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平成24年度 秋期 午後Ⅰ

平成24年度 秋期に実施されたネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰの全3問(記述式)です。事例本文・設問・解答例と解説をそのまま読めます。

この試験について:ネットワークスペシャリスト試験について

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問1 Web サイトの構築

Web サイトの構築に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

J 社は,インターネットで情報を提供する Web サイト(URL は,http://www.web.j-sha.example.com)を運営しており,C 社のデータセンタ(以下,DC-C という)に設備を設置している。図1に,J 社のシステム構成を示す。

サービス利用者の Web ブラウザがインターネットにつながる。インターネットの中にキャッシュ DNS サーバがある。インターネットから DC-C のルータにつながり,ルータの下に FW がある。FW には DNS-P(ns1.j-sha.example.com)と DNS-S(ns2.j-sha.example.com)がつながる。FW の下に SLB があり,SLB の下に複数台の Web サーバがつながる。凡例:FW:ファイアウォール,SLB:サーバ負荷分散装置,DNS-P:プライマリ DNS サーバ,DNS-S:セカンダリ DNS サーバ。
図1 J 社のシステム構成(抜粋)

DNS-P と DNS-S は,J 社のドメインを管理する DNS サーバであり,DNS-P から DNS-S へ [ ア ] 転送を行い,2 台の DNS サーバ間でリソースレコードの同期を取っている。

J 社では,サービス利用者の増加に伴い,毎年 Web サーバを増強してきた。来年度も増強が計画されているが,長期間又は復旧不能なサービス停止による利益損失を防ぐことを目的とした [ イ ] の観点から,他のデータセンタにもサーバを設置し,ディザスタリカバリにも対応する方針が出された。そこで,情報システム部の E 主任がシステム構成を検討することになり,次の要件が決められた。

〔DNS ラウンドロビン方式の検討〕

E 主任は,DC-D については,DC-C と同様に,ルータ,FW,SLB 及び Web サーバを設置することにした。Web アクセスを処理する能力は,DC-C が約 70,000 セッション/秒,DC-D が約 30,000 セッション/秒である。また,Web アクセスの分散については,DNS ラウンドロビンを利用した分散方式を考えた。次に,E 主任が考えた方式を示す。

情報システム部内で DNS ラウンドロビン方式について議論したところ,次の指摘を受けた。

〔新方式によるシステム設計の検討〕

E 主任は,指摘された点について SLB の納入ベンダに相談した。その結果,SLB と連携して動作する SLB マネージャ装置(以下,SLB-M という)を導入すれば,解決できそうなことが分かった。SLB-M の主な機能は,次のとおりである。

E 主任は,SLB-M の機能を検討した結果,次の方針で設計を行うことにした。

E 主任が考えた新方式のシステム構成案を,図2に示す。

サービス利用者の Web ブラウザがインターネットにつながる。インターネットの中にキャッシュ DNS サーバがある。インターネットから DC-C と DC-D のそれぞれのルータにつながる。DC-C:ルータの下に FW があり,FW には DNS-P(ns1.j-sha.example.com)と SLB-M(ns1.web.j-sha.example.com)がつながる。FW の下に SLB があり,SLB の下に複数台の Web サーバがつながる。DC-D:ルータの下に FW があり,FW には DNS-S(ns2.j-sha.example.com)と SLB-M(ns2.web.j-sha.example.com)がつながる。FW の下に SLB があり,SLB の下に複数台の Web サーバがつながる。
図2 新方式のシステム構成案(抜粋)

E 主任は,④データセンタをまたがる SLB-M 間の通信による影響を懸念し,調査を行ったが,問題ないことが分かった。そこで,新方式のシステム構成案の動作検証を行い,次の処理手順で負荷分散が行われていることを確認した。

次に,E 主任は冗長機能について確認した。その結果,SLB-M の故障時に,データセンタ間で Web アクセスが適切に分散されないことが分かった。そこで,E 主任は,SLB-M 間の情報共有はせず,両方のデータセンタの SLB から情報を収集するように,SLB-M の設定を変更した。

この変更の動作検証によって,片方のデータセンタの SLB-M 故障時にも Web アクセスが適切に分散されることが確認できた。その後,新方式によるシステム設計は企画会議で了承され,次年度計画に盛り込まれた。

出題趣旨(IPA)

事業継続性の観点からサーバを複数サイトに分散設置することも多くなってきている。また,提供するコンテンツ(サービス)によっては,利用者への高速なレスポンスを実現するため,利用者を最適なサイトにアクセスさせることが必要な場合もある。このような要件に対しては,単純に負荷分散装置をサーバの上位に設置するだけでは負荷を最適に分散することはできない。本問では,Webサーバを複数のサイトに設置した場合に負荷分散を実現する方式を検討する過程を通じて,ネットワークの基本技術を問うとともに,基礎技術の応用で成り立つソリューションへの理解度を問う。

設問と解答例

設問1 解答欄4つ

本文中の [ ア ] 〜 [ エ ] に入れる適切な字句を答えよ。

〔ア〕解答例

  • ゾーン

〔イ〕解答例

  • 事業継続

〔ウ〕解答例

  • A

〔エ〕解答例

  • 権威
解説

本文の根拠

冒頭

DNS-P と DNS-S は,J 社のドメインを管理する DNS サーバであり,DNS-P から DNS-S へ [ ア ] 転送を行い,2 台の DNS サーバ間でリソースレコードの同期を取っている。

冒頭

長期間又は復旧不能なサービス停止による利益損失を防ぐことを目的とした [ イ ] の観点から,他のデータセンタにもサーバを設置し,ディザスタリカバリにも対応する方針が出された。

〔DNS ラウンドロビン方式の検討〕

Web サイトの URL の FQDN に対応する IP アドレスを 10 個準備し,DNS-P の [ ウ ] レコードに登録する。

〔新方式によるシステム設計の検討〕

DNS-P 又は DNS-S は,Web サイトのドメインの [ エ ] DNS サーバとして,DC-C と DC-D の SLB-M を応答する。

ア:プライマリ DNS サーバが管理するゾーンの情報を,セカンダリ DNS サーバへまとめて複写する仕組みをゾーン転送という(RFC 1034 がゾーンの複写を,RFC 5936 が AXFR を規定する)。「リソースレコードの同期を取っている」がこれに当たる。イ:長期間のサービス停止による損失を防ぎ,災害時にも業務を続けられるようにする考え方は事業継続(BCP)である。

ウ:FQDN に IPv4 アドレスを対応させるのは A レコード(RFC 1035)。DNS ラウンドロビンは,同じ名前に複数の A レコードを登録し,問合せごとに返す順序を変えて分散する。エ:あるドメインについて正式な情報をもち,自ら答える DNS サーバを権威 DNS サーバという。DNS-P・DNS-S は,サブドメインの Web サイトのドメインについては自分では答えず,その権威 DNS サーバである SLB-M を案内する(委譲)。

採点講評は,エの正答率が低かったとしている。キャッシュ DNS サーバ(問合せを代行する側)と権威 DNS サーバ(ゾーンの情報をもつ側)の区別を押さえておく。

採点講評(IPA)

設問1は,ア~ウの正答率は高く,エの正答率は低かった。エについても基本的な用語なので,理解しておいてほしい。

設問2(1) 解答欄2つ

a,b に入れるデータセンタ名を答えよ。

〔a〕解答例

  • DC-C

〔b〕解答例

  • DC-D
解説

本文の根拠

〔DNS ラウンドロビン方式の検討〕

Web アクセスを処理する能力は,DC-C が約 70,000 セッション/秒,DC-D が約 30,000 セッション/秒である。

〔DNS ラウンドロビン方式の検討〕

仮想サーバの IP アドレスとして,10 個の IP アドレスのうちの 7 個を a の SLB に設定し,3 個を b の SLB に設定する。

DNS ラウンドロビンは 10 個の IP アドレスを均等に順番に返すので,各データセンタが受けるアクセスの割合は,そのデータセンタの SLB に設定した IP アドレスの個数に比例する。

