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平成23年度 秋期 午後Ⅰ

平成23年度 秋期に実施されたネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰの全3問(記述式)です。事例本文・設問・解答例と解説をそのまま読めます。

この試験について:ネットワークスペシャリスト試験について

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問1 宿泊施設への LAN 導入

宿泊施設への LAN 導入に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。

Z 社は,通信機器の販売代理店であり,取扱い製品の幅広さを生かしたネットワークの設計・構築には定評がある。このたび,地方都市にある X ホテルから Z 社に対し,次の要件で LAN 導入について引合いがあった。

Z 社の O 主任は,各階の廊下にアクセスポイントを配置する無線 LAN 構成では,X ホテルの要件を満たせないと考え,現在の構内配線を伝送路として使う LAN 構成を提案することにした。X ホテルの現在の構内配線は,図1のとおりである。

屋上に,変電設備(中に主分電盤)と,テレビアンテナにつながる増幅器,その下の分配器がある。電力線:主分電盤から各階の分電盤(9階,…,2階,フロント)へ配線され,各分電盤から客室(フロント)のコンセントへつながる。テレビ用の同軸ケーブル:テレビアンテナ→増幅器→分配器から縦に配線され,9階客室,…,2階客室,フロントの分岐器・テレビ端子を順に通る。電話配線:各階の客室の電話端子は各階の中間配線盤につながり,中間配線盤から設備室の主配線盤へ束配線で配線されている。フロントの電話端子は主配線盤に直接つながる。設備室には電話交換機と主配線盤があり,電話交換機は主配線盤につながる。各階とも客室は複数あり(点線の重なり),分電盤・分配器・中間配線盤から同じ階の他の客室にも配線されている。凡例:丸に横線:コンセント,二重丸:分岐器・テレビ端子,黒丸入りの丸:電話端子,太線:束配線,T 字:テレビアンテナ。
図1 X ホテルの現在の構内配線(抜粋)

〔採用する製品の選定〕

Z 社では,電力線を伝送路に使う製品(以下,製品 P という),テレビアンテナ用同軸ケーブルを伝送路に使う製品(以下,製品 C という)及び電話配線を伝送路に使う製品(以下,製品 V という)を取り扱っている。本案件には,通信の機能及び性能の面で,どの製品も採用可能である。これらの製品の共通点は,次のとおりである。

O 主任から LAN 設計を指示された U 君は,製品の選定に着手した。

最初に,通信品質について検討した。製品 P と製品 C は同じ通信技術を用いているが,①伝送路として使う構内配線の通信媒体の優位性という面で,製品 C の方が優れている。製品 C と製品 V は,優劣がつけ難い。

次に,各製品の親機と L2SW 間の配線について検討した。各製品の親機の LAN ポートは,1000BASE-T 規格である。製品 P 及び製品 C では,親機の接続箇所と設備室間に新たな配線工事が必要になる。その配線長は,1000BASE-T 規格の最大セグメント長である a m 以下であるが,配線経路の電磁環境を考慮すると波長 850 nm の光信号で通信を行う 1000BASE- [ イ ] 規格で中継することが望ましい。そのためには,UTP ではなくマルチモード光ファイバでの配線と,メディアコンバータが必要になる。製品 V では電話交換機と主配線盤間の電話配線を中継する形で親機を接続するので,設備室内での UTP の引回しで済む。また,②製品 V には,親機が故障したときに通話に影響しないように対応する機能を有することを確認している。

最後に,客室内の子機の設置,及び STB とテレビ受像機(以下,TV という)の接続作業について検討したが,製品による大きな差はない。これらの検討結果から,U 君は製品 V を選定し,LAN 設計に取り掛かった。

〔LAN 設計及び監視端末の設計〕

製品 V の親機(以下,V 親機という)1台には,製品 V の子機(以下,V 子機という)を 25 台収容できる。V 親機及び V 子機には,ポート A 及びポート B の二つの LAN ポートがある。製品 V の工場出荷時の設定では,ポート A とポート B に別々の VLAN が割り当てられ,V 親機と V 子機間の通信ではポート B の通信が優先されている。また,同じ V 親機に収容されている異なる V 子機においては,ポート A 間及びポート B 間の通信が遮断されている。本案件では,工場出荷時の設定のままで使用する。

X ホテルで必要な V 子機は 81 台で,V 親機は最少で b 台必要になるので,V 親機の LAN ポートを L2SW に接続して束ねる。この構成では,遮断すべき V 子機間の通信が可能になってしまうところがあるので,L2SW の機能で解決する。インターネット接続回線と L2SW 間は,ルータで接続する。U 君が設計した,X ホテルの LAN 構成案を,図2に示す。

客室201〜212,…,客室901〜912 の各客室に V 子機(ポート A,ポート B)がある。各客室の V 子機は,設備室の V 親機(ポート A,ポート B。複数台)のどれかに線でつながる。V 親機は電話交換機につながり,電話交換機は公衆電話網につながる。客室201 には,V 子機に加えて,V 子機につながる電話機,TV とそれにつながる STB(ポート1つ),PC(ポート1つ)がある。設備室には,V 親機,電話交換機のほか,L2SW,VOD 配信サーバ(ポート2つ),ルータ(ポート1つ)がある。L2SW のポートは点線の枠(VLAN)で二つに分かれ,左の VLAN にポートが3つ,右の VLAN にポートが4つある。右の VLAN の4つ目のポートとルータのポートが線でつながっている。ルータはインターネットにつながる。凡例:四角:ポート,点線の枠:VLAN。注記 設備室及び客室201のポート間の接続の一部は,設問の関係上,表示していない。
図2 U 君が設計した,X ホテルの LAN 構成案(抜粋)

U 君は,インターネット接続回線の混雑時に特定のアプリケーションが通信帯域を占有することを避けるために,ルータで通信制御を行うことにした。ルータによる通信制御を行うと,ブラウザで Web を閲覧するインターネットの利用において③PC 1台当たりの通信帯域がほぼ同じになることも期待できるので,本案件では更に都合が良い。ルータによる通信制御は,次のとおりである。

U 君が LAN 機器の構成案を O 主任に報告したときに,O 主任から受付カウンタの担当者向けの簡易な監視端末を提案に盛り込むように指示があった。監視端末は,V 子機の LAN ポートのリンク状態及び通信状況を,アイコンの色の変化,点滅又はブザー音によって通知する仕組みである。この仕組みを満たすには,SNMP を使って,LAN ポートの状態や送受信バイト数を表す MIB を取得する機能と,LAN ポートのリンク状態の変化に伴って V 子機から送信される [ エ ] を扱う機能があればよいので,ソフトウェアの開発は容易である。

VOD のコンテンツには,ディジタルデータの著作権を保護し,その利用や複製を制御し,制限する,[ オ ] と呼ばれる技術が適用されているので,宿泊客が V 子機の LAN 配線を触って通信フレームを不当にキャプチャリングしてもコンテンツとして再生するのは極めて困難である。しかし,通信フレームのキャプチャリング自体は好ましくない行為である。監視端末で監視することによって,その抑止効果が期待できる。

設計完了後,O 主任と U 君は提案書を持参して X ホテルを訪問した。Z 社の提案は,X ホテルの要件を満たし,高い評価を得て,Z 社は本案件を受注することができた。

出題趣旨(IPA)

近年では,LAN又はWANの違いにかかわらずネットワークで使用されるインタフェースやプロトコルが集約されつつあり,下位層におけるネットワーク技術者の守備範囲が狭まってきている。しかし,市場には特殊な環境又は用途向けの通信機器がリリースされており,案件によっては採用が必要になる。そのような場合にも,機器仕様からネットワークの設計・構築に必要な部分を手早く理解し,配線や接続について普段あまり接することのない工事業者と調整を行うなど,ネットワーク技術者には幅広い領域での活躍が期待されている。本問では,宿泊施設に既存の構内配線を使用してLANを導入する案件を題材に取り上げて,機器の適用性の比較・検討,機器構成及び通信制御などについて問う。

