問1 DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けた新たな情報技術の採用について
企業は,情報技術を使った新サービスの開発や既存事業の改革などの施策を企画し,DXを実現する。その施策の中で,従来の情報技術では実現できなかったことを実現するために,企業にとって利用実績の乏しい,AIやIoTなどの新たな情報技術の採用を検討することがある。
ITストラテジストは,新たな情報技術の採用に関する検討の中で,その情報技術によって施策を実施できるかどうかについて,机上確認と技術検証を行う。例えば,業務要件への適合性,業界における規制への対応,性能・拡張性・セキュリティなどの非機能要件への適合性,情報技術の利用における継続性などについて机上確認し,その後,試験的な導入やシミュレーションなどを通じて,技術検証を行う。
机上確認と技術検証を通して,事業への適用におけるその情報技術の特性を理解した上で,リスクとその対策を具体化する。例えば,AI倫理などのコンプライアンスに関するリスク,計画していた予算や体制などの経営リソースに影響を及ぼすリスクなどを確認し,それらへの対策とともに経営層に説明し,承認を得る必要がある。
あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。
出題趣旨(IPA)
企業は,DXの実現に向けて,情報技術を活用した新サービスの開発や既存事業の改革などの施策を企画する際,従来の情報技術では実現できなかった施策を実施するために,新たな情報技術を採用することがある。
本問は,ITストラテジストが,新たな情報技術の採用において,施策を実施するために情報技術について何を机上確認し,どのような技術検証を行ったか,企画を推進する上でのリスクとその対策について何を経営層に説明したかについて,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,ITストラテジストに必要な,情報技術を評価する能力,DXへの技術活用の能力,経営層への説明力などを評価する。
設問と問われていること
あなたが携わったDXの実現に向けた新たな情報技術の採用について,DXの狙い,施策の内容,検討対象となった新たな情報技術とその必要性を,事業特性とともに,800字以内で述べよ。
問われていること
- DXの狙い
- 施策の内容
- 検討対象となった新たな情報技術とその必要性
- 事業特性
組み立ての注意
前文は,従来の情報技術では実現できなかったことを実現するために,企業にとって利用実績の乏しい,AIやIoTなどの新たな情報技術の採用を検討する場面を想定している。必要性は,施策の中で従来の情報技術では何が実現できなかったのかとして書く。
採点講評は,DXの狙いが何か,なぜその情報技術が必要なのかが具体的ではない論述や,デジタル技術の導入に終始している論述を挙げている。DXの狙いは事業の変革として書き,施策と情報技術がそれにどうつながるかが分かるようにする。
採点講評は全問に共通して,“論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”と本文との整合性がとれない論述を挙げている。
設問アで述べた新たな情報技術について,施策の実施に向けて,あなたはどのような机上確認と技術検証を行ったか,その結果や工夫したこととともに,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 行った机上確認と技術検証
- その結果
- 工夫したこと
組み立ての注意
前文は,机上確認の観点として業務要件への適合性,業界における規制への対応,性能・拡張性・セキュリティなどの非機能要件への適合性,情報技術の利用における継続性を,技術検証の方法として試験的な導入やシミュレーションを挙げている。机上確認のあとに技術検証を行う順序で書く。
採点講評は,製品選定にとどまっている論述,取組の手順だけを説明し検証内容や結果が説明されていない論述,技術的な検証に終始した論述を挙げている。技術検証の結果を,経営や事業の観点からどのように評価したのかまで書く。
採点講評は全問に共通して,活用したAIについて具体性に乏しい論述を挙げている。
設問イで述べた情報技術を採用するに当たって,机上確認と技術検証を通して,あなたはどのようなリスクとその対策を具体化し,経営層にどのように説明したか,経営層からの指摘,指摘を受けて改善したこととともに,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
問われていること
- 具体化したリスクとその対策
- 経営層への説明
- 経営層からの指摘
- 指摘を受けて改善したこと
組み立ての注意
リスクは,設問イの机上確認と技術検証を通して分かった,事業への適用における情報技術の特性から具体化したものとして書く。前文は,AI倫理などのコンプライアンスに関するリスク,計画していた予算や体制などの経営リソースに影響を及ぼすリスクを例に挙げている。
採点講評は,経営層が認識すべきリスクと対策が何かを論述してほしいとしている。技術的なリスクの列挙ではなく,経営層に説明し承認を得る事柄として書く。
改善したことは,経営層からのどの指摘を受けて,何を直したかが分かるように書く。
採点講評(IPA)
問1では,昨今,取り組まれることの多いAIやIoTをテーマにした多様な論述が見受けられ,新たな情報技術を使った概念実証(PoC)のプロジェクトに携わった経験のある受験者には比較的論述しやすい題材だったと思われる。一方で,製品選定にとどまっている論述,取組の手順だけを説明し,検証内容や結果が説明されていない論述,技術的な検証に終始した論述も散見された。技術検証の結果を,経営や事業の観点からどのように評価したのか,経営層が認識すべきリスクと対策が何かを論述してほしい。また,DXの狙いが何か,なぜその情報技術が必要なのかが具体的ではない論述や,デジタル技術の導入に終始している論述も散見された。ITストラテジストとして,事業の変革に向けた取組と,情報技術を正しく理解した上で,DXを企画,推進する力を身に付けてほしい。
全問共通
全問に共通して,“論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”が適切に記述されていないものや本文と整合性がとれないものが散見された。評価の対象となるので,矛盾が生じないように適切な記述を心掛けてほしい。また,全問ともにAIを活用した論述が多く見受けられたが,活用したAIについて具体性に乏しい論述が散見された。
午後Ⅱ試験では,ITストラテジスト自身の経験と考えに基づいて,設問の趣旨を踏まえて論述することが重要である。問題文及び設問の趣旨から外れた論述や具体性に乏しい論述は,評価が低くなってしまうので,注意してほしい。
出典:令和6年度 春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)