うときに,本文中の a に何を指定すればよいか。25字以内で答えよ。

〔a〕解答例

  • リモートKVMスイッチのIPアドレス
解説

本文の根拠

〔システムの運用委託方針〕

D 社が導入することにしたリモート KVM スイッチは,Web ブラウザの URL 入力域に,http:// a / を指定してログインし,対象のサーバを画面上で選択し,操作するものである。

Web ブラウザで接続する相手はリモート KVM スイッチで,サーバβではない。リモート KVM スイッチが Web サーバの機能を持ち,ブラウザで表示される画面上でサーバβを選んで操作する。したがって URL のホスト部には,リモート KVM スイッチの IP アドレスを指定する。

本文は“ログインし,対象のサーバを画面上で選択し”としており,サーバの選択はログインの後に画面上で行う。URL にサーバβの IP アドレス(172.28.42.200)を入れると,KVM スイッチを通さずにサーバβに Web でつなぐことになり,キーボード・ディスプレイ・マウスの操作にならない。

解答例は“リモート KVM スイッチの IP アドレス”(18字)。25字以内なので,“リモート KVM スイッチの”を省かない。ホスト名(FQDN)でも URL としては成り立つが,解答例は IP アドレスとしている。

設問2(2) 解答欄1つ

表1において,100V と 200V の電源効率が同じであると仮定したとき, b に入れる数値を答えよ。

〔b〕解答例

  • 6
解説

本文の根拠

表1

最大入力電流:12A(100V のとき)/ b A(200V のとき)。最大消費電力:1,080W(100V,200V とも)。

電源ユニットが取り込む電力は電圧×電流である。消費電力(1,080W)が同じで電源効率も同じなら,入力側の電力も 100V と 200V で同じになる。100V のときの入力は 100V×12A=1,200VA なので,200V のときは 1,200÷200=6A である。

設問は“電源効率が同じであると仮定”しており,電圧が2倍になれば電流は半分になる,という比例計算で解ける。12A×100/200=6 と計算してもよい。

間違えやすい点。1,080W÷200V=5.4A とすると,100V でも 1,080÷100=10.8A となって表1の 12A と合わない。12A には効率(と力率)の分が含まれているので,消費電力ではなく 100V の入力電流から比例で求める。

設問2(3)

図2の電源ケーブル接続構成について,別系統の電源と電源タップを追加し,解答欄の図を完成させよ。

解答例(図)

解答例の図2。右側に電源(100V,30A)と,それに接続する電源タップ(100V,20A)二つが太線で追加されている。L3SW-1 の電源ユニット#1 は左の系統の左の電源タップに,L3SW-1 の電源ユニット#2 は追加した右の系統の左の電源タップに,L3SW-2 の電源ユニット#1 は左の系統の右の電源タップに,L3SW-2 の電源ユニット#2 は追加した右の系統の右の電源タップに接続している(各 L3SW の二つの電源ユニットが別々の電源系統につながる)。
解説

本文の根拠

〔サーバの移設計画〕

E 社が提供するラックには,標準として,交流 100V で 30A の電源が用意されている。その電源には,20A まで使用可能な電源タップが二つ接続される。したがって,L3SW の電源ユニットの冗長化を生かすには,電源ケーブルの接続の仕方を考慮しなければならないので,図2に示す接続構成をとることにした。

表1

最大入力電流:12A(100V のとき)

〔サーバの移設計画〕

この L3SW の電源ユニットは,負荷分散が可能であり,

解答例は,右に2つ目の電源(100V,30A)とその電源タップ2つを加え,L3SW-1 の電源ユニット#2 と L3SW-2 の電源ユニット#2 を新しい系統に,L3SW-2 の電源ユニット#1 を元の系統の右の電源タップにつなぐ。各 L3SW の2つの電源ユニットが別々の電源系統につながり,片方の系統(電源やタップ)が止まっても,もう片方の電源ユニットだけで L3SW が動き続ける。

