問1 ネットワークシステムの拡張
ネットワークシステムの拡張に関する次の記述を読んで,設問1〜5に答えよ。
工務店の A 社は,全国規模で住宅や店舗の施工を請け負っている。施主への情報提供に力を入れており,次の三つの機能をもつ情報システムを稼働させている。
- 施工情報管理:外出先又は社内にいる A 社の社員や施主が,タブレット端末や PC で動作する,Web ブラウザを使って,A 社データセンタの Web サーバが管理する施工情報に HTTPS プロトコルでアクセスする(以下,Web ブラウザと,Web ブラウザが動作しているタブレット端末や PC を,どちらもブラウザという)。
- コールセンタ:施主からの問合せ電話を,データセンタの IP-PBX を使って,A 社コールセンタのオペレータが受け付け,必要に応じて営業部や技術部へ転送する。
- インターネットアクセス:A 社の社員が,社内からブラウザを使ってインターネットにアクセスする。
A 社の現行情報システムの概要を図1に示す。
情報システム部は,現在,施主との情報連携を強化するために,ブラウザを活用した情報システムの機能拡張に取り組んでいる。ネットワーク担当の B 君が,ネットワークシステムに関する現行仕様の調査と,機能拡張に伴うネットワーク拡張計画の作成を行っている。
情報システムの機能拡張の構想を次に示す。
- マルチホーミング:今後,社外との通信が更に重要になるので,データセンタとインターネットとの接続を二重化する。
- ブラウザを使ったビデオ電話:施主と A 社の社員がブラウザを使って,施工状況などを動画で確認できるようにする。このビデオ電話はブラウザ上で動作するアプリケーション(以下,AP という)を A 社の Web サーバからダウンロードし,AP 間の通信によって実現する。
- ブラウザを使った音声電話:施主や外出先の A 社の社員がブラウザを使って,社内の A 社の社員と音声電話ができるようにする。この電話機能にもビデオ電話と同じ AP を使う。IP-PBX を介した,社外のブラウザ上で動作する AP と社内の IP 電話機との通信によって実現する。
〔現行ネットワーク構成〕
A 社の現行ネットワーク構成を図2に,図2中のスイッチに定義された現行 IP アドレス空間を表1に,それぞれ示す。
B 君が調査した,A 社の現行ネットワークシステムの仕様を次に示す。
- 図2中のブラウザ1が Web サーバ1と Web サーバ2へアクセスする際に,FW の NAT 機能が宛先 IP アドレスを変換する。変換前と変換後の宛先 IP アドレスは,それぞれ表1中の IP アドレス空間 [ ア ] と [ イ ] に属し,変換前と変換後の IP アドレスの組合せは 1:1 に固定されている(以下,宛先 NAT という)。
- 図2中のブラウザ2がインターネットへアクセスする際に,FW の NAT 機能が送信元 IP アドレスと [ ウ ] の両方をそれぞれ動的に変換する(以下,送信元 NAPT という)。(a) 変換後の IP アドレス用に二つのグローバル IP アドレスが割り当てられている。
- FW のフィルタリング定義は,図1に示す情報システムの通信だけを許可している。
- FW には,A 社のドメイン権限をもった DNS 機能がある。
- 2 台の Web サーバ(Web サーバ1,2)は,FW の DNS ラウンドロビン機能を使って負荷分散しており,3 台以上の構成へもスケールアウトができる。(b) スケールアウトの際には,DNS 機能に関する設定変更など,FW に複数の設定変更が必要となる。
〔マルチホーミング〕
B 君は,二つの ISP サービス(ISP1,ISP2)を同時に利用するマルチホーミングの構成を考えた。この構成では,A 社が負荷分散の仕組みを用意する必要がある。調査したところ,マルチホーミング用の負荷分散装置(以下,LB という)があり,この装置は,負荷分散機能の他に,DNS 機能,NAT 機能をもつことが分かった。
B 君は LB を利用した新たなネットワーク構成を考えた。
A 社の新ネットワーク構成を図3に,図3中のスイッチに定義された LAN の新 IP アドレス空間を表2に,それぞれ示す。
LB を使ったマルチホーミングの概要を次に示す。
- インターネット向けの DNS 機能を FW から LB へ移し,ISP2 を経由してもその DNS 機能を提供できるように,ドメイン登録業者に定義の追加を依頼する。その際,ISP1,ISP2 のいずれからでも同じゾーンファイルが参照されるようにする。
- LB の DNS ラウンドロビン機能を使い,インターネットから A 社内への通信の負荷分散を行う。(c) 現行の Web サーバ用のグローバル IP アドレスに,新たなグローバル IP アドレスを加え,DNS クエリに対してそれらが交互に返るようにする。
- A 社内からインターネットへの通信は,ISP1 と ISP2 への接続ポートに対して負荷分散を行う。その際,ISP へ送信する IP パケットの送信元 IP アドレスは,送信先の ISP から貸与されたグローバル IP アドレスに変換されるので,FW の NAT 機能を LB へ移して一元化する。
- (d) LB は,通信の行きと戻りを同じ ISP 経由にする。
- LB から ISP1 のルータ及び ISP2 のルータへそれぞれ定期的に ping 確認を行い,ISP の障害を検知した場合には,正常な ISP だけを利用する。
〔ブラウザを使ったビデオ電話の通信〕
情報システム部は,WebRTC(Web Real-Time Communication)に準拠した AP を導入する予定である。WebRTC は,ブラウザを使った音声,動画などの通信規約であり,W3C 及び IETF から仕様が公開されている。この WebRTC を使ったビデオ電話では,AP をダウンロードしたブラウザ間で直接通信(以下,AP 間通信という)を行う。NAT 機能が介在する場合の AP 間通信の例を,図4に示す。
サーバを介さない通信では,通信相手の IP アドレスを知る仕組みが必要である。図4の例では,NAT 機能によってブラウザ2の IP アドレス〈p〉が〈g2〉に変換されている。その場合,ブラウザ1上の AP は,通信相手の IP アドレスとして,〈p〉ではなく〈g2〉を用いなければならない。
A 社が導入する AP は,NAT 機能によって変換された IP アドレスを,STUN サーバから得る仕様となっている。図4の例では,ブラウザ2上の AP が STUN プロトコルを用いて STUN サーバ1,2から〈g2〉を得て,それをブラウザ1上の AP に通知する。
STUN プロトコルの概要は次のとおりである。
- STUN クライアントは,STUN サーバへ Binding リクエストを送る。
- STUN サーバは,受け取った IP パケットのヘッダから送信元の IP アドレスとポート番号を取り出し,Binding レスポンス中のデータに格納して返す。
