平成26年度 秋期に実施されたシステムアーキテクト試験
午後Ⅰの全4問(記述式)です。事例本文・設問・解答例と解説をそのまま読めます。
この試験について:システムアーキテクト試験について
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問1 社内システムの強化・改善
社内システムの強化・改善に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。
A 社は,設備機械メーカ B 社の子会社で,B 社が販売した設備機械の改修,保守を行っている保守サービス会社である。このたび,社内システムの強化・改善を行うことにした。
〔社内システムの強化・改善の目的〕
A 社では,設備機械の改修,定期保守の受注案件単位に,工事管理番号(以下,工番という)を採番し,工番が採番された案件(以下,案件という)ごとに,見積りから受注,手配,工事実施,顧客検収,売上,請求,入金,損益までを管理している。しかし,現行システムではそれらが部分的に実装されているだけなので,一元的に管理できていない。
そこでこのたび,案件の発生から完了までを一元的に管理するシステムを構築し,顧客サービスの向上と,進捗管理,損益管理などの社内管理の強化につなげることにした。
〔案件の発生から完了までの現行業務の流れ〕
① 顧客からの,設備機械の不具合対応要請や改造要求などの改修の依頼については,現場に出向いて,改修の内容を確認した後,見積金額のベースとなる予定原価を算定して,顧客に見積りを提示する。顧客と見積りを合意した後,受注となり,工番を採番する。 ② 定期保守は,基本契約を事前に締結しているが,保守時期が到来するたびに,付帯作業も含めた見積金額のベースとなる予定原価を算定し,A 社から顧客に見積金額の通知を行い,顧客との合意後,定期保守の受注として工番を採番する。 ① 案件の作業時期から,手配計画を作成する。部品の手配計画として,改修及び保守に必要な部品の所要量を計算し,調達時期を決定する。また,作業の手配計画として,案件の作業量を見積もり,作業期間に合わせた作業員,機材の手配を決定する。社内の作業員だけで作業が間に合わないときは,外注の手配を計画に含める。 ② 部品の手配計画に基づき,部品手配として発注を行う。 ③ 作業の手配計画に基づき,作業手配として作業指示と部品の出庫指示を行う。また,外注を手配する必要があるときは,外注先に発注を行う。 現場で改修作業,保守作業を実施する。作業の終了後に作業実績報告を行い,外注した作業については,外注検収報告を行う。顧客検収を受けた後に顧客検収報告を行う。作業実績報告では,作業員別作業時間,改修及び保守に使用した部品の使用量,作業員の出張滞在費,部品・工事機材の運搬費などを報告する。
① 顧客検収報告に基づき,売上を計上し,締め日に請求を行う。 ② 顧客からの入金額が,当該案件の売上額と一致していることを確認する。 ① 工番別原価要素ごとに,実績原価集計を行う。集計する原価要素には,部品費,労務費,外注費及び直接経費がある。直接経費は,作業員の出張滞在費と部品・工事機材の運搬費である。 ② 入金を確認し,工番別実績原価を集計して,工番別損益を確定する。この時点で,案件は完了となる。 〔社内システムの強化・改善の内容〕
案件の発生から完了までの業務の流れの中で,現在検討している社内システムの強化・改善の内容は,次のとおりである。
(1) 現行の受注システムでは,受注登録時に人が工番を採番し,入力していたが,強化・改善後は,受注システムに,見積書及び定期保守通知書の作成処理を新規に追加し,その中で工番の自動採番を行う。改修については,見積書を作成後,管理者の承認を受け,承認登録する。定期保守については,付帯作業の見積金額を含む定期保守通知書の作成後,管理者の承認を受け,承認登録する。いずれも,管理者の承認がなければ工番の採番はできない。承認された見積書及び定期保守通知書を顧客に提示し,合意後に受注となる。 (2) 見積りの段階で,原価要素別に予定原価を登録する。 (3) 受注システムでの受注登録は,入力の負担を軽減するために,改修では見積書の内容を,定期保守では定期保守通知書の内容を引き継いで登録できるようにする。 (4) 部品手配及び作業手配は,現行の購買管理システム及び作業管理システムを利用する。購買管理システムの機能には,部品所要量計算,部品発注・検収処理,外注発注・検収処理がある。作業管理システムの機能には,作業予定登録,作業指示処理,部品出庫指示処理,作業実績処理,顧客検収登録がある。 (5) 案件全体の進捗と損益の管理のために,工番別進捗管理システムと工番別損益管理システムを新規に構築する。これらのシステムで必要となる情報は,できるだけ現行システムから取得できるようにする。 〔工番別進捗管理システムと工番別損益管理システムの概要〕
現行システムと,工番別進捗管理システム及び工番別損益管理システムとの関連を図 1 に示す。
図1 現行システムと工番別進捗管理システム及び工番別損益管理システムとの関連
工番別進捗管理システムでは,案件の発生から完了までの進捗状況を工番別進捗マスタ上で管理する。
① 案件の発生から完了までに行われる業務上の各機能(以下,業務機能という)について,システムで終了とするタイミングを,業務機能終了タイミング表として表 1 に示す。
表1 業務機能終了タイミング表
② 手配計画の中で,手配の予定を工番別進捗マスタに登録するとき,作業時期からみて,手配の整合性をチェックし,問題があるときは,警告を表示する。 工番別損益管理システムでは,工番ごとの売上,原価,損益及び入金額の予定と実績を工番別損益マスタ上で管理する。また,原価については,原価要素別に管理する。賃率マスタは,作業員の資格別の時間当たり単価を管理している。
見積時に,予定売上の登録を行い,顧客検収報告の登録時に,実績売上として登録する。
予定原価は,見積段階では,作業は社内の作業員だけで行うものとみなし,原価要素別に部品費,労務費,直接経費を見積もり,登録する。
部品費は,作業実績報告で登録された,実際に使用した部品の費用を計上する。 労務費は,作業実績報告から計算し,計上する。 外注費は,購買管理システムからの外注検収時の金額を計上する。 直接経費は,作業実績報告で登録された,作業員の出張滞在費,部品・工事機材の運搬費を計上する。 損益は,予定売上と予定原価の差額を予定損益として,実績売上と実績原価の差額を実績損益として計算する。
入金予定は,受注時点での売上額を入金予定額とし,入金実績は現行の会計システムからの入金情報によって更新する。
出題趣旨(IPA)
顧客サービスの向上や社内管理の強化のために,社内システムの強化・改善を図ることが多い。本問は,保守サービス会社における設備機械の改修や保守の工事管理を題材として,工事進捗管理や工事損益管理などの業務要件をシステム要件へ具体化していくことや,関連システムとの情報連携をどうとるべきかなどについて,具体的な記述を求めている。本問では,業務面からの要求を把握する能力,業務要件をシステム要件として定義していく能力を評価する。
採点講評(問全体・IPA)
問1では,保守サービス会社を例にとり,基幹業務系システムの強化・改善に関するシステム設計について出題した。全体として正答率は高かった。
システムアーキテクトとして,業務要件を十分に理解した上で,適切なシステム要件の定義,設計を行えるよう心掛けてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
30字以内
工番の採番は,強化・改善後の受注システムの中で,どのタイミングで行うべきか。30 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔社内システムの強化・改善の内容〕(1)
強化・改善後は,受注システムに,見積書及び定期保守通知書の作成処理を新規に追加し,その中で工番の自動採番を行う。
〔社内システムの強化・改善の内容〕(1)
改修については,見積書を作成後,管理者の承認を受け,承認登録する。定期保守については,付帯作業の見積金額を含む定期保守通知書の作成後,管理者の承認を受け,承認登録する。いずれも,管理者の承認がなければ工番の採番はできない。
強化・改善後は,見積書及び定期保守通知書の作成処理の中で工番を自動採番する。見積書も定期保守通知書も,作成した後に管理者の承認を受けて承認登録する流れで,本文は「管理者の承認がなければ工番の採番はできない」と明記している。したがって採番は,見積書又は定期保守通知書の承認が登録された時点で行う。
作成しただけの段階では承認前なので採番できず,受注登録時では作成処理の中で採番するという強化・改善の内容に合わない。講評も,“見積書又は定期保守通知書の作成時”“受注登録時”という誤答を挙げている。表1 の番号1 と番号2 がそれぞれ“承認が登録されたとき”を終了のタイミングにしているのも,ここで次の業務(受注)へ進むことを示している。
30字で「見積書又は定期保守通知書」の両方を挙げ,「承認が登録されたとき」と結ぶ。解答例は「見積書又は定期保守通知書の承認が登録されたとき」で23字。
採点講評(IPA)
設問1は,(1),(2)とも正答率が高かったが,(1)では,“見積書又は定期保守通知書の承認が登録されたとき”という解答に対し,“見積書又は定期保守通知書の作成時”,“受注登録時”といった誤った解答が散見された。(2)では,顧客との契約上での,案件の完了時期を問う問題であったが,“実績原価集計が終了したとき”,“工番損益が確定したとき”といった,社内的な完了時期の解答が散見された。
設問1(2)
40字以内
顧客との契約上での,案件の完了時期を,40 字以内で述べよ。
解答例
顧客からの入金額が,当該工番の売上額と一致していることを確認したとき
解説
本文の根拠
〔案件の発生から完了までの現行業務の流れ〕(4) 売上・請求・入金
② 顧客からの入金額が,当該案件の売上額と一致していることを確認する。
〔案件の発生から完了までの現行業務の流れ〕(5) 工番別損益管理
② 入金を確認し,工番別実績原価を集計して,工番別損益を確定する。この時点で,案件は完了となる。
顧客との契約は,改修・保守の作業を実施して顧客検収を受け,売上を請求し,その代金が支払われることで果たされる。顧客の側から見た最後の行為は入金なので,契約上の完了時期は,顧客からの入金額が当該工番の売上額と一致していることを確認したときになる。
