平成28年度 秋期に実施されたITストラテジスト試験
午後Ⅰの全4問(記述式)です。事例本文・設問・解答例と解説をそのまま読めます。
この試験について:ITストラテジスト試験について
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問1 大学の業務及び情報システムの統合
大学の業務及び情報システムの統合に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
A 大学は,B 県の公立総合大学である。少子化による志願者の減少や自治体財政のひっ迫による影響で,近年,運営費交付金が漸減している。そこで,B 県では,A 大学と,県内公立の看護系単科大学及び短期大学を,新たに設立する一つの法人(以下,新法人という)の下に再編することにした。さらに,3 年後までには三つの大学を統合し,名称も A 大学に一本化して,学部学科の見直しやキャンパスの集約を行うことによって,大学運営の効率向上を図る方針が県議会で承認された。
これに合わせて,各大学の情報システム部門のメンバから成る検討チームを立ち上げ,業務及び情報システムの現状を調査した後,業務及び情報システムを一元的に統合するための検討を開始した。
各大学で運用している情報システムのうち,ネットワーク(以下,NW という)システム,電子メールシステム,学務システム,財務会計システム及び人事給与システムが検討の対象となった。
〔業務及び情報システムの統合方針〕
新法人の下への三つの大学の再編と,その後の三つの大学の統合に合わせて,2 段階で統合を進める業務及び情報システムの統合方針を策定した。
第 1 段階では,当面の対応として,新法人としての業務の円滑な実施を可能にすることを目的とし,各大学の業務の見直し及び情報システムの改修は最小限に抑え,その後,第 2 段階として,業務及び情報システムの統合を進め,大学の統合に備えていく。
情報システムの統合については,データセンタに構築するプライベートクラウドコンピューティングの基盤(以下,クラウド基盤という)の利用も考慮していく方針である。
〔情報システムの概要〕
情報システムの概要と現状,及び情報システムの統合に向けてのシステム機能要求事項は,表 1 のとおりである。
表1 情報システムの概要と現状,及びシステム機能要求事項
〔各大学の個別の状況〕
各大学とも,教員が所属する学部と,職員が所属する事務局がある。情報システムの運用管理は各大学の事務局内の情報システム部門が行っており,A 大学では学術情報センタが,その他の大学ではそれぞれの大学の情報システム課が担当している。
A 大学の学部 LAN では,スイッチや無線 LAN アクセスポイントなどの NW 機器を学部で独自に設置していることがあり,学術情報センタでは,学部 LAN の物理的な接続状況などの詳細な NW 構成情報を把握できていない。また,現状調査から,A 大学の情報系学科には,情報技術の研究を目的とした研究用 LAN が設置されており,学部 LAN に接続していることが分かった。研究用 LAN は,外部の NW と接続し,大学の NW ポリシでは認められていないプロトコルの通信実験などを行っており,情報系学科の教員が構築し,運用している。
教員の中には,大学間で兼務している者もいる。全ての大学の教職員は B 県の地方公務員なので,人事給与体系については同一である。ただし,国からの補助金などによって各研究室が独自に雇用する臨時職員や各学部で採用する非常勤講師の人事給与体系については,大学や学部ごとに独自に規定している。また,A 大学では,このような臨時職員や非常勤講師については,各学部で独自に電子メールアカウントの作成や削除の管理をしている。A 大学の各学部では,正式な採用前に電子メールアカウントを作成することがある。
〔業務・情報システム統合計画〕
検討チームでは,業務及び情報システムの統合方針に従い,業務・情報システム統合計画について,第 1 段階を表 2,第 2 段階を表 3 のとおり策定し,それぞれの大学の幹部に答申した。
表2 業務・情報システム統合計画の第1段階
表3 業務・情報システム統合計画の第2段階
〔業務・情報システム統合計画の課題〕
策定された統合計画に対し,A 大学の幹部から,“学部学科の見直しでは校舎の割当ての変更が予定されており,これを機に一部の教室の改修工事に早々に着手することから,NW 工事を行うが,必要な情報が不足しているのではないか”といった意見があった。また,A 大学以外の大学の事務局幹部から,“事務局の職員が業務で利用する情報システムの統合は,簡単にできないのではないか”との意見があった。その他にも他の幹部から,電子メールアカウント管理に関する懸念など,幾つかの意見があった。
これらの意見を受けて,検討チームは,検討体制を見直した上で,業務・情報システム統合計画を見直し,計画を推進することにした。
出題趣旨(IPA)
ITストラテジストには,経営戦略の実現に向けて,事業の制約などを考慮して,情報技術を活用した事業戦略,情報システム戦略及び情報システム化計画を策定する能力が求められる。本問では,大学の法人化と統合に起因した,業務及び情報システムの統合を題材として,業務及び情報システムの統合計画策定に関する能力を評価する。具体的には,統合計画の実施に向けた準備事項,統合計画で考慮すべきこと,統合計画の検討体制の見直しの理由を問う。
採点講評(問全体・IPA)
問1では,大学の業務及び情報システムの統合について出題した。題意や状況設定は,おおむね理解されているようであった。
ITストラテジストは,経営戦略や事業上の制約を考慮して,情報化計画を策定する能力を高めてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
30字以内
財務会計業務に関する統合計画を実施するために整理すべきことを,30 字以内で述べよ。
解答例
新法人の財務諸表と各大学の勘定科目,予算科目間の対応
解説
本文の根拠
〔業務及び情報システムの統合方針〕
第 1 段階では,当面の対応として,新法人としての業務の円滑な実施を可能にすることを目的とし,各大学の業務の見直し及び情報システムの改修は最小限に抑え,
表1 財務会計システム
勘定科目や予算科目は,大学ごとに独自に規定し,運営している。
表2 財務会計業務
情報システムはそのままで,各大学の財務諸表などの会計資料から,スプレッドシートなどによって新法人の財務諸表を作成する。
第1段階の財務会計業務は,情報システムはそのままで,各大学の財務諸表などの会計資料からスプレッドシートなどで新法人の財務諸表を作る計画である。ところが,勘定科目や予算科目は大学ごとに独自に規定されている。各大学の会計資料をそのまま足し合わせても新法人の財務諸表にはならないので,各大学の科目が新法人の財務諸表のどの科目に当たるかをあらかじめ整理しておく必要がある。
第1段階は業務の見直しと情報システムの改修を最小限に抑える方針なので,各大学の勘定科目や業務手順を統一することはこの段階ではしない。講評によると,新法人としての会計業務手順の整備を求める解答が一部に見られた。手順を変えずに新法人の財務諸表を作るための準備,つまり科目間の対応を整理することが答えになる。
30字に対し,解答例は「新法人の財務諸表と各大学の勘定科目,予算科目間の対応」で26字。何と何の対応か(新法人の財務諸表と各大学の勘定科目・予算科目)を両方書く。
採点講評(IPA)
設問1(1)では,新法人としての会計業務手順の整備を求める解答が一部に見られた。統合計画の第1段階では,業務の見直しは最小限に抑える方針であることを踏まえて,新法人の財務諸表と,各大学の勘定科目,予算科目間の対応関係を整理する必要があることを読み取ってほしかった。
設問1(2)
20字以内
A 大学幹部の NW 工事に関する意見について,統合計画の実施において不足している情報は何か。20 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔各大学の個別の状況〕
A 大学の学部 LAN では,スイッチや無線 LAN アクセスポイントなどの NW 機器を学部で独自に設置していることがあり,学術情報センタでは,学部 LAN の物理的な接続状況などの詳細な NW 構成情報を把握できていない。
表2 NW システム
各大学の学内 NW は全て A 大学の学術情報センタで管理する体制とする。スイッチや無線 LAN アクセスポイントなどの NW 機器の設定を,NW ポリシに合わせて学術情報センタで一元管理できるようにする。
〔業務・情報システム統合計画の課題〕
これを機に一部の教室の改修工事に早々に着手することから,NW 工事を行うが,必要な情報が不足しているのではないか
第1段階では,各大学の学内 NW を全て学術情報センタで管理し,スイッチや無線 LAN アクセスポイントなどの NW 機器の設定を一元管理する計画である。しかし A 大学では,学部が NW 機器を独自に設置していることがあり,学術情報センタは「学部 LAN の物理的な接続状況などの詳細な NW 構成情報を把握できていない」。
教室の改修に合わせて NW 工事を行うには,どの機器がどこにどう接続されているかが分からなければならない。A 大学の幹部が「必要な情報が不足しているのではないか」と指摘したのは,この学部 LAN の構成情報である。基幹 NW ではなく,学部が独自に機器を置いている学部 LAN が問題であることを押さえる。
20字に対し,解答例は「学部LANの詳細なNW構成情報」で15字。本文の「学部 LAN」「詳細な NW 構成情報」をそのまま組み合わせる。
設問1(3)
15字以内
A 大学において,NW ポリシに沿った運営をするために検討すべきことは何か。15 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔各大学の個別の状況〕
研究用 LAN は,外部の NW と接続し,大学の NW ポリシでは認められていないプロトコルの通信実験などを行っており,情報系学科の教員が構築し,運用している。
