令和元年度 秋期に実施されたシステムアーキテクト試験
午後Ⅰの全4問(記述式)です。事例本文・設問・解答例と解説をそのまま読めます。
この試験について:システムアーキテクト試験について
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問1 サービスデザイン思考による開発アプローチ
サービスデザイン思考による開発アプローチに関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。
総合家電メーカの R 社は,“健康”をテーマとした製品として,体組成計,活動量計,ランニングウォッチなどの健康機器を製造,販売している。
〔新製品に係る取組〕
R 社は,人々が重視する価値が“モノ”から“コト”へとシフトしている近年の状況を踏まえて,自社の製品を通じた人々の生活のディジタル化の取組を推進しており,スマートフォン用のアプリケーションソフトウェア(以下,スマホアプリという)を開発している。スマホアプリの利用者は,体組成計で測定した体重,体脂肪率,筋肉量などのデータをスマートフォンに転送して,測定結果の履歴を閲覧することができる。スマホアプリは,体組成計の購入者のうち,個人情報,趣味・嗜好,健康に関するアンケートに回答した者に対して,無料で提供している。
R 社は,体組成計の新製品を半年後に発売することを決定した。併せて,現在提供しているスマホアプリを刷新して,日々の健康に関わる活動データ(以下,健康活動ログという)を登録できる新たなスマホアプリ(以下,健康管理アプリという)にすることにした。健康活動ログには,体組成計から取得するデータに加えて,活動量計で計測する歩数,脈拍,睡眠時間などの活動量,食事内容,運動記録などが含まれる。また,健康管理アプリは,これまでの個人に限定した利用に加えて,利用者同士のコミュニティ活動にも利用できる方針にした。具体的には,健康管理アプリの利用者が記録した健康活動ログをインターネット上のコミュニティ(以下,オンラインコミュニティという)で共有し,お互いの記録にコメントを付けたり,オンラインコミュニティ内で順位を競い合ったり,専門家が有料で指導したりといった,多様な方法でコミュニティ活動ができることを目指すことにした。
R 社は,健康管理アプリとオンラインコミュニティを融合したサービス(以下,新サービスという)を活用してビジネスを拡大するために,自社でオンラインコミュニティを運営し,次に示す関連部署で新サービスの開発,運営を行うことにした。
従来から行っていた体組成計,活動量計を含む健康機器の商品企画,開発に加えて,新たにオンラインコミュニティを企画,運営し,利用者が継続的にコミュニティ活動を行うことを支援する。
R 社が提供するスマホアプリ,Web サイトなどの開発を行い,その一環として健康管理アプリ及びオンラインコミュニティサイトの開発,サービス開始後の追加開発などを行う。
従来から行っていた健康機器の販売促進に加えて,新たにオンラインコミュニティを利用し,R 社の商品,有料サービスなどの販売促進活動を行う。
従来から行っていた健康機器の購入者情報,アンケート情報,市場調査結果などの管理,分析に加えて,新たにオンラインコミュニティで得られる新サービスの利用者情報,健康活動ログなどのうち,利用許諾を得たデータを分析し,マーケティング施策を検討する。
R 社は,健康増進事業部とディジタル戦略部から担当者を集めたプロジェクトチーム(以下,PT という)を立ち上げ,新サービスの企画,開発を行うことにした。
〔新サービスの開発方針〕
現在提供しているスマホアプリは,利用者のスマートフォン内でデータを管理,閲覧するだけのものであったので,体組成計との無線通信の方式,機能の実用性など,提供する“モノ”としての品質を重視した開発を行っていた。一方で,新サービスの開発では,従来のスマホアプリの機能の提供にとどまらず,利用者の体験価値に着目し,新サービスを通じて利用者の健康意識を高め,生活習慣の改善などの健康づくりにつながることを重視することにした。また,新サービスとして提供する機能を一度に全て開発するのではなく,実際の利用者からのフィードバック内容を分析し,改善と軌道修正を繰り返すことで,段階的に新サービスの機能を拡充させ,利用者が継続的にコミュニティ活動を行えることを目指すことにした。
これらの方針に基づき,利用者の視点を中心にサービス及び業務を設計する“サービスデザイン思考”のアプローチによる開発を行うことにした。
〔新サービスを利用するペルソナの作成〕
新サービスは,R 社の従来の商品企画,開発とは異なるので,新サービスで提供する機能は,ふだんから健康機器の開発などに関わっている提供者側の視点だけでなく,想定される利用者の人物像を念頭において,利用者側の視点から具体的に考え出す必要があった。
そこで PT は,まず,想定される基本機能を列挙した。さらに,PT 内だけでは想定できない利用者の潜在的ニーズを抽出するために,R 社の体組成計の主な購入者層である“健康意識の高い 20 代女性”と,体組成計の購入者数に占める割合は低いものの新たなターゲット層としたい“健康に問題意識を持つ 40 代男性”を,仮想的な利用者であるペルソナとして分析することにした。
ペルソナは,実際に体組成計を購入,利用している代表的な人物像に近づけるために,PT のメンバの想像だけで作成するのではなく,a に協力を依頼し,より具体的な人物像を設定した。新サービスを利用するペルソナを表 1 に示す。
表1 新サービスを利用するペルソナ
〔カスタマジャーニマップの作成〕
①PT のメンバに加えて,社内のペルソナに近い人物を集めて議論し ,それぞれのペルソナがどのように体組成計及び新サービスを利用し,その際,どのような思考・感情を持つかなどを時系列で整理したカスタマジャーニマップを作成した。カスタマジャーニマップで挙がった主な内容を表 2 に示す。
表2 カスタマジャーニマップで挙がった主な内容
〔新たな機能の抽出〕
PT では,当初想定していた新サービスの基本機能に加えて,カスタマジャーニマップによる分析結果を基に,機能を新たに抽出した。新たに抽出した機能を表 3 に示す。また,健康増進事業部と営業推進部からの提案で,ある狙いから健康ポイントに関する機能を提供することにした。健康ポイントは,オンラインコミュニティの利用頻度,目標の達成,順位などに応じて付与する。また,獲得したポイントは,R 社の商品,オンラインコミュニティ上の有料サービスなどの購入時に使えることにした。
表3 新たに抽出した機能
〔新サービスの機能のリリース方針〕
新製品の体組成計の発売日に合わせて短期間で新サービスをリリースする必要があるので,PT は,開発機能に優先順位を設定し,初期リリースの機能を絞り込むことにした。
まず,利用者情報及び健康活動ログの管理,情報セキュリティ対策,プライバシー管理など,新サービスを提供する上での必須機能を初期リリースの対象とした。一方で,一定量のデータの蓄積と有効性検証を行わないと誤った情報の提供をしかねない機能については,初期リリースの対象外とした。
その他の機能については,機能が新サービスの開発方針であるc に寄与するかどうかの観点で分析し,優先順位を設定し,優先順位の高い順に,開発量が開発期間及び予算内に収まる機能を初期リリースの対象とした。
その上で,短期間で開発可能で,変更がしやすいシステム構造を採用することにした。
出題趣旨(IPA)
ディジタル化の取組などによって,新たなサービスを提供する際,システムアーキテクトには,機能の実用性などの“モノ”としての品質だけでなく,サービス利用者の“体験価値”にも着目して,要件を定義する能力が求められる。本問では,健康管理を行うスマートフォン用のアプリケーションソフトウェア及びオンラインコミュニティを開発するプロジェクトを題材として,“サービスデザイン思考”のアプローチを適用したサービス及び業務の設計,機能リリースの方針などを決定することについて,システムアーキテクトとしての実践的な能力を問う。
採点講評(問全体・IPA)
問1では,スマートフォン用のアプリケーションソフトウェア及びオンラインコミュニティの開発を例にとり,サービスデザイン思考による開発アプローチについて出題した。全体として,正答率は高かった。
システムアーキテクトとして,本問で挙げたようなペルソナ分析,カスタマジャーニマップの作成などを通じて,サービスデザイン思考による開発アプローチを実践できるようになってほしい。
設問と解答例
設問1
解答欄2つ
〔新サービスを利用するペルソナの作成〕について,代表的な人物像に近いペルソナにするために協力を依頼した部署はどこか。本文中のa に入れる部署名を答えよ。また,その部署に協力を依頼した理由を 35 字以内で述べよ。
〔理由〕解答例
体組成計の購入者情報及びアンケート情報を管理しているから
解説
本文の根拠
〔新サービスを利用するペルソナの作成〕
ペルソナは,実際に体組成計を購入,利用している代表的な人物像に近づけるために,PT のメンバの想像だけで作成するのではなく,a に協力を依頼し,より具体的な人物像を設定した。
〔新製品に係る取組〕(4) マーケティング部
従来から行っていた健康機器の購入者情報,アンケート情報,市場調査結果などの管理,分析に加えて
〔新製品に係る取組〕
スマホアプリは,体組成計の購入者のうち,個人情報,趣味・嗜好,健康に関するアンケートに回答した者に対して,無料で提供している。
ペルソナを「実際に体組成計を購入,利用している代表的な人物像」に近づけるには,実際の購入者についての情報を持つ部署の協力が要る。関連部署のうち,健康機器の購入者情報とアンケート情報を管理しているのはマーケティング部である。PT は健康増進事業部とディジタル戦略部の担当者で構成されているので,PT の外にあるこの部署に協力を依頼することになる。
アンケートは,スマホアプリの提供を受ける体組成計の購入者が,個人情報,趣味・嗜好,健康について回答したものである。表1 のペルソナには職業,家族構成,趣味,食生活,健康状態と意識が並んでおり,これらを具体的に設定するにはアンケート情報が材料になる。講評は,購入者情報だけを挙げてアンケート情報を管理していることを理由に書いていない解答が散見されたとしている。
部署名は本文の表記どおり「マーケティング部」と書く。理由は35字で「体組成計の購入者情報」と「アンケート情報」の両方を管理していることを書く。解答例は「体組成計の購入者情報及びアンケート情報を管理しているから」で28字。