本文の業務の流れでは,(4)②で入金額が売上額と一致していることを確認し,その後の(5)②で工番別実績原価を集計して工番別損益を確定した時点を「案件は完了」としている。しかし実績原価の集計や損益の確定は A 社の社内管理の処理で,顧客は関わらない。講評も,“実績原価集計が終了したとき”“工番損益が確定したとき”という社内的な完了時期の解答が散見されたとしている。問われているのは「顧客との契約上での」完了時期である。
40字で「顧客からの入金額」「当該工番の売上額と一致」「確認したとき」を入れる。解答例は「顧客からの入金額が,当該工番の売上額と一致していることを確認したとき」で34字。
採点講評(IPA)
設問1は,(1),(2)とも正答率が高かったが,(1)では,“見積書又は定期保守通知書の承認が登録されたとき”という解答に対し,“見積書又は定期保守通知書の作成時”,“受注登録時”といった誤った解答が散見された。(2)では,顧客との契約上での,案件の完了時期を問う問題であったが,“実績原価集計が終了したとき”,“工番損益が確定したとき”といった,社内的な完了時期の解答が散見された。
設問2
30字以内
手配計画の中で,手配の整合性をチェックしている。作業手配での作業員,外注,機材の手配の他に,何がどのように計画されているかをチェックしているか。30 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔案件の発生から完了までの現行業務の流れ〕(2) 手配計画・部品手配・作業手配
① 案件の作業時期から,手配計画を作成する。部品の手配計画として,改修及び保守に必要な部品の所要量を計算し,調達時期を決定する。また,作業の手配計画として,案件の作業量を見積もり,作業期間に合わせた作業員,機材の手配を決定する。
〔工番別進捗管理システムと工番別損益管理システムの概要〕(1)
② 手配計画の中で,手配の予定を工番別進捗マスタに登録するとき,作業時期からみて,手配の整合性をチェックし,問題があるときは,警告を表示する。
手配計画には,作業の手配計画と部品の手配計画の二つがある。作業の手配計画は作業員,機材(間に合わなければ外注)の手配で,設問はこれらを除いた「他に」何をチェックしているかを問うているので,残るのは部品の手配計画である。部品の手配計画では,必要な部品の所要量を計算し,調達時期を決定する。
整合性のチェックは「作業時期からみて」行う。作業の時期に部品が届いていなければ作業ができないので,部品手配が作業時期に合わせて計画されているかを確かめることになる。講評は,作業手配や原価に関する解答が多く正答率が低かったとしている。作業員・外注・機材は設問文が既に除いており,原価は手配の整合性とは関係がない。
30字で「何が」に当たる「部品手配」と,「どのように」に当たる「作業時期に合わせて計画されているか」を書く。解答例は「部品手配が,作業時期に合わせて計画されているか」で23字。
採点講評(IPA)
設問2は,正答率が低かった。手配計画には,作業の手配計画と部品の手配計画があり,ここでは部品の手配計画に関して問うているが,作業手配や原価に関しての解答が多く見られた。
設問3(1)
解答欄4つ
作業手配及び工事実施関連の業務機能のうち,購買管理システムからの情報に基づき,終了と判断する業務機能を表 1 の番号から二つ挙げ,判断のために取得すべき情報を,それぞれ 15 字以内で述べよ。
〔備考〕①と②は順不同
解説
本文の根拠
〔社内システムの強化・改善の内容〕(4)
購買管理システムの機能には,部品所要量計算,部品発注・検収処理,外注発注・検収処理がある。作業管理システムの機能には,作業予定登録,作業指示処理,部品出庫指示処理,作業実績処理,顧客検収登録がある。
表1
8:作業手配・外注発注,外注先への発注書が発行されたとき。
表1
11:工事実施・外注検収,外注検収報告が登録されたとき。
表1 で作業手配及び工事実施関連の業務機能は,番号7(作業指示),8(外注発注),9(部品出庫),10(作業実施),11(外注検収)の五つである。このうち作業指示・部品出庫・作業実施は作業管理システムの機能(作業指示処理,部品出庫指示処理,作業実績処理)に当たる。購買管理システムの機能は部品所要量計算,部品発注・検収処理,外注発注・検収処理なので,購買管理システムからの情報で終了と判断するのは外注に関わる番号8 と番号11 である。
取得すべき情報は,表1 の終了のタイミングから決まる。番号8 は「外注先への発注書が発行されたとき」なので外注先への発注書発行情報,番号11 は「外注検収報告が登録されたとき」なので外注検収報告の登録情報を取得する。講評は,部品手配関連の業務機能(番号5・6)を挙げた誤答が多かったとしている。部品の発注・検収も購買管理システムの機能だが,表1 では“部品手配”に分類され,作業手配・工事実施関連ではない。
情報はそれぞれ15字で,表1 の終了タイミングの言葉を名詞の形に直して書く。解答例は「外注先への発注書発行情報」(12字)と「外注検収報告の登録情報」(11字)。①と②は順不同。
採点講評(IPA)
設問3(1)は,二つ挙げる業務機能のうち,一つは正答率が高く,もう一つは正答率が低かった。誤答の多くは,作業手配及び工事実施関連の業務機能ではなく,部品手配関連の業務機能を挙げた解答であった。
設問3(2)
解答欄2つ
業務機能を終了とするタイミングについて,表 1 中のa ,b に入れる適切な内容を,それぞれ 20 字以内で述べよ。
解説
本文の根拠
〔社内システムの強化・改善の内容〕(1)
定期保守については,付帯作業の見積金額を含む定期保守通知書の作成後,管理者の承認を受け,承認登録する。
表1
1:見積り・改修,見積書の承認が登録されたとき。
〔工番別進捗管理システムと工番別損益管理システムの概要〕(2) ① 売上の登録
見積時に,予定売上の登録を行い,顧客検収報告の登録時に,実績売上として登録する。
a は“見積り・定期保守”の終了タイミングである。改修の見積りは番号1 で「見積書の承認が登録されたとき」に終了とする。定期保守では,見積書に当たるものが付帯作業の見積金額を含む定期保守通知書で,作成後に管理者の承認を受けて承認登録する。よって a は「定期保守通知書の承認が登録されたとき」になる。
b は“顧客検収・売上”の終了タイミングである。現行業務では顧客検収を受けた後に顧客検収報告を行い,売上はその顧客検収報告に基づいて計上する。工番別損益管理システムでも,顧客検収報告の登録時に実績売上を登録する。顧客検収と売上の両方が済むのは顧客検収報告が登録されたときで,作業管理システムの機能“顧客検収登録”がこれに当たる。
それぞれ20字で,表1 の他の行と同じ「〜が登録されたとき」の形にそろえる。解答例は a が「定期保守通知書の承認が登録されたとき」で18字,b が「顧客検収報告が登録されたとき」で14字。
設問4(1)
予定原価の原価要素のうち,見積時には設定できず,作業計画の立案時に初めて設定できる原価要素がある。その原価要素を答えよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔工番別進捗管理システムと工番別損益管理システムの概要〕(2) ② 予定原価の登録
予定原価は,見積段階では,作業は社内の作業員だけで行うものとみなし,原価要素別に部品費,労務費,直接経費を見積もり,登録する。
〔案件の発生から完了までの現行業務の流れ〕(2) 手配計画・部品手配・作業手配
社内の作業員だけで作業が間に合わないときは,外注の手配を計画に含める。
〔案件の発生から完了までの現行業務の流れ〕(5) 工番別損益管理
集計する原価要素には,部品費,労務費,外注費及び直接経費がある。
原価要素は部品費,労務費,外注費,直接経費の四つである。見積段階では作業を社内の作業員だけで行うものとみなすので,予定原価として登録するのは部品費,労務費,直接経費の三つで,外注費が抜けている。
外注を使うかどうかは,手配計画で作業期間に合わせた作業員の手配を決めるときに,社内の作業員だけで間に合わないと分かって初めて決まる。したがって外注費は,見積時には設定できず,作業計画の立案時に初めて設定できる原価要素である。
字数の制限はない。本文の原価要素の名前どおり「外注費」と答える。「外注」だけでは原価要素の名前にならない。
設問4(2)
労務費の実績原価は,作業実績報告で報告された作業員全員の労務費になる。作業員一人一人の労務費は,どのように計算されるか。計算式を答えよ。
解答例
作業員の作業時間実績×作業員の資格別の時間当たり単価
解説
本文の根拠
〔工番別進捗管理システムと工番別損益管理システムの概要〕(2)
賃率マスタは,作業員の資格別の時間当たり単価を管理している。
〔案件の発生から完了までの現行業務の流れ〕(3) 工事実施・顧客検収
作業実績報告では,作業員別作業時間,改修及び保守に使用した部品の使用量,作業員の出張滞在費,部品・工事機材の運搬費などを報告する。
〔工番別進捗管理システムと工番別損益管理システムの概要〕(2) ③ 実績原価の収集
労務費は,作業実績報告から計算し,計上する。
〔案件の発生から完了までの現行業務の流れ〕(5) 工番別損益管理
直接経費は,作業員の出張滞在費と部品・工事機材の運搬費である。
労務費は作業実績報告から計算する。作業実績報告のうち作業員に関わる時間の情報は作業員別作業時間で,工番別損益管理システムの賃率マスタは作業員の資格別の時間当たり単価を管理している。作業員一人一人の労務費は,その作業員の作業時間実績に,その作業員の資格別の時間当たり単価を掛けて求める。
作業実績報告には作業員の出張滞在費も含まれるが,本文は出張滞在費を部品・工事機材の運搬費とともに直接経費と定めている。講評も,直接経費である出張滞在費まで労務費に含めた解答が散見され,正答率が低かったとしている。原価要素は別々に集計するので,労務費に直接経費を足すと二重に計上してしまう。
字数の制限はない。計算式なので「作業時間実績」と「資格別の時間当たり単価」の掛け算で書く。解答例は「作業員の作業時間実績×作業員の資格別の時間当たり単価」。
採点講評(IPA)
設問4(2)は正答率が低かった。労務費の計算方法を問う問題であったが,直接経費である出張滞在費まで含めた解答が散見された。
出典:平成26年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問1(表記を一部改変)
