平成26年度 秋期に実施されたITストラテジスト試験
午後Ⅰの全4問(記述式)です。事例本文・設問・解答例と解説をそのまま読めます。
この試験について:ITストラテジスト試験について
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問1 銀行システムの再構築
銀行システムの再構築に関する次の記述を読んで,設問1〜4に答えよ。
A 社は,企業再生ファンド会社である。A 社では,破綻企業の株式,経営再建企業の株式を取得して企業を買収する。その後,買収した企業を再建して,企業価値を向上させた後,株式の転売,再上場,他社への売却などによって利益を得ている。
B 銀行は,100 以上の支店を有する地方銀行(以下,地銀という)である。B 銀行は,融資先の破綻などによって不良債権が増加して財務状況が悪化し,経営再建中である。
A 社は,5 年程度で B 銀行を再建した後,他の銀行に売却することによって大きな差益が得られると考え,B 銀行の株式取得を検討することにした。A 社では,投資に対する収益を確実なものとするために,株式取得に先立って次の二つの事業戦略を立てた。
事業規模を維持しつつ,企業価値を高めるには,ヒト,モノ,カネ,情報といった経営資源を効率よく利用することが重要であり,人員削減,組織改編,店舗統合,不良債権処理などを進めるとともに,情報システムの見直しが必要である。
2. B 銀行の経営再建後の売却可能性を高めておくこと 経営再建後の売却先候補が多くなるほど,高額での売却が期待できるので,初期投資額が多少増加しても,売却可能先を広げ,早期に企業価値向上への対応を完了させることを優先する。
〔情報システムの現状〕
B 銀行の主要な情報システムは,勘定系システム,営業店系システム,情報系システムである。
勘定系システムは,預金,融資,為替を取り扱う。情報系システムは,勘定系システムのデータを集計,分析し,本部・支店でのリスク管理,融資先管理,顧客分析を行う。
勘定系システム及び情報系システムはともに,大型汎用機を利用しており,運用費用,及び機能追加などのための情報システム改修費用が高額なので,改善が必要であると A 社は考えている。また,融資先管理機能が不十分であることは,B 銀行の経営不振を招く一因になった。
営業店系システムは,支店内の端末,現金自動預払機(ATM)及び関連機器(以下,これらの機器を総称して支店内機器という),並びに本支店ネットワークから構成されており,支店内機器の管理,本支店間の情報通信の管理を行う。
営業店系システムの支店内機器,ソフトウェアの中には陳腐化したり保守期間が終了したりしているものがあるので再構築ニーズはあるが,その優先度は低い。
〔情報システムの見直しに関して考慮すべき条件〕
B 銀行の財務状況をできる限り早期に改善するために,情報システムの運用費用は短期間で低減させるとともに,再構築費用も短期間で回収する必要がある。そのためには,B 銀行の情報システムの見直し方針を策定する必要がある。
情報システムの再構築に際しては,短期間で稼働させる必要がある。そこで,全て自前で新しく構築し直す方法は,情報システムの見直し方針の選択肢から除外して考えることにした。
B 銀行の個人顧客には高齢者が多く,法人顧客には古くからの取引先が多いので,商品・サービスを大幅に変更してしまうと,解約が増加するおそれがある。B 銀行の財務状況をこれ以上悪化させないために,預金・融資の基盤である顧客の維持は必要不可欠である。
また,情報システムの再構築後においても,業績が悪い支店は,1〜2 年のうちに近隣の業績が良い支店に店舗統合していく予定である。支店数を 1 割程度削減して,人員削減や,余剰となる支店内機器を含めて廃止する支店の資産処分によって,財務状況の改善を図る。
〔情報システムの見直しの選択肢〕
情報システムの見直し方針は,勘定系システム,営業店系システム,情報系システムに対し,それぞれ次の三つの方針から選択する。
現行システムの再利用 共同利用システムの利用 ソフトウェアパッケージの利用 1. 現行システムの再利用 : 現行システムの一部を改修し,できるだけ再利用すること 機器,業務手続の大幅な変更が不要であり,再利用できる部分が多いほど,開発費用は安くなる。移行費用もほとんど不要であるが,運用費用は現行と大差ない。
2. 共同利用システムの利用 : 既存の共同利用システムに参加すること 共同利用システムは,情報システム事業者と地銀が勘定系システムを中心に共同開発し,複数の地銀で共同利用する情報システムであり,既に幾つか存在する。同じ共同利用システムに参加する地銀間では,業務の親和性は高い。しかし,一方で,それぞれの共同利用システム間には共通性はないので,一つの共同利用システムから他の共同利用システムへ移行しようとすると,多額の費用が掛かるだけでなく,機能・サービスの見直しも必要となることがある。実際,共同利用システム間で参加銀行の移行は発生していない。ソフトウェアにカスタマイズが必要な場合は,共同利用システム参加銀行の間で協調して実施する必要があり,各銀行個別に独自のカスタマイズはしにくい。共同利用システムを利用した場合,移行費用は掛かるものの,業務,商品・サービスが適合すれば安価に導入でき,運用費用も安価になる。
3. ソフトウェアパッケージの利用 : ソフトウェアパッケージを利用した情報システムに再構築すること ソフトウェアパッケージの費用は共同利用システムの導入費用よりも高額になる上,カスタマイズも必要になることが多く,その分費用も掛かる。運用費用も導入費用に応じて高額になる。ただし,カスタマイズは比較的自由にできるので,各銀行の実情に合わせ,商品・サービスの充実,業務の効率向上などが期待できる。
A 社は,ソフトウェアパッケージの利用については,更に,国産ソフトウェアパッケージと海外製ソフトウェアパッケージの二つの案を考えることにした。海外製ソフトウェアパッケージには,預金通帳の取扱い,口座からの自動引落しなどの国内特有のサービスを提供する機能がなく,カスタマイズは高額になるので,実現性は低い。ただし,海外製ソフトウェアパッケージは,海外の銀行で広く利用されているので販売数が多く,国産ソフトウェアパッケージに比べ,導入費用,運用費用ともかなり安いという利点がある。移行費用については,海外製と国産で差異はない。
〔各情報システムの見直し方針〕
A 社では,B 銀行の主要な情報システムについて,それぞれ見直し方針を次のとおり決定した。
勘定系システムは,“国産ソフトウェアパッケージの利用”を採用する。 営業店系システムは,“現行システムの再利用”を採用する。 情報系システムは,勘定系システムとの関連性も強いことから,“国産ソフトウェアパッケージの利用”を採用する。 A 社では,これらの方針に基づき,国産ソフトウェアパッケージの事業者に提案依頼を行い,勘定系システム及び情報系システムについて C 社のソフトウェアパッケージの採用を決定した。現行システム構築事業者は,勘定系システム及び情報系システムのソフトウェアパッケージを提供していないので,提案依頼の対象外とした。A 社は C 社に勘定系システム及び情報系システムの構築計画の策定を依頼するとともに,現行システム構築事業者に費用見積りなどを依頼して,主要な情報システムの再構築・導入の全体計画を策定することにした。
出題趣旨(IPA)
ITストラテジストには,企業の経営戦略の実現を支援するためのシステムソリューションを検討し,その適用方針を策定する能力が求められる。本問では,金融機関の経営再建を題材に,組織内部の視点にとどまらず組織の外からの視点を加味して検討対象を設定し,抜本的な改革まで含めたシステムソリューションの適用と,その結果に応じた事業戦略への影響を検討する能力を評価する。具体的には,銀行主要システムの見直し方針の決定理由,情報システム再構築の要件,情報システム再構築計画策定のために必要な開発事業者への協力要請項目について問う。
採点講評(問全体・IPA)
問1では,銀行システム再構築におけるシステムソリューションの選択について出題した。題意や状況設定は,おおむね理解されているようであった。
ITストラテジストは,経営戦略に基づいた情報戦略や情報化計画の策定・提案をする能力を高めてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
40字以内
“共同利用システムの利用”を採用した場合,A 社の事業戦略の実現を阻害する事項を,40 字以内で具体的に述べよ。
解答例
経営再建後のB銀行売却先が同じ共同利用システム参加銀行間に限定される。
解説
本文の根拠
冒頭
A 社は,5 年程度で B 銀行を再建した後,他の銀行に売却することによって大きな差益が得られると考え,B 銀行の株式取得を検討することにした。
冒頭
経営再建後の売却先候補が多くなるほど,高額での売却が期待できるので,初期投資額が多少増加しても,売却可能先を広げ,早期に企業価値向上への対応を完了させることを優先する。
〔情報システムの見直しの選択肢〕
同じ共同利用システムに参加する地銀間では,業務の親和性は高い。しかし,一方で,それぞれの共同利用システム間には共通性はないので,一つの共同利用システムから他の共同利用システムへ移行しようとすると,多額の費用が掛かるだけでなく,機能・サービスの見直しも必要となることがある。実際,共同利用システム間で参加銀行の移行は発生していない。
