平成30年度 秋期に実施されたシステムアーキテクト試験
午後Ⅰの全4問(記述式)です。事例本文・設問・解答例と解説をそのまま読めます。
この試験について:システムアーキテクト試験について
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問1 システムの改善
システムの改善に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
A 社は,従業員 2,000 名を抱えるシステムインテグレータである。このたび,新中期計画において,情報技術の進展と競争激化に対応するために,人材開発の高度化が打ち出された。A 社の人材開発部と情報システム部は,この新中期計画を受けて,現在稼働中の目標管理システム,受講管理システム及び資格管理システム(以下,現行システムという)の機能の改善と連携の強化を行うことにした。
〔現行システムの概要〕
現行システムの概要は次のとおりである。また,現行システムで管理している主な情報を表1 に示す。
A 社では,目標管理システムを使って,半年ごとの社員の業績及び能力開発の目標と実績を管理している。社員が設定した目標は,上司と協議して決定され,半年ごとにその達成状況の評価が行われている。能力開発の目標設定では,その期に受講予定の講座や取得を目指す資格について合意し,社員の能力開発に役立てる。
目標設定は,4 月中旬及び 10 月中旬に行う。社員が目標を目標管理システムに入力し,その後,上司と画面を見ながら協議し,合意した内容で目標を決定する。達成状況の評価は,9 月下旬及び 3 月下旬に行う。社員が実績を目標管理システムに入力し,その後,上司と画面を見ながら協議し,合意した内容で達成状況の評価を決定する。
なお,A 社の組織変更は 4 月 1 日と 10 月 1 日に行われる。人事異動は,毎月 1 日に発令され,昇進は年に 1 回,4 月 1 日に発令される。
A 社では,年間約 100 講座の研修を開催している。各講座は,それぞれ年に数回開催され,社員は年間 10 日の受講を目標にしている。
講座の情報として,講座基本情報と,開催スケジュール情報をもつ。開催スケジュール情報は,その講座の開催回ごとに,開催日,開催場所などの属性をもつ。 社員が講座を申し込むと,受講履歴情報が作成される。受講履歴情報は,申込状況,受講状況及び受講結果に関する情報をもつ。 社員が講座を修了すると,修了履歴情報が作成される。 講座の開催に当たり,受講者に講座実施案内の電子メール(以下,案内メールという)を送付し,受講者名簿,名札,座席表などの出力を行う。 社員の社員番号,漢字氏名,かな氏名,生年月日,所属及び役職の情報(以下,社員基本情報という)は,人事部が,別途稼働している人事システムで管理している。人事異動で社員基本情報が変更される場合は,本人に内示された後,発令日の 3 営業日前の業務開始前に人事システムから変更情報が連携され,直ちに更新している。 年度末に,受講管理システムから,社員個人別に過去 3 年間の年間受講日数一覧表を出力し,年間目標の達成状況を確認している。 A 社では,資格の取得を上位役職への昇進の必要条件としている。このため,社員は資格を取得すると,資格管理システムで登録申請を行い,合格証書の写しを人事部に送付する。人事部では,合格証書の写しを確認し,登録申請を承認する。
1 年間に登録される件数は約 700 件であり,そのうち約 6 割が会社で団体申込みを行っている情報技術関連の資格である。
表1 現行システムで管理している主な情報
〔実施している研修の概要〕
A 社では新入社員を対象にした新入社員研修のほか,昇進した際に受講する昇進時研修,特定分野のスキル向上を目的としたスキル研修を実施している。
新入社員研修は,4 月 1 日から 5 月末日まで実施される。昇進時研修は,4 月上旬に実施される。昇進者は,3 月中旬の役員会で決定され,3 月 20 日までに昇進者本人に昇進が内示されて,その全員が昇進時研修の受講対象者となる。
新入社員研修及び昇進時研修は,受講対象者による申込みを行わず,人事部から情報を入手し次第,人材開発部で受講者を登録する。
スキル研修は,4 月中旬から受講申込みを募集し,6 月から翌年 2 月までの間に開催する。募集の受付は,各講座の定員に達したとき,又は各講座の開催 5 週間前に一旦締め切るが,定員に満たないときは,開催 1 週間前まで受け付ける。スキル研修は,毎年,数講座を入れ替えている。それ以外の講座については,プログラムや教材の部分的な改訂を行っているが,講座日数などの大きな変更は行っていない。
〔現在の講座の運用〕
講座の開催に当たっては,受講管理システムを用いて次のような運用を行っている。
業務の調整及び講座の受講準備を促すために,開催 5 週間前に,受講者に案内メールを送付する。ただし,新入社員研修では,受講者である新入社員に入社式で詳細を説明するので,案内メールは送付しない。 開催 5 週間前を過ぎて申込みがあった場合は,翌営業日に案内メールを送付する。 開催 3 営業日前に,開催準備作業として,受講者名簿,名札及び座席表を出力する。 講座を受講し,その講師が修了と判定した場合は,修了履歴に登録される。 開催 1 週間前を過ぎてからの申込みは受け付けないが,部長から特別に要請があれば,例外的に受講者の追加や変更を認めている。この場合,開催準備作業後であれば,追加や変更が行われた時点で受講者名簿及び名札を再出力するが,①再出力する受講者名簿や名札に,開催日時点の正しい所属が表示されないことがあり ,手作業で修正している。 昇進時研修においては,上記の内容では対応できない運用があるので,特別な措置として,運用タイミングの変更を行っている。 〔システム改善の要望〕
情報システム部の B 課長が,経営層及び人材開発部にヒアリングを行ったところ,次のような要望が提示された。
情報技術の進展に備え,社員を特定分野の専門家として育成するために,社員ごとに主たる専門分野とそのレベルを設定し,社員基本情報に追加したい。 各講座の講座基本情報にも,受講対象とする社員の専門分野とそのレベルを設定し,社員の専門分野とそのレベルに合致した講座を推奨講座として,受講を推奨できるようにしたい。一つの講座が複数の専門分野を対象とすることもある。 半年に 1 回実施している目標設定面談において,上司が部下に受講を促すことができるように,目標確認画面から,当該社員の受講履歴一覧,修了履歴一覧,当期推奨講座一覧及び取得資格一覧を参照できるようにしたい。 取得資格の登録業務の効率向上を図るために,団体申込みを行っている情報技術関連の資格については,資格試験を実施する主催者(以下,試験主催者という)から送付される出願及び合否の電子データを取り込むことができるようにしたい。 現行システムにおける手作業は,できるだけ削減したい。 〔機能改善と連携の強化についての要件〕
B 課長は機能改善と連携の強化についての要件を,次のように整理した。この際に,現行システムの問題点の解決を図ることに加えて,②システムの利用シーンを想定して,システム改善の要望にはなかった新たな要件の追加 を行っている。
社員基本情報に,専門分野とレベルの二つの属性を追加する。 新たに,講座番号,専門分野を主キーとし,その他の属性としてレベルをもつ,講座レベル情報を設ける。 現在,開催 1 週間前を過ぎてから申込みを受け付けた際に行っている手作業を,受講管理システムで行う。そのために,人事システムから連携される社員基本情報に適用開始日を加えて,1 人の社員について複数件の情報を保持できるようにする。 資格管理システムで,試験主催者から送付される電子データを取り込んで,合格者の情報を登録できるようにする。ここで,試験主催者から送付される情報は,受験番号が主キーであり,属性として漢字氏名,生年月日,試験の合否区分をもっている。 受講管理システムから受講履歴情報及び修了履歴情報を,資格管理システムから取得資格情報を,目標管理システムへ連携して,目標管理システムの画面でそれらの情報を一覧で参照できるようにする。 目標管理システムで,推奨講座の中で当該社員が修了していない講座の一覧を,当期推奨講座一覧として,表 2 に示す手順で表示する。半年ごとの目標設定時に,当期推奨講座一覧を見ながら上司と当期に受講する講座について協議し,その場で合意した場合は,当期推奨講座一覧の当該講座を選択することによって,受講管理システムに連携し,申込手続を行うことができるようにする。
表2 当期推奨講座一覧の表示手順
〔要望の追加〕
B 課長が整理した要件について,関係者に確認を行ったところ,“情報技術の急速な進展に対応するために,今後は,年度ごとに,講座の改廃,講座内容・講座日数の変更が行われることを前提に,新設講座や変更があった講座を識別できるようにしてほしい”という追加要望が提示された。
これを受けて,B 課長は追加する要件を次のように整理した。
講座基本情報に,登録日,適用開始日及び廃止日の属性を追加する。 ③適用開始日を講座基本情報の主キーに加える 。講座情報を表示する画面で,新設講座は赤色で,変更があった講座は青色で表示して,他の講座と区別できるようにする。
出題趣旨(IPA)
利用者の利便性を向上させるために,情報システムの機能向上を図ったり,複数のシステムを連携させて機能的な結びつきを強めたりすることが行われるが,その際に利用者のニーズをくみ取り,システムの要件を決定することは,システムアーキテクトの重要な業務である。本問では,人材開発関連3システムの機能の改善と連携の強化を題材として,現行システムの課題と改善策,及び利用者の追加要望への対応について,具体的な記述を求めている。現行システムを理解した上で,機能向上,連携の強化,利用者の利便性の向上,将来想定されるシステムの改善などを,システム要件としてまとめていく能力を評価する。
採点講評(問全体・IPA)
問1では,受講管理など人材開発に関する業務システムを例にとり,現行システムの機能の改善と連携の強化について出題した。
全体を通して,問題文をしっかり理解した上で,自分の言葉で答えるよう出題したが,問題文のどこかを引用して答えればよいと誤った解釈をした結果,正解に至らなかった受験者が多かったように見受けられた。
システムアーキテクトとして,利用者の要望を十分に理解した上で,システムの利用シーンを想定して,システム要件を決めていくことができるように心掛けてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
25字以内
昇進時研修において,対応できない運用とは何か。25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔実施している研修の概要〕
昇進時研修は,4 月上旬に実施される。昇進者は,3 月中旬の役員会で決定され,3 月 20 日までに昇進者本人に昇進が内示されて,その全員が昇進時研修の受講対象者となる。