〔各大学の個別の状況〕
また,現状調査から,A 大学の情報系学科には,情報技術の研究を目的とした研究用 LAN が設置されており,学部 LAN に接続していることが分かった。
表2 NW システム
スイッチや無線 LAN アクセスポイントなどの NW 機器の設定を,NW ポリシに合わせて学術情報センタで一元管理できるようにする。
A 大学の情報系学科には研究用 LAN があり,学部 LAN に接続している。研究用 LAN は外部の NW と接続し,「大学の NW ポリシでは認められていないプロトコルの通信実験など」を行っていて,情報系学科の教員が構築・運用している。
第1段階では NW 機器の設定を NW ポリシに合わせて学術情報センタで一元管理する。しかし研究用 LAN は研究のためにポリシ外の通信をしており,学部 LAN につながったままでは NW 全体をポリシに沿って運営できない。かといって研究を止めることもできないので,研究用 LAN をどう運用するか(学内 NW との関係や管理の仕方)を検討する必要がある。
15字に対し,解答例は「研究用LANの運用方法」で11字。対象(研究用 LAN)と検討事項(運用方法)だけを書く。
設問2(1)
15字以内
NW システムの再構築における認証機能の整備に当たって,連携すべき情報は何か。15 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
表1 NW システム
三つの大学の全ての学生・教職員が一意に認証できるようにする。
表1 人事給与システム
大学ごとに加えて,新法人としても教職員の人事を一元的に管理できるようにする。
表3 NW システム
認証機能を一元化するために必要となる情報を,他システムと連携して取得する仕組みを整備する。
〔各大学の個別の状況〕
教員の中には,大学間で兼務している者もいる。
第2段階では NW システムを再構築し,「認証機能を一元化するために必要となる情報を,他システムと連携して取得する仕組み」を整備する。システム機能要求事項は,三つの大学の全ての学生・教職員が一意に認証できるようにすることである。
認証するには,誰が新法人の教職員なのかという情報が要る。教職員の人事を扱うのは人事給与システムで,表1では新法人としても教職員の人事を一元的に管理できるようにするとしている。大学間で兼務している教員もいるので,大学ごとではなく新法人として一元管理された人事情報と連携すれば,教職員を一意に認証できる。
15字に対し,解答例は「人事給与システムの人事情報」で13字。連携先のシステム名(人事給与システム)と,そこから得る情報(人事情報)を組にして書く。
設問2(2)
40字以内
全ての電子メールアカウント管理を学術情報センタに一元化することによって想定される問題点について,40 字以内で述べよ。
解答例
A大学の臨時職員や非常勤講師の電子メールアカウントを適時に発行できない。
解説
本文の根拠
〔各大学の個別の状況〕
ただし,国からの補助金などによって各研究室が独自に雇用する臨時職員や各学部で採用する非常勤講師の人事給与体系については,大学や学部ごとに独自に規定している。
〔各大学の個別の状況〕
また,A 大学では,このような臨時職員や非常勤講師については,各学部で独自に電子メールアカウントの作成や削除の管理をしている。A 大学の各学部では,正式な採用前に電子メールアカウントを作成することがある。
表3 電子メールシステム
全ての電子メールアカウント管理を学術情報センタで一元化する。
A 大学では,研究室が独自に雇用する臨時職員や学部が採用する非常勤講師について,各学部が独自に電子メールアカウントを作成・削除しており,正式な採用前にアカウントを作成することもある。これらの人の人事給与体系は大学や学部ごとに独自に規定されている。
第2段階で全ての電子メールアカウント管理を学術情報センタに一元化すると,学部の判断で必要なときにアカウントを作ることができなくなる。学術情報センタは学部の採用の事情や時期をつかみにくいので,正式採用前など学部が必要とするタイミングで臨時職員や非常勤講師のアカウントを発行できなくなるおそれがある。
40字に対し,解答例は「A大学の臨時職員や非常勤講師の電子メールアカウントを適時に発行できない。」で36字。対象者(A 大学の臨時職員や非常勤講師)を具体的に書き,問題点を「適時に発行できない」とまとめる。
設問2(3)
35字以内
y システムに関する統合計画を実施した場合に想定される問題点について,35 字以内で述べよ。
解答例
業務が統一されず,教務情報や学納金の管理業務が複雑になる。
解説
本文の根拠
〔各大学の個別の状況〕
全ての大学の教職員は B 県の地方公務員なので,人事給与体系については同一である。
表3
y システム:“各大学の情報システムをそれぞれクラウド基盤上へ移行する。”
表1 学務システム
教務情報(履修要項,学生の履修状況・成績など)や学生の学納金の管理業務を行う情報システムである。
表1 学務システム
学納金の請求・収納情報を財務会計システムと連携させる。
冒頭
3 年後までには三つの大学を統合し,名称も A 大学に一本化して,学部学科の見直しやキャンパスの集約を行う
まず y を決める。教職員の人事給与体系は全大学で同一なので,人事給与は早い段階で業務手順を統一できる。表2 の x 業務(第1段階で業務手順を統一)と表3 の x システム(統一された業務手順で一つの情報システムに統合)は人事給与であり,y は学務になる。第2段階の学務システムは,各大学の情報システムをそれぞれクラウド基盤上へ移すだけで,業務手順も情報システムも大学ごとのまま残る。
三つの大学は3年後までに統合し,学部学科の見直しも行う。学務システムが大学ごとのままだと,統合後も教務情報(履修要項,履修状況・成績など)や学納金の管理業務が大学ごとに異なる手順で行われ,業務が複雑になる。学納金の請求・収納情報は,一つに統合される財務会計システムと連携させる要求もあるので,連携元が大学ごとに分かれていることも業務を複雑にする。
35字に対し,解答例は「業務が統一されず,教務情報や学納金の管理業務が複雑になる。」で29字。原因(業務が統一されない)と,影響を受ける業務(教務情報や学納金の管理業務)を書く。
設問3
40字以内
業務・情報システム統合計画の推進に向けて,検討体制を見直した理由は何か。40 字以内で述べよ。
解答例
業務手順の検討には,情報システム部門以外の事務局の職員の参加が必要だから
解説
本文の根拠
冒頭
これに合わせて,各大学の情報システム部門のメンバから成る検討チームを立ち上げ,
表3 財務会計システム
新法人で業務手順を統一し,統一された業務手順に基づいたシステム機能仕様を決定した上で一つの情報システムに統合し,クラウド基盤上に構築する。
〔業務・情報システム統合計画の課題〕
また,A 大学以外の大学の事務局幹部から,“事務局の職員が業務で利用する情報システムの統合は,簡単にできないのではないか”との意見があった。
検討チームは各大学の情報システム部門のメンバだけで構成されている。一方,第2段階の計画では,財務会計や人事給与について新法人で業務手順を統一し,統一された業務手順に基づいてシステム機能仕様を決めることになっている。業務手順を決めるのは,その業務を担っている事務局の職員である。
事務局幹部の「事務局の職員が業務で利用する情報システムの統合は,簡単にできないのではないか」という意見は,業務を知る職員が加わらないまま業務手順の統一を進めることへの懸念と読める。そこで検討体制を見直し,情報システム部門以外の事務局の職員を参加させる。講評によると,事務局幹部から意見があったことを理由に挙げた解答が一部に見られた。意見を受け入れたこと自体ではなく,その背景(業務手順の検討には業務の担当者が要る)を答える。
40字に対し,解答例は「業務手順の検討には,情報システム部門以外の事務局の職員の参加が必要だから」で36字。何の検討に(業務手順)誰が(情報システム部門以外の事務局の職員)必要かを書き,理由なので「〜から」で結ぶ。
採点講評(IPA)
設問3は,正答率は高かったが,大学の事務局幹部から意見があったことを理由に挙げた解答が一部に見られた。意見を単に受け入れるのではなく,その背景を考え,問題解決に向けた取組みを進めることの重要性を理解してほしい。
出典:平成28年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問1(表記を一部改変)
問2 地域医療情報連携システム
地域医療情報連携システムに関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
C 市には,複数の,総合病院,地域の医院・診療所(以下,医療機関という),訪問看護サービス事業者,調剤薬局事業者があり,市民への医療サービスを行っている。
市民は,最寄りの医療機関をかかりつけ医とし,診療を受け,医師が発行した処方箋によって調剤薬局事業者から薬を受け取っている。診療の結果,検査が必要となった場合には,診療を受けた医療機関に紹介状を書いてもらい,検査機器がある総合病院で検査を受ける。検査結果は,検査を受けた総合病院で聞き,診療と投薬を受ける。また,在宅での療養を行っていて,通院による診療を受けることが困難なときには,かかりつけ医による訪問診療と,訪問看護サービス事業者が行うサービスを受けることができる。
〔地域医療情報連携システムの計画〕
C 市では,総合病院と医療機関の連携を図り,市民への医療サービスの向上を図るために,地域医療情報連携システム(以下,連携システムという)の構築を計画した。連携システムは,複数の,総合病院,医療機関,訪問看護サービス事業者及び調剤薬局事業者をネットワークで結び,地域医療に関わる情報共有を行う。連携システムによって,市民は,かかりつけ医で総合病院での検査結果を確認することが可能になり,総合病院への移動や待ち時間の短縮が期待できる。
