平成22年度 秋期に実施されたシステムアーキテクト試験
午後Ⅱの全3問(論述式)です。問題文・設問と,問われていることの整理をそのまま読めます。
問1 複数の業務にまたがった統一コードの整備方針の策定について
近年,事業を横断した顧客動向の把握,事業グループ全体での在庫量の適正化などを目的に,複数の業務にまたがった業務改善が行われている。このような業務改善では,複数の業務間で統一的に集計や分析をするために,顧客,仕入先,製品などそれぞれに,統一したコード(以下,統一コードという)を付与することが多い。
しかし,一般に,業務ごとに利用しているコードは,体系だけでなく,コードを付与している対象や範囲などが異なることも多い。例えば,同じ顧客コードであっても,付与している対象が企業の場合と企業に属する個人の場合がある。また,付与している範囲が契約先だけを対象にしている場合と契約先に加えて契約見込先などを対象にしている場合がある。
その際,システムアーキテクトは各業務の特性を踏まえ,統一コードの体系,統一コード付与の対象や範囲,個別の業務で利用しているコードとの変換方法など,統一コードの整備方針を策定する。
統一コードの整備方針の策定では,例えば,次のような視点から現状の業務やシステムを調査する。
- 現状のコード体系や,コードを付与している対象,範囲の違い
- 新たなコードを付与することによる,業務やシステムへの影響
また,与えられたコストと期間で業務改善を実現するために,統一コードの付与を業務改善効果の大きな業務に限定する,あるいはコード変換機能を一元化して既存システムへの影響を排除するなどの工夫をすることも重要である。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
近年,業務横断での業務改善が増えている。このような業務改善では,複数の業務間で統一的に集計や分析をするために統一したコードを新たに設定することがある。システムアーキテクトは,業務改善を実現するために,全体最適の観点から統一コードの整備方針を策定する。その際,業務改善の目的を達成するだけでなく,与えられたコストと期間について配慮することも重要である。
本問は,現状の業務やシステムをどのような視点から調査し,どのような統一コードの整備方針を策定したか,また,どのような工夫をしたかについて,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,システムアーキテクトに必要な業務やシステムの分析能力,仕様の調整能力などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが携わった統一コードの整備方針の策定における,複数の業務にまたがった業務改善の目的と,対象のコードについて,800字以内で述べよ。
問われていること
組み立ての注意
業務改善の目的は,前文の例(事業を横断した顧客動向の把握,事業グループ全体での在庫量の適正化など)のように書く。対象のコードは,前文の例(顧客,仕入先,製品など)のように書く。
採点講評は,業務改善のためではなくコードの統一自体を目的にするものを挙げている。目的は,コードを統一することで実現する業務改善として書く。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べた業務改善を実現するために,あなたは現状の業務やシステムをどのような視点から調査したか。また,その結果に基づいて,どのような統一コードの整備方針を策定したか。800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 現状の業務やシステムを調査した視点
- 調査の結果に基づいて策定した統一コードの整備方針
組み立ての注意
調査の視点は,前文の例(現状のコード体系や,コードを付与している対象,範囲の違い,新たなコードを付与することによる業務やシステムへの影響)のように書く。整備方針は,前文の例(統一コードの体系,統一コード付与の対象や範囲,個別の業務で利用しているコードとの変換方法など)のように書き,前文のとおり各業務の特性を踏まえる。
採点講評は,業務と無関係にけた数などを調査しただけのものを挙げ,業務の視点からの論述を期待したが少なかったとしている。前文の例のように,付与している対象(企業か個人か)や範囲(契約先だけか契約見込先も含むか)といった業務上の違いを調べる。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問イで述べた整備方針の策定で,与えられたコストと期間で業務改善を実現するために重要と考え,工夫した点を,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 与えられたコストと期間で業務改善を実現するために重要と考え工夫した点