〔現在の講座の運用〕
業務の調整及び講座の受講準備を促すために,開催 5 週間前に,受講者に案内メールを送付する。
〔現在の講座の運用〕に並ぶ運用のうち,昇進時研修の日程と合わないものを探す。昇進時研修は4月上旬に実施されるが,受講対象者になる昇進者は3月中旬の役員会で決まり,本人への内示は3月20日までである。開催5週間前は2月下旬から3月上旬に当たり,その時点では受講者がまだ決まっていない。
ほかの運用は昇進時研修でも行える。開催3営業日前の受講者名簿などの出力や修了履歴への登録は,受講者が決まっていれば日程の制約を受けない。受講者が決まる前に案内メールを送る「開催5週間前の送付」だけが成り立たない。
25字で「開催5週間前」と「案内メールを送付する運用」を書く。解答例は「開催5週間前に案内メールを送付する運用」で19字。
設問1(2)
35字以内
(1)で対応できない運用のために,特別な措置として行っている運用タイミングの変更の内容を,35 字以内で述べよ。
解答例
人事部から情報を入手し次第,受講者に案内メールを送付する。
解説
本文の根拠
〔実施している研修の概要〕
新入社員研修及び昇進時研修は,受講対象者による申込みを行わず,人事部から情報を入手し次第,人材開発部で受講者を登録する。
〔現在の講座の運用〕
開催 5 週間前を過ぎて申込みがあった場合は,翌営業日に案内メールを送付する。
開催5週間前に案内メールを送れないので,送付のタイミングを後ろにずらす。昇進時研修は受講対象者による申込みを行わず,人事部から情報を入手し次第,人材開発部で受講者を登録する。受講者が確定するのは人事部から情報を入手した時点なので,そのときに案内メールを送付すればよい。
通常の講座には「開催5週間前を過ぎて申込みがあった場合は,翌営業日に案内メールを送付する」という運用があるが,昇進時研修には申込みそのものが無いので,この運用はきっかけにならない。案内メールを送る契機を「申込み」から「人事部からの情報の入手」に置き換えるのが特別な措置である。
35字で「人事部から情報を入手し次第」と「受講者に案内メールを送付する」を書く。解答例は「人事部から情報を入手し次第,受講者に案内メールを送付する。」で29字。
設問1(3)
解答欄2つ
本文中の下線①で,正しい所属が表示されないのは,どのような受講者が,どのようなタイミングに開催される講座を受講したときか。受講者に関する条件を 20 字以内で,講座開催のタイミングに関する条件を 30 字以内で述べよ。
〔タイミング〕解答例
異動発令日の3営業日前から前日までに開催される講座
解説
本文の根拠
〔現行システムの概要〕(2) 受講管理システム
人事異動で社員基本情報が変更される場合は,本人に内示された後,発令日の 3 営業日前の業務開始前に人事システムから変更情報が連携され,直ちに更新している。
〔現行システムの概要〕(1) 目標管理システム
人事異動は,毎月 1 日に発令され
〔現在の講座の運用〕
開催準備作業後であれば,追加や変更が行われた時点で受講者名簿及び名札を再出力するが,①再出力する受講者名簿や名札に,開催日時点の正しい所属が表示されないことがあり
受講管理システムの社員基本情報は1人1件で,人事異動があると発令日の3営業日前の業務開始前に新しい所属へ更新される。人事異動は毎月1日に発令されるので,発令日の3営業日前から前日までは,システム上はもう新しい所属なのに,実際はまだ異動前の所属にいる。この期間に開催される講座で受講者名簿や名札を再出力すると,開催日時点ではまだ正しくない異動後の所属が表示される。
開催3営業日前の開催準備作業で最初に出力したときは,更新の前なので異動前の正しい所属が出る。ずれるのは,開催準備作業後に受講者の追加や変更があって再出力したときだけである。講評は,逆に「異動しているのに名簿が旧所属のまま」とした誤りが多かったとしている。更新が発令より前に行われる点を押さえれば向きを取り違えない。
受講者の条件は20字で「人事異動の発令を受けた社員」(13字)とする。タイミングは30字で「異動発令日の3営業日前から前日まで」の期間を書く。解答例は「異動発令日の3営業日前から前日までに開催される講座」で25字。
採点講評(IPA)
設問1(3)は正答率が低かった。異動発令日の3営業日前に社員基本情報が更新されてしまうので,それ以降月末までに開催される講座で名簿の再出力を行うと,翌月の異動後の所属が出力されてしまうことに気付いてほしかったが,逆に異動しているのに名簿が旧所属のままのケースがあるとした誤った解答が多かった。
設問2(1)
30字以内
本文中の下線②で,システムの利用シーンを想定して追加した新たな要件とは何か。30 字以内で述べよ。
解答例
当期推奨講座一覧から受講管理システムに連携すること
解説
本文の根拠
〔システム改善の要望〕
目標確認画面から,当該社員の受講履歴一覧,修了履歴一覧,当期推奨講座一覧及び取得資格一覧を参照できるようにしたい。
〔機能改善と連携の強化についての要件〕
その場で合意した場合は,当期推奨講座一覧の当該講座を選択することによって,受講管理システムに連携し,申込手続を行うことができるようにする。
〔システム改善の要望〕と〔機能改善と連携の強化についての要件〕を突き合わせ,要件にだけあるものを探す。要望は,目標確認画面から当期推奨講座一覧などを「参照できるようにしたい」までである。要件は,目標設定の場で上司と合意した講座を当期推奨講座一覧から選択すると,受講管理システムに連携して申込手続まで行えるようにしている。
これが下線②の「システムの利用シーンを想定して」追加した要件である。目標設定面談では,推奨講座を見ながら当期に受講する講座を協議する。合意したその場で申し込めれば,面談の後で改めて申込みをする手間が無くなる。講評は,要件に書かれているシステムでの対応が利用者のどの要望を満たすためかを理解すれば正解できたとしている。
30字で「当期推奨講座一覧から」と「受講管理システムに連携すること」を書く。解答例は「当期推奨講座一覧から受講管理システムに連携すること」で25字。
採点講評(IPA)
設問2(1)は,正答率が低かった。追加した新たな要件を問うているので,要件に書かれているシステムでの対応が,利用者のどの要望を満たすためかを,きちんと理解すれば正解が導けたはずである。
設問2(2)
解答欄4つ
表 2 中のa 〜d に入れる適切な字句を答えよ。
〔備考〕aとbは順不同
解説
本文の根拠
〔機能改善と連携の強化についての要件〕
社員基本情報に,専門分野とレベルの二つの属性を追加する。
〔機能改善と連携の強化についての要件〕
新たに,講座番号,専門分野を主キーとし,その他の属性としてレベルをもつ,講座レベル情報を設ける。
〔機能改善と連携の強化についての要件〕
目標管理システムで,推奨講座の中で当該社員が修了していない講座の一覧を,当期推奨講座一覧として,表 2 に示す手順で表示する。
表1 修了履歴
修了履歴情報は,社員番号(主キー),講座番号(主キー),開催回(主キー),成績。
当期推奨講座一覧は「推奨講座の中で当該社員が修了していない講座」なので,表2 は推奨講座を集める手順(項番1・2)と,修了した講座を除く手順(項番3)に分かれる。推奨講座は社員の専門分野とそのレベルに合致した講座である。社員基本情報には専門分野とレベルが追加され,講座レベル情報は専門分野とレベルをもつので,項番1で社員の専門分野とレベルを取り,項番2でそれと一致する講座を講座レベル情報から取る。a は専門分野,b はレベルで,順不同である。
項番3では,当該社員が既に修了した講座を取得して除く。表1 の修了履歴情報は社員番号,講座番号,開催回をもつので,当該社員の修了履歴から修了した講座(講座番号)が分かる。受講履歴情報は申込みの段階から作られ,修了していない受講も含むので,除く根拠には使えない。
c は情報名なので本文の「修了履歴」,d は取得するものなので「修了した講座」と書く。
設問2(3)
30字以内
資格管理システムにおいて,試験主催者から送付される情報を取り込む際に留意しなければならないシステム上の課題は何か。30 字以内で述べよ。
解答例
主キーが異なる二つの情報を,どう照合するかという課題
解説
本文の根拠
〔機能改善と連携の強化についての要件〕
ここで,試験主催者から送付される情報は,受験番号が主キーであり,属性として漢字氏名,生年月日,試験の合否区分をもっている。
表1 取得資格
取得資格情報は,社員番号(主キー),資格名(主キー),取得日。
試験主催者から送付される電子データを取り込んで合格者を登録するには,その合格者が A 社のどの社員かを決めなければならない。ところが試験主催者の情報の主キーは受験番号で,A 社の取得資格情報の主キーは社員番号である。二つの情報に共通のキーが無いので,そのままでは突き合わせられない。
試験主催者の情報には漢字氏名と生年月日があり,社員基本情報にも漢字氏名と生年月日がある。本文はこれらをどう使って照合するかまでは書いておらず,設問も取り込む際に留意すべき「課題」を問うている。答えるのは,主キーが異なる情報をどう照合するかという点である。
30字で「主キーが異なる」と「照合」を入れる。解答例は「主キーが異なる二つの情報を,どう照合するかという課題」で26字。
設問3
解答欄2つ
〔要望の追加〕の下線③について,適用開始日を講座基本情報の主キーに加えない場合,現行システムのどの機能にどのような不具合が発生するか。機能を 25 字以内で,不具合の内容を 40 字以内で述べよ。
〔不具合の内容〕解答例
講座日数の変更が行われたときに年間受講日数が正しく計算できない不具合
解説
本文の根拠
〔現行システムの概要〕(2) 受講管理システム
年度末に,受講管理システムから,社員個人別に過去 3 年間の年間受講日数一覧表を出力し,年間目標の達成状況を確認している。
〔要望の追加〕
今後は,年度ごとに,講座の改廃,講座内容・講座日数の変更が行われることを前提に
表1 講座基本
講座基本情報は,講座番号(主キー),講座名,開講目的,講座概要,講座日数。
〔実施している研修の概要〕
講座日数などの大きな変更は行っていない。
講座基本情報の主キーが講座番号だけだと,一つの講座について1件しか持てない。今後は年度ごとに講座日数の変更が行われるので,変更すると以前の講座日数は上書きされて失われる。現行システムの機能のうち過去の講座日数が要るのは,年度末に出力する社員個人別の過去3年間の年間受講日数一覧表である。
表1で日数を表す属性は講座基本情報の講座日数だけで,受講履歴情報や修了履歴情報は日数をもたない。したがって年間受講日数は,受講した講座の講座日数を講座基本情報から引いて合計することになる。講座日数が上書きされると,過去の年度に受講した講座も変更後の講座日数で数えられ,年間受講日数が正しく計算できない。これまでは講座日数などの大きな変更を行っていなかったので,主キーが講座番号だけでも問題にならなかった。適用開始日を主キーに加えれば,同じ講座番号の変更前後の情報を履歴として持てる。