C 市は,連携システムの構築と運用を行うために法人 D を設立した。C 市は,今回の連携システムの基盤構築と市民への医療サービスの向上につながる機能の開発に,補助金を交付する予定である。構築後の運用に関わる費用と 5 年後に実施予定のシステム更新費用は,法人 D に負担させる計画である。法人 D は,負担する費用を集めるために,連携システムに参加する総合病院,医療機関,訪問看護サービス事業者及び調剤薬局事業者にサービス料金を課す方針である。
また,C 市では,別途,総合病院の中から連携システムの中核となる総合病院(以下,中核総合病院という)を選んでいて,その病院を中心に C 市全体の医療業務の改善を検討する計画がある。そこで,C 市は,総合病院と医療機関の情報共有のために,診療情報を紙ではなく電子的に管理するべく,医療機関への電子カルテの導入を促進するよう,法人 D に指示した。
〔医療関係者へのヒアリング結果〕
法人 D は,連携システムの構築に当たって,医療関係者にヒアリングを行った。
中核総合病院では,今回の連携システムの構築を契機に他の総合病院や医療機関と電子カルテの情報を共有し,蓄積される所見の情報を分析することによる医療業務の改善を検討している。電子カルテは全ての総合病院が導入しているが,幾つかの総合病院では,所見の記述方法を統一するための作業に多くの時間が掛かったとのことである。
医療機関から紹介されて検査を受ける患者数が増加しており,病院内にある検査機器には空きが少なく,検査の日程が遅くなることが多くなった。検査の日程が大幅に遅れると,治療が遅れてしまうことがあるので,医師は,他に検査機器が使えるところがあれば円滑な診療が行える,という問題意識をもっていた。
救急搬送された患者を受け入れるときに,治療中の病名と診療状況(以下,治療中の病状という)や処方された薬をかかりつけ医に確認するが,夜間や休日には連絡が取れず,確認できないこともある。
院内の医療業務の改善のために電子カルテの導入を検討する医療機関は多かった。患者数を増やすために検査機器を導入したものの,知り合いの医療機関から検査依頼を受け付けても検査件数は少なく,検査機器の稼働率が低いとのことであった。
患者に処方された薬の情報を,災害時に共有できる仕組みが欲しいという意見もあった。
在宅の患者への訪問看護サービスには,看護ケア,リハビリテーション,介助などがあり,それぞれ,専門のスタッフ(以下,訪問スタッフという)が担当する。訪問スタッフは,かかりつけ医が作成した訪問計画に従い,週に複数回,訪問する。
今回の連携システムによって訪問スタッフの事務作業が増えないようにしてほしいという要望が,幾つかの訪問看護サービス事業者からあった。訪問スタッフの多くがパートタイム労働者なので,事業者の人件費の負担が増えないようにしたいという理由が多かった。
医師が発行した処方箋に従い,調剤して患者に薬を渡している。ジェネリック医薬品がある場合には,患者の希望を確認した上で,希望があればジェネリック医薬品に変更して渡す。患者に処方された薬の情報を,所属する事業者の業務システムに登録する。
〔訪問計画作成業務の現状と課題〕
患者への訪問看護サービスを行うに当たって,かかりつけ医と担当する訪問スタッフが集まり,かかりつけ医が患者の治療中の病状を確認し,患者への看護ケア,リハビリテーション,介助などのスケジュールを検討して訪問計画を作成する。
訪問スタッフは,最初に訪問する前に,患者の治療中の病状と訪問計画を,所属する事業者の業務システムに登録する。その後は,訪問計画に従って,それぞれの訪問スタッフが患者を訪問し,訪問時に,患者名,訪問日時,訪問スタッフ名,作業内容及び患者の日常の状態を記載した訪問記録を作成し,所属する事業者の業務システムに登録する。
訪問計画は,かかりつけ医と担当する訪問スタッフが集まり,定期的に見直しを行う。見直しに当たっては,訪問スタッフの情報や意見も参考にして,かかりつけ医が患者の治療中の病状と日常の状態を確認する。しかし,かかりつけ医が多忙な場合などは,集まる日程を調整することが難しい。見直し後,訪問計画と治療中の病状の更新情報を,所属する事業者の業務システムに,訪問スタッフが登録する。
〔連携システムの概要〕
連携システムでは,総合病院に導入されている電子カルテの情報と,総合病院で受けた検査の CT,MRI,X 線の画像情報などの検査結果を,医療機関でも参照できるようになる。連携システムの構築に当たっては,厚生労働省が定めた“医療情報システムの安全管理に関するガイドライン”に準拠する。
また,電子カルテと検査結果以外の情報を共有するためのサブシステムとして,医療・事業者情報共有サーバ(以下,共有サーバという)を構築する。この共有サーバでは,医療機関で保有する検査機器と検査の予約状況を管理し,患者に処方された薬の情報を蓄積する。さらに,訪問計画作成業務の改善のために,患者の治療中の病状,訪問計画及び訪問記録を蓄積する。訪問スタッフと調剤薬局事業者の薬剤師には,所属する事業者の業務システムに登録する内容と同じ内容を,共有サーバに登録してもらう計画である。
〔連携システムの運用〕
法人 D は,サービス料金を,運用に関わる費用と参加見込み数から決める予定である。連携システムに参加する総合病院,医療機関,訪問看護サービス事業者,調剤薬局事業者の従事者には,個人情報に関わる誓約書を提出してもらう予定である。患者にも,個人情報の提供に関わる承諾書を提出してもらい,情報提供の承諾を得る予定である。
情報セキュリティ及び個人情報保護に配慮しつつ,医療関係者の支援とヒアリング結果を踏まえて,連携システムに参加する医療機関,訪問看護サービス事業者,調剤薬局事業者を増やすことによって,市民への医療サービス向上に寄与する連携システムの運用を行っていく計画である。
出題趣旨(IPA)
ITストラテジストには,対象となる事業・業務を調査し,個別システム化構想を策定し,実施結果を評価する能力が求められる。本問では,地域医療情報連携システムを題材として,業務の課題を抽出し,解決案を策定する能力を評価する。具体的には,地域医療情報連携システムを活用することによって改善できることの検討,医療・事業者情報共有サーバによる情報の共有と業務負担軽減の検討,地域医療情報連携システムを運用する法人における医療機関などの拡大時への対応とサービス料金の検討について,それぞれ問う。
採点講評(問全体・IPA)
問2では,地域医療情報連携システムについて出題した。題意や状況設定は,おおむね理解されているようであった。
ITストラテジストは,情報を有効活用する能力,及び情報化計画の提案能力を高めてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
20字以内
検査機器を導入している医療機関における効果は何か。20 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔医療関係者へのヒアリング結果〕(1) 総合病院
医療機関から紹介されて検査を受ける患者数が増加しており,病院内にある検査機器には空きが少なく,検査の日程が遅くなることが多くなった。
〔医療関係者へのヒアリング結果〕(2) 医療機関
患者数を増やすために検査機器を導入したものの,知り合いの医療機関から検査依頼を受け付けても検査件数は少なく,検査機器の稼働率が低いとのことであった。
〔連携システムの概要〕
この共有サーバでは,医療機関で保有する検査機器と検査の予約状況を管理し,
検査機器を導入した医療機関は,知り合いの医療機関からの検査依頼しか受けておらず,検査件数が少なく稼働率が低い。一方,総合病院では検査を受ける患者が増えて検査機器に空きが少なく,医師は「他に検査機器が使えるところがあれば円滑な診療が行える」と考えている。
共有サーバは,医療機関で保有する検査機器と検査の予約状況を管理する。連携システムに参加する総合病院や他の医療機関がこの予約状況を見れば,空いている医療機関の検査機器に検査を依頼できる。検査の依頼が増えるので,検査機器を導入している医療機関にとっては稼働率が上がる。講評によると正答率は高く,稼働率が低いという状況が連携システムで改善することをよく理解した解答が多かった。
20字に対し,解答例は「検査機器の稼働率が向上する。」で14字。本文の課題「検査機器の稼働率が低い」を裏返した形で書く。
採点講評(IPA)
設問1(1)では,検査機器を導入している医療機関における,連携システムの効果について解答を求めた。正答率は高く,検査機器の稼働率が低いという医療機関の状況について,連携システムによって改善が見込めることをよく理解した解答が多く見られた。
設問1(2)
解答欄2つ
総合病院における救急搬送の受入れ時に確認できる情報を,二つ答えよ。
解説
本文の根拠
〔医療関係者へのヒアリング結果〕(1) 総合病院
救急搬送された患者を受け入れるときに,治療中の病名と診療状況(以下,治療中の病状という)や処方された薬をかかりつけ医に確認するが,夜間や休日には連絡が取れず,確認できないこともある。
〔連携システムの概要〕
患者に処方された薬の情報を蓄積する。さらに,訪問計画作成業務の改善のために,患者の治療中の病状,訪問計画及び訪問記録を蓄積する。
総合病院は救急搬送された患者を受け入れるとき,「治療中の病状」と「処方された薬」をかかりつけ医に確認しているが,夜間や休日には連絡が取れず確認できないことがある。
連携システムでは,電子カルテの情報が共有され,共有サーバには患者に処方された薬の情報と患者の治療中の病状が蓄積される。かかりつけ医に連絡が取れない夜間や休日でも,総合病院は連携システムからこの二つを確認できる。本文が「以下,治療中の病状という」と定義している語をそのまま使う。
字数の制限は無い。解答例は①「治療中の病状」,②「処方された薬」で,どちらも本文の語句そのままである。「治療中の病名と診療状況」と書いても中身は同じだが,定義された呼び名で書くほうが確実である。
設問2(1)
40字以内
かかりつけ医が訪問計画を見直す際のメリットは何か。40 字以内で述べよ。
解答例
担当する訪問スタッフが集まらなくても,患者の日常の状態を確認できる。