設問と解答例

設問1 解答欄5つ

本文中の [ ア ] 〜 [ オ ] に入れる適切な字句を答えよ。

〔ア〕解答例

  • ブロード

〔イ〕解答例

  • SX

〔ウ〕解答例

  • ポート

〔エ〕解答例

  • Trap

〔オ〕解答例

  • ディジタル著作権管理
  • DRM
  • Digital Rights Management
解説

本文の根拠

〔採用する製品の選定〕

親機と子機間の通信には,搬送波の変調及び復調によってデータ伝送を行う,[ ア ] バンド伝送方式と呼ばれる技術が使用されている。

〔採用する製品の選定〕

配線経路の電磁環境を考慮すると波長 850 nm の光信号で通信を行う 1000BASE- [ イ ] 規格で中継することが望ましい。そのためには,UTP ではなくマルチモード光ファイバでの配線と,メディアコンバータが必要になる。

〔LAN 設計及び監視端末の設計〕

ルータは,中継するパケットのヘッダから,TCP 又は UDP のプロトコル種別,送信元及び宛先の [ ウ ] 番号と IP アドレスを参照して,トラフィックをトランスポート層での管理単位(以下,フローという)として識別する。

〔LAN 設計及び監視端末の設計〕

LAN ポートのリンク状態の変化に伴って V 子機から送信される [ エ ] を扱う機能があればよい

〔LAN 設計及び監視端末の設計〕

VOD のコンテンツには,ディジタルデータの著作権を保護し,その利用や複製を制御し,制限する,[ オ ] と呼ばれる技術が適用されている

ア:信号をそのまま(ベースバンドで)送るのではなく,搬送波を変調して周波数帯に乗せて送る方式をブロードバンド伝送という。電力線・同軸ケーブル・電話配線はもともと別の信号(電力,テレビ放送,音声)を運んでいるので,それと重ならない周波数帯の搬送波を使う必要がある。イ:波長 850 nm の短波長レーザでマルチモード光ファイバを使うギガビットイーサネットは 1000BASE-SX(IEEE 802.3)。長波長 1310 nm の 1000BASE-LX と取り違えないようにする。

ウ:送信元・宛先の IP アドレス,プロトコル種別,送信元・宛先のポート番号の組でトランスポート層のフローが決まる。エ:SNMP で機器側から管理側へ状態の変化を自発的に知らせるのは Trap である(リンクのダウン・アップは SNMPv1 の RFC 1157 に linkDown・linkUp の Trap がある)。監視端末からの問合せ(Get)で MIB を取る機能と,機器からの Trap を受ける機能の二つがあればよい。オ:ディジタルコンテンツの利用や複製を制御する技術は DRM(Digital Rights Management,ディジタル著作権管理)。解答例は日本語・略語・英語のどれでもよいとしている。

アはベースバンドとの対で覚える。採点講評は,アの正答率が低かったとし,通信概論の領域も理解してほしいとしている。

採点講評(IPA)

設問1では,アの正答率が低かった。通信概論の領域についても,理解しておいてほしい。

設問2(1) 解答欄1つ

本文中の a に入れる適切な数値を答えよ。

〔a〕解答例

  • 100
解説

本文の根拠

〔採用する製品の選定〕

その配線長は,1000BASE-T 規格の最大セグメント長である a m 以下であるが,

1000BASE-T は UTP(カテゴリ5以上)の4対を使うギガビットイーサネットで,IEEE 802.3 が定める最大セグメント長は 100 m である。10BASE-T・100BASE-TX も同じ 100 m である。

本文は,配線長そのものは 100 m 以下に収まるが,電磁環境(電力線のそばを通るなど)を考えて光ファイバ(1000BASE-SX)で中継するのが望ましいとしている。UTP は長さの条件を満たしても雑音の影響を受けやすいからである。

数値だけを答える。単位 m は本文にあるので書かない。

設問2(2) 解答欄2つ

製品 P 又は製品 C を採用する場合に,それぞれの親機の接続箇所を,図1中の名称を用いて答えよ。

〔製品P〕解答例

  • 主分電盤

〔製品C〕解答例

  • 分配器
  • 増幅器と分配器の間
解説

本文の根拠

〔採用する製品の選定〕

親機は伝送路の集線箇所に接続し,子機は伝送路の末端に接続する。

図1

電力線:主分電盤から各階の分電盤(9階,…,2階,フロント)へ配線され,各分電盤から客室(フロント)のコンセントへつながる。テレビ用の同軸ケーブル:テレビアンテナ→増幅器→分配器から縦に配線され,9階客室,…,2階客室,フロントの分岐器・テレビ端子を順に通る。

親機は伝送路の集線箇所,つまり全客室への配線が一か所に集まるところに付ける。図1で電力線がまとまるのは変電設備の主分電盤であり,各階の分電盤はその先で枝分かれしている。したがって製品 P の親機は主分電盤に接続する。

テレビアンテナ用の同軸ケーブルは,アンテナ→増幅器→分配器と来て,分配器から各階の分岐器・テレビ端子へ分かれる。全客室へ信号を送れるのは分配器(又はその手前の,増幅器と分配器の間)であり,解答例はどちらも正解としている。増幅器より上(アンテナ側)に付けると,増幅器が一方向の放送信号用で双方向のデータを通さないおそれがあるので,増幅器より下になる。

どちらも屋上にあるので,本文の“親機の接続箇所と設備室間に新たな配線工事が必要になる”につながる。図1中の名称をそのまま使って答える。

設問2(3) 30字以内

本文中の下線①について,その優位性の内容を具体的に 30 字以内で述べよ。

解答例

  • 伝送路が通信特性に優れている同軸ケーブルであること
解説

本文の根拠

〔採用する製品の選定〕

製品 P と製品 C は同じ通信技術を用いているが,①伝送路として使う構内配線の通信媒体の優位性という面で,製品 C の方が優れている。

〔採用する製品の選定〕

Z 社では,電力線を伝送路に使う製品(以下,製品 P という),テレビアンテナ用同軸ケーブルを伝送路に使う製品(以下,製品 C という)

製品 P と製品 C は同じ通信技術なので,差は伝送路(通信媒体)だけである。製品 P の電力線は電力を送るための線で,家電などがつながるたびに雑音や特性の変化が入る。製品 C の同軸ケーブルはもともと高い周波数の信号を運ぶためのもので,外部導体でシールドされ,特性インピーダンスが一定なので雑音に強く減衰も小さい。

したがって,優位性は“伝送路が通信特性に優れている同軸ケーブルであること”になる。

30字以内。解答例は25字。“同軸ケーブル”という媒体の名前と,“通信特性に優れる”という中身の両方を入れる。

設問2(4) 25字以内

本文中の下線②の機能を,V 親機の接続形態に着目して,25 字以内で述べよ。

解答例

  • 製品Vの故障時に電話信号を素通しする機能
解説

本文の根拠

〔採用する製品の選定〕

製品 V では電話交換機と主配線盤間の電話配線を中継する形で親機を接続するので,設備室内での UTP の引回しで済む。また,②製品 V には,親機が故障したときに通話に影響しないように対応する機能を有することを確認している。

製品 V の親機は,電話交換機と主配線盤の間の電話配線に割り込む形(中継する形)で接続する。電話の音声信号は親機を通り抜けて客室の電話機へ届くので,親機が故障して止まると,そのままでは電話まで不通になる。