組み立ての注意
工夫は,前文の例(統一コードの付与を業務改善効果の大きな業務に限定する,コード変換機能を一元化して既存システムへの影響を排除する)のように書く。
採点講評は,工夫点が業務改善と関係の薄いものを挙げている。設問アで述べた業務改善の目的を,与えられたコストと期間の中でどう実現したのかが分かるように書く。
採点講評(IPA)
問1(複数の業務にまたがった統一コードの整備方針の策定について)では,具体性があり,経験に基づいたと思われる論述が多かった。設問では,業務改善の目的,調査の視点,業務改善実現のための工夫などの論述を求めたが,業務改善のためではなくコードの統一自体を目的にするものや,業務と無関係にけた数などを調査しただけのもの,工夫点が業務改善と関係の薄いものが目立った。システムアーキテクトは,業務を理解して情報システムの構造を設計する役割をもつので,業務の視点からの論述を期待したが,そのような論述は少なかった。
全問共通
全問に共通して,具体性があり,経験に基づいた論述が多かった一方,“論述の対象とする計画又はシステムの概要”,“論述の対象とする製品又はシステムの概要”が適切に記入されていないので評価を下げた論述が相当数あった。また,問題文を引用しているだけなど具体性に乏しい論述や,各設問で整合の取れていない論述が散見された。このような論述は,受験者の能力や経験を正しく評価できない場合があるので,実際の経験に基づき設問に沿って具体的に論述してほしい。
また,論述は第三者に読ませるものであることを意識してほしい。例えば,段落を分けることで何についての記述なのかを明確にする,業界特有の用語は説明を入れるなど,考えを的確に伝えるための工夫をしてほしい。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2 システム間連携方式について
生産システム,物流システム,販売システムなどの企業内システムは,部門ごとに独立したシステムとなっている場合がある。このため,販売システムで発生する顧客データを物流システムに渡して最新の顧客情報で出荷伝票を出力する,販売システムで発生する販売データを生産システムの在庫情報に反映して迅速に生産計画を決定するなど,企業内の情報共有をシステム間連携によって実現することがある。システム間連携方式には,ファイル転送,データベース共有,リアルタイム連携などがある。
システムアーキテクトは,システム間連携方式を選択する際に,例えば,次のような業務要件に留意しなければならない。
- 当日登録した顧客情報に基づいて,当日配送を可能とする必要がある。
- 生産数の確定前に,拠点ごとの在庫数を確定する必要がある。
これらの業務要件を踏まえ,データの収集と反映のタイミング,処理すべきデータ量などのシステム要件を明確にする。その要件に基づき,データ伝送時間,システム間の整合性の維持などを考慮して,適切なシステム間連携方式を選択する。
さらに,運用時間帯,運用体制などの運用要件を明らかにし,稼働状況のモニタリング,異常の検知,障害発生時の対応などの実現方法を検討することも重要である。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
業務システムは,部門ごとに独立したシステムとなっている場合がある。このため,企業内の情報共有を目的として,システム間連携が行われている。システムアーキテクトは,対象とする情報システムの開発に必要となる要件を分析,整理し,その要件を実現する最適なシステム方式を設計する。
本問は,どのような業務要件を踏まえ,どのようなシステム要件を明確にし,その要件に基づいてどのようなシステム間連携方式を選択したかについて,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,システムアーキテクトに必要な,システム間連携方式の設計能力,運用の実践能力などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが携わったシステム間連携方式の検討において,対象システムの概要と連携が必要になった背景について,800字以内で述べよ。
問われていること
組み立ての注意
背景は,前文の例(顧客データを物流システムに渡して最新の顧客情報で出荷伝票を出力する,販売データを生産システムの在庫情報に反映して迅速に生産計画を決定する)のように,企業内の情報共有として何を実現したかったのかを書く。