A 社は B 銀行を再建した後に他の銀行へ売却して差益を得る計画で,事業戦略の2番目に「経営再建後の売却可能性を高めておくこと」を挙げている。売却先候補が多いほど高額で売れるので,初期投資額が多少増えても売却可能先を広げることを優先する。
共同利用システムは,同じシステムに参加する地銀の間では業務の親和性が高いが,システム間に共通性がなく,別の共同利用システムへ移るには多額の費用と機能・サービスの見直しが要る。実際にシステム間での移行は起きていない。B 銀行が一つの共同利用システムに参加すると,勘定系を無理なく引き継げる買い手は同じシステムに参加している銀行にほぼ限られ,売却先候補が狭まる。これが事業戦略2の実現を阻害する。講評によると,カスタマイズ費用のような売却可能性の観点を含まない解答が散見された。安価に導入できる共同利用システムの利点と,戦略が求める「売却可能先を広げ」ることとの衝突に目を向ける。
40字に対し,解答例は「経営再建後のB銀行売却先が同じ共同利用システム参加銀行間に限定される。」で35字。「いつの」(経営再建後)「何が」(売却先)「どう狭まるか」(同じ共同利用システムの参加銀行間に限定)をそろえて書く。
採点講評(IPA)
設問1では,事業戦略の実現を阻害する事項を問うた。(1)では,経営再建後の売却可能性に関する解答を期待したが,“システム再構築でのカスタマイズ費用が掛かる”のような売却可能性の観点が含まれない解答が散見された。(2)では,事業戦略の実現をどのように阻害するのかまで踏み込まず,カスタマイズの必要性にとどまった解答が見られた。
設問1(2)
40字以内
“海外製ソフトウェアパッケージの利用”を採用した場合,A 社の事業戦略の実現を阻害する事項について,阻害する要因も含めて 40 字以内で具体的に述べよ。
解答例(2通り)
国内特有のサービスを提供する機能がないので,顧客を維持できない。 カスタマイズが高額になり,再構築費用の回収に時間が掛かる。
解説
本文の根拠
〔情報システムの見直しの選択肢〕
海外製ソフトウェアパッケージには,預金通帳の取扱い,口座からの自動引落しなどの国内特有のサービスを提供する機能がなく,カスタマイズは高額になるので,実現性は低い。
〔情報システムの見直しに関して考慮すべき条件〕
B 銀行の個人顧客には高齢者が多く,法人顧客には古くからの取引先が多いので,商品・サービスを大幅に変更してしまうと,解約が増加するおそれがある。B 銀行の財務状況をこれ以上悪化させないために,預金・融資の基盤である顧客の維持は必要不可欠である。
〔情報システムの見直しに関して考慮すべき条件〕
B 銀行の財務状況をできる限り早期に改善するために,情報システムの運用費用は短期間で低減させるとともに,再構築費用も短期間で回収する必要がある。
海外製ソフトウェアパッケージには,預金通帳の取扱いや口座からの自動引落しといった国内特有のサービスを提供する機能がない。そのまま使えば商品・サービスが大きく変わり,高齢者の多い個人顧客や古くからの法人顧客の解約が増えて,顧客を維持できない。機能を補うためにカスタマイズすれば費用が高額になり,再構築費用を短期間で回収できない。どちらに転んでも,B 銀行の企業価値を高めるという事業戦略1の実現を妨げる。
解答例は二つを別解として挙げている。一つは要因を「国内特有のサービスを提供する機能がない」とし,結果を顧客の維持ができないこととする筋,もう一つは要因を「カスタマイズが高額」とし,結果を再構築費用の回収に時間が掛かることとする筋である。どちらも本文の〔考慮すべき条件〕にある「顧客の維持は必要不可欠」「再構築費用も短期間で回収する必要がある」に当たる。講評によると,カスタマイズの必要性にとどまり,事業戦略の実現をどう阻害するかまで踏み込まない解答が見られた。
40字に対し,解答例は「国内特有のサービスを提供する機能がないので,顧客を維持できない。」で32字(別解は29字)。設問が「阻害する要因も含めて」と求めているので,「〜がないので(要因)」と「〜できない(阻害する事項)」の二つを1文に入れる。
採点講評(IPA)
設問1では,事業戦略の実現を阻害する事項を問うた。(1)では,経営再建後の売却可能性に関する解答を期待したが,“システム再構築でのカスタマイズ費用が掛かる”のような売却可能性の観点が含まれない解答が散見された。(2)では,事業戦略の実現をどのように阻害するのかまで踏み込まず,カスタマイズの必要性にとどまった解答が見られた。
設問2
40字以内
営業店系システムの見直し方針として“現行システムの再利用”を採用した理由には,既存支店網が多く,支店内機器・ソフトウェアを更新するにはコストが掛かること,及び再構築の優先度が低いことが挙げられる。その他に考えられる理由を,40 字以内で述べよ。
解答例
店舗統合を予定しているので,新規導入した支店内機器が無駄になるから
解説
本文の根拠
〔情報システムの見直しに関して考慮すべき条件〕
また,情報システムの再構築後においても,業績が悪い支店は,1〜2 年のうちに近隣の業績が良い支店に店舗統合していく予定である。支店数を 1 割程度削減して,人員削減や,余剰となる支店内機器を含めて廃止する支店の資産処分によって,財務状況の改善を図る。
〔情報システムの現状〕
営業店系システムは,支店内の端末,現金自動預払機(ATM)及び関連機器(以下,これらの機器を総称して支店内機器という),並びに本支店ネットワークから構成されており,支店内機器の管理,本支店間の情報通信の管理を行う。
営業店系システムは支店内の端末や ATM などの支店内機器から成る。B 銀行は再構築後も 1〜2 年のうちに業績の悪い支店を統合し,支店数を 1 割程度減らして,余剰となる支店内機器を含めて資産を処分する予定である。
今,営業店系システムを新しい機器で再構築すると,統合で廃止される支店にも新しい機器を入れることになり,入れたばかりの機器がすぐに余剰となって無駄になる。現行システムを再利用すれば,この無駄な投資を避けられる。設問は,コストと優先度の二つをすでに挙げてその他を問うている。講評によると,コストや優先度と同じ趣旨の解答が散見された。本文のうち,設問に挙がっていない事情(店舗統合の予定)を探す。
40字に対し,解答例は「店舗統合を予定しているので,新規導入した支店内機器が無駄になるから」で33字。理由なので「〜から」で結び,前半に本文の事情(店舗統合の予定),後半にそれが見直し方針にどう響くか(新規導入した機器が無駄になる)を書く。
採点講評(IPA)
設問2では,設問に記載された要素の他に考えられる理由を問うたが,コストや優先度といった設問の記載要素と同趣旨の解答が散見された。
設問3
情報系システムの再構築に当たって見直すべき業務機能を答えよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔情報システムの現状〕
情報系システムは,勘定系システムのデータを集計,分析し,本部・支店でのリスク管理,融資先管理,顧客分析を行う。
〔情報システムの現状〕
また,融資先管理機能が不十分であることは,B 銀行の経営不振を招く一因になった。
情報系システムは,リスク管理,融資先管理,顧客分析を行う。このうち本文がはっきり問題として挙げているのは融資先管理で,「融資先管理機能が不十分であることは,B 銀行の経営不振を招く一因になった」とある。B 銀行は融資先の破綻で不良債権が増えて財務状況が悪化しているので,再構築の機会に融資先管理機能を見直すのは企業価値を高めるうえで欠かせない。
情報系システムには「国産ソフトウェアパッケージの利用」を採用しており,パッケージはカスタマイズが比較的自由にできるので,業務の効率向上などが期待できる。見直すべき業務機能は,現状の記述で不十分とされたものを本文から拾えばよい。
字数の制限は無い。解答例は「融資先管理機能」で,本文の語をそのまま使う。リスク管理や顧客分析は情報系システムの機能ではあるが,不十分とは書かれていないので答えにならない。
設問4
解答欄2つ
主要な情報システムの再構築・導入の全体計画策定に当たって,現行システム構築事業者に依頼すべき見積り事項を二つ挙げ,それぞれ 25 字以内で述べよ。
解説
本文の根拠
〔各情報システムの見直し方針〕
営業店系システムは,“現行システムの再利用”を採用する。
〔各情報システムの見直し方針〕
現行システム構築事業者は,勘定系システム及び情報系システムのソフトウェアパッケージを提供していないので,提案依頼の対象外とした。A 社は C 社に勘定系システム及び情報系システムの構築計画の策定を依頼するとともに,現行システム構築事業者に費用見積りなどを依頼して,主要な情報システムの再構築・導入の全体計画を策定することにした。
〔情報システムの見直しの選択肢〕
機器,業務手続の大幅な変更が不要であり,再利用できる部分が多いほど,開発費用は安くなる。移行費用もほとんど不要であるが,運用費用は現行と大差ない。
勘定系システムと情報系システムは C 社のソフトウェアパッケージで再構築し,構築計画は C 社が策定する。一方で,現行システム構築事業者は今の勘定系・営業店系・情報系を作った事業者であり,全体計画には次の二つについて費用の見積りが要る。