- (e) STUN クライアントは,Binding レスポンス中のデータから,自分と STUN サーバ間の NAT 機能の有無を知り,NAT 機能が介在する場合には,そのデータから NAT 機能が変換した自分の IP アドレスを得る。
B 君は,STUN サーバへのアクセスから音声,ビデオ,データなどの交換までの AP 間通信の概要をまとめた。B 君がまとめた AP 間通信の概要を,図5に示す。
AP をダウンロードしたブラウザは,図5中の①〜③で NAT 機能を経由した最適ルートを確立する(以下,ホールパンチという)。ホールパンチの概要を次に示す。
- ①,①’ AP は STUN サーバ1,2にアクセスし,NAT 機能が介在する場合の変換後のブラウザの IP アドレスを取得する。
- ② AP は,SDP(Session Description Protocol)オブジェクトを使って,①,①’で取得した IP アドレスとブラウザ自身の IP アドレスを,通信相手の AP へ通知する。その際,ブラウザ1,2と Web サーバ1,2間に HTTPS が使われる。
- ③ AP は,通知された IP アドレスを宛先 IP アドレスにして通信相手との通信を試み,相互に通信が成功した場合に,その宛先 IP アドレスの組合せを最適ルートとする。
(f) 図4の AP 間通信は,このようにして確立した最適ルートを使っている。
なお,ホールパンチには,ブラウザの IP アドレスと NAT 機能の変換ルールが,それぞれ一定時間変わらないという前提条件が必要である。例えば,図4中の〈p〉と〈g2〉は,AP 間通信の間,関連付けられている必要がある。また,IP アドレスだけではなくポート番号の考慮も必要である。
B 君は,AP 間通信において AP が使用するポート番号はあらかじめ決められていること,及び STUN サーバを図3のネットワーク内に適切に配置することによって,ホールパンチが LB の NAT 機能に対して有効に働くことをベンダに確認した。そして,(g) 片方の ISP が障害の場合にも利用できるように,STUN サーバのインタフェース(図3中の A,B)を,図3中の適切なスイッチに接続することにした。
次に,B 君は,A 社のマルチホーミング運用によって,図5中の通信が ISP1 と ISP2 に負荷分散されるかどうかを検討した。そして,図5から,データ量が多い④に用いられる ISP は,[ エ ] が [ オ ] をアクセスするときの LB の振分け結果によって決まることを確認し,負荷分散が行われると判断した。
〔ブラウザを使った音声電話の通信〕
ブラウザを使った音声電話の通信では,社外のブラウザ上で動作する AP が IP-PBX を介して社内の IP 電話機と通信を行う。
B 君は IP-PBX のベンダから IP-PBX の WebRTC 機能の情報を入手し,通信方式を検討した。B 君が考えた,社外の AP から社内の IP 電話機への通信の概要を,図6に示す。
図6中の通信の概要は,次のとおりである。
- AP は,通信プロトコル [ カ ] を使って IP-PBX へアクセスし,①-1 と①-2 によって,通信プロトコルを [ キ ] に切り替え,切り替えた通信プロトコルの上で SIP プロトコルに基づくシグナリングを行う。
- IP-PBX は,2 組の B2BUA(Back-to-Back User Agent)として動作する。(h) インターネット側の二つの UA(User Agent)には,それぞれグローバル IP アドレスを割り当てる。
- IP-PBX は Session Border Controller として動作し,グローバル IP アドレスとプライベート IP アドレスを変換する。
- (i) IP-PBX の LAN インタフェース(図3中の C,D)を追加し,図3中の適切なスイッチと接続する。
- 図6中の通信の前に,[ ク ] の FQDN に関する [ ケ ] クエリが,AP から [ コ ] へ発行されることによって,図6中の AP と IP-PBX 間の通信は ISP1 と ISP2 に負荷分散される。
〔移行計画〕
情報システム部では,保守などでサービス停止の可能性がある場合には,サービス停止時間を関係部署へ連絡することになっている。また,連絡したサービス停止時間内に保守を終えてサービスを再開できるように,部内で作業計画を十分にレビューした上で保守を行う運用ルールも設けられている。
B 君は,今回の機能拡張に関して,サービス停止時間を見積もりながら,利用者への影響が極力小さくなるような移行を考えた。ここで,サービス停止時間とは,切替作業,切替作業後の動作確認及び問題発生時の [ サ ] に要する時間の合計である。
B 君が作成したネットワークの移行計画案を,図7に示す。
ネットワーク移行のための切替えは 2 段階で行う。図7中の切替1と切替2について,B 君は次のように考えた。
(切替1について)
- LB の設定は,切替1で全ての定義を盛り込み,その後の変更を不要にする。例えば DNS 機能については,新たなネットワーク構成に必要な次の A レコードを全て設定する。
- − (j) Web サーバ1と Web サーバ2に関する四つの A レコード
- − (k) AP が名前解決しなければならない FQDN に関する A レコード(AP 内の定義には,IP アドレスではなく,FQDN を用いることにする。)
- FW のフィルタリング変更は,中間のネットワーク構成の通信に関して変更する。
- 次の点を考慮し,切替1のサービス停止時間は 2 時間とする。
- − (l) 機器の変更は,あらかじめ 2 通りの定義ファイルをもたせておき,定義ファイルを指定した再起動によって行う。
- − 約 1 時間,一部の利用者に情報システムを利用してもらい,(m) 3 種類の通信を発生させて,動作の正常性を確認する。
- − (n) ドメイン登録業者に依頼する定義変更に関しては,情報システム部が正常性を確認する。利用者サービスへ直接影響しないので,その作業はサービス停止時間には含まない。
(切替2について)
- (o) FW のフィルタリング変更は,新たなネットワーク構成の通信に関して変更する。
- 機器の変更と動作の正常性確認を含めた切替2のサービス停止時間について,IP-PBX のベンダに見積りを依頼する。
B 君は,検討結果をまとめ,情報システム部長に報告した。その後,顧客システムの機能拡張のプロジェクトが発足し,B 君はネットワークチームのリーダとして参画することになった。
出題趣旨(IPA)