機能は25字で「過去3年間の年間受講日数一覧表を出力する機能」(22字)とする。不具合は40字で「講座日数の変更」と「年間受講日数が正しく計算できない」を書く。解答例は34字。
採点講評(IPA)
設問3は,正答率が低かった。適用開始日を主キーに加えない場合は,履歴で管理できないので,年度ごとに変更が行われる講座内容・講座日数について,古い情報が失われてしまう。その時に正しく機能しなくなるのは,過去3年間の受講日数の算出が必要な年間受講日数一覧であることに気づいてほしかった。
出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問1(表記を一部改変)
問2 情報開示システムの構築
情報開示システムの構築に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。
F 法人は,関東に所在する公的業務を行う団体である。このたび,個人,事業者などからの要望を踏まえて,インターネットから F 法人が保有する文書を情報提供する情報開示システム(以下,新システムという)を構築することにした。
〔現行業務の概要〕
F 法人は,保有する文書について,個人,事業者などからの開示請求に基づき情報開示を行っている。現在の開示請求から情報開示までの流れは,次のとおりである。
開示請求を行う個人,事業者など(以下,開示請求者という)は,F 法人の情報公開窓口(以下,窓口という)を訪れ,F 法人が保有する文書の件名,分類などが記録された文書管理簿を閲覧し,開示請求を行う文書を特定する。文書管理簿については,インターネットから文書検索システムを利用して,文書件名のキーワード,文書作成年度などの条件を指定し,検索することもできる。
開示請求者は,開示請求を行う文書を特定した後,開示請求書に(1)で特定した文書件名のほか,個人の場合は氏名,自宅の住所,電話番号及び携帯電話番号を,事業者の場合は事業者の名称,担当者の氏名,事業所の住所及び電話番号を必要事項として記入し,窓口に提出する。提出の際,開示請求に必要な手数料を納付する。
開示請求書を受け付けた窓口は,文書を所管する部署(以下,文書所管部署という)に請求内容を通知する。文書所管部署では,個別に文書の内容を確認し,開示,不開示又は一部開示を決定する。決定内容について,開示決定通知書を作成し,開示請求者に対して郵送で通知する。
開示請求者は,開示決定通知書を受領した後,文書の閲覧,文書の写しの交付,電子データの交付などの開示方法を開示実施申出書に記載し,郵送で窓口に提出する。
開示請求者は,開示実施申出書で指定した方法によって,文書の閲覧,文書の写しの受領,電子媒体による電子データの受領などを行う。文書の写し,電子媒体による受領の場合,それぞれ指定の手数料を窓口に納付する。開示は来訪だけに対応しており,郵送などによる開示は行っていない。
なお,F 法人では開示請求者に対して,開示後に必要に応じて電話で連絡することがある。
〔新システム構築の背景,目的及び整備方針〕
F 法人では,開示請求の件数が毎年増加傾向にあり,窓口及び請求件数が多い文書所管部署では業務処理量の増加に伴う開示請求対応の事務が負担になっている。特に年度初めの 4 月,5 月に年間の開示請求件数の約半数が集中しているので,通常業務が忙しい中,開示請求対応が重なり,開示までに多くの日数を要することがある。
開示請求は,特定種類の文書に対するものが全体の請求件数の約 6 割を占めている。F 法人では,この特定種類の文書を現在約 2,000 件保有している。主に市場調査や営業目的で利用する事業者からの開示請求がほとんどであり,文書 1 件当たりの枚数が多いことから,開示の際は電子媒体で交付することが多くなっている。
開示請求者からは,開示請求手続の煩雑さ,訪問が必要なこと,各種手数料の負担,開示までに時間を要することへの不満が挙がっている。
そこで F 法人では,現在の開示請求手続に加えて,開示請求なしでインターネットを利用して,手数料が不要で,場所や時間の制限がなく,初めての利用でも手続が簡単で即時に文書を取得できる新システムを構築することにした。
なお,新システムでは,まず,開示請求が多く開示可能な文書だけを対象に情報提供を行い,利用状況を見ながら順次取り扱う文書を増やしていく方針にした。
〔新システムに対する要望〕
多くの開示請求に対応している文書所管部署に確認したところ,新システムを用いた情報提供に関して,次の要望が挙げられた。
開示請求の多い特定種類の文書は,他団体から提供を受けた情報を基に F 法人が独自に加工,編集している文書である。情報提供元の団体と協議した結果,不特定多数の個人,事業者などに対して情報提供するのではなく,あらかじめ利用者登録した上で,特定された個人,事業者などに対して情報提供を行うようにしたい。 従来の開示請求手続とは異なり,請求のたびに開示する文書の内容を確認しないので,①開示する情報に不備がないかどうかを,複数人で確認した上で,新システムに登録し,情報提供するようにしたい 。 現在の開示請求手続と同様に,必要に応じて情報提供先に電話で連絡することができるよう,連絡先に間違いがないことを確認したい。 F 法人の職員の所属,役職に応じた権限の管理ができるよう,所属,役職などの情報については,社内システムと同じ情報を取り扱えるようにしてほしい。人事異動などが発生した場合は,翌営業日中には新システムに情報を反映させてほしい。 〔新システムの方式検討〕
F 法人では,現在運用している各情報システムのサーバ機器などを,F 法人が契約するデータセンタ内に導入して運用している。新システムにおいても同様の形態にすることを検討したが,業務上の特性から業務処理量の変動が大きいことが予想されることと,将来の拡張に柔軟に対応できることから,クラウドサービスを利用することにした。
F 法人の職員が新システムを利用する際は,費用対効果を考慮し,既設のインターネット回線を経由して,クラウドサービス上に構築する新システムにログインして利用することにした。また,F 法人の職員向けの機能は,F 法人が契約するデータセンタ内のプロキシサーバからのアクセスだけを許可する仕組みにした。新システム構築後の全体概要を図1 に示す。
なお,F 法人では近年,情報セキュリティ対策を強化しており,社内システムとインターネット上のシステムとの間を直接オンラインで連携することを禁止している。そこで,新システムと社内システムとの連携は,できる限り頻度を少なくした上で,新システムのシステム管理担当者が運用作業で実施することにした。
図1 新システム構築後の全体概要
〔新システムで提供する機能の概要〕
新システムに対する要望などを踏まえて,次に示す機能を提供することにした。
個人,事業者などが新システムを利用するために,ID の発行及びパスワードを設定する利用者登録機能を用意する。 現行の文書検索システムと同様に,インターネットから文書管理簿の検索を行えるようにする。検索の結果,新システムに登録されている文書については,直接新システムから電子ファイルをダウンロードできるようにする。現行の文書検索システムの機能は,新システムの機能の一部として統合する。 検索に必要な文書管理簿の情報については,F 法人の社内システムである文書管理システムから文書管理簿データをダウンロードし,新システムに運用作業で取り込む登録機能を用意する。更新頻度は,1 週間に 1 回とする。 新システムで情報提供する文書については,F 法人の職員が,文書に対応する文書管理簿の情報を選択し,文書に付随するそのほかの情報を新システムの登録画面で入力し,登録する。登録された文書は,文書登録者の上司が内容を新システム上で確認し,承認すると,個人,事業者などに向けて公開される。 情報提供の機能とは別に,ある理由から,電子フォームを用いて開示請求ができる機能を提供する。その際,開示請求に掛かる手数料は別納とする。 職員の所属,役職などの情報については,F 法人の社内システムである職員認証システムからデータをダウンロードし,新システムに運用作業で取り込む登録機能を用意する。職員認証システムでは,職員の所属,役職などの職員基本情報の更新は月 1 回程度である。一方で,②職員認証システムのパスワードは職員が随時変更できるので,パスワード情報は新システムに取り込まず,職員基本情報だけを反映し,新システムのパスワードについては職員が新システムで新たに設定し,管理することにする 。 個人,事業者など,新システムの利用者の情報については,新規登録時に,現在の開示請求書で記入を求めている項目に加えて,電子メールアドレスを登録する。 〔利用者の新規登録手順及び連絡先の確認方式の検討〕
新システムの利用者を新規登録する際の連絡先の確認方式について,検討を行った。検討した,利用者の新規登録手順及び連絡先の確認方式案を表1 に示す。
表1 利用者の新規登録手順及び連絡先の確認方式案
各案を比較した結果,案 1 の方式については,簡易に利用者の新規登録ができるが,③文書所管部署の要望 を満たすことができないという評価になった。一方,案 3 の方式については,より厳格な連絡先の確認ができる点はよいが,利便性に欠け,新システムの目的にも合致しないという評価になった。
そこで,案 2 の方式を採用することにした。ただし,新システムの利用者特性を踏まえると,このままでは問題が生じる場合があるので,ショートメッセージで本登録用の認証コードを通知する方式に加えて,利用者が新規登録時に入力した電話番号宛てに新システムが電話をかけて自動音声で本登録用の認証コードを読み上げる方式も選択できることにした。
出題趣旨(IPA)
情報システムの新規構築によって,新たなサービスを提供する際,システムアーキテクトは,想定されるシステム利用者の特定やシステムに求められる機能要件,非機能要件などを,様々なユースケースを想定しながら検討する必要がある。本問では,情報開示システムの新規構築を題材として,現行業務や既存のシステム,IT環境上の制約を考慮し,適切な機能の実装,システム方式を設計することなどについて,具体的な記述を求めている。システムを取り巻く条件,制約などを正しく理解し,求められる情報システムを設計する能力を評価する。
採点講評(問全体・IPA)
問2では,情報開示システムを例にとり,業務要件,IT環境上の制約などを踏まえた機能要件,非機能要件の検討に関わる内容について出題した。
システムアーキテクトとして,業務要件,非機能要件,制約事項などを幅広く十分に理解した上で,システム要件を定義できるよう心掛けてほしい。
設問と解答例
設問1
25字以内
