問1 データセンタの分散化
データセンタの分散化に関する次の記述を読んで,設問1〜5に答えよ。
C 社は,OA 製品の製造・販売会社である。C 社では,被災しても事業が継続できるように,サーバ及びデータを保存するストレージを堅ろうな既設データセンタに収容していた。しかし,事業継続計画を見直した結果,災害によっては,1 か所集中型のデータセンタでは事業継続が困難になることが分かり,データセンタの分散化を行うことになった。
分散化に当たって,新たに構築するデータセンタ(以下,新データセンタという)は,被災時に使用するバックアップセンタとしての役割だけでなく,通常時に,蓄積された各種データの分析にも活用することにした。S 主任と N 君は,このプロジェクトのネットワーク基盤の検討メンバに選任された。図1は,既設システムと新データセンタのネットワーク構成図である。
新データセンタの構築においては,将来の IT システムの技術動向を踏まえて,拡張性に配慮したシステムを目指した。そこで,ブレード型サーバを使用し,その中で仮想化技術を用いて,仮想サーバを動作させることにした。サーバと他の機器との接続には,信頼性,QoS,必要通信帯域など多様な要求に対応するネットワークを実現する必要があった。加えて,ラックに搭載するブレード型サーバの外部接続インタフェース及び配線のための収容スペースが少ないので,配線を減らしたいという要求もあった。
S 主任は,SAN(Storage Area Network)のトラフィックを収容することを想定して,次のようなネットワーク設計方針を N 君に示した。
- (1) 信頼性を高めるための冗長経路を,同時に利用した通信帯域の拡張
- (2) SAN 用に利用可能な,ロスがなく低遅延のデータ転送
- (3) サーバの外部接続インタフェースを簡素化するための LAN と SAN の統合
- (4) 統合ネットワークの高信頼化
N 君が,設計方針を実現するための調査をしていく中で,イーサネットの拡張機能をベースに,複数の技術を組み合わせる必要があることが分かってきた。そこで,N 君は,設計方針とその実現技術を関係付けたネットワークの検討を,図2に示す順序で進めることにした。
〔【1】複数経路の同時利用方式〕
イーサネットでは,ループしている経路があると,ブロードキャストフレームが無限にループするので,論理的な接続ではループを作らないように,例えば STP(Spanning Tree Protocol)の場合には,ポートの閉塞処理が行われる。このため,物理的に冗長な経路を導入しても,同時にはその経路を利用できないという問題がある。
N 君が調べたところ,ルーティングを行うブリッジ(以下,RB という)で構成された1組のネットワーク(以下,RB ファブリックという)内で,複数経路を同時に利用できる方式(以下,複数経路制御方式という)があることが分かった。
図3は,複数経路制御方式を説明するための RB 構成を示している。“デバイス”は,RB ファブリックに接続するホストやストレージを表している。RB ファブリックを構成する RB には,2 種類のポートがある。一つは RB 間の接続用ポート(以下,ファブリックポートという)であり,もう一つは,デバイスとの接続用ポート(以下,エッジポートという)である。各 RB 内には,イーサネットフレーム(以下,フレームという)の転送制御のための経路制御テーブルが作成される。経路制御テーブルの内容は,宛先 RB ごとに,出力するファブリックポート番号と宛先 RB までのホップ数の組合せを示したものである。図3では,例として RB1 の経路制御テーブルを示している。
RB ファブリックに入ってきたフレームは,出口となるエッジポートがある RB(以下,出口 RB という)に向かって,経路制御テーブルに従って転送されていく。出口 RB まで,最小ホップ数の経路が複数ある場合,同時に複数経路を利用できる。また,ある経路に障害が発生しても,複数ある経路の残りの経路が使える場合は,継続してフレームの転送ができる。
一方,RB ファブリックに入ってきたフレームの出口 RB と,その RB 内の出力するポートを知るためには,接続されたデバイスの MAC アドレスをあらかじめ学習しておく必要がある。①RB ファブリックでは,各 RB で学習した MAC アドレスは,あらかじめ決められた RB に集められた後,各 RB で共通に使われる MAC アドレステーブルが作られて,全 RB に配信される。図3では,配信された MAC アドレステーブルを示している。
次に,RB ファブリックのエッジポートに入ってきたフレームが,どのように変換されて転送されるかを説明するために,RB ファブリックのフレーム転送を,図4に示す。図4では,デバイス1 からデバイス2 にフレームを転送する場合を示している。
入力フレームは,図4中の(B)に示すヘッダ(以下,TR ヘッダという)が付加され,カプセル化されて RB 間を転送される。RB 間を転送されるフレームのイーサタイプには,TR ヘッダをもつフレームであることを示す値(TR)が設定される。出口 RB は,図3の MAC アドレステーブルを,入力フレームの宛先デバイスの MAC アドレスを宛先 MA として参照することで,決定される。次の転送先となる RB は,図3に示した経路制御テーブルを,出口 RB を宛先 RB として参照することで,決定される。TR ヘッダの HC の値は,RB を通過するたびに減算され,HC の値が 0 のフレームは廃棄される。出口 RB まで転送されてきたフレームは,カプセル化の解除が行われ,TR ヘッダが外されて宛先デバイスに送出される。
フレーム送出時に,TR ヘッダ中の HC を適切な値にして送信するように設定すると,障害時の代替経路として,残りの正常な経路が使用できる。