Webコンピューティングに関する様々な技術が,開発され実用化されている。利用者が直接使う機器の多くにはWebブラウザが標準搭載されているので,ホームページアクセス以外の多様な用途にも使えるよう,機能強化や標準化が進められている。本問では,Webコンピューティングにおけるリアルタイム通信を題材に,ネットワーク技術の応用力を問う。WebRTC(Web Real-Time Communication)の特徴の一つは,Webブラウザを使って,シグナリングとリアルタイム通信を実現できることである。これを通信プロトコルとして見た場合,応用される通信の特性が同じSIP(Session Initiation Protocol)と共通点が多い。比較的新しい技術であるWebRTCを,従来技術の知識を基に理解すること,そして,それを実システムの拡張計画へ応用することを中心に出題している。
設問と解答例
本文中の [ ア ] 〜 [ ウ ] に入れる適切な字句を答えよ。
〔ア〕解答例
- ip1/29
〔イ〕解答例
- 10.0.9.0/24
〔ウ〕解答例
- 送信元ポート番号
解説
本文の根拠
〔現行ネットワーク構成〕
図2中のブラウザ1が Web サーバ1と Web サーバ2へアクセスする際に,FW の NAT 機能が宛先 IP アドレスを変換する。変換前と変換後の宛先 IP アドレスは,それぞれ表1中の IP アドレス空間 [ ア ] と [ イ ] に属し,
表1
L2SW1:vlan1,ip1/29(ip1 はグローバル IP アドレス),ISP1 接続。L2SW9:vlan9,10.0.9.0/24,DMZ。
〔現行ネットワーク構成〕
FW の NAT 機能が送信元 IP アドレスと [ ウ ] の両方をそれぞれ動的に変換する(以下,送信元 NAPT という)。
ア・イ:インターネットのブラウザ1が宛先にするのは,ISP1 から割り当てられたグローバル IP アドレスである。表1で ISP1 接続の vlan1 に定義された ip1/29 がその空間なので,変換前の宛先はアの ip1/29 に属する。FW はこれを Web サーバの実アドレスに変換する。Web サーバ1,2 は L2SW9 の DMZ(vlan9)にあるので,変換後はイの 10.0.9.0/24 に属する。ウ:送信元の IP アドレスとポート番号を組にして変換するのが NAPT(RFC 3022 の Network Address Port Translation)である。IP アドレスだけを変換する NAT と違い,複数の端末で一つのグローバル IP アドレスを共有できる。
図2で Web サーバ1,2 は FW − L2SW9 の先にあり,表1で L2SW9 の用途は DMZ である。ブラウザ1からは L2SW1 − FW を通って届くので,FW の外側(L2SW1)と内側(L2SW9)の空間の組になる。
間違えやすい点。イを FW 接続の 10.0.8.0/24 としないこと。これは FW と L3SW1 の間の空間で,Web サーバは無い。ウは「ポート番号」だけでも意味は通るが,NAPT が変換するのは送信元側のポート番号なので,解答例は「送信元ポート番号」としている。
本文中の下線(a)について,送信元 NAPT が同時に処理できる TCP コネクション数の上限を答えよ。ここで,216=65,536 である。
解答例
- 131,072
解説
本文の根拠
〔現行ネットワーク構成〕
FW の NAT 機能が送信元 IP アドレスと [ ウ ] の両方をそれぞれ動的に変換する(以下,送信元 NAPT という)。(a) 変換後の IP アドレス用に二つのグローバル IP アドレスが割り当てられている。
送信元 NAPT は,変換後の送信元 IP アドレスと送信元ポート番号の組で TCP コネクションを見分ける。ポート番号は 16 ビットなので,一つのグローバル IP アドレスにつき 216=65,536 通りの組が作れる。変換後の IP アドレスは二つあるので,65,536×2=131,072 が同時に処理できる TCP コネクション数の上限になる。
下線(a)は変換後の IP アドレスが二つであることを示し,設問が 216=65,536 を与えている。この二つを掛け合わせればよい。
間違えやすい点。実際にはポート番号 0 やウェルノウンポートを使わない実装が多いが,設問は 216 を与えているので,そのまま 131,072 と答える。IP アドレス1個分の 65,536 で止めないこと。
本文中の下線(b)について,DNS 機能以外の FW の設定変更内容を二つ挙げ,それぞれ 20 字以内で答えよ。
〔①〕解答例
- 許可する通信を追加する。
〔②〕解答例
- 宛先NATに関する定義を追加する。
解説
本文の根拠
〔現行ネットワーク構成〕
2 台の Web サーバ(Web サーバ1,2)は,FW の DNS ラウンドロビン機能を使って負荷分散しており,3 台以上の構成へもスケールアウトができる。(b) スケールアウトの際には,DNS 機能に関する設定変更など,FW に複数の設定変更が必要となる。
〔現行ネットワーク構成〕
変換前と変換後の IP アドレスの組合せは 1:1 に固定されている(以下,宛先 NAT という)。
〔現行ネットワーク構成〕
FW のフィルタリング定義は,図1に示す情報システムの通信だけを許可している。
Web サーバを1台増やすと,FW では次の三つの設定が要る。①DNS ラウンドロビンで返すアドレスに,新しいサーバ用のグローバル IP アドレスを加える(A レコードの追加)。②宛先 NAT は変換前と変換後が 1:1 に固定されているので,新しいグローバル IP アドレスと新しいサーバのプライベート IP アドレスの組を追加する。③フィルタリングは許可した通信しか通さないので,新しいサーバ宛ての通信を許可する。設問は DNS 機能以外を問うので,②と③が答えになる。
根拠は,宛先 NAT の「1:1 に固定」と,フィルタリング定義の「図1に示す情報システムの通信だけを許可」の二つである。どちらも新しいサーバの分だけ定義を足さなければならない。
字数の詰め方(各20字)。何の定義に何をするかを残す。解答例は「許可する通信を追加する。」と「宛先 NAT に関する定義を追加する。」である。二つの順序は問わない。
本文中の下線(c)について,現行のグローバル IP アドレスと追加するグローバル IP アドレスとの違いを 20 字以内で述べよ。
解答例
- 異なるISPから払い出されている。
解説
本文の根拠
〔マルチホーミング〕
LB の DNS ラウンドロビン機能を使い,インターネットから A 社内への通信の負荷分散を行う。(c) 現行の Web サーバ用のグローバル IP アドレスに,新たなグローバル IP アドレスを加え,DNS クエリに対してそれらが交互に返るようにする。
表2
L2SW1:vlan1,ip1/29(ip1 はグローバル IP アドレス),ISP1 接続。L2SW2:vlan2,ip2/29(ip2 はグローバル IP アドレス),ISP2 接続。