採点講評(IPA)
設問1は,部署名については正答率が高かった。一方で,理由についてはペルソナの作成に当たってアンケート情報が必要になるにもかかわらず,アンケート情報を管理していることが理由として記載されていない解答が散見された。
設問2
40字以内
〔カスタマジャーニマップの作成〕について,本文中の下線①のような議論を行った狙いを 40 字以内で述べよ。
解答例
利用者側の視点から新サービスで必要とされる具体的な機能を考え出すため
解説
本文の根拠
〔新サービスを利用するペルソナの作成〕
新サービスで提供する機能は,ふだんから健康機器の開発などに関わっている提供者側の視点だけでなく,想定される利用者の人物像を念頭において,利用者側の視点から具体的に考え出す必要があった。
〔カスタマジャーニマップの作成〕
①PT のメンバに加えて,社内のペルソナに近い人物を集めて議論し
〔新製品に係る取組〕
R 社は,健康増進事業部とディジタル戦略部から担当者を集めたプロジェクトチーム(以下,PT という)を立ち上げ
PT のメンバは健康増進事業部とディジタル戦略部の担当者で,ふだんから健康機器の開発などに関わっている。本文は,新サービスの機能を提供者側の視点だけでなく,利用者側の視点から具体的に考え出す必要があったと書いている。社内のペルソナに近い人物を議論に加えるのは,利用者に近い立場からの思考・感情を取り込み,利用者側の視点で必要な機能を考え出すためである。
実際に,このカスタマジャーニマップの分析結果を基に,表3 の機能が新たに抽出されている。講評は,ペルソナやカスタマジャーニマップを作成すること自体を狙いとした解答が多かったとしている。作成は手段であり,問われているのは下線①の議論で何を得ようとしたかである。
40字で「利用者側の視点」と「新サービスで必要な機能を考え出す」の二つを入れる。解答例は「利用者側の視点から新サービスで必要とされる具体的な機能を考え出すため」で34字。
採点講評(IPA)
設問2は,正答率が低かった。PTのメンバはふだんから健康機器の開発などに関わっており,提供者側の視点で考えがちになってしまうので,利用者が本当に必要なものが何なのかを,利用者側の視点で考える必要があることに気付いてほしかったが,ペルソナ及びカスタマジャーニマップの作成に関する解答が多かった。
設問3(1)
30字以内
健康増進事業部と営業推進部が提案した健康ポイントに関する機能には,それぞれ狙いがある。一つは,営業推進部の狙いとして,ポイントを利用して R 社の商品,有料サービスなどを多くの利用者に使ってもらうことである。もう一つの健康増進事業部の狙いを 30 字以内で述べよ。
解答例
利用者に継続的にコミュニティ活動を行ってもらうこと
解説
本文の根拠
〔新製品に係る取組〕(1) 健康増進事業部
新たにオンラインコミュニティを企画,運営し,利用者が継続的にコミュニティ活動を行うことを支援する。
〔新たな機能の抽出〕
健康ポイントは,オンラインコミュニティの利用頻度,目標の達成,順位などに応じて付与する。
健康ポイントは,オンラインコミュニティの利用頻度,目標の達成,順位などに応じて付与される。コミュニティをよく使い,活動を続けるほどポイントがたまる仕組みで,利用者に活動を続ける動機を与える。
健康増進事業部の役割は,オンラインコミュニティを企画,運営し,利用者が継続的にコミュニティ活動を行うことを支援することである。営業推進部の狙い(ポイントで R 社の商品や有料サービスを使ってもらう)は付与したポイントの使い道の側にあり,健康増進事業部の狙いはポイントを付与する側,つまり継続的な活動を促すことにある。〔新サービスの開発方針〕にも「利用者が継続的にコミュニティ活動を行えることを目指す」とある。
30字で「継続的にコミュニティ活動を行ってもらう」ことを書く。解答例は「利用者に継続的にコミュニティ活動を行ってもらうこと」で25字。
設問3(2)
解答欄1つ
表 3 中の A-4 の機能について,計算根拠のデータになる,b に入れる字句を答えよ。
解説
本文の根拠
表3 A-4
基礎代謝量及び当日のb から計算した消費カロリの推計と,体重の増減目標を踏まえた摂取カロリ目安の通知機能。
表2 閲覧・分析 思考・感情
活動量などから摂取カロリをどの程度にすべきなのかを知りたい(B)。
〔新製品に係る取組〕
活動量計で計測する歩数,脈拍,睡眠時間などの活動量
消費カロリは,何もしなくても消費する基礎代謝量に,その日に体を動かした分を加えて推計する。A-4 では基礎代謝量は A-3 で自動計算されるので,残る計算根拠は当日の体の動きを表すデータである。本文では,活動量計で計測する歩数,脈拍,睡眠時間などをまとめて「活動量」と呼んでいる。
表2 では,ペルソナB が「活動量などから摂取カロリをどの程度にすべきなのかを知りたい」としている。A-4 の摂取カロリ目安の通知はこの思考・感情に応える機能である。活動量は活動量計で計測され,A-1(活動量計との定期的なデータ連携機能)で健康管理アプリに取り込まれる。
答えは本文の語をそのまま使って「活動量」。歩数だけ,脈拍だけでは一部にとどまる。
設問3(3)
30字以内
表 3 中の B-6 の機能を新たに抽出した理由を,30 字以内で述べよ。
解答例
利用者によっては,一部のデータは共有したくないから
解説
本文の根拠
表2 コミュニティ活動 思考・感情
ランニングの記録は共有したいが,体重など一部のデータは共有したくない(A)。
表3 B-6
健康管理アプリからオンラインコミュニティにアップロードするデータを任意に選択できる機能
〔新製品に係る取組〕
具体的には,健康管理アプリの利用者が記録した健康活動ログをインターネット上のコミュニティ(以下,オンラインコミュニティという)で共有し
B-6 は,オンラインコミュニティにアップロードするデータを利用者が選べる機能である。表3 の機能はカスタマジャーニマップによる分析結果を基に抽出されたので,表2 の中にこの機能を必要とする思考・感情を探す。コミュニティ活動のフェーズで,ペルソナA が「ランニングの記録は共有したいが,体重など一部のデータは共有したくない」としている。
健康管理アプリの健康活動ログには体重,体脂肪率などの体組成計のデータも含まれる。これを一律にコミュニティで共有すると,共有したくないデータまで公開されてしまう。利用者によって共有したいデータとしたくないデータがあるので,選択できるようにした。
30字で「利用者によっては」と「一部のデータは共有したくない」を書く。解答例は「利用者によっては,一部のデータは共有したくないから」で25字。
設問4(1)
一定量のデータの蓄積と有効性検証を行わないと誤った情報の提供をしかねない機能として初期リリースの対象外とした機能はどれか。表 3 中の機能 ID を用いて答えよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔新サービスの機能のリリース方針〕
一方で,一定量のデータの蓄積と有効性検証を行わないと誤った情報の提供をしかねない機能については,初期リリースの対象外とした。
表3 B-4
膨大な健康活動ログとAI分析技術を利用した無料の生活習慣改善助言機能
「一定量のデータの蓄積」が前提になる機能を表3 から探す。B-4 は膨大な健康活動ログと AI 分析技術を利用して生活習慣改善の助言をする機能である。サービス開始直後は健康活動ログが蓄積されておらず,AI 分析の結果が妥当かどうかの検証もできていないので,誤った助言をしかねない。
ほかの機能は,データの蓄積がなくても成り立つ。A-2 の AI 画像認識は「実績のある他社製の技術を活用する」とあり,有効性が確かめられている。A-3・A-4 は一般的な計算式による計算,B-5 は専門家による指導で,蓄積したデータに依存しない。
答えは表3 の機能 ID で「B-4」と書く。
設問4(2)
解答欄1つ
優先順位の設定の観点として,本文中のc に入れる観点を 15 字以内で答えよ。
解説
本文の根拠
〔新サービスの機能のリリース方針〕
その他の機能については,機能が新サービスの開発方針であるc に寄与するかどうかの観点で分析し
〔新サービスの開発方針〕
新サービスを通じて利用者の健康意識を高め,生活習慣の改善などの健康づくりにつながることを重視することにした。
空欄 c は「新サービスの開発方針である」観点なので,〔新サービスの開発方針〕の中で新サービスとして重視することを探す。そこには,新サービスを通じて利用者の健康意識を高め,生活習慣の改善などの健康づくりにつながることを重視すると書かれている。機能が利用者の健康づくりに寄与するかどうかで優先順位を付ければ,開発方針に沿った機能から初期リリースに入る。
講評は,「利用者の体験価値」や「サービスデザイン思考」と書いた解答が散見されたとしている。体験価値への着目やサービスデザイン思考は開発アプローチとして重視することで,新サービスが目指す成果ではない。新サービスとして重視する観点を答える必要がある。
15字で本文の語を使い「利用者の健康づくり」とする。解答例は9字。
採点講評(IPA)
設問4(2)は,何に寄与するかどうかの観点として,新サービスの開発方針として記載されている“利用者の健康づくり”と解答してほしかったが,“利用者の体験価値”や“サービスデザイン思考”といった解答が散見された。開発アプローチとして重視することではなく,新サービスとして重視する観点から解答する必要があることに気付いてほしかった。
設問4(3)
30字以内
短期間で開発可能で,変更がしやすいシステム構造を採用することにした,新サービスの開発方針上の理由は何か。30 字以内で述べよ。
解答例
段階的に新サービスの機能を拡充させることにしたから
解説
本文の根拠
〔新サービスの開発方針〕
また,新サービスとして提供する機能を一度に全て開発するのではなく,実際の利用者からのフィードバック内容を分析し,改善と軌道修正を繰り返すことで,段階的に新サービスの機能を拡充させ,利用者が継続的にコミュニティ活動を行えることを目指すことにした。
〔新サービスの機能のリリース方針〕
その上で,短期間で開発可能で,変更がしやすいシステム構造を採用することにした。
「短期間で開発可能」は,新製品の体組成計の発売日に合わせて短期間でリリースする必要があることから説明できる。しかし設問は「新サービスの開発方針上の理由」を問うので,〔新サービスの開発方針〕の中から「変更がしやすい」ことが必要になる記述を探す。
