平成27年度 秋期に実施されたITストラテジスト試験
午後Ⅱの全3問(論述式)です。問題文・設問と,問われていることの整理をそのまま読めます。
問1 ITを活用したグローバルな事業について
近年,国内の少子高齢化と市場の成熟などによって,日本企業は国内の顧客だけでなく,海外の顧客も視野に入れ,グローバルに事業を拡大する必要に迫られている。また,既に海外で事業を展開している日本企業も,為替変動,新興国の市場拡大などに伴って,グローバルで見た最適なビジネスプロセスを模索し,事業戦略を策定した上で,改革を行っている。グローバルな事業戦略には,例えば次のようなものがある。
- 金融機関の法人事業では,国内向けの金融サービス事業から,海外も含めた金融サービス事業へ,顧客を拡大する。
- アパレル企業では,これまで新興国で生産してグローバルに輸出していたSCMに,地産地消などの考え方を参考にして,生産国でも販売する。
ITストラテジストは,ITを活用したグローバルな事業を実現する際に,事業戦略を踏まえ,改革すべき業務機能を見極め,その業務機能を実行する業務組織を定義した上で,業務フローなどを描き,新しい業務の全体像を定義する。また,それを支えるITの要件と主要な機能を整理した新システムの全体イメージを作成する。その際には,次のような観点で検討することが重要である。
- グローバルで一元的に行う業務と,各国で個別に行う業務の切り分け
- 多通貨,多言語,日本と異なる法規制・商習慣,時差など
さらに,新しい業務の全体像と新システムの全体イメージを経営者に説明して,承認を得る必要がある。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
近年,国内の少子高齢化,市場の成熟などによって,日本企業は,国内の顧客だけでなく,海外の顧客も視野に入れ,グローバルに事業を拡大する必要に迫られている。
本問は,ITストラテジストが,ITを活用したグローバルな事業を実現するに当たって,改革すべき業務機能と,定義した業務組織及び新しい業務の全体像,それを支える新システムの全体イメージについて,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,ITストラテジストに必要な構想力,企画力,説明する力などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが携わった,ITを活用したグローバルな事業の概要と特性,事業戦略について,800字以内で具体的に述べよ。
問われていること
組み立ての注意
前文は,グローバルな事業戦略の例として,国内向けから海外も含めた金融サービス事業への顧客の拡大と,新興国で生産してグローバルに輸出していたSCMに,生産国でも販売することを加えることを挙げている。事業戦略は,こうした例のようにグローバルな事業としての方向を示すものとして書く。
採点講評は,グローバルな事業戦略について十分な記載がない論述を挙げている。採点講評は全問に共通して,“論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”が適切に記述されていないものと,解答字数の不足した答案も挙げている。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べた事業戦略を踏まえ,改革すべき業務機能,定義した業務組織と新しい業務の全体像,及び新システムの全体イメージについて,特に重要と考えて検討した内容とともに,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 改革すべき業務機能
- 定義した業務組織と新しい業務の全体像
- 新システムの全体イメージ
- 特に重要と考えて検討した内容
組み立ての注意
前文の順序は,事業戦略を踏まえて改革すべき業務機能を見極め,その業務機能を実行する業務組織を定義し,業務フローなどを描いて新しい業務の全体像を定義し,それを支えるITの要件と主要な機能を整理した新システムの全体イメージを作成する,というもの。この順につなげて書く。
検討の観点は,前文の例(グローバルで一元的に行う業務と各国で個別に行う業務の切り分け,多通貨,多言語,日本と異なる法規制・商習慣,時差など)が手がかりになる。
採点講評は,事業戦略にひもづいた業務改革について十分な記載がなく,システム開発,システムへの機能追加,システム統合などの記載に終始していた論述を挙げている。業務の改革を先に書き,新システムはそれを支えるものとして書く。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問イで述べた新しい業務の全体像と新システムの全体イメージを,経営者にどのように説明し,経営者にどのように評価されたか。更に改善の余地があると考えている事項を含めて,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 経営者への説明の仕方
