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平成30年度 秋期 午後Ⅱ

平成30年度 秋期に実施されたITストラテジスト試験 午後Ⅱの全3問(論述式)です。問題文・設問と,問われていることの整理をそのまま読めます。

この試験について:ITストラテジスト試験について

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問1 事業目標の達成を目指すIT戦略の策定について

ITストラテジストは,事業目標の達成を目指してIT戦略を策定する。IT戦略の策定に当たっては,実現すべきビジネスモデル又はビジネスプロセスに向けて,有効なIT,IT導入プロセス,推進体制などを検討し,事業への貢献を明らかにする。

IT戦略の策定に関する取組みの例としては,次のようなことが挙げられる。

ITストラテジストは,経営層に対して,策定したIT戦略が事業目標の達成に貢献することを説明し,理解を得なければならない。また,策定したIT戦略を実行して事業目標を達成するために,ヒト・モノ・カネの経営資源の最適な配分を進言したり,現状の組織・業務手順などの見直しを進言したりすることが重要である。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。

出題趣旨(IPA)

ITストラテジストは,事業目標の達成を目指してIT戦略を策定し,経営層に対して,策定したIT戦略が事業目標の達成に貢献することを説明し,理解を得なければならない。

本問は,実現すべきビジネスモデル又はビジネスプロセスに向けて,IT戦略の策定の中で検討した有効なIT,IT導入プロセス,推進体制,事業目標達成への貢献内容など,さらに,IT戦略の実現のために経営層に進言したことを具体的に論述することを求めている。論述を通じて,ITストラテジストに必要な戦略立案力,構想力,行動力などを評価する。

設問と問われていること

設問ア 800字以内

あなたが携わったIT戦略の策定において,事業概要,事業目標,実現すべきビジネスモデル又はビジネスプロセスについて,事業特性とともに800字以内で述べよ。

問われていること

  • 事業概要
  • 事業目標
  • 実現すべきビジネスモデル又はビジネスプロセス
  • 事業特性

組み立ての注意

前文の例は,事業目標(顧客満足度の向上による市場シェアの拡大,グローバルマーケットでの売上げの大幅な増大)と,それに向けて実現するもの(顧客個別サービスの提供,生産・販売・物流の業務プロセスの革新によるグローバルサプライチェーン)を組にして挙げている。事業目標と,実現すべきビジネスモデル又はビジネスプロセスが結び付くように書く。

採点講評は全問に共通して,ビジネスモデルとビジネスプロセスを混同したり,間違った理解をしていたりと思われる論述を挙げている。ここで述べるものがどちらに当たるのかをはっきりさせて書く。

採点講評は全問に共通して,“論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”が適切に記述されていないものや,“①名称”が論述内容と整合性が取れないものも挙げている。

設問イ 800字以上1,600字以内

設問アで述べた事業目標の達成を目指して,あなたはどのようなIT戦略を策定したか。有効なIT,IT導入プロセス,推進体制,事業目標達成への貢献内容などについて,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

問われていること

  • 策定したIT戦略
  • 有効なIT
  • IT導入プロセス
  • 推進体制
  • 事業目標達成への貢献内容

組み立ての注意

有効なITは,設問アの実現すべきビジネスモデル又はビジネスプロセスに向けて有効なものとして書く。前文の例では,システムソリューション,試験導入,データ解析に優れた人材の育成や,グローバルIT基盤の整備,業務システムの刷新や新規導入,グローバル対応のための運用体制作りを検討事項に挙げている。

採点講評は,ビジネスプロセス改革,IT導入に終始している論述と,達成を目指す事業目標,実現すべきビジネスモデル又はビジネスプロセス,有効なITの関連が明確でない論述を挙げている。貢献内容は,設問アの事業目標の達成にどう貢献するのかとして書く。

設問ウ 600字以上1,200字以内

設問イで述べたIT戦略の実現のために,あなたは経営層にどのようなことを進言し,どのような評価を受けたか。評価を受けて考慮したこととともに600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

問われていること

  • 経営層に進言したこと
  • 受けた評価
  • 評価を受けて考慮したこと

組み立ての注意

進言の中身は,前文の例(ヒト・モノ・カネの経営資源の最適な配分,現状の組織・業務手順などの見直し)が手がかりになる。前文は,これらをIT戦略を実行して事業目標を達成するためのものとしている。

考慮したことは,経営層の評価のどの点を受けて,何を考慮したのかが分かるように書く。

採点講評(IPA)