〔【2】ロスレスイーサネット技術〕
ストレージのデータ転送のような場合に,大きな通信帯域と信頼性を実現するためにイーサネットを拡張する技術が,IEEE 802.1 委員会の DCB(Data Center Bridging)タスクグループで規格化されている。今回の要件を満たすには,ホスト,ストレージ及び RB に,この拡張されたイーサネット(以下,拡張イーサネットという)を使用する必要がある。拡張イーサネットでは,優先度別のキュー制御や,スイッチ内バッファの [ ア ] によるデータロスを防ぐためのスイッチ間バッファ管理の仕組みが規定されており,従来のイーサネットにはないロスレス転送を実現している。また,インタフェースの速度としては,FC(Fibre Channel)の 2 G ビット/秒を超える,最低でも [ イ ] G ビット/秒のイーサネットの採用が必要と考えられる。
ホストに実装するアダプタである CNA(Converged Network Adapter)は,拡張イーサネットに対応するとともに,HBA(Host Bus Adapter)と NIC の両方の機能を備えている。CNA がもつこれらの機能は,OS からはそれぞれ別のインタフェースとして認識され,別の MAC アドレスが使われる。CNA を使うことで,ストレージとの I/O 用の FC フレームを,イーサネットフレームにカプセル化して転送することができる。
〔【3】イーサネットを使用した SAN のデータ転送〕
FCoE(Fibre Channel over Ethernet)は,拡張イーサネットを使用して FC フレームを転送する技術である。FC フレームをカプセル化して転送するフレームのイーサタイプには,FCoE を示す値が設定される。FCoE を使うためには,FCoE に対応したインタフェースを備えたスイッチ(以下,FCoE-SW という)が必要になり,さらに,FCSW(Fibre Channel Switch)に相当する機能を実現する FCF(FCoE Forwarder)を FCoE-SW 上に実装する必要がある。FC による SAN は,複数の FCSW 及び FCoE-SW によるネットワーク(以下,FC ファブリックという)となる。
FC ファブリックでは,接続しようとするホストは,最初にログイン処理を行う必要がある。このログイン処理を行うことで,ホストの接続ポートを識別する ID(以下,FCID という)が割り当てられる。FCID は,ドメイン,エリア及びポートという物理的な接続関係を表すフィールドで構成されている。FCoE 対応のホストは,FC ファブリックに接続するために,FIP(FCoE Initialization Protocol)を用いてイーサネット経由で FCF にログインする。FIP を用いて FCF にログインすると,FC ファブリック側から下位 24 ビットを FCID とした,FC ファブリック内でユニークな MAC アドレスが,CNA 中の HBA に当たる部分に割り当てられる(表1)。
FIP のフレームは,制御を行うためのものであり,データ転送の場合の FCoE のイーサタイプとは別の,FIP を示すイーサタイプが使われる。
FCF を実装した FCoE-SW による FCoE 用のフレーム(以下,FCoE フレームという)及び FC フレームの転送を,図5に示す。
FCF は,FIP の処理や FCoE フレームの中継処理を行うので,FCoE を使うためには FC ファブリック内に FCF が少なくとも一つは必要である。FCF を実装した FCoE-SW では,FCoE フレームは FCF を経由して転送される。また,図5に示すように,FCF 経由で FC 対応のストレージを接続することも可能である。
〔【4】LAN と SAN のスイッチ統合〕
RB ファブリックと FC ファブリックを統合したネットワーク(以下,統合ファブリックという)を構築するには,スイッチの共用化を図る必要がある。この手段として,RB 上に FCF を実装することが考えられている。FCF へは,拡張イーサネット経由でデバイスを接続するので,FCF 機能を実装しない RB を経由して FCF 機能付きの RB に接続することもできる。したがって,複数経路制御方式と FCoE を組み合わせて統合ファブリックを構成する場合,FCF を実装した RB をどこに配置するかが課題である。図6は,N 君が考えた,FCF 機能付き RB の配置構成案である。
図6の構成案を見た S 主任は,②“案1は,FCF 機能のない簡素な RB を使って,ホストやストレージを接続できるが,ホストからストレージ1 にアクセスする場合に問題がありそうだ”と指摘した。N 君は,案1と案2を比較検討し,案2の配置構成を採用することにした。
これまでの検討結果を基に N 君が採用した製品による,LAN と SAN の統合システムのフレーム転送を,図7に示す。
図7では,ホスト1 からストレージに向かうデータ転送用のフレームを例に,フレームの構造を示している。統合ファブリックのエッジポートに入ってきたフレームは,統合ファブリック内部を転送するための TR ヘッダが付加され,カプセル化されて,RB1→RB3→RB2 へと転送される。ストレージが接続された RB2 に到達すると,カプセル化が解除され,TR ヘッダが外されて,ストレージに向けて送出される。
〔【5】統合ネットワークの高信頼化〕