本文中の下線①の要望に基づき,新システムで提供することにした機能は何か。25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔新システムに対する要望〕
従来の開示請求手続とは異なり,請求のたびに開示する文書の内容を確認しないので,①開示する情報に不備がないかどうかを,複数人で確認した上で,新システムに登録し,情報提供するようにしたい。
〔新システムで提供する機能の概要〕
登録された文書は,文書登録者の上司が内容を新システム上で確認し,承認すると,個人,事業者などに向けて公開される。
要望は,開示する情報に不備がないかを複数人で確認してから情報提供することである。〔新システムで提供する機能の概要〕を見ると,職員が登録した文書は,文書登録者の上司が内容を新システム上で確認し,承認して初めて公開される。登録者本人と上司の二人が確認するので,これが「複数人で確認」に当たる。
従来の開示請求では,文書所管部署が請求のたびに文書の内容を確認して開示,不開示を決めていた。新システムは開示請求なしで文書を取得できるので,請求ごとの確認が無くなる。その代わりに,登録時の上司による確認・承認を機能として組み込んでいる。
25字で「上司が確認し,承認する機能」を書く。解答例は「登録された文書を上司が確認し,承認する機能」で21字。
設問2
30字以内
新システムでクラウドサービスを利用することを判断した理由の一つに,業務処理量の変動が大きいと予想したことが挙げられる。業務処理量の変動が大きいと予想した業務上の特性とは何か。30 字以内で述べよ。
解答例
年度初めに年間の開示請求件数の約半数が集中すること
解説
本文の根拠
〔新システム構築の背景,目的及び整備方針〕
特に年度初めの 4 月,5 月に年間の開示請求件数の約半数が集中しているので,通常業務が忙しい中,開示請求対応が重なり,開示までに多くの日数を要することがある。
〔新システムの方式検討〕
業務上の特性から業務処理量の変動が大きいことが予想されることと,将来の拡張に柔軟に対応できることから,クラウドサービスを利用することにした。
業務処理量の変動は,時期によって処理の量が大きく変わることを指す。〔新システム構築の背景,目的及び整備方針〕に,年度初めの4月,5月に年間の開示請求件数の約半数が集中していると書かれている。新システムはこの開示請求の代わりに文書を提供するので,利用も同じ時期に集中すると予想できる。
自社のデータセンタに機器を導入する形態では,集中する時期に合わせた設備を1年中持つことになる。クラウドサービスなら時期に応じて処理能力を増減できるので,変動の大きい業務に合う。「開示請求件数が毎年増加傾向」は増え続ける傾向で,変動の大きさの説明には当たらない。
30字で「年度初め」と「年間の開示請求件数の約半数が集中」を書く。解答例は「年度初めに年間の開示請求件数の約半数が集中すること」で25字。
設問3(1)
40字以内
情報提供の機能とは別に,電子フォームを用いて開示請求ができる機能を提供することにした理由を 40 字以内で述べよ。
解答例
新システムでは,まず,開示請求が多く開示可能な文書だけを対象にするから
解説
本文の根拠
〔新システム構築の背景,目的及び整備方針〕
なお,新システムでは,まず,開示請求が多く開示可能な文書だけを対象に情報提供を行い,利用状況を見ながら順次取り扱う文書を増やしていく方針にした。
〔新システムで提供する機能の概要〕
検索の結果,新システムに登録されている文書については,直接新システムから電子ファイルをダウンロードできるようにする。
〔新システムで提供する機能の概要〕
情報提供の機能とは別に,ある理由から,電子フォームを用いて開示請求ができる機能を提供する。
新システムの情報提供は,まず開示請求が多く開示可能な文書だけを対象にする。一方,文書管理簿の検索は現行の文書検索システムと同様にインターネットから行え,ダウンロードできるのは新システムに登録されている文書だけである。検索で見つかっても新システムに登録されていない文書は,これまでどおり開示請求を経て開示するしかない。
そこで,情報提供の対象外の文書についても,インターネットから電子フォームで開示請求ができるようにした。講評は,新システム構築の背景,目的から引用するだけの解答が多かったとしている。問われているのは,情報提供の機能とは「別に」開示請求の機能を用意した理由であり,情報提供の対象が一部の文書に限られていることに結び付ける。
40字で「まず,開示請求が多く開示可能な文書だけを対象にする」ことを書く。解答例は「新システムでは,まず,開示請求が多く開示可能な文書だけを対象にするから」で35字。
採点講評(IPA)
設問3(1)は,新システムの情報提供の機能とは別に,電子フォーム機能を提供することにした理由を解答してほしかったが,新システム構築の背景,目的から引用するだけの解答が多かった。なぜ,情報提供の機能とは別に機能を用意したのかということを,問題文中の背景及び設問の内容から十分に読み取ってほしかった。
設問3(2)
25字以内
新システムにおけるパスワードについて,本文中の下線②のようにした運用上の理由を,25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔新システムの方式検討〕
そこで,新システムと社内システムとの連携は,できる限り頻度を少なくした上で,新システムのシステム管理担当者が運用作業で実施することにした。
〔新システムで提供する機能の概要〕
②職員認証システムのパスワードは職員が随時変更できるので,パスワード情報は新システムに取り込まず
新システムと社内システムの連携は,頻度をできる限り少なくした上で,システム管理担当者が運用作業で行う。職員認証システムのパスワードは職員が随時変更できるので,これを新システムに反映しようとすると,変更のたびに運用作業で連携しなければならず,連携の頻度が増える。パスワードを新システム側で別に設定・管理すれば,連携は職員基本情報の更新に合わせるだけで済む。
講評は,オンライン連携の禁止というシステム方式上の制約を理由にした解答が目立ったとしている。オンライン連携の禁止は,運用作業で連携する理由であって,設問が問う「運用上の理由」ではない。職員基本情報の更新が月1回程度であることも職員認証システムの運用内容で,パスワードの運用方針の理由には直接ならない。
25字で「運用作業による連携」と「頻度を少なくしたい」を書く。解答例は「運用作業による連携頻度を少なくしたいから」で20字。
採点講評(IPA)
設問3(2)は,運用上の理由を問うているにもかかわらず,社内システムとインターネット上のシステムとの間を直接オンラインで連携することを禁止しているから,といったシステム方式上の制約を理由として挙げている解答が目立った。また,運用上の理由として,職員基本情報の更新が月1回程度だから,という解答も散見された。これは,現在の職員認証システムの運用内容であって,新システムにおけるパスワードの運用方針には直接関係がない。関連システムの運用と新システムに求められる運用要件をきちんと整理,理解してほしかった。
設問4(1)
30字以内
本文中の下線③の文書所管部署の要望とは何か。30 字以内で述べよ。
解答例
情報提供先に電話で連絡することができるようにすること
解説
本文の根拠
〔新システムに対する要望〕
現在の開示請求手続と同様に,必要に応じて情報提供先に電話で連絡することができるよう,連絡先に間違いがないことを確認したい。
表1 案1
新システムは,利用者が新規登録時に入力した電子メールアドレス宛てに,本登録用のURLを記載した電子メールを送信する。
下線③は「文書所管部署の要望」なので,〔新システムに対する要望〕に並ぶ文書所管部署の要望のうち,連絡先の確認に関わるものを探す。現在の開示請求手続と同様に,必要に応じて情報提供先に電話で連絡できるよう,連絡先に間違いがないことを確認したいという要望がある。
案1は電子メールアドレス宛てに本登録用の URL を送るだけで,確かめられるのは電子メールアドレスだけである。電話番号が正しいかどうかは確認できない。案2(携帯電話番号宛てのショートメッセージ)と案3(住所宛ての封書)は,電話番号や住所に実際に届くことで連絡先を確かめられる。
30字で「情報提供先に電話で連絡することができる」ことを書く。解答例は「情報提供先に電話で連絡することができるようにすること」で26字。
設問4(2)
35字以内
案 3 の方式を採用しないと評価した際に考慮した新システムの目的とは何か。35 字以内で述べよ。
解答例
初めての利用でも手続が簡単で即時に文書を取得できること
解説
本文の根拠
〔新システム構築の背景,目的及び整備方針〕
そこで F 法人では,現在の開示請求手続に加えて,開示請求なしでインターネットを利用して,手数料が不要で,場所や時間の制限がなく,初めての利用でも手続が簡単で即時に文書を取得できる新システムを構築することにした。
表1 案3
利用者が新規登録時に入力した住所宛てに,本登録用の認証コードを封書で送付する。
新システムの目的は,開示請求なしで,手数料が不要で,場所や時間の制限がなく,初めての利用でも手続が簡単で即時に文書を取得できることである。案3は認証コードを封書で送るので,本登録が済むまで封書の到着を待たなければならない。初めて利用する人はすぐに文書を取得できず,手続も簡単とはいえない。
目的に並ぶ条件のうち,案3で損なわれるのは「初めての利用でも手続が簡単」と「即時に文書を取得できる」である。手数料や場所・時間の制限は,登録の方式とは関係が無い。本文は案3を「利便性に欠け,新システムの目的にも合致しない」と評価しており,目的の側を答える。
35字で「初めての利用でも手続が簡単」と「即時に文書を取得できる」を書く。解答例は「初めての利用でも手続が簡単で即時に文書を取得できること」で27字。
設問4(3)
35字以内
自動音声で本登録用の認証コードを読み上げる方式も選択できることにした理由を,新システムの利用者の特性を含めて 35 字以内で述べよ。
解答例
利用者には事業者が多く,携帯電話番号を入力できない場合があるから
解説
本文の根拠
〔新システム構築の背景,目的及び整備方針〕
主に市場調査や営業目的で利用する事業者からの開示請求がほとんどであり
〔現行業務の概要〕(2) 開示請求
個人の場合は氏名,自宅の住所,電話番号及び携帯電話番号を,事業者の場合は事業者の名称,担当者の氏名,事業所の住所及び電話番号を必要事項として記入し
〔新システムで提供する機能の概要〕
新規登録時に,現在の開示請求書で記入を求めている項目に加えて,電子メールアドレスを登録する。
案2はショートメッセージを携帯電話番号宛てに送るので,携帯電話番号を登録できる人しか使えない。新規登録で求める項目は現在の開示請求書の項目に電子メールアドレスを加えたもので,開示請求書は個人には携帯電話番号を求めるが,事業者には事業所の電話番号しか求めていない。事業者は携帯電話番号を入力できない場合がある。