問2 物流センタのシステム構築
物流センタのシステム構築に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。
C 社は,関東地方を中心に日用雑貨品の製造・販売を行っている。このたび物流センタの新設に伴い,物流センタシステムを新規に構築することになった。
〔現在の受注・出荷業務及びシステム化状況〕
(1) 商品は,見込生産をしており,生産後,決められた配分割合で各営業所に配送し,各営業所で在庫を保持している。 (2) 顧客は,雑貨卸問屋及び量販店が主であり,担当する顧客が営業所ごとに決められている。商品の注文は,営業担当者が直接顧客から受けるか,顧客から営業所への電子メール,電話,ファックスで受けている。 (3) 受注は,各営業所で入力し,営業所サーバで管理している営業所在庫から引き当てる。在庫引当てができた受注は,システムで出荷関連の帳票を発行して出荷する。 (4) 営業所在庫で引当てができなかった受注は,他営業所に在庫の有無を確認し,在庫があれば受注データをその営業所に送信し,出荷を依頼する。 (5) 他営業所にも在庫がない場合は,工場サーバに自営業所への出庫依頼データを送信する。工場は,受けた出庫依頼を追加の生産計画として取り込み,その結果を営業所への出庫予定データとして送信する。営業所は,その出庫予定(営業所にとっての入荷予定)が,受注した納期に影響する場合は,営業担当者が顧客と納期調整を行い,その結果を受注変更として登録する。 (6) 顧客への出荷データは売上データとして,営業所サーバから夜間に本社へ送信され,本社サーバで売上計上,請求・入金処理が行われる。売上は,受注した営業所への計上が原則であるが,他営業所から出荷した場合は,売上の一部が出荷手数料として,出荷した営業所に振替計上される。 〔物流センタ新設後の業務概要〕
新設した物流センタで商品在庫を集中管理し,顧客への出荷は全て物流センタから行う。物流センタには,物流センタサーバを導入し,営業所の受注処理を行う。
現在検討している,物流センタ新設後の業務概要は,次のとおりである。
① 顧客からの受注は,各営業所から物流センタサーバに登録し,出荷予定,出荷実績,在庫引当てなどの状況を,随時照会できるようにする。 ② 受注登録時に,物流センタの商品在庫の引当てを行い,結果を出荷予定ファイルに出力する。 ③ 物流センタの商品別在庫を管理する在庫マスタの在庫関連項目として,実在庫,引当済実在庫,入荷予定在庫及び引当済入荷予定在庫を設ける。受注登録時の在庫引当ては,これらの在庫情報から算出した引当可能在庫に対して行われる。引当可能在庫は,次の式で算出する。 引当可能在庫 = a − b + c −(c のうち引当済みのもの)
① 物流センタサーバは,工場サーバから入荷予定情報を受信し,在庫マスタの入荷予定在庫を更新するとともに,翌日分の入荷予定表を出力する。工場からの入荷時に,入荷予定表と現品の照合チェックを行う。 ② 入荷実績を物流センタの受入場の端末から入力し,保管庫に棚入れするための棚入指示表を出力するとともに,在庫マスタの実在庫,引当済実在庫,入荷予定在庫及び引当済入荷予定在庫を更新し,棚番別在庫ファイルの棚入指示済在庫を更新する。 ① 棚入指示表に基づき,商品を保管庫の棚に入れ,ポータブル端末から棚入実績を入力し,物流センタサーバに送信する。 ② 保管庫では,1 種類の商品を一つ以上の棚に保管している。保管庫の在庫管理は,物流センタサーバの棚番別在庫ファイルで行い,棚入実績によって,棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚入指示済在庫を更新する。 ③ 適正在庫を維持するために,在庫マスタに在庫補充点を新たに設定する。在庫量が在庫補充点以下になると,システムで一定量の在庫補充のオーダを生成し,工場サーバに送信する。在庫補充点には,在庫補充のリードタイム内での欠品を防止するための安全在庫が含まれている。 ① 保管庫で,翌日出荷予定の棚出指示表を出力し,棚番別在庫ファイルの棚出指示済在庫を更新する。棚出指示表に基づいて棚出しをした後,ポータブル端末から棚出実績を入力し,物流センタサーバに送信する。 ② 棚出実績によって,棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚出指示済在庫を更新する。 ① 出荷場で,翌日出荷予定の出荷予定表と出荷ラベルを出力する。棚出しされた商品を出荷場で段ボール箱に梱包し,出荷ラベルを貼り,納品先別にそろえておく。 ② 翌日,商品を引取りに来た運送業者のトラックに段ボール箱を積み込む。その出荷実績を出荷場の端末から入力し,受注の消込み,在庫マスタの実在庫,引当済実在庫を更新するとともに,納品伝票などの出荷関連帳票を出力する。 ③ 物流センタからの出荷時点で,受注した営業所の売上として計上される。売上データは,夜間に本社サーバに送信し,本社サーバで売上集計処理,請求・入金処理を行う。 棚番別在庫ファイルのレイアウトを図 1 に,(4)棚出しから(5)出荷までの業務フローを図 2 に示す。
図1 棚番別在庫ファイルのレイアウト
図2 棚出しから出荷までの業務フロー
〔棚出し関連及び出荷関連の処理記述書〕
棚出し関連の処理記述書を表 1 に,出荷関連の処理記述書を表 2 に示す。
表1 棚出し関連の処理記述書
表2 出荷関連の処理記述書
出題趣旨(IPA)
業務の効率向上のために,業務の仕組みを変え,併せて情報システムを再構築することが多い。本問は,物流センタの新設に伴う,物流センタシステムの新規構築を題材として,受注から出荷までの業務構造の変更に合わせて,在庫情報の処理設計,物流センタ内での物の動き及び業務の流れに沿った処理設計を行うことについて,具体的な記述を求めている。本問では,商品の入荷から出荷までの業務の流れ,在庫引当ての業務などを正しく理解し,処理設計を適切に行う能力を評価する。
採点講評(問全体・IPA)
問2では,物流センタの新設を例にとり,業務の変更に合わせたシステム再構築での設計について出題した。全体として正答率は高かった。
システムアーキテクトとして,業務及びシステム要件を十分に理解した上で,適切な処理設計,ファイル設計が行えるよう心掛けてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
解答欄3つ
受注登録時の在庫引当てにおいて,引当対象となる引当可能在庫の算出式のa 〜c に入れる適切な字句を答えよ。
解説
本文の根拠
〔物流センタ新設後の業務概要〕(1) 受注・在庫引当て
③ 物流センタの商品別在庫を管理する在庫マスタの在庫関連項目として,実在庫,引当済実在庫,入荷予定在庫及び引当済入荷予定在庫を設ける。受注登録時の在庫引当ては,これらの在庫情報から算出した引当可能在庫に対して行われる。
〔物流センタ新設後の業務概要〕(1) 受注・在庫引当て
引当可能在庫 = a − b + c −(c のうち引当済みのもの)
〔物流センタ新設後の業務概要〕(1) 受注・在庫引当て
② 受注登録時に,物流センタの商品在庫の引当てを行い,結果を出荷予定ファイルに出力する。
在庫マスタの在庫関連項目は,実在庫,引当済実在庫,入荷予定在庫,引当済入荷予定在庫の四つである。引当てに使えるのは,今ある在庫のうちまだ引き当てていない分と,これから入荷する在庫のうちまだ引き当てていない分である。式の前半が「a − b」,後半が「c −(c のうち引当済みのもの)」の形なので,a は実在庫,b は引当済実在庫,c は入荷予定在庫に当たる。
ただし c は入荷予定在庫そのままではない。受注の引当ての結果は出荷予定ファイルに出力され,商品はその出荷予定日に出荷する。出荷予定日より後に入荷する在庫を引き当てても,その受注の出荷には間に合わない。引当ての対象にできる入荷予定在庫は,出荷予定日までに入荷するものに限られる。講評も,“出荷予定日までの入荷予定在庫”に対して“入荷予定在庫”だけの解答が多かったとしている。
字数の制限はない。a と b は在庫マスタの項目名どおりに書く。c は項目名に「出荷予定日までの」という条件を付けるのを忘れない。解答例は a「実在庫」,b「引当済実在庫」,c「出荷予定日までの入荷予定在庫」。
採点講評(IPA)
設問1は(1),(2)とも正答率が高かったが,(1)のcについて“出荷予定日までの入荷予定在庫”という解答に対し,“入荷予定在庫”だけの解答が多かった。(2)では,在庫マスタへの更新であるにもかかわらず,棚番別在庫ファイルへの更新の記述が散見された。
設問1(2)
解答欄2つ
物流センタへの入荷時に,在庫マスタの実在庫の加算更新と入荷予定在庫の減算更新を行う。他に二つの在庫情報が更新される可能性がある。その二つについて,何の在庫情報が,どのように更新されるか。それぞれ 20 字以内で述べよ。
〔備考〕①と②は順不同
解説
本文の根拠
〔物流センタ新設後の業務概要〕(2) 入荷
② 入荷実績を物流センタの受入場の端末から入力し,保管庫に棚入れするための棚入指示表を出力するとともに,在庫マスタの実在庫,引当済実在庫,入荷予定在庫及び引当済入荷予定在庫を更新し,棚番別在庫ファイルの棚入指示済在庫を更新する。
〔物流センタ新設後の業務概要〕(1) 受注・在庫引当て
引当可能在庫 = a − b + c −(c のうち引当済みのもの)
入荷時には,在庫マスタの実在庫,引当済実在庫,入荷予定在庫,引当済入荷予定在庫の四つを更新する。設問は実在庫の加算と入荷予定在庫の減算を示しているので,残る二つは引当済実在庫と引当済入荷予定在庫である。
入荷予定在庫の一部は,受注登録時に既に引き当てられている(引当済入荷予定在庫)。その商品が入荷すると,入荷予定在庫が実在庫に変わるのと同じように,引き当てた分も“入荷予定在庫のうち引当済み”から“実在庫のうち引当済み”に移る。つまり引当済実在庫が加算され,引当済入荷予定在庫が減算される。入荷した商品がまだ引き当てられていなければこの二つは変わらないので,設問は「更新される可能性がある」と書いている。講評は,在庫マスタへの更新を問うているのに,棚番別在庫ファイルへの更新を書いた解答が散見されたとしている。
それぞれ20字で,「何の在庫情報が」と「どのように(加算か減算か)」を1文で書く。解答例は「引当済実在庫が加算更新される。」(15字)と「引当済入荷予定在庫が減算更新される。」(18字)。
採点講評(IPA)