N 君は,これまでの調査で,LAN と SAN を統合するネットワーク技術に見通しがついたので,新データセンタのネットワーク構成を検討するために,SAN の可用性の確保について構成要件を検討することにした。まず,サーバからストレージ内の論理的なディスクであるロジカルユニット(以下,LU という)へのアクセス経路について調べた。ストレージシステムは,データベースに高速にアクセスしたり,重要なデータを保存したりするために,高い信頼性・可用性が要求される。要求を実現するには,ホストから目的の LU へのアクセス経路を複数確保する必要がある。このとき,[ ウ ] と呼ばれる,1 か所での障害発生時にシステム全体が動作不能になってしまう機器や部位を作らないことが重要である。
FCSW から構成される FC ファブリックでは,ホストとストレージ間通信のための通信可能なポートの組合せは FCSW が管理している。また,ストレージには,複数経路から LU へのアクセスを可能にするストレージコントローラ(以下,SC という)がある。ホスト側では,LU への経路について,③HBA→SC→LU という経路の組合せで管理するものが多い。このように,複数のアクセス経路がある場合,どの経路を使うかについては,ホスト側のソフトウェアで制御する。また,④障害によっては,一つの FC ファブリックが機能しなくなる可能性もあることから,そのような場合への対応方法も考えておくことが重要である。これらを考慮したホストからストレージ内の LU へのアクセス経路を,図8に示す。
図9は,N 君が作成した新データセンタのシステム構成である。サーバは,仮想化技術によって仮想サーバとして構築しておき,状況に応じて,必要な仮想サーバを起動し,関連するストレージ及びネットワークの接続を切り替えて使用する方式とした。
物理サーバ1 と物理サーバ2 は,通常時はデータ分析のための仮想サーバを動作させ,被災時は,既設データセンタのバックアップのための仮想サーバを動作させる。また,一方に障害が発生しても,相互にバックアップできる構成にしている。
S 主任から,ネットワーク基盤の基本方式について了承を得た N 君は,詳細なネットワーク設計に取り掛かった。
出題趣旨(IPA)
サーバをはじめとするITプラットフォームの仮想化が進み,高速なネットワークを生かす構成技術も進歩してきている。このような状況を背景に,データセンタのネットワークも,新しいレイヤ2技術が使われるようになり,従来のイーサネットの課題を解決し,LANとSANの統合や仮想化技術との連携を実現できるようになってきた。今回は,BCPの見直しを契機としたデータセンタの増設を例に,これらの技術の理解と活用を問う。具体的には,(1)拡張イーサネットによるロスのない高信頼・低遅延のネットワーク実現,(2)ルーティングブリッジ技術を使った複数経路の有効利用,及び(3)LANとSANの統合化を図ったデータセンタのネットワーク基盤の構築について取り上げている。
設問と解答例
本文中の [ ア ] 〜 [ ウ ] に入れる適切な字句を答えよ。
〔ア〕解答例
- あふれ
- 枯渇
〔イ〕解答例
- 10
〔ウ〕解答例
- SPOF
- Single Point of Failure
- 単一障害点
解説
本文の根拠
〔【2】ロスレスイーサネット技術〕
拡張イーサネットでは,優先度別のキュー制御や,スイッチ内バッファの [ ア ] によるデータロスを防ぐためのスイッチ間バッファ管理の仕組みが規定されており,従来のイーサネットにはないロスレス転送を実現している。
〔【2】ロスレスイーサネット技術〕
インタフェースの速度としては,FC(Fibre Channel)の 2 G ビット/秒を超える,最低でも [ イ ] G ビット/秒のイーサネットの採用が必要と考えられる。
〔【5】統合ネットワークの高信頼化〕
[ ウ ] と呼ばれる,1 か所での障害発生時にシステム全体が動作不能になってしまう機器や部位を作らないことが重要である。
ア:従来のイーサネットでは,スイッチの受信バッファがあふれるとフレームを捨て,再送は上位の TCP などに任せる。SAN のデータ転送はロスを前提にできないので,DCB では優先度ごとに送信の一時停止を隣のスイッチに求める仕組み(PFC,IEEE 802.1Qbb)を定め,バッファのあふれ(枯渇)によるロスを防ぐ。優先度別のキュー制御は ETS(IEEE 802.1Qaz)に当たる。イ:イーサネットの速度の段階は 1G・10G ビット/秒…と進むので,2G ビット/秒を超える最低の速度は 10G ビット/秒である。ウ:1 か所の故障で全体が止まる箇所を SPOF(Single Point of Failure,単一障害点)という。
本文は,アを「データロスを防ぐため」の「スイッチ間バッファ管理」と,バッファの状態を問う形で書いている。イは「2 G ビット/秒を超える」「最低でも」が手掛かりで,1G ビット/秒では FC に届かない。ウは「1 か所での障害発生時にシステム全体が動作不能になってしまう」がそのまま定義になっている。
間違えやすい点。アの「あふれ」と「枯渇」は同じ事態をバッファの中身と空きのどちらから見たかの違いで,どちらでもよい。「輻輳」はバッファがあふれる原因の側の言葉なので,空欄の直前の「スイッチ内バッファの」とつながりにくい。ウは略語の SPOF,英語の正式名,日本語の単一障害点のどれでもよい。
採点講評(IPA)
設問1は,ウの“単一障害点”に関する正答率が低かった。実務で信頼性の高いネットワーク設計を行う場合の重要なキーワードであり,正しい理解を期待したい。
図3中の RB1 の経路制御テーブルで,宛先が RB2 と RB3 の場合の最小ホップ数の経路について,RB4 の場合の表記を参考に全て挙げ,解答欄の空欄に適切な字句を入れて完成させよ。
解答例
解説
本文の根拠
図3