特定種類の文書の開示請求は,市場調査や営業目的で利用する事業者からのものがほとんどである。新システムの利用者の多くが事業者なので,携帯電話番号が無いと本登録できない方式のままでは問題になる。そこで,入力した電話番号に電話をかけて自動音声で認証コードを読み上げる方式を加えた。講評は,携帯電話を利用できないという内容だけの解答が散見されたとし,利用者に事業者が多いという特性も含めてほしかったとしている。
35字で「利用者には事業者が多い」と「携帯電話番号を入力できない場合がある」の両方を書く。解答例は32字。
採点講評(IPA)
設問4(3)は,正答率が高かったが,携帯電話を利用できないからという内容だけの解答が散見された。利用者には事業者が多いという,新システムの利用者の特性も含めて解答してほしかった。
出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問2(表記を一部改変)
問3 ETCサービス管理システムの構築
ETC サービス管理システムの構築に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
K 社は,法人向けの自動車リース会社である。K 社は,自動車リースを契約している法人を対象に,有料道路の通行料金の支払に利用する ETC カードのサービス(以下,ETC サービスという)を提供している。昨今の ETC カード(以下,カードという)の利用者増加に伴い,業務及びシステムを改善することにした。
〔現在の業務の概要〕
K 社では,法人顧客(以下,顧客という)が ETC サービスの契約を締結すると,リース車両 1 台につきカードを 1 枚発行する。カード利用者は,有料道路の通行料金の支払手段として,カードを利用することができる。有料道路の事業者(以下,道路事業者という)は,K 社のカードを利用した通行料金を K 社に請求する。K 社は,道路事業者から送られてくる通行記録を基に通行料金を顧客に請求する。現在の ETC サービスの契約締結から請求までの業務の概要は,次のとおりである。これらの業務に関連するシステムは,ETC サービス契約システム,リース契約管理システム及び ETC サービス請求システムである。
K 社は,顧客から ETC サービスの申込書を受領し,契約締結の手続をする。申込書に記載する情報は,リース契約番号,顧客名,顧客アルファベット名,住所,電話番号,代表者名及び口座振替に利用する顧客の預金口座情報である。ETC サービス契約システムに,申込書の情報を入力して登録する。リース契約管理システムを利用して,リース契約番号,顧客名,開始日及び満了日などのリース契約の情報と ETC サービスの申込内容を照合し,契約を締結する。
K 社は,顧客からカード発行依頼書を受領し,カード発行の手続をする。カード発行依頼書に記載された自動車登録番号から,リース契約管理システムを利用してリース契約とリース車両の情報を確認する。リース車両に対して利用中のカードがないことを台帳で確認し,カードの発行に必要な情報(以下,カード発行情報という)を書面で印刷会社に送付する。カード発行情報は,顧客アルファベット名,自動車登録番号,カードの色やデザインなどのカード種類,カード番号及びカード有効期限年月である。K 社では,カードの有効期限を顧客のリース契約満了日の属する月の月末としている。カード発行業務で発行したカードについては,カード発行費の請求対象としている。
K 社は,カードの有効期限の 2 か月前までに有効期限更新の案内書を顧客に送付する。リース車両を継続利用してカードの有効期限の更新を希望する場合,顧客は,指定する期日までに更新依頼書を K 社に送付する。指定する期日までにカードの更新を希望する旨の通知がなく,有効期限を迎えた場合は,カードを解約扱いとする。K 社は,更新の希望があったカードについて,カード発行情報を書面で印刷会社に送付する。カード更新業務で発行したカードについては,カード発行費の請求対象としている。
K 社は,顧客からカード再発行依頼書を受領し,カードの再発行の手続をする。顧客は,カードの再発行を依頼する際,再発行の理由を“紛失”,“カード種類変更”,“磁気不良”及び“破損”の四つから一つ選択しカード再発行依頼書に記載する必要がある。K 社は,カード再発行依頼書の確認後,それまで利用していたカードを無効にし,カード発行情報を書面で印刷会社に送付する。再発行の理由が“磁気不良”又は“破損”である場合,カード発行費の請求対象外としている。
K 社は,毎月,道路事業者から送付される通行記録に基づき,道路事業者に対して通行料金を立替払する。立替払した通行料金,カード発行費及びカード年会費を ETC サービス請求システムに登録する。毎月月末に ETC サービス請求システムを利用して請求書を発行し,顧客に請求する。カード発行費は,カード 1 枚につき 500 円とし,請求の対象となる月に発行したカードの代金を請求する。カード年会費は,現在有効であるカードを対象として,カード発行依頼書に基づいて初回にカードを発行した月に年会費を請求し,その後,1 年ごとに請求する。請求書は,請求金額の合計を記載した請求書サマリとカード番号ごとの利用明細を記載した請求書明細から構成される。利用明細には,有料道路のインターチェンジ(以下,IC という)に入った日を利用日として,出入口の IC 名,自動車登録番号,出口を通過した時刻(以下,出口時刻という)と通行料金を表示する。請求書サマリの請求金額欄の例を図1 に,請求書明細の請求金額欄の例を図2 に示す。
図1 請求書サマリの請求金額欄の例
図2 請求書明細の請求金額欄の例
〔システムの改善要望〕
業務部とシステム部から,現在の業務に関わる次のような改善要望が出された。
リース契約管理システムを利用してリース契約とリース車両の情報を照合する作業を,システムで対応してほしい。 カード発行業務で,顧客から発行依頼されたリース車両に対して利用中のカードがないことを確認する作業をシステムで対応してほしい。 カード発行情報をシステムで印刷会社に連携してほしい。 カード利用者は,いつでもカードを利用することができるが,顧客の営業日以外に有料道路の IC に入ったことが分かる帳票(以下,利用日確認帳票という)を顧客向けのサービスとして提供したい。 カード利用者は,どんな車両でもカードを利用することができるが,発行依頼されたリース車両以外の車両でカードを利用したことが確認できる帳票(以下,利用車両確認帳票という)を顧客向けのサービスとして提供したい。 〔改善後のシステムの内容〕
K 社では,システム改善要望を踏まえ ETC サービス契約システムと ETC サービス請求システムを統合した ETC サービス管理システム(以下,新システムという)の機能とデータを次のように検討している。新システムの主要なデータを表1 に示す。
表1 新システムの主要なデータ
顧客から受領した ETC サービスの申込書の情報を新システムに入力する。新システムは,リース契約管理システムと連携して,入力した情報からリース契約情報を参照する。申込内容に問題がなければ,ETC サービス契約データにレコードを登録する。
顧客から受領したカード発行依頼書の情報を新システムに入力する。新システムは,リース契約管理システムと連携して,入力した情報からリース契約情報とリース車両情報を取得する。また,①カードデータのレコードのうちカード状態が“利用中”であるレコードを対象に,発行依頼されたリース車両に関するチェックを行う 。チェック結果に問題がなければ,カードデータにレコードを登録する。その際,カード状態に“利用中”,初回カード発行日及びカード発行日に処理日,発行理由に“新規発行”を設定する。その後,カード発行情報を EDI で印刷会社に連携する。
新システムで有効期限更新の案内書を発行する。顧客から有効期限の更新を希望された場合,新システムに入力することによって,カード有効期限年月を算出してカードデータにレコードを登録する。その際,カード状態に“利用中”,初回カード発行日にそれまで利用していたカードに係るカードデータのレコードの初回カード発行日の値,カード発行日に処理日,発行理由に“更新発行”を設定する。また,それまで利用していたカードに係るカードデータのレコードのカード状態を“利用中”から“更新済み”に変更する。その後,カード発行情報を EDI で印刷会社に連携する。また,月末に,カードデータのレコードのうち,カード有効期限年月が当月であり,カード状態が“利用中”であるレコードのカード状態を“解約”に一括で変更する。
顧客からのカード再発行依頼書の情報を新システムに入力する。新システムは,カード番号を新たに採番してカードデータにレコードを登録する。その際,カード状態に“利用中”,初回カード発行日にそれまで利用していたカードに係るカードデータのレコードの初回カード発行日の値,カード発行日に処理日,発行理由に再発行の理由を設定する。また,それまで利用していたカードに係るカードデータのレコードのカード状態を“利用中”から“無効”に変更する。その後,カード発行情報を EDI で印刷会社に連携する。
毎月,道路事業者から EDI で連携される通行記録を新システムに一括で登録し,顧客ごとに通行料金を計算する。また,カード発行費及びカード年会費の請求の対象となるカードデータのレコードを抽出し,それぞれの請求金額を計算する。通行料金,カード発行費及びカード年会費の合計を合計請求金額として請求書を発行する。請求書のフォーマットは,現行業務と同じとする。EDI で連携される通行記録の主要な項目を図3 に示す。
図3 通行記録の主要な項目
通行記録から利用日確認帳票と利用車両確認帳票に必要なデータを抽出し,帳票を作成して顧客に送付する。利用日確認帳票を顧客に提供するために,ETC サービス契約申込時に,顧客からある情報を提供してもらい,新システムで保有する。
出題趣旨(IPA)
業務の効率化や新規サービスの要望によって,業務システムを設計・構築する際,システムアーキテクトは,業務部門の要望をシステム要件として定義し,業務システムを設計する必要がある。本問では,ETCサービス管理システムの構築を題材として,現行業務を正しく理解・把握し,業務の効率化と新規サービスの要望から情報システムに求められている機能の設計について,具体的な記述を求めている。システム要件を正しく理解し,求められる情報システムを設計する能力を評価する。
採点講評(問全体・IPA)
問3では,ETCサービス管理システムの構築を例にとり,業務とシステムを正しく理解・把握した上でシステムを更改する際の,機能設計について出題した。全体として,正答率は高かった。
システムアーキテクトとして,業務要件を十分に理解した上で,システム要件を定義できるように心掛けてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