設問1は(1),(2)とも正答率が高かったが,(1)のcについて“出荷予定日までの入荷予定在庫”という解答に対し,“入荷予定在庫”だけの解答が多かった。(2)では,在庫マスタへの更新であるにもかかわらず,棚番別在庫ファイルへの更新の記述が散見された。
設問2(1)
解答欄1つ
表 1 中のd に入れる適切な字句を,25 字以内で述べよ。
解説
本文の根拠
〔物流センタ新設後の業務概要〕(3) 棚入れ・保管
② 保管庫では,1 種類の商品を一つ以上の棚に保管している。保管庫の在庫管理は,物流センタサーバの棚番別在庫ファイルで行い,
図1
項目は左から,棚番,商品コード,実在庫,棚入指示済在庫,棚出指示済在庫と続き,
表1 棚出指示表作成
(2) 日付を指定して出荷予定ファイルから翌日出荷予定レコードを抽出する。(3) d を特定する。(4) 棚番別在庫ファイルの棚出指示済在庫を更新する。
棚出指示表作成では,出荷予定ファイルから翌日出荷予定レコードを抽出した後,d を特定し,棚番別在庫ファイルの棚出指示済在庫を更新する。出荷予定レコードで分かるのは出荷する商品と数量で,その商品が保管庫のどの棚にあるかは分からない。保管庫では 1 種類の商品を一つ以上の棚に保管しているので,棚出しを指示するには,出荷対象の商品を保管している棚を決めなければならない。
棚の在庫を管理しているのは棚番別在庫ファイルで,主キーは棚番,属性に商品コードと実在庫を持つ。このファイルを商品コードで探せば出荷対象商品の棚番が分かり,特定した棚番のレコードの棚出指示済在庫を(4)で更新できる。講評は,棚番を特定すること以外の記述が散見されたとしている。
25字で「棚番別在庫ファイル」「出荷対象商品」「棚番」を入れる。解答例は「棚番別在庫ファイルの出荷対象商品の棚番」で19字。
採点講評(IPA)
設問2(1)は,棚番を特定すること以外の記述が散見された。
設問2(2)
解答欄1つ
表 1 中のe に入れる処理内容を,35 字以内で述べよ。
〔e〕解答例
棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚出指示済在庫を更新する。
解説
本文の根拠
〔物流センタ新設後の業務概要〕(4) 棚出し
② 棚出実績によって,棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚出指示済在庫を更新する。
表1 棚出処理
(3) ポータブル端末から棚出実績が入力されたら,次の処理を行う。① e ② 出荷予定ファイルの翌日出荷予定レコードの状態を,棚出済みにする。
e は棚出処理で,ポータブル端末から棚出実績が入力されたときに行う処理である。業務概要の(4)②は,棚出実績によって棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚出指示済在庫を更新するとしている。表1 の②は出荷予定ファイルの状態の更新なので,残る棚番別在庫ファイルの更新が e に当たる。
棚から商品を出せば,その棚の実在庫が減る。また,棚出指示表作成で棚出指示済在庫を更新しているので,指示どおりに棚出しが済んだ分を棚出指示済在庫から減らす必要がある。図2 でも棚出処理は棚番別在庫ファイルと双方向で結ばれている。
35字で,更新するファイル名と二つの項目名(実在庫,棚出指示済在庫)を書く。解答例は「棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚出指示済在庫を更新する。」で28字。
設問3(1)
解答欄1つ
表 2 中のf に入れる適切なファイル名を答えよ。
解説
本文の根拠
表2 出荷処理
(2) 出荷予定表の出荷番号を入力し,出荷予定ファイルから該当する出荷予定レコードの内容を表示する。
表2 出荷処理
① f の該当する出荷予定レコードの状態を出荷済みにするとともに,出荷実績ファイルに出力する。
図2
出荷処理は在庫マスタ,受注ファイル,出荷予定ファイルと双方向で結ばれ,出荷実績ファイルへ出力する。
f は「出荷予定レコード」を持つファイルである。出荷処理の(2)では,出荷予定表の出荷番号を入力して出荷予定ファイルから該当する出荷予定レコードを表示している。出荷実績が入力されたら,そのレコードの状態を出荷済みにするので,f は出荷予定ファイルである。
出荷予定ファイルのレコードの状態は,棚出指示表作成で棚出指示済み,棚出処理で棚出済み,出荷予定表・出荷ラベル作成で出荷指示済みと,処理ごとに進んでいく。出荷処理はその最後に出荷済みにする。図2 でも出荷処理は出荷予定ファイルと双方向で結ばれている。
字数の制限はない。本文と図のファイル名どおり「出荷予定ファイル」と書く。
設問3(2)
解答欄1つ
表 2 中のg に入れる処理内容を,30 字以内で述べよ。
〔g〕解答例
受注ファイルの受注レコードの状態を出荷済みにする。
解説
本文の根拠
〔物流センタ新設後の業務概要〕(5) 出荷
その出荷実績を出荷場の端末から入力し,受注の消込み,在庫マスタの実在庫,引当済実在庫を更新するとともに,納品伝票などの出荷関連帳票を出力する。
図2
出荷処理は在庫マスタ,受注ファイル,出荷予定ファイルと双方向で結ばれ,出荷実績ファイルへ出力する。
表2 出荷処理
② 在庫マスタの実在庫,引当済実在庫を更新する。③ 出荷実績に該当するg ④ 出荷関連帳票の編集,出力を行う。
業務概要の(5)②は,出荷実績の入力で「受注の消込み」「在庫マスタの実在庫,引当済実在庫の更新」「出荷関連帳票の出力」を行うとしている。表2 の出荷処理では,在庫マスタの更新が②,帳票の出力が④にあるが,受注の消込みがどこにもない。これが g に当たる。
図2 で出荷処理とつながっているファイルは,在庫マスタ,受注ファイル,出荷予定ファイル,出荷実績ファイルである。表2 で使っていないのは受注ファイルだけで,受注の消込みとは,出荷した受注の受注レコードの状態を出荷済みにすることである。講評は,受注ファイルに対する処理以外の処理記述が散見され,図の業務フローと表の処理記述書を注意深く比較して読めば防げた誤りだとしている。
30字で「受注ファイル」「受注レコード」「出荷済み」を入れる。解答例は「受注ファイルの受注レコードの状態を出荷済みにする。」で25字。
採点講評(IPA)
設問3(2)は正答率が低かった。受注ファイルに対する処理以外の処理記述が散見された。図の業務フローと表の処理記述書を注意深く比較して読めば,防ぐことができた誤りであった。
設問4
25字以内
物流センタ新設後は,営業所別の売上集計を行うとき,現状の売上データの集計で発生している,あるデータが発生しなくなる。それは,どのようなデータか。25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔現在の受注・出荷業務及びシステム化状況〕
(6) 顧客への出荷データは売上データとして,営業所サーバから夜間に本社へ送信され,本社サーバで売上計上,請求・入金処理が行われる。売上は,受注した営業所への計上が原則であるが,他営業所から出荷した場合は,売上の一部が出荷手数料として,出荷した営業所に振替計上される。
〔物流センタ新設後の業務概要〕
新設した物流センタで商品在庫を集中管理し,顧客への出荷は全て物流センタから行う。
〔物流センタ新設後の業務概要〕(5) 出荷
③ 物流センタからの出荷時点で,受注した営業所の売上として計上される。
現状は営業所ごとに在庫を持ち,自営業所の在庫で引き当てられない受注は他営業所から出荷することがある。そのとき売上の一部が出荷手数料として出荷した営業所に振替計上されるので,営業所別の売上集計には,他営業所に振替計上する出荷手数料分のデータが発生している。
物流センタ新設後は,顧客への出荷は全て物流センタから行い,出荷時点で受注した営業所の売上として計上される。他営業所から出荷することがなくなるので,出荷手数料の振替計上も起きず,そのデータが発生しなくなる。
25字で「他営業所に振替計上する」「出荷手数料」「データ」を入れる。解答例は「他営業所に振替計上する出荷手数料分のデータ」で21字。
出典:平成26年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問2(表記を一部改変)
問3 勤務管理システムの導入
勤務管理システムの導入に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
D 社は,社員数約 1,000 名の,建築設計を行っている中堅企業である。D 社では,内部監査部門が定期的に内部監査を行っており,このたび勤務管理に関する監査が行われた。その指摘を受けて,新しい仕組みの導入を決定した。
〔D 社の就業条件〕
D 社の就業条件は,次のとおりである。
(1) 就業時間は 9 時から 18 時までで,時間外の勤務(以下,残業という)には,残業手当が支給される。残業は事前に届出を行う。 (2) 土曜日,日曜日及び祝日は休日で,休日出勤した場合は代休を取得する。 (3) 休暇種別として,勤続年数に応じて毎年付与される有給休暇,7 月〜9 月に取得できる年間 3 日間の夏期休暇,及び慶弔時に取得できる特別休暇がある。 (4) 残業時間の上限は,労使協定で,1 日 7 時間,月間 45 時間,連続する 3 か月累計 120 時間,年度累計 360 時間と定められている。 〔現在の勤務管理の概要〕
勤務管理に関する項目は,イントラネットを使った時間入力システムと紙の勤務管理表で管理している。勤務管理の概要は,次のとおりである。
(1) 社員は,業務を開始した時刻(以下,開始時刻という)及び業務を終了した時刻(以下,終了時刻という)を入力する。 (2) 残業をする場合は,事前に,事由及び終了予定時刻を記入した残業届出書を提出して,部長が確認印を押す。 (3) 月締めで個人単位に勤務管理表を印刷し,本人印を押した後,部長に提出する。部長は承認印を押して,人事部に提出する。このとき,1 か月分の残業届出書を添付する。勤務管理表には,遅刻・直行などの始業区分,早退・直帰などの終業区分,開始時刻,終了時刻及び残業時間の明細が 1 か月分,日別で印刷されている。 社員は,同時に複数のプロジェクトに参加することがあり,プロジェクト別の損益を管理するために,勤務管理表とは別に,プロジェクト別業務時間を表計算ソフトで管理している。これを月次で回収し,部長が確認している。プロジェクトは複数の部が関わっているものが多い。