RB1 のポート1と RB3 のポート1,RB1 のポート2と RB3 のポート2,RB1 のポート3と RB4 のポート1,RB3 のポート3と RB2 のポート1,RB2 のポート2と RB4 のポート2
図3
RB4 の行は最小ホップ数の経路が (3,1),最小ホップ数以外の経路が (1,3),(2,3)。
図3 注記1
RB1 の経路制御テーブルにおいて,(x,y) は,出力するファブリックポート番号が x,ホップ数が y であることを示す。
RB1 から RB3 へは,ポート1とポート2の2本が直結しているので,どちらも1ホップで届く。(1,1),(2,1) の二つである。RB1 から RB2 へは直結が無い。ポート1又はポート2で RB3 へ出て RB3 のポート3から RB2 へ,又はポート3で RB4 へ出て RB4 のポート2から RB2 へ,のどれも2ホップになる。(1,2),(2,2),(3,2) の三つである。
ホップ数の数え方は,与えられた RB4 の行で確かめられる。ポート3から RB4 へ直結なら (3,1),ポート1で RB3→RB2→RB4 と回れば (1,3) である。通過する RB 間のリンクの本数がホップ数になる。
間違えやすい点。RB3 への経路にポート3(RB4→RB2→RB3,3ホップ)を入れないこと。問われているのは最小ホップ数の経路だけである。また RB1−RB3 間の2本を1つにまとめず,出力ポートごとに別の経路として挙げる。解答用紙の表を埋める設問なので,解答例は表の画像で示している。
採点講評(IPA)
設問2では,ルーティングブリッジと呼ばれる,STPでは実現できなかった複数経路の同時利用を可能にする技術を問うた。動作原理の説明を読んで,実際の経路制御テーブルやアドレス学習テーブルを完成させるなどの具体的設計や,カプセル化に関する理解を問う問題を出題した。全体として,正答率は高かった。
図3の接続構成で,RB1 から RB4 にフレームを転送する場合に,経路の冗長性を考慮して HC の設定をどのようにすればよいか。また,その目的は何か。それぞれ,15 字以内及び 45 字以内で述べよ。
〔HCの設定〕解答例
- 3以上に設定する。
〔目的〕解答例
- RB4への最小ホップ数以外の経路を障害時の代替経路として使えるようにするため
解説
本文の根拠
〔【1】複数経路の同時利用方式〕
TR ヘッダの HC の値は,RB を通過するたびに減算され,HC の値が 0 のフレームは廃棄される。
〔【1】複数経路の同時利用方式〕
フレーム送出時に,TR ヘッダ中の HC を適切な値にして送信するように設定すると,障害時の代替経路として,残りの正常な経路が使用できる。
図3
RB4 の行は最小ホップ数の経路が (3,1),最小ホップ数以外の経路が (1,3),(2,3)。
RB1 から RB4 への経路は,直結の1ホップ(ポート3)のほかに,RB3・RB2 を回る3ホップの経路が2本ある。HC は RB を通るたびに減り,0 になったフレームは捨てられるので,HC を1や2にすると,直結のリンクが切れて3ホップの経路に回ったフレームが RB4 に届く前に捨てられる。HC を3以上にしておけば,最小ホップ数以外の経路も障害時の代替経路として使える。
本文の「HC を適切な値にして送信するように設定すると,障害時の代替経路として,残りの正常な経路が使用できる」が,この設問の狙いをそのまま書いている。値は図3の経路制御テーブルにある最小ホップ数以外の経路のホップ数(3)から決まる。
字数の詰め方。HC の設定(15字)は「3以上に設定する。」の数値と「以上」が要点である。目的(45字)は「最小ホップ数以外の経路」と「障害時の代替経路として使える」の二つを残す。解答例の目的は40字前後である。
採点講評(IPA)
設問2では,ルーティングブリッジと呼ばれる,STPでは実現できなかった複数経路の同時利用を可能にする技術を問うた。動作原理の説明を読んで,実際の経路制御テーブルやアドレス学習テーブルを完成させるなどの具体的設計や,カプセル化に関する理解を問う問題を出題した。全体として,正答率は高かった。
図3中で,MAC アドレスの学習が必要なポートの種類を答えよ。また,そのポートで VLAN ID を識別するために必要なポート規格を答えよ。
〔ポートの種類〕解答例
- エッジポート
〔ポート規格〕解答例
- IEEE 802.1Q
解説
本文の根拠
〔【1】複数経路の同時利用方式〕
一方,RB ファブリックに入ってきたフレームの出口 RB と,その RB 内の出力するポートを知るためには,接続されたデバイスの MAC アドレスをあらかじめ学習しておく必要がある。
〔【1】複数経路の同時利用方式〕
もう一つは,デバイスとの接続用ポート(以下,エッジポートという)である。
図4
RB ファブリックへの入力フレームは,宛先デバイスの MAC アドレス,送信元デバイスの MAC アドレス,外部の VLAN タグ,イーサタイプ,ペイロード,FCS
学習するのはデバイスの MAC アドレスで,デバイスがつながるのはエッジポートである。ファブリックポートの先は RB どうしで,そこを流れるフレームは TR ヘッダでカプセル化されているので,デバイスの MAC アドレスを学習する場所にはならない。エッジポートに入るフレームは「外部の VLAN タグ」を持ち,図3の MAC アドレステーブルも VLAN ID を持つので,ポートはタグを読める必要がある。VLAN タグを定める規格は IEEE 802.1Q である。
本文の「接続されたデバイスの MAC アドレスをあらかじめ学習しておく必要がある」と,エッジポートの定義「デバイスとの接続用ポート」を結び付ける。VLAN ID の識別は,図4の入力フレームの「外部の VLAN タグ」と図3の VLAN ID の列が手掛かりである。