現行の Web サーバ用のグローバル IP アドレスは ISP1 から払い出された ip1/29 に属する。新たに加えるのは ISP2 接続用の ip2/29 に属するアドレスである。DNS が二つを交互に返すと,インターネットのブラウザは ISP1 経由と ISP2 経由に振り分けられる。これが下線(c)による負荷分散の仕組みである。したがって違いは,払い出した ISP が異なることにある。
表2で vlan1 は ISP1 接続,vlan2 は ISP2 接続とされ,それぞれにグローバル IP アドレスの空間がある。ISP から貸与されたアドレス宛ての通信は,その ISP を通って届く。
字数の詰め方(20字)。「異なる ISP から払い出されている」の一点を書く。解答例は「異なる ISP から払い出されている。」である。「新しいアドレスである」のような言い方では,負荷分散に効く違いが伝わらない。
本文中の下線(d)において,通信の行きと戻りが同じ ISP ではない場合の問題を,社外から Web サーバへのアクセスを例に,IP アドレスという用語を用いて 40 字以内で述べよ。
解答例
- 応答が行きの宛先IPアドレスとは異なる送信元IPアドレスから戻る。
解説
本文の根拠
〔マルチホーミング〕
その際,ISP へ送信する IP パケットの送信元 IP アドレスは,送信先の ISP から貸与されたグローバル IP アドレスに変換されるので,FW の NAT 機能を LB へ移して一元化する。
〔マルチホーミング〕
(d) LB は,通信の行きと戻りを同じ ISP 経由にする。
社外のブラウザが ISP1 のアドレス(ip1 側)に宛ててリクエストを送ったとする。応答を ISP2 経由で返すと,LB は送信元 IP アドレスを ISP2 から貸与されたアドレスに変換する。ブラウザから見ると,応答が,自分が送った宛先 IP アドレスとは異なる送信元 IP アドレスから戻ってくる。TCP のコネクションは両端の IP アドレスとポート番号の組で識別されるので,ブラウザはこの応答を自分のコネクションのものと認めず,通信が成立しない。
本文に「送信元 IP アドレスは,送信先の ISP から貸与されたグローバル IP アドレスに変換される」とある。行きと戻りで ISP が変われば,変換後のアドレスも変わることがここから分かる。
字数の詰め方(40字)。設問の指定どおり IP アドレスという語で,「行きの宛先」と「戻りの送信元」が異なることを書く。解答例は「応答が行きの宛先 IP アドレスとは異なる送信元 IP アドレスから戻る。」である。採点講評のとおり,TCP 層の動作(シーケンス番号など)と取り違えないこと。
採点講評(IPA)
設問2では,マルチホーミングの一手法について問うた。(2)は基本的な問題だが,IP層とTCP層の動作を勘違いしたり,技術的に不正確だったりする解答が散見された。正確で簡潔な記述を心掛けてほしい。
本文中の下線(e)について,STUN クライアントはどのようにして NAT 機能の有無を判定するかを,50 字以内で述べよ。
解答例
- Bindingレスポンス中のデータに含まれるIPアドレスと,自分のIPアドレスを比べる。
解説
本文の根拠
〔ブラウザを使ったビデオ電話の通信〕
STUN サーバは,受け取った IP パケットのヘッダから送信元の IP アドレスとポート番号を取り出し,Binding レスポンス中のデータに格納して返す。
〔ブラウザを使ったビデオ電話の通信〕
(e) STUN クライアントは,Binding レスポンス中のデータから,自分と STUN サーバ間の NAT 機能の有無を知り,NAT 機能が介在する場合には,そのデータから NAT 機能が変換した自分の IP アドレスを得る。
STUN サーバは,受け取ったパケットの送信元 IP アドレスをそのまま返す。途中に NAT 機能が無ければ,それはクライアント自身の IP アドレスと同じである。NAT 機能があれば,変換後のアドレスが返るので自分のアドレスと異なる。したがって,Binding レスポンス中のデータに含まれる IP アドレスと自分の IP アドレスを比べれば,NAT 機能の有無が分かる。STUN(RFC 5389)はこの返されるアドレスを reflexive transport address と呼んでいる。
本文の STUN プロトコルの概要に,STUN サーバが「送信元の IP アドレスとポート番号を取り出し」て返すとある。知識が無くても,この記述から比べればよいと分かる。
字数の詰め方(50字)。「何と何を比べるか」を残す。解答例は「Binding レスポンス中のデータに含まれる IP アドレスと,自分の IP アドレスを比べる。」である。一致すれば NAT 無し,異なれば NAT 有りという判定の向きまでは書かなくても伝わる。
採点講評(IPA)
設問3は,WebRTCに関する設問で,Webブラウザを使ったリアルタイム通信について問うている。(1),(2)は,知識がなくても本文の記述から解答できるが,(3),(4)はマルチホーミング環境でのWebRTC利用という応用問題であり,正答率はやや低かった。正答に至らなかった受験者は,解答例を参考に復習してほしい。また,WebRTCのような比較的新しいWebコンピューティング技術についても理解を深めてほしい。
本文中の下線(f)について,図4の通信のために,ブラウザ2が SDP オブジェクトに格納する二つの IP アドレス候補を,図4中の字句を用いて答えよ。
〔①〕解答例
- 〈p〉
〔②〕解答例
- 〈g2〉
解説
本文の根拠
〔ブラウザを使ったビデオ電話の通信〕
② AP は,SDP(Session Description Protocol)オブジェクトを使って,①,①’で取得した IP アドレスとブラウザ自身の IP アドレスを,通信相手の AP へ通知する。
〔ブラウザを使ったビデオ電話の通信〕
図4の例では,NAT 機能によってブラウザ2の IP アドレス〈p〉が〈g2〉に変換されている。
ホールパンチの②で,AP は「①,①’で取得した IP アドレス」と「ブラウザ自身の IP アドレス」の二つを通知する。ブラウザ2の場合,自身の IP アドレスはプライベート IP アドレスの〈p〉,STUN サーバから得た変換後のアドレスは〈g2〉である。この二つが IP アドレス候補になる。WebRTC が使う ICE(RFC 8445)では,前者を host candidate,後者を server reflexive candidate と呼ぶ。
③で AP は候補を宛先にして通信を試み,成功した組を最適ルートとする。図4ではブラウザ1が〈g2〉宛てに送ったパケットが届いているので,〈g2〉が選ばれた最適ルートである。〈p〉は同じイントラネットの相手なら届く候補として一緒に通知される。
間違えやすい点。〈g1〉はブラウザ1のアドレスなので,ブラウザ2が格納する候補ではない。二つの欄の順序は問わない。