採点講評は,単一のシステムだけでなく複数のシステムを意識した論述を求めたとしている。対象システムは,連携する複数のシステムそれぞれが分かるように書く。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べたシステムを連携させる際に,あなたは,どのような業務要件を踏まえ,どのようなシステム要件を明確にしたか。また,その要件に基づいてどのようなシステム間連携方式を選択したか,選択した理由とともに,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 踏まえた業務要件
- 明確にしたシステム要件
- 選択したシステム間連携方式
- 選択した理由
組み立ての注意
前文は「業務要件(当日登録した顧客情報に基づいて当日配送を可能とする,生産数の確定前に拠点ごとの在庫数を確定する)→ システム要件(データの収集と反映のタイミング,処理すべきデータ量など)→ 連携方式(ファイル転送,データベース共有,リアルタイム連携など)」の順に示している。選択の理由は,前文のとおり,データ伝送時間,システム間の整合性の維持などを考慮して書く。
採点講評は,業務要件を論述せずにシステム要件や連携方式の説明に終始している論述や,業務要件とシステム要件を混同している論述が多かったとしている。業務要件は業務の側から見た必要,システム要件はそれを受けてシステムに求める条件として書き分ける。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問イで述べたシステム間連携方式について,運用要件と実現方法を,重要と考えた点を中心に,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
組み立ての注意
運用要件は,前文の例(運用時間帯,運用体制など)のように書く。実現方法は,前文の例(稼働状況のモニタリング,異常の検知,障害発生時の対応など)のように書く。
対象は設問イで選択したシステム間連携方式。その方式を運用する上で何が重要になるのかが分かるように書く。
採点講評(IPA)
問2(システム間連携方式について)では,企業統合などの大規模なものから,小規模システム間でのデータ連携など多岐にわたる論述があり,様々な局面でシステム間連携方式の設計がなされていることがうかがわれた。設問では,単一のシステムだけでなく複数のシステムを意識した業務要件,システム要件,連携方式という多角的な論述を求めた。これは,システムアーキテクトが全体最適の観点からシステム構造を設計しなければならないからである。しかし,業務要件を論述せずにシステム要件や連携方式の説明に終始している論述や,業務要件とシステム要件を混同している論述が多く見られた。
全問共通
全問に共通して,具体性があり,経験に基づいた論述が多かった一方,“論述の対象とする計画又はシステムの概要”,“論述の対象とする製品又はシステムの概要”が適切に記入されていないので評価を下げた論述が相当数あった。また,問題文を引用しているだけなど具体性に乏しい論述や,各設問で整合の取れていない論述が散見された。このような論述は,受験者の能力や経験を正しく評価できない場合があるので,実際の経験に基づき設問に沿って具体的に論述してほしい。
また,論述は第三者に読ませるものであることを意識してほしい。例えば,段落を分けることで何についての記述なのかを明確にする,業界特有の用語は説明を入れるなど,考えを的確に伝えるための工夫をしてほしい。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)
問3 組込みシステム開発におけるハードウェアとソフトウェアとの機能分担について
組込みシステム開発において,システムアーキテクトは,製品開発などの企画書に基づいて,システムの要件を分析し,機能仕様を決定する。また,決定した機能仕様の具体的な実現手段を検討し,最適なアーキテクチャを決定する。その際,機能を実現するためにハードウェアとソフトウェアとの機能分担を適切に設定し,それぞれへの要求仕様を決定することが求められる。
例えば,暗号化処理,画像処理などのアルゴリズムにおいては,すべてをソフトウェアで実現する方法,又はハードウェアの支援を得て実現する方法がある。後者の場合では,ハードウェアとソフトウェアとの機能分担については,様々な実装方法が考えられる。
ハードウェアとソフトウェアとの機能分担を適切に設定するためには,次のような項目についてハードウェアとソフトウェアとのトレードオフを検討することが重要である。
- 開発スケジュール
- 開発コスト,製造コスト,保守コスト
- 性能,信頼性,保守性
- 自社保有技術,知的財産
- 再利用性,拡張性
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