問1(事業目標の達成を目指すIT戦略の策定について)では,事業目標の達成を目指してIT戦略を策定した経験がある受験者には,論述しやすかったと思われる。一方で,ビジネスプロセス改革,IT導入に終始している論述も少なくなかった。また,達成を目指す事業目標,実現すべきビジネスモデル又はビジネスプロセス,有効なITの関連が明確でない論述も散見された。IT戦略とは何かを認識し,実践での経験を積んでほしい。

全問共通

全問に共通して,“論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”又は“論述の対象とする製品又はシステムの概要”が適切に記述されていないもの,“①名称”が論述内容と整合性が取れないものが散見された。これらは,評価の対象となるので,矛盾が生じないように適切な記述を心掛けてほしい。また,ITストラテジストとして基本的に理解しておくべき用語について,正しく理解されていないと思われる論述が散見された。特に,ビジネスモデルとビジネスプロセスを混同したり,間違った理解をしていたりと思われる論述も散見された。

ITストラテジストの経験と考えに基づいて,設問の趣旨を踏まえて論述することが重要である。問題文及び設問の趣旨から外れた論述や具体性に乏しい論述は,評価が低くなってしまうので,注意してもらいたい。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅱ 問1(表記を一部改変)

問2 新しい情報技術や情報機器と業務システムを連携させた新サービスの企画について

近年,ITストラテジストは,事業戦略を実現するために,オープンAPIやタブレット端末などの新しい情報技術や情報機器(以下,新技術という)と業務システムを連携させ,顧客満足度や生産性などを向上させた新サービスを企画することがある。

銀行業では,“フィンテックを活用して顧客満足度と収益の向上を図る”という事業戦略を実現するために,フィンテック企業が提供するスマートフォン向けアプリケーションソフトウェア,オープンAPIと銀行のシステムを連携させたビジネスモデルを検討し,顧客がいつでも入出金の確認や送金ができる新サービスを企画した。

航空業では,“高品質かつ効率的な整備作業によって,安全かつ安定した運航を実現する”という事業戦略を実現するために,タブレット端末と整備管理システムを連携させた整備作業のビジネスプロセスを検討し,整備士が作業場所で,整備計画や図面の確認,点検箇所の撮影と作業報告などができる新サービスを企画した。

ITストラテジストは,新技術と業務システムを連携させた新サービスを企画する際には,事業戦略を実現するために,ビジネスモデル又はビジネスプロセスを検討し,どのような利用者にどのような便益を提供するのかを定義する。そして,投資効果を算出した上で,新サービスを企画する。

さらに,新サービスの導入では,新サービスの有効性,信頼性,安全性などを検証する必要があり,試験的な導入,機能や範囲を限定した段階的な導入などの対応策も立案した上で,経営層に提案し,承認を得ることが必要である。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。

出題趣旨(IPA)

ITストラテジストは,事業戦略を実現するために,新しい情報技術や情報機器と業務システムを連携させた新サービスを企画することがあり,その企画は経営層へ提案し,承認を得なければならない。

本問は,新しい情報技術や情報機器と業務システムを連携させた新サービスの企画において,事業戦略を実現するために,新サービスを提供する利用者,検討したビジネスモデル又はビジネスプロセス,利用者の便益,投資効果,新サービスの導入における検証内容と対応策などを明確にして,具体的に論述することを求めている。論述を通じて,ITストラテジストに必要な構想力,企画力,行動力などを評価する。

設問と問われていること

設問ア 800字以内

あなたが携わった新技術と業務システムを連携させた新サービスの企画において,企画の背景にある,事業概要,事業特性,事業戦略,新技術を採用した必要性について,800字以内で述べよ。

問われていること

  • 事業概要
  • 事業特性
  • 事業戦略
  • 新技術を採用した必要性

組み立ての注意

いずれも「企画の背景にある」ものとして問われている。前文の例は,銀行業の“フィンテックを活用して顧客満足度と収益の向上を図る”,航空業の“高品質かつ効率的な整備作業によって,安全かつ安定した運航を実現する”のように,事業戦略を一文で示している。

新技術を採用した必要性は,その事業戦略を実現するために新技術が要る理由として書くと,設問イの新サービスにつながる。

設問イ 800字以上1,600字以内

設問アで述べた事業戦略を実現するために,新技術と業務システムを連携させて,どのような新サービスを企画し,どのような利用者に提供することを検討したか。検討したビジネスモデル又はビジネスプロセス,利用者の便益,投資効果を明確にして,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