処理能力は DC-C が約 70,000,DC-D が約 30,000 セッション/秒で,比は 7 対 3。したがって 7 個を DC-C(a),3 個を DC-D(b)に設定する。

間違えやすい点。a と b を逆にすると,処理能力の小さい DC-D に7割のアクセスが集まる。

採点講評(IPA)

設問2は,DNSラウンドロビン方式についての問題で,全体的に正答率は高く,DNSラウンドロビン方式を理解している受験者が多かった。

設問2(2) 40字以内

DNS-S を DC-D に置く目的を,要件に基づき,40 字以内で述べよ。

解答例

  • DC-C障害時にもDNS-Sを使ってDC-Dでサービス提供を可能とするため
解説

本文の根拠

冒頭

一方のデータセンタにアクセスできない場合,他方のデータセンタに Web アクセスを切り替える。

〔DNS ラウンドロビン方式の検討〕

DNS-S は,DC-D に置くことにする。

今のままでは DNS-P と DNS-S がどちらも DC-C にあるので,DC-C が障害で止まると,Web サイトの名前解決ができなくなる。DC-D の Web サーバが動いていても,利用者は IP アドレスを得られず,アクセスできない。

DNS-S を DC-D に置けば,DC-C の障害時にも DNS-S が名前解決に応答し,DC-D でサービスを続けられる。要件の「他方のデータセンタに Web アクセスを切り替える」を満たすための配置である。

40字に収める。解答例は「DC-C障害時にもDNS-Sを使ってDC-Dでサービス提供を可能とするため」。「DC-C の障害時」「DNS-S で名前解決」「DC-D でサービス継続」の3点を残す。

採点講評(IPA)

設問2は,DNSラウンドロビン方式についての問題で,全体的に正答率は高く,DNSラウンドロビン方式を理解している受験者が多かった。

設問2(3) 30字以内

本文中の下線①の理由を,DNS ラウンドロビン方式が Web アクセス数を分散する方式であるという観点から,30 字以内で述べよ。

解答例

  • Webアクセス数とWebサーバの負荷が比例しないから
解説

本文の根拠

〔DNS ラウンドロビン方式の検討〕

①Web サーバの負荷に応じた分散ができない。

冒頭

Web ブラウザから Web サーバへのアクセス(以下,Web アクセスという)の数,サーバ負荷に応じて,Web アクセスを二つのデータセンタに分散する。

DNS ラウンドロビンは,名前解決の問合せに対して IP アドレスを順番に返すだけで,Web サーバの状態は見ていない。分散できるのは,アクセスの「数」である。

ところが,アクセスごとに要求する処理や転送量は違うので,アクセス数が同じでも Web サーバの負荷は同じにならない。要件はアクセス数と「サーバ負荷」の両方に応じた分散なので,負荷の側を満たせない。

30字に収める。解答例は「Webアクセス数とWebサーバの負荷が比例しないから」。設問の指定どおり「アクセス数を分散する方式」という観点から,数と負荷が一致しないことを書く。

採点講評(IPA)

設問2は,DNSラウンドロビン方式についての問題で,全体的に正答率は高く,DNSラウンドロビン方式を理解している受験者が多かった。

設問2(4) 40字以内

本文中の下線②の事象を回避するために,故障時に DNS サーバで実施する設定変更の内容を,40 字以内で述べよ。

解答例

  • 故障したデータセンタの仮想サーバのIPアドレスのAレコードを削除する。
解説

本文の根拠

〔DNS ラウンドロビン方式の検討〕

②データセンタの故障時に,故障しているデータセンタへ Web アクセスが継続する。

〔DNS ラウンドロビン方式の検討〕

Web サイトの URL の FQDN に対応する IP アドレスを 10 個準備し,DNS-P の [ ウ ] レコードに登録する。

DNS サーバは,データセンタが故障しても,登録された 10 個の A レコードを変わらず順番に返し続ける。故障したデータセンタの SLB に設定した IP アドレスも返るので,その分のアクセスは届かない先へ向かい続ける。

回避するには,故障したデータセンタの SLB に設定した仮想サーバの IP アドレスの A レコードを DNS-P から削除し,正常なデータセンタのアドレスだけを返すようにする。ゾーン転送で DNS-S にも反映される。ただし,キャッシュ DNS サーバに残った古い応答は TTL が切れるまで使われる。

40字に収める。解答例は「故障したデータセンタの仮想サーバのIPアドレスのAレコードを削除する。」。どのアドレスの,何のレコードを,どうするかの3点を残す。

採点講評(IPA)

設問2は,DNSラウンドロビン方式についての問題で,全体的に正答率は高く,DNSラウンドロビン方式を理解している受験者が多かった。

設問3(1) 30字以内

本文中の下線③における DNS-P の設定変更の内容を,30 字以内で述べよ。

解答例

  • SLB-MにWebサイトのドメインの権限を委譲する。
解説

本文の根拠

〔新方式によるシステム設計の検討〕

J 社のサブドメインである Web サイトのドメインを管理する DNS サーバとして機能し,複数台の SLB-M を設置することで冗長構成を実現できる。

〔新方式によるシステム設計の検討〕

③DNS-P の設定を変更し,SLB-M を Web サイトのドメインの DNS サーバとして動作させる。

図2

FW には DNS-P(ns1.j-sha.example.com)と SLB-M(ns1.web.j-sha.example.com)がつながる。

Web サイトのドメイン web.j-sha.example.com は,J 社のドメイン j-sha.example.com のサブドメインである。サブドメインの管理を別の DNS サーバに任せるには,親ゾーンを管理する DNS-P で,そのサブドメインの権限を委譲する。

具体的には,DNS-P のゾーンに web.j-sha.example.com の NS レコードとして ns1.web.j-sha.example.com・ns2.web.j-sha.example.com(二つの SLB-M)を登録し,それらの A レコード(グルーレコード)も登録する(委譲の仕組みは RFC 1034)。これで処理手順(2)のように,DNS-P・DNS-S は SLB-M を権威 DNS サーバとして案内する。

30字に収める。解答例は「SLB-MにWebサイトのドメインの権限を委譲する。」。採点講評は正答率が低かったとし,DNS サーバの種別と役割,連携の仕方を理解してほしいとしている。

採点講評(IPA)

設問3(1)は,サブドメイン作成時のDNSの設定についての問題で,正答率は低かった。DNSはネットワークの基盤技術の一つなので,サーバ種別やサーバごとの役割,また,各サーバがどのように連携してDNSシステムを構成しているのかについても,理解しておいてほしい。

設問3(2) 解答欄2つ

本文中の下線④について,SLB-M 間の通信による影響とは何か。SLB-M 間の通信によって発生が懸念された事象と,その結果,Web ブラウザ通信で発生が懸念された事象について,それぞれ 20 字以内で述べよ。

〔SLB-M間の通信によって発生が懸念された事象〕解答例

  • インターネット接続回線の帯域圧迫

〔Webブラウザ通信で発生が懸念された事象〕解答例

  • Webサーバへのアクセス遅延
解説

本文の根拠

〔新方式によるシステム設計の検討〕

Web サーバの負荷情報とセッション情報を,SLB-M 間で共有する。

〔新方式によるシステム設計の検討〕

E 主任は,④データセンタをまたがる SLB-M 間の通信による影響を懸念し,調査を行ったが,問題ないことが分かった。

図2

インターネットから DC-C と DC-D のそれぞれのルータにつながる。

図2 では,DC-C と DC-D を直接結ぶ回線は無く,両方ともインターネットにつながっているだけである。SLB-M 間の負荷情報・セッション情報の共有は,インターネット接続回線を通ることになる。