そこで,故障時には親機の中で電話回線を直結し,電話信号をそのまま通す(素通しする)機能が要る。データ通信は止まっても通話は守られる。

25字以内。解答例は“製品Vの故障時に電話信号を素通しする機能”(20字)。“中継する形で接続する”という接続形態に着目して,“素通し(バイパス)”を書く。

設問3(1) 解答欄1つ

本文中の b に入れる適切な数値を答えよ。

〔b〕解答例

  • 4
解説

本文の根拠

〔LAN 設計及び監視端末の設計〕

製品 V の親機(以下,V 親機という)1台には,製品 V の子機(以下,V 子機という)を 25 台収容できる。

〔LAN 設計及び監視端末の設計〕

X ホテルで必要な V 子機は 81 台で,V 親機は最少で b 台必要になるので,

V 子機 81 台を,1台で 25 台収容できる V 親機に分ける。81÷25=3.24 なので,3台では 75 台までしか収容できず,4台必要になる。

本文は,親機が複数台になるので,親機の LAN ポートを L2SW に接続して束ねるとしている。

割り算の切り上げで答える。3 と答えると 6 台の V 子機が収容できない。

設問3(2)

図2中の設備室及び客室201にある機器のポート間の接続を,解答欄に示せ。

解答例(図)

図2の設備室と客室201に,ポート間の接続を太線で書き加えたもの。客室201:V 子機のポート A と PC のポート,V 子機のポート B と STB のポートをつなぐ。設備室:L2SW の左の VLAN(ポート3つ)に,上の V 親機のポート B,下の V 親機のポート B,VOD 配信サーバの一方のポートをつなぐ。右の VLAN(ポート4つ)に,VOD 配信サーバのもう一方のポート,下の V 親機のポート A,上の V 親機のポート A をつなぐ(右の VLAN の残る1ポートは元からルータにつながっている)。つまり,ポート B 側(STB・VOD)の VLAN と,ポート A 側(PC・インターネット)の VLAN に分け,VOD 配信サーバは両方の VLAN につなぐ。
解説

本文の根拠

〔LAN 設計及び監視端末の設計〕

製品 V の工場出荷時の設定では,ポート A とポート B に別々の VLAN が割り当てられ,V 親機と V 子機間の通信ではポート B の通信が優先されている。

X ホテルの要件

VOD 配信サーバと VOD セットトップボックス(以下,STB という)間の通信には,十分な通信帯域を確保するとともに,通信遅延のゆらぎを抑える。

X ホテルの要件

インターネット経由で,VOD 配信サーバにコンテンツを蓄積する。

図2

L2SW のポートは点線の枠(VLAN)で二つに分かれ,左の VLAN にポートが3つ,右の VLAN にポートが4つある。右の VLAN の4つ目のポートとルータのポートが線でつながっている。

V 親機と V 子機の間ではポート B の通信が優先されるので,帯域とゆらぎの要件がある VOD の通信をポート B に載せる。客室201 では,V 子機のポート B に STB,ポート A に PC をつなぐ。

設備室では,L2SW の二つの VLAN をポート B 用(VOD)とポート A 用(インターネット)に使い分ける。左の VLAN(3ポート)に2台の V 親機のポート B と VOD 配信サーバをつなぎ,右の VLAN(4ポート,うち1つはルータ)に2台の V 親機のポート A と VOD 配信サーバをつなぐ。VOD 配信サーバはインターネット経由でコンテンツを受け取るので,ルータのある VLAN にもつながなければならない。そのため VOD 配信サーバのポートを二つとも使う。ポートの数は図のポートとちょうど一致し,未接続のポートは残らない。

採点講評は,VOD 配信サーバにポートが二つ必要なことを見抜いていない解答や,未接続のポートを残した解答が多かったとしている。ポートの数が合うかで検算できる。

採点講評(IPA)

設問3(2)は,難易度からすればもう少しできてもよかった。要件と,製品Vのポート間における優先設定の関係が理解できれば容易な問題である。L2SWにおけるVLAN構成とルータとの接続の関係から,VOD配信サーバにポートが二つ必要なことを見抜いていない解答が散見した。未接続なポートを残したままの解答も多かったので,解答に漏れがないように注意してほしい。

設問3(3) 25字以内

本文中の下線③となるためには,ブラウザの通信動作がどうあればよいか。ルータの通信制御に着目して,25 字以内で述べよ。

解答例

  • 最大同時フロー数が同じであること
解説

本文の根拠

〔LAN 設計及び監視端末の設計〕

ブラウザで Web を閲覧するインターネットの利用において③PC 1台当たりの通信帯域がほぼ同じになることも期待できる

〔LAN 設計及び監視端末の設計〕

インターネット接続回線の混雑時には,各フローの占有通信帯域が均等になるようにパケットの転送を制御する。

ルータが均等にするのはフローごとの帯域であって,PC ごとの帯域ではない。PC 1台の帯域は“フロー1本の帯域×その PC が同時に張るフローの数”になる。ブラウザは Web ページの画像などを取りに行くとき,複数の TCP コネクション(フロー)を並行して張る。

したがって,どの PC のブラウザも同時に張るフローの数の上限(最大同時フロー数)が同じなら,混雑時の PC 1台当たりの帯域はほぼ同じになる。

25字以内。解答例は“最大同時フロー数が同じであること”(16字)。採点講評は,フロー数を1にするという解答はブラウザの実装として一般的でないとしている。“同じ”であることが要点で,1本に限る必要はない。

採点講評(IPA)

設問3(3)は,正答率が低かった。PC 1台当たりの通信帯域が,各フローの通信帯域とPC 1台当たりのフロー数の積であることに気づけば容易な問題であるが,それに気づいていない解答が多かった。また,フロー数を1にすることを指摘した解答が散見したが,ブラウザの実装としてこれは一般的でない。

設問4 解答欄2つ

無線 LAN 構成が,X ホテルの要件を満たしていない点は何か。無線 LAN の機器配置及び通信特性に着目して,それぞれ 30 字以内で述べよ。

〔機器配置〕解答例

  • 無線アクセスポイントの設置に配線工事が発生する。

〔通信特性〕解答例

  • 通信帯域又は通信遅延の条件を満足できないことがある。
解説

本文の根拠

X ホテルの要件

配管の制約上,客室内に新たに配線するのは困難である。また,営業の都合上,客室内及び設備室内以外の配線工事も極力回避する。

X ホテルの要件

VOD 配信サーバと VOD セットトップボックス(以下,STB という)間の通信には,十分な通信帯域を確保するとともに,通信遅延のゆらぎを抑える。

冒頭

Z 社の O 主任は,各階の廊下にアクセスポイントを配置する無線 LAN 構成では,X ホテルの要件を満たせないと考え,

機器配置:アクセスポイントを各階の廊下に置くと,それぞれに LAN ケーブル(と電源)を設備室から引かなければならない。これは“客室内及び設備室内以外の配線工事も極力回避する”という要件に反する。

通信特性:無線 LAN は電波を複数の端末で共有し,周囲の電波の干渉も受けるので,帯域が端末数や環境で変わり,遅延のゆらぎも大きい。VOD の“十分な通信帯域”と“通信遅延のゆらぎを抑える”という要件を満たせないことがある。

どちらも30字以内。解答例は“無線アクセスポイントの設置に配線工事が発生する。”(24字),“通信帯域又は通信遅延の条件を満足できないことがある。”(26字)。要件のどれに反するかが分かるように書く。

出典:平成23年度 秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問1(表記を一部改変)

問2 メールアーカイブシステム導入

メールアーカイブシステム導入に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

A 社は,電子メール(以下,メールという)サーバを2年前に導入した。5,000 名の社員が,本社,支社,支店に設置された PC から,このサーバを利用している。メールは業務に不可欠であり,情報管理と事業継続の両面から重要な位置を占めている。

現在,A 社の情報システム部では,来年度の IT 予算を検討している。その中で,メールに関する次の二つの課題に対応するため,メールアーカイブシステム(以下,アーカイブという)の追加導入を計画している。

一つ目の課題は,メールデータの管理である。メールサーバが送受信する全てのメールデータを数年間保管し,必要な情報を即座に抽出できるようにする。二つ目の課題は,災害対策である。メールデータの保管場所を複数にし,片方が被災した場合にもメールデータが消失しないようにする。