開発方針では,機能を一度に全て開発するのではなく,利用者からのフィードバックを分析し,改善と軌道修正を繰り返して段階的に機能を拡充させるとしている。初期リリースの後も機能の追加や変更が続くので,変更しやすい構造が要る。〔新製品に係る取組〕でもディジタル戦略部が「サービス開始後の追加開発」を行うとしている。
30字で「段階的に機能を拡充させる」ことを書く。解答例は「段階的に新サービスの機能を拡充させることにしたから」で25字。
出典:令和元年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問1(表記を一部改変)
問2 容器管理システムの開発
容器管理システムの開発に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
D 社は,化学品を製造・販売するメーカである。製造した化学品を,様々な形状・容量の瓶(以下,容器という)に充填し,製品として顧客へ出荷する。顧客が製品を使用し,空になった容器は,D 社が回収して再利用している。
現在は,生産管理システムから受領する製造計画に基づいて化学品を充填し,販売管理システムで製品の販売管理を行っている。このたび,顧客サービスの向上,容器の管理強化及び作業の効率向上のために,容器管理システムを新規に開発することにした。
〔現行業務の概要〕
現行業務の概要は,次のとおりである。
D 社の化学品は見込生産で,日ごとに生産する総量を,生産管理システムで製造計画として決定している。化学品は,製造の最終工程のラインで,化学品ごとに一意に定められた容器種の容器に充填されて,製品となる。“容器種”とは,どのような形状と容量の容器かを表す。 充填に必要な容器は,製造計画に従って,容器倉庫から出庫される。同じ容器種が,異なる化学品の充填に用いられることもある。 製品コード,化学品名,ロット番号,充填日を印刷した製品ラベルを生産管理システムから出力し,製品の容器に貼る。 製品ラベルが貼られた製品を,製品倉庫に入庫・保管する。入庫時に,販売管理システムに入庫登録を行う。 製品倉庫では,受注した製品の出荷準備のために,販売管理システムから,ピッキングリストを出力する。 倉庫作業者は,ピッキングリストの指示に従って,製品ラベルを目視確認しながら出荷すべき製品を集める。 倉庫作業者は,ピッキングされた製品を,出荷場所に移動する。移動時に,販売管理システムに出庫登録を行う。 出荷場所では,出荷のために手配された配送のトラック便ごとに,販売管理システムから,積込リスト及び出荷伝票を出力する。 出荷作業者は,積込リストの指示どおり製品がそろっているかどうかのチェックと,配送業者が積込リストの指示どおり積込みを行ったかどうかの検品を行う。検品に合格したトラック便から出発し,顧客に製品を納品する。 出荷作業者は,出荷実績を計上するために,出荷場所の端末から,出荷した製品の情報を販売管理システムに入力する。 配送業者は,顧客が空になった容器を保管していた場合,容器返却書を起票して容器を回収し,D 社の容器回収場所へ持ち帰る。 回収作業者は,容器回収場所で,回収された容器と容器返却書の照合を行う。 回収された容器は洗浄され,検査担当者が検査を行う。 検査に合格した容器は,再利用が可能になり,次の化学品の充填に利用されるまで,容器倉庫に保管される。 〔関連部門からの要望〕
容器管理システムを開発するに当たり,関連部門から次のような要望が出された。
(1) 容器一つ一つが,今どのような状態にあるのかを管理できるようにしてほしい。 (2) 作業者が行っている入力などの作業の負担を軽減してほしい。 (3) 顧客が誤って使用期限を過ぎた製品を使ってしまわないように,顧客の下に使用期限間際の製品があれば,その期限の 1 週間前を過ぎたら,システムで警告を出せるようにしてほしい。 〔容器管理システムの開発方針〕
(1) 容器管理システムは,購入,容器倉庫での保管,充填,製品倉庫での保管,出荷,回収,検査などの容器利用サイクルの状態を,容器単位に管理する。 (2) 容器一つ一つの管理を行う手段として,無線通信方式の IC タグ(以下,RF タグという)を採用する。 (3) 容器倉庫,製造の最終工程のライン及び容器回収場所に,ゲート型の RF タグリーダライタ(以下,ゲートアンテナという)を設置する。 (4) 製品倉庫,出荷場所,容器回収場所及び容器洗浄場所に,ハンディ型の RF タグリーダライタ(以下,HT という)を導入する。HT は,バーコードの読取りもできる機種とする。 (5) 容器管理システムとして,容器購入処理,容器保管処理,充填処理,容器回収処理,容器洗浄・検査処理,及び容器状態検索処理の各機能を新規に開発する。 (6) ピッキング処理,積込・出荷処理,製品在庫管理処理,及び使用期限警告処理は,現行の販売管理システムの改修で対応する。 〔D 社で採用した RF タグ及び関連する機器などの説明〕
(1) RF タグの通信距離は数メートルである。 (2) RF タグのデータレイアウトを,図 1 に示す。 RF タグ番号は,RF タグの製造時に書き込まれるタグ固有の番号であり,書換えはできない。容器情報領域は,RF タグを容器に貼付する際に書き込み,書込みロックを掛ける。書込みロックが掛けられた領域は,ロックを外さない限り値を変更できない。製品情報領域は,書込みが可能で,RF タグ購入時はクリアされている。
(3) ゲートアンテナは,ゲートを通過する RF タグを一括で読み書きできる。RF タグの一括読み書きでは,環境によって数%程度の漏れが発生することを事前検証で確認している。書込みについては,エラーを訂正する機能を備えているので,書込み時の異常は考慮しなくてよい。 (4) HT は RF タグを個別に読み書きでき,バーコードの読取りも可能である。 (5) D 社は,容器の誤使用を防ぐために,RF タグへの書込み処理では,対象項目がクリアされていない場合は書き込みできないよう,プログラムでガードする。
図1 RFタグのデータレイアウト
〔容器管理システムの処理概要〕
容器管理システムの処理概要は,次のとおりである。
なお,容器一つ一つが,今どのような状態にあるかの管理を行うために,容器状態管理ファイルを設ける。
容器の購入時に,RF タグに容器種コード,容器番号を書き込み,容器に貼付して,容器倉庫へ運ぶ。RF タグに書き込む際,容器種コード,容器番号をキーにして容器状態管理ファイルに登録し,容器状態区分を“未使用”にする。 化学品の充填が可能になった容器を容器倉庫に入庫する。その際に,ゲートアンテナで RF タグを読み込んで,容器状態管理ファイルによるチェックを行い,充填可能な状態であることを確認する。その後,入庫処理を行い,それぞれの容器について,容器状態管理ファイルの容器状態区分を“容器倉庫入庫”にする。 容器の出庫は,製造計画で決定した化学品の当日分の生産総量と製品マスタに登録されている情報を用いて,①どの容器が何個必要かを計算し ,出庫指示を出す。出庫時に,ゲートアンテナで RF タグを読み込んで,それぞれの容器について,容器状態管理ファイルの容器状態区分を“容器倉庫出庫”にする。 製造の最終工程で,製品がゲートアンテナを通過する際に,一つ一つの RF タグの製品情報領域へ製品コード,ロット番号,充填日の書込みを行う。この際,容器状態管理ファイルの容器状態区分を“充填済”にする。 製品は製品倉庫に運ぶ。 容器回収場所のゲートアンテナで,回収した容器の RF タグを一括して読み込む。 容器返却書に記載された容器返却数をシステムに入力して,RF タグの読込み件数とのチェックをシステムで行い,数が一致したら,それぞれの容器について,容器状態管理ファイルの容器状態区分を“回収”にする。 数が不一致の場合は,まず,容器返却数のシステムへの入力が正しいことを確認して,その後,HT による個別の読込みに切り替える。個別読込み時に,容器状態管理ファイルの容器状態区分を“回収”にする。個別読込み件数と容器返却書に記載された容器返却数が不一致の場合は,エラー処理を行う。 回収した容器は,容器洗浄場所で洗浄され,検査担当者が再利用の可否についての検査を行った後,RF タグの製品情報領域をクリアする。検査に合格した容器は容器倉庫へ運び,不合格となった容器は廃棄する。検査結果によって,容器状態管理ファイルの容器状態区分を“合格”又は“廃棄”にする。 廃棄した容器に貼付してあった RF タグは,容器からはがして,再利用できるように,HT を用いて,②ある処理 を行う。 容器状態管理ファイルの情報を任意の条件で検索する。 容器管理システムで使用する主要なファイルを表 1 に示す。
表1 容器管理システムで使用する主要なファイル
〔販売管理システムの改修〕
容器管理システムの新規開発に伴い,販売管理システムを,次のとおり改修する。
ピッキングリストへバーコードを印字し,HT でピッキング指示データを受ける。 ピッキング指示データに基づき,HT で,ピッキング対象となる容器の RF タグを読み込む。ピッキング指示データと RF タグ情報をチェックし,製品コードが合っていれば RF タグへ受注伝票番号を書き込み,容器状態管理ファイルの容器状態区分を“ピッキング済”にする。合っていなければエラー処理を行う。 積込リストへバーコードを印字し,HT で積込指示データを受ける。 HT で,積込対象となる製品の RF タグを読み込み,積込指示データと RF タグ情報をチェックする。③データ内容 及び数が合っていれば,検品を完了して出荷する。この際,容器状態管理ファイルの容器状態区分を“出荷”にする。合っていなければエラー処理を行う。 HT の検品を完了した実績データを取り込んで,a 。 製品倉庫への入庫時に,HT で RF タグを読み,読み込んだデータで入庫実績を計上できるようにする。この際,容器状態管理ファイルの容器状態区分を“製品倉庫入庫”にする。 製品倉庫からの出庫時に,HT で RF タグを読み,読み込んだデータで出庫実績を計上できるようにする。この際,容器状態管理ファイルの容器状態区分を“製品倉庫出庫”にする。 顧客の下にある,使用期限が過ぎそうな製品及び使用期限が過ぎた製品を,容器管理システムの容器状態検索処理を利用して次の条件で検索し,顧客に警告を発することができるようにする。 条件:容器状態管理ファイルの容器状態区分の値が“b ”で,c が本日日付の 1 週間後より前の日付である容器