情報共有の通信量が多いと,インターネット接続回線の帯域を圧迫する。その回線は利用者の Web アクセスも通るので,Web ブラウザからの通信が遅くなる(Web サーバへのアクセス遅延)。

それぞれ20字に収める。解答例は「インターネット接続回線の帯域圧迫」と「Webサーバへのアクセス遅延」。前者が原因,後者がその結果という関係で書く。

採点講評(IPA)

設問3(2)は,管理トラフィックによる帯域圧迫とその影響についての問題で,正答率は高かった。

設問3(3) 解答欄2つ

処理手順(4)において,最適な IP アドレスを応答するために SLB-M が利用する Web サーバの負荷情報の具体例を,二つ挙げよ。

〔①〕解答例

  • Webサーバの応答時間

〔②〕解答例

  • Webサーバのデータ通信量

〔備考〕①②は順不同

解説

本文の根拠

〔新方式によるシステム設計の検討〕

SLB-M は,Web サーバの負荷情報とセッション情報を基に,Web ブラウザに対して最適な IP アドレスを応答する。

SLB-M は,SLB から集めた Web サーバの負荷情報を見て,余裕のあるデータセンタの IP アドレスを返す。負荷の目安として使えるのは,Web サーバの応答時間(処理が混むと遅くなる)や,Web サーバのデータ通信量(転送量が多いほど負荷が高い)である。

設問2(3)で見たように,アクセス数だけでは負荷を表せない。そのため,負荷そのものを示す指標が必要になる。

間違えやすい点。セッション数はセッション情報に当たり,「負荷情報」として別に挙げるものとは区別する。解答例の二つは順不同。

採点講評(IPA)

設問3(3),(4)は,サーバ負荷分散方式の基本的な知識についての問題で,正答率は高かった。サーバ選択方式やパーシステンスについて理解している受験者が多かった。

設問3(4) 30字以内

処理手順(6)において,Web ブラウザを接続する適切な Web サーバを,30 字以内で述べよ。

解答例

  • Webブラウザのセッションを維持しているWebサーバ
解説

本文の根拠

〔新方式によるシステム設計の検討〕

SLB は,保持しているセッション情報を確認し,その Web ブラウザのセッション情報が既に存在する場合は,適切な Web サーバに Web ブラウザを接続する。

Web アプリケーションは,ログインや入力の途中経過のような状態を Web サーバ側に持つことが多い。同じ Web ブラウザからの一連の要求が別の Web サーバへ振り分けられると,その状態を引き継げず,処理が続かない。

そこで SLB は,セッション情報が既にある Web ブラウザを,そのセッションを維持している Web サーバへ接続し続ける(パーシステンス)。新規セッションのときだけ,手順(7)のように最適な Web サーバを選ぶ。

30字に収める。解答例は「Webブラウザのセッションを維持しているWebサーバ」。

採点講評(IPA)

設問3(3),(4)は,サーバ負荷分散方式の基本的な知識についての問題で,正答率は高かった。サーバ選択方式やパーシステンスについて理解している受験者が多かった。

出典:平成24年度 秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問1(表記を一部改変)

問2 無線 LAN システムの構築

無線 LAN システムの構築に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

A 社は,中堅規模の情報処理サービス会社である。A 社の業務拠点は,システム開発部門や管理部門のある本社,大型コンピュータ,サーバ,ストレージなどを設置してシステム運用を行うデータセンタ(以下,DC という)と,帳票の印刷,媒体や印刷物の受取,送付などの BPO(Business Process Outsourcing)業務を行う BPO センタ(以下,BC という)の三つであり,各拠点は都内及び近郊にある。DC には,システム開発と BPO 業務に必要な自社保有の機器の他,顧客から運用を委託されている機器が設置されている。各拠点の社員は,DC 内のサーバにアクセスして業務を行っている。BC は,拠点としては一つであるが,近隣の複数のビルに分散している。今般,効率面及びセキュリティ上の問題から,BC を一つのビルに統合することになった。

〔BC の統合計画〕

統合後の BC には,通常のオフィススペースだけでなく,大型のプリンタ,磁気テープ装置,ネットワーク機器などを設置するマシン室と,帳票や媒体を取り扱う作業場所を設置する。通常のオフィススペースには,従来どおりの有線 LAN を用意するが,作業場所は,柔軟にレイアウトを変更できるように,無線 LAN とノート PC を導入する。計画に当たり,情報システム部の B 君が,BC のネットワーク構成の詳細検討を任された。B 君が考えたネットワーク構成の概要を,図1に示す。

BC の中に PC1〜PCn と AP1〜APm があり,PC1 は AP1 に,PCn は APm に無線で接続する。BC の中のマシン室に WLC,L2SW1〜L2SWp,L3SW1 がある。AP1 は L2SW1 に,APm は L2SWp に有線で接続する。WLC と L2SW1〜L2SWp は L3SW1 につながる。L3SW1 は広域イーサ網につながる。広域イーサ網には本社と DC がつながる。DC の中では L3SW2 が広域イーサ網につながり,L3SW2 にサーバ1〜サーバq がつながる。凡例:AP:無線 LAN アクセスポイント,WLC:無線 LAN コントローラ,L2SW:レイヤ2スイッチ,L3SW:レイヤ3スイッチ,広域イーサ網:広域イーサネットサービス網。注記 マシン室と通常のオフィススペースを結ぶ,有線 LAN 部分は省略されている。
図1 ネットワーク構成の概要

〔WLC と AP の検討〕

B 君は,既に無線 LAN を導入している本社の経験を基に,ネットワーク担当者の運用負荷の軽減と効率向上を考慮し,BC に WLC を導入することにした。ネットワーク担当者は本社で業務を行っており,WLC を利用すれば,遠隔地の BC へ出向く回数が抑えられると考えたからである。導入予定の WLC は,本社に導入した AP と同じメーカの製品であり,次のような機能がある。

WLC のベンダからは,本社の AP も,この WLC で管理できるという説明を受けたが,まずは BC に設置する AP を管理することを目標にして,検討を進めた。

BC に導入する AP は,電源コンセントの位置を気にしなくて済むように,LAN ケーブルから電力を取れる PoE(Power over Ethernet)に対応するものを選定した。

PoE は,IEEE [ ア ] af として規格化されており,給電側の機器を PSE(Power Sourcing Equipment),受電側の機器を PD(Powered Device)という。[ イ ] は,機器が接続されると,[ ウ ] に対応している機器かどうかチェックする。したがって,同一のネットワーク内に対応機器と非対応機器の混在が可能となる。導入予定の L2SW は,各イーサネットポートに対して最大 15.4 W,装置全体では 56 W の給電能力をもち,データ伝送において通常使用される LAN ケーブルの 1,2,3,6 番以外の [ エ ] 番のピンを給電に使用する Alternative B 方式なので,結線には注意が必要である。機器によっては電力が不足する場合があるので,各ポートに 30 W の電力を供給できる [ オ ] という規格もあるが,導入予定の AP の最大消費電力は 12 W なので,今回は採用しない。

この L2SW は,スタック接続が可能であり,スタック専用のポートを使用して構成する。その方式は,1 台の L2SW の out ポートと別の L2SW の in ポートを接続し,リングを構成するというものである。AP の接続は,物理的に重ねた上段の L2SW から順に,その L2SW の給電能力の限界まで行うことにした。そして,各 L2SW では,8 番目のポートから降順に接続し,残りのポートには有線 LAN 用機器を接続する。