一つは営業店系システムである。営業店系は「現行システムの再利用」を採用し,現行システムの一部を改修して使うので,その対応費用は現行システムを知る現行システム構築事業者にしか見積もれない。もう一つはデータ移行である。勘定系と情報系を新しいパッケージに移すには,現在の各情報システムからデータを取り出す必要があり,これも現行システム構築事業者の協力が要る。講評によると,営業店系システムに関してだけの解答が見られ,データ移行に現行システム構築事業者の協力が必要であることに気付いてほしかったとしている。
25字ずつに対し,解答例は「各情報システムのデータ移行に関する費用」で19字,「営業店系システムの対応費用」で13字。見積り事項なので「〜の費用」の形で結び,対象(各情報システムのデータ移行,営業店系システム)をはっきり書く。
採点講評(IPA)
設問4では,現行システム構築事業者に依頼する見積り事項を問うたが,“現行システムの再利用”を採用した営業店系システムに関してだけの解答が見られた。現在の各情報システムからのデータ移行に対しては現行システム構築事業者の協力が必要であることにも気付いてほしい。
出典:平成26年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問1(表記を一部改変)
問2 小売業におけるリフォーム事業の拡大戦略
小売業におけるリフォーム事業の拡大戦略に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
M 社は,全国の大都市近郊に出店している大手ホームセンタである。地域ごとに,中核となる大型店舗と,数店舗の M 社が標準として定める売場面積をもつ店舗(以下,標準型店舗という)で,家具・照明などのインテリア商品,日用雑貨,DIY 用品,資材,園芸用品などを販売している。M 社では,国内外の仕入業者からの大量仕入れで仕入原価を抑えることによって,低価格で商品を提供し,事業を拡大している。
〔リフォーム事業の概要〕
M 社では,数年前から大型店舗でキッチン・バス・トイレ・リビング・寝室などの小規模な増改築を中心とするリフォーム事業を展開している。
店内には,消費者のライフスタイルに合わせた,和風,洋風などの様々な仕様のリフォーム展示ブースを複数設置している。
大型店舗には,設計に関して責任を負う社員(以下,設計責任者という),施工管理に関して責任を負う社員(以下,施工責任者という),建築関連の知識をもつ社員(以下,リフォーム担当者という)及びインテリア関連の知識をもつ社員(以下,インテリア担当者という)を配置している。
リフォームに関する客からの相談・問合せからリフォーム完了までの流れは,次のとおりである。
① リフォームに関する客からの相談・問合せは,大型店舗の店頭又は電話でリフォーム担当者が受ける。その際,客の住所,氏名,電話番号,住宅に関する情報などの属性情報,及びリフォーム箇所や希望などのリフォームニーズを確認し,設計責任者の支援を受けて,相談・問合せに回答する。リフォームニーズが具体的でない場合は,客にリフォーム展示ブースを見ることを勧め,具体化している場合は,リフォーム担当者と設計責任者が客先に出向いて現場を調査する(以下,訪問調査という)。このとき,リフォームニーズに合った仕様のリフォーム展示ブースの見学を勧めることがある。 ② 設計責任者は,リビングや寝室のリフォームの場合など必要に応じてインテリア担当者と相談して,リフォームニーズに合ったリフォームプランを作成する。リフォーム展示ブースを見学した客に対しては,客の具体的な声を聞いてリフォーム内容を設計できるので,客の満足度が高い。 ③ 施工責任者は,設計段階で地域の工務店,建築事業者及び土木事業者(以下,これら 3 者を総称して施工事業者という)を選択し,施工事業者と調整して見積書を作成する。 ④ リフォーム担当者と設計責任者は,設計したリフォームプランを客に提案して,契約を結ぶ。 ⑤ 工事開始後,リフォーム担当者と施工責任者は,客先に出向いてリフォームプランと現場の状況を見比べ,工事の進捗状況を確認する。工事完了後は,客に工事の内容を確認してもらう。 ⑥ 工事完了後に,実施したリフォームの仕様に合ったインテリア商品に関する問合せを客から電話などで受けることがある。その場合は,リフォーム担当者が客先に出向き,商品のカタログ,商品が掲載されているチラシを見せて,来店を勧める。客が来店したら,インテリア担当者が客のニーズに合ったインテリア商品を推奨する。 〔リフォーム事業の課題〕
リフォーム担当者は,設計責任者とともに客との打合せを行ったり,施工責任者とともに工事現場を訪問したりする。そのための,設計責任者,施工責任者との日程調整に手間取る場合がある。 施工事業者ごとに,それぞれ対応できるリフォームの仕様が異なるので,施工責任者は,リフォーム案件ごとに,施工が可能かどうか,工事に必要な作業員数,工事の日程・費用を施工事業者に問い合わせている。リフォーム案件が重なった場合は,施工責任者は施工事業者の選定と調整に時間が掛かり,客から苦情を受けることがある。 相談・問合せをした客は,休日に来店してリフォーム展示ブースを見学することが多い。客からは,リフォーム展示ブースに来る予定日時を事前に知らせてもらうことはないので,設計責任者,インテリア担当者は適切に対応できない場合がある。 施工後の写真がないので,インテリア担当者は工事完了後に来店した客に,リフォームの仕様に合わせてトータルコーディネートしたインテリア商品を推奨できていない。 〔リフォーム事業の拡大戦略〕
近年,消費者のリフォーム需要が増加していることから,M 社では,リフォーム事業の拡大を決定し,次のような戦略を立案した。
客に対して,大型店舗をもっている M 社の強みを生かしたリフォームを提案する。 客の利便性向上と業務の効率向上を両立できるようにして,全店舗及び Web サイトを活用したリフォーム事業を展開する。 標準型店舗にもリフォーム担当者を配置し,大型店舗の設計責任者,施工責任者と連携したリフォーム対応を行う。 全店舗のリフォーム担当者と大型店舗の各責任者などがリフォームに関する情報を連携するためのリフォーム管理システムを構築する。リフォーム担当者には,写真撮影が可能なタブレット端末を配布する。 施工責任者が迅速に施工事業者を選定し,リフォーム案件ごとの見積りを作成するための施工事業者選定システムを構築する。施工事業者は,施工に関する情報及び施工責任者からの要請に対する回答を,施工事業者選定システムに登録する。 〔リフォーム事業の拡大戦略における新たな業務〕
リフォーム事業の拡大戦略では,新たに次のような業務を実施する。
Web サイトからリフォームの相談・問合せを受けるために,必要な情報・内容を客に入力してもらう。客から店頭又は電話で相談・問合せを受けた場合は,リフォーム担当者がリフォーム管理システムに必要な情報・内容を入力する。 Web サイトからの相談・問合せに対しては,客の居住地域にある最寄りの店舗のリフォーム担当者が対応する。リフォーム担当者は,大型店舗の設計責任者のアドバイスを得て,客の相談・問合せに電子メール又は電話で回答し,訪問調査の日程を調整する。 リフォーム担当者は,訪問調査を行い,タブレット端末で撮影した現場写真と調査結果をリフォーム管理システムに登録する。また,客に対しては大型店舗のリフォーム展示ブースの見学を勧める。設計責任者は,相談・問合せの内容によって,必要に応じて訪問調査を行う。 設計責任者とインテリア担当者は,客の来店時にリフォーム管理システムに登録されている情報を参照して,リフォームニーズに合った仕様のリフォーム展示ブースを案内し,リフォームプランを提案する。設計責任者は,現場写真,調査結果及び客の具体的な声を基に,リフォームニーズに合ったリフォーム内容を設計する。 施工責任者は,施工事業者選定システムを活用して迅速に施工事業者を選定し,見積りに必要な情報を入手して見積書を作成する。 工事期間中は,リフォーム担当者が客先に出向き,タブレット端末を活用して施工責任者と連携して工事を管理する。施工責任者は,必要に応じて客先に出向き,工事内容を確認する。 工事完了後に,客から Web サイト又は電話でインテリア商品に関する問合せを受けた場合は,リフォーム担当者がインテリア担当者と相談した後,客先に出向いて,タブレット端末で具体的な商品を推奨し,来店を勧める。
出題趣旨(IPA)
ITストラテジストには,業種ごとの事業特性を反映してITを活用した事業戦略の策定を支援する能力が求められる。本問では,小売業におけるリフォーム事業の拡大戦略を題材に,新たな業務に必要な仕組みを検討する能力,及び必要な情報を特定する能力を評価する。具体的には,①新たな業務でリフォーム担当者が実施すること,②Webサイト,リフォーム担当者と大型店舗の各責任者との間で取り扱う情報,③施工責任者が迅速に施工事業者を選定するための必要な情報について問う。
採点講評(問全体・IPA)
問2では,小売業でのリフォーム事業の拡大戦略における新たな業務要件の策定について出題した。一部の設問で題意や状況設定を十分に理解できていないと思われる解答が見られた。