A 社のネットワークシステム構成図(抜粋)を図1に示す。

複数の支店(それぞれに PC がある),本社,支社が広域イーサ網につながる。本社:広域イーサ網に帯域制御装置がつながり,その下に L3SW,L3SW の下に L2SW が2台ある。一方の L2SW には PC(複数台),もう一方の L2SW にはメールサーバと(アーカイブ)正サーバがつながる。支社:広域イーサ網に帯域制御装置がつながり,その下に L3SW,L3SW の下に L2SW が2台ある。一方の L2SW には PC(複数台),もう一方の L2SW には(アーカイブ)副サーバがつながる。正サーバと副サーバは網掛け。凡例:L2SW:レイヤ2スイッチ,L3SW:レイヤ3スイッチ,広域イーサ網:広域イーサネットサービス網。注記 網掛け部分は,導入予定の機器を示す。
図1 A 社のネットワークシステム構成図(抜粋)

各拠点の接続には,広域イーサ網を用いている。大規模拠点である本社と支社には,帯域制御装置を設置し,広域イーサ網に送出する単位時間当たりのデータ量を通信の用途ごとに制御している。

アーカイブは,正サーバと副サーバで構成し,正サーバを本社に,副サーバを遠隔地の支社に設置する予定である。正サーバから副サーバへは大量のデータが転送されることから,帯域制御装置を使い,アーカイブに必要な帯域を割り当てる予定である。

アーカイブの処理時間には幾つか懸念事項がある。情報システム部長は,ネットワーク技術者の B 君に,その検討を命じた。

〔システム要件と処理性能モデル〕

メール到着の都度,メールサーバは,全てのメールを,到着時刻順に1件ずつ正サーバに転送する。正サーバは,受信したメールにディジタル署名を付加し,高速検索に用いるインデックス情報を作成し,データを圧縮した上で格納する。これらの処理を,保管プロセスと呼ぶ。

正サーバは,保管プロセスとは非同期に,格納されているメールを,保管時刻の古い順に,1件ずつ副サーバへ転送する。副サーバは,受信したメールを正サーバと同様に格納する。これらの処理を,複製プロセスと呼ぶ。

アーカイブのシステム要件を表1に示す。

列は区分,項目,内容。メール利用に関する項目:a 到着件数(ピーク日):189,000 件/日。b 平均データ量:12.5×10<sup>3</sup> バイト/件。c 最繁時到着件数:36,000 件/時(9:00〜10:00)。保管プロセスに関する項目:d 平均所要時間の上限:1秒以内(メール到着時,速やかにメールが保管されること)。e サーバの処理能力:12.5 件/秒。複製プロセスに関する項目:f 所要時間の上限:24 時間以内(前日同時刻のメールは複製されていること)。g 転送効率:50%。広域イーサ網に関する項目:h 本社・支社間の余裕度:アーカイブ用の通信帯域として最大 1.5 M ビット/秒まで利用可能。i 帯域制御装置仕様:アーカイブ用の通信帯域を 0.25 M ビット/秒単位に設定可能。
表1 処理時間に関するシステム要件(抜粋)

B 君は,アーカイブの所要時間に関する要件(表1中の項目 d,f)を実現できるかどうかを検討するために,図2に示す処理性能モデルを作成した。

左から順に,メールの到着,保管プロセス(処理待ち(待ち行列α)→正サーバへの格納),複製プロセス(処理待ち(待ち行列β)→副サーバへの転送→副サーバへの格納)と並ぶ。保管プロセスの範囲に“保管プロセスの所要時間”,複製プロセスの範囲に“複製プロセスの所要時間”の矢印が付いている。
図2 メール1件に着目したときの処理性能モデル

このモデルでは,メール1件に対する保管プロセスと複製プロセスを,二つの待ち行列と三つの処理に分解している。

B 君は,各プロセスの所要時間を,次のように検討した。

〔保管プロセスに関する検討〕

図2中の待ち行列αについて考える。正サーバへの格納はメール到着の都度行われるので,①その到着は M/M/1 の条件を満たすと仮定し,最繁時の平均待ち時間を算出する。最繁時には,[ ア ] 件/秒の処理要求(λ)が発生する。また,単位時間の平均処理数(μ)は,サーバの処理能力から [ イ ] 件/秒である。したがって,利用率(ρ)は [ ウ ] となり,処理中のものを含めた待ち行列の長さの平均(平均系内数)は 4.0,平均待ち時間は [ エ ] 秒と算出できる。以上から,保管プロセスの平均所要時間は,1秒未満であるから,平均所要時間の上限(表1中の項目 d)は超えていない。

〔複製プロセスに関する検討〕

図2中の待ち行列βには,M/M/1 は適用できない。最繁時には,利用率(ρ)が1以上となり,大量のメールが正サーバに滞留する。そこで,処理性能モデルを見直し,滞留したメールが連続的に転送されると仮定する。その場合,1日に転送されるメールデータ量(189,000 件/日×12.5×103 バイト/件)を,転送効率 50%で 24 時間以内に転送することになる。B 君は,②これらの条件で必要となる回線速度を算出し,アーカイブに 0.5 M ビット/秒の帯域を割り当てることにした。

次に,B 君は,メールの到着時刻と転送時刻の関係を調べるため,図3を作成した。

横軸は 6:00 から翌日 6:00 までの1時間ごとの時間帯。上段は“メール到着件数/時”のグラフ(目盛 9,000,18,000,27,000,36,000)で,4,500 件ごとのメール群を1個の箱(ID)で積み上げている。7:00〜8:00:ID 1。8:00〜9:00:ID 2〜5。9:00〜10:00:ID 6〜13(36,000 件)。10:00〜11:00:ID 14〜17。11:00〜12:00:ID 18〜20。12:00〜13:00:ID 21。13:00〜14:00:ID 22,23。14:00〜15:00:ID 24,25。15:00〜16:00:ID 26〜28。16:00〜17:00:ID 29〜31。17:00〜18:00:ID 32〜35。18:00〜19:00:ID 36〜39。19:00〜20:00:ID 40〜42。20:00 以降の到着は無い。下段は“メール転送件数/時”のグラフ(目盛 9,000)で,1時間に2個(9,000 件)ずつ転送される。7:00〜8:00:ID 1。8:00〜9:00:ID 2,3。9:00〜10:00:ID 4,5。10:00〜11:00:ID 6,7。11:00〜12:00:ID 8,9。12:00〜13:00:ID 10,11。13:00〜14:00:ID 12,13。以下1時間に2個ずつ続き,…,2:00〜3:00:ID 38,39。3:00〜4:00:ID 40,41。4:00〜5:00:ID 42。注記 0.5 M ビット/秒の帯域を割り当てた場合,9,000 件のメールを単位時間に転送できる。
図3 時間帯別のメール到着件数とメール転送件数

図3中の上段のグラフは,時間帯別のメールの到着数を示している。同じ時間帯に到着したメールは,到着順に 4,500 件を1グループとし,1〜42 の ID を付与している。

図3中の下段のグラフは,到着したメールが 0.5 M ビット/秒の帯域で順次転送される場合,どの時間帯に転送されるのかを示している。

図3によると,7:00〜8:00 に到着した ID 1 のメール群は,同時間帯に転送される。一方,9:00〜10:00 に到着した ID 13 のメール群の転送は,同時間帯ではなく,[ オ ] :00 〜 [ カ ] :00 に行われる。このことから,ID 13 のメール群の各メールに関する,複製プロセスの所要時間は,約 [ キ ] 時間とみなせる。

このようにして,B 君は,図3から,複製プロセスの所要時間が最大となるのは,ID [ ク ] のメール群であり,その所要時間は,約 [ ケ ] 時間になると推定し,所要時間の上限(表1中の項目 f)は超えないと判断した。

以上の検討から,B 君は,広域イーサ網の帯域 1.5 M ビット/秒(表1中の項目 h)のうち,0.5 M ビット/秒を割り当てることで,アーカイブの所要時間に関する要件(表1中の項目 d,f)を実現できることを,情報システム部長に報告した。

出題趣旨(IPA)