- 経営者の評価
- 更に改善の余地があると考えている事項
組み立ての注意
説明の対象は,設問イで述べた新しい業務の全体像と新システムの全体イメージの両方である。前文は,これらを経営者に説明して承認を得る必要があるとしている。出題趣旨も,ITストラテジストに必要な説明する力を評価するとしている。
採点講評(IPA)
問1(ITを活用したグローバルな事業について)では,グローバルな事業戦略を理解した上で,業務改革案を企画し,適切な情報技術の活用案を練り上げて,経営層に進言した経験のある受験者には,論述しやすかったと思われる。一方で,グローバルな事業戦略,事業戦略にひもづいた業務改革について十分な記載がなく,システム開発,システムへの機能追加,システム統合などの記載に終始していた論述が散見された。
全問共通
全問に共通して,“論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”又は“論述の対象とする製品又はシステムの概要”が適切に記述されていないものが多く見られた。これらは論述の一部であり,適切な記述を心掛けてほしい。また,解答字数の不足した答案が例年より多く見られた。
ITストラテジストの経験と考えに基づいて,設問の趣旨を踏まえて論述することが重要である。問題文及び設問の趣旨から外れた論述や具体性に乏しい論述は,評価が低くなってしまうので,是非,留意してもらいたい。
出典:平成27年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)
問2 緊急性が高いシステム化要求に対応するための優先順位・スケジュールの策定について
企業は,厳しい競争に勝ち抜くために,新しいチャネルの開拓,市場に対応した組織編成,短いサイクルでの新製品・新サービスの開発などに取り組んでおり,情報システムの全体システム化計画で対象とした業務,組織,製品・サービスなどは変化し続けている。一方で,モバイルコンピューティング,クラウドコンピューティングなどの新しいITの活用が広がり,それらが今までにない付加価値を生んだり,コスト削減を実現したりして,事業に貢献する事例が増加している。これらを背景に,情報システムの導入・改修に関して緊急性が高いシステム化要求が,事業部門から継続的に挙げられている。
緊急性が高いシステム化要求への対応に当たっては,まず,要求が事業戦略に適合することを確認し,システム化範囲を定め,要求をどのように実現すべきかを明確にする。次に,緊急性が高いシステム化要求への対応を,全体システム化計画の中でどのように位置付けるかを検討し,優先順位・スケジュールを策定する。その際,例えば次のような観点での検討が重要である。
- 情報システム基盤の整備,アプリケーションシステムの統合,業務の見直しなどによって全体の投資削減又は相乗効果が期待できる場合,これらの実施を含めて検討する。
- 計画中又は進行中の個々の情報システムの導入・改修への影響が最小限にとどまるように検討する。
ITストラテジストは,緊急性が高いシステム化要求への対応に当たり,事業部門に対して,策定した優先順位・スケジュールによって,情報システムの導入・改修が全体システム化計画において最も効率的・効果的に進められることを説明し,承認を得なければならない。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
昨今,厳しい企業間競争に勝ち抜くこと,新しいIT活用の広がりなどを背景に,事業部門から情報システム導入・改訂に関する緊急性の高い要求が挙げられることも多い。
本問は,そのような要求への対応に当たって,全体システム化計画が最も効率的・効果的になるよう,ITストラテジストはどのようなことを検討し,どのような優先順位・スケジュールを策定したか,また,策定した優先順位・スケジュールは事業部門からどのように評価されたかについて,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,ITストラテジストに必要な構想力,分析力,洞察力,説明する力などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが事業部門から受けた情報システムの導入・改修に関する緊急性が高いシステム化要求は何か。要求の背景,事業の特性とともに,800字以内で述べよ。
問われていること
組み立ての注意
前文は,要求の背景として,業務,組織,製品・サービスなどの変化(新しいチャネルの開拓,市場に対応した組織編成,短いサイクルでの新製品・新サービスの開発など)と,新しいITの活用の広がりを挙げている。緊急性が高いと言える理由が分かるように書く。