以上の検討を踏まえて B 君が考えた,L2SW と AP の接続構成を,図2に示す。

L2SW が3台,上下に重ねて描かれている。各 L2SW には,左から in,out のポート,up1,up2 のポート,1〜8 のポートがある。右側に AP1〜AP5 が縦に並ぶ。上段の L2SW のポート 8 が AP1 に,ポート 7 が AP2 に,ポート 6 が AP3 に接続されている。AP4 と AP5 は接続されていない。L2SW 同士のスタック接続(in,out のポート間)は描かれていない。注記 設問のため,接続の一部を省略している。
図2 L2SW と AP の接続構成

〔WLC の動作モード〕

今回の構成では,AP がネットワークに参加すると,WLC と AP の間には,トンネルが構築される。そのとき,WLC は,次の二つのモードのいずれかで動作する。

なお,トンネル化しても,データ量の増加は無視できる程度である。

したがって,図1の構成で PC1 からサーバ1 へアクセスした場合,モード A とモード B のデータ用通信の流れは,図3のようになる。

モード A:PC1 → AP1 → L2SW1 → L3SW1 → L3SW2 → サーバ1。モード B:PC1 → AP1 →(設問のため省略)→ L3SW2 → サーバ1。
図3 データ用通信の流れ

B 君は,動作検証のため,WLC の確認テストを行うことにした。当初,B 君は,WLC をモード A で動作させようとしていた。モード A なら,WLC が停止しても,当日中に復旧できれば業務上は問題ないと考え,冗長化構成は必要なしとしていた。しかし,モード A でテストを行ったところ,一部の PC が無線 LAN を使用できないという問題が発生した。ベンダの説明によると,A 社では,無線 LAN に認証 VLAN を組み合わせて使用しているが,モード A では認証 VLAN をサポートしていないとのことであった。したがって,A 社の環境では,WLC をモード B で動作させる必要があることが分かった。

〔WLC の冗長化と DC への設置〕

ベンダの説明を踏まえて,情報システム部内で対応方法を検討した結果,既存の認証 VLAN の仕組みを変更できないので,(1) WLC をモード B で動作させること,(2) その場合は WLC を冗長化すること,(3) 冗長化の投資を行うなら本社の AP も一元管理することの3点を決定した。

B 君は,WLC を BC に設置する構成のままでは問題があると考え,DC に設置する構成で設計をやり直した。新たな設計に基づいてテストを行い,問題がないことを確認できたので,冗長化された WLC を DC に設置する構成で運用が開始された。

出題趣旨(IPA)

ネットワーク技術者には,幅広い知識が求められるが,最近の傾向として,電子メールやDNSなどの上位レイヤの知識の比重が高くなってきている。したがって,その領域の技術を習得するのは当然だが,ネットワーク技術者としての基本的知識である,物理層に近い知識や,構成図を用いた説明力などを,身に付けておくことがその前提であることに変わりがない。本問では,無線LANとPoEを題材に,普段よく目にしている用語や構成図,メッセージの流れなどを通して,ネットワーク技術者に求められる問題解決力や説明力を問う。

設問と解答例

設問1(1) 解答欄5つ

本文中の [ ア ] 〜 [ オ ] に入れる適切な字句を答えよ。

〔ア〕解答例

  • 802.3

〔イ〕解答例

  • PSE

〔ウ〕解答例

  • PoE

〔エ〕解答例

  • 4,5,7,8

〔オ〕解答例

  • IEEE802.3at
解説

本文の根拠

〔WLC と AP の検討〕

PoE は,IEEE [ ア ] af として規格化されており,給電側の機器を PSE(Power Sourcing Equipment),受電側の機器を PD(Powered Device)という。[ イ ] は,機器が接続されると,[ ウ ] に対応している機器かどうかチェックする。

〔WLC と AP の検討〕

データ伝送において通常使用される LAN ケーブルの 1,2,3,6 番以外の [ エ ] 番のピンを給電に使用する Alternative B 方式なので,結線には注意が必要である。

〔WLC と AP の検討〕

各ポートに 30 W の電力を供給できる [ オ ] という規格もあるが,

ア:PoE の最初の規格は IEEE 802.3af(2003年)で,イーサネットの規格群 IEEE 802.3 の追補として作られた。イ・ウ:給電する側(PSE)は,機器が接続されるとまず検出の手順で相手が PoE に対応した PD かどうかを調べ,対応機器にだけ給電する。だから PoE 非対応の機器を同じスイッチにつないでも壊れない(本文の「混在が可能」)。

エ:10BASE-T・100BASE-TX は 1,2,3,6 番のピン(2対)だけでデータを送る。Alternative B は,使っていない残りの 4,5,7,8 番のピン(空き対)で給電する方式である(Alternative A はデータ対に重ねて給電する)。オ:1ポート当たり最大 30 W を供給できるのは IEEE 802.3at(PoE Plus)。802.3af の 15.4 W では足りない機器のために作られた。

採点講評は,ア,エ,オの正答率が低かったとしている。ウは「PoE に対応している機器か」をチェックするという文脈から入る。

採点講評(IPA)

設問1(1)は,基本的な用語と知識に関する問題だが,ア,エ,オの技術用語の正答率が低かった。よく目にする用語については,きちんと理解し,身に付けておいてほしい。

設問1(2)

図2の L2SW に,4 台目,5 台目の AP を追加すると,接続構成はどのようになるか。省略されているスタック接続も含め,解答欄に示せ。

解答例(図)

図2を完成させたもの。3台の L2SW がスタック専用ポートでリング状に接続されている(上段の out と中段の in,中段の out と下段の in,下段の out と上段の in)。上段の L2SW のポート 8 に AP1,ポート 7 に AP2,ポート 6 に AP3 が接続され,太線で書き加えた AP4 が上段のポート 5 に,AP5 が中段の L2SW のポート 8 に接続されている。
解説

本文の根拠

〔WLC と AP の検討〕

導入予定の L2SW は,各イーサネットポートに対して最大 15.4 W,装置全体では 56 W の給電能力をもち,

〔WLC と AP の検討〕

導入予定の AP の最大消費電力は 12 W なので,今回は採用しない。

〔WLC と AP の検討〕

その方式は,1 台の L2SW の out ポートと別の L2SW の in ポートを接続し,リングを構成するというものである。AP の接続は,物理的に重ねた上段の L2SW から順に,その L2SW の給電能力の限界まで行うことにした。そして,各 L2SW では,8 番目のポートから降順に接続し,残りのポートには有線 LAN 用機器を接続する。

1台の L2SW に接続できる AP の台数を計算する。装置全体の給電能力は 56 W,AP の最大消費電力は 12 W なので,56÷12=4.66…,つまり4台(48 W)までである。5台では 60 W になり,56 W を超える。

図2 では上段の L2SW のポート 8,7,6 に AP1〜AP3 がつながっている。4台目の AP4 は上段の次のポート 5 に,上段が4台で限界になるので,5台目の AP5 は中段の L2SW のポート 8 に接続する。スタック接続は,out ポートを次の L2SW の in ポートにつなぎ,3台でリングにする(上段 out→中段 in,中段 out→下段 in,下段 out→上段 in)。

採点講評は,図示の問題の正答率は高かったとしている。ポート単位の上限 15.4 W と装置全体の 56 W を取り違えないこと(ポート単位なら 12 W の AP を全ポートにつなげてしまう)。

採点講評(IPA)

設問1(2),設問2(1)は,接続構成,メッセージの転送ルートなどを図示する問題で,正答率は高く,多くの受験者が基本を理解していると思われた。しかし,この問題を誤ったり,解答できなかったりした受験者は,今一度ネットワーク技術の基本を,しっかりと勉強してほしい。