また,夏期休暇の予定実績管理も,部別に表計算ソフトで管理している。
〔勤務管理に関する内部監査の指摘〕
内部監査では,内部統制面及び労務管理面から次のような指摘を受けた。
指摘 1:部長が,月次で,勤務管理表,プロジェクト別業務時間及び残業届出書の 3 種類のデータを確認しているが,データの不一致が発生している。また,平均 50 名いる部員全員について,全ての日の明細を部長が確認していることに無理がある。 指摘 2:開始時刻及び終了時刻が勤務実態どおりに正しく入力されているかどうかの保証がない。入力された時刻が妥当かどうかを確認する必要がある。 指摘 3:プロジェクト別業務時間が時間入力システムと連動しておらず,また,入力を毎日行っていないので,プロジェクトの実工数が正しく把握できていない。このことについて,損益を管理している経理部から精度の向上を求められており,運用の改善が必要である。 指摘 4:夏期休暇は,予定をあらかじめ決めて取得することになっているが,予定を入力しなかったり,予定どおりに休まなかったりする社員が多く,取得率が低迷している。 これらの指摘を受け,改善案として,勤務管理システムを導入することになり,あるソフトウェアパッケージを選定した。
〔新システムを用いた勤務管理の概要〕
D 社では,選定したソフトウェアパッケージでは不足する機能を追加開発することとし,追加開発を含めたシステム全体を新システムと呼ぶことにした。新システムを用いた勤務管理の概要は,次のとおりである。
(1) 各フロアの出入口に IC カードリーダ付き入力端末を設置し,入退室時に IC カード付き社員証をタッチして,入室・退室の時刻を記録する。1 日の初回入室時刻と最終退室時刻を,翌朝のバッチ処理によって新システムに取り込む。 なお,終業後にフロア内でサークル活動や懇親会を行うことがあるので,最終退室時刻と終了時刻は必ずしも一致しない。
(2) イントラネットを通じて,社員は次の作業を行う。 ① 勤務実績入力:毎日の勤務実績は,原則として翌営業日中に入力する。 始業区分として,通常出社,遅刻,直行,出張,又はいずれかの休暇種別を選択して入力する。 終業区分として,通常退社,早退,又は直帰を選択して入力する。始業区分が出張又は休暇種別の場合は,終業区分は空白とする。 出社を伴わずに終日社外で業務を行う場合には,始業区分を出張として入力し,始業区分を直行,かつ,終業区分を直帰とする入力はしない。 休暇以外の日は,開始時刻,終了時刻及び休憩時間を入力する。このとき,(1)で記録した初回入室時刻及び最終退室時刻を参照できる。 ② プロジェクト別業務時間入力:毎日,どのプロジェクトの業務をどれだけ行ったのか,プロジェクト別業務時間を入力する。研修,事務処理など,直接プロジェクトに従事していない時間は,間接業務時間として特別なプロジェクトコードを割り振って入力する。プロジェクト別業務時間の合計は,1 日の業務時間と一致させる必要がある。一致しない場合,入力は完了しない。 ③ 残業予定入力:残業をする場合,事前に事由及び終了予定時刻を入力する。 ④ 夏期休暇予定入力:夏期休暇の取得予定年月日を 3 日分入力する。予定が変わった場合は取得予定年月日を変更する。 (3) イントラネットを通じて,部長は次の作業を行う。 追加開発で作成された警告一覧を出力し,その内容を精査して部員に確認する。また,必要に応じて入力の訂正を行うよう指導する。警告一覧の詳細は後述する。 部員のデータ入力が完了したことを確認し,月締めの入力を行う。 (4) ソフトウェアパッケージにはダウンロード機能があり,データが CSV 形式で提供される。ダウンロードする属性項目は,任意に設定が可能であり,D 社では,ダウンロードファイルのレイアウトを表 1 のように設定した。 なお,夏期休暇明細については,予定データは夏期休暇の取得予定年月日から,実績データは毎日の勤務実績から作成する。予定データの予定実績区分には“予定”が,実績データの予定実績区分には“実績”がそれぞれ設定される。
表1 ダウンロードファイルのレイアウト
〔ダウンロードデータを使用した処理〕
D 社では,部ごとにダウンロードを行うよう設定し,部長が自分の部のデータをダウンロードできるようにした。そのダウンロードデータを加工して,次の(1)〜(3)の三つの機能を実現することにし,追加開発を行う。これによって,部長が,自分の部の部員の入力の確認を容易に行えるようになる。
任意のタイミングで,月間プロジェクト別業務時間明細からプロジェクト別工数一覧を出力する機能を設ける。部長は,適切なプロジェクトコードで入力が行われているかどうかをチェックする。
任意のタイミングで各種のチェックを行い,警告一覧を出力する機能を設ける。部長は,次に示す確認項目を指定して警告一覧を出力し,それを参考に,部員に確認したり,残業を削減するようプロジェクトリーダを指導したりする。
① 月間業務時間明細の,始業区分及び終業区分が妥当かどうかを確認する。 ② 月間業務時間明細の,開始時刻及び終了時刻が妥当かどうかを確認する。 ③ 月間業務時間明細と残業予定から,残業予定入力が正しく行われているかどうかを確認する。 ④ 月間残業時間集計から,労使協定で規定した残業時間の上限の 9 割を超えている社員がいないかどうかを確認する。 ⑤ プロジェクト別業務時間の入力が,翌営業日中に行われているかどうかを確認する。 ⑥ 夏期休暇の取得率向上のために,取得予定年月日を 3 日分入力していない社員がいないかどうかを確認する。 これらの確認項目について容認される基準を,表 2 に示す。これらの基準を満たしていない場合に,その内容を警告一覧に出力する。
表2 容認される基準
夏期休暇の取得率向上のために,夏期休暇明細の休暇取得予定日の 1 週間前に,翌週の夏期休暇を取得するよう奨励するメールを自動的に送信する機能を設ける。
〔内部監査担当者によるレビュー〕
人事部は,新システムの概要について内部監査担当者に説明を行った結果,次の 2 点について改善を行うよう指摘された。
(1) 個人のプロジェクト別業務時間は正しく把握できるようになったが,プロジェクト単位に工数の実績を管理するためには,考えているプロジェクト別工数一覧では不十分であり,更なる考慮が必要である。 (2) 夏期休暇の取得率向上については,取得予定年月日を 3 日分入力していない社員の確認と取得奨励メールの送信を考えているが,現状を考えるとこれだけでは不十分である。追加の確認をして,ある条件に合致する社員の情報を警告一覧に出力することが必要である。
出題趣旨(IPA)
新しいシステムを導入する際,特異な業務要件がない場合は,市販のソフトウェアパッケージやASPサービスを活用することが増えてきている。利用者固有のニーズが想定される場合は,パラメタの設定で対応できるようにしたり,データのダウンロード機能を提供して利用者がデータを加工できるようにしたりすることもある。本問は,勤務管理システムを題材として,現行システムの問題点をどのように解消するのか,ダウンロードしたデータを利用して追加開発する機能の内容について,具体的な記述を求めている。本問では,利用者のシステム化要件とソフトウェアパッケージの機能を正しく理解した上で,求められているシステムを設計する能力を評価する。
採点講評(問全体・IPA)
問3では,勤務管理システムの開発を例にとり,利用者からの変更要望に対する対応について出題した。
システムアーキテクトとして,業務要件を十分に理解した上で,システム要件としてまとめ,それを正確に設計していくことができるよう心掛けてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
解答欄2つ
指摘 1 に対して,データの管理方法,部長の確認方法について改善するために,新システムで行った対応の内容を,それぞれ 30 字以内で述べよ。
解説
本文の根拠
〔勤務管理に関する内部監査の指摘〕
指摘 1:部長が,月次で,勤務管理表,プロジェクト別業務時間及び残業届出書の 3 種類のデータを確認しているが,データの不一致が発生している。また,平均 50 名いる部員全員について,全ての日の明細を部長が確認していることに無理がある。
〔新システムを用いた勤務管理の概要〕(2)
プロジェクト別業務時間の合計は,1 日の業務時間と一致させる必要がある。一致しない場合,入力は完了しない。
〔新システムを用いた勤務管理の概要〕(3)
追加開発で作成された警告一覧を出力し,その内容を精査して部員に確認する。
〔ダウンロードデータを使用した処理〕(2) 警告一覧を出力する機能
これらの基準を満たしていない場合に,その内容を警告一覧に出力する。
指摘1 は二つの問題を挙げている。一つは,勤務管理表(時間入力システムと紙),プロジェクト別業務時間(表計算ソフト),残業届出書(紙)の 3 種類のデータが別々に管理されていて不一致が起きていること。もう一つは,部長が全部員の全ての日の明細を確認していて無理があることである。
データの管理方法については,新システムで勤務実績入力,プロジェクト別業務時間入力,残業予定入力をどれもイントラネットから行い,3 種類のデータを全て新システムで一元管理する。プロジェクト別業務時間の合計を 1 日の業務時間と一致させないと入力が完了しない仕組みも,一元管理したから持てるものである。講評は,業務時間明細とプロジェクト別工数一覧の二つだけを取り上げた解答が多かったとしている。残業届出書(残業予定)も含めた 3 種類である。部長の確認方法については,表2 の容認される基準を満たしていないものだけを警告一覧に出力し,部長はそれを精査する。全ての明細を見る必要がなくなる。
それぞれ30字で,管理方法は「3 種類のデータ」「新システムで一元管理」,確認方法は「確認すべきデータだけ」「警告一覧に出力」を入れる。解答例は「3種類のデータを全て新システムで一元管理する。」(23字)と「部長が確認すべきデータだけを警告一覧に出力する。」(24字)。
採点講評(IPA)
設問1は,正答率が高かった。(1)のデータの管理方法は,今までバラバラに管理されていた3種類のデータの一元化について問う問題であったが,業務時間明細とプロジェクト別工数一覧の二つのデータだけを取り上げた解答が多く見られた。
設問1(2)
35字以内
指摘 2 に対して,入力された開始時刻及び終了時刻が妥当かどうかを確認するために,新システムに盛り込んだ機能は何か。その内容を,35 字以内で述べよ。
解答例