出題趣旨(IPA)
顧客サービスの向上,社内での管理強化及び作業効率化などのために,新規システムの開発や既存システムの改善が行われることが多く,システムアーキテクトには,その際に,システム要件を定義し,システム方式の設計を行う能力が求められる。本問では,化学品メーカでの,化学品を充填する容器の管理システムを題材として,新規のシステム開発や既存システムの改善における,システム要件の定義及びシステム方式の設計について,具体的な記述を求めている。業務課題・利用者の要望などを踏まえて,システム機能構造やシステム方式を定義し設計していく能力を問う。
採点講評(問全体・IPA)
問2では,化学品メーカでの,化学品を充填する容器の管理システムを例にとり,新規のシステム開発や既存システムの改修における,システム要件の定義及びシステム方式の設計について出題した。問題文をしっかり理解した上で,設問に答えれば正解を導けるよう出題したが,設問を見て,問題文のどこかを引用して答えればよいという誤った判断をした結果,正解を導けなかったと思われる受験者が多かった。
システムアーキテクトとして,業務要件を十分に理解した上で,システム要件を決めていくことができるように心掛けてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
容器倉庫へ入庫可能な容器の容器状態区分の値を全て答えよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔容器管理システムの処理概要〕(1) 容器購入処理
容器の購入時に,RF タグに容器種コード,容器番号を書き込み,容器に貼付して,容器倉庫へ運ぶ。
〔容器管理システムの処理概要〕(1) 容器購入処理
容器種コード,容器番号をキーにして容器状態管理ファイルに登録し,容器状態区分を“未使用”にする。
〔容器管理システムの処理概要〕(5) 容器洗浄・検査処理
検査に合格した容器は容器倉庫へ運び,不合格となった容器は廃棄する。検査結果によって,容器状態管理ファイルの容器状態区分を“合格”又は“廃棄”にする。
〔容器管理システムの処理概要〕(2) 容器保管処理
化学品の充填が可能になった容器を容器倉庫に入庫する。
容器倉庫に運ばれる容器を処理概要から探すと,二つの経路がある。一つは購入した新しい容器で,容器購入処理で容器状態区分を“未使用”にして容器倉庫へ運ぶ。もう一つは回収して洗浄・検査に合格した容器で,容器状態区分を“合格”にして容器倉庫へ運ぶ。
容器保管処理では,入庫時に容器状態管理ファイルで充填可能な状態であることを確認する。充填可能な状態とは,この二つの区分である。“回収”はまだ洗浄・検査が済んでおらず,“廃棄”は再利用しない。“容器倉庫入庫”は入庫した後に付ける区分なので,入庫前の区分にはならない。
容器状態区分の値は本文の表記どおりに書き,二つとも挙げる。解答例は「未使用,合格」。
設問1(2)
本文中の下線①で用いる,製品マスタに登録されている情報は何か。表 1 中の属性名を用いて全て答えよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔容器管理システムの処理概要〕(2) 容器保管処理
容器の出庫は,製造計画で決定した化学品の当日分の生産総量と製品マスタに登録されている情報を用いて,①どの容器が何個必要かを計算し,出庫指示を出す。
表1 製品マスタ
製品マスタ:製品コード(主キー),化学品名,容器種コード,容器一個当たり標準充填量,製品使用可能日数。
〔現行業務の概要〕(1) 充填
化学品は,製造の最終工程のラインで,化学品ごとに一意に定められた容器種の容器に充填されて,製品となる。
下線①は「どの容器が」と「何個必要か」の二つを計算する。どの容器かは,化学品ごとに一意に定められた容器種で決まるので,製品マスタの容器種コードを使う。何個かは,当日分の生産総量を容器一個に充填する量で割れば求まるので,容器一個当たり標準充填量を使う。
製品マスタのほかの属性は計算に使わない。製品コードは製品を特定するキーで,計算の材料ではない。化学品名は名称,製品使用可能日数は使用期限の計算に使う属性である。生産総量は製造計画から得るので,製品マスタから取る必要はない。
表1 の属性名をそのまま使い,二つとも答える。解答例は「容器種コード,容器一個当たり標準充填量」。
設問2(1)
解答欄2つ
容器回収処理において,HT による個別読込み時に,数が一致するケースと不一致になるケースがある。それらはどのようなときに起きるか,それぞれ 30 字以内で述べよ。
〔不一致になるケース〕解答例
容器返却書の容器返却数と実際の容器の数が違っているとき
解説
本文の根拠
〔D 社で採用した RF タグ及び関連する機器などの説明〕(3)
RF タグの一括読み書きでは,環境によって数%程度の漏れが発生することを事前検証で確認している。
〔容器管理システムの処理概要〕(4) 容器回収処理
数が不一致の場合は,まず,容器返却数のシステムへの入力が正しいことを確認して,その後,HT による個別の読込みに切り替える。
〔容器管理システムの処理概要〕(4) 容器回収処理
個別読込み件数と容器返却書に記載された容器返却数が不一致の場合は,エラー処理を行う。
〔現行業務の概要〕(4) 容器回収
配送業者は,顧客が空になった容器を保管していた場合,容器返却書を起票して容器を回収し,D 社の容器回収場所へ持ち帰る。
HT による個別読込みは,ゲートアンテナの一括読込み件数と容器返却数が合わず,かつ返却数の入力が正しいと確認できた後に行う。個別読込みの件数が容器返却数と一致するのは,実際の容器の数は返却書どおりだったのに,一括読込みで読み漏れが起きていたときである。一括読み書きでは数%程度の漏れが発生することが事前検証で分かっている。
個別読込みでも一致しないのは,読み漏れではなく,実物の数そのものが容器返却書の容器返却数と違っているときである。容器返却書は配送業者が起票するので,記載の誤りや回収時の数え違いが起こりうる。講評は,ゲートアンテナの一括読込みで一致・不一致になるケースと取り違えた解答が多かったとしている。問われているのは個別読込み時の結果なので,一括読込みで数が合わなかったことは前提になる。
どちらも30字以内で「どのようなときか」を書く。解答例は,一致するケースが「RFタグの一括読込みで読込み漏れが発生したとき」で23字,不一致になるケースが「容器返却書の容器返却数と実際の容器の数が違っているとき」で27字。
採点講評(IPA)
設問2(1)は,正答率が低かった。HTによる個別読込みで読み込んだ結果,一致するケースと不一致になるケースを問うたが,ゲートアンテナでの一括読込みで数が一致するケースと不一致になるケースと勘違いした解答が多かった。
設問2(2)
30字以内
本文中の下線②のある処理とは何か。30 字以内で述べよ。
解答例
書込みロックを外して,容器情報領域をクリアする処理
解説
本文の根拠
〔D 社で採用した RF タグ及び関連する機器などの説明〕(2)
容器情報領域は,RF タグを容器に貼付する際に書き込み,書込みロックを掛ける。書込みロックが掛けられた領域は,ロックを外さない限り値を変更できない。
〔D 社で採用した RF タグ及び関連する機器などの説明〕(5)
D 社は,容器の誤使用を防ぐために,RF タグへの書込み処理では,対象項目がクリアされていない場合は書き込みできないよう,プログラムでガードする。
〔容器管理システムの処理概要〕(5) 容器洗浄・検査処理
検査担当者が再利用の可否についての検査を行った後,RF タグの製品情報領域をクリアする。
はがした RF タグを別の容器に再利用するには,容器購入処理と同じように,容器情報領域に新しい容器の容器種コードと容器番号を書き込めなければならない。ところが容器情報領域には書込みロックが掛かっていて,ロックを外さない限り値を変更できない。さらに書込み処理は,対象項目がクリアされていなければ書き込めないようにガードされている。
そこで,HT で書込みロックを外し,容器情報領域をクリアしておく。製品情報領域は,検査の後にすでにクリアされているので,ここで行う必要はない。RF タグ番号は書き換えられないが,タグ固有の番号なので再利用の妨げにはならない。
30字で「書込みロックを外す」と「容器情報領域をクリアする」の二つを書く。解答例は「書込みロックを外して,容器情報領域をクリアする処理」で25字。
設問3(1)
本文中の下線③のデータ内容を,表 1 中の属性名を用いて全て答えよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔販売管理システムの改修〕(2) 積込・出荷処理
HT で,積込対象となる製品の RF タグを読み込み,積込指示データと RF タグ情報をチェックする。③データ内容及び数が合っていれば,検品を完了して出荷する。
〔販売管理システムの改修〕(1) ピッキング処理
ピッキング指示データと RF タグ情報をチェックし,製品コードが合っていれば RF タグへ受注伝票番号を書き込み
図1 RF タグのデータレイアウト
製品情報領域(製品コード,ロット番号,充填日,受注伝票番号,(予備))
下線③のデータ内容は,積込指示データと RF タグ情報を突き合わせる項目である。RF タグに入っているのは図1 の項目だけなので,その中から積込の正しさを確かめられるものを選ぶ。ピッキング処理で RF タグに受注伝票番号が書き込まれているので,受注伝票番号でどの受注の積込かを確かめ,製品コードで製品が正しいかを確かめる。
講評は,RF タグのデータレイアウトにない属性は正解にならないとしている。顧客コードは容器状態管理ファイルにはあるが RF タグにはないので,RF タグ情報とのチェックには使えない。ロット番号や充填日は RF タグにあるが,受注に対して積み込む製品が正しいかどうかの判断には関係しない。
表1 の属性名を使って二つとも答える。解答例は「受注伝票番号,製品コード」。
採点講評(IPA)
設問3(1)は,正答率が低かった。HTで受けた積込指示データとHTで読み込んだRFタグ情報のチェックであるから,RFタグのデータレイアウトにない属性は正解にはならない。一般論で解答するのではなく,問題文をよく読めば正解が導けたはずである。
設問3(2)
解答欄1つ
積込・出荷処理について,a に入れる適切な字句を答えよ。