設問2(1)

図3のモード B 動作時のデータ用通信の流れを,解答欄に示せ。

解答例(図)

モード B のデータ用通信の流れ。PC1 → AP1 → L2SW1 → L3SW1 → WLC → L3SW1 → L3SW2 → サーバ1。省略されていた L2SW1 → L3SW1 → WLC → L3SW1 の部分が太枠・太矢印で示されている。
解説

本文の根拠

〔WLC の動作モード〕

②モード B:制御用通信だけでなく,データ用通信も含めた全ての通信がトンネルを使用する。

〔WLC の動作モード〕

今回の構成では,AP がネットワークに参加すると,WLC と AP の間には,トンネルが構築される。

図1

WLC と L2SW1〜L2SWp は L3SW1 につながる。

モード B では,データ用通信も AP と WLC の間のトンネルを通る。つまり AP1 から出たデータは,いったん WLC まで運ばれ,そこでトンネルから取り出されてから宛先へ向かう。

図1 で AP1 から WLC までは AP1→L2SW1→L3SW1→WLC の順である。WLC から出たデータは再び L3SW1 に戻り,広域イーサ網を経て L3SW2→サーバ1 へ届く。したがって PC1→AP1→L2SW1→L3SW1→WLC→L3SW1→L3SW2→サーバ1 となる。

間違えやすい点。WLC の後に L3SW1 を書き落とさない。WLC は L3SW1 にしかつながっていないので,WLC からの経路は必ず L3SW1 を通る。

採点講評(IPA)

設問1(2),設問2(1)は,接続構成,メッセージの転送ルートなどを図示する問題で,正答率は高く,多くの受験者が基本を理解していると思われた。しかし,この問題を誤ったり,解答できなかったりした受験者は,今一度ネットワーク技術の基本を,しっかりと勉強してほしい。 設問2は,通信の流れに関する問題で,正答率は高く,よく理解できていたと思われる。

設問2(2) 30字以内

モード A で動作中に WLC が停止した場合,無線 LAN を使用中の PC はどうなるか。データ用通信の流れに着目して 30 字以内で述べよ。

解答例

  • データ用通信はWLCを経由していないので,影響はない。
解説

本文の根拠

〔WLC の動作モード〕

①モード A:接続時の制御用通信だけがトンネルを使用し,データ用通信は,ノード間で直接行われる。

図3

モード A:PC1 → AP1 → L2SW1 → L3SW1 → L3SW2 → サーバ1。

モード A では,WLC を使うのは接続時の制御用通信だけで,データ用通信は図3 のとおり WLC を通らずに流れる。

そのため,既に接続して通信している PC は,WLC が止まってもデータ用通信の経路に影響を受けず,そのまま通信を続けられる。本文で B 君が「当日中に復旧できれば業務上は問題ない」と考えたのはこのためである。

30字に収める。解答例は「データ用通信はWLCを経由していないので,影響はない。」。理由(WLC を経由しない)と結論(影響はない)の両方を書く。

採点講評(IPA)

設問2は,通信の流れに関する問題で,正答率は高く,よく理解できていたと思われる。

設問2(3) 解答欄2つ

上記(2)の PC は,再認証が必要になる場合がある。その事象を二つ挙げよ。

〔①〕解答例

  • PC再起動

〔②〕解答例

  • ローミング

〔備考〕①②は順不同

解説

本文の根拠

〔WLC の動作モード〕

①モード A:接続時の制御用通信だけがトンネルを使用し,データ用通信は,ノード間で直接行われる。

〔WLC の動作モード〕

モード A なら,WLC が停止しても,当日中に復旧できれば業務上は問題ないと考え,冗長化構成は必要なしとしていた。

WLC が止まっていても通信を続けられるのは,既に接続を終えた PC だけである。新たに接続し直す(認証をやり直す)ときには制御用通信が必要で,WLC が無いとできない。

再認証が必要になるのは,PC を再起動して無線 LAN に接続し直すときと,PC が移動して別の AP に接続を切り替える(ローミング)ときである。どちらも接続時の制御用通信が発生する。

間違えやすい点。「通信が切れたとき」のように原因が漠然とした答えにしない。PC 側の操作や動きで接続し直す場面を具体的に挙げる。①②は順不同。

採点講評(IPA)

設問2は,通信の流れに関する問題で,正答率は高く,よく理解できていたと思われる。

設問3(1) 30字以内

WLC をモード B で動作させる場合に,冗長化構成が必要となる理由を,その動作に着目して 30 字以内で述べよ。

解答例

  • WLCの障害時に無線LAN経由の通信ができなくなるから
解説

本文の根拠

〔WLC の動作モード〕

②モード B:制御用通信だけでなく,データ用通信も含めた全ての通信がトンネルを使用する。

〔WLC の冗長化と DC への設置〕

(1) WLC をモード B で動作させること,(2) その場合は WLC を冗長化すること,

モード B では,データ用通信も含む全ての無線 LAN の通信が WLC を経由する。WLC が1台だけだと,WLC の障害で無線 LAN を使う全ての PC の通信が止まる。

モード A では WLC が止まっても使用中の PC の通信は続いた(設問2(2))が,モード B では WLC が単一障害点になる。だから冗長化が必要になる。

30字に収める。解答例は「WLCの障害時に無線LAN経由の通信ができなくなるから」。

採点講評(IPA)

設問3は,当初計画していた構成を,冗長化,一元管理,データセンタへの設置など,少しずつ条件を加えながら,どのように変更したらよいか検討するものである。現場でも,よく経験していると思われる状況を想定している。考え方を整理して,一つずつ解決していくようにしてほしい。(1),(2)の,正答率は高かったが,(3),(4)と進むに従い,正答率が低くなる傾向がみられた。誤答の多くは,本文中の記述を読み落としていたり,本文中にない条件を加えてしまったりしていた。本文をよく読んで,その流れに沿って考えていけば,正答を導けるはずである。

設問3(2) 解答欄2つ

WLC をモード B で動作させ,本社の AP も含めて一元管理する場合に,当初 B 君が計画した構成に対して検討を加えるべき性能要件がある。その性能要件を二つ挙げよ。

〔①〕解答例

  • WLCの処理能力

〔②〕解答例

  • 広域イーサ網の帯域

〔備考〕①②は順不同

解説

本文の根拠

〔WLC の冗長化と DC への設置〕

(3) 冗長化の投資を行うなら本社の AP も一元管理することの3点を決定した。

〔WLC と AP の検討〕

WLC のベンダからは,本社の AP も,この WLC で管理できるという説明を受けたが,まずは BC に設置する AP を管理することを目標にして,検討を進めた。

図1

L3SW1 は広域イーサ網につながる。広域イーサ網には本社と DC がつながる。

当初の計画は,BC の AP だけを WLC で管理する構成だった。モード B で本社の AP まで一元管理すると,本社の無線 LAN のデータ用通信も全て BC の WLC を通るようになる。

一つは WLC の処理能力で,BC に加えて本社の AP と全ての通信を扱えるかを検討し直す必要がある。もう一つは広域イーサ網の帯域で,本社の無線 LAN の通信が本社→BC(WLC)→DC と広域イーサ網を往復するので,BC の回線に通信が集中する。

間違えやすい点。本文の「なお,トンネル化しても,データ量の増加は無視できる程度である。」から,トンネル化による増加は問題ではない。経路が変わって通信が集まることが問題である。①②は順不同。

採点講評(IPA)