ITストラテジストは,業種ごとの事業特性を反映してITを活用した事業戦略の策定を支援し,新たな業務要件を定義する能力を高めてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
35字以内
訪問調査を行って,客がリフォーム展示ブースの見学を希望した際に行うことを,35 字以内で述べよ。
解答例
リフォーム展示ブースの見学予定日時を決めて登録する。
解説
本文の根拠
〔リフォーム事業の課題〕
相談・問合せをした客は,休日に来店してリフォーム展示ブースを見学することが多い。客からは,リフォーム展示ブースに来る予定日時を事前に知らせてもらうことはないので,設計責任者,インテリア担当者は適切に対応できない場合がある。
〔リフォーム事業の拡大戦略における新たな業務〕
設計責任者とインテリア担当者は,客の来店時にリフォーム管理システムに登録されている情報を参照して,リフォームニーズに合った仕様のリフォーム展示ブースを案内し,リフォームプランを提案する。
今は客がリフォーム展示ブースに来る日時を事前に知らせないので,休日に来店した客に設計責任者やインテリア担当者が適切に対応できないことがある。新たな業務では,設計責任者とインテリア担当者が客の来店時にリフォーム管理システムの情報を参照して展示ブースを案内し,リフォームプランを提案する。そのためには,客がいつ来るかが前もって分かっていなければならない。
そこで,訪問調査の場で客が見学を希望したら,リフォーム担当者が見学の予定日時を客と決め,リフォーム管理システムに登録する。登録された予定を見て,設計責任者とインテリア担当者は来店に備えられる。講評によると正答率は低く,展示ブースに来た客への対応ができない場合があるという現状の課題を踏まえた具体的な施策に気付いてほしかったとしている。
35字に対し,解答例は「リフォーム展示ブースの見学予定日時を決めて登録する。」で26字。「決める」だけでは設計責任者たちに伝わらないので,システムに「登録する」まで書く。
採点講評(IPA)
設問1(1)は,訪問調査の際にリフォーム担当者が新たに実施すべきことを問うたが,正答率は低かった。店舗へ見学に来た客への対応ができない場合があるという現状の課題を踏まえた上での具体的な施策に気付いてほしい。
設問1(2)
45字以内
インテリア商品に関する問合せを受けて,客先に出向いたとき,タブレット端末を用いて行うことを 45 字以内で述べよ。
解答例
リフォームの仕様に合わせてトータルコーディネートしたインテリア商品を推奨する。
解説
本文の根拠
〔リフォーム事業の課題〕
施工後の写真がないので,インテリア担当者は工事完了後に来店した客に,リフォームの仕様に合わせてトータルコーディネートしたインテリア商品を推奨できていない。
〔リフォーム事業の拡大戦略における新たな業務〕
工事完了後に,客から Web サイト又は電話でインテリア商品に関する問合せを受けた場合は,リフォーム担当者がインテリア担当者と相談した後,客先に出向いて,タブレット端末で具体的な商品を推奨し,来店を勧める。
〔リフォーム事業の拡大戦略〕
客に対して,大型店舗をもっている M 社の強みを生かしたリフォームを提案する。
今は施工後の写真がないので,インテリア担当者は工事完了後に来店した客に,リフォームの仕様に合わせてトータルコーディネートしたインテリア商品を推奨できていない。新たな業務では,リフォーム担当者がインテリア担当者と相談したうえで客先に出向き,タブレット端末で具体的な商品を推奨する。
客先ではリフォームを終えた部屋を実際に見られ,事前にインテリア担当者と相談しているので,リフォームの仕様に合わせてトータルコーディネートしたインテリア商品をタブレット端末で見せて推奨できる。インテリア商品を扱う大型店舗をもつ M 社の強みを生かしたリフォームの提案にもつながる。課題の文の「推奨できていない」を,新たな業務で「推奨する」に変えればよい。
45字に対し,解答例は「リフォームの仕様に合わせてトータルコーディネートしたインテリア商品を推奨する。」で39字。課題の文の語句をそのまま使い,単に「商品を推奨する」ではなく「リフォームの仕様に合わせてトータルコーディネートした」を落とさない。
設問2(1)
解答欄2つ
設計責任者が客の相談・問合せに対してアドバイスするときに,Web サイト及びリフォーム担当者から引き継いで参照する情報を,二つ答えよ。
解説
本文の根拠
〔リフォーム事業の概要〕
その際,客の住所,氏名,電話番号,住宅に関する情報などの属性情報,及びリフォーム箇所や希望などのリフォームニーズを確認し,設計責任者の支援を受けて,相談・問合せに回答する。
〔リフォーム事業の拡大戦略における新たな業務〕
Web サイトからリフォームの相談・問合せを受けるために,必要な情報・内容を客に入力してもらう。客から店頭又は電話で相談・問合せを受けた場合は,リフォーム担当者がリフォーム管理システムに必要な情報・内容を入力する。
〔リフォーム事業の拡大戦略における新たな業務〕
リフォーム担当者は,大型店舗の設計責任者のアドバイスを得て,客の相談・問合せに電子メール又は電話で回答し,訪問調査の日程を調整する。
新たな業務では,Web サイトからの相談・問合せは客が「必要な情報・内容」を入力し,店頭や電話ではリフォーム担当者がリフォーム管理システムに入力する。設計責任者はこれを引き継いで参照し,アドバイスする。ここで何が「必要な情報・内容」かは,現状の流れ①に書かれている。
流れ①では,相談・問合せを受けたリフォーム担当者が,客の住所・氏名などの「属性情報」と,リフォーム箇所や希望などの「リフォームニーズ」を確認し,設計責任者の支援を受けて回答している。新たな業務でも設計責任者がアドバイスするのは同じなので,参照する情報はこの二つになる。
字数の制限は無い。解答例は「属性情報」「リフォームニーズ」で,本文が定義した語をそのまま使う。住所・氏名のような個々の項目を並べるのではなく,本文のまとめた呼び名で答える。
設問2(2)
25字以内
施工責任者がリフォーム担当者と連携して工事を管理する際に,リフォーム担当者と共有して参照する情報を 25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔リフォーム事業の概要〕
工事開始後,リフォーム担当者と施工責任者は,客先に出向いてリフォームプランと現場の状況を見比べ,工事の進捗状況を確認する。
〔リフォーム事業の拡大戦略〕
リフォーム担当者には,写真撮影が可能なタブレット端末を配布する。
〔リフォーム事業の拡大戦略における新たな業務〕
工事期間中は,リフォーム担当者が客先に出向き,タブレット端末を活用して施工責任者と連携して工事を管理する。施工責任者は,必要に応じて客先に出向き,工事内容を確認する。
今は工事開始後,リフォーム担当者と施工責任者の二人が客先に出向き,リフォームプランと現場の状況を見比べて工事の進捗状況を確認している。二人の日程調整に手間取ることも課題に挙がっている。新たな業務では,工事期間中はリフォーム担当者が客先に出向き,タブレット端末を活用して施工責任者と連携し,施工責任者は必要なときだけ客先に出向く。
タブレット端末は写真撮影ができるので,リフォーム担当者が現場で工事の内容と進捗状況を撮影してリフォーム管理システムで共有すれば,施工責任者は現場に行かなくても工事を管理できる。講評によると,“リフォームの仕様”など工事を開始する前に共有しておく情報に関する解答が見られた。問われているのは工事期間中に管理するための情報である。
25字に対し,解答例は「写真撮影した工事の内容と進捗状況」で16字。タブレット端末の機能(写真撮影)と,現状で確認していた事項(工事の進捗状況)を組み合わせる。
採点講評(IPA)
設問2(2)は,工事期間中に工事を管理する際に施工責任者がリフォーム担当者と共有する情報について問うたが,“リフォームの仕様”など工事を開始する前に共有しておく情報に関する解答が見られた。
設問3(1)
25字以内
施工事業者が施工事業者選定システムに事前に登録する情報を,25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔リフォーム事業の課題〕
施工事業者ごとに,それぞれ対応できるリフォームの仕様が異なるので,施工責任者は,リフォーム案件ごとに,施工が可能かどうか,工事に必要な作業員数,工事の日程・費用を施工事業者に問い合わせている。
〔リフォーム事業の拡大戦略〕
施工事業者は,施工に関する情報及び施工責任者からの要請に対する回答を,施工事業者選定システムに登録する。
施工責任者は今,案件ごとに「施工が可能かどうか,工事に必要な作業員数,工事の日程・費用」を施工事業者に問い合わせていて,案件が重なると選定と調整に時間が掛かる。問合せの理由は,施工事業者ごとに対応できるリフォームの仕様が異なることである。
施工事業者が,自社で施工が可能なリフォームの仕様を施工事業者選定システムに前もって登録しておけば,施工責任者は案件の仕様に対応できる施工事業者をシステムで絞り込める。いちいち問い合わせなくても候補が分かるので,選定が迅速になる。問い合わせている項目のうち,案件によらず前もって決まっている「施工が可能かどうか」が事前登録に当たり,案件ごとに変わる残りの項目は(2)の回答に回る。