解説
本文の根拠
〔訪問計画作成業務の現状と課題〕
訪問時に,患者名,訪問日時,訪問スタッフ名,作業内容及び患者の日常の状態を記載した訪問記録を作成し,所属する事業者の業務システムに登録する。
〔訪問計画作成業務の現状と課題〕
訪問計画は,かかりつけ医と担当する訪問スタッフが集まり,定期的に見直しを行う。見直しに当たっては,訪問スタッフの情報や意見も参考にして,かかりつけ医が患者の治療中の病状と日常の状態を確認する。しかし,かかりつけ医が多忙な場合などは,集まる日程を調整することが難しい。
〔連携システムの概要〕
さらに,訪問計画作成業務の改善のために,患者の治療中の病状,訪問計画及び訪問記録を蓄積する。
訪問計画の見直しでは,かかりつけ医と担当する訪問スタッフが集まり,かかりつけ医が患者の治療中の病状と日常の状態を確認する。しかし,かかりつけ医が多忙な場合などは集まる日程の調整が難しい。
患者の日常の状態は,訪問スタッフが訪問時に作成する訪問記録に記載されている。共有サーバに訪問記録が蓄積されれば,かかりつけ医は訪問スタッフと集まらなくても,共有サーバの訪問記録から患者の日常の状態を確認できる。これが,設問が「共有サーバにおける訪問記録の利用」と限っている理由である。
40字に対し,解答例は「担当する訪問スタッフが集まらなくても,患者の日常の状態を確認できる。」で34字。現状の課題(集まる日程の調整が難しい)が解消されることと,訪問記録で確認できるもの(患者の日常の状態)の二つを書く。
設問2(2)
30字以内
訪問看護サービス事業者の訪問スタッフの負担を軽減するために必要な機能は何か。30 字以内で述べよ。
解答例
事業者が蓄積する訪問記録を共有サーバに反映する機能
解説
本文の根拠
〔医療関係者へのヒアリング結果〕(3) 訪問看護サービス事業者
今回の連携システムによって訪問スタッフの事務作業が増えないようにしてほしいという要望が,幾つかの訪問看護サービス事業者からあった。
〔訪問計画作成業務の現状と課題〕
訪問時に,患者名,訪問日時,訪問スタッフ名,作業内容及び患者の日常の状態を記載した訪問記録を作成し,所属する事業者の業務システムに登録する。
〔連携システムの概要〕
訪問スタッフと調剤薬局事業者の薬剤師には,所属する事業者の業務システムに登録する内容と同じ内容を,共有サーバに登録してもらう計画である。
訪問スタッフは今も訪問記録を作成して,所属する事業者の業務システムに登録している。連携システムの計画では,それと同じ内容を共有サーバにも登録してもらうことになっており,同じ記録を二度登録する事務作業が増える。事業者からは,事務作業が増えないようにしてほしいという要望が出ている。
共有サーバに登録する内容は業務システムに登録する内容と同じなので,事業者の業務システムに蓄積された訪問記録を共有サーバに反映する機能があれば,訪問スタッフは業務システムに一度登録するだけで済む。講評によると,訪問スタッフがモバイル端末で訪問先から共有サーバに登録できるようにするという解答が多かった。それでは登録の場所が変わるだけで二重登録は残る。現在運用している業務システムの情報を活用する点が要点である。
30字に対し,解答例は「事業者が蓄積する訪問記録を共有サーバに反映する機能」で25字。反映元(事業者が蓄積する訪問記録)と反映先(共有サーバ)を書き,「〜機能」で結ぶ。
採点講評(IPA)
設問2(2)では,訪問スタッフの負担を軽減するために必要な機能について解答を求めたが,共有サーバへの訪問記録の登録を,訪問スタッフがモバイル端末で訪問先から実施できるようにするという解答が多かった。現在運用している業務システムの情報を活用することによって,訪問スタッフの負担を軽減できることに気付いてほしかった。
設問3(1)
解答欄2つ
連携システムに参加する医療機関の電子カルテの導入に当たって,C 市全体の医療業務の改善のために行うべき検討内容は何か。また,それを推進するための留意点は何か。それぞれ 20 字以内で述べよ。
解説
本文の根拠
〔地域医療情報連携システムの計画〕
また,C 市では,別途,総合病院の中から連携システムの中核となる総合病院(以下,中核総合病院という)を選んでいて,その病院を中心に C 市全体の医療業務の改善を検討する計画がある。
〔医療関係者へのヒアリング結果〕(1) 総合病院
中核総合病院では,今回の連携システムの構築を契機に他の総合病院や医療機関と電子カルテの情報を共有し,蓄積される所見の情報を分析することによる医療業務の改善を検討している。電子カルテは全ての総合病院が導入しているが,幾つかの総合病院では,所見の記述方法を統一するための作業に多くの時間が掛かったとのことである。
〔連携システムの運用〕
情報セキュリティ及び個人情報保護に配慮しつつ,医療関係者の支援とヒアリング結果を踏まえて,
検討内容:中核総合病院は,電子カルテの情報を共有し,蓄積される所見の情報を分析して医療業務を改善しようとしている。所見の情報を分析するには,記述方法がそろっていなければならない。総合病院でも所見の記述方法の統一に多くの時間が掛かったので,これから電子カルテを導入する医療機関では,導入に当たって所見の記述方法の統一を検討しておく必要がある。
留意点:C 市は中核総合病院を中心に C 市全体の医療業務の改善を検討する計画で,所見の情報を分析するのも中核総合病院である。統一する記述方法は中核総合病院の考えに沿っている必要があり,本文も「医療関係者の支援」を踏まえて運用するとしている。そこで,推進に当たっては中核総合病院の支援を得ることに留意する。
20字ずつに対し,解答例は検討内容が「所見の記述方法の統一」で10字,留意点が「中核総合病院の支援を得ること」で14字。検討内容は本文の「所見の記述方法を統一する」をそのまま使い,留意点は誰の支援か(中核総合病院)を明示する。
設問3(2)
20字以内
サービス料金の検討において,更に考慮すべき情報を,20 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔地域医療情報連携システムの計画〕
構築後の運用に関わる費用と 5 年後に実施予定のシステム更新費用は,法人 D に負担させる計画である。法人 D は,負担する費用を集めるために,連携システムに参加する総合病院,医療機関,訪問看護サービス事業者及び調剤薬局事業者にサービス料金を課す方針である。
〔連携システムの運用〕
法人 D は,サービス料金を,運用に関わる費用と参加見込み数から決める予定である。
法人 D が負担するのは,構築後の運用に関わる費用と,5年後に実施予定のシステム更新費用の二つである。サービス料金は,この負担する費用を集めるために参加者に課す。
ところが,法人 D はサービス料金を「運用に関わる費用と参加見込み数から決める予定」で,もう一つの負担である5年後のシステム更新費用が入っていない。C 市の補助金は基盤構築と機能開発に対するもので,更新費用には充てられない。料金に織り込んでおかないと,5年後に更新の費用が集まっていないことになる。
20字に対し,解答例は「5年後に実施予定のシステム更新費用」で17字。本文の語句をそのまま使い,運用費用と区別できるよう「5年後に実施予定の」を付ける。
出典:平成28年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問2(表記を一部改変)
問3 大型装置メーカの業務プロセス改革
大型装置メーカの業務プロセス改革に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
E 社は,焼却炉など環境関連の大型装置の製造を得意とする装置メーカであり,営業部門,工務部門,設計部門,調達部門,製造部門,保守部門の各部門がある。
〔E 社の業務プロセスの状況と課題〕
E 社の業務プロセスの状況と課題は次のとおりである。
営業部門は,収集した顧客情報を基に顧客に対して装置の改修工事や新設工事の提案を行っているが,顧客の改修工事や新設工事の時期についての十分な情報を得られず,他社に先行されて失注する場合も多い。顧客の今後の設備投資計画は,装置に関する問合せや改修に対する見積依頼に関係していることが多い。営業部門は,問合せ窓口を一本化することによって顧客情報を効率的に収集できないか検討しているが,各部門に分散している顧客の装置に関する情報を集約するための具体策を策定できていない。 顧客から装置の新設工事を受注した場合は,工務部門は製造番号(以下,製番という)を設定し,製造指図書を発行して,設計部門に装置の設計を依頼する。その依頼を受けて,設計部門は顧客との打合せに基づいて設置する装置の設計を完了させる。 設計完了後は,工務部門は装置を構成する機器ごとに機器番号を採り,どの機器を内製するか,どの機器を外部から調達するかを決める。装置の製番と機器番号の関連付けは,製造指図書に添付している機器の一覧表に記載している。 外部から機器を調達する場合は,工務部門は調達部門に調達要求を出し,調達部門が調達先を選定して注文書を発行する。機器を内製する場合は,工務部門は製造部門に製造を依頼する。機器の調達や製造の状況は機器番号で管理している。 工務部門は,内製する機器の製造日程と外部から調達する機器の納品日程を勘案して顧客への装置の設置日程を策定し,設置工事を行う。 装置の設置が完了し,保守契約が締結され,装置が稼働した後の顧客対応は保守部門へ引き継がれる。しかし,工務部門の設置工事が納期ぎりぎりになる場合が多く,装置の稼働開始時期が変更されることもあり,保守の開始予定日が保守部門に正確に伝えられないこともある。その場合,保守契約の締結が遅れ,E 社の保守サービスが提供できず,顧客からの対応依頼にタイムリに応えられないこととなり,顧客からクレームを受ける場合がある。 〔顧客の課題と要望〕
最近では,多くの顧客が,既存の装置を長期間,継続使用する場合が多い。また,長年保守を担当してきた顧客の保守要員が,定年で退職するケースが増えてきている。その結果,かなり前に設置した装置については,顧客側では,保守を行うために必要な装置の図面や使っている機器の仕様が把握できず,E 社の保守部門への装置に関する問合せが多くなっている。