設問3は,当初計画していた構成を,冗長化,一元管理,データセンタへの設置など,少しずつ条件を加えながら,どのように変更したらよいか検討するものである。現場でも,よく経験していると思われる状況を想定している。考え方を整理して,一つずつ解決していくようにしてほしい。(1),(2)の,正答率は高かったが,(3),(4)と進むに従い,正答率が低くなる傾向がみられた。誤答の多くは,本文中の記述を読み落としていたり,本文中にない条件を加えてしまったりしていた。本文をよく読んで,その流れに沿って考えていけば,正答を導けるはずである。

設問3(3) 40字以内

WLC を BC に設置する構成の場合に生じる問題点を,40 字以内で述べよ。

解答例

  • 本社無線LANの通信もBCを経由し,BCの広域イーサ網の通信量が増加する。
解説

本文の根拠

〔WLC の冗長化と DC への設置〕

B 君は,WLC を BC に設置する構成のままでは問題があると考え,DC に設置する構成で設計をやり直した。

〔BC の統合計画〕

各拠点の社員は,DC 内のサーバにアクセスして業務を行っている。

本社の AP もモード B で一元管理すると,本社の PC が DC のサーバへアクセスする通信は,本社→BC の WLC→DC と,いったん BC を経由する。

その結果,BC の広域イーサ網への回線には,BC 自身の通信に加えて本社の無線 LAN の通信が行きと帰りの2回流れ,通信量が増える。設問3(2)の「広域イーサ網の帯域」が問題になる具体的な形である。

40字に収める。解答例は「本社無線LANの通信もBCを経由し,BCの広域イーサ網の通信量が増加する。」。採点講評は,(3),(4)と進むほど正答率が低くなり,本文の読み落としや本文に無い条件を加えた誤答が多かったとしている。

採点講評(IPA)

設問3は,当初計画していた構成を,冗長化,一元管理,データセンタへの設置など,少しずつ条件を加えながら,どのように変更したらよいか検討するものである。現場でも,よく経験していると思われる状況を想定している。考え方を整理して,一つずつ解決していくようにしてほしい。(1),(2)の,正答率は高かったが,(3),(4)と進むに従い,正答率が低くなる傾向がみられた。誤答の多くは,本文中の記述を読み落としていたり,本文中にない条件を加えてしまったりしていた。本文をよく読んで,その流れに沿って考えていけば,正答を導けるはずである。

設問3(4) 30字以内

WLC を DC に設置することで,上記(3)の問題がどのように解決されるか。30 字以内で述べよ。

解答例

  • 本社からDCへの通信が,BCを経由しなくなる。
解説

本文の根拠

〔WLC の冗長化と DC への設置〕

新たな設計に基づいてテストを行い,問題がないことを確認できたので,冗長化された WLC を DC に設置する構成で運用が開始された。

図1

DC の中では L3SW2 が広域イーサ網につながり,L3SW2 にサーバ1〜サーバq がつながる。

WLC を DC に置けば,本社の無線 LAN の通信は本社→DC の WLC→DC のサーバと流れる。業務で使うサーバは DC にあるので,WLC を通った後はそのまま DC 内で宛先に届く。

本社から DC への通信が BC を経由しなくなるので,BC の広域イーサ網の回線に本社の通信が集まるという(3)の問題が無くなる。

30字に収める。解答例は「本社からDCへの通信が,BCを経由しなくなる。」。

採点講評(IPA)

設問3は,当初計画していた構成を,冗長化,一元管理,データセンタへの設置など,少しずつ条件を加えながら,どのように変更したらよいか検討するものである。現場でも,よく経験していると思われる状況を想定している。考え方を整理して,一つずつ解決していくようにしてほしい。(1),(2)の,正答率は高かったが,(3),(4)と進むに従い,正答率が低くなる傾向がみられた。誤答の多くは,本文中の記述を読み落としていたり,本文中にない条件を加えてしまったりしていた。本文をよく読んで,その流れに沿って考えていけば,正答を導けるはずである。

出典:平成24年度 秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問2(表記を一部改変)

問3 モバイル端末を利用したシステムの構築

モバイル端末を利用したシステムの構築に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

F 社は,機械部品の卸売業を営む中堅の企業であり,社内で受発注システムを利用している。

F 社の受発注システムは,Web アプリケーションで構成されており,社内にはネットワーク機器及び各種サーバが設置されている。社内の有線 LAN は,100 BASE-TX を用いたイーサネットで構築されている。会議室には無線 LAN のアクセスポイント(以下,AP という)が設置され,IEEE 802.11g 規格の無線 LAN を利用して,会議室に設置した PC から社内ネットワークにアクセスできる。受発注システムの Web アプリケーションは,商品名と数量を受け付け,在庫の確認と製造元への発注処理を行う。一度の注文で複数の商品が発注可能になっている。多岐にわたる取扱商品の説明は,Web サーバのカタログページとファイルサーバのカタログデータに保有している。

現在,F 社では顧客の注文依頼を,電話とファックスで受け付け,オペレータが社内の PC をクライアント端末に用いて,受発注システムに入力している。しかし,営業部員からは,客先を訪問した際に,その場でインターネットを通じて受発注処理をしたいという要望が出されていた。

F 社は,営業部員の要望を受け,受発注システムをインターネット経由でも利用可能にし,クライアント端末を,ノート PC とモバイル端末に変更して,クライアント端末と社内ネットワークを無線 LAN で接続できるよう,受発注システムの変更を行うことにした。F 社が開発計画中の新しい受発注システム(以下,モバイル受発注システムという)の構成を,図1に示す。

社外のモバイル端末(複数台)は,無線でインターネットにつながる。インターネットは F 社のルータにつながり,ルータの先に FW がある。FW には DMZ の SW と,社内の SW がつながる。DMZ の SW には DNS サーバと RP サーバがつながる。社内の SW にはファイルサーバ,DB サーバ,Web サーバと,複数台の AP がつながる。AP には,ノート PC(複数台)やモバイル端末(複数台)が無線で接続する。凡例:FW:ファイアウォール,SW:スイッチングハブ,RP:リバースプロキシ,DB:データベース。
図1 モバイル受発注システムの構成(抜粋)

モバイル受発注システムでは,新たに IEEE 802.11n を実装した AP,ノート PC 及びモバイル端末を導入する予定である。モバイル端末には,スマートフォン,タブレット端末など複数の種類を用意し,社員は業務に適したものを利用する。ノート PC は社内だけで利用するが,モバイル端末は社外への持ち出しを許可し,社外から RP サーバを経由して Web サーバにアクセスできるようにする。

〔無線 LAN の設計〕

システム企画課の G 君は,まず,社内の無線 LAN の設計に着手した。次は,無線 LAN ネットワークの設計に関する,G 君と上司の H 氏の会話である。

〔Web アプリケーションの改修〕

次に G 君は,Web アプリケーションの改修について検討した。G 君が考えた,モバイル端末と Web サーバ間の送受信シーケンスを,図2に示す。

モバイル端末と Web サーバの間のシーケンス。上から順に次のとおり。非 SSL:トップページ要求(モバイル端末→Web サーバ),トップページ表示 SID=xxx(Web サーバ→モバイル端末),ログインページ要求 SID=xxx(→),ログインページ表示 SID=xxx(←)。SSL:ログイン認証要求 SID=xxx(→),ログイン完了表示 SID=yyy(←),(中略)。非 SSL:カタログページ要求 SID=yyy(→),カタログページ表示 SID=yyy(←)。SSL:商品1の商品名と数量を送信 SID=yyy(→),商品1を注文リストに表示 SID=yyy(←)。(中略)。非 SSL:カタログページ要求 SID=yyy(→),カタログページ表示 SID=yyy(←)。SSL:商品nの商品名と数量を送信 SID=yyy(→),商品nを注文リストに表示 SID=yyy(←),(中略),発注要求 SID=yyy(→),発注完了表示 SID=yyy(←),ログアウト要求 SID=yyy(→)。非 SSL:トップページ表示 SID=zzz(←)。凡例:SID:セッション ID,xxx,yyy,zzz:割り当てられた SID。注記 商品1〜nは,F 社の取扱商品を指す。
図2 モバイル端末と Web サーバ間の送受信シーケンス