25字に対し,解答例は「施工が可能なリフォームの仕様」で14字。本文の「対応できるリフォームの仕様」を,問合せ項目の「施工が可能かどうか」と結び付けて書く。
採点講評(IPA)
設問3は,施工事業者選定システムで施工業者が実施すべきことについて問うたが,正答率は高かった。題意はおおむね理解されているようであった。
設問3(2)
25字以内
施工責任者からの要請に対して施工事業者が回答する内容を,25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔リフォーム事業の課題〕
施工事業者ごとに,それぞれ対応できるリフォームの仕様が異なるので,施工責任者は,リフォーム案件ごとに,施工が可能かどうか,工事に必要な作業員数,工事の日程・費用を施工事業者に問い合わせている。
〔リフォーム事業の拡大戦略における新たな業務〕
施工責任者は,施工事業者選定システムを活用して迅速に施工事業者を選定し,見積りに必要な情報を入手して見積書を作成する。
施工責任者が案件ごとに問い合わせている項目は,施工が可能かどうか,工事に必要な作業員数,工事の日程・費用である。このうち施工が可能かどうかは(1)の事前登録で分かるので,要請に対して施工事業者が回答するのは,案件ごとに変わる残りの項目になる。
施工責任者は,システムで選んだ施工事業者に案件を示して要請し,施工事業者は必要な作業員数と工事の日程・費用を回答として登録する。施工責任者はこれを「見積りに必要な情報」として入手し,見積書を作成する。講評によると,設問3は正答率が高かった。
25字に対し,解答例は「工事に必要な作業員数,工事の日程・費用」で19字。本文の問合せ項目をそのまま写し,(1)で答えた項目と重ならないようにする。
採点講評(IPA)
設問3は,施工事業者選定システムで施工業者が実施すべきことについて問うたが,正答率は高かった。題意はおおむね理解されているようであった。
出典:平成26年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問2(表記を一部改変)
問3 洋食レストランの競争力の向上
洋食レストランの競争力の向上に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
T 社は,10 年前から大都市の住宅地で洋食レストランを営んでいる。店の近くには駅があり,地元では名の通ったレストランである。50 のテーブル席を配した内装も,店の外観もヨーロッパアルプスのロッジ風に統一し,“ヨーロッパの家庭料理を味わっていただく”ことをコンセプトにしている。
〔他社との競合状況〕
最近,大手イタリアンレストランチェーン(以下,U 社という)が,T 社の最寄り駅の駅前広場に面して,若年層・ファミリー客向けのレストランを開店した。この店は,安価なメニューアイテムを取りそろえている。また,お得感のある多数のセットメニューを取りそろえ,客単価(客 1 人当たりのオーダ金額合計)を引き上げている。U 社では,オーダが多いセットメニューについて,事前に途中まで調理しておき,オーダを受けたら直ちに仕上げて品出ししている。
T 社は,U 社の進出に対して客層が重ならないように,店内の装飾を豪華にし,料理と飲物の質を上げて,メニューの価格帯も少し高めに設定した。一方で,U 社の店舗よりも雰囲気が良く,気軽に入店しやすいというイメージをもたせられるよう配慮した。しかし,実際は,売上高,来店客数,原価率ともに U 社に比べて悪く,早急に改善が必要である。
〔店舗の運営状況〕
ホールスタッフは,前菜,メインディッシュ,デザートについて,メニューアイテムごとにオーダを受ける。オーダが多いメニューアイテムは決まっており,これに飲物と 1〜2 アイテムを加えることが多い。
メニューブックは,昼と夜とで別のものを用意している。毎月,旬の食材リストに基づいて,メニューブックの構成・内容を変え,印刷している。しかし,予定した魚,野菜などの食材が,天候不順などによって仕入先に入荷しないこともよくある。このような場合は,即座にメニューブックを変更できないので,ホールスタッフが本日のメニューを口頭で客に伝えている。
予約は,電話で受け付け,予約管理表に記入する。予約に対して,食材の確実な仕入れと下ごしらえなどの準備ができるように,受付の際にはできるだけメニューアイテムをオーダしてもらう。
最近,テレビのレストラン紹介番組で,T 社のレストランが取り上げられたことをきっかけに,遠方からも客が来店するようになった。しかし,客が増えるにつれ,現在の手作業によるオーダ処理では効率の良い店舗運営ができない状態になった。
来店客数がピークとなる平日の昼食と週末の夜間の時間帯では,通常 10 分で提供できる料理が 20〜30 分も掛かることがある。この影響で,予約客を長時間待たせてしまうことがある。
また,ピーク時には,ホールスタッフが客の食事の進み具合を見守る余裕がなくなり,“客の追加オーダの気配に気づかない”,“品出しが遅れている事情を説明しない”など,客に対する心遣いが十分にできなくなっている。
ホールスタッフからのオーダ票に基づいて,オーダの順番に調理を行っている。ピーク時には 3 名のシェフが休む間もなく調理しているものの,様々なメニューアイテムのオーダが来ると,メニューアイテムごとに調理の手順が異なるので,順番に調理していては手間が余計に掛かり,オーダを順調にさばけていない。
シェフは,卸売市場の仕入先まで出向いて,良質の食材を仕入れている。その際,品出しの実績に基づいて仕入量を決めているにもかかわらず,食材ごとに余ったり,足りなくなったりしている。また,高価な牛肉などの食材を仕入れても,予定した品出し数に達しないことがある。その場合は傷んでしまう前に,低価格のメニューアイテムに流用している。それでも余った食材は,期限を定めて廃棄している。
ホールスタッフは,オーダを受けてちゅう房にオーダ票を回す段階で,食材が欠品していることが初めて分かる。また,閉店時刻に近づくにつれて,余っている食材を使ったメニューアイテムを客に勧める,といったことができていない。オーダの取り方に工夫が必要である。
〔競争力の向上策〕
T 社は,競争力を増すために,次の施策を立案した。
客がまた来店したいと思えるようなサービスの提供 遠方の客へのアピール また,日々の業績管理において,次の指標を意識する必要があると考えている。
来店客数 客単価 テーブル回転率(1 日当たりの来店客数÷テーブル数) 食材のロス率(食材ごとの目標原価率−実際原価率) 〔店舗運営の IT 化〕
最近,導入費用,運営費用が安価なクラウドコンピューティングサービスによるレストラン向けオーダエントリシステムが普及している。このシステムは,上記のような指標に加えて,メニューの品出し実績,ちゅう房のオーダの調理待ち状況,オーダごとの滞留時間,主要食材の残量などの情報がリアルタイムに表示できる。T 社は,このシステムを導入するつもりである。
テレビのレストラン紹介番組で T 社のレストランが取り上げられたことを契機に,インターネットのレストラン紹介サイトの営業員から,サイトへの登録を提案されている。このサイトには,店名,店内レイアウト,所在を示す地図などの固定情報と,当日のメニューなどの可変情報が掲載される。可変情報については,サイトに掲載された内容と当日の店の運営状況との間に差が生じないように,T 社が内容を随時差し替える必要がある。また,このサイトには予約を受け付ける機能があり,サイト内に予約情報として蓄積できる。遠方の客にアピールするために,このサイトを活用するつもりである。
T 社は,これらの競争力の向上策及び店舗運営の IT 化について,社員と認識を共有し,競争力のある店づくりを目指すことにした。
出題趣旨(IPA)
ITストラテジストには,事業の競争力向上,事業運営の合理化,事業のIT化について,経営者に対して提案する能力が求められる。本問では,地域の洋食レストランを題材に,事業戦略の構想力,事業運営の合理化の提案力と問題発見力を評価する。具体的には,①競争力向上策についての構想力,②店舗運営の効率向上,食材ロス率の低減など店舗運営の合理化の具体策についての提案力,③店舗運営のIT化に当たって考慮すべき点についての問題発見力を問う。
採点講評(問全体・IPA)
問3では,地域の洋食レストランの競争力向上について出題した。全体として正答率が高く,題意や状況設定はよく理解されているようであった。
ITストラテジストは,経営戦略・事業戦略を実現するための事業運営の方法,ITの活用方法について,経営者に対し,事業上の課題に則して提案する能力を高めてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
25字以内
客単価の向上策を,25 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔他社との競合状況〕
また,お得感のある多数のセットメニューを取りそろえ,客単価(客 1 人当たりのオーダ金額合計)を引き上げている。
〔店舗の運営状況〕
ホールスタッフは,前菜,メインディッシュ,デザートについて,メニューアイテムごとにオーダを受ける。オーダが多いメニューアイテムは決まっており,これに飲物と 1〜2 アイテムを加えることが多い。