本問では,電子メールのアーカイブシステムを題材に,ネットワークの性能設計に関する基本知識と応用能力を問う。ネットワークの高速化,大容量化が進み,従来に比べて性能要件を巡る緻密な検討を必要とする場面は減少している。しかし,待ち行列理論を応用したり,システム要件から必要となる回線速度を算出したりすることは,ネットワーク技術者としての必須能力であることに変わりはない。公式を理解したりグラフを読み解いたりする力も重要である。なお,問題作成に当たっては,基本的な内容の理解を確認することに重点をおき,煩雑な計算を避け,受験者への負担軽減を図った。

設問と解答例

設問1(1) 20字以内

正サーバが,メールにディジタル署名を付加する目的を,20 字以内で述べよ。

解答例

  • メールデータの改ざん防止のため
解説

本文の根拠

冒頭

メールサーバが送受信する全てのメールデータを数年間保管し,必要な情報を即座に抽出できるようにする。

〔システム要件と処理性能モデル〕

正サーバは,受信したメールにディジタル署名を付加し,高速検索に用いるインデックス情報を作成し,データを圧縮した上で格納する。

ディジタル署名は,署名を付けた後にデータが1ビットでも変わると検証に失敗する。アーカイブはメールを数年間保管し,後で証拠として取り出す使い方をするので,保管したメールが後から書き換えられていないことを示せなければならない。

正サーバが格納の時点で署名を付けておけば,取り出したメールの署名を検証して改ざんの有無を確かめられる。

20字以内。解答例は“メールデータの改ざん防止のため”(15字)。“改ざん”を入れる。署名は内容を隠す(暗号化)ものではないので,“盗聴防止”などと書かない。

採点講評(IPA)

設問1では,アーカイブシステムの基本的な理解を問うている。正答率は高かった。

設問1(2)

表1の要件における,本社被災に関するメールデータの RPO(リカバリポイント目標)を答えよ。

解答例

  • 24時間
解説

本文の根拠

表1 項目f

f 所要時間の上限:24 時間以内(前日同時刻のメールは複製されていること)。

〔システム要件と処理性能モデル〕

正サーバは,保管プロセスとは非同期に,格納されているメールを,保管時刻の古い順に,1件ずつ副サーバへ転送する。

RPO は,障害が起きたときにどの時点までのデータを取り戻せるかの目標である。本社が被災すると正サーバが失われ,残るのは支社の副サーバだけになる。副サーバにあるのは複製プロセスで転送し終えたメールである。

表1の項目 f は複製の所要時間を 24 時間以内とし,“前日同時刻のメールは複製されていること”としている。被災の時点から見て 24 時間前までのメールは必ず副サーバにあるので,RPO は 24 時間になる。

単位まで付けて“24時間”と答える。採点講評は,設問1の正答率は高かったとしている。

採点講評(IPA)

設問1では,アーカイブシステムの基本的な理解を問うている。正答率は高かった。

設問2(1) 20字以内

本文中の下線①について,到着条件を 20 字以内で述べよ。

解答例

  • メールがランダムに到着する
解説

本文の根拠

〔保管プロセスに関する検討〕

正サーバへの格納はメール到着の都度行われるので,①その到着は M/M/1 の条件を満たすと仮定し,最繁時の平均待ち時間を算出する。

M/M/1 の最初の M は到着の仕方で,到着がランダム(単位時間の到着数がポアソン分布に従う,すなわち到着間隔が指数分布に従う)であることを表す。二つ目の M はサービス時間が指数分布に従うこと,1 は窓口が1つであることを表す。

下線①は“到着”について問うているので,メールがランダムに到着することを答える。

20字以内。解答例は“メールがランダムに到着する”(13字)。“ポアソン到着”や“到着間隔が指数分布に従う”も同じ意味である。採点講評は,(1)の正答率が低かったとし,ランダム到着はポアソン分布・指数分布と数学的に同値だとしている。

採点講評(IPA)

設問2では,(1)と(2)エの正答率が低かった。M/M/1ではランダム到着が前提となる。これは,単位時間の到着数がポアソン分布に従うこと,又は,到着間隔が指数分布に従うことと数学的に同値である。平均待ち時間を求める公式とともに,再度,待ち行列理論を確認していただきたい。

設問2(2) 解答欄4つ

本文中の [ ア ] 〜 [ エ ] に入れる適切な数値を答えよ。

〔ア〕解答例

  • 10

〔イ〕解答例

  • 12.5

〔ウ〕解答例

  • 0.8

〔エ〕解答例

  • 0.32
解説

本文の根拠

表1 項目c・e

c 最繁時到着件数:36,000 件/時(9:00〜10:00)。保管プロセスに関する項目:d 平均所要時間の上限:1秒以内(メール到着時,速やかにメールが保管されること)。e サーバの処理能力:12.5 件/秒。

〔保管プロセスに関する検討〕

最繁時には,[ ア ] 件/秒の処理要求(λ)が発生する。また,単位時間の平均処理数(μ)は,サーバの処理能力から [ イ ] 件/秒である。したがって,利用率(ρ)は [ ウ ] となり,処理中のものを含めた待ち行列の長さの平均(平均系内数)は 4.0,平均待ち時間は [ エ ] 秒と算出できる。

ア:最繁時の到着は 36,000 件/時なので,λ=36,000÷3,600=10 件/秒。イ:μ はサーバの処理能力そのままで 12.5 件/秒。ウ:ρ=λ/μ=10÷12.5=0.8。

エ:M/M/1 の平均系内数は ρ/(1−ρ)=0.8÷0.2=4.0 で,本文の値と一致する。平均待ち時間(待ち行列で待つ時間,処理時間を含まない)は ρ/(1−ρ)×(1/μ)=4.0×0.08=0.32 秒。処理時間 1/μ=0.08 秒を足した平均所要時間は 0.4 秒で,本文の“1秒未満”とも合う(リトルの公式でも 4.0÷10=0.4 秒)。

平均系内数を λ で割った 0.4 秒は“所要時間”で,“待ち時間”ではない点に注意する。採点講評は,(2)エの正答率が低かったとし,平均待ち時間の公式を確認してほしいとしている。

採点講評(IPA)

設問2では,(1)と(2)エの正答率が低かった。M/M/1ではランダム到着が前提となる。これは,単位時間の到着数がポアソン分布に従うこと,又は,到着間隔が指数分布に従うことと数学的に同値である。平均待ち時間を求める公式とともに,再度,待ち行列理論を確認していただきたい。

設問3(1)

本文中の下線②について,必要となる回線速度を求めよ。答えは小数第3位を四捨五入して,小数第2位まで求めよ。

解答例

  • 0.44
解説

本文の根拠

〔複製プロセスに関する検討〕

1日に転送されるメールデータ量(189,000 件/日×12.5×103 バイト/件)を,転送効率 50%で 24 時間以内に転送することになる。

1日のデータ量は 189,000×12.5×103=2.3625×109 バイト=1.89×1010 ビット。これを 24 時間=86,400 秒で送るには 1.89×1010÷86,400=218,750 ビット/秒の実効速度が要る。

転送効率が 50%なので,回線速度はその2倍の 437,500 ビット/秒=0.4375 M ビット/秒。小数第3位を四捨五入して 0.44(M ビット/秒)になる。帯域制御装置は 0.25 M ビット/秒単位で設定するので(表1の項目 i),B 君はこれを上回る 0.5 M ビット/秒を割り当てた。

バイトからビットへの 8 倍と,転送効率で割る(2倍にする)ことを忘れやすい。単位は問題文の M ビット/秒に合わせる。

設問3(2) 解答欄5つ

本文中の [ オ ] 〜 [ ケ ] に入れる適切な整数を答えよ。

〔オ〕解答例

  • 13

〔カ〕解答例

  • 14

〔キ〕解答例

  • 4

〔ク〕解答例

  • 42

〔ケ〕解答例

  • 9
解説

本文の根拠

図3

9:00〜10:00:ID 6〜13(36,000 件)。

図3

13:00〜14:00:ID 12,13。

図3

19:00〜20:00:ID 40〜42。20:00 以降の到着は無い。

図3

3:00〜4:00:ID 40,41。4:00〜5:00:ID 42。

オ・カ・キ:下段のグラフで ID 13 は 13:00〜14:00 に転送されている。9:00〜10:00 に到着したメールが 13:00〜14:00 に転送されるので,所要時間は約4時間とみなせる。