採点講評は全問に共通して,“論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”が適切に記述されていないものと,解答字数の不足した答案を挙げている。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べた要求への対応に当たり,どのような観点で検討し,どのような優先順位・スケジュールを策定したか。特に重要と考えたことを明確にして,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 検討の観点
- 策定した優先順位・スケジュール
- 特に重要と考えたこと
組み立ての注意
前文は,要求が事業戦略に適合することを確認し,システム化範囲を定め,実現方法を明確にした上で,全体システム化計画の中でどう位置付けるかを検討して優先順位・スケジュールを策定するとしている。観点は,前文の例(情報システム基盤の整備,アプリケーションシステムの統合,業務の見直しなどによる全体の投資削減又は相乗効果,計画中又は進行中の個々の情報システムの導入・改修への影響の最小化)が手がかりになる。
採点講評は,個別システムのサブシステム,個別機能の優先順位・導入スケジュールの論述に終始しているものを挙げている。優先順位・スケジュールは,全体システム化計画の中での位置付けとして書く。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問イで述べた優先順位・スケジュールを事業部門にどのように説明し,その説明した内容に対して事業部門からどのような評価を受けたか。その評価を受けてあなたが改善したこと,又は今後,改善すべきことは何か。600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 事業部門への説明の仕方
- 事業部門から受けた評価
- 評価を受けて改善したこと,又は今後,改善すべきこと
組み立ての注意
前文は,策定した優先順位・スケジュールによって,情報システムの導入・改修が全体システム化計画において最も効率的・効果的に進められることを事業部門に説明し,承認を得るとしている。説明の中身はこの点を軸に書く。
改善したこと(又は今後,改善すべきこと)は,事業部門の評価のどの点を受けたものかが分かるように書く。
採点講評(IPA)
問2(緊急性が高いシステム化要求に対応するための優先順位・スケジュールの策定について)では,全体システム化計画の策定に関わった経験,又は全体システム化計画の下で,情報システムの導入・改修を実施したことのある受験者には論述しやすかったと思われる。一方で,個別システムのサブシステム,個別機能の優先順位・導入スケジュールの論述に終始しているものも散見された。
全問共通
全問に共通して,“論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”又は“論述の対象とする製品又はシステムの概要”が適切に記述されていないものが多く見られた。これらは論述の一部であり,適切な記述を心掛けてほしい。また,解答字数の不足した答案が例年より多く見られた。
ITストラテジストの経験と考えに基づいて,設問の趣旨を踏まえて論述することが重要である。問題文及び設問の趣旨から外れた論述や具体性に乏しい論述は,評価が低くなってしまうので,是非,留意してもらいたい。
出典:平成27年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)
問3 多様な顧客要求に応えられる組込みシステムの製品企画について
組込みシステム製品(以下,製品という)には,多様な顧客要求に応えることが求められ,要求自体もますます複雑化する傾向にある。その一方で,競合他社との価格競争力に加えて,品質向上,高信頼性,短納期化なども必要とされる。組込みシステムのITストラテジストには,そのような潮流に柔軟に対応し,受注に結び付けられる製品を企画することが求められている。そのためには,まず,市場調査,技術動向調査などを実施し,多様な顧客要求及び製品化に伴う課題について検討する。次に,その結果を基に,課題に対する施策の提案を関連部署に依頼する。その後,提案された施策について,関連部署と協議し,製品企画を立案する。その際,初期投資予算,自社の強み,保有技術,体制,リリース時期,施策の優先順位などを考慮する必要がある。例えば,システムアーキテクト,エンベデッドシステムスペシャリストなどに対して,開発の効率向上などの施策の提案を依頼した場合,提案される施策としては,次のような項目が想定される。
- 共通部の洗い出しによるプラットフォームの採用などの標準化の提案
- 市場調査,技術動向調査を基にしたオプションの用意,機能のカスタマイズの提案