間違えやすい点。ポート規格に「IEEE 802.1D」(STP やブリッジの規格)や「IEEE 802.3」(イーサネットの物理・MAC の規格)を書かない。VLAN タグ(タグ VLAN)を定めるのは 802.1Q である。
採点講評(IPA)
設問2では,ルーティングブリッジと呼ばれる,STPでは実現できなかった複数経路の同時利用を可能にする技術を問うた。動作原理の説明を読んで,実際の経路制御テーブルやアドレス学習テーブルを完成させるなどの具体的設計や,カプセル化に関する理解を問う問題を出題した。全体として,正答率は高かった。
図3中の MAC アドレステーブルについて,MA1 の場合の表記を参考に,解答欄の空欄に適切な字句を入れて完成させよ。
解答例
解説
本文の根拠
図3
エッジポート(●)には,RB1 のポート4に MA1 のデバイス(VLAN ID=10),RB2 のポート3に MA2 のデバイス(VLAN ID=20),RB3 のポート4に MA3 のデバイス(VLAN ID=20),RB4 のポート3に MA4 のデバイス(VLAN ID=10)が接続している。
図3
MA1 の行は 10,RB1,4
MAC アドレステーブルは,デバイスの MAC アドレスごとに,そのデバイスの VLAN ID,つながっている RB,その RB のエッジポート番号を持つ。MA1 の行(10,RB1,4)と同じ要領で図3を読むと,MA2 は VLAN ID 20・RB2・ポート3,MA3 は VLAN ID 20・RB3・ポート4,MA4 は VLAN ID 10・RB4・ポート3 になる。
根拠は図3のデバイスの配置である。VLAN ID はデバイスの箱の上か下に書かれ,ポート番号は ● のエッジポートの横に書かれている。
間違えやすい点。MA3 と MA4 は下段のデバイスで,VLAN ID が上段と入れ違っている(MA3 は 20,MA4 は 10)。ポート番号も RB ごとに違う(RB2・RB4 は3,RB1・RB3 は4)。この表は RB ファブリックの共通のテーブルなので,RB1 から見た出力ポートではなく,各デバイスがつながる RB のエッジポート番号を書く。解答用紙の表を埋める設問なので,解答例は表の画像で示している。
採点講評(IPA)
設問2では,ルーティングブリッジと呼ばれる,STPでは実現できなかった複数経路の同時利用を可能にする技術を問うた。動作原理の説明を読んで,実際の経路制御テーブルやアドレス学習テーブルを完成させるなどの具体的設計や,カプセル化に関する理解を問う問題を出題した。全体として,正答率は高かった。
転送経路にループが発生した時に,フレームが流れ続けることを防止することと,冗長化のための複数経路を確保することの両者を考慮した場合に,RB ファブリックの HC としては,どのような値を設定するのが良いと考えられるか。25 字以内で述べよ。
解答例
- 全ての経路の中での最大ホップ数とする。
解説
本文の根拠
〔【1】複数経路の同時利用方式〕
TR ヘッダの HC の値は,RB を通過するたびに減算され,HC の値が 0 のフレームは廃棄される。
〔【1】複数経路の同時利用方式〕
イーサネットでは,ループしている経路があると,ブロードキャストフレームが無限にループするので,論理的な接続ではループを作らないように,例えば STP(Spanning Tree Protocol)の場合には,ポートの閉塞処理が行われる。
HC は IP の TTL と同じ働きをする。ループが起きても,HC が 0 になった時点でフレームは捨てられるので,流れ続けない。HC を小さくするほどループしたフレームは早く消えるが,小さすぎると長い代替経路を通るフレームまで途中で捨てられる。両方を満たすのは,RB ファブリック内で考えられる経路のうち最も長いもののホップ数に合わせることである。これより小さいとどこかの冗長経路が使えず,これより大きいとループしたフレームが必要以上に長く残る。
本文の「HC の値が 0 のフレームは廃棄される」が,ループ対策の仕組みである。設問2(2)で RB4 への代替経路のために3以上にしたのと同じ考え方を,ファブリック全体に広げたものになる。講評が触れるとおり,この方式は TRILL に代表される技術で,TRILL の RFC 6325 もヘッダにホップ数を持たせてループしたフレームを捨てる。
字数の詰め方(25字)。「全ての経路」と「最大ホップ数」の二つを残す。解答例は「全ての経路の中での最大ホップ数とする。」の19字である。「十分大きな値」では,ループ時に流れ続ける時間を抑える側の条件が書けていない。
採点講評(IPA)
設問2では,ルーティングブリッジと呼ばれる,STPでは実現できなかった複数経路の同時利用を可能にする技術を問うた。動作原理の説明を読んで,実際の経路制御テーブルやアドレス学習テーブルを完成させるなどの具体的設計や,カプセル化に関する理解を問う問題を出題した。全体として,正答率は高かった。
本文中の下線①について,この方法によって得られた共通の MAC アドレステーブルは,図4の RB 間転送フレームフォーマットのどのフィールドを決めるために使われるか。フィールド名を答えよ。
解答例
- ファブリックの出口RB名
解説
本文の根拠
〔【1】複数経路の同時利用方式〕
出口 RB は,図3の MAC アドレステーブルを,入力フレームの宛先デバイスの MAC アドレスを宛先 MA として参照することで,決定される。
図4
(フィールド細部は省略)・HC からファブリックの入口 RB 名までが (B)