採点講評(IPA)
設問3は,WebRTCに関する設問で,Webブラウザを使ったリアルタイム通信について問うている。(1),(2)は,知識がなくても本文の記述から解答できるが,(3),(4)はマルチホーミング環境でのWebRTC利用という応用問題であり,正答率はやや低かった。正答に至らなかった受験者は,解答例を参考に復習してほしい。また,WebRTCのような比較的新しいWebコンピューティング技術についても理解を深めてほしい。
本文中の下線(g)の接続先を,表2中の VLAN 名でそれぞれ答えよ。
〔A〕解答例
- vlan1
〔B〕解答例
- vlan2
〔備考〕順不同
解説
本文の根拠
〔ブラウザを使ったビデオ電話の通信〕
そして,(g) 片方の ISP が障害の場合にも利用できるように,STUN サーバのインタフェース(図3中の A,B)を,図3中の適切なスイッチに接続することにした。
表2
L2SW1:vlan1,ip1/29(ip1 はグローバル IP アドレス),ISP1 接続。L2SW2:vlan2,ip2/29(ip2 はグローバル IP アドレス),ISP2 接続。
〔ブラウザを使ったビデオ電話の通信〕
図4の例では,ブラウザ2上の AP が STUN プロトコルを用いて STUN サーバ1,2から〈g2〉を得て,それをブラウザ1上の AP に通知する。
STUN サーバは,NAT 機能が変換した後のアドレスを見られる位置に置かなければ意味が無い。LB の NAT 機能より外側で,ISP に直接つながるセグメントは vlan1(ISP1 接続)と vlan2(ISP2 接続)である。STUN サーバ1を vlan1 に,STUN サーバ2を vlan2 に分けて接続すれば,それぞれ ISP1 と ISP2 のグローバル IP アドレスをもつ。片方の ISP が障害になっても,もう一方の ISP 側の STUN サーバにはインターネットから到達できる。
下線(g)は「片方の ISP が障害の場合にも利用できるように」としている。2台を同じ側に置くと,その ISP の障害で両方とも使えなくなる。
間違えやすい点。DMZ の vlan9 は FW と LB の内側で,社外のブラウザ1から見ると LB の NAT を通った後になる。解答例は A が vlan1,B が vlan2 だが,順不同とされている。
採点講評(IPA)
設問3は,WebRTCに関する設問で,Webブラウザを使ったリアルタイム通信について問うている。(1),(2)は,知識がなくても本文の記述から解答できるが,(3),(4)はマルチホーミング環境でのWebRTC利用という応用問題であり,正答率はやや低かった。正答に至らなかった受験者は,解答例を参考に復習してほしい。また,WebRTCのような比較的新しいWebコンピューティング技術についても理解を深めてほしい。
本文中の [ エ ],[ オ ] に入れる適切な字句を答えよ。
〔エ〕解答例
- ブラウザ2のAP
〔オ〕解答例
- STUNサーバ
解説
本文の根拠
〔ブラウザを使ったビデオ電話の通信〕
そして,図5から,データ量が多い④に用いられる ISP は,[ エ ] が [ オ ] をアクセスするときの LB の振分け結果によって決まることを確認し,負荷分散が行われると判断した。
〔ブラウザを使ったビデオ電話の通信〕
①,①’ AP は STUN サーバ1,2にアクセスし,NAT 機能が介在する場合の変換後のブラウザの IP アドレスを取得する。
〔ブラウザを使ったビデオ電話の通信〕
例えば,図4中の〈p〉と〈g2〉は,AP 間通信の間,関連付けられている必要がある。
④の AP 間通信は,③で決めた最適ルートの宛先 IP アドレスを使う。社内のブラウザ2あての宛先は,ブラウザ2の AP が STUN サーバにアクセスしたときに LB の NAT 機能が付けた変換後のアドレス(〈g2〉)である。LB がそのアクセスを ISP1 と ISP2 のどちらに振り分けたかで,〈g2〉が ISP1 のアドレスになるか ISP2 のアドレスになるかが決まり,それが④で使われる ISP になる。したがって,エはブラウザ2の AP,オは STUN サーバである。
本文は「〈p〉と〈g2〉は,AP 間通信の間,関連付けられている必要がある」としている。STUN サーバへのアクセスで作られた変換ルールを,そのまま④で使っていることが分かる。
間違えやすい点。エを「ブラウザ1」とすると,社外のブラウザは LB を通らないので振分けと関係が無い。オを「Web サーバ」とすると,②の SDP の交換は通知の経路であって,④の宛先アドレスは決めない。
採点講評(IPA)
設問3は,WebRTCに関する設問で,Webブラウザを使ったリアルタイム通信について問うている。(1),(2)は,知識がなくても本文の記述から解答できるが,(3),(4)はマルチホーミング環境でのWebRTC利用という応用問題であり,正答率はやや低かった。正答に至らなかった受験者は,解答例を参考に復習してほしい。また,WebRTCのような比較的新しいWebコンピューティング技術についても理解を深めてほしい。
本文中の [ カ ],[ キ ] に入れる適切な字句を答えよ。
〔カ〕解答例
- HTTP
〔キ〕解答例
- WebSocket
解説
本文の根拠
〔ブラウザを使った音声電話の通信〕
AP は,通信プロトコル [ カ ] を使って IP-PBX へアクセスし,①-1 と①-2 によって,通信プロトコルを [ キ ] に切り替え,切り替えた通信プロトコルの上で SIP プロトコルに基づくシグナリングを行う。
図6
①-1 HTTP GET Upgrade:websocket(AP→IP-PBX),①-2 101 Switching Protocols(IP-PBX→AP)
図6の①-1 は HTTP の GET リクエストに Upgrade: websocket を付けたもので,①-2 の 101 Switching Protocols は HTTP の応答コードである。AP はまず HTTP で IP-PBX にアクセスし,このやり取りで通信プロトコルを WebSocket に切り替える。これは WebSocket(RFC 6455)の opening handshake そのものである。切り替えた後の WebSocket の上で SIP のメッセージ(REGISTER,INVITE など)をやり取りする方式は,RFC 7118 に定められている。
根拠は図6の①-1 と①-2 のメッセージ名で,採点講評も「図6や HTTP の一般知識からの推論を期待した設問」としている。
間違えやすい点。カを SIP とする誤りが多かったと講評にある。SIP は切り替えた後に使うプロトコルで,最初のアクセスは HTTP である。ブラウザの AP は HTTP でしかサーバにアクセスを始められないことを思い出すとよい。