ク・ケ:0.5 M ビット/秒では1時間に 9,000 件(ID 2個ぶん)しか送れない。到着が転送を上回る時間帯が続くので滞留は日中ずっと残り,最後に到着した ID 42(19:00〜20:00)が転送されるのは 4:00〜5:00 である。所要時間は約9時間で,他の ID より長い(例えば ID 13 は4時間)。24 時間以内という項目 f は満たす。

図3は1個が 4,500 件の箱なので,箱の位置(時間帯)を上下のグラフで対応させるだけで読める。採点講評は,(2)ケの正答率が低かったとしている。

採点講評(IPA)

設問3では,(2)ケと(3)の正答率が低かった。空白の解答や,メール1件当たりの所要時間ではなくメール全体の所要時間を算出しようとした解答などが散見された。滞留を含むデータ転送の遅延時間を推定する問題である。あまりなじみがない題材だったかもしれないが,実務において,この種の考察を必要とする場合もある。なお,図3で示した内容は単純であり,本文を注意深く読めば,正答にたどり着ける問題である。

設問3(3) 解答欄2つ

割り当てる帯域を 0.5 M ビット/秒から 1.5 M ビット/秒に増やした場合,複製プロセスの所要時間は最大何時間となるかを整数で答えよ。また,その根拠を 50 字以内で具体的に述べよ。

〔所要時間〕解答例

  • 1

〔根拠〕解答例

  • 到着件数が転送可能件数を上回るのはピーク時間帯だけで,次の時間帯には滞留が解消するため
解説

本文の根拠

表1 項目h

h 本社・支社間の余裕度:アーカイブ用の通信帯域として最大 1.5 M ビット/秒まで利用可能。

図3

注記 0.5 M ビット/秒の帯域を割り当てた場合,9,000 件のメールを単位時間に転送できる。

図3

9:00〜10:00:ID 6〜13(36,000 件)。10:00〜11:00:ID 14〜17。

帯域を 3 倍の 1.5 M ビット/秒にすると,1時間に 27,000 件(ID 6個ぶん)転送できる。図3で到着が 27,000 件を超えるのは 9:00〜10:00 の 36,000 件(ID 6〜13)だけで,他の時間帯は 18,000 件以下である。

9:00〜10:00 に送り切れない 9,000 件(ID 12,13)は,10:00〜11:00 に到着する 18,000 件(ID 14〜17)と合わせて 27,000 件となり,その時間帯で転送し終わる。滞留はそこで解消し,以後は到着した時間帯に転送される。所要時間が最大になるのは ID 13 で,約1時間となる。

根拠は50字以内。解答例は“到着件数が転送可能件数を上回るのはピーク時間帯だけで,次の時間帯には滞留が解消するため”(43字)。“上回るのがピークだけ”と“次の時間帯で解消”の二つを入れる。採点講評は,(3)の正答率が低く,メール全体の所要時間を算出しようとした解答が散見されたとしている。

採点講評(IPA)

設問3では,(2)ケと(3)の正答率が低かった。空白の解答や,メール1件当たりの所要時間ではなくメール全体の所要時間を算出しようとした解答などが散見された。滞留を含むデータ転送の遅延時間を推定する問題である。あまりなじみがない題材だったかもしれないが,実務において,この種の考察を必要とする場合もある。なお,図3で示した内容は単純であり,本文を注意深く読めば,正答にたどり着ける問題である。

出典:平成23年度 秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問2(表記を一部改変)

問3 ネットワークの再構築

ネットワークの再構築に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

S 社は,全国に 100 店舗以上のインターネットカフェをフランチャイズ方式で展開している企業である。本部は,商標権,営業権などの権利をもち,加盟店(以下,FC という)に営業ノウハウ,顧客管理システム,販売管理システムなどを提供している。

〔現在のネットワーク構成〕

店舗の利用者は,会員登録をしなければならないが,ある店舗で登録すれば,全国の全ての店舗でサービスを受けられるようになる。会員が利用する PC(以下,会員用 PC という)は,インターネットに接続されている。会員が利用するネットワーク(以下,会員用 NW という)の構成及びセキュリティ対策については,本部からのガイドラインはあるが,各 FC に任されている部分が大きいので,FC ごとに異なっており,本部では把握できていない。

図1は,S 社のネットワーク構成の抜粋である。図1中の店舗のネットワーク構成は一例であり,S 社が運用を委託している T 社のデータセンタ(以下,DC という)に設置されている業務サーバ(以下,業務 SV という)を使用する業務用ネットワーク(以下,業務用 NW という)だけが,全ての店舗に共通している。

T 社 DC(内部構成詳細は省略):業務 SV がルータにつながり,ルータは IP-VPN につながる。店舗:会員用 NW と業務用 NW がある。会員用 NW:ルータがインターネットにつながり,ルータの下に L2SW(複数台),各 L2SW に会員用 PC がつながる。業務用 NW:ルータが IP-VPN につながり,ルータの下の L2SW に POS 端末と業務 PC がつながる。業務用 NW の点線の枠は,T 社 DC の業務 SV・ルータから IP-VPN を経て店舗のルータ・L2SW・POS 端末・業務 PC までを囲む。凡例:L2SW:レイヤ2スイッチ。
図1 S 社のネットワーク構成(抜粋)

DC では,T 社の運用担当者が業務用 NW の稼働状態を監視しており,障害を検知すると,S 社の担当者にメールで通知する。一方,会員用 NW に障害が発生した場合,DC で検知して状況を把握することができないので,店舗の担当者だけで対応している。その結果,解決までに時間が掛かってしまうことが多く,会員からのクレームも増加しており,何らかの対策が急務となっている。

S 社では,情報システム部が対策を検討した結果,会員用 NW の監視をアウトソーシングすることにした。詳細な検討については,ネットワーク管理者の D 君が担当することとなった。

〔ネットワーク監視サービスの検討〕

D 君が調査したところ,FC に任されているセキュリティ対策も不十分であることが分かった。また,FC からは,“スキルをもった人材を確保することが困難なので,会員用 NW を本部で一元管理し,店舗側での対応を必要最小限に抑えてほしい”という要望もあった。

D 君は,これらの問題を解決できるネットワーク監視サービスを調査した。幾つかの会社から提案してもらい,費用とサービス内容を比較した結果,C 社のサービスに絞った。C 社提案の新ネットワーク構成を図2に示す。

T 社 DC(内部構成詳細は省略):業務 SV がルータにつながり,ルータはインターネットにつながる。C 社 監視センタ(内部構成詳細は省略):監視 SV と構成管理 SV がルータにつながり,ルータはインターネットにつながる。監視センタには DSU もあり,DSU は ISDN につながる(DSU の手前の接続は省略)。店舗:FW が2台あり,どちらもインターネットにつながる。上の FW の下に L2SW(複数台)があり,各 L2SW に会員用 PC(複数台)がつながる。下の FW の下にも L2SW(複数台)があり,会員用 PC がつながる L2SW と,POS 端末・業務 PC がつながる L2SW がある。店舗にも DSU があり,DSU は ISDN につながる(DSU の先の接続は省略)。凡例:FW:ファイアウォール,SV:サーバ。注記 DSU の先の接続は省略している。
図2 C 社提案の新ネットワーク構成

C 社の提案には,ネットワーク監視サービスの提供だけでなく,業務用 NW を含めたネットワーク構成の見直しも含まれていた。C 社によると,“構成の見直しと業務用 NW の監視サービスを T 社から乗り換えることで,ランニング費用を現状と同等にできる”とのことであった。さらに,セキュリティ対策と運用上の作業負荷を極力抑えられるように,新たな機器の導入と保守サービスの提案も含まれていた。次は,C 社提案の要約である。