共通の MAC アドレステーブルは,宛先デバイスの MAC アドレスから,そのデバイスがつながる RB(出口 RB)を引くためのものである。入口の RB はこれを引いて,TR ヘッダの「ファブリックの出口 RB 名」に書き込む。途中の RB は出口 RB 名を見て経路制御テーブルを引き,次の RB を決める。
本文の「出口 RB は,図3の MAC アドレステーブルを…参照することで,決定される」が根拠である。図4の RB 間の転送フレームで,出口 RB を書く欄は (B) の中の「ファブリックの出口 RB 名」しかない。
間違えやすい点。「隣接宛先 RB の MAC アドレス」は次の RB(経路制御テーブルで決まる)で,MAC アドレステーブルからは決まらない。「ファブリックの入口 RB 名」は自分自身の名前である。
採点講評(IPA)
設問2では,ルーティングブリッジと呼ばれる,STPでは実現できなかった複数経路の同時利用を可能にする技術を問うた。動作原理の説明を読んで,実際の経路制御テーブルやアドレス学習テーブルを完成させるなどの具体的設計や,カプセル化に関する理解を問う問題を出題した。全体として,正答率は高かった。
図5中の,FCoE 対応ストレージに向けて FC ファブリックに入力される FCoE フレームの宛先 MAC アドレスは,どこの MAC アドレスが使われるか。図5中の機器名又は機能部名を用いて答えよ。
解答例
- ログインしたFCF
解説
本文の根拠
〔【3】イーサネットを使用した SAN のデータ転送〕
FCoE 対応のホストは,FC ファブリックに接続するために,FIP(FCoE Initialization Protocol)を用いてイーサネット経由で FCF にログインする。
〔【3】イーサネットを使用した SAN のデータ転送〕
FCF を実装した FCoE-SW では,FCoE フレームは FCF を経由して転送される。
図7
入力 FCoE フレームは,FCF1 の MAC アドレス,ホスト1 の FCoE 対応 MAC アドレス,外部の VLAN タグ,イーサタイプ(FCoE)が (C1)
FCoE では,ホストはまず FIP で FCF にログインし,その後の FC フレームは FCoE フレームに包んでログインした FCF へ送る。FCF は FC スイッチの役割を持ち,FC フレームを取り出して次の FCF やストレージへ中継する。したがって,ホストが FC ファブリックに入れる FCoE フレームの宛先 MAC アドレスは,ストレージではなく,ホストがログインした FCF の MAC アドレスになる。
本文の「FCoE フレームは FCF を経由して転送される」が根拠である。図7の入力 FCoE フレームの先頭(宛先)も「FCF1 の MAC アドレス」になっている。
間違えやすい点。「FCoE 対応ストレージ」と答えない。宛先がストレージになるのは,最後の FCF がストレージへ出すフレーム(図7の (C3))である。また,図5には FCF が複数あるので,「FCF」だけでなく「ログインした」まで書いてどの FCF かを示す。
採点講評(IPA)
設問3では,LANとSANの統合に必要なFCoE(Fibre Channel over Ethernet)について,動作の概要を説明した上で,その理解を問うた。全体的に,正答率は高かった。
図5中の a 〜 c に入れる適切なフレーム名を答えよ。
〔a〕解答例
- FCoEフレーム
〔b〕解答例
- FCoEフレーム
〔c〕解答例
- FCフレーム
解説
本文の根拠
図5
その FCoE-SW の FCoE 制御部から次の FCoE-SW の FCoE 制御部へのフレームが a。
図5
最後の FCoE-SW の FCoE 制御部から,FC 接続機能付きの FCoE-SW(FCF,FCoE 制御部,FC 接続部をもつ)の FCoE 制御部へのフレームが b,FC 接続機能付きの FCoE-SW の FC 接続部から FC 対応ストレージへのフレームが c。
〔【3】イーサネットを使用した SAN のデータ転送〕
また,図5に示すように,FCF 経由で FC 対応のストレージを接続することも可能である。
a と b は,どちらも FCoE-SW の FCoE 制御部どうしの間を流れる。FCoE-SW 間はイーサネットなので,FC フレームは FCoE フレームに包まれて運ばれる。c は FC 接続部から FC 対応ストレージへ出るもので,相手は FC のインタフェースしか持たないから,FCoE のカプセル化を外した FC フレームになる。
図5では,FCoE 制御部から出る矢印の先がすべて FCoE 制御部か FCoE 対応ストレージで,FC 対応ストレージにだけ「FC 接続部」から矢印が出ている。本文の「FCF 経由で FC 対応のストレージを接続する」が,c で形式が変わることを示している。
間違えやすい点。b は FC 対応ストレージへ向かう途中だが,まだ FCoE-SW どうしの区間なので FCoE フレームである。FC フレームに変わるのは FC 接続部を出てからである。
採点講評(IPA)
設問3では,LANとSANの統合に必要なFCoE(Fibre Channel over Ethernet)について,動作の概要を説明した上で,その理解を問うた。全体的に,正答率は高かった。
本文中の下線②について,S 主任が指摘した問題はどのようなものだったと考えられるか。40 字以内で述べよ。
解答例
- ホストとストレージ1間のホップ数が増大し,性能の問題が発生する。
解説
本文の根拠
図6
案1 FCF 機能付き RB を1か所だけに配置した構成:ホストが RB に,ストレージ1 が RB に接続し,この2台の RB は上下に接続している。
〔【3】イーサネットを使用した SAN のデータ転送〕