解答欄2つ
本文中の下線①のチェック内容を,表 1 の属性を用いて 40 字以内で述べよ。また,そのチェックを行う業務上の理由を 25 字以内で述べよ。
〔チェック内容〕解答例
カード発行依頼書に記載された自動車登録番号と一致するレコードがないこと
解説
本文の根拠
〔現在の業務の概要〕
K 社では,法人顧客(以下,顧客という)が ETC サービスの契約を締結すると,リース車両 1 台につきカードを 1 枚発行する。
〔現在の業務の概要〕(2) カード発行業務
リース車両に対して利用中のカードがないことを台帳で確認し
〔改善後のシステムの内容〕(2) カード発行機能
①カードデータのレコードのうちカード状態が“利用中”であるレコードを対象に,発行依頼されたリース車両に関するチェックを行う
表1 カードデータ
カード番号(主キー),カード有効期限年月(主キー),ETCサービス契約番号,カード状態,自動車登録番号
下線①は,現在の業務で「リース車両に対して利用中のカードがないことを台帳で確認」している作業をシステムで行うものである。カードデータで利用中のカードを表すのはカード状態が“利用中”のレコードで,リース車両を識別する属性は自動車登録番号である。したがって,カード発行依頼書に記載された自動車登録番号と一致するレコードが“利用中”のレコードの中に無いことを確かめる。
このチェックをする理由は,K 社がリース車両1台につきカードを1枚だけ発行しているからである。同じ車両に利用中のカードがあれば,新たに発行すると1台に2枚になってしまう。講評は,“有効期限をチェックする”という誤った解答が見受けられたとしている。有効期限は発行するカードに設定する値で,二重発行を防ぐチェックとは関係が無い。
チェック内容は40字で表1 の属性名「自動車登録番号」を使い,「一致するレコードがないこと」まで書く。解答例は35字。理由は25字で「1車両につきカードを1枚だけ発行する」を書く。解答例は20字。
採点講評(IPA)
設問1(1)では,現在の業務において,リース車両1台につきカードを1枚発行するので,利用中のカードが存在していないことをチェックしていることがポイントであるが,“有効期限をチェックする”という誤った解答が見受けられた。問題文中の業務の背景を読み取り,新システムで必要な機能を正しく理解・把握してほしかった。
設問1(2)
解答欄2つ
EDI で印刷会社に連携するカード発行情報を作成するために,リース契約管理システムから取得が必要なリース契約の情報を挙げよ。また,その情報の利用目的を 20 字以内で述べよ。
解説
本文の根拠
〔現在の業務の概要〕(2) カード発行業務
カード発行情報は,顧客アルファベット名,自動車登録番号,カードの色やデザインなどのカード種類,カード番号及びカード有効期限年月である。K 社では,カードの有効期限を顧客のリース契約満了日の属する月の月末としている。
〔現在の業務の概要〕(1) ETC サービス契約締結業務
リース契約管理システムを利用して,リース契約番号,顧客名,開始日及び満了日などのリース契約の情報と ETC サービスの申込内容を照合し
カード発行情報の項目を一つずつ,どこから得るかを見る。顧客アルファベット名は ETC サービス契約データにあり,自動車登録番号とカード種類はカード発行依頼書に書かれ,カード番号は新システムが付ける。残るカード有効期限年月は,顧客のリース契約満了日の属する月の月末と決められている。
リース契約の満了日はリース契約管理システムがもつリース契約の情報で,ETC サービス契約データ(表1)には無い。したがって,カード有効期限年月を算出するためにリース契約管理システムから満了日を取得する必要がある。
情報は本文の語で「リース契約の満了日」と書く。利用目的は20字で「カード有効期限年月を算出すること」(16字)とする。
設問2(1)
解答欄4つ
請求対象の月にカード年会費の徴収が必要なカードデータのレコードを抽出し,請求金額を計算する。顧客ごとのカードデータから,カード年会費の請求対象を抽出する際に用いる属性を表 1 中から二つ挙げ,その属性が満たすべき抽出条件をそれぞれ 20 字以内で述べよ。
〔備考〕①と②は順不同
解説
本文の根拠
〔現在の業務の概要〕(5) 請求業務
カード年会費は,現在有効であるカードを対象として,カード発行依頼書に基づいて初回にカードを発行した月に年会費を請求し,その後,1 年ごとに請求する。
〔改善後のシステムの内容〕(3) カード更新機能
初回カード発行日にそれまで利用していたカードに係るカードデータのレコードの初回カード発行日の値
〔改善後のシステムの内容〕(2) カード発行機能
カード状態に“利用中”,初回カード発行日及びカード発行日に処理日,発行理由に“新規発行”を設定する。
年会費の請求条件は二つある。一つは「現在有効であるカード」で,カードデータではカード状態が“利用中”のレコードに当たる。更新済み,無効,解約のカードは対象から外れる。もう一つは「初回にカードを発行した月に請求し,その後1年ごとに請求する」ことで,請求対象の月が初回カード発行日の月と同じ月であるレコードを抽出する。
初回カード発行日は,新規発行のときに処理日が入り,更新や再発行のときはそれまでのカードの値を引き継ぐ。カード番号や有効期限が変わっても,年会費を請求する月は最初に発行した月のまま変わらない。講評は,“カード有効期限年月”や“カード発行日”という誤った解答が見受けられたとしている。カード発行日は更新や再発行で変わるので,年会費の請求月の判定には使えない。
属性は表1 の名前のまま「カード状態」「初回カード発行日」と書く。抽出条件はそれぞれ20字で,「“利用中”であること」(10字),「請求対象の月と同一の月であること」(16字)とする。①と②は順不同。
採点講評(IPA)
設問2(1)では,初回にカードを発行した月に請求することがポイントであるが,“カード有効期限年月”や“カード発行日”という誤った解答が見受けられた。現行の業務を正しく把握してほしかった。
設問2(2)
30字以内
カード発行費は,請求の対象となる月に発行したカードの件数から計算するが,請求対象外とするカードがある。どのようなカードか。表 1 の属性を用いて 30 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔現在の業務の概要〕(4) カード再発行業務
再発行の理由が“磁気不良”又は“破損”である場合,カード発行費の請求対象外としている。
〔改善後のシステムの内容〕(4) カード再発行機能
カード発行日に処理日,発行理由に再発行の理由を設定する。
カード発行費は,新規発行,更新,再発行で発行したカードを請求対象とするのが原則である。例外は再発行業務にあり,再発行の理由が“磁気不良”又は“破損”の場合はカード発行費を請求しない。
新システムでは,再発行のときにカードデータの発行理由へ再発行の理由を設定する。新規発行は“新規発行”,更新は“更新発行”が入るので,発行理由の値で請求対象外のカードを見分けられる。再発行の理由のうち“紛失”と“カード種類変更”は請求対象のままである。
30字で表1 の属性名「発行理由」を使って書く。解答例は「発行理由が“磁気不良”又は“破損”であるカード」で23字。
設問3(1)
解答欄2つ
利用日確認帳票を顧客に提供するために,ETC サービス契約申込時に,顧客から提供してもらう情報は何か。その情報を 10 字以内で述べよ。また,通行記録からどのような条件のデータを抽出するか。30 字以内で述べよ。
解説
本文の根拠
〔システムの改善要望〕
顧客の営業日以外に有料道路の IC に入ったことが分かる帳票(以下,利用日確認帳票という)を顧客向けのサービスとして提供したい。
〔現在の業務の概要〕(5) 請求業務
利用明細には,有料道路のインターチェンジ(以下,IC という)に入った日を利用日として
〔改善後のシステムの内容〕(6) ETC 利用情報レポート機能
利用日確認帳票を顧客に提供するために,ETC サービス契約申込時に,顧客からある情報を提供してもらい,新システムで保有する。
利用日確認帳票は,顧客の営業日以外に IC に入ったことが分かる帳票である。どの日が営業日かは顧客ごとに違い,K 社のもつデータ(表1)には無い。そこで ETC サービス契約申込時に顧客から営業日を提供してもらい,新システムで保有する。
IC に入った日は,通行記録の利用日で分かる(本文は IC に入った日を利用日としている)。通行記録から,利用日が顧客の営業日以外であるデータを抽出すれば,利用日確認帳票になる。講評は,利用車両確認帳票と混同して“自動車登録番号”と解答した例があったとしている。自動車登録番号を使うのは設問3(2)の利用車両確認帳票である。
情報は10字で「顧客の営業日」(6字)とする。データは30字で「利用日」と「顧客の営業日以外」を書く。解答例は「通行記録の利用日が顧客の営業日以外であるデータ」で23字。
採点講評(IPA)
設問3(1)は,正答率が高かった。一方で,利用日確認帳票についての解答を求めたにもかかわらず,利用車両確認帳票と混同し“自動車登録番号”と誤って解答した例も見受けられた。
設問3(2)
45字以内
利用車両確認帳票について,どのような条件の通行記録のデータを抽出するか。45 字以内で述べよ。
解答例
通行記録のカード番号と自動車登録番号の組合せが,カードデータの情報と異なるデータ
解説
本文の根拠
〔システムの改善要望〕
カード利用者は,どんな車両でもカードを利用することができるが,発行依頼されたリース車両以外の車両でカードを利用したことが確認できる帳票(以下,利用車両確認帳票という)を顧客向けのサービスとして提供したい。
図3
カード番号,カード有効期限,通行料金,利用日,入口IC名,出口IC名,自動車登録番号,出口時刻。
表1 カードデータ
カード番号(主キー),カード有効期限年月(主キー),ETCサービス契約番号,カード状態,自動車登録番号
利用車両確認帳票は,発行依頼されたリース車両以外の車両でカードを利用したことを確かめる帳票である。カードがどの車両向けに発行されたかは,カードデータのカード番号と自動車登録番号の組合せで分かる。一方,実際に通行した車両は,図3 の通行記録にカード番号とともに記録される自動車登録番号で分かる。
通行記録のカード番号でカードデータを引き,自動車登録番号が一致しなければ,発行依頼された車両とは別の車両でそのカードを使ったことになる。したがって,通行記録のカード番号と自動車登録番号の組合せが,カードデータの情報と異なるデータを抽出する。
45字で「カード番号と自動車登録番号の組合せ」と「カードデータと異なる」を書く。解答例は40字。
出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問3(表記を一部改変)