容量も確かめる。L3SW 1台の最大入力電流は 12A(100V)である。普段は2つの電源ユニットで負荷を分け合うが,片方の系統が止まると残りの電源ユニットが1台分の 12A を受け持つ。電源タップ1つにつなぐ電源ユニットを1つにすれば最大 12A で 20A 以内,電源1系統には2台分の 24A がかかっても 30A 以内に収まる。1つのタップに2つの電源ユニットをつなぐと,最大 24A で 20A を超え,設問1のウ(ブレーカ)が落ちるおそれがある。

間違えやすい点。L3SW-1 の2つの電源ユニットを同じ電源系統につなぐと,その系統が止まったときに L3SW-1 が止まり,電源ユニットを冗長化した意味がなくなる。講評によると,この設問の正答率は高かった。

採点講評(IPA)

設問2 (3)は,電源ケーブルの接続構成を図示するものであったが,正答率は高かった。(6)は,複数の担当者が関係する作業でのチェックポイントの意義を理解していないと思われる解答が多かった。

設問2(4) 解答欄2つ

図3中の c , d に入れる作業項目を,それぞれ15字以内で答えよ。

〔c〕解答例

  • バックアップの取得

〔d〕解答例

  • サーバαのIPアドレス変更
解説

本文の根拠

図3

① 業務停止:本社,S 担,金曜日に実施。② c:本社,S 担,①の後,金曜日から土曜日にかけて実施。③ 電源オフ,取外し:本社,S 担,土曜日(②の後)。

〔システムの運用状況〕

サーバ室では,情報システム部に所属するオペレータ(以下,OP という)が,システム操作のほか,バックアップの取得や,監視サーバを用いた監視などの業務を行っている。

〔サーバの移設計画〕

テスト終了後,ほかのシステムを移設する時点で,サーバαの IP アドレスを現行サーバの IP アドレスに変更するようにした。

図3

⑨ d:DC,SI 業者,

c:業務を止めた後,電源を切ってサーバを取り外す前に,本社で S 担が行う作業である。移送中の衝撃や故障でデータを失うおそれがあるので,止めた時点のデータのバックアップを取っておく(バックアップの取得)。金曜日から土曜日にかけて時間をとっているのも,バックアップに時間がかかるためと読める。d:DC で SI 業者が行う作業で,本文に移設日に行うとあるのは,事前に DC に設置したサーバαの IP アドレスを現行サーバの IP アドレスに変更することである(サーバαの IP アドレス変更)。

根拠は,c が図3の場所・担当・順序(①業務停止と③電源オフの間,本社,S 担)と本文のバックアップの取得,d が場所・担当(DC,SI 業者)と“ほかのシステムを移設する時点で,サーバαの IP アドレスを…変更する”である。

15字以内なので,c は“バックアップの取得”(9字),d は“サーバαの IP アドレス変更”(13字)程度に収める。d を“サーバαの設置”とすると,本文では移設日より前に済んでいる作業になる。

設問2(5) 40字以内

図3中の項番⑧の“ネットワークの移行”とは,具体的にどのような作業をいうか。40字以内で述べよ。

解答例

  • 本社側L3SWからサブネットを削除し,DC側L3SWに追加する。
解説

本文の根拠

〔システムの管理状況と移設方針〕

ネットワークの変更は,サーバを取り外した後,該当するサブネットを本社側 L3SW から削除し,DC 側 L3SW に追加する手順とする。

図3

⑧ ネットワークの移行:DC/本社,NW 担,

サーバの IP アドレスは変えない方針なので,移設したサーバのサブネットは,これまで本社の L3SW にあったものが DC の L3SW に移る。そのため,本社側 L3SW からそのサブネット(インタフェースや経路)を削除し,DC 側 L3SW に同じサブネットを追加する。これで本社や拠点からそのサブネット宛ての通信が DC に届くようになる。