T 社はメニューアイテムごとにオーダを受けており,客はオーダの多い決まったアイテムに飲物と 1〜2 アイテムを加える程度である。一方,競合の U 社は「お得感のある多数のセットメニューを取りそろえ」,客単価を引き上げている。
T 社も前菜・メインディッシュ・デザートなどを組み合わせたお得感のあるセットメニューを設ければ,単品で頼むよりも多くのアイテムを一度にオーダしてもらえ,客 1 人当たりのオーダ金額合計が上がる。本文で客単価を引き上げている例は U 社のセットメニューだけなので,それを T 社に当てはめる。
25字に対し,解答例は「お得感のあるセットメニューを設ける。」で18字。本文の「お得感のある」を落とすと,値引きで客単価が下がる施策とも読めるので残す。
設問1(2)
35字以内
ピーク時におけるテーブル回転率の向上策を,35 字以内で述べよ。
解答例
オーダが多いメニューアイテムは,事前に途中まで調理しておく。
解説
本文の根拠
〔他社との競合状況〕
U 社では,オーダが多いセットメニューについて,事前に途中まで調理しておき,オーダを受けたら直ちに仕上げて品出ししている。
〔店舗の運営状況〕
来店客数がピークとなる平日の昼食と週末の夜間の時間帯では,通常 10 分で提供できる料理が 20〜30 分も掛かることがある。
〔店舗の運営状況〕
ピーク時には 3 名のシェフが休む間もなく調理しているものの,様々なメニューアイテムのオーダが来ると,メニューアイテムごとに調理の手順が異なるので,順番に調理していては手間が余計に掛かり,オーダを順調にさばけていない。
ピーク時には通常 10 分で出せる料理が 20〜30 分掛かり,客がテーブルにいる時間が延びてテーブル回転率が下がる。原因はちゅう房で,3 名のシェフが休む間もなく調理していても,アイテムごとに手順が異なるので順番どおりの調理では手間が余計に掛かっている。ボトルネックはちゅう房の負荷である。
本文には,U 社が「オーダが多いセットメニューについて,事前に途中まで調理しておき,オーダを受けたら直ちに仕上げて品出し」している例がある。T 社もオーダが多いメニューアイテムは決まっているので,それを事前に途中まで調理しておけば,ピーク時のちゅう房の作業が減り,品出しが早まって回転率が上がる。講評によると,ちゅう房の負荷の軽減を想定しない解答や,調理効率の向上など具体的な内容を記述しない解答が見られた。
35字に対し,解答例は「オーダが多いメニューアイテムは,事前に途中まで調理しておく。」で30字。「調理を効率化する」のような抽象的な言い方ではなく,何を(オーダが多いメニューアイテム)いつ(事前に)どうする(途中まで調理)かを書く。
採点講評(IPA)
設問1(2)は,ピーク時におけるテーブル回転率の向上策を問うたが,ボトルネックとなっているちゅう房の負荷の軽減を想定しない解答や,調理効率の向上など具体的な内容を記述しない解答が見られた。
設問2(1)
35字以内
オーダを受けるときに,食材のロス率の低減に寄与できることを,35 字以内で述べよ。
解答例
余りそうな食材を使っているメニューアイテムを客に勧める。
解説
本文の根拠
〔店舗の運営状況〕
また,閉店時刻に近づくにつれて,余っている食材を使ったメニューアイテムを客に勧める,といったことができていない。オーダの取り方に工夫が必要である。
〔店舗の運営状況〕
その際,品出しの実績に基づいて仕入量を決めているにもかかわらず,食材ごとに余ったり,足りなくなったりしている。
〔店舗運営の IT 化〕
このシステムは,上記のような指標に加えて,メニューの品出し実績,ちゅう房のオーダの調理待ち状況,オーダごとの滞留時間,主要食材の残量などの情報がリアルタイムに表示できる。
食材は品出しの実績で仕入量を決めても余ることがあり,余った食材は低価格のメニューに流用したり,期限を定めて廃棄したりしている。本文は,閉店時刻が近づいても「余っている食材を使ったメニューアイテムを客に勧める,といったことができていない」と書き,オーダの取り方に工夫が必要だとしている。
オーダエントリシステムは「主要食材の残量」や「メニューの品出し実績」をリアルタイムに表示する。ホールスタッフがこれを見て余りそうな食材を知り,その食材を使ったメニューアイテムを客に勧めれば,廃棄や流用が減って食材のロス率が下がる。本文の「できていない」ことを,システムの情報で「できる」ようにする筋である。
35字に対し,解答例は「余りそうな食材を使っているメニューアイテムを客に勧める。」で28字。システムでリアルタイムに分かるので,余ってからではなく「余りそうな」段階で勧めると書く。
設問2(2)
40字以内
ピーク時にオーダを受けるときに,ちゅう房の負荷の平準化に寄与できることを,40 字以内で述べよ。
解答例
調理待ちのメニューアイテムと同じオーダが取れるように客を誘導する。
解説
本文の根拠
〔店舗の運営状況〕
ピーク時には 3 名のシェフが休む間もなく調理しているものの,様々なメニューアイテムのオーダが来ると,メニューアイテムごとに調理の手順が異なるので,順番に調理していては手間が余計に掛かり,オーダを順調にさばけていない。
〔店舗運営の IT 化〕
このシステムは,上記のような指標に加えて,メニューの品出し実績,ちゅう房のオーダの調理待ち状況,オーダごとの滞留時間,主要食材の残量などの情報がリアルタイムに表示できる。
ピーク時のちゅう房は,様々なアイテムのオーダが来ると,アイテムごとに手順が異なるので手間が余計に掛かっている。逆に,同じアイテムのオーダがまとまれば,同じ手順でまとめて調理でき,手間が減る。
オーダエントリシステムは「ちゅう房のオーダの調理待ち状況」を表示するので,ホールスタッフはどのアイテムが調理待ちになっているかが分かる。オーダを受けるときに,調理待ちのアイテムと同じものを選んでもらうよう客を誘導すれば,ちゅう房はまとめて調理でき,負荷が平準化する。講評によると,ホールスタッフがオーダを受けるときに行うべきことを考慮せず,ちゅう房での調理手順に関する解答が見られた。設問は「ホールスタッフが行うべきこと」を問うている。
40字に対し,解答例は「調理待ちのメニューアイテムと同じオーダが取れるように客を誘導する。」で33字。主語はホールスタッフなので,動作は「客を誘導する」で結ぶ。システムの情報(調理待ち)を使うことが分かるように書く。
採点講評(IPA)
設問2(2)は,ピーク時におけるホールスタッフの業務改善の内容を問うたが,ホールスタッフがオーダを受けるときに行うべきことを考慮せず,ちゅう房での調理手順に関する解答が見られた。
設問2(3)
30字以内
オーダごとの滞留時間を判断して,客に対処すべきことを,30 字以内で述べよ。
解答例
解説
本文の根拠
〔店舗の運営状況〕
また,ピーク時には,ホールスタッフが客の食事の進み具合を見守る余裕がなくなり,“客の追加オーダの気配に気づかない”,“品出しが遅れている事情を説明しない”など,客に対する心遣いが十分にできなくなっている。
〔競争力の向上策〕
客がまた来店したいと思えるようなサービスの提供
ピーク時には,ホールスタッフが「品出しが遅れている事情を説明しない」など,客に対する心遣いが十分にできなくなっている。T 社は競争力の向上策として,客がまた来店したいと思えるようなサービスの提供を挙げている。
オーダエントリシステムは「オーダごとの滞留時間」をリアルタイムに表示するので,ホールスタッフはどのオーダの品出しが遅れそうかが分かる。遅れそうなときに客へ事情を説明すれば,待たされる客の不満を和らげられる。本文で欠けているとされた心遣いを,滞留時間の情報で補う筋である。
30字に対し,解答例は「品出しが遅れそうな場合は,客に事情を説明する。」で23字。滞留時間から判断するので,遅れてからではなく「遅れそうな場合」と書き,対処は本文の「事情を説明」を使う。
設問3
解答欄2つ
レストラン紹介サイトに登録するに当たって,整備すべき仕組みを二つ挙げ,それぞれ 40 字以内で述べよ。
〔①〕解答例
当日のメニューの変更を迅速にレストラン紹介サイトに反映させる仕組み
〔②〕解答例
レストラン紹介サイトの予約情報と店の予約管理表を同期させる仕組み
解説
本文の根拠
〔店舗運営の IT 化〕
可変情報については,サイトに掲載された内容と当日の店の運営状況との間に差が生じないように,T 社が内容を随時差し替える必要がある。また,このサイトには予約を受け付ける機能があり,サイト内に予約情報として蓄積できる。
〔店舗の運営状況〕
しかし,予定した魚,野菜などの食材が,天候不順などによって仕入先に入荷しないこともよくある。このような場合は,即座にメニューブックを変更できないので,ホールスタッフが本日のメニューを口頭で客に伝えている。
〔店舗の運営状況〕
予約は,電話で受け付け,予約管理表に記入する。予約に対して,食材の確実な仕入れと下ごしらえなどの準備ができるように,受付の際にはできるだけメニューアイテムをオーダしてもらう。
レストラン紹介サイトには当日のメニューなどの可変情報が載り,T 社はサイトの内容と当日の運営状況に差が出ないよう随時差し替える必要がある。T 社では食材が入荷せず当日のメニューが変わることがよくあるので,その変更を迅速にサイトへ反映させる仕組みが要る。