問4 IoT,AIを活用する海運用コンテナターミナルシステムの開発
IoT,AI を活用する海運用コンテナターミナルシステムの開発に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
X 社は,コンテナの積卸し(以下,荷役という)機械のメーカである。X 社では,大型クレーンとその制御システムを中心に,レイアウト設計も含めてコンテナターミナルシステムとして受託している。
近年,コンテナによる貨物輸送量の世界的な増加に加え,輸送費の値下げ競争が相まって,コンテナ輸送船の大型化が進んでいる。それに伴い,コンテナ輸送船が出入りする港湾では,貨物量の増加・集中に対応するための荷役作業の迅速化・効率向上,及び荷役機械のオペレータの確保,コンテナの陸上輸送用のトレーラを連結したトラクタ(以下,トレーラ連結車という)の運転手の確保が課題となっている。そこで,コンテナターミナルでの荷役作業に IoT,AI を活用して作業効率向上を目指す取組が進められている。
〔X 社のコンテナターミナルシステムの概要〕
これまでに X 社が設計・施工したコンテナターミナルシステムの例を図1 に,コンテナターミナルの設備・荷役機械などの概要を表1 に示す。
図1 X社が設計・施工したコンテナターミナルシステムの例
図1 中の設備・荷役機械を用いた荷卸しの工程は,次のようになる。
岸壁用コンテナクレーンは,荷卸しするコンテナをコンテナ輸送船から岸壁へ移す。コンテナ運搬車は,岸壁に置かれたコンテナをつり上げて自身の荷台に積載し,レーンへ搬送した後,レーンでコンテナを地表に降ろす。トランスファクレーン(以下,T クレーンという)は,レーン内のコンテナを仕分したり,搬出するトレーラ連結車にコンテナを積載したりする。
表1 コンテナターミナルの設備・荷役機械などの概要
〔従来のコンテナターミナルシステムの問題とその解決方針〕
コンテナ運搬車の運転手の確保が急務となっている。 T クレーンは,管理棟に設置された監視端末の操作卓で遠隔操縦する。T クレーンの運転は,ほぼ自動化されているが,トレーラ連結車との荷役には,オペレータが安全を確認しながらの手動操縦が残っている。 荷役作業の増加・集中に対応するために,T クレーンを高速化してきたが,コンテナの揺れを抑える必要性から,荷役作業の大幅な時間短縮が期待できなくなっている。また,自重が大きいので,高速化によってエネルギー消費量が増大している。 道路の渋滞によって,トレーラ連結車の受付ゲートへの到着が,スケジュールよりも遅れ,荷役作業が滞ることがある。 設備・荷役機械は故障が多いので,稼働停止時間が長くなってしまう。 X 社では,これらの問題を解決するために,IoT,AI を活用する新コンテナターミナルシステム(以下,NCT システムという)を開発することにし,その取組方針を次のとおりまとめた。
荷役作業の迅速化・効率向上と同時に,コンテナヤード内の無人化を図るために,荷役方式を見直す。ただし,レーン内のコンテナの多段積みをなくすことは難しいので,T クレーンは使用する。 エネルギー消費量の増大,荷役スケジュールの遅延などの問題についても,改善を目指す。 〔NCT システムの概要〕
NCT システムの開発を担当することになった,X 社のシステムアーキテクトである Y 氏は,NCT システムの開発項目を次のように設定した。
(1) 荷役方式の見直しと新たな無人コンテナ運搬車の開発 T クレーンとトレーラ連結車が,直接コンテナを受渡しすることをやめる。自律走行する新たな無人コンテナ運搬車(以下,NCT キャリアという)を開発し,岸壁とレーン間,及びレーンとトレーラ連結車間のコンテナ搬送を,NCT キャリアが行うようにする。
トレーラ連結車は,新たに設置する積替えゲートに停車して,NCT キャリアとコンテナの受渡しを行うようにする。
(3) NCT システムに対応する管理・運営システムの構築 T クレーン及び NCT キャリアの走行・荷役に関する走行管理は,管理棟の管理・運営システムで一括して行う。また,従来システムのデータ処理機能の更新,必要となる機器の選定,データ通信環境の構築,サーバの性能アップなども行う。
トレーラ連結車の到着予測時刻の精度を上げ,トレーラ連結車の予測到着順序を基に,荷役スケジュールを現行よりも短い時間間隔で組み替えられるようにする。
T クレーン,NCT キャリアなどの故障を予測した保守によって,できるだけ NCT システムの設備・荷役機械の稼働停止時間を短縮できるようにする。
NCT システムの概要を図2 に示す。
図2 NCTシステムの概要
〔開発項目の検討結果〕
NCT システムで開発又は更新される設備・荷役機械の仕様・機能を表2 に示す。
表2 NCTシステムで開発又は更新される設備・荷役機械の仕様・機能
Y 氏は,各開発項目について検討し,結果を次のとおりまとめた。
(1) 荷役方式の見直しと NCT キャリアの開発 NCT キャリアを導入することによって,T クレーンの完全自動運転化とコンテナヤード内の無人化を実現する。また,NCT キャリアによるコンテナ搬送をメインにして,T クレーンがコンテナをつり上げて走行する距離をできるだけ短くする。
NCT システムがコンテナをトレーラ連結車に積載する工程は次のようになる。
トレーラ連結車は,受付ゲートを経由して積替えゲートで停車する。T クレーンは,搬出するコンテナの位置まで走行してコンテナをつり上げ,NCT キャリアとの受渡し場所へ搬送し,地表に降ろす。NCT キャリアが地表からコンテナをもち上げて積替えゲートへ搬送し,トレーラ連結車のトレーラ部分に降ろす。
積替えゲートの数は,扱うコンテナの量によって決める。積替えゲートの設置位置及び数は,稼働実績データを基に解析して見直すようにする。
(3) NCT システムに対応する管理・運営システムの構築 NCT システムに対応する管理・運営システムの機能を表3 に示す。
表3 NCTシステムに対応する管理・運営システムの機能
なお,荷役スケジュールの組替えの高頻度化及び設備・荷役機械の稼働停止時間の短縮は,管理・運営システムの荷役管理・スケジューリング機能を用いて実現する。
出題趣旨(IPA)
IoT,AI技術の進歩に伴い,物流分野で用いられる荷役システムでもIoT,AIの導入を目指す開発が進められている。本問では,IoT,AIを活用する海運用コンテナターミナルシステムを題材として,従来システムから変化するシステムアーキテクチャの決定,将来展望を踏まえた機能仕様の策定などについて,システムアーキテクトに求められる能力を評価する。
採点講評(問全体・IPA)
問4では,IoT,AIを活用する海運用コンテナターミナルシステムを題材に,システムアーキテクチャの決定,機能仕様の策定について出題した。題意及びシステムの概要は,おおむね理解されているようであった。
今後も,システムアーキテクトとして,システム要件をよく理解して,機能仕様を策定するように心掛けてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
解答欄2つ
NCT キャリアの導入によってコンテナヤード内の無人化が実現された。無人化のためにコンテナヤード内から排除したことを,二つ答えよ。
〔備考〕①と②は順不同
解説
本文の根拠
表1 コンテナヤード
レーン内を含む走行路が設けられ,トレーラ連結車及びコンテナ運搬車が走行する。
表1 コンテナ運搬車
人が乗って,3段まで積み上げて運転することができるが,効率よく運転するには経験を要する。
〔NCT システムの概要〕(1)
自律走行する新たな無人コンテナ運搬車(以下,NCT キャリアという)を開発し,岸壁とレーン間,及びレーンとトレーラ連結車間のコンテナ搬送を,NCT キャリアが行うようにする。
〔NCT システムの概要〕(2)
トレーラ連結車は,新たに設置する積替えゲートに停車して,NCT キャリアとコンテナの受渡しを行うようにする。
従来のコンテナヤードで人が運転していたものを表1 から探す。コンテナヤードの走行路はトレーラ連結車とコンテナ運搬車が走行し,コンテナ運搬車は人が乗って運転する。トレーラ連結車も運転手が運転してレーンまで入り,T クレーンとコンテナを受け渡していた。
NCT システムでは,岸壁とレーン間の搬送を無人の NCT キャリアが行うので,コンテナ運搬車の運転が無くなる。レーンとトレーラ連結車間の搬送も NCT キャリアが行い,トレーラ連結車は積替えゲートに停車して受け渡すので,トレーラ連結車がコンテナヤード内を運転して走ることも無くなる。図2 でも積替えゲートはコンテナヤードの外に描かれている。講評は,二つ挙げられない解答が見受けられたとしている。
①②は順不同で,「トレーラ連結車の運転」と「コンテナ運搬車の運転」を書く。どちらも運転という人の作業を排除したことを示す書き方にそろえる。
採点講評(IPA)
設問1(1)では,無人化のために従来システムから変更した点を二つ問うたが,二つ挙げられない解答が見受けられた。従来システムとNCTシステムとの相違点を確実に把握してほしかった。
設問1(2)
35字以内
NCT システムで荷役のエネルギー効率向上に必要な,NCT キャリアと T クレーンの運用上の考慮点を,35 字以内で述べよ。
解答例
コンテナの移動を可能な限りNCTキャリアで行うようにする。
解説
本文の根拠
表2 NCTキャリア
Tクレーンに比べて自重が小さいので,コンテナ1台を搬送するときのエネルギー消費量は,Tクレーンで同じ距離を搬送する場合よりも少ない。
〔開発項目の検討結果〕(1)
NCT キャリアによるコンテナ搬送をメインにして,T クレーンがコンテナをつり上げて走行する距離をできるだけ短くする。
表3 走行管理
Tクレーンがコンテナをつり上げた状態での走行,及びTクレーンによるコンテナの総移動量ができるだけ少なくなるように指示する。
表2 によると,同じ距離をコンテナ1台搬送するときのエネルギー消費量は,自重の小さい NCT キャリアのほうが T クレーンより少ない。従来の問題にも,T クレーンは自重が大きいので高速化によってエネルギー消費量が増大しているとある。荷役全体のエネルギー効率を上げるには,コンテナの移動をできるだけ NCT キャリアに受け持たせればよい。
〔開発項目の検討結果〕も,NCT キャリアによる搬送をメインにして T クレーンがコンテナをつり上げて走行する距離をできるだけ短くするとし,表3 の走行管理も T クレーンによるコンテナの総移動量が少なくなるように指示するとしている。ただし,レーン内の多段積みは NCT キャリアでは扱えないので,T クレーンを使う部分は残る。
35字で「コンテナの移動」を「可能な限り NCT キャリアで行う」ことを書く。解答例は「コンテナの移動を可能な限りNCTキャリアで行うようにする。」で29字。
設問1(3)
35字以内