ICカードリーダ付き入力端末で,入室,退室の時刻を記録する機能
解説
本文の根拠
〔勤務管理に関する内部監査の指摘〕
指摘 2:開始時刻及び終了時刻が勤務実態どおりに正しく入力されているかどうかの保証がない。入力された時刻が妥当かどうかを確認する必要がある。
〔新システムを用いた勤務管理の概要〕
(1) 各フロアの出入口に IC カードリーダ付き入力端末を設置し,入退室時に IC カード付き社員証をタッチして,入室・退室の時刻を記録する。
表2 ②開始時刻,終了時刻
月間業務時間明細について,開始時刻と初回入室時刻,終了時刻と最終退室時刻が,それぞれ 30 分以上かい離していない。
開始時刻と終了時刻は社員が自分で入力するので,それだけでは勤務実態どおりかどうか分からない。比べる相手として,社員の入力とは別に記録される客観的な時刻が要る。新システムでは,各フロアの出入口に IC カードリーダ付き入力端末を設置し,入退室時に IC カード付き社員証をタッチして入室・退室の時刻を記録する。
記録した 1 日の初回入室時刻と最終退室時刻は新システムに取り込まれ,表2 の②では開始時刻と初回入室時刻,終了時刻と最終退室時刻が 30 分以上かい離していないかを確認する。これで入力された時刻の妥当性を確かめられる。
35字で「IC カードリーダ付き入力端末」と「入室,退室の時刻を記録する機能」を書く。解答例は「ICカードリーダ付き入力端末で,入室,退室の時刻を記録する機能」で31字。
設問2
解答欄6つ
表 2 中のa 〜f に入れる適切な字句を答えよ。
〔備考〕eとfは順不同
解説
本文の根拠
〔新システムを用いた勤務管理の概要〕(2) ① 勤務実績入力
終業区分として,通常退社,早退,又は直帰を選択して入力する。始業区分が出張又は休暇種別の場合は,終業区分は空白とする。
表2 ①始業区分,終業区分
月間業務時間明細について,初回入室時刻が未入力のときは,始業区分が出張,休暇のいずれかであり,初回入室時刻が開始時刻よりも遅いときは,始業区分が直行である。
〔D 社の就業条件〕
(4) 残業時間の上限は,労使協定で,1 日 7 時間,月間 45 時間,連続する 3 か月累計 120 時間,年度累計 360 時間と定められている。
〔ダウンロードデータを使用した処理〕(2) 警告一覧を出力する機能
⑤ プロジェクト別業務時間の入力が,翌営業日中に行われているかどうかを確認する。
表1 月間プロジェクト別業務時間明細
社員番号,勤務年月日,プロジェクトコード,業務時間,入力年月日。
a,b は終業区分で,選べるのは通常退社,早退,直帰と,始業区分が出張又は休暇種別のときの空白の四つである。最終退室時刻が未入力なのはその日一度もフロアに入っていない場合で,始業区分の行が「初回入室時刻が未入力のときは出張,休暇のいずれか」としているのと対になる。出張・休暇の日の終業区分は空白なので a は空白。最終退室時刻が終了時刻より早いのは,フロアを出た後も社外で業務を続けてそのまま帰った場合で,b は直帰である。講評は,この 4 種類以外の解答も少なからず見られたとしている。
c は④残業時間の上限で,基準の数値は労使協定の上限の 9 割(月間 45 時間→40.5 時間,連続する 3 か月累計 120 時間→108 時間,年度累計 360 時間→324 時間)になっている。108 時間に当たるのは連続する 3 か月の累計で,月間残業時間集計には勤務年月ごとの月間残業時間があるので,当月までの連続する 3 か月の月間残業時間を合計して確かめる。講評は,“連続する3か月の累計”と誤って答えた受験者が多かったとしている。空欄の後に「の月間残業時間の合計」と続くので,入るのは期間を表す字句である。d〜f は⑤で,プロジェクト別業務時間の入力が翌営業日中に行われたかを見る。月間プロジェクト別業務時間明細には勤務年月日と入力年月日があり,この二つが 2 営業日以上離れていなければ翌営業日中の入力である。
字数の制限はない。a,b は本文の区分名どおり,d はファイル名,e,f は属性名をそのまま書く。解答例は a「空白」,b「直帰」,c「当月までの連続する3か月」,d「月間プロジェクト別業務時間明細」,e「勤務年月日」,f「入力年月日」(e と f は順不同)。
採点講評(IPA)
設問2では,a,b,cの正答率が低かった。a,bは終業区分を問うているので,問題文中に現れる4種類の区分から解答を導き出せばよかったが,4種類の区分以外の解答も少なからず見られた。cは,問題文の記述をそのまま引用して“連続する3か月の累計”と誤って解答した受験者が多かったが,これは穴埋めの文章をよく読めば,防ぐことができた誤りであった。
設問3(1)
解答欄2つ
プロジェクト別工数一覧で考慮すべき点は何か。その内容と理由を,それぞれ 30 字以内で述べよ。
〔内容〕解答例
部内だけでなく他部のデータと合わせた一覧を作成すること
〔理由〕解答例
プロジェクトは複数の部が関わっているものが多いから
解説
本文の根拠
〔ダウンロードデータを使用した処理〕
D 社では,部ごとにダウンロードを行うよう設定し,部長が自分の部のデータをダウンロードできるようにした。
〔現在の勤務管理の概要〕
プロジェクトは複数の部が関わっているものが多い。
〔内部監査担当者によるレビュー〕
(1) 個人のプロジェクト別業務時間は正しく把握できるようになったが,プロジェクト単位に工数の実績を管理するためには,考えているプロジェクト別工数一覧では不十分であり,更なる考慮が必要である。
プロジェクト別工数一覧は,月間プロジェクト別業務時間明細から出力する。ところがダウンロードは部ごとに行う設定で,部長がダウンロードできるのは自分の部のデータだけである。そのため,できる一覧には自分の部の部員の工数しか入らない。
本文は「プロジェクトは複数の部が関わっているものが多い」としている。複数の部が関わるプロジェクトの工数の実績をプロジェクト単位に管理するには,部内のデータだけでなく,関わっている他部のデータと合わせた一覧を作成しなければならない。講評は,(1)の内容と理由の正答率が低かったとしている。
それぞれ30字で,内容は「他部のデータと合わせた一覧」,理由は「複数の部が関わっている」を入れる。解答例は「部内だけでなく他部のデータと合わせた一覧を作成すること」(27字)と「プロジェクトは複数の部が関わっているものが多いから」(25字)。
採点講評(IPA)
設問3では,(1)の内容と理由,及び(2)の社員の条件の正答率が低かった。(2)では,問題文の理解不足で,夏期休暇明細のファイル設計を誤解したと思われる解答が目立った。
設問3(2)
解答欄2つ
夏期休暇の取得率向上に関するチェックが不十分と判断したのはなぜか。その理由を 35 字以内で述べよ。また,それを解決するために警告一覧に出力すべき社員の条件は何か。表 1 中のファイル名を用いて 40 字以内で述べよ。
〔判断した理由〕解答例
休暇取得予定日に休まなかった社員を把握することができないから
〔社員の条件〕解答例
当年の夏期休暇明細で,過去日付の予定データ件数が実績データ件数より多い社員 夏期休暇明細で,予定データの取得予定日が過ぎても,実績データが存在しない社員
解説
本文の根拠
〔勤務管理に関する内部監査の指摘〕
指摘 4:夏期休暇は,予定をあらかじめ決めて取得することになっているが,予定を入力しなかったり,予定どおりに休まなかったりする社員が多く,取得率が低迷している。
〔新システムを用いた勤務管理の概要〕(4)
なお,夏期休暇明細については,予定データは夏期休暇の取得予定年月日から,実績データは毎日の勤務実績から作成する。予定データの予定実績区分には“予定”が,実績データの予定実績区分には“実績”がそれぞれ設定される。
表1 夏期休暇明細
社員番号,予定実績区分,休暇年月日。
〔内部監査担当者によるレビュー〕
(2) 夏期休暇の取得率向上については,取得予定年月日を 3 日分入力していない社員の確認と取得奨励メールの送信を考えているが,現状を考えるとこれだけでは不十分である。
指摘4 は,取得率が低迷している原因として,予定を入力しない社員と,予定どおりに休まない社員の二つを挙げている。考えている対策のうち,取得予定年月日を 3 日分入力していない社員の確認は前者への対策である。取得奨励メールは休暇取得予定日の 1 週間前に送るだけで,実際に休んだかどうかは見ていない。したがって,休暇取得予定日に休まなかった社員を把握できないことが不十分な点である。
夏期休暇明細には,取得予定年月日から作る予定データと,毎日の勤務実績から作る実績データがあり,予定実績区分で見分けられる。予定どおりに休んでいれば,予定日が過ぎた予定データには同じ数の実績データがあるはずである。当年の夏期休暇明細で,過去日付の予定データの件数が実績データの件数より多い社員を警告一覧に出力すればよい。別解のように,予定データの取得予定日が過ぎても実績データが存在しない社員と書いてもよい。講評は,夏期休暇明細のファイル設計を誤解したと思われる解答が目立ったとしている。夏期休暇明細は予定と実績を同じファイルに持ち,予定実績区分で分けている点を押さえる。
理由は35字で「休暇取得予定日に休まなかった社員を把握できない」ことを書く。条件は40字で,設問の指示どおり表1 のファイル名「夏期休暇明細」を使い,「予定データ」と「実績データ」を比べる形にする。解答例は理由が30字,条件が37字(別解は38字)。
採点講評(IPA)
設問3では,(1)の内容と理由,及び(2)の社員の条件の正答率が低かった。(2)では,問題文の理解不足で,夏期休暇明細のファイル設計を誤解したと思われる解答が目立った。
出典:平成26年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問3(表記を一部改変)
問4 遠隔操作可能な手術支援システム
遠隔操作可能な手術支援システムに関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。
E 社は医療機器メーカであり,医師が手術室内で内視鏡からの映像を確認しながら手術ができる手術支援システムを開発し,販売している。このシステムを用いた手術では,医師の手が直接患者に触れることがないので,環境などの条件が整っていれば,離れた場所からでも遠隔操作で手術ができる。