このような状況から,多くの顧客にとって,故障による装置の停止のリスクを,どのように回避するかが大きな課題となっている。その対策として,機器の交換時期を耐用年数よりも短めに設定して,定期保守の時期に合わせて,前倒しで交換するなどのリスク対応策を実施している。E 社は,この課題に対応した新しい保守サービスの提案ができれば,収益を拡大できると考えている。
顧客の事業規模によって保守への対応状況は異なっている。中堅の顧客では,保守に掛けるコストの削減が課題となっており,長年保守を担当してきた保守要員が退職する場合も要員の補充がなく,技術やノウハウの継承が十分にできない場合が多い。その結果,残された保守要員の個々人の努力に依存せざるを得ない状況であり,装置の維持に問題が発生する懸念が高まっている。
複数の工場をもち,それぞれに保守要員を分散して配置しているような大手の顧客においては,分散している装置の保守状況に関する情報を一元管理できれば,保守要員を有効に活用でき,効率的な保守を行えると考えている。しかし,企業合併で拡大してきた大手企業のような場合,これまで各工場の自主運営に任せてきたので,情報の一元管理をどのように進めればよいかが決められず,問題となっている。
顧客の中には,このような問題への対応を,保守の技術やノウハウをもち,顧客の保守情報をある程度把握している E 社のような装置メーカに依頼したいと考えている企業も多い。E 社としても収益拡大の機会として積極的に対応していきたいと考えている。
E 社は,顧客の工場に他の複数の装置メーカが設置した装置についても,同様の問題が発生していると考えている。顧客に対して,顧客の要求に応える総合的な保守サービスを提供できれば,他の装置メーカが設置した装置についての保守業務を受託することができ,収益の拡大が実現できると考えている。
〔情報技術の活用〕
近年,機器の情報化が急速に進んでいる。E 社が扱う新型の制御機器では,機器内の圧力など運転状況のデータを測定し,その値に応じて自律的に制御する機器が多くなっている。E 社は,それらの運転状況のデータを長期間蓄積し,時系列的な変化の状況を分析することによって,装置内の故障発生機器や故障発生時期を予測して,予防的な改修工事を行う新しい保守サービスの提案が可能と考えている。そのような新しい保守サービスの提案を行うためには,E 社として必要なシステムを整備する必要がある。また,稼働している機器を,データの蓄積が可能な新型の機器に交換することを納得してもらうために,顧客に対し,新しい保守サービスで得られるメリットを提示する必要があると考えている。
〔E 社のアクションプラン〕
このような状況に対応するために,E 社は,今期の事業運営の基本方針を次のとおり策定した。
保守部門に顧客情報を集約し,顧客に対する一本化した問合せ・対応の窓口とする。保守部門は,顧客に対して保守サービスの提供を行うとともに,顧客の問合せや見積依頼の情報の一元的な把握と,設備投資計画につながる情報の収集に努める。保守部門は,E 社内での顧客情報の発信の起点として各部門との連携を強化し,現状の業務プロセスの課題を解決する。 “保守が最上流”という考えに基づき,様々な顧客の課題に対応した総合的な保守サービスをメニュー化し,新たな受注を獲得する。 情報技術を活用した新しい保守サービスの提案を行うなどの新しいビジネスモデルを導入し,収益の拡大を図る。 これらの基本方針の下,E 社はアクションプラン(以下,AP という)を次のとおり設定した。
AP-1:顧客満足度の向上と E 社の収益拡大を図るために,顧客情報管理システムの構築によって E 社内の情報の連携を強化する。 顧客情報管理システムを,E 社各部門を横断した共通の情報基盤として整備する。 保守部門と営業部門の間で情報共有を行い,営業部門が顧客にタイムリな提案を行い,新規案件の獲得を図ることに貢献する。 顧客に対し,タイムリな保守サービスを提供するために,工務部門がもつ情報を保守部門が参照できるようにする。 AP-2:E 社の収益拡大を図るために,サービス範囲を拡大する。 顧客の事業規模に応じた適切な保守サービスのメニューを提供する。 保守業務全般をカバーする総合的な保守サービスのメニューを提供し,他の装置メーカが設置した装置についての保守サービスを提供できる体制を整える。 AP-3:顧客に対し,新しい保守サービスで得られるメリットを提示し,新型の機器への交換を積極的に提案していく。
出題趣旨(IPA)
ITストラテジストには,情報技術を活用して業務プロセスを改革し,既存のサービスの付加価値を向上させ,収益拡大に貢献する能力が求められる。本問では,装置メーカの業務プロセス改革を題材として,現状の課題から,業務プロセス改革の方針を設定し,アクションプランに落とし込み,新たな業務プロセス,情報システムの設計を企画する能力を評価する。具体的には,現状の業務プロセスの課題抽出能力,課題を構成する要素を特定するための情報分析能力,課題を解決するための問題解決能力を問う。
採点講評(問全体・IPA)
問3では,大型装置メーカの業務プロセス改革について出題した。題意や状況設定は,おおむね理解されているようであった。
ITストラテジストは,事業のアクションプランを実現するためのIT活用の提案能力を高めてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
15字以内
AP-1 を実施する上で,現在は分散しているが,共通の情報基盤上に集約すべき情報は何か。15 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔E 社の業務プロセスの状況と課題〕
営業部門は,問合せ窓口を一本化することによって顧客情報を効率的に収集できないか検討しているが,各部門に分散している顧客の装置に関する情報を集約するための具体策を策定できていない。
〔E 社のアクションプラン〕AP-1
顧客情報管理システムを,E 社各部門を横断した共通の情報基盤として整備する。
AP-1 では,顧客情報管理システムを E 社各部門を横断した共通の情報基盤として整備する。集約すべきものは,現状の課題として本文に書かれている。営業部門は問合せ窓口の一本化を検討しているが,「各部門に分散している顧客の装置に関する情報」を集約する具体策を策定できていない。
工務部門は製番と機器番号,調達部門や製造部門は機器の調達・製造の状況,保守部門は稼働後の対応というように,顧客の装置の情報は部門ごとに分かれて管理されている。これを共通の情報基盤に集めれば,保守部門を窓口として各部門が同じ情報を使える。設問の「現在は分散している」は,本文の「各部門に分散している」を指している。
15字に対し,解答例は「顧客の装置に関する情報」で11字。本文の語句をそのまま使う。「顧客情報」だけでは装置の情報であることが抜ける。
設問1(2)
30字以内
営業部門がタイムリな提案を行うために,保守部門と営業部門との間で共有すべき情報は何か。30 字以内で述べよ。
解答例(2通り)
顧客の今後の設備投資計画 顧客からの装置に関する問合せや改修に対する見積依頼の内容
解説
本文の根拠
〔E 社の業務プロセスの状況と課題〕
営業部門は,収集した顧客情報を基に顧客に対して装置の改修工事や新設工事の提案を行っているが,顧客の改修工事や新設工事の時期についての十分な情報を得られず,他社に先行されて失注する場合も多い。顧客の今後の設備投資計画は,装置に関する問合せや改修に対する見積依頼に関係していることが多い。
〔E 社のアクションプラン〕
保守部門は,顧客に対して保守サービスの提供を行うとともに,顧客の問合せや見積依頼の情報の一元的な把握と,設備投資計画につながる情報の収集に努める。
営業部門は,顧客の改修工事や新設工事の時期について十分な情報を得られず,他社に先行されて失注することが多い。工事の時期を知る手掛かりは,顧客の今後の設備投資計画である。本文は,設備投資計画が「装置に関する問合せや改修に対する見積依頼に関係していることが多い」としている。
基本方針では,保守部門が顧客の問合せ・対応の窓口になり,問合せや見積依頼の情報を一元的に把握し,設備投資計画につながる情報を集める。保守部門がつかんだ設備投資計画,又はその手掛かりになる問合せや見積依頼の内容を営業部門と共有すれば,営業部門は他社より先に提案できる。解答例はこの二つを別解として示しており,どちらか一方を書けばよい。
30字に対し,解答例は「顧客の今後の設備投資計画」で12字,別解が「顧客からの装置に関する問合せや改修に対する見積依頼の内容」で28字。どちらも本文の語句をそのまま使っている。
設問1(3)
15字以内
タイムリな保守サービスを提供するために,保守部門が工務部門から入手すべき情報は何か。15 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔E 社の業務プロセスの状況と課題〕
しかし,工務部門の設置工事が納期ぎりぎりになる場合が多く,装置の稼働開始時期が変更されることもあり,保守の開始予定日が保守部門に正確に伝えられないこともある。その場合,保守契約の締結が遅れ,E 社の保守サービスが提供できず,顧客からの対応依頼にタイムリに応えられないこととなり,顧客からクレームを受ける場合がある。
〔E 社のアクションプラン〕AP-1
顧客に対し,タイムリな保守サービスを提供するために,工務部門がもつ情報を保守部門が参照できるようにする。
保守サービスがタイムリに提供できない原因は,工務部門の設置工事が納期ぎりぎりになって装置の稼働開始時期が変わることがあり,保守の開始予定日が保守部門に正確に伝わらないことである。その結果,保守契約の締結が遅れ,顧客の対応依頼に応えられずクレームを受けている。
設置工事を行い,稼働開始時期の変更を知っているのは工務部門である。AP-1 で工務部門がもつ情報を保守部門が参照できるようにすれば,保守部門は最新の稼働開始時期から保守の開始予定日を把握し,保守契約を遅れずに締結できる。
