問1 人手によってしか実現できないと考えていた業務への先進技術の適用について
認識AI,生成AI,RPAツールなどを始めとした先進技術を,クラウドサービスやソフトウェアパッケージなどで容易に利用できるようになってきた。それに伴い,認識と判断のデジタル化の難しさや費用対効果などの理由からシステム化が困難で人手によってしか実現できないと考えていた業務の,大幅な効率化や自動化が可能になった。システムアーキテクトは,先進技術を適用した情報システムの構築を推進する必要がある。例えば,次のような業務への適用が考えられる。
- 医療機関の画像診断業務において,がん症例画像や正常画像を学習させた認識AIによって,がん疾患の発見を補助する。
- 広報部門の社外発表文を作成する業務において,過去の発表文やコンサルタントの指摘内容などを学習させた生成AIに発表の趣旨を与えて発表文案を作成する。
- 注文業務において,RPAツールで入力,連携を自動化し,個別入力を排除する。
一方で,これらの先進技術を適用する場合,様々な課題が生じることがある。例えば次のような,課題と対策が考えられる。
- 画像診断業務を自動化すると,“医師でなければ,医業をなしてはならない”という法律に抵触するおそれがある。そのため,画像診断結果を元の画像上に表示するまでにとどめて,最終的に医師が診断するなど,自動化の範囲を限定する。
- 生成AIで学習データにインターネット上の情報を利用すると,偏った内容や誤った内容を回答してしまうおそれがある。そのため,根拠となる情報や参考情報を一緒に提示する。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
画像や話し言葉を理解する認識AI,画像や文章などを作成する生成AI,複数のシステムを連携させるRPAツールなどの先進技術を,クラウドサービスやソフトウェアパッケージなどで容易に利用できるようになってきた。それに伴い,認識と判断のデジタル化の難しさや費用対効果が著しく小さいなど,システム化が困難であり,従来人手によってしか実現できないと考えていた業務の,大幅な効率化や自動化を実現することが可能になった。システムアーキテクトは,先進技術を適用した情報システムの構築を推進する必要がある。
本問は,システム化計画の立案において,従来人手によってしか実現できないと考えていた理由,どのような先進技術をどのように適用して大幅な効率化や自動化を可能にしたのか,その適用の際に生じる様々な課題への対処方法について具体的に論述することを求めている。論述を通じて,システムアーキテクトに必要なシステム化計画の立案能力を評価する。
設問と問われていること
あなたが先進技術を適用した業務について,業務の内容と,その業務が人手によってしか実現できないと考えられていた理由を,800字以内で述べよ。
問われていること
- 先進技術を適用した業務の内容
- その業務が人手によってしか実現できないと考えられていた理由
組み立ての注意
理由は,前文の「認識と判断のデジタル化の難しさや費用対効果などの理由からシステム化が困難」のように,なぜシステム化できなかったのかとして書く。
採点講評は,単なる作業を“入力業務”や“議事録作成業務”などとし,本来の業務目的を深く理解しないで論述したものを挙げ,“銀行における振込依頼のための手書き依頼書の登録業務”のように業務目的を正しく理解して論述するよう求めている。業務の内容は,何のための業務かが分かるように書く。
設問アで述べた業務に,どのような先進技術をどのように適用したのか。大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由を含めて,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 適用した先進技術
- 先進技術をどのように適用したか
- 大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由
組み立ての注意
前文は,先進技術と適用の例として,認識AIによるがん疾患の発見の補助,生成AIによる発表文案の作成,RPAツールによる入力・連携の自動化を挙げている。
「可能と考えた理由」は,設問アで述べた「人手によってしか実現できないと考えられていた理由」を,その技術でどう乗り越えられると考えたのかとして書くと,設問どうしがつながる。採点講評は,工数削減やコスト削減,信頼性向上などの効果を述べるにとどまり,大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由に触れていない論述を挙げている。
採点講評は,業務目的を理解していない論述では,新技術の適用手順や方法,適用方針などが具体的に書けていないものが多かったとしている。
設問アで述べた業務に先進技術を適用した際に,どのような課題が生じ,どのような対策を取ったのか。600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 先進技術を適用した際に生じた課題
- 課題に対して取った対策
組み立ての注意
前文は,課題と対策の例として,画像診断の自動化が法律に抵触するおそれに対して自動化の範囲を限定すること,生成AIが偏った内容や誤った内容を回答するおそれに対して根拠となる情報や参考情報を一緒に提示することを挙げている。課題は,先進技術を適用したことで生じたものにする。
採点講評の全問共通の指摘(実施した事項の論述にとどまり,実施した理由や検討の経緯が読み取れない)のとおり,対策はなぜそれを選んだかまで書く。
採点講評(IPA)
問1では,先進技術の適用によって,従来人手によってしか実現できないと考えていた業務を,大幅に効率化したり,自動化を実現したりした経験についての論述を期待した。多くの受験者が設問に沿って論述できていた。一方で,一部の受験者は,単なる作業を“入力業務”や“議事録作成業務”などとし,本来の業務目的を深く理解しないで論述していた。このような論述では,新技術の適用手順や方法,適用方針などが具体的に論述できていないものが多かった。例えば“銀行における振込依頼のための手書き依頼書の登録業務”など,業務目的を正しく理解して論述してほしい。また,実現した場合の効果である工数削減やコスト削減,信頼性向上などを述べるにとどまり,大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由に触れていない論述も散見された。
システムアーキテクトは,絶えず新技術を探求しつつ,業務の内容や目的を理解して適切に適用できるように心掛けてほしい。
全問共通
全問に共通して,自らの経験に基づき設問に素直に答えている論述が多かった。一方で,問題文に記載してあるプロセスや観点などを抜き出して一般論と組み合わせただけの表面的な論述や,実施した事項を論述するだけにとどまり,実施した理由や検討の経緯が読み取れない論述も少なからず見受けられた。自らが実際にシステムアーキテクトとして検討し取り組んだことを,設問に沿って具体的に論述してほしい。
出典:令和6年度 春期 システムアーキテクト試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)