問われていること

  • 企画した新サービス
  • 提供を検討した利用者
  • 検討したビジネスモデル又はビジネスプロセス
  • 利用者の便益
  • 投資効果

組み立ての注意

前文の銀行業の例はビジネスモデルを,航空業の例はビジネスプロセスを検討している。どちらを検討したのかを明確にして書く。採点講評は全問に共通して,ビジネスモデルとビジネスプロセスを混同したり,間違った理解をしていたりと思われる論述を挙げている。

採点講評は,どのようなビジネスモデル又はビジネスプロセスを検討したかを具体的に論述せず,システム機能中心の論述に終始しているものを挙げている。また,投資効果について,前提条件,算出根拠や実現可能性などを具体的かつ定量的に記述できていない論述も挙げている。

設問ウ 600字以上1,200字以内

設問イで述べた新サービスにおいて,新サービスの導入でどのようなことを検証するためにどのような対応策を立案し,経営層に提案したか。対応策の評価と評価を受けて改善したこととともに,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

問われていること

  • 新サービスの導入で検証すること
  • 立案し経営層に提案した対応策
  • 対応策の評価
  • 評価を受けて改善したこと

組み立ての注意

検証することは,前文の例(新サービスの有効性,信頼性,安全性など)が,対応策は前文の例(試験的な導入,機能や範囲を限定した段階的な導入など)が手がかりになる。何を検証するための対応策なのかが分かるように,両者を対にして書く。

改善したことは,経営層の評価のどの点を受けて,対応策の何を直したかが分かるように書く。

採点講評(IPA)

問2(新しい情報技術や情報機器と業務システムを連携させた新サービスの企画について)では,新技術と業務システムを連携させた新サービスの企画を行った経験がある受験者には,論述しやすかったと思われる。一方で,事業戦略を実現するために,どのようなビジネスモデル又はビジネスプロセスを検討したかを具体的に論述せず,システム機能中心の論述に終始しているものも散見された。また,企画に必須である投資効果について,前提条件,算出根拠や実現可能性などを具体的かつ定量的に記述できていない論述も少なくなかった。投資効果の算出方法について理解し,実践で深く検討する経験を積んでほしい。

全問共通

全問に共通して,“論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”又は“論述の対象とする製品又はシステムの概要”が適切に記述されていないもの,“①名称”が論述内容と整合性が取れないものが散見された。これらは,評価の対象となるので,矛盾が生じないように適切な記述を心掛けてほしい。また,ITストラテジストとして基本的に理解しておくべき用語について,正しく理解されていないと思われる論述が散見された。特に,ビジネスモデルとビジネスプロセスを混同したり,間違った理解をしていたりと思われる論述も散見された。

ITストラテジストの経験と考えに基づいて,設問の趣旨を踏まえて論述することが重要である。問題文及び設問の趣旨から外れた論述や具体性に乏しい論述は,評価が低くなってしまうので,注意してもらいたい。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅱ 問2(表記を一部改変)

問3 組込みシステムの製品企画戦略における市場分析について

組込みシステムの市場は,IoT,AIなどの新技術の影響で,新製品の投入が活発化している。新製品を企画する際には,同業他社の動向などを調査して優位性を確保し,更に新技術の潮流を把握する必要がある。その上で市場の分析手法を用いて,市場に投入する新製品の売上高,利益率,販売数などを試算し,その結果を勘案して戦略を立案する。

市場の分析手法として,市場成長率を縦軸に,市場占有率を横軸にとり,全体を4象限に分割し,当該企画製品がどの象限に該当するかを分析する手法がある。市場占有率は,新製品と類似の製品を投入している先行メーカを参考にしながら試算し,目的の象限に合致するように戦略を立案する。例えば,市場成長率が高く,市場占有率が低い場合は,拡大戦略を立案する。具体的には,販売促進・販売代理店強化・積極的な展示会への出展などで訴求力を高め,更に利用者の要求情報などを基に新たな機能を追加する。これに対し,市場占有率の拡大が見込めない場合は,参入を取り止めたり,調査した市場から別の市場へと切り替えたりする戦略もある。

別の手法として,市場の魅力などを縦軸に,当該企画製品の優位性などを横軸にとり,全体を9象限に分割する手法もある。特徴として,前述の手法と比較したとき,自社に合った指標を選択できる利点がある。その一方で,内部データを多く使用するので同業他社との比較が難しい,主観的な分析となるなどの懸念もある。