解説
本文の根拠
〔販売管理システムの改修〕(2) 積込・出荷処理
HT の検品を完了した実績データを取り込んで,a 。
〔現行業務の概要〕(3) 積込・出荷
出荷作業者は,出荷実績を計上するために,出荷場所の端末から,出荷した製品の情報を販売管理システムに入力する。
〔関連部門からの要望〕
(2) 作業者が行っている入力などの作業の負担を軽減してほしい。
現行業務では,出荷作業者が出荷実績を計上するために,出荷した製品の情報を端末から販売管理システムに入力している。改修後は HT で検品した結果が実績データとして手元にあるので,これを取り込めば入力しなくても出荷実績を計上できる。作業者の入力の負担を軽減してほしいという要望に応える改修である。
製品在庫管理処理でも,HT で読み込んだデータで入庫実績・出庫実績を計上できるようにしており,同じ考え方である。容器状態区分を“出荷”にすることは,直前の文で検品完了時に行うと書かれているので,空欄には入らない。
本文の語を使い「出荷実績を計上する」と書く。解答例は9字。
設問3(3)
解答欄2つ
使用期限警告処理について,b ,c に入れる適切な字句を答えよ。ここで,b は本文中の容器状態区分の値を答えよ。また,c は表 1 中の属性名を用いて述べよ。
解説
本文の根拠
〔販売管理システムの改修〕(4) 使用期限警告処理
条件:容器状態管理ファイルの容器状態区分の値が“b ”で,c が本日日付の 1 週間後より前の日付である容器
〔関連部門からの要望〕
顧客の下に使用期限間際の製品があれば,その期限の 1 週間前を過ぎたら,システムで警告を出せるようにしてほしい。
表1
製品マスタ:製品コード(主キー),化学品名,容器種コード,容器一個当たり標準充填量,製品使用可能日数。
〔現行業務の概要〕(1) 充填
化学品は,製造の最終工程のラインで,化学品ごとに一意に定められた容器種の容器に充填されて,製品となる。
b は,顧客の下にある製品の容器状態区分である。積込・出荷処理で検品を完了して出荷すると“出荷”になり,回収されて容器回収処理で“回収”になるまで,容器は顧客の下にある。だから“出荷”で絞り込めば顧客の下の製品になる。
c は使用期限にあたる日付である。表1 には使用期限という属性はなく,製品マスタの製品使用可能日数と,容器状態管理ファイルの充填日がある。化学品は充填されて製品になるので,使用期限は充填日から製品使用可能日数を経た日付になる。これが本日の1週間後より前なら,期限の1週間前を過ぎた製品と期限を過ぎた製品の両方が拾える。講評は,化学品が充填されて製品になることを理解せず勝手に解釈した解答があったとしている。
b は本文の容器状態区分の値どおり「出荷」。c は表1 の属性名を二つ使って「充填日から製品使用可能日数後の日付」(17字)のように書く。
採点講評(IPA)
設問3(3)は正答率が高かったが,顧客の下にある容器の容器状態区分は何かを理解できていないと思われる解答が散見された。また,製品使用可能日数について,化学品が充填されて製品になることを理解せずに勝手な解釈をしたと思われる解答も見受けられた。
出典:令和元年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問2(表記を一部改変)
問3 レンタル契約システムの再構築
レンタル契約システムの再構築に関する次の記述を読んで,設問1〜5に答えよ。
K 社は,法人顧客(以下,顧客という)に測定機器(以下,機器という)をレンタルする会社である。K 社は,レンタル業務で利用しているレンタル契約システムの老朽化に伴い,新たな業務システム(以下,新システムという)を構築することにした。
〔現在のレンタル業務の内容〕
K 社では,レンタル契約システムと物流在庫管理システムを利用し,レンタル業務をしている。現在のレンタル業務に関わる部門の業務内容は,次のとおりである。
機器管理部門では,機器を検査点検してレンタル可能な状態に整備(以下,校正という)する。機器の校正には,有効期限(以下,校正有効期限という)があり,機器ごとに物流在庫管理システムで管理している。校正有効期限を超えてレンタルすることはない。K 社では,顧客へレンタルする際,機器を出荷する前に必ず校正し,校正した証明である校正証明書類を提示している。機器ごとに校正に必要な日数が異なっており,校正が完了するまで出荷しない。
営業部門では,主要な業務として,次の業務を行っている。
顧客からレンタルの問合せを受け,K 社で取扱可能な機器かどうかを確認する。取扱可能な機器である場合は,物流在庫管理システムを利用してレンタル可能な機器の在庫状況を確認する。レンタル可能な在庫があった場合は,レンタル料金を試算し,見積書を作成して顧客に送付する。見積書の情報は,見積番号,機器名,型番,台数,レンタル開始希望日,レンタル期間,レンタル終了予定日,レンタル料金などである。レンタル期間は,5 日から 6 か月未満の期間(以下,短期レンタルという)か,6 か月以上の期間(以下,長期レンタルという)である。在庫がない場合は,購買部門に購入を依頼して別途対応する。取扱不可能な機器である場合は,顧客に断りの連絡をする。
顧客との見積書の合意を受け,見積書の情報から注文書兼注文請書を作成して顧客に送付する。顧客から押印済みの書類を受領した後,注文書の情報をレンタル契約システムに入力して受注情報を登録する。受注情報から決裁書を作成し,責任者が決裁する。
K 社では,レンタル開始希望日の 15 日前から受注情報への機器の割当て(以下,引当という)を開始する。引当の際は,物流在庫管理システムを利用して在庫状況を確認し,レンタル可能な機器がある場合は,その機器に受注情報を登録する。レンタル可能な機器がない場合は,当該受注情報に引当する機器として購買部門に購入を依頼し,購入後に引当する。
なお,説明書などの付属品が欠けている機器はレンタルしない。ただし,付属品が欠けている状態でレンタルすることを顧客と合意した場合は,レンタルしてもよいことにしている。
レンタル開始希望日に合わせて出荷日を決定し,出荷日の前日に機器の出荷を倉庫に依頼する。倉庫への出荷依頼は,物流在庫管理システムを利用して出荷情報を登録することで行う。出荷情報は,出荷する機器,出荷日,出荷先の住所などである。出荷後,顧客へ機器を納入した日の翌日をレンタル開始日としてレンタル契約システムに登録する。
K 社は,短期レンタルの場合,レンタル期間満了時にレンタルを終了する。長期レンタルの場合,レンタル期間が満了する月(以下,レンタル期間満了月という)の 3 か月前の第一営業日に,レンタルを延長するか又は終了するかを確認するための満了案内確認書を封書で顧客に送付する。顧客は,レンタル期間満了月の 1 か月前の第一営業日までに延長するか又は終了するかを封書で K 社に送付する。期日までに顧客から終了する旨の通知がない場合は,延長扱いとする。延長する場合,延長料金を算出し,レンタル契約システムを利用して延長情報を登録する。延長した結果,校正有効期限を超過する場合の校正方法は,顧客と別途調整する。終了する場合,物流在庫管理システムに引取情報を登録し,引取手続をする。
レンタルが終了して顧客から引き取った機器は,倉庫で簡単な点検を行い,機器の状態を確認する。正常な場合,物流在庫管理システムにレンタル可能な機器として登録する。異常があった場合は,修理を依頼する。説明書などの付属品が欠けている機器の場合,条件付の機器として物流在庫管理システムに登録し,販売業者から付属品を取り寄せた後,レンタル可能な機器として再登録する。
省略。
購買部門では,営業部門から購入を依頼された機器の購買業務をする。対象の機器を購入するかどうかを審議し,購入することになった場合,販売業者に発注する。販売業者から納品された後,物流在庫管理システムにレンタル可能な機器として登録する。レンタルの受注が決まっている機器の場合,営業担当者に連絡する。
〔新システムへの要望〕
営業部門及び購買部門から,新システムに対して次のような要望が出された。
見積書と注文書兼注文請書を新システムで印刷できるようにしてほしい。 紙で回付している決裁をシステム化してほしい。 新システムで,レンタル可能な機器を検索して引当(以下,自動引当という)してほしい。自動引当は,決裁が下りた受注情報を対象としてほしい。原則,引当は自動引当だけとするが,例外として営業担当者が,機器の状態を個別に確認し,引当する場合がある。そのため,営業担当者が機器を検索して引当(以下,手動引当という)する機能も設けてほしい。 新システムに登録する出荷情報及び引取情報を物流在庫管理システムに連携してほしい。 業務の効率向上のために,新システムで自動的に延長処理をしてほしい。その場合,延長するレンタル期間は,当初のレンタル期間と同じとする。ただし,満了案内確認書で顧客からレンタルを終了する旨の通知があった場合は,毎月 15 日までに営業担当者が必要な処理をする。 満了案内確認書を新システムで自動的に顧客に送付してほしい。 〔新システムの設計〕
K 社では,新システムへの要望を踏まえ,新システムの機能を次のように設計している。新システムの機能概要を表 1 に示す。
表1 新システムの機能概要
出題趣旨(IPA)
既存の情報システムを再構築する際,システムアーキテクトには,業務の効率向上や拡張性を考慮し,業務部門の要望をシステム要件として設計する能力が必要である。本問では,レンタル契約システムの再構築を題材として,現行業務を正しく理解・把握し,業務部門の要望から情報システムに求められている機能を設計することについて,具体的な記述を求めている。業務要件を正しく理解し,求められている情報システムを設計する能力を問う。
採点講評(問全体・IPA)
問3では,レンタル契約システムの再構築を例にとり,現在の業務を正しく理解・把握した上で業務に関わる部門の要望から情報システムに求められている機能を設計することについて出題した。
システムアーキテクトとして,業務要件を十分に理解した上で,それを実現するシステムの機能設計が行えるように心掛けてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
解答欄2つ
引当可能な機器の条件を校正の観点から二つ挙げ,それぞれ 30 字以内で述べよ。
〔備考〕①と②は順不同
解説
本文の根拠
〔現在のレンタル業務の内容〕(1) 機器管理部門
校正有効期限を超えてレンタルすることはない。