保守費用を抑えるために,なるべく店舗の担当者が対応できるように,次のような仕組みと作業マニュアルを用意する。

〔ネットワークの再構築〕

S 社は,C 社の提案を採用し,ネットワークを再構築することを決定した。D 君は,運用フェーズに備えて,店舗の担当者が実施する作業マニュアルの整備を進めていくことにした。作業マニュアルにおける L2SW の交換作業手順を表1に示す。

列は項番,作業内容。①:故障した L2SW に接続されている全てのケーブルを抜く。②:予備の L2SW にログインして,IP アドレスを設定する。③:L2SW を FW に接続する。④:(設問の関係で省略)。⑤:L2SW に設定情報を保存し,それをリブートする。⑥:(設問の関係で省略)。⑦:会員用 PC が利用できることを確認する。
表1 L2SW の交換作業手順

S 社と各 FC は,新たな契約内容で合意し,移行計画に基づいてネットワークの再構築を進めていくことになった。

出題趣旨(IPA)

ネットワーク技術者の職務は,設計・構築であり,運用はネットワーク管理者が行うものという役割意識のせいか,運用設計が不十分なシステムが多く見受けられる。運用段階では,ネットワークやシステムに関する知識をほとんど持たない現場の担当者でも運用できる優しいシステムの構築が期待されている。したがって,“導入したネットワークをどのように運用管理していくか”を,設計段階から十分考慮することが,ネットワーク技術者に求められている。本問では,ネットワーク監視サービスのアウトソーシング移行を契機に,システムの特性を理解した上で,障害が発生することを前提に,可用性向上を考慮したネットワークの構築力を問う。

設問と解答例

設問1 解答欄6つ

本文中の [ ア ] 〜 [ カ ] に入れる適切な字句を答えよ。

〔ア〕解答例

  • UTM

〔イ〕解答例

  • 再起動

〔ウ〕解答例

  • TFTP

〔エ〕解答例

  • IPアドレス

〔オ〕解答例

  • RJ-45

〔カ〕解答例

  • コミュニティ
解説

本文の根拠

(1) 新ネットワーク構成

FW には,VPN,Web フィルタリング,ウイルスチェックなどの機能ももたせる(このような複数のセキュリティ機能をもつ装置のことを [ ア ] という)。

(1) 新ネットワーク構成

会員用 PC が勝手に設定変更されたり,ウイルスに感染したりした場合でも,PC を [ イ ] すれば,元の状態に戻せるようなツールを導入する。

(2) 運用上の考慮点

店舗側の L2SW の設定情報は,構成管理 SV に保存しておき,簡易型ファイル転送用プロトコルである [ ウ ] を用いてデータを転送する。その作業は,店舗の担当者が L2SW にログインし,構成管理 SV の [ エ ] とファイル名を指定したコマンドを投入して行う。

(2) 運用上の考慮点

DSU と FW の接続には,一般的に [ オ ] と呼ばれるモジュラジャックが付いているケーブルを用いる。

(3) C 社の監視サービス

監視対象となる機器は,SNMP v1/v2c 対応の機器を導入する。監視の対象範囲に [ カ ] 名を付け,監視 SV がこれを指定して,対象機器に問い合わせる。

ア:FW,VPN,Web フィルタリング,ウイルスチェックなど複数のセキュリティ機能を1台にまとめた装置は UTM(Unified Threat Management,統合脅威管理)。イ:再起動するだけで設定変更やウイルス感染の前の状態に戻すツール(ディスクの変更を保存しない復元ソフト)を入れる。ウ:簡易型のファイル転送プロトコルは TFTP(RFC 1350)。UDP を使い,認証もディレクトリ操作も無い,ネットワーク機器の設定ファイルやファームウェアの転送によく使われる。

エ:TFTP のコマンドでは,転送元のサーバを IP アドレスで指定し,ファイル名と合わせて投入する。オ:ISDN の DSU と端末(FW)の間(S/T 点)は8極のモジュラジャックでつなぎ,一般に RJ-45 と呼ばれる。カ:SNMP v1/v2c では,管理する側とされる側で同じコミュニティ名を設定し,これが監視の対象範囲(管理のまとまり)を決めると同時に簡易なパスワードの役目をする(v3 はユーザ単位の認証に変わった)。

採点講評は,ア,オ,カの正答率が低く,オ,カは頻繁に目にする用語なのできちんと把握してほしいとしている。

採点講評(IPA)

設問1では,ア,オ,カの正答率が低かった。オ,カについては,頻繁に目にする用語である。きちんと把握しておいてほしい。

設問2(1) 解答欄3つ

VPN トンネルの設定区間を三つ答えよ。

〔①〕解答例

  • T社DCのルータと店舗のFWの間
  • C社監視センタのルータと店舗のFWの間
  • C社監視センタのルータとT社DCのルータの間

〔②〕解答例

  • T社DCのルータと店舗のFWの間
  • C社監視センタのルータと店舗のFWの間
  • C社監視センタのルータとT社DCのルータの間

〔③〕解答例

  • T社DCのルータと店舗のFWの間
  • C社監視センタのルータと店舗のFWの間
  • C社監視センタのルータとT社DCのルータの間

〔備考〕解答例は①“T社DCのルータ と 店舗のFW の間”,②“C社監視センタのルータ と 店舗のFW の間”,③“C社監視センタのルータ と T社DCのルータ の間”。三つを順不同で答える

解説

本文の根拠

(1) 新ネットワーク構成

DC,店舗,監視センタの接続には,インターネット VPN を利用する。

(1) 新ネットワーク構成

DC 及び監視センタのルータには,VPN 機能をもたせる。

(1) 新ネットワーク構成

FW には,VPN,Web フィルタリング,ウイルスチェックなどの機能ももたせる

〔ネットワーク監視サービスの検討〕

“構成の見直しと業務用 NW の監視サービスを T 社から乗り換えることで,ランニング費用を現状と同等にできる”

VPN 機能をもつのは,DC のルータ,監視センタのルータ,店舗の FW の三つである。これまで IP-VPN で結んでいた DC と店舗の業務用 NW は,インターネット VPN(DC のルータと店舗の FW の間)に置き換わる。

監視センタは店舗の会員用 NW と業務用 NW を監視するので,監視センタのルータと店舗の FW の間にもトンネルが要る。さらに,業務用 NW の監視を T 社から C 社に乗り換えるので,DC にある業務 SV などを監視するため,監視センタのルータと DC のルータの間にもトンネルを張る。

三つは順不同。拠点の名前だけでなく,トンネルの端になる機器(ルータ,FW)まで書く。見落としやすいのは3本目の監視センタと DC の間である。

設問2(2) 解答欄2つ

FW に L2SW を付け替える場合に,作業ミスを防止するため,FW に対して事前に準備しておくべき事項を二つ挙げ,それぞれ 20 字以内で述べよ。

〔①〕解答例

  • L2SW接続用のポートを確保する。

〔②〕解答例

  • 接続変更後の構成情報を用意する。

〔備考〕①②は順不同

解説

本文の根拠

(2) 運用上の考慮点

FW 又はアクセス回線に障害が発生した場合は,店舗の担当者が,利用可能なもう1台の FW に L2SW を付け替える。

(1) 新ネットワーク構成

店舗側の FW は2台構成とし,配下に L2SW を接続する。

〔ネットワーク監視サービスの検討〕

スキルをもった人材を確保することが困難なので,会員用 NW を本部で一元管理し,店舗側での対応を必要最小限に抑えてほしい

付け替えは,ネットワークの知識の少ない店舗の担当者がケーブルを差し替えるだけで済むようにしておかなければならない。そのためには,もう1台の FW 側に,付け替えてくる L2SW をつなぐための空きポートをあらかじめ確保しておく必要がある。