本文の移行方針に手順そのものが書かれている。図3で項番⑧の場所が“DC/本社”と両方になっているのも,本社側で削除し DC 側で追加するためである。

解答例は“本社側 L3SW からサブネットを削除し,DC 側 L3SW に追加する。”(32字)。40字以内なので,“本社側で削除”と“DC 側で追加”の両方を書く。片方だけでは,同じサブネットが2か所にある状態やどこにもない状態が残る。

設問2(6) 解答欄2つ

図3に設定するチェックポイントのうち,項番⑧及び項番⑩の後にチェックポイントが必要な理由を,それぞれ40字以内で述べよ。

〔項番⑧〕解答例

  • この作業が完了しないと,複数のサーバ間接続が正しく行えないから

〔項番⑩〕解答例

  • この作業が完了しないと,翌日の利用者を含めた業務確認が行えないから
解説

本文の根拠

〔サーバの移設計画〕

移設作業は,複数のシステムを並行して実施するので,タイムチャート上にチェックポイント(設問の関係上,省略している)を設定した。これは,主要関係者が集まり,そこまでの状況確認をした上で,次工程に進むか否かを判断するポイントである。

図3

⑩ サーバ動作確認:DC,S 担,土曜日(⑦,⑧,⑨の後)。⑪ 業務確認:DC/本社,S 担ほか,日曜日。

問題文の冒頭

D 社では,本社にあるサーバ室に設置されている約 200 台のサーバに,本社及び拠点のクライアントから TCP/IP で接続し,一部ではサーバ同士も接続する形態をとっている。

チェックポイントは,複数のシステムを並行して進める中で,関係者が集まって次へ進むかを決める場所である。項番⑧(ネットワークの移行)は全システムにかかわり,これが終わらないと,サーバ同士の接続を含む通信が正しく行えない。その状態で⑩のサーバ動作確認に進んでも,失敗の原因がサーバかネットワークか切り分けられない。項番⑩の後は,日曜日の⑪業務確認(利用者を含む)に進む前に,全システムのサーバが動いていることを確かめる。⑩が完了していなければ翌日の業務確認が行えない。

本文は“複数のシステムを並行して実施するので”チェックポイントを置くとしている。⑧はシステムをまたがる作業,⑩の後は“S 担ほか”(利用者を含めた関係者)の作業に切り替わる境目である。

40字以内で,それぞれ“この作業が完了しないと,次の何ができないか”を書く。解答例は,項番⑧が“複数のサーバ間接続が正しく行えない”(31字),項番⑩が“翌日の利用者を含めた業務確認が行えない”(33字)。講評によると,チェックポイントの意義を理解していないと思われる解答が多かった。

採点講評(IPA)

設問2 (3)は,電源ケーブルの接続構成を図示するものであったが,正答率は高かった。(6)は,複数の担当者が関係する作業でのチェックポイントの意義を理解していないと思われる解答が多かった。

設問3(1)

図5中の項番④,⑥〜⑨の空欄に入れる適切な字句を答えよ。

解答例

解答例の表。列は項番,フレームの種類,あて先MACアドレス,送信元MACアドレス。④ ARP応答,サーバβ,サーバα。⑥ ICMP echo要求,サーバα,サーバβ。⑦ ARP要求,ブロードキャスト,サーバα。⑧ ARP応答,サーバα,L3SW。⑨ ICMP echo応答,L3SW,サーバα。
解説

本文の根拠

〔障害事例1〕

なお,この図は L2SW が省略されており,サーバαに ARP キャッシュが存在しない状態のものである。

図5

①は ARP 要求,ブロードキャスト,サーバβ。②は ARP 要求,ブロードキャスト,サーバβ。③は ARP 応答,サーバβ,サーバα。

図5

⑤は ICMP echo 要求,サーバα,サーバβ。

図5

⑩は ICMP echo 応答,サーバβ,L3SW。

表2

5行目:172.28.42.128,255.255.255.128,172.28.42.254,172.28.42.201。

サーバβ(172.28.42.200)とサーバα(172.28.42.201)は同じ VLAN にいるので,βからαへの通信は L3SW をレイヤ2スイッチとして通る。①②は同じ ARP 要求が L3SW を中継されたもので,③④も同じ ARP 応答(あて先β,送信元α)である。⑤⑥も同じ ICMP echo 要求(あて先α,送信元β)である。