NCT キャリアと T クレーン間で直接コンテナを受け渡さないことによって作業効率が向上する。その理由を 35 字以内で述べよ。
解答例
TクレーンとNCTキャリアの移動を同期させる必要がないから
解説
本文の根拠
表2 Tクレーン
NCTキャリアとTクレーン間のコンテナ受渡しは,直接には行わず,一旦地表にコンテナを降ろしてから行う。
表2 NCTキャリア
フレーム上部のつり具でコンテナをもち上げて保持し,コンテナを地表に降ろすこともできる。
〔開発項目の検討結果〕(1)
T クレーンは,搬出するコンテナの位置まで走行してコンテナをつり上げ,NCT キャリアとの受渡し場所へ搬送し,地表に降ろす。NCT キャリアが地表からコンテナをもち上げて積替えゲートへ搬送し
直接受け渡すには,T クレーンと NCT キャリアが同じ時刻に同じ場所にそろっていなければならない。どちらかが先に着けば,もう一方が来るまで待つことになる。NCT システムでは T クレーンが受渡し場所の地表にコンテナを降ろし,NCT キャリアが地表からもち上げる。NCT キャリアは自分でコンテナを地表から持ち上げ,地表に降ろせるので,受渡しの相手を待たずに済む。
T クレーンと NCT キャリアの移動を同期させる必要が無くなるので,それぞれが自分の作業を終えたらすぐ次の作業に移れる。講評は,問題文に記述されていない事柄を推定して論じている解答が見受けられたとしている。表2 の受渡し方法と〔開発項目の検討結果〕の工程から言えることに絞って書く。
35字で「移動を同期させる必要がない」ことを書く。解答例は「TクレーンとNCTキャリアの移動を同期させる必要がないから」で29字。
採点講評(IPA)
設問1(3)では,コンテナ受渡し方法の変更で作業効率が向上する理由を問うたが,問題文に記述されていない事柄を推定して論じている解答が見受けられた。問題文をよく読み取り,システム全体として作業効率が向上する理由を挙げてほしかった。
設問2(1)
25字以内
トレーラ連結車の到着予測時刻とスケジュールされた到着予定時刻との差が大きければ荷役スケジュールを組み替える。この差以外に,トレーラ連結車の到着予測に関連して荷役スケジュールの組替えを検討すべき要因は何か,25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔NCT システムの概要〕(4)
トレーラ連結車の到着予測時刻の精度を上げ,トレーラ連結車の予測到着順序を基に,荷役スケジュールを現行よりも短い時間間隔で組み替えられるようにする。
表3 荷役管理・スケジューリング
荷役の順番,時刻,荷役機械の割当てなどの荷役スケジュールの作成・組替えを行う。
〔NCT システムの概要〕(4) は,荷役スケジュールを「トレーラ連結車の予測到着順序を基に」組み替えるとしている。荷役スケジュールは荷役の順番,時刻,荷役機械の割当てを決めるので,到着予測時刻と予定時刻の差だけでなく,到着の順番が入れ替わったときにも組み替える必要がある。
例えば,どのトレーラ連結車も予定時刻との差は小さくても,前後の車の到着が入れ替われば,先に着いた車のコンテナから荷役したほうが待ちが減る。到着予測から分かるもう一つの要因は,予測した到着の順番の変化である。
25字で「トレーラ連結車の到着の順番が変わった」ことを書く。解答例は「トレーラ連結車の到着の順番が変わったこと」で20字。
設問2(2)
25字以内
トレーラ連結車の到着予測時刻の精度を向上させたい。収集したコンテナターミナル周辺の気象情報,道路規制情報及び路面情報以外に有効となるデータを,25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
表3 データ収集・監視
NCTシステムを利用するトレーラ連結車から,走行状態のデータ(位置・速度など)を,一定時間間隔でリアルタイムに収集する。
表3 荷役管理・スケジューリング
データ収集・監視機能で収集したデータからAI機能を用いて,設備・荷役機械の故障の早期発見・予測,トレーラ連結車の到着時刻の予測を行う。
〔従来のコンテナターミナルシステムの問題とその解決方針〕
道路の渋滞によって,トレーラ連結車の受付ゲートへの到着が,スケジュールよりも遅れ,荷役作業が滞ることがある。
トレーラ連結車の到着時刻は,データ収集・監視機能で収集したデータから AI 機能で予測する。表3 のデータ収集・監視機能が集めるデータのうち,設問が除いた気象情報,道路規制情報,路面情報以外で到着に関わるのは,トレーラ連結車から一定時間間隔でリアルタイムに収集する走行状態のデータ(位置・速度など)である。
到着が遅れる原因は道路の渋滞である。各トレーラ連結車が今どこをどの速さで走っているかが分かれば,渋滞に巻き込まれているかどうかを含めて到着時刻を見積もれる。周辺の気象や道路規制は全車に共通の情報だが,走行状態は車ごとの情報なので,1台ずつの予測精度を上げられる。
25字で「各々のトレーラ連結車」の「走行状態のデータ」と書く。解答例は19字。
設問3(1)
20字以内
NCT システムのサーバの性能アップを行う背景として考えられる要因は,AI 機能の導入のほかに何があるか。荷役管理・スケジューリング機能に関連した視点をもとに,20 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔NCT システムの概要〕(3)
また,従来システムのデータ処理機能の更新,必要となる機器の選定,データ通信環境の構築,サーバの性能アップなども行う。
〔NCT システムの概要〕(4)
荷役スケジュールを現行よりも短い時間間隔で組み替えられるようにする。
〔開発項目の検討結果〕
なお,荷役スケジュールの組替えの高頻度化及び設備・荷役機械の稼働停止時間の短縮は,管理・運営システムの荷役管理・スケジューリング機能を用いて実現する。
荷役管理・スケジューリング機能に関わる開発項目のうち,サーバの処理量を増やすものを探す。〔NCT システムの概要〕(4) は,荷役スケジュールを現行よりも短い時間間隔で組み替えられるようにするとしている。組替えのたびに荷役の順番,時刻,荷役機械の割当てを計算し直すので,組替えの頻度が上がるとサーバの処理量が増える。
荷役スケジュールの組替えの高頻度化は,荷役管理・スケジューリング機能を用いて実現すると本文に明記されている。設問は AI 機能の導入を除いているので,AI による到着時刻の予測や故障の予測そのものではなく,スケジュールの組替えの側を答える。
20字で開発項目の名前「荷役スケジュールの組替えの高頻度化」(17字)をそのまま使う。
設問3(2)
25字以内
NCT システムの稼働期間が長くなると,設備・荷役機械の故障を予測する精度はどのようになるか。NCT システムの予測の仕組みを考慮し,その理由を含め 25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
表3 データ収集・監視
NCTシステムを構成する設備・荷役機械の稼働状態を常時収集・監視する。
表3 荷役管理・スケジューリング
データ収集・監視機能で収集したデータからAI機能を用いて,設備・荷役機械の故障の早期発見・予測
NCT システムの故障の予測は,データ収集・監視機能で収集したデータから AI 機能を用いて行う。設備・荷役機械の稼働状態は常時収集されるので,稼働期間が長くなるほど予測の材料になるデータが蓄積される。蓄積されたデータが多いほど,故障の前に現れる稼働状態の傾向を捉えやすくなり,予測の精度は向上する。
設問は「NCT システムの予測の仕組みを考慮し」としており,予測が収集したデータに基づく AI によるものであることが理由の根拠になる。設備が古くなって故障が増えるといった,予測の仕組みと関係の無い理由を書かない。
25字で精度が「向上する」ことと,理由の「データの蓄積が進む」を書く。解答例は「データの蓄積が進むので精度は向上する。」で19字。
採点講評(IPA)
設問3(2)では,AIを用いた予測の仕組みの理解力について問うたが,よく理解されているようであった。
設問3(3)
35字以内
コンテナヤード内での NCT キャリア同士の衝突事故を防止するために,NCT キャリア側ではセンサによる障害物の検出を行う。これと並行して管理・運営システム側で行う事故防止のための方策を,35 字以内で述べよ。
解答例
衝突しないようにスケジューリングしてNCTキャリアに指示する。
解説
本文の根拠
表3 走行管理
NCTキャリアに対して,走行ルート,出発時刻を指示する。
表3 走行管理
全てのTクレーンとNCTキャリアの現在位置・稼働状況を常に把握する。
表2 NCTキャリア
管理・運営システムから無線LAN経由で走行ルートを指示されると,走行制御に必要なGPS受信器,カメラ,センサなどを用いて自律走行する。
NCT キャリアは,管理・運営システムから指示された走行ルートに沿って自律走行する。管理・運営システムの走行管理機能は,全ての T クレーンと NCT キャリアの現在位置・稼働状況を常に把握し,NCT キャリアに走行ルートと出発時刻を指示する。全体を見渡せる管理・運営システム側では,NCT キャリア同士の走行ルートと時刻が重ならないようにスケジューリングして指示できる。
NCT キャリア側のセンサは目の前の障害物を検出して止まる対策で,衝突しそうになってから働く。管理・運営システム側は,そもそも衝突が起きない走行計画を立てる対策で,役割が分かれている。講評も,NCT システムを構成する各要素の役割分担についての考察力を問うたとしている。
35字で「衝突しないようにスケジューリング」と「NCT キャリアに指示する」を書く。解答例は31字。
採点講評(IPA)
設問3(3)では,NCTシステムを構成する各要素の役割分担についての考察力を問うた。おおむね理解されているようであった。
出典:平成30年度 秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問4(表記を一部改変)
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平成25年度 秋期 午後Ⅱ
平成25年度 春期 午前Ⅰ
平成24年度 秋期 午前Ⅰ
平成24年度 秋期 午後Ⅰ
平成24年度 秋期 午後Ⅱ
平成24年度 春期 午前Ⅰ
平成23年度 秋期 午前Ⅰ
平成23年度 秋期 午後Ⅰ
平成23年度 秋期 午後Ⅱ
平成23年度 特別試験 午前Ⅰ
平成22年度 秋期 午前Ⅰ
平成22年度 秋期 午後Ⅰ
平成22年度 秋期 午後Ⅱ
平成22年度 春期 午前Ⅰ
平成21年度 秋期 午前Ⅰ
平成21年度 秋期 午後Ⅰ
平成21年度 秋期 午後Ⅱ
平成26年度 秋期 午前Ⅱ
平成25年度 秋期 午前Ⅱ
平成24年度 秋期 午前Ⅱ
平成23年度 秋期 午前Ⅱ
平成22年度 秋期 午前Ⅱ
平成21年度 秋期 午前Ⅱ
平成21年度 春期 午前Ⅰ