従来,F 社のクライアント端末は同一機種の PC だけであり,Web アプリケーションでは,セッション管理にクッキーを利用していた。③今回導入するノート PC とモバイル端末は,画面の大きさやブラウザの種類など,様々な仕様となっている。また,それらのブラウザの中にはクッキーを受け入れないものがあることから,G 君は,Web アプリケーションがブラウザに送る URL に,パラメタとして SID を埋め込む方法を採用することにした。これを [ オ ] という。さらに,G 君は,モバイル端末を使って,インターネット経由の受発注処理を受け付けるようにするため,必要と思われる通信は SSL を使用することにした。

図2を検証した H 氏は,Web サーバの負荷を軽減するために,SSL を Web サーバ以外の機器に実装するよう,G 君に指示した。さらに,H 氏は,セキュリティ上の問題があることから,SID の付与に関して改善すべき点があることを指摘し,G 君は H 氏の指摘に従って,見直しを実施した。

G 君の検討結果を反映して,F 社のモバイル受発注システムは無事完成し,順調に稼働した。

出題趣旨(IPA)

近年,スマートフォンなどのモバイル端末の活用が盛んになり,IEEE 802.11nの規格が策定されたことも伴って,企業のネットワークにおける無線LANの活用が一般的となってきた。また,業務システムはWebブラウザが利用されることが多いが,持ち出し可能なモバイル端末を使うことで,従来は社内に閉じられていたシステムの利用も,インターネットを利用したものとなり,システムの構築においてはWebのセキュリティ技術が必須となっている。本問では,モバイル端末を利用したシステムの構築を題材に,IEEE 802.11nを使った無線LANと,Webのセキュリティ技術について,基本的な知識と理解力を問う。

設問と解答例

設問1 解答欄5つ

本文中の [ ア ] 〜 [ オ ] に入れる適切な字句を答えよ。

〔ア〕解答例

  • チャネルボンディング

〔イ〕解答例

  • 300

〔ウ〕解答例

  • MIMO

〔エ〕解答例

  • プリアンブル

〔オ〕解答例

  • URLリライティング
解説

本文の根拠

〔無線 LAN の設計〕

これは隣り合う帯域幅 20 MHz のチャネルを二つ束ねることによって,送信データ量を 2 倍以上に増やす [ ア ] という技術を使ったものです。これによって,例えば 20 MHz では理論値で 144 M ビット/秒だった伝送速度が,最大で [ イ ] M ビット/秒になります。

〔無線 LAN の設計〕

送信側と受信側の双方で複数のアンテナを使い,同時に異なるデータを送信して受信時に合成する [ ウ ] という技術によって,

〔無線 LAN の設計〕

IEEE 802.11n の mixed mode では,フレームの先頭に IEEE 802.11g と同じ [ エ ] を付加して通信のタイミングをとり,

〔Web アプリケーションの改修〕

G 君は,Web アプリケーションがブラウザに送る URL に,パラメタとして SID を埋め込む方法を採用することにした。これを [ オ ] という。

ア:隣り合う2つの 20 MHz チャネルを束ねて 40 MHz として使う技術はチャネルボンディング。イ:IEEE 802.11n は 20 MHz・2ストリームで最大 144.4 M ビット/秒,40 MHz・2ストリームで最大 300 M ビット/秒である。チャネルを束ねると使えるサブキャリアが倍より多くなるので,「2 倍以上」になる。ウ:送受信の双方で複数のアンテナを使い,別々のデータを同時に送る技術は MIMO(Multiple Input Multiple Output)。

エ:IEEE 802.11n の mixed mode(HT-mixed format)は,フレームの先頭に 11a/g と同じ形式のプリアンブル(レガシープリアンブル)を置く。11g の端末もこれを受信して,フレームの長さを知り,その間は送信を控えることができる。オ:クッキーを使わず,URL に SID をパラメタとして書き込んでセッションを引き継ぐ方法を URL リライティングという。

採点講評は,設問1 は全体として正答率が低かったとし,IEEE 802.11n の基本的な内容を学習してほしいとしている。

採点講評(IPA)

設問1は,全体として正答率が低かった。設問2(1),(2)を含めて,IEEE 802.11nに関する基本的な内容については,きちんと学習しておいてほしい。

設問2(1) 25字以内

本文中の下線①を実現する,フレームアグリゲーションの仕組みを,25 字以内で述べよ。

解答例

  • 宛先が同じ複数のフレームを連結して送信する。
解説

本文の根拠

〔無線 LAN の設計〕

IEEE 802.11n では,フレームアグリゲーションを使って,①フレームの送信待ち時間と確認応答の回数を減らすことで遅延時間を短縮し,データの高速なやり取りが可能になります。

無線 LAN は,フレームを1つ送るたびに,送信前の待ち時間(フレーム間隔とバックオフ)を置き,受信側からの確認応答(ACK)を待つ。小さなフレームを多数送ると,この待ち時間と確認応答の割合が大きくなる。

フレームアグリゲーションは,同じ宛先へ送る複数のフレームを連結して1回で送る。待ち時間は1回で済み,確認応答もまとめて返せる(ブロック ACK)ので,送信待ち時間と確認応答の回数が減る。

25字に収める。解答例は「宛先が同じ複数のフレームを連結して送信する。」。「宛先が同じ」を落とさない(連結できるのは同じ宛先への複数のフレームである)。

採点講評(IPA)

設問1は,全体として正答率が低かった。設問2(1),(2)を含めて,IEEE 802.11nに関する基本的な内容については,きちんと学習しておいてほしい。

設問2(2) 40字以内

本文中の下線②で G 君が指摘した,フレームアグリゲーションの影響とはどのようなものであると考えられるか。40 字以内で具体的に述べよ。

解答例

  • 無線チャネルの占有時間が長くなり,その間は他の通信が待たされる。
解説

本文の根拠

〔無線 LAN の設計〕

ただし,使用するアプリケーションによっては,②フレームアグリゲーションの影響を考慮する必要があります。

フレームを連結すると,1回の送信が長くなる。無線 LAN は同じチャネルを複数の端末で分け合い,誰かが送信している間は他の端末は送信できない。

そのため,連結した長いフレームを送っている間は無線チャネルが長く占有され,他の端末の通信が待たされる。音声や動画のように遅延や揺らぎに弱いアプリケーションでは,この待ち時間が問題になる。

40字に収める。解答例は「無線チャネルの占有時間が長くなり,その間は他の通信が待たされる。」。原因(占有時間が長くなる)と影響(他の通信が待たされる)の両方を書く。

採点講評(IPA)

設問1は,全体として正答率が低かった。設問2(1),(2)を含めて,IEEE 802.11nに関する基本的な内容については,きちんと学習しておいてほしい。

設問2(3) 解答欄2つ

H 氏が指摘した,ギガビットイーサネットに変更する区間を 2 か所,図1の機器名を用いて答えよ。

〔①〕解答例

  • ファイルサーバとSWとの間

〔②〕解答例

  • SWとAPとの間

〔備考〕①②は順不同

解説

本文の根拠

冒頭

社内の有線 LAN は,100 BASE-TX を用いたイーサネットで構築されている。

〔無線 LAN の設計〕

インターネット経由のデータのやり取りを減らすために,客先へ行く前に,ファイルサーバからモバイル端末に,カタログデータをダウンロードしておきたいのだが。

図1

社内の SW にはファイルサーバ,DB サーバ,Web サーバと,複数台の AP がつながる。

IEEE 802.11n の無線 LAN は最大 300 M ビット/秒になるが,AP から先の有線 LAN が 100BASE-TX(100 M ビット/秒)のままでは,有線側がボトルネックになる。