〔現在のレンタル業務の内容〕(1) 機器管理部門
機器ごとに校正に必要な日数が異なっており,校正が完了するまで出荷しない。
〔現在のレンタル業務の内容〕(2) 営業部門 ① 見積業務
見積書の情報は,見積番号,機器名,型番,台数,レンタル開始希望日,レンタル期間,レンタル終了予定日,レンタル料金などである。
機器管理部門の業務から,校正について守られている決まりを二つ拾う。一つは,出荷前に必ず校正し,校正が完了するまで出荷しないこと。校正に必要な日数は機器ごとに違うので,引当する時点から出荷日までに校正を終えられる機器でなければならない。もう一つは,校正有効期限を超えてレンタルしないこと。レンタル終了予定日が校正有効期限を過ぎる機器は引当できない。
レンタル終了予定日は見積書の情報に含まれ,受注情報に引き継がれるので,自動引当の条件として使える。講評は,問題文を引用しただけで条件としてふさわしくない解答が多かったとしている。「校正が完了するまで出荷しない」は業務の決まりであり,引当する機器が満たすべき条件の形(出荷までに校正が完了する機器)に直して書く必要がある。
30字ずつなので,それぞれ「〜機器」の形で一つの条件を書く。解答例は「出荷までに校正が完了する機器」(14字)と「レンタル終了予定日が校正有効期限を超えない機器」(23字)。
採点講評(IPA)
設問1(1)は,現在の業務において,校正有効期限を超えてレンタルすることがない点と,機器ごとに校正に必要な日数があり完了するまで出荷しない点から,条件を導き解答してほしかったが,問題文を引用しただけの,条件としてふさわしくない解答が多かった。問題文中の背景及び設問の内容から,機能を設計する上での条件をきちんと整理し,理解してほしかった。
設問1(2)
解答欄2つ
自動引当は,三つの条件を全て満たす受注情報を対象として抽出する。条件の一つは,まだ引当されていないことである。ほかの二つの条件を,それぞれ 25 字以内で述べよ。
〔備考〕①と②は順不同
解説
本文の根拠
〔新システムへの要望〕(1) 営業部門からの要望
自動引当は,決裁が下りた受注情報を対象としてほしい。
〔現在のレンタル業務の内容〕(2) 営業部門 ③ 引当業務
K 社では,レンタル開始希望日の 15 日前から受注情報への機器の割当て(以下,引当という)を開始する。
自動引当が抽出する受注情報の条件を,要望と現在の業務から探す。営業部門の要望に,自動引当は決裁が下りた受注情報を対象としてほしいとある。受注業務では受注情報を登録した後に責任者が決裁するので,決裁前の受注情報は対象にしない。
もう一つは引当を始める時期である。現在の引当業務は,レンタル開始希望日の15日前から始めている。新システムでもこれに合わせ,レンタル開始希望日まで15日以内になった受注情報を対象にする。三つ目の条件(まだ引当されていないこと)は設問で示されている。
25字ずつで,受注情報が満たす条件の形(〜こと)で書く。解答例は「決裁が下りていること」(10字)と「レンタル開始希望日まで15日以内であること」(21字)。
設問2(1)
15字以内
自動引当の対象とならない機器とは,どのような機器か。15 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔現在のレンタル業務の内容〕(2) 営業部門 ③ 引当業務
なお,説明書などの付属品が欠けている機器はレンタルしない。ただし,付属品が欠けている状態でレンタルすることを顧客と合意した場合は,レンタルしてもよいことにしている。
〔現在のレンタル業務の内容〕(2) 営業部門 ⑥ 引取業務
説明書などの付属品が欠けている機器の場合,条件付の機器として物流在庫管理システムに登録し
〔新システムへの要望〕(1) 営業部門からの要望
原則,引当は自動引当だけとするが,例外として営業担当者が,機器の状態を個別に確認し,引当する場合がある。
自動引当はレンタル可能な機器を検索して引当する。レンタル可能な機器として登録されていない機器のうち,例外として引当してよいものが手動引当の対象になる。引取業務では,付属品が欠けている機器を条件付の機器として登録し,付属品を取り寄せた後にレンタル可能な機器として再登録する。
付属品が欠けている機器は原則レンタルしないが,顧客と合意すればレンタルしてよい。この判断はシステムでは自動化できず,営業担当者が機器の状態を個別に確認して引当する。修理を依頼した異常のある機器は,レンタルしてよい例外が本文にない。
15字なので「付属品が欠けている機器」(11字)と書けば足りる。
設問2(2)
25字以内
個々の機器の状態を表示する理由を 25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔現在のレンタル業務の内容〕(2) 営業部門 ③ 引当業務
ただし,付属品が欠けている状態でレンタルすることを顧客と合意した場合は,レンタルしてもよいことにしている。
表1 手動引当
一覧から個々の機器の状態を表示し,引当できる。
手動引当の対象は付属品が欠けている機器である。付属品が欠けた機器をレンタルするには,その状態でレンタルすることを顧客と合意しなければならない。合意するには,どの付属品が欠けているかなど,機器ごとの状態が分からなければならない。
そこで手動引当機能は,一覧から個々の機器の状態を表示できるようにしている。営業担当者は表示された状態を顧客に伝え,合意を得た機器を引当する。要望にも「営業担当者が,機器の状態を個別に確認し,引当する」とある。
25字で「顧客と合意する」ことを軸に書く。解答例は「機器の状態を顧客と合意する必要があるから」で20字。
設問3
解答欄2つ
満了案内機能について,満了案内確認書を顧客に電子メールで送付するために,満了案内対象の受注情報を抽出する。対象となる受注情報の抽出条件を二つ挙げ,それぞれ 25 字以内で述べよ。
〔備考〕①と②は順不同
解説
本文の根拠
〔現在のレンタル業務の内容〕(2) 営業部門 ⑤ 満了業務
長期レンタルの場合,レンタル期間が満了する月(以下,レンタル期間満了月という)の 3 か月前の第一営業日に,レンタルを延長するか又は終了するかを確認するための満了案内確認書を封書で顧客に送付する。
〔現在のレンタル業務の内容〕(2) 営業部門 ① 見積業務
レンタル期間は,5 日から 6 か月未満の期間(以下,短期レンタルという)か,6 か月以上の期間(以下,長期レンタルという)である。
表1 満了案内
毎月第一営業日に満了案内対象の受注情報を抽出し,送付する。
満了案内確認書は,長期レンタルの場合にだけ送る。短期レンタルは期間満了時にそのまま終了する。長期レンタルはレンタル期間が6か月以上のものなので,一つ目の条件はレンタル期間が6か月以上であることになる。
送付の時期は,レンタル期間満了月の3か月前の第一営業日である。満了案内機能は毎月第一営業日に抽出するので,その日から見て3か月後の月がレンタル期間満了月にあたる受注情報を抜き出せばよい。延長後の受注情報も,延長したレンタル期間の満了月でこの条件に当てはまる。
25字ずつで,受注情報が満たす条件の形で書く。解答例は「レンタル期間が6か月以上であること」(17字)と「3か月後がレンタル期間満了月であること」(19字)。
設問4
35字以内
延長及び終了機能について,延長処理を毎月 15 日の夜間とした理由を 35 字以内で述べよ。
解答例
延長しない場合は毎月15日までに営業担当者が必要な処理をするから
解説
本文の根拠
〔新システムへの要望〕(1) 営業部門からの要望
ただし,満了案内確認書で顧客からレンタルを終了する旨の通知があった場合は,毎月 15 日までに営業担当者が必要な処理をする。
〔現在のレンタル業務の内容〕(2) 営業部門 ⑤ 満了業務
期日までに顧客から終了する旨の通知がない場合は,延長扱いとする。
表1 延長及び終了
毎月15日の夜間に延長対象の受注情報を抽出し,延長処理をする。
延長処理は,顧客から終了する旨の通知がなかった受注情報を延長扱いにするものである。自動で延長するには,終了する受注情報がすでに処理済みで,延長対象と区別できていなければならない。営業部門の要望では,顧客から終了の通知があった場合は,毎月15日までに営業担当者が必要な処理をする。
そのため,営業担当者の処理が終わった後の15日の夜間に延長対象を抽出すれば,終了する受注情報を誤って延長することがない。講評は「15日前までに引当てするから」という誤答を挙げている。15日は引当を始める時期(レンタル開始希望日の15日前)にも出てくるが,これは引当の条件で,延長処理の時期とは関係がない。
35字で「終了する場合は毎月15日までに営業担当者が処理する」ことを書く。解答例は「延長しない場合は毎月15日までに営業担当者が必要な処理をするから」で32字。
採点講評(IPA)
設問4は,営業部門の要望において,レンタルを終了する際,毎月15日までに営業担当者が必要な処理をすることがポイントであるが,“15日前までに引当てするから”という誤答が見受けられた。これは,引当ての条件であって,延長処理を毎月15日の夜間とした理由とは直接関係がない。営業部門の要望を正しく理解し解答してほしかった。
設問5
解答欄2つ
購入機能について,受注情報を識別する番号を利用する,ある機能とは何か。表 1 中の機能名を用いて答えよ。また,利用する目的を 25 字以内で述べよ。
解説
本文の根拠
表1 購入
また,受注情報を識別する番号を任意に登録できるようにし,ある機能で利用する。
〔現在のレンタル業務の内容〕(2) 営業部門 ③ 引当業務
レンタル可能な機器がない場合は,当該受注情報に引当する機器として購買部門に購入を依頼し,購入後に引当する。
〔現在のレンタル業務の内容〕(3) 購買部門
レンタルの受注が決まっている機器の場合,営業担当者に連絡する。
表1 自動引当
対象の受注情報を抽出し,物流在庫管理システムと連携し,該当する機器を引当する。
レンタル可能な機器がないときは,その受注情報に引当する機器として購買部門に購入を依頼し,購入後に引当する。現在は,購買部門が受注の決まっている機器を納品後に営業担当者に連絡し,営業担当者が引当している。購入情報に受注情報を識別する番号を登録しておけば,購入した機器をどの受注情報に引当すべきかがシステムで分かる。
新システムでは,原則として引当は自動引当だけとしている。したがって番号を利用するのは自動引当機能で,購入した機器を,番号で結び付いた受注情報に自動で引当する。講評は“見積”や“受注”という誤答を挙げている。受注情報の番号という言葉から受注機能を連想しやすいが,番号を使って機器を割り当てるのは引当である。