FCF を実装した FCoE-SW では,FCoE フレームは FCF を経由して転送される。
〔【4】LAN と SAN のスイッチ統合〕
FCF へは,拡張イーサネット経由でデバイスを接続するので,FCF 機能を実装しない RB を経由して FCF 機能付きの RB に接続することもできる。
FCoE フレームは必ず FCF を経由して転送される。案1では FCF はストレージ2 側の1台にしかないので,ホストからストレージ1 へのフレームも,隣り合った RB どうしで直接届けられず,いったん右端の FCF 付き RB まで行ってから戻ってくる。ホストとストレージ1 の間のホップ数が大きく増え,遅延や帯域の点で性能が落ちる。案2はホスト側とストレージ1 側の RB に FCF があるので,近くの FCF を通って短い経路で届く。
根拠は本文の「FCoE フレームは FCF を経由して転送される」と,図6の案1でホストとストレージ1 の RB が隣どうしなのに FCF が遠くにある配置である。設計方針(2)の「ロスがなく低遅延のデータ転送」にも反する。
字数の詰め方(40字)。「ホストとストレージ1 間」「ホップ数(経路)が増える」「性能の問題」の三つを残す。解答例は30字前後である。講評は設問4 全体の正答率が低く,FCF 間を RB でつなぐ論理的な接続が理解できていない解答が多かったとしている。
採点講評(IPA)
設問4では,ルーティングブリッジ上にFCoEを実装する“FCoE over TRILL”について,それまで本文中で説明された内容の理解の上に,どのような動作をしているのかの理解を問うた。全体的に,正答率は低かった。FCF間をルーティングブリッジで接続するという論理的な接続が理解できていない解答が散見された。イーサネットを使用したSANのデータ転送について,個々の技術の理解を基に,それらを組み合わせた技術の全体像を理解できるようになることが望まれる。
図7中の(E)におけるファブリック内の転送先 RB 名と転送元 RB 名は何か。RB 名で答えよ。また,ホスト−ストレージ間の転送では,TR ヘッダによるカプセル化とカプセル化の解除は,どのように行われるか。25 字以内で述べよ。
〔転送先RB名〕解答例
- RB2
〔転送元RB名〕解答例
- RB1
〔カプセル化とカプセル化の解除〕解答例
- FCF間を転送されるごとに行われる。
解説
本文の根拠
図7
次に FCF2 の MAC アドレス,FCF1 の MAC アドレス,外部の VLAN タグ,イーサタイプ(FCoE)が (C2)
〔【4】LAN と SAN のスイッチ統合〕
統合ファブリックのエッジポートに入ってきたフレームは,統合ファブリック内部を転送するための TR ヘッダが付加され,カプセル化されて,RB1→RB3→RB2 へと転送される。ストレージが接続された RB2 に到達すると,カプセル化が解除され,TR ヘッダが外されて,ストレージに向けて送出される。
図7
太い矢印(FC フレームが通過する経路)は,ホスト1 の FC 制御部から RB1 の FCF1 に入り,FCF1 から RB1 の経路制御部,RB3 を通って RB2 の FCF2 に入り,FCF2 から RB2 の経路制御部を通ってストレージの FCoE 制御部を経て FC 制御部に至る。
RB 間を流れる FCoE フレーム(C2)は,FCF1 から FCF2 へ送られたものである。FCF1 は RB1 に,FCF2 は RB2 にあるので,TR ヘッダの転送先 RB 名は RB2,転送元 RB 名は RB1 になる。途中の RB3 は TR ヘッダを見て中継するだけである。FCoE フレームは FCF ごとに終端され,FCF が次の FCF 宛てに包み直すので,TR ヘッダのカプセル化も FCF から次の FCF までの区間ごとに行われ,次の FCF のある RB で解除される。
根拠は図7のフレームの変化である。C1 の宛先は FCF1,C2 は FCF1 から FCF2,C3 は FCF2 からストレージで,FCoE のヘッダが FCF ごとに作り直されている。本文の「RB1→RB3→RB2 へと転送される」「RB2 に到達すると,カプセル化が解除され」も,TR ヘッダの区間が FCF のある RB1 から RB2 までであることを示す。
字数の詰め方(25字)。「FCF 間」と「転送されるごと」の二つを残す。解答例は「FCF 間を転送されるごとに行われる。」の17字である。「エッジポートで付けてエッジポートで外す」は,FCF を経由しない LAN のフレームの説明で,FCoE の場合には当たらない。
採点講評(IPA)
設問4では,ルーティングブリッジ上にFCoEを実装する“FCoE over TRILL”について,それまで本文中で説明された内容の理解の上に,どのような動作をしているのかの理解を問うた。全体的に,正答率は低かった。FCF間をルーティングブリッジで接続するという論理的な接続が理解できていない解答が散見された。イーサネットを使用したSANのデータ転送について,個々の技術の理解を基に,それらを組み合わせた技術の全体像を理解できるようになることが望まれる。
図7中のフレームの内容で,FCF が転送処理の対象とするのは,どのフィールドか。図7中のフィールドを示す記号 C1,C2,C3,D 又は E のいずれかで答えよ。
解答例
- D
解説
本文の根拠
〔【3】イーサネットを使用した SAN のデータ転送〕
FCSW(Fibre Channel Switch)に相当する機能を実現する FCF(FCoE Forwarder)を FCoE-SW 上に実装する必要がある。
図7
FCoE でカプセル化された FC フレームが (D)
図7
注記2 太い矢印は,FC フレームが通過する経路を示している。