離島,沿海地域など,陸上からのアクセスが困難な地域における医療の質を向上させるために,医療機器を装備した船舶(以下,病院船という)を巡回させて医療を提供する構想の具体化が予想される。E 社は関連メーカとして,病院船に搭載することを想定した,遠隔操作可能な手術支援システム(以下,遠隔手術システムという)の実証システムを新たに開発することになった。
〔現在の手術支援システムの概要〕
最近の手術では,患者の負担を減らすために,内視鏡を用いた方法が普及している。この方法は,患者の身体の表面に小さな穴を数か所開け,内視鏡と医療器具をそれぞれ別の穴に挿入し,医師が内視鏡からの映像をモニタで確認しながら医療器具を操作して手術を行うというものである。
E 社の手術支援システムは,内視鏡と医療器具の操作をマニピュレータで行う。医師は,内視鏡からの映像を表示するモニタ(以下,内視鏡モニタという)で確認しながら,マニピュレータを操作する。医師が操作する側のマニピュレータをマスタマニピュレータ,患者の身体に挿入する側のマニピュレータをスレーブマニピュレータと呼び,スレーブマニピュレータの先端部には,内視鏡,メス,鉗子などが取り付けられている。マニピュレータの操作には専門の高度な技術が必要で,操作できる医師は限定される。
〔遠隔手術システムの開発目標〕
遠隔手術システムの開発は,E 社のシステムアーキテクトである F 氏が担当することになった。F 氏は開発に当たり,医療機関の要望を調査・検討し,開発目標を次のようにまとめた。
① 手術を担当する医師(以下,執刀医師という)が病院船内にいなくても,患者に対して手術ができる。 ② 病院船内の手術室にはサポートの医師,看護師,助手を配置し,通常の病院と同じように執刀医師とコミュニケーションをとりながら手術を進めることができる。 ③ より正確な手術がしやすいように,内視鏡モニタは 3D 化する。 ④ 映像,データなどの通信を必要とするので,病院船と地上との間は無線による通信回線を利用する。 ⑤ 執刀医師のストレスを減らすために,マニピュレータの操作が内視鏡モニタに表示されるまでの遅延時間が短くなるようにする。 ⑥ 病院船に設置するので,手術時の揺れ,振動の影響をできるだけ少なくする。 〔遠隔手術システムの概要〕
F 氏は,遠隔手術システムの概要を次のように考えた。
① 現在の手術支援システムを基に,遠隔手術システムを開発する。病院船から離れた場所(以下,遠隔オペレーション室という)でも手術ができるように,必要な装置・器具を手術室と遠隔オペレーション室に装備し,両者を連携させる。遠隔オペレーション室と連携させない場合は,手術室内だけで手術ができる。 ② 操作卓(執刀医師が使用する装置・器具を一体化したもの)は,マスタマニピュレータ,内視鏡モニタ,生体データモニタ,手術室モニタなどで構成する。内視鏡モニタは,新たに開発する 3D 内視鏡モニタとする。 ③ 遠隔オペレーション室には操作卓を設置する。 ④ 手術室には,ベッド,スレーブマニピュレータなどで構成する手術台及び操作卓を設置する。さらに,手術室内のスタッフが内視鏡からの映像,生体データなどを見る統合モニタも設置する。 ⑤ 手術室のスタッフと遠隔オペレーション室の執刀医師とのコミュニケーションをとるために,それぞれの室内映像と音声を相手側に送る。 ⑥ 手術室に設置された操作卓と手術台は LAN で接続し,データをやり取りする。 ⑦ 遠隔オペレーション室に設置された操作卓と手術台を接続する通信回線を確保する。 ⑧ 執刀医師は,遠隔オペレーション室に設置された操作卓の 3D 内視鏡モニタを確認しながら,マスタマニピュレータを操作して遠隔手術を行う。手術室では,スタッフが遠隔オペレーション室の執刀医師の指示に従い,スレーブマニピュレータに器具を取り付けて患者の体内に挿入したり,患者の生体データを得るための処置を行ったりする。 ⑨ 遠隔オペレーション室の操作卓と手術室の操作卓の両方が手術台と接続されたとき,2 台のマスタマニピュレータからは同時に操作できないようにする。 〔遠隔手術システムの構成と機能〕
F 氏は,遠隔手術システムの構成と機能について検討した。F 氏が検討・整理した遠隔手術システムの構成を図 1 に,操作卓の構成と機能を表 1 に示す。
図1 遠隔手術システムの構成
表1 操作卓の構成と機能
遠隔オペレーション室には,操作卓,及び室内の映像を撮るためのカメラを設置する。執刀医師は,遠隔オペレーション室から操作する。 手術室には,手術台,操作卓及び統合モニタを設置する。手術台の構成と機能を表 2 に示す。統合モニタは,内視鏡からの映像,遠隔オペレーション室の映像,及び生体データの各モニタを一体化したものであり,手術室のスタッフが利用する。統合モニタには,手術室を撮影するカメラ,音声を入力するマイク,及び執刀医師の音声を流すスピーカも組み込まれている。
表2 手術台の構成と機能
〔通信回線の検討〕
遠隔手術で必要とする通信データの種別と内容を,表 3 に示す。
なお,伝送データ量については,これまでの実験結果から推定できる。
表3 通信データの種別と内容
遠隔手術は,港湾内又は陸地に近い場所に病院船を停泊させて行う。この条件に適合する通信回線の検討では,執刀医師の操作に大きく影響するc の伝送遅延及び操作コマンドの伝送遅延を重視した。そのため圧縮処理は,ハードウェアで行うことにする。検討結果は次のとおりである。
地上側で高速通信回線を利用できる場合は,屋外用無線 LAN ブリッジを用いて病院船と対向でリンクさせることによって,数 km 以内での高速無線 LAN 接続が可能である。 地上側で高速通信回線を利用できない場合は,地上波の無線データ通信サービスを利用する。 通信速度と遅延時間に相違があるものの,いずれの通信サービスも利用できることが分かった。通信速度の相違については,圧縮方法及び圧縮率を変えないで,伝送データ量を変動させる方法も検討する。 〔3D 内視鏡モニタの検討〕
内視鏡からの映像を 3D 化する方法を検討した。検討結果は次のとおりである。
左右の目に相当する二眼のカメラで撮影した左右一対の映像を,3D モニタで見る。このとき,専用の眼鏡を使用して見る方式と裸眼で見る方式があるが,専用の眼鏡は手術に支障を来すので,裸眼方式とする。ただし,裸眼方式の 3D モニタは,見る位置が特定の距離と角度に限定される。 裸眼での 3D 化を実現するためには,映像に画像処理を行ってから 3D モニタに入力する必要がある。ハードウェアによる 3D 化画像処理ユニットを,データ圧縮処理ユニットとともに手術台の制御部に設置する。 〔安全性及びセキュリティ面の検討〕
緊急時にも患者の安全を確保するほか,操作卓は,第三者が容易に映像を見たり操作したりできなくする対策が必要である。
d 中は,遠隔オペレーション室のマスタマニピュレータを優先する。通信が中断した場合は,制御部からスレーブマニピュレータへの出力を停止して遠隔手術を止め,手術室のマスタマニピュレータの操作を有効にする。 緊急時には,手術室のスタッフの判断で,遠隔オペレーション室からの操作を無効にできるようにする。 遠隔手術では,患者の身体・健康に関する情報を通信回線上で伝送するので,情報セキュリティ対策として暗号化処理が必要である。
出題趣旨(IPA)
ロボットなどの技術を医療分野にも適用する動きが進み,医療支援機器も組込みシステムの対象として,システムアーキテクトが扱う例が増えている。本問は,遠隔操作可能な手術支援システムを題材として,システムアーキテクチャの決定,機能仕様の検討及び策定について,具体的な記述を求めている。本問では,医療支援機器の開発という観点から,機能性,安全性,効率性などの条件を考慮した機能仕様を策定する能力を評価する。
採点講評(問全体・IPA)
問4では,遠隔操作可能な手術支援システムを例にとり,システムアーキテクチャの決定や,機能仕様の策定について出題した。全体として正答率は高かった。
システムアーキテクトとして,アーキテクチャの特徴が与える影響を正しく把握するよう心掛けてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
解答欄2つ
表 2 中のa ,b に入れる適切な字句を答えよ。
解説
本文の根拠
表1 操作処理部
マスタマニピュレータの移動量からスレーブマニピュレータの絶対位置情報を算出する。また,ペダルの状態を入力する。得られた情報を,操作コマンドとして手術台に送信する。
表2 スレーブマニピュレータ
制御部からの信号によって,リンク機構を通じて先端に取り付けられた器具の移動,回転,挟むなどの動きを実現する。また,器具のスイッチの ON/OFF 制御信号を器具に伝える。
表2 制御部
a を受信し,b を動作させる信号及び ON/OFF 制御信号を出力する。
制御部は手術台の一部で,a を受信して b を動作させる信号を出力する。手術台に送られてくるのは,操作卓の操作処理部が送信する操作コマンドである。操作コマンドには,マスタマニピュレータの移動量から算出したスレーブマニピュレータの絶対位置情報とペダルの状態が入っている。よって a は操作コマンド。
スレーブマニピュレータは「制御部からの信号によって」器具を動かし,器具のスイッチの ON/OFF 制御信号を器具に伝える。制御部が出力する“動作させる信号”の相手はスレーブマニピュレータで,ON/OFF 制御信号はペダルの状態から作られる。よって b はスレーブマニピュレータである。
字数の制限はない。表1・表2 の用語どおりに書く。解答例は a「操作コマンド」,b「スレーブマニピュレータ」。
設問1(2)
40字以内
遠隔手術の場合,手術室内で操作する場合と比較して執刀医師の操作に影響を与えることになる要因を,40 字以内で述べよ。
解答例
マスタマニピュレータの操作が3D内視鏡モニタに表示されるまでの遅延時間
解説
本文の根拠
〔遠隔手術システムの開発目標〕
⑤ 執刀医師のストレスを減らすために,マニピュレータの操作が内視鏡モニタに表示されるまでの遅延時間が短くなるようにする。
表3
3D 内視鏡映像:手術室⇒遠隔オペレーション室,
表3
操作コマンド:遠隔オペレーション室⇒手術室,
遠隔手術では,執刀医師が遠隔オペレーション室でマスタマニピュレータを操作すると,操作コマンドが通信回線で手術室の手術台に送られてスレーブマニピュレータが動き,その様子を映した 3D 内視鏡映像が通信回線で遠隔オペレーション室に送り返されて 3D 内視鏡モニタに表示される。手術室内での操作に比べ,往復の伝送の分だけ操作が表示されるまでに時間がかかる。