15字に対し,解答例は「装置の稼働開始時期」で9字。保守の開始予定日は稼働開始時期から決まるので,工務部門から入手するのは元になる稼働開始時期である。
設問2(1)
20字以内
中堅の顧客に提供すべき保守サービスのメニューはどのような内容か。20 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔顧客の課題と要望〕
中堅の顧客では,保守に掛けるコストの削減が課題となっており,長年保守を担当してきた保守要員が退職する場合も要員の補充がなく,技術やノウハウの継承が十分にできない場合が多い。その結果,残された保守要員の個々人の努力に依存せざるを得ない状況であり,装置の維持に問題が発生する懸念が高まっている。
〔顧客の課題と要望〕
顧客の中には,このような問題への対応を,保守の技術やノウハウをもち,顧客の保守情報をある程度把握している E 社のような装置メーカに依頼したいと考えている企業も多い。
〔E 社のアクションプラン〕AP-2
顧客の事業規模に応じた適切な保守サービスのメニューを提供する。
中堅の顧客は,保守要員が退職しても補充がなく,技術やノウハウの継承が十分にできない。残った保守要員の個々人の努力に頼っており,装置の維持に問題が起きる懸念が高まっている。
こうした顧客は,保守の技術やノウハウをもつ E 社のような装置メーカに対応を依頼したいと考えている。AP-2 は顧客の事業規模に応じた保守サービスのメニューを提供するので,中堅の顧客には技術やノウハウの継承を支援するメニューが合う。講評によると,単に“機器の図面を提供する”という解答が多かった。図面は情報の一部にすぎず,中堅の顧客の問題は技術やノウハウの継承ができないことなので,それを支援することを書く。
20字に対し,解答例は「技術やノウハウの継承を支援すること」で17字。本文の課題「技術やノウハウの継承が十分にできない」を,E 社が支援する形に言い換える。
採点講評(IPA)
設問2(1)では,単に“機器の図面を提供する”という解答が多かった。中堅の顧客では,保守要員が退職しても補充がなく,技術やノウハウの継承が十分にできないという状況を理解し,技術やノウハウの継承を支援するサービスが必要とされていることに気付いてほしかった。
設問2(2)
25字以内
大手の顧客に提供すべき保守サービスのメニューはどのような内容か。25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔顧客の課題と要望〕
複数の工場をもち,それぞれに保守要員を分散して配置しているような大手の顧客においては,分散している装置の保守状況に関する情報を一元管理できれば,保守要員を有効に活用でき,効率的な保守を行えると考えている。しかし,企業合併で拡大してきた大手企業のような場合,これまで各工場の自主運営に任せてきたので,情報の一元管理をどのように進めればよいかが決められず,問題となっている。
大手の顧客は,複数の工場に保守要員を分散して配置しており,分散している装置の保守状況に関する情報を一元管理できれば,保守要員を有効に活用して効率的な保守ができると考えている。しかし,各工場の自主運営に任せてきたので,一元管理をどう進めればよいかを決められずにいる。
顧客が自ら進められない一元管理を,保守の技術やノウハウをもち顧客の保守情報をある程度把握している E 社が引き受ければ,大手の顧客の要望に応えられる。中堅の顧客(技術やノウハウの継承)とは課題が違うので,事業規模に応じたメニューとして分けて考える。
25字に対し,解答例は「装置の保守状況に関する情報を一元管理すること」で22字。本文の「分散している装置の保守状況に関する情報を一元管理」をほぼそのまま使う。
設問2(3)
30字以内
他の装置メーカの装置を保守するために E 社が顧客から得るべき情報は何か。30 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔顧客の課題と要望〕
その結果,かなり前に設置した装置については,顧客側では,保守を行うために必要な装置の図面や使っている機器の仕様が把握できず,E 社の保守部門への装置に関する問合せが多くなっている。
〔顧客の課題と要望〕
E 社は,顧客の工場に他の複数の装置メーカが設置した装置についても,同様の問題が発生していると考えている。
〔E 社のアクションプラン〕AP-2
保守業務全般をカバーする総合的な保守サービスのメニューを提供し,他の装置メーカが設置した装置についての保守サービスを提供できる体制を整える。
保守を行うためには「装置の図面や使っている機器の仕様」が必要である。E 社が設置した装置なら E 社が図面や仕様をもっているが,他の装置メーカが設置した装置については E 社には情報がない。
AP-2 では,他の装置メーカが設置した装置についても保守サービスを提供できる体制を整える。そのためには,他の装置メーカの装置の図面や使っている機器の仕様を顧客から得る必要がある。顧客側でも図面や仕様が把握できなくなっている装置があるので,保守業務を受託する際に顧客の手元にある情報を集めておくことが要る。
30字に対し,解答例は「他の装置メーカの装置の図面や使っている機器の仕様」で24字。本文の「装置の図面や使っている機器の仕様」に,対象(他の装置メーカの装置)を付ける。
設問3(1)
35字以内
E 社が新しい保守サービスを提案するために,必要なシステムの機能は何か。35 字以内で述べよ。
解答例
運転状況のデータを蓄積・分析して故障発生箇所や時期を予測する機能
解説
本文の根拠
〔情報技術の活用〕
E 社が扱う新型の制御機器では,機器内の圧力など運転状況のデータを測定し,その値に応じて自律的に制御する機器が多くなっている。
〔情報技術の活用〕
E 社は,それらの運転状況のデータを長期間蓄積し,時系列的な変化の状況を分析することによって,装置内の故障発生機器や故障発生時期を予測して,予防的な改修工事を行う新しい保守サービスの提案が可能と考えている。そのような新しい保守サービスの提案を行うためには,E 社として必要なシステムを整備する必要がある。
新しい保守サービスは,新型の制御機器が測定する運転状況のデータを長期間蓄積し,時系列的な変化の状況を分析して,装置内の故障発生機器や故障発生時期を予測し,予防的な改修工事を行うものである。本文は,この提案のために「E 社として必要なシステムを整備する必要がある」としている。
したがって必要なシステムの機能は,運転状況のデータの蓄積と分析,それに基づく故障の予測である。講評によると,“装置の情報を登録する機能”という解答が多かった。登録だけでは予測はできず,“運転状況のデータを長期間蓄積し,時系列的な変化の状況を分析する”機能が必要であることを読み取ってほしかったとしている。
35字に対し,解答例は「運転状況のデータを蓄積・分析して故障発生箇所や時期を予測する機能」で32字(本文の「故障発生機器」を解答例は「故障発生箇所」と書いている)。何を(運転状況のデータ)どうして(蓄積・分析)何を得るか(故障の箇所や時期の予測)を一続きに書く。
採点講評(IPA)
設問3(1)では,“装置の情報を登録する機能”という解答が多かった。E社が新しい保守サービスを提案するためには,“運転状況のデータを長期間蓄積し,時系列的な変化の状況を分析する”機能が必要であることを読み取ってほしかった。
設問3(2)
30字以内
E 社が顧客に対して新型の機器への交換を納得してもらうために必要な,顧客に提示すべき,新しい保守サービスで得られるメリットとは何か。30 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔顧客の課題と要望〕
このような状況から,多くの顧客にとって,故障による装置の停止のリスクを,どのように回避するかが大きな課題となっている。その対策として,機器の交換時期を耐用年数よりも短めに設定して,定期保守の時期に合わせて,前倒しで交換するなどのリスク対応策を実施している。
〔情報技術の活用〕
また,稼働している機器を,データの蓄積が可能な新型の機器に交換することを納得してもらうために,顧客に対し,新しい保守サービスで得られるメリットを提示する必要があると考えている。
多くの顧客にとって大きな課題は,故障による装置の停止のリスクをどう回避するかである。今は機器の交換時期を耐用年数より短めにして前倒しで交換するなどの対策を取っている。
新しい保守サービスは,故障発生機器や故障発生時期を予測して予防的な改修工事を行うので,顧客の課題である故障による装置の停止のリスクを回避できる。顧客に新型の機器への交換を納得してもらうには,顧客自身の課題が解決されることをメリットとして示すのが効果的である。E 社の側の利点(収益拡大)ではなく,顧客から見たメリットを書く。
30字に対し,解答例は「故障による装置の停止のリスクを回避できること」で22字。本文の課題「故障による装置の停止のリスクを,どのように回避するか」をそのまま使い,回避できることをメリットとして書く。
出典:平成28年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問3(表記を一部改変)
問4 漏水検知システムの企画
漏水検知システムの企画に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
F 社は,家屋,ビルなどに設置される上水道の流量メータを主力製品とする計測機器メーカである。マイコンと無線技術を用いた自動検針機能付き流量メータへの更新で順調に業績を伸ばしてきたが,更新が一巡して今後は業績悪化が懸念された。そこで F 社は,これからの時代に売上が見込める新製品を開発する方針を決めた。
これまで F 社は,他社が開発した機能,装置の情報を活用した事業の経験はなく,専ら自社の計測機器で計測したデータを活用する製品を製造してきた。また,F 社は自動検針技術を基にグローバルビジネスの展開も検討したが,上水道を取り巻く環境,使用可能な無線規格などが国ごとに異なり,それぞれの国向けの設計変更が必要なことが分かった。