採点講評(IPA)
設問4は,WebRTCとSIPを組み合わせた設問である。(1)を除き正答率は高かった。(1)はWebsocketの知識を求めるものではなく,図6やHTTPの一般知識からの推論を期待した設問であるが,SIPそのものに引きずられた誤答が多かった。WebRTCとSIPはシグナリングとリアルタイム通信のための通信プロトコルという点で類似性がある。これらに馴染みのない受験者には,これを機会に復習することを薦めたい。
本文中の下線(h)について,マルチホーミングのために,グローバル IP アドレスをどのように割り当てるかを,40 字以内で述べよ。
解答例
- ISP1とISP2から払い出されたIPアドレスを一つずつ割り当てる。
解説
本文の根拠
〔ブラウザを使った音声電話の通信〕
IP-PBX は,2 組の B2BUA(Back-to-Back User Agent)として動作する。(h) インターネット側の二つの UA(User Agent)には,それぞれグローバル IP アドレスを割り当てる。
〔マルチホーミング〕
B 君は,二つの ISP サービス(ISP1,ISP2)を同時に利用するマルチホーミングの構成を考えた。
IP-PBX は2組の B2BUA として動き,インターネット側に UA を二つもつ。マルチホーミングで ISP1 と ISP2 の両方を使うには,一方の UA に ISP1 から払い出された IP アドレスを,もう一方の UA に ISP2 から払い出された IP アドレスを,一つずつ割り当てる。こうすると,どちらの ISP 経由でも社外の AP が IP-PBX に到達でき,片方の ISP が障害でも他方で通信を続けられる。
〔マルチホーミング〕で,グローバル IP アドレスは ISP ごとに払い出されること(表2の ip1/29 と ip2/29)を見た。設問2(1)で Web サーバに ISP2 のアドレスを加えたのと同じ考え方を IP-PBX に当てはめる。
字数の詰め方(40字)。「ISP1 と ISP2 の両方から」「一つずつ」を残す。解答例は「ISP1 と ISP2 から払い出された IP アドレスを一つずつ割り当てる。」である。
採点講評(IPA)
設問4は,WebRTCとSIPを組み合わせた設問である。(1)を除き正答率は高かった。(1)はWebsocketの知識を求めるものではなく,図6やHTTPの一般知識からの推論を期待した設問であるが,SIPそのものに引きずられた誤答が多かった。WebRTCとSIPはシグナリングとリアルタイム通信のための通信プロトコルという点で類似性がある。これらに馴染みのない受験者には,これを機会に復習することを薦めたい。
本文中の下線(i)の接続先を,表2中の VLAN 名でそれぞれ答えよ。
〔C〕解答例
- vlan1
〔D〕解答例
- vlan2
〔備考〕順不同
解説
本文の根拠
〔ブラウザを使った音声電話の通信〕
(i) IP-PBX の LAN インタフェース(図3中の C,D)を追加し,図3中の適切なスイッチと接続する。
〔ブラウザを使った音声電話の通信〕
IP-PBX は Session Border Controller として動作し,グローバル IP アドレスとプライベート IP アドレスを変換する。
表2
L2SW1:vlan1,ip1/29(ip1 はグローバル IP アドレス),ISP1 接続。L2SW2:vlan2,ip2/29(ip2 はグローバル IP アドレス),ISP2 接続。
追加するインタフェース C,D は,下線(h)でグローバル IP アドレスを割り当てるインターネット側の二つの UA のものである。ISP1 のアドレスをもつ側は ISP1 接続の vlan1(L2SW1)に,ISP2 のアドレスをもつ側は ISP2 接続の vlan2(L2SW2)に接続する。IP-PBX 自身が Session Border Controller としてグローバルとプライベートのアドレスを変換するので,LB の NAT 機能を通さずに ISP 側のセグメントへ直接つなぐ。
本文の「IP-PBX は Session Border Controller として動作し,グローバル IP アドレスとプライベート IP アドレスを変換する」が根拠である。社内の IP 電話機とは既存の vlan7(IP-PBX 接続)でつながっている。
間違えやすい点。vlan7 や DMZ の vlan9 は既にある社内側のセグメントで,グローバル IP アドレスを割り当てる UA の置き場所ではない。C と D の順序は問わない。
採点講評(IPA)
設問4は,WebRTCとSIPを組み合わせた設問である。(1)を除き正答率は高かった。(1)はWebsocketの知識を求めるものではなく,図6やHTTPの一般知識からの推論を期待した設問であるが,SIPそのものに引きずられた誤答が多かった。WebRTCとSIPはシグナリングとリアルタイム通信のための通信プロトコルという点で類似性がある。これらに馴染みのない受験者には,これを機会に復習することを薦めたい。
本文中の [ ク ] 〜 [ コ ] に入れる適切な字句を答えよ。
〔ク〕解答例
- IP-PBX
〔ケ〕解答例
- DNS
〔コ〕解答例
- LB
解説
本文の根拠
〔ブラウザを使った音声電話の通信〕
図6中の通信の前に,[ ク ] の FQDN に関する [ ケ ] クエリが,AP から [ コ ] へ発行されることによって,図6中の AP と IP-PBX 間の通信は ISP1 と ISP2 に負荷分散される。
〔マルチホーミング〕
インターネット向けの DNS 機能を FW から LB へ移し,ISP2 を経由してもその DNS 機能を提供できるように,ドメイン登録業者に定義の追加を依頼する。
〔マルチホーミング〕
LB の DNS ラウンドロビン機能を使い,インターネットから A 社内への通信の負荷分散を行う。
図6で AP が接続する相手は IP-PBX である。AP は通信の前に IP-PBX の FQDN を名前解決するため,DNS クエリを発行する。インターネット向けの DNS 機能は LB に移しているので,クエリは LB に届く。LB は DNS ラウンドロビンで,IP-PBX の ISP1 側のアドレスと ISP2 側のアドレスを交互に返す。AP はどちらかのアドレスに接続するので,AP と IP-PBX 間の通信が ISP1 と ISP2 に分散される。よって,クは IP-PBX,ケは DNS,コは LB である。
根拠は〔マルチホーミング〕の「DNS 機能を FW から LB へ移し」と「LB の DNS ラウンドロビン機能を使い」の二つである。設問4(2)で IP-PBX に二つの ISP のアドレスを割り当てたことが前提になる。