もう一つは予約である。サイトには予約受付の機能があり,予約はサイト内に蓄積される。一方,T 社は電話で受けた予約を予約管理表に記入している。予約が 2 か所に分かれたままだと,店は予約の全体をつかめず,予約に合わせた食材の確実な仕入れや下ごしらえができなくなる。サイトの予約情報と店の予約管理表を同期させる仕組みが要る。講評によると,メニュー変更の反映は正答率が高かったが,“管理画面の使い方をスタッフに教える”のような準備事項の解答も見られ,予約の同期は正答率が低かった。2 か所に分散した情報を同期することの必要性に気付いてほしいとしている。
40字ずつに対し,解答例は「当日のメニューの変更を迅速にレストラン紹介サイトに反映させる仕組み」で33字,「レストラン紹介サイトの予約情報と店の予約管理表を同期させる仕組み」で32字。設問が「整備すべき仕組み」を問うので「〜仕組み」で結び,何と何をつなぐかを本文の語で書く。
採点講評(IPA)
設問3は,二つの解答のうち,当日のメニュー変更をレストラン紹介サイトに反映する仕組みについては,正答率が高かった。しかし,“レストラン紹介サイトの管理画面の使い方をスタッフに教える”といった準備事項の解答も見られ,レストラン紹介サイトの予約情報と店の予約管理表を同期させる仕組みについては,正答率が低かった。2か所に分散した情報を同期することの必要性に気付いてほしい。
出典:平成26年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問3(表記を一部改変)
問4 建設機械の新機能の開発
建設機械の新機能の開発に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。
X 社は,建設機械メーカであり,地面を掘削する油圧ショベル,及び掘削した土砂を運搬するダンプトラックが主力製品である。これらの大型の建設機械は,海外の油田,化学プラント建設現場などの大規模な建設現場で,建設前の土地造成,及び建物の土台を作る基礎工事に使用されている。
〔建設業界の状況〕
大規模な建設現場では,総合建設業者(以下,ゼネコンという)が発注者から各種の土木工事・建設工事をまとめて請け負い,建設工事会社に工事を発注する。その際,ゼネコンは建設機械の準備,建設工事会社間の調整を含めた進捗管理など工事全体の取りまとめを行う。 高価な建設機械が多い上に,特殊な用途の機械は使う頻度が少ないことから,一般に,ゼネコンは建設機械を購入せずに,レンタル会社から期間契約で借り受ける。一方,レンタル会社は,建設機械のレンタルスケジュールを管理するとともに,期間契約で貸し出す建設機械の保守を建設機械メーカに委託し,レンタル期間外に保守を済ませている。 他の業界と比べて,労働生産性が低いとともに,労働災害が多く,改善が進んでいない。またここ数年,建設業界の労働人口が減少する傾向にあり,作業員不足が深刻な問題となっている。 〔X 社の現状と方針〕
建設業界のこのような状況に加えて,X 社では製品販売数が伸び悩んでいる。さらに,不定期に発生する保守に対応するために多くの社員を海外に常駐させていることから,コストが増加し,業績が悪化している。そこで X 社は,現在の社員数を維持した上で,次の方策によって業績の回復を図ることにした。
主力製品である大型の建設機械に有効と考えられる,工事そのものの自動化技術を他社に先駆けて開発し,新たな機能として製品に組み込むことによって,製品販売数を増やす。 保守形態を見直すことによって,海外に常駐する社員を減らす。 国内にある X 社の施設でできる業務は,なるべく海外から国内にシフトする。 〔建設機械に関する海外市場の調査結果とその分析〕
X 社は,新たな機能の開発に当たり,建設機械に関する海外市場の調査を,関係する建設工事会社,ゼネコン及びレンタル会社に対して実施した。その結果,次のような問題があることが判明した。
① 建設機械を操作する作業員(以下,オペレータという)が不足している。オペレータの確保,育成が思うように進まない。 ② 寒暖が厳しかったり,日照時間が短くなったりすると,作業効率が落ち,工期が長くなり,費用がかさむ。 ③ オペレータが建設機械から転落したり,作業員が建設機械と接触したりするなどの労働災害が多い。 ④ 工事期間を短縮するために,資金を投入して建設機械とオペレータを増やしても,作業現場において建設機械同士が相互に干渉し,狙った効果が現れなかったり,逆効果となったりする場合がある。 ⑤ 建設機械の総レンタル費用を低減できる工事計画が容易に立案できない。 ⑥ 日照時間,気温,天候などを考慮し,地域ごとに多段階のレンタル費用を設定している。しかし,工事に適さない季節は,レンタル費用を低く設定していても利用率は上がらない。 ⑦ 建設機械の保守を開始してから交換部品を取り寄せて修理を行うので,建設機械の不稼働時間が長かったり,代替の建設機械の引当てが間に合わなかったりして,建設機械のスケジューリングがうまくいかなくなる場合がある。 X 社の IT ストラテジストである Y 氏は,海外市場の調査結果①〜⑦を分析し,新たな機能をもつ建設機械を開発することとした。そのために Y 氏は,システムアーキテクトの Z 氏に,次の事項に対する新たな機能の実現方法を検討するよう依頼した。
安全に作業できる環境にいる複数人のオペレータが,1 人当たり最大 10 台の建設機械を同時に動かせるようにする。 日照時間,気温,天候などに左右されずに,24 時間作業が行えるようにする。 〔新たな機能の検討〕
Z 氏は,Y 氏から依頼された新たな機能の実現方法の検討結果を次のようにまとめた。
(1) システム全体の機能は,3 次元 CAD データ化した工事図面データ(以下,3D CAD データという)などを基に,“工事開始”,“緊急停止”など,オペレータの簡単な作業指示で建設機械を動かせる自動稼働システムとする。 (2) 建設機械に 3D CAD データを送信し,作業指示を出すシステム(以下,センタシステムという)を搭載した,冷暖房完備の車両(以下,施工管理車という)を用意する。 センタシステムは,3D CAD データを格納するサーバ,建設機械に作業指示を出す操作盤,各建設機械の工事状況と工事エリア全体を確認するためのモニタ及び無線通信装置で構成する。 工事に先立ち,オペレータは施工管理車に乗ってセンタシステムを操作することによって,各建設機械へ担当工事エリアの 3D CAD データを送信する。 オペレータは,工事の状況をモニタで確認しながら操作盤を操作することによって,各建設機械に無線で作業指示を出すことができる。 (3) 建設機械には,工事後の形態を表す 3D CAD データと現在の工事中の形態を表すデータとを比較し,自律的に工事を進めるシステム(以下,自律システムという)を搭載する。 自律システムは,自機の位置を測定する GPS,現在の工事中の形態を計測する 3D レーザスキャナ,現在の工事中の形態を撮影する 3D カメラ,データをセンタシステムと送受信する無線装置で構成する。 1 台の油圧ショベルと複数台のダンプトラックが連携し,ダンプトラックは,油圧ショベルの運転を止めないように,指定された場所に土砂を運び,戻ってくる。 (4) 建設機械同士が一定距離以内に接近した場合は,自動で停止するよう制御する。 (5) 建設現場で複数の建設機械が同時に作業を行えるようにする。そのために,建設機械間の工事エリアを一部重複させ,自律システムで建設機械相互の位置関係を認識し,一定の距離を保ちながら工事を進められるように制御する。 (6) 建設機械の保守機能として,運転状態の監視結果と過去から蓄積した保守データによって故障を予見し,必要な部品の交換,修理などを行う状態監視保全を取り入れる。 Y 氏は,Z 氏の報告を受け,インターネット経由で,状態監視情報を含む稼働データを建設機械から X 社が直接受信する機能,及び 3D CAD データを X 社から建設機械に直接送信する機能についても検討するよう Z 氏に依頼した。
Y 氏は,新たな機能を組み込んだ製品を早期に開発すべきであると考えた。しかし,その一方で,Z 氏が検討した実現方法のうち,完成までに長期間掛かるものについては,後からソフトウェアを追加し,機能の向上を図ることにした。
〔新たな機能を組み込んだ製品の事業計画〕
Y 氏は,新たな機能(1)〜(6)を組み込んだ製品を更に活用するために,次のような事業計画を考えた。
新たな機能を組み込んだ製品の開発・市場展開に先立ち,建設機械を何台準備し,どのような順番で工事を進めるのが効果的かを,工事図面を基に試算するシミュレーションシステムを作る。シミュレーションシステムには,次の二つのモードをもたせる。
工事期間優先モード:工事期間を短くするには,どの建設機械をいつ,何台準備し,どのような順番で工事を進めるのが効果的かを試算する。 工事費用優先モード:工事費用を最小とする経済的な建設機械のレンタルスケジュールを試算する。 当面は,工事費用優先モードが多く利用されると予測されるが,新たな機能を組み込んだ製品が広く普及すると,利用が減ると考えている。