また,ケーブルを差し替えた後に FW の設定を変える作業が要るのでは,担当者には対応できない。付け替えた後の構成で動く設定情報(インタフェースやフィルタの設定)を事前に用意しておき,すぐに切り替えられるようにする。

それぞれ20字以内。解答例は“L2SW接続用のポートを確保する。”(17字),“接続変更後の構成情報を用意する。”(16字)。“物理(ポート)”と“設定(構成情報)”の二つに分けると重ならない。採点講評は,(2)の事前準備は構築フェーズから考慮する必要があるとしている。

採点講評(IPA)

設問2では,(2)と(3)の正答率が低かった。(2)の事前準備は,構築フェーズから考慮する必要があることであり,十分に意識してほしい。(3)の通信要件には,遮断だけでなく,許可が含まれることに気付かなかったようだ。許可が通信要件であることは,FWを学んでいれば理解できるであろう。VLANの構成を設計する際には,端末側だけでなくアップリンク側も考えてほしい。

設問2(3) 解答欄2つ

店舗内の L2SW に設定する VLAN で実現させる通信条件を二つ挙げ,それぞれ 30 字以内で述べよ。

〔①〕解答例

  • FW接続ポートとPC接続ポート間は通信できる。

〔②〕解答例

  • PC接続ポート同士では通信できない。

〔備考〕①②は順不同

解説

本文の根拠

(1) 新ネットワーク構成

店舗内セグメントでは,L2SW の機能によって,会員用 PC 間の通信を遮断する。

図2

上の FW の下に L2SW(複数台)があり,各 L2SW に会員用 PC(複数台)がつながる。

会員用 PC 同士の通信は遮断する(他の会員の PC への不正アクセスやウイルスの感染を防ぐ)。しかし,会員用 PC はインターネットを使うので,FW(上位の出口)との通信は許可しなければならない。

したがって,L2SW の VLAN では“PC 接続ポートと FW 接続ポートの間は通信できる”“PC 接続ポート同士では通信できない”の二つを実現する(ポート単位で通信先を制限する,プライベート VLAN のような構成)。

それぞれ30字以内。解答例は“FW接続ポートとPC接続ポート間は通信できる。”(23字),“PC接続ポート同士では通信できない。”(18字)。採点講評は,(3)の正答率が低く,遮断だけでなく許可も通信要件に含まれることに気付かなかったようだとし,端末側だけでなくアップリンク側も考えてほしいとしている。

採点講評(IPA)

設問2では,(2)と(3)の正答率が低かった。(2)の事前準備は,構築フェーズから考慮する必要があることであり,十分に意識してほしい。(3)の通信要件には,遮断だけでなく,許可が含まれることに気付かなかったようだ。許可が通信要件であることは,FWを学んでいれば理解できるであろう。VLANの構成を設計する際には,端末側だけでなくアップリンク側も考えてほしい。

設問3(1) 40字以内

店舗側の FW が故障した場合,メールによる障害通知運用に支障を来すことがある。その内容を 40 字以内で述べよ。

解答例

  • S社の担当者にメールが大量に送られ,重要なものを見落としてしまう。
解説

本文の根拠

(3) C 社の監視サービス

監視 SV は,対象機器に一定間隔で問合せを行い,対象機器の異常を検知した場合,監視用のコンソールに状況を表示するとともに,S 社の担当者にメールで通知する。

(1) 新ネットワーク構成

店舗側の FW は2台構成とし,配下に L2SW を接続する。

監視 SV はインターネット VPN を通して店舗の各機器に問い合わせる。店舗の FW が故障すると,その配下の L2SW など全ての機器にも問合せが届かなくなり,監視 SV からは配下の機器が一斉に異常になったように見える。

監視 SV は異常を検知した機器ごとにメールを送るので,S 社の担当者に大量のメールが届き,本当の原因(FW の故障)や他の重要な通知を見落としてしまう。

40字以内。解答例は“S社の担当者にメールが大量に送られ,重要なものを見落としてしまう。”(33字)。“大量のメール”と“見落とす”という支障の中身まで書く。採点講評は,(1)と(2)の正答率が低く,監視システムの機能や対象機器を勘違いした解答が散見されたとしている。

採点講評(IPA)

設問3では,(1)と(2)の正答率が低かった。監視システムを利用した経験が問題の出来・不出来を左右したように見受けられた。ネットワークシステムを構築する際に,運用フェーズの考慮が足りないと,なかなか正答には至らない。監視システムの機能や,それが対象とする機器を勘違いしたまま解答しているものも散見されたので,問題文を注意して読んでほしい。(3)は正答率が高く,出題趣旨が正しく伝わったように感じられた。

設問3(2) 30字以内

上記(1)の状況の回避方法を,30 字以内で述べよ。

解答例

  • 複数の検知内容を一つのメールにまとめるようにする。
解説

本文の根拠

(3) C 社の監視サービス

監視 SV は,対象機器に一定間隔で問合せを行い,対象機器の異常を検知した場合,監視用のコンソールに状況を表示するとともに,S 社の担当者にメールで通知する。

(1)の支障は,1つの故障から多数の異常検知が生まれ,それぞれがメールになることから起きる。そこで,同時に検知した複数の異常をまとめて1通のメールで通知するようにすれば,メールの量が抑えられ,重要な通知を見落としにくくなる。

監視の仕組みそのもの(一定間隔の問合せ,コンソール表示)は変えず,メールの送り方だけを変えればよい。

30字以内。解答例は“複数の検知内容を一つのメールにまとめるようにする。”(25字)。“まとめる”の対象が検知内容であることを書く。

採点講評(IPA)

設問3では,(1)と(2)の正答率が低かった。監視システムを利用した経験が問題の出来・不出来を左右したように見受けられた。ネットワークシステムを構築する際に,運用フェーズの考慮が足りないと,なかなか正答には至らない。監視システムの機能や,それが対象とする機器を勘違いしたまま解答しているものも散見されたので,問題文を注意して読んでほしい。(3)は正答率が高く,出題趣旨が正しく伝わったように感じられた。

設問3(3) 解答欄2つ

表1中の④及び⑥の作業内容を,それぞれ 25 字以内で述べよ。

〔④〕解答例

  • L2SWの設定情報を構成管理SVから転送する

〔⑥〕解答例

  • 会員用PCをL2SWに接続する
解説

本文の根拠

表1

②:予備の L2SW にログインして,IP アドレスを設定する。③:L2SW を FW に接続する。④:(設問の関係で省略)。⑤:L2SW に設定情報を保存し,それをリブートする。⑥:(設問の関係で省略)。⑦:会員用 PC が利用できることを確認する。

(2) 運用上の考慮点

店舗側の L2SW の設定情報は,構成管理 SV に保存しておき,簡易型ファイル転送用プロトコルである [ ウ ] を用いてデータを転送する。

②で予備の L2SW に IP アドレスを付け,③で FW につなげば,L2SW から FW 経由で監視センタの構成管理 SV に届くようになる。そこで④では,構成管理 SV に保存してある L2SW の設定情報を TFTP で転送する。⑤でそれを保存してリブートすると,故障前と同じ設定の L2SW になる。

⑥では,①で抜いた会員用 PC のケーブルを L2SW に接続し,⑦で会員用 PC が使えることを確かめる。

それぞれ25字以内。解答例は“L2SWの設定情報を構成管理SVから転送する”(22字),“会員用PCをL2SWに接続する”(15字)。④は“どこから何を”を書く。採点講評は,(3)の正答率は高かったとしている。

採点講評(IPA)

設問3では,(1)と(2)の正答率が低かった。監視システムを利用した経験が問題の出来・不出来を左右したように見受けられた。ネットワークシステムを構築する際に,運用フェーズの考慮が足りないと,なかなか正答には至らない。監視システムの機能や,それが対象とする機器を勘違いしたまま解答しているものも散見されたので,問題文を注意して読んでほしい。(3)は正答率が高く,出題趣旨が正しく伝わったように感じられた。

出典:平成23年度 秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問3(表記を一部改変)