FCF は FC スイッチ(FCSW)に相当する機能で,FC フレームを FC の宛先(FCID)に従って中継する。イーサネットのヘッダ(C1〜C3)は FCF ごとに作り直される包みで,TR ヘッダ(E)は RB の経路制御部が扱う。FCF が転送処理の対象にするのは,包まれている中身の FC フレーム,つまり D である。
図7で D は入力 FCoE フレーム,RB 間の転送フレーム,出力 FCoE フレームのすべてに「(D) と同じ」として変わらずに現れ,太い矢印(FC フレームの経路)は FCF1・FCF2 を通っている。本文の「FCSW に相当する機能」も,FCF が FC フレームを扱うことを示す。
間違えやすい点。E(TR ヘッダ)は RB の経路制御部が付け外しするもので,FCF の処理対象ではない。C2 は FCF1 が作って FCF2 が受け取るヘッダだが,これは FC フレームを運ぶための包みであり,FCF の中継の判断材料そのものではない。
採点講評(IPA)
設問4では,ルーティングブリッジ上にFCoEを実装する“FCoE over TRILL”について,それまで本文中で説明された内容の理解の上に,どのような動作をしているのかの理解を問うた。全体的に,正答率は低かった。FCF間をルーティングブリッジで接続するという論理的な接続が理解できていない解答が散見された。イーサネットを使用したSANのデータ転送について,個々の技術の理解を基に,それらを組み合わせた技術の全体像を理解できるようになることが望まれる。
本文中の下線③について,図8の構成で冗長化された経路を全て挙げ,HBAm→SCn→LU の形式で答えよ。ここで,m と n は数字を示す。
解答例
- HBA1→SC1→LU,HBA1→SC2→LU,HBA2→SC1→LU,HBA2→SC2→LU
解説
本文の根拠
〔【5】統合ネットワークの高信頼化〕
ホスト側では,LU への経路について,③HBA→SC→LU という経路の組合せで管理するものが多い。
図8
FCSW1 はストレージの SC1 と SC2 の両方に,FCSW2 も SC1 と SC2 の両方に接続する(たすき掛け)。SC1 と SC2 はどちらも LU に接続する。
図8では,HBA1 は FCSW1 に,HBA2 は FCSW2 につながり,各 FCSW は SC1 と SC2 の両方につながっている。どちらの HBA からも両方の SC に行けるので,組合せは 2×2 の4通りになる。HBA1→SC1→LU,HBA1→SC2→LU,HBA2→SC1→LU,HBA2→SC2→LU である。
本文の「HBA→SC→LU という経路の組合せで管理する」が,FCSW を経路の単位に入れない理由である。各 HBA の先の FCSW は1台に決まっているので,HBA を決めれば FCSW も決まる。
間違えやすい点。FCSW と SC のたすき掛けを見落として2通り(HBA1→SC1,HBA2→SC2)にしないこと。形式が指定されているので,FCSW を途中に書き入れない。
本文中の下線④について,FC ファブリックを利用する上で,どのような対処が必要になるか。図8の構成から分かることを 45 字以内で述べよ。
解答例
- 各HBAから互いに独立したFCファブリック経由でストレージへの経路を確保する。
解説
本文の根拠
〔【5】統合ネットワークの高信頼化〕
④障害によっては,一つの FC ファブリックが機能しなくなる可能性もあることから,そのような場合への対応方法も考えておくことが重要である。
図8
HBA1 は FC ファブリック(破線の枠)内の FCSW1 に,HBA2 は別の FC ファブリック(破線の枠)内の FCSW2 に接続する。
〔【5】統合ネットワークの高信頼化〕
FCSW から構成される FC ファブリックでは,ホストとストレージ間通信のための通信可能なポートの組合せは FCSW が管理している。
FC ファブリックは,通信できるポートの組合せなどを FCSW どうしで共有する一つのまとまりなので,設定の誤りやソフトウェアの障害が起きるとファブリック全体が止まることがある。1つのファブリックの中で FCSW を2台にしても,ファブリックが止まれば両方の経路が同時に失われる。そこで図8のように,HBA ごとに別々の独立した FC ファブリックを通してストレージへの経路を作り,片方のファブリックが止まってももう一方で LU にアクセスできるようにする。
図8では FCSW1 と FCSW2 が別々の破線の枠(FC ファブリック)に入っており,FCSW どうしはつながっていない。本文の「一つの FC ファブリックが機能しなくなる可能性」への答えが,この二つのファブリックの構成である。新データセンタの図9でも統合ファブリックを2つに分けている。
字数の詰め方(45字)。「各 HBA から」「互いに独立した FC ファブリック」「経路を確保する」の三つを残す。解答例は35字前後である。「経路を二重化する」だけでは,1つのファブリックの中での二重化と区別できない。講評は(2)の正答率が低かったとしている。
採点講評(IPA)
設問5は,SANのネットワークについて,LANとは異なる信頼性への要求があることを認識してもらう問題であった。(2)の正答率が低かった。ネットワークの技術は,新しい技術であっても,基本的な技術を基に,それらの組合せになっているものが多い。基本動作への理解を深めることは,現実のネットワーク問題への対応力・応用力を高め,新しい技術の理解も容易になるので,是非心掛けてほしい。
出典:平成24年度 秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)