間違えやすい点。コを FW とすると,DNS 機能を LB へ移した後の構成と合わない。厳密には AP のクエリはまずフルサービスリゾルバに送られ,そこから権威サーバの LB に届くが,本文の書き方に合わせて LB と答える。
採点講評(IPA)
設問4は,WebRTCとSIPを組み合わせた設問である。(1)を除き正答率は高かった。(1)はWebsocketの知識を求めるものではなく,図6やHTTPの一般知識からの推論を期待した設問であるが,SIPそのものに引きずられた誤答が多かった。WebRTCとSIPはシグナリングとリアルタイム通信のための通信プロトコルという点で類似性がある。これらに馴染みのない受験者には,これを機会に復習することを薦めたい。
本文中の [ サ ] に入れる適切な字句を答えよ。
〔サ〕解答例
- 切り戻し
解説
本文の根拠
〔移行計画〕
ここで,サービス停止時間とは,切替作業,切替作業後の動作確認及び問題発生時の [ サ ] に要する時間の合計である。
〔移行計画〕
また,連絡したサービス停止時間内に保守を終えてサービスを再開できるように,部内で作業計画を十分にレビューした上で保守を行う運用ルールも設けられている。
切替作業の後の動作確認で問題が見つかったときは,元の構成に戻してサービスを再開させる。この戻す作業を切り戻しという。連絡したサービス停止時間内にサービスを再開するには,切替作業と動作確認に加えて,最悪の場合の切り戻しの時間まで見込んでおく必要がある。よってサは切り戻しである。
本文は「連絡したサービス停止時間内に保守を終えてサービスを再開できるように」という運用ルールを挙げている。問題が起きても時間内に再開するための時間が,サに当たる。
間違えやすい点。「復旧」「障害対応」でも意味は近いが,移行作業では元の構成に戻すことを切り戻し(ロールバック)と呼ぶのが一般的である。下線(l)の「2 通りの定義ファイル」も,切り戻しを速くするための工夫である。
本文中の下線(j)の四つの A レコードに記述されている,FQDN とグローバル IP アドレスの数をそれぞれ答えよ。
〔FQDN数〕解答例
- 1
〔グローバルIPアドレス数〕解答例
- 4
解説
本文の根拠
〔移行計画〕
LB の設定は,切替1で全ての定義を盛り込み,その後の変更を不要にする。例えば DNS 機能については,新たなネットワーク構成に必要な次の A レコードを全て設定する。
〔移行計画〕
(j) Web サーバ1と Web サーバ2に関する四つの A レコード
〔マルチホーミング〕
(c) 現行の Web サーバ用のグローバル IP アドレスに,新たなグローバル IP アドレスを加え,DNS クエリに対してそれらが交互に返るようにする。
Web サーバ1,2 は DNS ラウンドロビンで負荷分散しているので,利用者が使う FQDN は一つである。その FQDN に対し,各 Web サーバに ISP1 側と ISP2 側のグローバル IP アドレスを一つずつ割り当てる(下線(c))。Web サーバ2台×ISP 2つで,グローバル IP アドレスは 4 個,A レコードも4つになる。よって FQDN 数は 1,グローバル IP アドレス数は 4 である。
〔現行ネットワーク構成〕の「2 台の Web サーバ(Web サーバ1,2)は,FW の DNS ラウンドロビン機能を使って負荷分散しており」から,同じ名前に複数のアドレスを登録していることが分かる。A レコードは FQDN と IP アドレスの組なので,1×4 で四つになる。
間違えやすい点。「四つの A レコード」から FQDN も4つと考えるのは誤りである。サーバごとに別の FQDN にすると,DNS ラウンドロビンで振り分けられない。
採点講評(IPA)
設問5では,これまでの検討内容を移行計画という軸から再確認している。設計と運用の両面から考える必要があるが,一つ一つはそれほど難しくはない。その中で,設計に関する(2),(7)及び運用に関する(5),(6)の正答率が低く,時間切れと思われる誤答が多かった。限られた時間で,全問に気配りすることは簡単ではないが,本問程度の量と深さには十分対応できるよう,日頃の学習や実業務での実践を積んでほしい。
本文中の下線(k)の FQDN に対応する機器名を,全て答えよ。
解答例
- IP-PBX,STUNサーバ1,STUNサーバ2
解説
本文の根拠
〔移行計画〕
(k) AP が名前解決しなければならない FQDN に関する A レコード(AP 内の定義には,IP アドレスではなく,FQDN を用いることにする。)
〔ブラウザを使ったビデオ電話の通信〕
図4の例では,ブラウザ2上の AP が STUN プロトコルを用いて STUN サーバ1,2から〈g2〉を得て,それをブラウザ1上の AP に通知する。
〔ブラウザを使った音声電話の通信〕
図6中の通信の前に,[ ク ] の FQDN に関する [ ケ ] クエリが,AP から [ コ ] へ発行されることによって,
AP が自分から接続する相手は,ビデオ電話では STUN サーバ1,2(図5の①,①’),音声電話では IP-PBX(図6)である。AP 内の定義には FQDN を使うので,この三つの FQDN を名前解決しなければならない。よって答えは IP-PBX,STUN サーバ1,STUN サーバ2 である。
本文は AP が「STUN サーバ1,2から〈g2〉を得て」と書き,音声電話では「ク(IP-PBX)の FQDN に関する DNS クエリが,AP から」発行されるとしている。通信相手のブラウザは SDP で通知された IP アドレスを使うので,名前解決は要らない。
間違えやすい点。Web サーバはブラウザが AP をダウンロードするときや②の SDP の交換で使うが,その A レコードは下線(j)の四つで別に数えられている。(k)に Web サーバを含めないこと。
本文中の下線(l)について,2 通りの定義ファイルが必要な機器名を答えよ。
解答例
- FW
解説
本文の根拠
〔移行計画〕
(l) 機器の変更は,あらかじめ 2 通りの定義ファイルをもたせておき,定義ファイルを指定した再起動によって行う。
図7
1-4 FW(新構成用の機能設定,中間構成用のフィルタリング設定)
図7
1-1 LB(設置,新構成用の設定,結線),1-2 L2SW2(設置,新構成用の設定,結線)
切替1で設定が変わる既存の機器は FW だけである。LB と L2SW2 は新たに設置する機器なので,新構成用の設定だけを入れておけばよい。FW は現行の設定から中間構成用の設定に変わるので,現行用と中間構成用の2通りの定義ファイルをもたせ,ファイルを指定して再起動すれば短時間で切り替えられる。問題が起きたときも,現行用のファイルで再起動すれば切り戻しができる。
図7の切替1の作業で,FW だけが「新構成用の機能設定,中間構成用のフィルタリング設定」と既存の設定を書き換える作業になっている。ISP2 は立会い試験と NS レコードの登録で,A 社の機器ではない。