F 社の IT ストラテジストである G 氏は,自社で保有している情報と技術を整理して,今後の売上向上が見込める新製品を企画することにした。さらに,計測機器以外の市場,上水道以外の市場,グローバルな市場への展開も検討することとした。
〔日本の社会インフラストラクチャの状況と行政の方針〕
高速道路,トンネル,水道管をはじめとする日本の社会インフラストラクチャ(以下,社会インフラという)は高度成長期に建設され,長年経過したものが多く,これらの劣化が大きな社会リスクとなっている。
社会インフラの更新には膨大な費用が掛かるので,合理的に維持・管理し,安全を確保しつつ長期間使用する技術が求められている。また,行政からは,社会インフラの劣化問題に対する IT を活用した対策として次の方針が示されている。
① 社会インフラの劣化状況を示す情報の収集に当たっては,センサ,IT などの新技術を活用し,情報の高度化,作業の省力化及びコストの縮減を推進する。 ② 得られた情報は,社会インフラを管理・所管する者同士で共有できるよう,情報の活用を図る。 ③ 情報の蓄積に当たっては,データの電子化,フォーマットの統一によって,社会インフラの 3 次元の形状データ(以下,3 次元情報という)・属性を分かりやすい形式で地理情報システムによって管理し,容易に活用できるよう検討する。 高速道路の橋脚,トンネル内部は,通過車両,地震による振動によって劣化が短期間に進むことがある。劣化による崩落が発生すると人身事故に至る場合があるので,構造物のはく離,損壊に至る前に異常を検出する必要がある。しかし,高速道路の管理・運営を行う会社(以下,高速会社という)では,検査を頻繁に実施した場合の検査費用の増大が問題となっている。
地下に埋設されている水道管は,掘削せずに検査することが望まれている。水道管は,破損すると加圧された水が噴き出し,管周辺の土砂を流し,道路陥没,家屋・ビル倒壊など大規模な事故にまで至るので,初期段階での処置が重要である。現在は,耐震化・長寿命化が施された水道管への更新が進められている。また,水道管に一定間隔に設置される制水弁(以下,バルブという)は,10 年ごとの定期点検が必要とされている。
水道水が浄水場から家屋,ビルなどに届くまでに水道管から漏れる水量の割合を漏水率といい,世界各国の漏水率は,アジア主要都市で 30%前後,世界の先進国でも 10%前後である。これに対し,日本の漏水率は全国平均で 5%であり,日本の上水道は世界的に優れた水準にあるといえる。
〔水道管漏水復旧工事の実情〕
水道管は,道路の下に埋設されていることが多く,水道管漏水復旧工事(以下,復旧工事という)では道路を一部又は完全に通行止めとする必要がある。このため復旧工事は短時間に済ませることが要求される。また,ガス管,通信線管などと輻輳して埋設されていることも多いので,工事は慎重に行う必要がある。
各埋設管の配置を示す正確な 3 次元情報があると,復旧工事が効率よく進められる。しかし,各埋設管の位置情報は,それぞれ異なるデータ形式のデータベースで管理・所管されているので,配置の把握が困難である。このため,重機での工事は地表面のアスファルト剝がしと浅い掘削までにとどめ,残りは工事員が手掘りしているのが実情であり,重機メーカにとっては,自動で工事をする技術開発の障壁となっている。
〔F 社の保有技術〕
F 社は,漏水の復旧工事前に,漏水箇所周辺の水道管に複数の振動センサを一時的に設置して,隣り合った振動センサから得られた二つのデータを解析することによって漏水箇所を特定できる復旧工事箇所特定システムを製品化している。
F 社の技術部門では,復旧工事箇所特定システムの開発過程で,水道管のゆがみ・割れの進行と隣り合った振動センサ信号の変化には関連性がみられることを発見している。F 社はこの振動センサ信号の変化を基に,通過車両,地震などによって発生する構造物のゆがみ・割れといった,破壊に至る前の変化を検出する技術まで範囲を広げた特許を出願している。
〔新システムの企画〕
G 氏は,整理した情報と F 社の保有技術を基に,水道管の状況を常時監視する新しい漏水検知システムを開発することを決め,行政の方針を踏まえた上で,システムアーキテクトの H 氏に次の①〜③を条件としたシステム化の検討を依頼した。
① 埋設された水道管に振動センサを設置し,破壊に至る前の変化を常時監視する。 ② 常時監視の結果を分析し,修繕が必要となった箇所を特定する。 ③ 復旧工事が効率よく進められるように,水道管に輻輳して設置された他の埋設管の配置を確認できるようにする。 〔システム化の検討〕
H 氏は,G 氏から依頼されたシステム化の検討結果を次のとおり報告した。
① 振動センサを組み込んだ新しい流量メータ製品を開発する。 ② 水道管の各箇所に磁石又は接着剤で設置可能な,バッテリで 10 年稼働する振動センサユニットも,新規に開発する。 ③ 流量メータ及び振動センサユニットで計測されたデータは,自動検針機能付き流量メータで培った無線技術を用いて F 社のサーバに収集し,相関分析をする。 ④ 工事区域の埋設管の位置情報を,F 社のデータベースにデータ形式を変換して登録することによって,各埋設管の配置を示す正確な 3 次元情報を,地理情報システム上で確認できるようにする。 ⑤ 地理情報システムは,実績がある他社のソフトウェア製品を活用して実現する。 G 氏は,H 氏の報告を受け,先々の保守コストを考慮して,振動センサユニットの設置箇所をバルブに限定すべきと考えた。また,水道管を新設・更新する場合を考慮して,大手バルブメーカの J 社に提携を打診することにした。
さらに G 氏は,H 氏の報告内容に対してリスク分析を行い,分析結果を踏まえて,地理情報システムを活用したサービス事業の実績をもつ会社のリストアップをすることとした。
〔新システムの様々な市場展開〕
G 氏は,H 氏の報告を受け,次の検討を H 氏に依頼した。
① 流量メータ及び振動センサユニットの無線通信方式を容易に変更できること ② 高速会社に,システム化に向けた共同開発を提案すること ③ 重機メーカに,データを活用した技術の共同開発を提案すること
出題趣旨(IPA)
ITストラテジストには,社会の状況と自社の保有技術を基に,将来性を見込める事業を想定した新製品,新システムを企画する能力,さらにはどのような市場展開を狙うかといった戦略を立案する能力が求められる。本問では,計測機器メーカにおける新システムの企画を題材に,社会の状況と自社の保有技術を整理する能力,それを基に新製品と新システムを企画する能力,有効なシステム化方法を検討する能力,戦略的な市場展開を企画・立案する能力を問う。
採点講評(問全体・IPA)
問4では,漏水検知システムの企画について出題した。題意や状況設定は,おおむね理解されているようであった。
ITストラテジストは,社会状況,技術動向及び自社の保有技術を基に事業戦略を立て,推進する能力を高めてほしい。
設問と解答例
設問1
35字以内
〔新システムの企画〕について,G 氏が H 氏にシステム化の検討を依頼するに当たって,この段階では検討から外した行政の方針を,35 字以内で述べよ。
解答例
得られた情報は,社会インフラを管理・所管する者同士で共有できる。
解説
本文の根拠
〔日本の社会インフラストラクチャの状況と行政の方針〕
① 社会インフラの劣化状況を示す情報の収集に当たっては,センサ,IT などの新技術を活用し,情報の高度化,作業の省力化及びコストの縮減を推進する。
〔日本の社会インフラストラクチャの状況と行政の方針〕
② 得られた情報は,社会インフラを管理・所管する者同士で共有できるよう,情報の活用を図る。
〔日本の社会インフラストラクチャの状況と行政の方針〕
③ 情報の蓄積に当たっては,データの電子化,フォーマットの統一によって,社会インフラの 3 次元の形状データ(以下,3 次元情報という)・属性を分かりやすい形式で地理情報システムによって管理し,容易に活用できるよう検討する。
〔新システムの企画〕
① 埋設された水道管に振動センサを設置し,破壊に至る前の変化を常時監視する。
〔新システムの企画〕
③ 復旧工事が効率よく進められるように,水道管に輻輳して設置された他の埋設管の配置を確認できるようにする。
行政の方針は三つある。①センサなどの新技術で劣化状況の情報を収集する,②得られた情報を社会インフラを管理・所管する者同士で共有する,③3次元情報・属性を地理情報システムで管理し活用する,である。
G 氏が H 氏に示した条件と突き合わせる。条件①(振動センサで常時監視)と②(分析して修繕箇所を特定)は方針①のセンサによる情報収集に当たり,条件③(他の埋設管の配置を確認する)は方針③の3次元情報の管理・活用に当たる。管理・所管する者同士での情報共有(方針②)に当たる条件は無いので,これが検討から外した方針である。講評によると正答率は高く,G 氏が行政の方針の中から何を優先し何を検討から外したかをよく理解した解答が多かった。
35字に対し,解答例は「得られた情報は,社会インフラを管理・所管する者同士で共有できる。」で32字。方針②の文言をほぼそのまま使う。
採点講評(IPA)
設問1では,新システムの企画について解答を求めた。正答率は高く,G氏が行政の方針の中から何を優先し何を検討から外したかをよく理解した解答が多く見られた。
設問2(1)
35字以内
G 氏が,振動センサユニットの設置箇所をバルブに限定すべきと考えた理由は何か。設置しやすさ以外の理由を,35 字以内で述べよ。
解答例
バルブの10年ごとの定期点検に合わせバッテリを交換できるから
解説
本文の根拠
〔日本の社会インフラストラクチャの状況と行政の方針〕(2) 日本の上水道の状況
また,水道管に一定間隔に設置される制水弁(以下,バルブという)は,10 年ごとの定期点検が必要とされている。
〔システム化の検討〕
② 水道管の各箇所に磁石又は接着剤で設置可能な,バッテリで 10 年稼働する振動センサユニットも,新規に開発する。