αが応答を返すとき,表2で 172.28.42.200 に一致する経路のうち最も長いマスクは 5行目の 172.28.42.128/25(ゲートウェイ 172.28.42.254)なので,αは直接βへ送らず,ゲートウェイ(L3SW)に送る。αには ARP キャッシュがないので,⑦で 172.28.42.254 の MAC アドレスを求める ARP 要求をブロードキャストし(送信元α),⑧で L3SW が ARP 応答を返す(あて先α,送信元 L3SW)。⑨で αは ICMP echo 応答を L3SW あてに送り(あて先 L3SW,送信元α),L3SW がルーティングして⑩(あて先β,送信元 L3SW)になる。図5の⑩の送信元が L3SW であることが,この流れの裏付けになる。

間違えやすい点。L3SW をルータとみなして,④や⑥の送信元を L3SW にすると誤りになる。同じサブネット内の通信は L3SW のレイヤ2機能でそのまま中継され,MAC アドレスは書き換わらない。講評によると正答率は低く,“L3SW は,ルータではなく,L2SW の機能も持っていることを理解しておいてほしい”としている。

採点講評(IPA)

設問3は,L3SWの基本的な技術に関するものであったが,正答率は低かった。L3SWは,ルータではなく,L2SWの機能も持っていることを理解しておいてほしい。

設問3(2) 50字以内

サーバγからサーバαへの ping が失敗した原因は何か。IP アドレスを具体的に示し,50字以内で述べよ。

解答例

  • サーバγに対するゲートウェイとして,172.28.42.126が誤って設定されていたから
解説

本文の根拠

表2

3行目:172.28.42.0,255.255.255.128,172.28.42.126,172.28.42.201。

図4

L2SW-1 にはサーバγ(172.28.42.100)とサーバβ(172.28.42.200)が,L2SW-2 にはサーバα(172.28.42.201)が接続している。

〔障害事例1〕

DC 内のサーバγからサーバαへの ping は,失敗する。

サーバγの IP アドレス 172.28.42.100 は,表2の 3行目 172.28.42.0/25(172.28.42.0〜127)と 4行目 172.28.42.0/24 に一致する。最も長いマスクの 3行目が選ばれるので,αはγへの応答をゲートウェイ 172.28.42.126 に送ろうとする。172.28.42.126 は L3SW(ゲートウェイ 172.28.42.254)ではなく,応答するものがいないので,ICMP echo 応答がγに届かず ping が失敗する。

β(.200)は 5行目の 172.28.42.128/25 に当たり,ゲートウェイ 172.28.42.254 が正しいので成功する(設問3(1))。本社のサーバは 1行目のデフォルト経路(172.28.42.254)で成功する。3行目がサーバγの属する範囲にだけ誤ったゲートウェイを設定していることが,障害の状況と一致する。

解答例は“サーバγに対するゲートウェイとして,172.28.42.126 が誤って設定されていたから”(44字)。50字以内で,“IP アドレスを具体的に示し”という指示に従って 172.28.42.126 を書く。“経路情報が誤っていた”だけでは本文の繰り返しになる。

採点講評(IPA)

設問3は,L3SWの基本的な技術に関するものであったが,正答率は低かった。L3SWは,ルータではなく,L2SWの機能も持っていることを理解しておいてほしい。

設問3(3) 35字以内

この障害が発生した原因への対策を,第2回以降の作業に反映させることにした。改善すべき点を,35字以内で述べよ。

解答例

  • 手順にないことを担当者だけの判断で実施しないことを徹底する。
解説

本文の根拠

〔障害事例1〕

更に詳しく調査してみると,変更作業中に,SI 業者の担当者が新旧のサーバを比較したところ,このファイルがサーバαになかったので,独断でコピーしていたことが分かった。