間違えやすい点。LB を答えると,LB は切替1で初めて設置するので,比べる「元の定義」が無い。
本文中の下線(m)の 3 種類の通信を,それぞれ 20 字以内で答えよ。
〔①〕解答例
- 社外からWebサーバへのアクセス
〔②〕解答例
- 社内からWebサーバへのアクセス
〔③〕解答例
- 社内からインターネットへのアクセス
解説
本文の根拠
〔移行計画〕
約 1 時間,一部の利用者に情報システムを利用してもらい,(m) 3 種類の通信を発生させて,動作の正常性を確認する。
図7
ネットワークの主な用途は,施工情報管理(マルチホーミング運用開始),コールセンタ,インターネットアクセス(マルチホーミング運用開始)。
冒頭の機能の説明
施工情報管理:外出先又は社内にいる A 社の社員や施主が,タブレット端末や PC で動作する,Web ブラウザを使って,A 社データセンタの Web サーバが管理する施工情報に HTTPS プロトコルでアクセスする
切替1の後の中間構成で,マルチホーミング運用を始めるのは施工情報管理とインターネットアクセスである。施工情報管理には,社外のブラウザからの Web サーバへのアクセスと,社内のブラウザからの Web サーバへのアクセスの二つがある。インターネットアクセスは,社内からインターネットへのアクセスである。この3種類が LB と FW の変更の影響を受けるので,動作を確かめる。
図7の中間構成の用途に「(マルチホーミング運用開始)」と書かれたのがこの二つの用途である。コールセンタは公衆電話網から IP-PBX を経由する通信で,切替1の影響を受けない。
字数の詰め方(各20字)。「どこから」「どこへ」のアクセスかを書く。解答例は「社外から Web サーバへのアクセス」「社内から Web サーバへのアクセス」「社内からインターネットへのアクセス」である。三つの順序は問わない。
採点講評(IPA)
設問5では,これまでの検討内容を移行計画という軸から再確認している。設計と運用の両面から考える必要があるが,一つ一つはそれほど難しくはない。その中で,設計に関する(2),(7)及び運用に関する(5),(6)の正答率が低く,時間切れと思われる誤答が多かった。限られた時間で,全問に気配りすることは簡単ではないが,本問程度の量と深さには十分対応できるよう,日頃の学習や実業務での実践を積んでほしい。
本文中の下線(n)の確認内容を,30 字以内で述べよ。
解答例
- ISP2を経由した外向きDNS機能を確認する。
解説
本文の根拠
〔移行計画〕
(n) ドメイン登録業者に依頼する定義変更に関しては,情報システム部が正常性を確認する。利用者サービスへ直接影響しないので,その作業はサービス停止時間には含まない。
〔マルチホーミング〕
インターネット向けの DNS 機能を FW から LB へ移し,ISP2 を経由してもその DNS 機能を提供できるように,ドメイン登録業者に定義の追加を依頼する。
図7
1-3 ISP2(立会い試験,NS レコードの登録)
ドメイン登録業者に依頼するのは,ISP2 を経由しても A 社の DNS 機能に到達できるようにする定義の追加である。具体的には,ISP2 側のアドレスで LB の DNS 機能を指す NS レコード(と対応する A レコード)を上位のゾーンに登録する。確認すべきは,インターネットから ISP2 を経由して,外向きの DNS 機能が正しく応答することである。
図7の 1-3 に「NS レコードの登録」があり,〔マルチホーミング〕は目的を「ISP2 を経由してもその DNS 機能を提供できるように」としている。確認内容はこの目的が達せられたかどうかになる。
字数の詰め方(30字)。「ISP2 を経由した」「外向き DNS 機能」を残す。解答例は「ISP2 を経由した外向き DNS 機能を確認する。」である。ISP1 経由の DNS は現行でも動いているので,確認の対象にならない。
採点講評(IPA)
設問5では,これまでの検討内容を移行計画という軸から再確認している。設計と運用の両面から考える必要があるが,一つ一つはそれほど難しくはない。その中で,設計に関する(2),(7)及び運用に関する(5),(6)の正答率が低く,時間切れと思われる誤答が多かった。限られた時間で,全問に気配りすることは簡単ではないが,本問程度の量と深さには十分対応できるよう,日頃の学習や実業務での実践を積んでほしい。
本文中の下線(o)のフィルタリング変更について,切替2で許可する通信を全て挙げ,図5中の記号(①,①’,②〜④)を用いて答えよ。
解答例
- ①’,③,④
解説
本文の根拠
〔移行計画〕
(o) FW のフィルタリング変更は,新たなネットワーク構成の通信に関して変更する。
図5
①STUN サーバへのアクセス:ブラウザ1の AP と STUN サーバ1,2 の間の両方向の太い矢印。①’STUN サーバへのアクセス:STUN サーバ1,2 とブラウザ2の AP の間の両方向の太い矢印。
〔ブラウザを使ったビデオ電話の通信〕
その際,ブラウザ1,2と Web サーバ1,2間に HTTPS が使われる。
切替2で新たに使い始めるのはビデオ電話の AP 間通信で,図5の①〜④のうち FW を通り,かつ今まで許可していないものを許可する。①は社外のブラウザ1から STUN サーバへの通信で,STUN サーバは FW の外側(vlan1,vlan2)にあるので FW を通らない。①’は社内のブラウザ2から STUN サーバへの通信で,FW を通る。②は Web サーバとの HTTPS 通信で,施工情報管理で既に許可している。③と④は社外のブラウザ1と社内のブラウザ2の間の通信で,FW を通る。よって許可するのは①’,③,④である。
設問3(3)で STUN サーバを vlan1,vlan2 に置いたことと,②が「ブラウザ1,2と Web サーバ1,2間に HTTPS が使われる」ことが根拠になる。
間違えやすい点。採点講評のとおり正答率が低かった設問である。①を含めるのは,STUN サーバの置き場所を FW の内側と誤解した場合である。②を含めるのは,現行で施工情報管理の HTTPS を許可していることを見落とした場合である。音声電話は,IP-PBX のインタフェース C,D を vlan1,vlan2 に直接つなぐ(設問4(3))ので,FW を通らない。
採点講評(IPA)
設問5では,これまでの検討内容を移行計画という軸から再確認している。設計と運用の両面から考える必要があるが,一つ一つはそれほど難しくはない。その中で,設計に関する(2),(7)及び運用に関する(5),(6)の正答率が低く,時間切れと思われる誤答が多かった。限られた時間で,全問に気配りすることは簡単ではないが,本問程度の量と深さには十分対応できるよう,日頃の学習や実業務での実践を積んでほしい。
出典:平成28年度 秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)