H 氏が挙げた用途は,ファイルサーバからモバイル端末へのカタログデータのダウンロードである。図1 でその経路は ファイルサーバ→SW→AP→モバイル端末 なので,有線の区間は「ファイルサーバと SW の間」と「SW と AP の間」の2か所になる。

採点講評は,図中の機器名を正確に書いていない解答が多かったこと,本文の条件を考えずに経験や一般的な知識だけで答えたものが散見されたことを挙げている。「スイッチ」などと書かず,図1 のとおり「SW」「AP」と書く。①②は順不同。

採点講評(IPA)

設問2(3),設問3(2)は,図中の機器名で解答する問題だが,図中に記載してある機器名を正確に記述していない解答が多く見受けられた。用語は誤解を生まないように慎重に定義し,使用することが実務でも求められるので,常に正確に記述するように心掛けてほしい。 設問2(3),設問3(3)は,本文中に記載されている条件を前提に,図を読み解いて正答を導き出すものであったが,本文を考慮せず自身の経験や一般的な知識だけで解答しているものが散見された。本文には様々な条件が記載されており,その条件に沿って正しい解決方法を導くことを励行してほしい。

設問3(1) 解答欄2つ

本文中の下線③に対応するための,Web アプリケーションの改修内容を 40 字以内で述べよ。また,その場合に,Web アプリケーションが参照する HTTP リクエストのヘッダ部のフィールドの名称を答えよ。

〔改修内容〕解答例

  • モバイル端末の種類に対応した形式のページコンテンツを送るようにする。

〔名称〕解答例

  • User-Agent
解説

本文の根拠

〔Web アプリケーションの改修〕

③今回導入するノート PC とモバイル端末は,画面の大きさやブラウザの種類など,様々な仕様となっている。

冒頭

モバイル端末には,スマートフォン,タブレット端末など複数の種類を用意し,社員は業務に適したものを利用する。

端末ごとに画面の大きさやブラウザが違うので,同じページをそのまま送ると表示が崩れたり使いにくかったりする。Web アプリケーションは,端末の種類を判別して,それに合った形式のページコンテンツを返すように改修する。

端末(ブラウザ)の種類は,HTTP リクエストのヘッダの User-Agent フィールドで判別できる。ブラウザはこのフィールドに自分の製品名やバージョンなどを入れて送る(HTTP/1.1 の規定。RFC 7231)。

改修内容は40字に収める。解答例は「モバイル端末の種類に対応した形式のページコンテンツを送るようにする。」。名称は綴りを正確に「User-Agent」と書く。

設問3(2)

H 氏が G 君に指示した,SSL を実装すべき機器名を,図1から一つ選んで答えよ。

解答例

  • RPサーバ
解説

本文の根拠

〔Web アプリケーションの改修〕

図2を検証した H 氏は,Web サーバの負荷を軽減するために,SSL を Web サーバ以外の機器に実装するよう,G 君に指示した。

冒頭

モバイル端末は社外への持ち出しを許可し,社外から RP サーバを経由して Web サーバにアクセスできるようにする。

社外のモバイル端末は,RP サーバ(リバースプロキシ)を経由して Web サーバにアクセスする。インターネットを通る区間を SSL で守ればよいので,RP サーバで SSL を終端すれば,暗号化・復号の処理を Web サーバから外せる。

RP サーバはクライアントからの接続を受けて Web サーバへ中継する機器なので,SSL の終端に向いている。図1 の他の機器(ルータ,FW,SW など)は通信を中継するだけで,SSL を終端する役割に合わない。

採点講評は,図中の機器名を正確に書いていない解答が多かったとしている。「リバースプロキシ」ではなく図1 のとおり「RP サーバ」と書く。

採点講評(IPA)

設問2(3),設問3(2)は,図中の機器名で解答する問題だが,図中に記載してある機器名を正確に記述していない解答が多く見受けられた。用語は誤解を生まないように慎重に定義し,使用することが実務でも求められるので,常に正確に記述するように心掛けてほしい。

設問3(3) 30字以内

H 氏が指摘したセキュリティ上の問題を,30 字以内で述べよ。

解答例

  • 非SSLの通信時に,SIDが漏えいするおそれがある。
解説

本文の根拠

図2

SSL:ログイン認証要求 SID=xxx(→),ログイン完了表示 SID=yyy(←),(中略)。非 SSL:カタログページ要求 SID=yyy(→),カタログページ表示 SID=yyy(←)。SSL:商品1の商品名と数量を送信 SID=yyy(→),

〔Web アプリケーションの改修〕

さらに,H 氏は,セキュリティ上の問題があることから,SID の付与に関して改善すべき点があることを指摘し,

図2 では,ログイン後の SID=yyy が,SSL の通信だけでなく,カタログページの要求・表示という非 SSL の通信でも使われている。しかも URL リライティングなので,SID は URL の中に平文で書かれる。

非 SSL の通信は暗号化されないので,SID=yyy が盗聴などで漏えいするおそれがある。漏えいした SID を使えば,第三者がログイン済みの利用者になりすまし,SSL の区間の注文や発注の操作も行えてしまう(セッションハイジャック)。

30字に収める。解答例は「非SSLの通信時に,SIDが漏えいするおそれがある。」。採点講評は,本文と図を読み解かずに一般的な知識だけで答えたものが散見されたとしている。

採点講評(IPA)

設問2(3),設問3(3)は,本文中に記載されている条件を前提に,図を読み解いて正答を導き出すものであったが,本文を考慮せず自身の経験や一般的な知識だけで解答しているものが散見された。本文には様々な条件が記載されており,その条件に沿って正しい解決方法を導くことを励行してほしい。 設問3(3),(4)はおおむね理解されていたが,セキュリティに関するネットワーク技術は,重要なテーマであり,できるだけ幅広く正確な知識を身に付けることが重要である。

設問3(4) 35字以内

SID の付与に関する H 氏の指摘に従って,G 君が実施した見直しの内容を,35 字以内で述べよ。

解答例

  • 非SSLの状態からSSLを利用する際は,SIDを振り直す。
解説

本文の根拠

〔Web アプリケーションの改修〕

G 君は H 氏の指摘に従って,見直しを実施した。

図2

非 SSL:カタログページ要求 SID=yyy(→),カタログページ表示 SID=yyy(←)。SSL:商品nの商品名と数量を送信 SID=yyy(→),

問題は,非 SSL の通信で使った(漏えいしたかもしれない)SID を,SSL の通信でもそのまま使い続けていることにある。

非 SSL の状態から SSL の通信に移るたびに新しい SID を振り直せば,非 SSL の区間で SID が漏れても,SSL の区間の操作には使えない。図2 のログイン時に xxx から yyy へ振り直しているのと同じことを,SSL に入るたびに行う。

35字に収める。解答例は「非SSLの状態からSSLを利用する際は,SIDを振り直す。」。いつ(非 SSL から SSL へ移るとき)と何をするか(振り直す)を書く。

採点講評(IPA)

設問3(3),(4)はおおむね理解されていたが,セキュリティに関するネットワーク技術は,重要なテーマであり,できるだけ幅広く正確な知識を身に付けることが重要である。

出典:平成24年度 秋期 ネットワークスペシャリスト試験 午後Ⅰ 問3(表記を一部改変)