障害の原因は不要ファイルそのものより,SI 業者の担当者が手順書にない作業(ファイルのコピー)を独断で行ったことにある。次回以降は,手順書にないことは担当者だけの判断で実施せず,必要なら関係者に確認して判断を仰ぐことを徹底する。

本文の“独断でコピーしていた”が原因の核心である。移設作業は手順書とチェックポイントで管理しており(設問2(6)),手順の外で行われた作業は誰も把握できず,障害の切り分けも遅れる。

解答例は“手順にないことを担当者だけの判断で実施しないことを徹底する。”(30字)。35字以内なので,“手順にないこと”と“担当者だけの判断で実施しない”の2点を入れる。“不要ファイルを削除する”は今回の対処で,次回以降の改善点にならない。

採点講評(IPA)

設問3は,L3SWの基本的な技術に関するものであったが,正答率は低かった。L3SWは,ルータではなく,L2SWの機能も持っていることを理解しておいてほしい。

設問4(1) 解答欄6つ

図4中におけるポート①〜⑥の正常時の状態を解答群の中から選び,記号で答えよ。解答群 ア 代表ポート イ バックアップポート ウ ブロッキングポート エ ルートポート

〔①〕解答例

  • ア

〔②〕解答例

  • ア

〔③〕解答例

  • エ

〔④〕解答例

  • ア

〔⑤〕解答例

  • エ

〔⑥〕解答例

  • ウ
解説

本文の根拠

図4

上に広域イーサ網があり,L3SW-1(pri 4096)と L3SW-2(pri 9012)が接続している。L3SW-1 のポート①と L3SW-2 のポート③の間は 1G ビット/秒で接続している。L3SW-1 のポート②と L2SW-1(pri 32768)のポート⑤の間は 100M ビット/秒で接続している。L3SW-2 のポート④と L2SW-1 のポート⑥が接続している。

ブリッジプライオリティが最も小さい L3SW-1(4096)がルートブリッジになる。ルートブリッジのポート①②はすべて代表ポート(ア)である。L3SW-2 はルートへの最短経路が 1G ビット/秒の直結なので,③がルートポート(エ)になる。L2SW-1 は,⑤からルートへ 100M ビット/秒の1本,⑥から L3SW-2 経由で 1G ビット/秒を加えた2本の経路がある。パスコストは速い回線ほど小さく(IEEE 802.1D の推奨値で 100M ビット/秒が 19,1G ビット/秒が 4),⑥側は L3SW-2 までの 4 に④⑥間のコストが加わるので,④⑥間が 100M ビット/秒なら 23 となり,⑤の 19 が小さい。よって⑤がルートポート(エ)である。④⑥の区間では,ルートパスコストの小さい L3SW-2 側の④が代表ポート(ア)になり,残る⑥がブロッキングポート(ウ)になる。

根拠は図4のブリッジプライオリティと回線速度である。④⑥間の速度は図に書かれていないが,解答例は⑤をルートポートとしているので,④⑥間は 100M ビット/秒程度と読むことになる。なお,⑥がブロッキングになることは,④⑥間の速度によらず,L3SW-2 のルートパスコスト(4)が L2SW-1(19)より小さいことから決まる。

間違えやすい点。“バックアップポート”(イ)は,同じブリッジの別のポートが同じ区間の代表ポートになっているときの呼び名(RSTP)で,この構成には当たらない。講評によると,スパニングツリーに関する設問4は正答率が低かった。

採点講評(IPA)

設問4は,スパニングツリーに関するものであったが,正答率は低かった。ネットワークの冗長構成を実現するためによく使われる技術であり,その仕組みについて理解しておいてほしい。

設問4(2) 60字以内

L2SW-1 が BPDU を処理できなくなったことが,ほかの L2SW に接続されているサーバの通信にまで影響したのはなぜか。図4中の機器名,ポートの識別用の番号を用いて,60字以内で述べよ。