- モジュール,ライブラリなどの資産の再利用による設計効率向上の提案
組込みシステムのITストラテジストは,提案された施策の妥当性を精査し,関連部署と協議しながら製品企画を立案し,施策の効果を製品リリース後に評価することが重要である。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
組込みシステム製品は,多様な顧客要求に対応することが求められる傾向にある。その一方で低コスト・短納期対応・品質向上などの要求もあり,ITストラテジストは,これら相反する要求をもくみ取りながら,製品を実現する製品企画を立案することが重要である。
本問は,市場調査などから多様な顧客要求を分析し,課題に対する施策の提案を関連部署に依頼し,その結果を基にどのように新製品を企画したかについて具体的に論述することを求めている。論述を通じて,組込みシステムにおいてITストラテジストに必要な製品戦略を策定する能力,調整力,行動力,分析力などを評価する。
設問と問われていること
設問ア
800字以内
あなたが携わった,多様な顧客要求に応えられる製品企画の概要について,製品企画に至った経緯,市場調査,技術動向調査などの結果を含め,800字以内で述べよ。
問われていること
- 製品企画の概要
- 製品企画に至った経緯
- 市場調査,技術動向調査などの結果
組み立ての注意
前文は,市場調査,技術動向調査などを実施し,多様な顧客要求及び製品化に伴う課題について検討するとしている。調査の結果は,設問イの顧客要求と課題の検討につながるように書く。
採点講評は全問に共通して,“論述の対象とする製品又はシステムの概要”が適切に記述されていないものと,解答字数の不足した答案を挙げている。
設問イ
800字以上1,600字以内
設問アで述べた製品企画において検討した,多様な顧客要求と製品化に伴う課題の内容,それに対する関連部署から提案された施策の内容,及び関連部署と協議して立案した製品企画の内容と立案が決定に至った根拠を,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 多様な顧客要求と製品化に伴う課題の内容
- 関連部署から提案された施策の内容
- 関連部署と協議して立案した製品企画の内容
- 立案が決定に至った根拠
組み立ての注意
前文の順序は,顧客要求と課題の検討,関連部署への施策の提案の依頼,提案された施策についての協議と製品企画の立案,というもの。施策の例として,プラットフォームの採用などの標準化,オプションの用意,機能のカスタマイズ,資産の再利用による設計効率向上を挙げている。
決定に至った根拠は,前文が考慮する必要があるとする事項(初期投資予算,自社の強み,保有技術,体制,リリース時期,施策の優先順位など)が手がかりになる。
採点講評は,多様な顧客要求への対応ではなく製品自体の課題の抽出など,題意から外れた論述を挙げている。課題は,多様な顧客要求に応えることに伴うものとして書く。
設問ウ
600字以上1,200字以内
設問イで述べた,関連部署から提案された施策の内容の妥当性,立案内容の評価,及び製品リリース後の施策の効果とその評価を,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 関連部署から提案された施策の内容の妥当性
- 立案内容の評価
- 製品リリース後の施策の効果とその評価
組み立ての注意
前文は,提案された施策の妥当性を精査し,施策の効果を製品リリース後に評価することが重要であるとしている。施策の妥当性,立案内容の評価,リリース後の効果と評価の3つを分けて書く。
採点講評(IPA)
問3(多様な顧客要求に応えられる組込みシステムの製品企画について)では,市場調査などを実施し,それらを基に課題の抽出,課題に対する施策を協議し,製品を企画した一連のプロセスに対し,経験のある受験者は論述しやすかったと思われる。一方で,多様な顧客要求への対応ではなく製品自体の課題の抽出など題意から外れた論述も散見された。
全問共通
全問に共通して,“論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”又は“論述の対象とする製品又はシステムの概要”が適切に記述されていないものが多く見られた。これらは論述の一部であり,適切な記述を心掛けてほしい。また,解答字数の不足した答案が例年より多く見られた。
ITストラテジストの経験と考えに基づいて,設問の趣旨を踏まえて論述することが重要である。問題文及び設問の趣旨から外れた論述や具体性に乏しい論述は,評価が低くなってしまうので,是非,留意してもらいたい。
出典:平成27年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅱ 問3(表記を一部改変)