組込みシステム開発において,システムアーキテクトは,製品企画等の要求仕様に基づき,システムの要件を分析し機能仕様を決定する。その際,ある機能を実現するためにハードウェアとソフトウェアとの適切な機能分担を設定し,それぞれへの要求仕様を取りまとめることが求められている。
本問は,ハードウェアとソフトウェアとの機能分担を題材として,開発工程設計,コスト設計,性能設計,再利用性など,機能分担を適切に設定するために必要な検討項目とその検討結果から得た機能分担の結論,及びそれに対する現在の評価について,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,システムアーキテクトに必要な,システムの分析,設計の実践能力を評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが携わった組込みシステム開発で,機能の実現のためにハードウェアとソフトウェアとのトレードオフを検討し,機能分担させた製品について,その性能,特徴などの製品概要,及び分担させた機能を,800字以内で述べよ。
問われていること
組み立ての注意
分担させた機能は,前文の例(暗号化処理,画像処理などのアルゴリズム)のように,すべてをソフトウェアで実現するか,ハードウェアの支援を得て実現するかを検討する必要があった機能として書く。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べた製品の開発において,ハードウェアとソフトウェアとの機能分担を適切に設定するために,ハードウェアとソフトウェアとのトレードオフについて検討した項目及びそれぞれの内容を,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- トレードオフについて検討した項目
- それぞれの検討内容
組み立ての注意
検討した項目は,前文の例(開発スケジュール,開発コスト・製造コスト・保守コスト,性能・信頼性・保守性,自社保有技術・知的財産,再利用性・拡張性)から,その製品で効いたものを選ぶ。
採点講評は,検討内容に具体性が乏しく一般論に終始した論述や,実現可能性だけについて論述するものを挙げている。項目ごとに,ハードウェアで実現する場合とソフトウェアで実現する場合で何が違ったのかを具体的に書く。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問イで述べた検討結果を基に,それぞれへの要求仕様で示した,ハードウェアとソフトウェアとの機能分担の内容,及びその機能分担に対する現在の評価を,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 要求仕様で示したハードウェアとソフトウェアとの機能分担の内容
- 機能分担に対する現在の評価
組み立ての注意
機能分担の内容は,設問イの検討結果を基にしたものとして書く。前文のとおり,ハードウェアとソフトウェアそれぞれへの要求仕様として示した内容になる。
採点講評は,現在の評価について多面的,客観的,具体的な論述を期待したが少なかったとしている。
採点講評(IPA)
問3(組込みシステム開発におけるハードウェアとソフトウェアとの機能分担について)では,組込みシステム開発の具体的経験を対象としている。今回のテーマである機能分担は,組込みシステム開発のシステムアーキテクトに求められる重要な能力の一つである。新規開発を除き経験する機会が比較的少ないテーマにもかかわらず,具体的な経験をうかがわせる論述が多かった。検討項目とその内容に関する記述については,検討内容に具体性が乏しく一般論に終始した論述が一部に見られた。また,実現可能性だけについて論述するものが散見された。現在の評価に関する記述については,多面的,客観的,具体的な論述を期待したが,そのような論述は少なかった。
全問共通
全問に共通して,具体性があり,経験に基づいた論述が多かった一方,“論述の対象とする計画又はシステムの概要”,“論述の対象とする製品又はシステムの概要”が適切に記入されていないので評価を下げた論述が相当数あった。また,問題文を引用しているだけなど具体性に乏しい論述や,各設問で整合の取れていない論述が散見された。このような論述は,受験者の能力や経験を正しく評価できない場合があるので,実際の経験に基づき設問に沿って具体的に論述してほしい。
また,論述は第三者に読ませるものであることを意識してほしい。例えば,段落を分けることで何についての記述なのかを明確にする,業界特有の用語は説明を入れるなど,考えを的確に伝えるための工夫をしてほしい。
出典:平成22年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅱ 問3(表記を一部改変)