解答例

  • L2SW-1のポート⑥がフォワード状態になり,フレームのループが発生し,L3SW-1の処理に影響を与えたから
解説

本文の根拠

〔障害事例2〕

ポート障害によって,L2SW-1 の CPU 負荷が高くなり,BPDU(Bridge Protocol Data Unit)を処理できなくなったのである。

〔障害事例1〕

この構成は,VRRP と STP による冗長化をとっており,

〔障害事例2〕

E 社による暫定運用が始まってからしばらくすると,本社及び拠点から,DC の一部のサーバに接続できなくなり,最終的にはすべてのサーバに接続できなくなるという障害が発生した。

L2SW-1 のポート⑥は,L3SW-2 から届く BPDU によってブロッキング状態に保たれている(設問4(1))。L2SW-1 が BPDU を処理できなくなると,⑥は上位からの BPDU が届かなくなったと判断し,一定時間の後にフォワーディング状態に移る。すると L3SW-1―L2SW-1―L3SW-2―L3SW-1 のループができ,ブロードキャストフレームなどが回り続ける(ブロードキャストストーム)。ループしたフレームはルートブリッジの L3SW-1 に集中し,L3SW-1 の処理が追いつかなくなるので,L3SW-1 を通るほかの L2SW のサーバの通信まで止まる。

本文は,最初に一部のサーバ(L2SW-1 のサーバ)に接続できなくなり,最終的にはすべてのサーバに接続できなくなったとしている。影響が L2SW-1 の外に広がったのは,ループで L3SW-1 が巻き込まれたためである。

解答例(54字)は“L2SW-1 のポート⑥がフォワード状態になり”“フレームのループが発生し”“L3SW-1 の処理に影響を与えた”の3段階で書いている。60字以内で,設問の指示どおり機器名とポートの番号を使い,この3つをつなぐ。

採点講評(IPA)

設問4は,スパニングツリーに関するものであったが,正答率は低かった。ネットワークの冗長構成を実現するためによく使われる技術であり,その仕組みについて理解しておいてほしい。

設問4(3) 30字以内

表3中で,時刻 11:45 に運用 SE が監視オペレータに指示した障害復旧処置を,30字以内で述べよ。

解答例

  • L2SW-1のポート⑥のケーブルを抜く。
解説

本文の根拠

表3

11:45 事象を特定し,E 社運用 SE から E 社監視オペレータへ障害復旧処置を指示。12:07 復旧を確認し,対策会議を終了したが,NW 担による調査は継続。

〔システムの運用委託方針〕

サーバなどの LED の目視確認

障害の原因は,BPDU を処理できない L2SW-1 のポート⑥がフォワーディングになってできたループである(設問4(2))。ループを断てば他のサーバの通信は戻るので,監視オペレータがすぐできる処置として,L2SW-1 のポート⑥のケーブルを抜く。L2SW-1 はポート⑤で L3SW-1 につながったままなので,L2SW-1 のサーバとの通信も,L2SW-1 が正常に動く範囲で残る。

表3では,運用 SE が監視オペレータに処置を指示し,22分後に復旧を確認している。E 社の監視オペレータへの委託内容は LED の目視確認などの現地作業で,設定変更ではなくケーブルの抜き差しのような物理的な処置が指示の対象になる。L2SW の交換はその後に保守業者が行っている。

解答例は“L2SW-1 のポート⑥のケーブルを抜く。”(20字)。30字以内で,どの機器のどのポートかを特定して書く。“L2SW-1 の電源を切る”でもループは止まるが,L2SW-1 のサーバがすべて止まる。

採点講評(IPA)

設問4は,スパニングツリーに関するものであったが,正答率は低かった。ネットワークの冗長構成を実現するためによく使われる技術であり,その仕組みについて理解しておいてほしい。

設問5(1)

図6の障害時連絡体制に F 部長の要望を反映させた体制について,本文中の役割名を用いて解答欄の図を完成させよ。

解答例(図)