開発目標⑤も,執刀医師のストレスを減らすために,マニピュレータの操作が内視鏡モニタに表示されるまでの遅延時間を短くするとしている。講評は,単なる“伝送遅延”という解答が散見され,伝送遅延が双方向で生じることを問題文中の表現を用いて記述してほしかったとしている。操作コマンドの行きと映像の帰りの両方を含むことが伝わる書き方にする。
40字で「マスタマニピュレータの操作が」「3D 内視鏡モニタに表示されるまでの」「遅延時間」をつなぐ。解答例は「マスタマニピュレータの操作が3D内視鏡モニタに表示されるまでの遅延時間」で35字。
採点講評(IPA)
設問1(2)は,正答率が高く,題意はよく理解されていたようだが,単なる“伝送遅延”との解答が散見された。伝送遅延が双方向で生じることを問題文中の表現を用いて記述してほしかった。
設問2(1)
解答欄1つ
本文中のc に入れる適切な字句を答えよ。
解説
本文の根拠
〔通信回線の検討〕
この条件に適合する通信回線の検討では,執刀医師の操作に大きく影響するc の伝送遅延及び操作コマンドの伝送遅延を重視した。そのため圧縮処理は,ハードウェアで行うことにする。
表3
3D 内視鏡映像:手術室⇒遠隔オペレーション室,内視鏡からの二眼のカメラによる映像を 3D 化するのに必要な処理及びデータ圧縮処理を施したデータ。
c は表3 の通信データのうち,操作コマンドと並んで執刀医師の操作に大きく影響するものである。執刀医師は 3D 内視鏡モニタを確認しながらマスタマニピュレータを操作するので,操作コマンドとともに,手術室から送られてくる 3D 内視鏡映像の遅れが操作に直接響く。設問1(2)の遅延時間の行きと帰りがこの二つに当たる。
本文は続けて,そのため圧縮処理をハードウェアで行うとしている。表3 で圧縮処理を施すのは 3D 内視鏡映像と室内映像・音声だが,室内映像・音声はコミュニケーション用で,操作への影響は小さい。生体データも操作そのものには関わらない。
字数の制限はない。表3 のデータ種別の名前どおり「3D 内視鏡映像」と書く。
設問2(2)
解答欄2つ
画像の伝送データ量を削減する方法として,1 秒当たりのフレーム数を減らす方法と,1 フレーム当たりの画素数を減らす方法を比較検討する。遠隔手術システムで用いることを考慮して,フレーム数を減らす方法の有利な点及び不利な点を,それぞれ 15 字以内で述べよ。
解説
本文の根拠
〔遠隔手術システムの開発目標〕
③ より正確な手術がしやすいように,内視鏡モニタは 3D 化する。
〔通信回線の検討〕
通信速度の相違については,圧縮方法及び圧縮率を変えないで,伝送データ量を変動させる方法も検討する。
伝送データ量は,1 秒当たりのフレーム数と 1 フレーム当たりの画素数を掛けたものに比例する。フレーム数を減らす方法では,1 フレームの画素数はそのままなので,一枚一枚の映像の解像度を維持できる。より正確な手術がしやすいように内視鏡モニタを 3D 化するほど細部を見たい用途なので,解像度が落ちないのは有利な点である。
一方,1 秒当たりのフレーム数が減ると,映像の動きがこま送りのようになり,スムーズでなくなる。執刀医師はモニタの映像を見ながらマニピュレータを操作するので,これが不利な点になる。講評は,“画像がより鮮明になる”などの記述が散見されたとしている。フレーム数を減らしても画素数は元のままで,鮮明になるわけではない。問題文の条件(圧縮方法及び圧縮率を変えないで伝送データ量を変動させる)を踏まえて答える。
それぞれ15字で,有利な点は「解像度を維持できる」,不利な点は「動きがスムーズでなくなる」と簡潔に書く。解答例は10字と13字。
採点講評(IPA)
設問2(2)は,伝送データ量を削減する方法として,“有利な点”及び“不利な点”を述べてもらいたかったが,“画像がより鮮明になる”などの記述が散見された。問題文中の条件を理解して記述してほしかった。
設問3
25字以内
ハードウェアによる 3D 化画像処理ユニットを,データ圧縮処理ユニットとともに手術台に設置することにした。手術台に設置する利点を 25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔3D 内視鏡モニタの検討〕
裸眼での 3D 化を実現するためには,映像に画像処理を行ってから 3D モニタに入力する必要がある。ハードウェアによる 3D 化画像処理ユニットを,データ圧縮処理ユニットとともに手術台の制御部に設置する。
〔遠隔手術システムの概要〕
③ 遠隔オペレーション室には操作卓を設置する。
〔遠隔手術システムの概要〕
④ 手術室には,ベッド,スレーブマニピュレータなどで構成する手術台及び操作卓を設置する。
3D 内視鏡モニタは操作卓に組み込まれていて,操作卓は遠隔オペレーション室と手術室の両方に設置する。3D 化画像処理ユニットを表示する側の操作卓に置くと,操作卓ごとに 1 台ずつ,少なくとも 2 台が必要になる。
手術台は 1 台で,内視鏡の映像はすべて手術台から出ていく。手術台の制御部で 3D 化の処理をしておけば,処理済みの映像を LAN で手術室の操作卓に,通信回線で遠隔オペレーション室の操作卓に送ればよく,3D 化画像処理ユニットは 1 台で済む。講評は,単に“送信データ量が削減できる”という解答が目立ったとしている。手術台に設置することの利点を問うているので,置き場所を手術台にしたことで何が良くなるかを書く。
25字あるが,要点は「1 台で済む」ことだけである。解答例は「3D化画像処理ユニットが1台で済む。」で18字。
採点講評(IPA)
設問3は,単に“送信データ量が削減できる”との解答が目立った。3D化画像処理ユニットを手術台に設置することの利点を問う出題なので,それが明確になるように記述してもらいたかった。
設問4(1)
解答欄1つ
本文中のd に入れる適切な字句を答えよ。
解説
本文の根拠
〔安全性及びセキュリティ面の検討〕
d 中は,遠隔オペレーション室のマスタマニピュレータを優先する。
〔遠隔手術システムの概要〕
⑨ 遠隔オペレーション室の操作卓と手術室の操作卓の両方が手術台と接続されたとき,2 台のマスタマニピュレータからは同時に操作できないようにする。
〔遠隔手術システムの概要〕
⑧ 執刀医師は,遠隔オペレーション室に設置された操作卓の 3D 内視鏡モニタを確認しながら,マスタマニピュレータを操作して遠隔手術を行う。
遠隔オペレーション室と手術室の両方の操作卓が手術台と接続されたとき,2 台のマスタマニピュレータから同時には操作できないようにする。どちらを優先するかを決める必要があり,執刀医師が遠隔オペレーション室から操作して遠隔手術を行っている間は,遠隔オペレーション室のマスタマニピュレータを優先する。
続く箇条でも,通信が中断した場合は「遠隔手術を止め」手術室のマスタマニピュレータの操作を有効にするとしている。遠隔手術を行っている間が遠隔オペレーション室の優先,止めたら手術室が有効という対になっている。
字数の制限はない。本文の用語どおり「遠隔手術」と書く。
設問4(2)
50字以内
遠隔手術の場合,手術室のマスタマニピュレータを遠隔オペレーション室のマスタマニピュレータの状態に常に追随させるようにしている。その理由を,50 字以内で述べよ。
解答例
遠隔オペレーション室からの操作が無効になったとき,手術室で操作を継続する必要があるから
解説
本文の根拠
〔安全性及びセキュリティ面の検討〕
通信が中断した場合は,制御部からスレーブマニピュレータへの出力を停止して遠隔手術を止め,手術室のマスタマニピュレータの操作を有効にする。
〔安全性及びセキュリティ面の検討〕
緊急時には,手術室のスタッフの判断で,遠隔オペレーション室からの操作を無効にできるようにする。
表1 操作処理部
マスタマニピュレータの移動量からスレーブマニピュレータの絶対位置情報を算出する。
通信が中断したときや緊急時には,遠隔オペレーション室からの操作が無効になり,手術室のマスタマニピュレータの操作が有効になる。手術は途中で止められないので,そのときは手術室で操作を引き継いで継続しなければならない。
手術室のマスタマニピュレータが遠隔オペレーション室のマスタマニピュレータの状態と違っていると,引き継いだ時点でマスタマニピュレータの状態とスレーブマニピュレータの位置が食い違い,そのまま操作を続けられない。操作処理部はマスタマニピュレータの移動量からスレーブマニピュレータの絶対位置情報を算出するので,手術室のマスタマニピュレータを常に遠隔オペレーション室の状態に追随させておけば,切り替えた時点の状態から続けて操作できる。
50字で,「遠隔オペレーション室からの操作が無効になったとき」という場面と,「手術室で操作を継続する必要がある」という理由をつなぐ。解答例は43字。
出典:平成26年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問4(表記を一部改変)
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平成30年度 春期 午前Ⅰ
平成29年度 秋期 午前Ⅰ
平成29年度 秋期 午前Ⅱ
平成29年度 秋期 午後Ⅰ
平成29年度 秋期 午後Ⅱ
平成29年度 春期 午前Ⅰ
平成28年度 秋期 午前Ⅰ
平成28年度 秋期 午前Ⅱ
平成28年度 秋期 午後Ⅰ
平成28年度 秋期 午後Ⅱ
平成28年度 春期 午前Ⅰ
平成27年度 秋期 午前Ⅰ
平成27年度 春期 午前Ⅰ
平成27年度 秋期 午前Ⅱ
平成27年度 秋期 午後Ⅰ
平成27年度 秋期 午後Ⅱ
平成26年度 秋期 午前Ⅰ
平成26年度 秋期 午後Ⅰ
平成26年度 秋期 午後Ⅱ
平成26年度 春期 午前Ⅰ
平成25年度 秋期 午前Ⅰ
平成25年度 秋期 午後Ⅰ
平成25年度 秋期 午後Ⅱ
平成25年度 春期 午前Ⅰ
平成24年度 秋期 午前Ⅰ
平成24年度 秋期 午後Ⅰ
平成24年度 秋期 午後Ⅱ
平成24年度 春期 午前Ⅰ
平成23年度 秋期 午前Ⅰ
平成23年度 秋期 午後Ⅰ
平成23年度 秋期 午後Ⅱ
平成23年度 特別試験 午前Ⅰ
平成22年度 秋期 午前Ⅰ
平成22年度 秋期 午後Ⅰ
平成22年度 秋期 午後Ⅱ
平成22年度 春期 午前Ⅰ
平成21年度 秋期 午前Ⅰ
平成21年度 秋期 午後Ⅰ
平成21年度 秋期 午後Ⅱ
平成26年度 秋期 午前Ⅱ
平成25年度 秋期 午前Ⅱ
平成24年度 秋期 午前Ⅱ
平成23年度 秋期 午前Ⅱ
平成22年度 秋期 午前Ⅱ
平成21年度 秋期 午前Ⅱ
平成21年度 春期 午前Ⅰ