機能名は表1 の「自動引当」を使う(解答例は「自動引当機能」)。目的は25字で「購入した機器を対象の受注情報に引当する」ことを書く。解答例は21字。
採点講評(IPA)
設問5は,機能に関して“見積”や“受注”という誤答が見受けられた。購買部門の要望と新システムの機能概要をきちんと整理し,理解してほしかった。
出典:令和元年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問3(表記を一部改変)
問4 IoT,AIを活用する自動倉庫システムの開発
IoT,AI を活用する自動倉庫システムの開発に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
F 社は,自動倉庫システムのメーカである。
電子商取引(以下,EC という)の増大に伴い,EC 運営業者は,受注した商品を早く確実に低コストで顧客に届けることができるように,新たな自動倉庫システムの導入を進めている。F 社は,この要求に応えるために,EC 用途向けの自動倉庫システムも開発・販売を行っている。
従来の自動倉庫システムでは,商品を出荷するために,取り扱う商品が格納されたコンテナから,商品を選択して取り出す作業(以下,ピッキングという)を人手で行っていた。現在,ピッキングの無人化を目指す取組が行われている。しかし,ピッキングの無人化が多様な形状の商品に十分に対応できるまでには至らず,限定された形状の商品に対応するシステムにとどまっている。
その結果,取り扱う商品の種類・数量が多ければピッキングに人手と時間を要することになり,EC 運営業者には要員の確保及び倉庫内での作業への配慮が求められている。
また,F 社の顧客から,“冷凍倉庫内という厳しい環境での作業を無人化してほしい”との要望があったので,F 社は,冷凍倉庫向けのピッキングの無人化を実現する自動倉庫システムの開発を進めることにした。
〔従来の自動倉庫システムの概要〕
F 社が既に製品化している EC 用途向けの従来の自動倉庫システムの構成を表 1 に,例を図 1 に示す。
表1 従来の自動倉庫システムの構成
図1 従来の自動倉庫システムの例
従来の自動倉庫システムでは,定型のコンテナに保管できるサイズの商品を対象とし,ピッキングのために作業者が倉庫内の配置エリアを歩き回る必要がない。
従来の自動倉庫システムを用いたピッキングは,次のように行われる。
搬送ロボットは,管理・制御部からの指示によって,商品が保管されているラックをピッキング場所まで搬送する。 ラックを積載した搬送ロボットがピッキング場所に到着すると,作業者が作業指示モニタを見ながらラック内の商品を確認してピッキングを行い,配送用の配送箱に詰め,コンベヤに載せて配送エリアへ送る。 ピッキング後のラックは,配置エリアへ戻るか,ピッキング待機エリアへ移動して次のピッキングを待つ。 〔冷凍倉庫の無人化に向けての問題点とその解決方針〕
従来の自動倉庫システムを使用した冷凍倉庫内での問題点は,次のとおりである。
作業者が倉庫内を歩き回る必要がないものの,冷凍倉庫内のように環境が厳しい場所では作業者の負担が大きく,短時間で交代しながらの作業が必要となる。 同一の配送先に向けて多品種の商品のピッキングを行う場合は,多数のラックを待機させて,ピッキング待機エリアが広くなってしまう。 F 社では,これらの問題を解決するために,搬送ロボットに替えて,個別商品の補充及びピッキングが可能なロボット(以下,H ロボットという)を導入して,新しい自動倉庫システム(以下,NWH システムという)を開発することとなり,その取組方針を次のとおりまとめた。
冷凍倉庫の特殊な温湿度環境下でも稼働できる H ロボットを開発する。取り扱う商品を箱詰めされた冷凍商品に限定することによって,ピッキングを確実に行う。 ラックを固定する。H ロボットが移動して個別商品の補充及びピッキングを行う。 商品の先入れ先出しを確実に守る。 H ロボットの割当て,ピッキングのスケジューリングなどを効率よくできるようにする。 〔NWH システムの概要〕
F 社のシステムアーキテクトである G 氏は,NWH システムの開発を担当することになった。G 氏は,NWH システムの開発項目を次のように設定した。
従来のラックに替えて,傾斜した棚板にローラが付いたフローラックを使用し,固定して設置する。コンテナは用いない。H ロボットは,個別商品の補充及びピッキングをそれぞれ異なる走行路で行う。そのために,フローラックを挟んで,商品補充用走行路とピッキング用走行路を設ける。全ての走行路には,各フローラックに対応した停止位置及び分岐位置にマーカを設け,H ロボットはマーカを読み取りながら走行・停止を行う。
H ロボットはカートをけん引しながら,冷凍商品の補充及びピッキングを行う。H ロボットは,空配送箱受取場所で配送箱をカートに搭載してピッキング用走行路に進み,ピッキングを行う商品があるフローラックの位置ごとに走行を停止し,ピッキングを行って直接配送箱に収納する。ピッキング後,コンベヤに進み,カートから配送箱を持ち上げてコンベヤへ移す。
H ロボットへの指示などを行う。H ロボットの位置を把握し,H ロボット同士の衝突を避けるために,一時停止とその解除を指示する。
H ロボットの充電,故障などの稼働停止時間を考慮して,H ロボットの適切な台数の決定,メンテナンスの実施時期の決定などを行う。また,全体としてピッキングの失敗率を下げるように管理する。
NWH システムの概要を図 2 に示す。
図2 NWHシステムの概要
〔開発項目の検討結果〕
G 氏は,各開発項目について検討し,NWH システムの仕様・機能を表 2 のようにまとめた。
表2 NWHシステムの仕様・機能
フローラックを用いて,先に入庫した商品から出庫されるようにする。
ピッキング用走行路は,複数の H ロボットが同一の走行路をスムーズに走行できるよう,走行路ごとに一方通行とする。さらに,1 本ごとに走行方向が互い違いになるようにし,H ロボットが周回できるようにする。
H ロボット及びカートを開発する。H ロボットはカートをけん引して冷凍商品の補充及びピッキングを行う。
1 回の走行で最大 5 件の配送先の商品のピッキングを行い,各配送先に対応する配送箱に間違いなく収納するために,配送箱には識別用バーコードを個別に貼り付けておく。H ロボットは,配送箱 1 箱をカートに移すたびに識別用バーコードを読み取り,あらかじめ管理・制御部から受信している配送先の情報の一つとリンクさせ,そのリンク情報を管理・制御部に送信する。
作業の対象となる商品などを決定し,AP 経由で H ロボットに指示する。IoT を活用して H ロボットの稼働状況を常時把握する。ピッキングについては,複数の配送先の適切な割り付けをする。H ロボットの走行距離が短くなるように,ピッキングの順番を最適化する。また,商品配置の見直しを定期的に行う。
H ロボットの適切な稼働管理を行うために,管理・制御部は,H ロボットのバッテリ残量を監視し,適切なタイミングでバッテリ充電開始の指示を行う。充電は 1 台ずつ行う。
H ロボットによるピッキングの失敗率が低くなるように,AI による画像認識を利用して改善させる。そのため,個々の商品をつかんだり持ち上げたりするのに要した時間,失敗した回数などを測定するのと同時に,a し,それらのデータを管理・制御部で収集・蓄積する。
検品用監視カメラによる出荷チェックを行い,商品の間違い,異常,b を検出する。また,その映像を記録し,今後の対策に用いる。
出題趣旨(IPA)
近年の自動倉庫システムでは,IoT,AI技術を用いて,入出庫時の処理高速化だけでなく,できる限り無人化を進める開発が求められている。本問では,IoT,AIを活用する自動倉庫システムを題材として,従来のシステムから変化するシステムアーキテクチャの決定,機能仕様の策定などについて,システムアーキテクトに求められる能力を問う。
採点講評(問全体・IPA)
問4では,IoT,AIを活用する自動倉庫システムを例にとり,システムアーキテクチャの決定,機能仕様の策定について出題した。
システムアーキテクトとして,システム要件をよく理解して,機能仕様を策定するように心掛けてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
20字以内
H ロボットが扱う商品を,箱詰めされた冷凍商品に限定することにした。その理由を,20 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
問4 冒頭
しかし,ピッキングの無人化が多様な形状の商品に十分に対応できるまでには至らず,限定された形状の商品に対応するシステムにとどまっている。
〔冷凍倉庫の無人化に向けての問題点とその解決方針〕
取り扱う商品を箱詰めされた冷凍商品に限定することによって,ピッキングを確実に行う。
取組方針に,取り扱う商品を箱詰めされた冷凍商品に限定することによって,ピッキングを確実に行うとある。冒頭には,ピッキングの無人化は多様な形状の商品に十分に対応できるまでには至らず,限定された形状の商品に対応するシステムにとどまっているとある。
NWH システムでは人手を介さず H ロボットがピッキングを行うので,つかむ商品の形状がまちまちだと失敗しやすい。箱詰めされた商品なら形状がそろい,ロボットでも確実につかんで配送箱に収納できる。限定する理由は,無人化したピッキングを確実にすることにある。
20字なので「ピッキングを確実にしたいから」(14字)のように,方針の語をそのまま使って短く書く。
設問1(2)
25字以内
商品の先入れ先出しを守るために行ったことは何か。25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔開発項目の検討結果〕(1) 倉庫内の配置の見直し
フローラックを用いて,先に入庫した商品から出庫されるようにする。
表2 フローラック
商品の補充とピッキングとを異なる側から行い,棚板に傾斜を設けることによって,商品の補充側からピッキング側へ商品が自動的に移動する。
取組方針の「商品の先入れ先出しを確実に守る」に対応する記述を,開発項目の検討結果から探す。倉庫内の配置の見直しで,フローラックを用いて,先に入庫した商品から出庫されるようにするとしている。