解答例の図6。太線で追加された部分:S 担の左に SI 業者が接続。窓口担当者に NW 担と OP が接続し,NW 担の左に保守業者が接続。運用 SE に通信事業者と保守業者が接続。元からある部分:S 担と F 部長が窓口担当者に接続,窓口担当者が運用 SE に接続,運用 SE に監視オペレータが接続。
解説

本文の根拠

〔システムの運用状況〕

なお,それぞれの担当者では解決できない場合は,ネットワーク部分については NW 担が通信事業者又は保守業者に,それ以外は S 担が SI 業者に連絡して,対応してもらっている。

〔連絡体制の整備〕

F 部長は,運用 SE の役割に,E 社設置機器の保守業者と通信事業者への対応も含めるよう要望した。

〔連絡体制の整備〕

窓口担当者の役割は,D 社内部の情報を一元管理することである。

〔システムの運用状況〕

WAN の障害検知については,通信事業者の監視サービスを利用している。通信事業者の監視センタからの連絡は,情報システム部のネットワーク担当者(以下,NW 担という)が受けており,

解答例は,D 社側では窓口担当者に S 担・F 部長に加えて NW 担と OP をつなぎ,S 担の先に SI 業者,NW 担の先に保守業者をつなぐ。E 社側では,運用 SE に監視オペレータに加えて通信事業者と保守業者をつなぐ。窓口担当者が D 社内部の情報を一元管理し,運用 SE が E 社内部と E 社設置機器の保守業者・通信事業者を一元的に受け持つ形である。

根拠は,D 社内の役割名(S 担,NW 担,OP)と,それぞれの連絡先(S 担→SI 業者,NW 担→保守業者)を述べた〔システムの運用状況〕と,F 部長の要望である。通信事業者は“E 社設置機器の保守業者と通信事業者への対応も”運用 SE に含めるという要望によって運用 SE の先に置く。NW 担の先の保守業者は,本社側など D 社の機器の保守業者と読める。

間違えやすい点。通信事業者を NW 担の先に置くと,F 部長の要望(運用 SE の役割に含める)に合わない。窓口担当者を通さずに S 担や NW 担を運用 SE と直接つなぐと,“それぞれの会社内での一元管理”にならない。

採点講評(IPA)

設問5は,運用体制に関して出題した。本文の状況設定を整理して解答するようにしてほしい。

設問5(2) 50字以内

新たなプロジェクトチームでは,以前から問題とされていた“構成管理の不備”への対応から始めることになった。問題点を具体的に指摘し,その対応内容を,50字以内で述べよ。

解答例

  • 構成情報が最新になっていないことが問題点であり,構成情報の更新手順を明確にする。
解説

本文の根拠

〔システムの管理状況と移設方針〕

その結果,構成情報などの文書が導入時のままで,その後の変更が反映されていないことが分かった。

〔システムの運用状況〕

OP が検知した障害は,OP 自身がマニュアルに則して復旧作業を行っているが,マニュアルと実際の構成が異なっていることもあり,結果として S 担や NW 担が対応することが多い。

問題点は,構成情報が導入時のままで,その後の変更が反映されておらず最新になっていないことである。そのため移設の現状把握に時間がかかり,運用マニュアルと実際の構成が違って OP が障害に対応できなかった。対応は,構成を変更したときに構成情報を更新する手順を決め,確実に最新の状態を保つようにすることである。

本文の“文書が導入時のままで,その後の変更が反映されていない”が問題点,“マニュアルと実際の構成が異なっている”がその影響である。ISO/IEC 20000(設問1のア)でも,構成管理と変更管理を結び付けて構成情報を正確に保つことが求められる。

解答例は“構成情報が最新になっていないことが問題点であり,構成情報の更新手順を明確にする。”(40字)。50字以内で,問題点(最新でない)と対応(更新手順を明確にする)の両方を書く。“構成情報を最新にする”だけでは一度の作業で終わり,再発を防ぐ仕組みにならない。

採点講評(IPA)

設問5は,運用体制に関して出題した。本文の状況設定を整理して解答するようにしてほしい。

出典:平成21年度 秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)