〔システム化の検討〕
G 氏は,H 氏の報告を受け,先々の保守コストを考慮して,振動センサユニットの設置箇所をバルブに限定すべきと考えた。
振動センサユニットはバッテリで10年稼働するので,10年ごとにバッテリを交換しなければならない。水道管は地下に埋設されているので,交換のためだけに掘り起こせば保守コストがかさむ。
一方,バルブは10年ごとの定期点検が必要とされている。振動センサユニットをバルブに設置しておけば,バルブの定期点検の機会にバッテリを交換でき,交換のための作業を別に行わずに済む。G 氏が「先々の保守コストを考慮して」設置箇所を限定したのはこのためである。
35字に対し,解答例は「バルブの10年ごとの定期点検に合わせバッテリを交換できるから」で30字。二つの「10年」(定期点検の周期とバッテリの稼働期間)が一致することが要点で,理由なので「〜から」で結ぶ。
設問2(2)
30字以内
G 氏が,水道管を新設・更新する場合を考慮して,J 社に打診することにした提携の内容を,30 字以内で述べよ。
解答例
バルブに振動センサを組み込んだ新製品を共同開発する。
解説
本文の根拠
〔日本の社会インフラストラクチャの状況と行政の方針〕(2) 日本の上水道の状況
現在は,耐震化・長寿命化が施された水道管への更新が進められている。
〔システム化の検討〕
① 振動センサを組み込んだ新しい流量メータ製品を開発する。
〔システム化の検討〕
また,水道管を新設・更新する場合を考慮して,大手バルブメーカの J 社に提携を打診することにした。
振動センサユニットの設置箇所はバルブに限定する。既設の水道管では,バルブに後から振動センサユニットを取り付けることになる。一方,水道管は耐震化・長寿命化のための更新が進められており,新設・更新のときには新しいバルブが設置される。
流量メータに振動センサを組み込んだのと同じように,バルブにあらかじめ振動センサを組み込んでおけば,水道管を新設・更新するときに監視の仕組みが最初から備わる。そのためにバルブを作る大手バルブメーカの J 社と組み,振動センサを組み込んだバルブを共同開発することが提携の内容になる。
30字に対し,解答例は「バルブに振動センサを組み込んだ新製品を共同開発する。」で26字。何に何を組み込むか(バルブに振動センサ)と,提携の形(共同開発)を書く。
設問2(3)
35字以内
G 氏が,地理情報システムを活用したサービス事業の実績をもつ会社のリストアップをすることとした判断の基となる F 社の状況を,35 字以内で述べよ。
解答例
他社が開発した機能,装置の情報を活用した事業の経験がない。
解説
本文の根拠
冒頭
これまで F 社は,他社が開発した機能,装置の情報を活用した事業の経験はなく,専ら自社の計測機器で計測したデータを活用する製品を製造してきた。
〔システム化の検討〕
④ 工事区域の埋設管の位置情報を,F 社のデータベースにデータ形式を変換して登録することによって,各埋設管の配置を示す正確な 3 次元情報を,地理情報システム上で確認できるようにする。
〔システム化の検討〕
⑤ 地理情報システムは,実績がある他社のソフトウェア製品を活用して実現する。
H 氏の報告では,地理情報システムは実績がある他社のソフトウェア製品で実現し,他の埋設管の位置情報をデータ形式を変換して取り込む。どちらも他社が開発した機能や,他社がもつ装置(埋設管)の情報を使う事業である。
ところが,F 社はこれまで「他社が開発した機能,装置の情報を活用した事業の経験はなく」,自社の計測機器で計測したデータを活用する製品だけを作ってきた。経験の無い領域を自社だけで進めるのはリスクなので,G 氏はリスク分析を踏まえ,地理情報システムを活用したサービス事業の実績をもつ会社を探すことにした。講評によると,F 社の状況に関連しない解答も一部に見られた。設問は「判断の基となる F 社の状況」を問うているので,冒頭の F 社の状況から答える。
35字に対し,解答例は「他社が開発した機能,装置の情報を活用した事業の経験がない。」で29字。本文の一文をそのまま使う。
採点講評(IPA)
設問2(3)では,地理情報システムを活用したサービス事業の実績をもつ会社のリストアップをすることとした判断の基となるF社の状況について解答を求めたが,F社の状況に関連しない解答も一部に見られた。
設問3(1)
15字以内
G 氏が,H 氏に無線通信方式を容易に変更できることの検討を依頼した狙いを,15 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
冒頭
また,F 社は自動検針技術を基にグローバルビジネスの展開も検討したが,上水道を取り巻く環境,使用可能な無線規格などが国ごとに異なり,それぞれの国向けの設計変更が必要なことが分かった。
冒頭
さらに,計測機器以外の市場,上水道以外の市場,グローバルな市場への展開も検討することとした。
〔新システムの様々な市場展開〕
① 流量メータ及び振動センサユニットの無線通信方式を容易に変更できること
F 社は以前,自動検針技術を基にグローバルビジネスの展開を検討したが,使用可能な無線規格などが国ごとに異なり,それぞれの国向けの設計変更が必要なことが分かった。
G 氏は新製品について,計測機器以外・上水道以外・グローバルな市場への展開も検討するとしている。流量メータや振動センサユニットの無線通信方式を容易に変更できれば,国ごとに無線規格が違っても大きな設計変更をせずに対応でき,グローバルな市場へ展開しやすくなる。講評によると,設問3は正答率が高かった。
15字に対し,解答例は「グローバルな市場への展開」で12字。冒頭の「グローバルな市場への展開も検討する」の語句をそのまま使う。
採点講評(IPA)
設問3では,新システムの様々な市場展開について解答を求めた。正答率は高かったが,高速会社と重機メーカがもつそれぞれの課題を理解できていない解答も一部に見られた。
設問3(2)
35字以内
G 氏が,高速会社に共同開発しようとしているのは,どのような技術を活用するシステムか。35 字以内で述べよ。
解答例
振動センサ信号の変化を基に,破壊に至る前の変化を検出する技術
解説
本文の根拠
〔日本の社会インフラストラクチャの状況と行政の方針〕(1) 高速道路,トンネルの状況
劣化による崩落が発生すると人身事故に至る場合があるので,構造物のはく離,損壊に至る前に異常を検出する必要がある。しかし,高速道路の管理・運営を行う会社(以下,高速会社という)では,検査を頻繁に実施した場合の検査費用の増大が問題となっている。
〔F 社の保有技術〕
F 社はこの振動センサ信号の変化を基に,通過車両,地震などによって発生する構造物のゆがみ・割れといった,破壊に至る前の変化を検出する技術まで範囲を広げた特許を出願している。
高速会社の課題は,橋脚やトンネル内部が通過車両や地震の振動で短期間に劣化することがあり,はく離や損壊に至る前に異常を検出する必要があるのに,検査を頻繁に行うと検査費用が増大することである。
F 社は,振動センサ信号の変化を基に,通過車両や地震などで生じる構造物のゆがみ・割れといった「破壊に至る前の変化を検出する技術」まで範囲を広げた特許を出願している。この技術は水道管に限らず構造物に使えるので,高速道路の構造物にセンサを設置して常時監視すれば,頻繁な検査をせずに異常を検出できる。講評によると,高速会社と重機メーカがもつそれぞれの課題を理解できていない解答も一部に見られた。高速会社の課題(検査費用の増大)と F 社の技術を結び付ける。
35字に対し,解答例は「振動センサ信号の変化を基に,破壊に至る前の変化を検出する技術」で30字。特許の記述から,何を基に(振動センサ信号の変化)何を検出するか(破壊に至る前の変化)を抜き出す。
採点講評(IPA)
設問3では,新システムの様々な市場展開について解答を求めた。正答率は高かったが,高速会社と重機メーカがもつそれぞれの課題を理解できていない解答も一部に見られた。
設問3(3)
30字以内
G 氏が,重機メーカと共同開発しようとしている技術を,30 字以内で述べよ。
解答例
各埋設管の配置を示す3次元情報を基に自動で工事する技術
解説
本文の根拠
〔水道管漏水復旧工事の実情〕
各埋設管の配置を示す正確な 3 次元情報があると,復旧工事が効率よく進められる。
〔水道管漏水復旧工事の実情〕
このため,重機での工事は地表面のアスファルト剝がしと浅い掘削までにとどめ,残りは工事員が手掘りしているのが実情であり,重機メーカにとっては,自動で工事をする技術開発の障壁となっている。
〔システム化の検討〕
④ 工事区域の埋設管の位置情報を,F 社のデータベースにデータ形式を変換して登録することによって,各埋設管の配置を示す正確な 3 次元情報を,地理情報システム上で確認できるようにする。
重機メーカの課題は,各埋設管の配置が把握できないため,重機での工事がアスファルト剝がしと浅い掘削までにとどまり,自動で工事をする技術開発の障壁になっていることである。
新システムでは,工事区域の埋設管の位置情報をデータ形式を変換して登録し,各埋設管の配置を示す正確な3次元情報を地理情報システムで確認できるようにする。このデータを重機が使えば,埋設管の位置を避けながら掘削でき,自動で工事をする技術の障壁が取り除かれる。設問の「データを活用した技術」は,この3次元情報を活用することを指している。
30字に対し,解答例は「各埋設管の配置を示す3次元情報を基に自動で工事する技術」で27字。活用するデータ(各埋設管の配置を示す3次元情報)と,重機メーカが目指す技術(自動で工事する)を組にする。
採点講評(IPA)
設問3では,新システムの様々な市場展開について解答を求めた。正答率は高かったが,高速会社と重機メーカがもつそれぞれの課題を理解できていない解答も一部に見られた。
出典:平成28年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問4(表記を一部改変)
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