フローラックは傾斜した棚板にローラが付いており,商品を補充側から入れると,ピッキング側へ自動的に移動する。後から補充した商品は先に入った商品の後ろに並ぶので,ピッキング側では必ず先に入庫した商品から取り出される。補充とピッキングを異なる走行路で行うのもこの仕組みのためである。
25字で「商品の収納にフローラックを用いた」ことを書く。解答例は「商品の収納にフローラックを用いたこと」で18字。
設問2(1)
20字以内
H ロボットは,商品の補充又はピッキングを行う場合,マーカで停止位置を判断する。この判断において,H ロボットはあらかじめどのような情報をもつ必要があるか。20 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔NWH システムの概要〕(1) 倉庫内の配置の見直し
全ての走行路には,各フローラックに対応した停止位置及び分岐位置にマーカを設け,H ロボットはマーカを読み取りながら走行・停止を行う。
表2 H ロボット
AP経由で管理・制御部と通信し,作業の対象となる商品の個数及び収納ロケーション,作業開始,衝突回避のための一時停止などの指示を受信し
〔NWH システムの概要〕(2) H ロボットの開発
ピッキングを行う商品があるフローラックの位置ごとに走行を停止し
H ロボットが管理・制御部から受け取るのは,作業の対象となる商品の収納ロケーション,つまりどのフローラックのどこかという指示である。一方,走行中に読み取るのは床のマーカで,マーカは各フローラックに対応した停止位置に設けられている。指示されたフローラックの前で止まるには,読み取ったマーカがどのフローラックに対応するかが分かっていなければならない。
したがって H ロボットは,マーカとフローラックの対応関係をあらかじめ持つ必要がある。講評は,マーカかフローラックのどちらか一方だけを答えた受験者が多かったとしている。マーカだけ,フローラックだけでは停止位置を判断できず,二つを対応させた情報が要る。
20字で「マーカとフローラックを対応させた情報」(18字)のように,両者の対応関係を書く。
採点講評(IPA)
設問2(1)は,Hロボットの停止位置を示すマーカと商品の収納場所であるフローラックのどちらか一方だけを解答した受験者が多かった。個々の情報とともに,それらの対応関係が必要となるケースに着目して解答してほしかった。
設問2(2)
15字以内
H ロボットが個別商品のピッキングを行い,適正な配送箱へ収納するために,管理・制御部からあらかじめ受信すべき情報は何か。15 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔開発項目の検討結果〕(2) H ロボットの開発
1 回の走行で最大 5 件の配送先の商品のピッキングを行い,各配送先に対応する配送箱に間違いなく収納するために,配送箱には識別用バーコードを個別に貼り付けておく。
〔開発項目の検討結果〕(2) H ロボットの開発
H ロボットは,配送箱 1 箱をカートに移すたびに識別用バーコードを読み取り,あらかじめ管理・制御部から受信している配送先の情報の一つとリンクさせ,そのリンク情報を管理・制御部に送信する。
H ロボットは1回の走行で最大5件の配送先の商品をピッキングする。配送箱は識別用バーコードで配送先とリンクされているので,ピッキングした商品をどの配送箱に入れるかは,その商品がどの配送先のものかで決まる。
そのため H ロボットは,配送先ごとにどの個別商品をピッキングするかという情報を,あらかじめ管理・制御部から受け取っておく必要がある。本文の「あらかじめ管理・制御部から受信している配送先の情報」がこれにあたる。商品の収納ロケーションだけでは,ピッキングした商品をどの配送箱に入れるかが決まらない。
15字なので「配送先ごとの個別商品情報」(12字)のように,配送先と商品の組合せを短く書く。
設問3(1)
解答欄2つ
本文中のa ,b に入れる適切な字句を答えよ。
解説
本文の根拠
〔開発項目の検討結果〕(4) 稼働管理
H ロボットによるピッキングの失敗率が低くなるように,AI による画像認識を利用して改善させる。そのため,個々の商品をつかんだり持ち上げたりするのに要した時間,失敗した回数などを測定するのと同時に,a し,それらのデータを管理・制御部で収集・蓄積する。
表2 H ロボット
ピッキングの状況を動画で撮影する。
表2 検品用監視カメラ
Hロボットからコンベヤへ移された配送箱内の商品の品名,個数,異常の有無,配送箱からのはみ出しの確認を行い,映像を記録する。
a は,AI による画像認識で改善するための材料を得る動作である。画像認識には映像が要る。表2 で H ロボットの仕様に「ピッキングの状況を動画で撮影する」とあり,送信するデータにも動画が含まれる。時間や失敗回数の測定と同時に動画撮影し,これらを管理・制御部で収集・蓄積する。
b は検品用監視カメラで検出するもので,「商品の間違い,異常」と並ぶ。表2 の検品用監視カメラは,配送箱内の商品の品名,個数,異常の有無,配送箱からのはみ出しを確認する。品名・個数が商品の間違い,異常の有無が異常にあたるので,残る「配送箱からのはみ出し」が入る。
どちらも表2 の語を使って,a は「動画撮影」,b は「配送箱からのはみ出し」と書く。
設問3(2)
30字以内
H ロボットのバッテリへの充電タイミングを H ロボット自身が判断するのではなく,管理・制御部が指示するようにしている。その目的を,30 字以内で述べよ。
解答例
Hロボットの充電を最適なスケジューリングで行うため
解説
本文の根拠
〔開発項目の検討結果〕(4) 稼働管理
H ロボットの適切な稼働管理を行うために,管理・制御部は,H ロボットのバッテリ残量を監視し,適切なタイミングでバッテリ充電開始の指示を行う。充電は 1 台ずつ行う。
〔NWH システムの概要〕(4) 稼働管理
H ロボットの充電,故障などの稼働停止時間を考慮して,H ロボットの適切な台数の決定,メンテナンスの実施時期の決定などを行う。
〔冷凍倉庫の無人化に向けての問題点とその解決方針〕
H ロボットの割当て,ピッキングのスケジューリングなどを効率よくできるようにする。
充電は1台ずつ行う。各 H ロボットが自分のバッテリ残量だけを見て充電を始めると,複数台の充電が重なって待ちが生じたり,作業中の台数が不足したりする。全ての H ロボットのバッテリ残量と作業の予定を把握しているのは管理・制御部なので,管理・制御部が充電の順番とタイミングを決めれば,稼働を止めずに順に充電できる。
稼働管理では充電による稼働停止時間を考慮して台数やメンテナンス時期を決めており,取組方針にも H ロボットの割当てやスケジューリングを効率よくできるようにするとある。充電を管理・制御部が指示するのは,充電を全体で最適にスケジューリングするためである。
30字で「充電を最適なスケジューリングで行う」ことを書く。解答例は「Hロボットの充電を最適なスケジューリングで行うため」で25字。
設問3(3)
15字以内
管理・制御部は,全ての H ロボットの走行を監視し,特定の H ロボットに一時停止などを指示する場合がある。管理・制御部は,H ロボットのどのような情報を監視しているのか。15 字以内で答えよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔NWH システムの概要〕(3) 管理・制御部の変更
H ロボットの位置を把握し,H ロボット同士の衝突を避けるために,一時停止とその解除を指示する。
表2 H ロボット
読み取ったマーカの情報,作業結果,動画,バッテリ残量などのデータを送信する。
一時停止を指示するのは,H ロボット同士の衝突を避けるためである。衝突しそうかどうかは,各 H ロボットがどこを走っているかが分かれば判断できる。管理・制御部の変更で,H ロボットの位置を把握して一時停止とその解除を指示するとしている。
位置は,H ロボットが送信する「読み取ったマーカの情報」から分かる。マーカは走行路の停止位置と分岐位置に設けられているので,最後に読み取ったマーカで走行路上の位置が特定できる。バッテリ残量や作業結果は,衝突回避の判断には使わない。
15字なので「Hロボットの位置情報」(10字)と書けば足りる。
設問3(4)
40字以内
各 H ロボットがピッキングを行うときに得たデータを,管理・制御部で収集・蓄積して AI で処理する目的として考えられることは何か。40 字以内で述べよ。
解答例
多くのHロボットのデータを用いてピッキングの問題点を改善するため
解説
本文の根拠
〔開発項目の検討結果〕(4) 稼働管理
H ロボットによるピッキングの失敗率が低くなるように,AI による画像認識を利用して改善させる。
〔NWH システムの概要〕(4) 稼働管理
また,全体としてピッキングの失敗率を下げるように管理する。
収集・蓄積するデータは,商品をつかんだり持ち上げたりするのに要した時間,失敗した回数,ピッキングの状況の動画である。本文は,これらを使ってピッキングの失敗率が低くなるように AI による画像認識を利用して改善させるとしている。1台の H ロボットのデータでは事例が限られるが,全ての H ロボットのデータを集めれば,失敗しやすい商品やつかみ方などの問題点を多くの事例から見つけて改善できる。
稼働管理でも「全体としてピッキングの失敗率を下げるように管理する」としている。講評は,“問題点を見つける”とだけ書いた解答があったとしている。データは問題点を見つけるだけでなく,それを改善するために使われる。
40字で「多くの H ロボットのデータを用いる」ことと「ピッキングの問題点を改善する」ことの両方を書く。解答例は「多くのHロボットのデータを用いてピッキングの問題点を改善するため」で32字。
採点講評(IPA)
設問3(4)は,正答率が高かったが,“問題点を見つける”とだけを解答した受験者が見受けられた。ピッキングを行うときに得たデータは,問題点を改善するために利用されていることに気付いてほしかった。映像も含めた各種データを収集・蓄積してAIで処理することの意味を考えてほしい。
出典:令和元年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問4(表記を一部改変)
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