組込みシステムの新製品を企画する際に,ITストラテジストに求められるのは,投入する市場の売上規模,市場成長率,市場占有率などを調査・分析し,その分析結果から製品投入の戦略を立案することである。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。

出題趣旨(IPA)

組込みシステムの市場は,IoT,AIなどによって拡大している。そのような状況から同業他社の動向などを調査し,優位性を確保できる製品を投入する必要がある。ITストラテジストは,戦略を立てるために市場を調査し,詳細な分析を実施し,製品企画を立案することが求められている。

本問は,市場の調査において,どのような観点で分析手法を選定し,その分析結果を基にどのように製品戦略に生かしたか,及び市場参入をどのように評価したかについて論述することを求めている。論述を通じて,組込みシステムのITストラテジストに必要な調査力,分析力,製品企画戦略を策定する能力などを評価する。

設問と問われていること

設問ア 800字以内

あなたが企画した組込みシステムの新製品の概要・特徴及び企画に至った経緯について,800字以内で述べよ。

問われていること

  • 新製品の概要・特徴
  • 企画に至った経緯

組み立ての注意

前文は,新製品を企画する際に,同業他社の動向などを調査して優位性を確保し,新技術の潮流を把握する必要があるとしている。経緯は,こうした背景から新製品の企画に至った流れとして書くと,設問イの市場の調査につながる。

採点講評は全問に共通して,“論述の対象とする製品又はシステムの概要”が適切に記述されていないものや,“①名称”が論述内容と整合性が取れないものを挙げている。

設問イ 800字以上1,600字以内

設問アで述べた新製品の投入を考えた市場について,どのように調査したか。分析手法の選定理由,分析方法,分析内容及び立案した戦略について,800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

問われていること

  • 市場の調査の仕方
  • 分析手法の選定理由
  • 分析方法
  • 分析内容
  • 立案した戦略

組み立ての注意

前文は分析手法として,市場成長率と市場占有率で4象限に分割する手法と,市場の魅力などと当該企画製品の優位性などで9象限に分割する手法を挙げ,後者の利点(自社に合った指標を選択できる)と懸念(同業他社との比較が難しい,主観的な分析となる)も示している。選定理由は,こうした特徴を踏まえて,投入市場に合う手法を選んだ理由として書く。

採点講評は,どのように調査したかの論述がないものと,分析について触れられず単に市場占有率などの結果だけを説明した論述を挙げている。調査の仕方と分析の過程を書いた上で,その分析結果から戦略を立案した流れにする。出題趣旨も,その分析結果を基にどのように製品戦略に生かしたかを求めている。

設問ウ 600字以上1,200字以内

設問イで述べた市場の調査方法,分析内容は妥当であったか。戦略の評価及び市場参入の評価とともに,600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。

問われていること

  • 市場の調査方法,分析内容の妥当性
  • 戦略の評価
  • 市場参入の評価

組み立ての注意

妥当性を問われているのは,設問イで述べた調査方法と分析内容である。

前文は,市場占有率の拡大が見込めない場合は,参入を取り止めたり,別の市場へと切り替えたりする戦略もあるとしている。出題趣旨も市場参入をどのように評価したかを求めている。市場参入の評価は,設問イで立案した戦略の評価と分けて書く。

採点講評(IPA)

問3(組込みシステムの製品企画戦略における市場分析について)では,市場への新製品の投入が活発化している状況において製品を企画する際,投入する市場を的確に分析し,その分析結果から適切な製品投入戦略を立案することについて論述を求めた。多くの論述は,投入市場に適合する分析手法を理解し,それに沿った適切な戦略の立案を論じていた。一方で,どのように調査したかの論述がないもの,分析について触れられず単に市場占有率などの結果だけを説明した論述も散見された。

全問共通

全問に共通して,“論述の対象とする構想,計画策定,システム開発などの概要”又は“論述の対象とする製品又はシステムの概要”が適切に記述されていないもの,“①名称”が論述内容と整合性が取れないものが散見された。これらは,評価の対象となるので,矛盾が生じないように適切な記述を心掛けてほしい。また,ITストラテジストとして基本的に理解しておくべき用語について,正しく理解されていないと思われる論述が散見された。特に,ビジネスモデルとビジネスプロセスを混同したり,間違った理解をしていたりと思われる論述も散見された。

ITストラテジストの経験と考えに基づいて,設問の趣旨を踏まえて論述することが重要である。問題文及び設問の趣旨から外れた論述や具体性に乏しい論述は,評価が低くなってしまうので,注意してもらいたい。

出典:平成30年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅱ 問3(表記を一部改変)