新たな機能を組み込んだ製品を広く普及させるためには,工事図面を 3D CAD データ化する技術要員と,建設機械の保守要員の確保が重要である。X 社の事業として,X 社が請け負う形態,X 社が教育を行う形態及び現地の会社に事業を委託する形態のそれぞれを検討した結果,次の形態とする。
工事図面を 3D CAD データ化する技術は,X 社が請け負うこととした。その理由は,工事図面のデータを社内に蓄積することが有効と考えたからである。 保守事業は,現地の会社に委託することとした。その理由は,状態監視保全を取り入れ,X 社が状態監視情報を基に判断することによって,保守に先立って交換部品を手配したり,あらかじめ保守に要する期間をレンタル会社に連絡したりすることができるからである。
出題趣旨(IPA)
ITストラテジストには,市場動向を分析し,自社の保有技術を把握した上で,新たな製品戦略を立案したり,事業を企画したりする能力が求められる。本問では,建設機械の新製品開発を題材に,市場の状況と自社の方針を踏まえた上で,新たな製品に組み込む機能を検討したり事業を企画したりする能力を評価する。具体的には市場調査の分析,新たな機能の検討,事業企画の展開について問う。
採点講評(問全体・IPA)
問4では,建設機械の新機能の開発について出題した。題意や状況設定はおおむね理解されているようであった。
市場の動向を分析し,自社の状況と方針を把握した上で,新機能提案,事業計画策定ができるITストラテジストとしての能力を高めてほしい。
設問と解答例
設問1(1)
解答欄3つ
問題①,④,⑦を提起した事業者を,それぞれ,建設工事会社,ゼネコン及びレンタル会社から選んで答えよ。
解説
本文の根拠
〔建設業界の状況〕
大規模な建設現場では,総合建設業者(以下,ゼネコンという)が発注者から各種の土木工事・建設工事をまとめて請け負い,建設工事会社に工事を発注する。その際,ゼネコンは建設機械の準備,建設工事会社間の調整を含めた進捗管理など工事全体の取りまとめを行う。
〔建設業界の状況〕
一方,レンタル会社は,建設機械のレンタルスケジュールを管理するとともに,期間契約で貸し出す建設機械の保守を建設機械メーカに委託し,レンタル期間外に保守を済ませている。
〔建設機械に関する海外市場の調査結果とその分析〕
① 建設機械を操作する作業員(以下,オペレータという)が不足している。オペレータの確保,育成が思うように進まない。
〔建設機械に関する海外市場の調査結果とその分析〕
④ 工事期間を短縮するために,資金を投入して建設機械とオペレータを増やしても,作業現場において建設機械同士が相互に干渉し,狙った効果が現れなかったり,逆効果となったりする場合がある。
〔建設機械に関する海外市場の調査結果とその分析〕
⑦ 建設機械の保守を開始してから交換部品を取り寄せて修理を行うので,建設機械の不稼働時間が長かったり,代替の建設機械の引当てが間に合わなかったりして,建設機械のスケジューリングがうまくいかなくなる場合がある。
〔建設業界の状況〕に三者の役割が書かれている。ゼネコンは工事をまとめて請け負って建設工事会社に発注し,建設機械の準備や進捗管理など工事全体を取りまとめる。建設工事会社は発注を受けて実際に工事をする。レンタル会社は建設機械のレンタルスケジュールを管理し,保守を建設機械メーカに委託している。
①はオペレータの確保・育成が進まないという問題で,作業員を抱えて工事を行う建設工事会社のものである。④は工事期間を短縮するために資金を投入して建設機械とオペレータを増やす判断の話で,建設機械の準備と進捗管理を担うゼネコンの立場である。⑦は保守の間の不稼働や代替機の引当てによってスケジューリングがうまくいかない問題で,レンタルスケジュールを管理し保守を委託しているレンタル会社のものである。講評によると,設問1は正答率が高かった。
字数の制限は無く,解答例は「建設工事会社」「ゼネコン」「レンタル会社」。設問が挙げた三つの語から選ぶので,本文の役割と問題の中身(誰がその作業・判断をしているか)を突き合わせる。
採点講評(IPA)
設問1では,市場調査の分析について解答を求めた。正答率は高く,よく理解されているようであった。
設問1(2)
X 社の開発する新たな機能は,建設業界に関わるどのような問題を解決することを狙ったものか答えよ。
解答例(3通り)
解説
本文の根拠
〔建設業界の状況〕
他の業界と比べて,労働生産性が低いとともに,労働災害が多く,改善が進んでいない。またここ数年,建設業界の労働人口が減少する傾向にあり,作業員不足が深刻な問題となっている。
〔建設機械に関する海外市場の調査結果とその分析〕
安全に作業できる環境にいる複数人のオペレータが,1 人当たり最大 10 台の建設機械を同時に動かせるようにする。
〔新たな機能の検討〕
(1) システム全体の機能は,3 次元 CAD データ化した工事図面データ(以下,3D CAD データという)などを基に,“工事開始”,“緊急停止”など,オペレータの簡単な作業指示で建設機械を動かせる自動稼働システムとする。
〔建設業界の状況〕は,建設業界の問題として,労働生産性が低いこと,労働災害が多いこと,作業員不足が深刻なことの三つを挙げている。X 社の新たな機能は,オペレータが安全な環境から 1 人で最大 10 台の建設機械を同時に動かし,簡単な作業指示で自動稼働させるものである。
1 人で多くの建設機械を動かせれば,少ない作業員で工事ができ(作業員不足),1 人当たりの作業量が増え(労働生産性),オペレータが建設機械に乗らずに冷暖房完備の施工管理車から操作するので転落などの事故も減る(労働災害)。新たな機能は三つの問題のどれにも効く。
字数の制限は無い。解答例は「作業員不足」「低い労働生産性」「労働災害が多い」を別解として挙げており,どれか一つを答えればよい。個々の調査結果(①〜⑦)ではなく,設問が問う「建設業界に関わる」問題として〔建設業界の状況〕の語で答える。
採点講評(IPA)
設問1では,市場調査の分析について解答を求めた。正答率は高く,よく理解されているようであった。
設問2(1)
40字以内
Y 氏が,後からソフトウェアを追加し,機能の向上を図ることにした機能を,40 字以内で述べよ。
解答例(2通り)
建設機械相互の位置関係を認識し,一定の距離を保つように制御する機能 運転状態の監視結果と蓄積した保守データから故障を予見する状態監視保全機能
解説
本文の根拠
〔新たな機能の検討〕
(5) 建設現場で複数の建設機械が同時に作業を行えるようにする。そのために,建設機械間の工事エリアを一部重複させ,自律システムで建設機械相互の位置関係を認識し,一定の距離を保ちながら工事を進められるように制御する。
〔新たな機能の検討〕
(6) 建設機械の保守機能として,運転状態の監視結果と過去から蓄積した保守データによって故障を予見し,必要な部品の交換,修理などを行う状態監視保全を取り入れる。
〔新たな機能の検討〕
Y 氏は,新たな機能を組み込んだ製品を早期に開発すべきであると考えた。しかし,その一方で,Z 氏が検討した実現方法のうち,完成までに長期間掛かるものについては,後からソフトウェアを追加し,機能の向上を図ることにした。
Z 氏の検討結果(1)〜(6)のうち,(1)〜(4)は自動稼働システム,施工管理車とセンタシステム,自律システム,接近時の自動停止で,建設機械を動かすための基本動作である。これらがなければ製品にならないので,早期に開発する製品に入れる。
(5)は,(4)の「接近したら止まる」から一歩進めて,工事エリアを重ねたまま相互の位置関係を認識し,一定の距離を保って工事を続けさせる制御である。(6)は,運転状態の監視結果と過去から蓄積した保守データで故障を予見する状態監視保全で,判断の材料となるデータの蓄積が要る。どちらも基本動作の上に積む機能で,完成までに時間が掛かるので,後からソフトウェアを追加して機能を向上させる対象になる。講評によると,新たな建設機械の基本動作となる機能を記述した解答も一部に見られた。
40字に対し,解答例は「建設機械相互の位置関係を認識し,一定の距離を保つように制御する機能」で33字,別解は「運転状態の監視結果と蓄積した保守データから故障を予見する状態監視保全機能」で36字。どちらか一つを,本文(5)(6)の語句を縮めて「〜機能」で結ぶ。
採点講評(IPA)
設問2では,新たな機能の検討について解答を求めた。(1)では,後からソフトウェアを追加することによって機能の向上を図る機能について解答を求めた。おおむね理解されていたが,新たな建設機械の基本動作となる機能を記述した解答も一部に見られた。
設問2(2)
45字以内
Y 氏が,インターネット経由で,稼働データを建設機械から X 社が直接受信する機能の検討を Z 氏へ依頼した目的は何か,45 字以内で述べよ。
解答例
保全に必要な稼働データを取得し,レンタル会社や現地の保守会社に情報を提供する。
解説
本文の根拠
〔X 社の現状と方針〕
さらに,不定期に発生する保守に対応するために多くの社員を海外に常駐させていることから,コストが増加し,業績が悪化している。
〔X 社の現状と方針〕
保守形態を見直すことによって,海外に常駐する社員を減らす。
〔新たな機能を組み込んだ製品の事業計画〕
保守事業は,現地の会社に委託することとした。その理由は,状態監視保全を取り入れ,X 社が状態監視情報を基に判断することによって,保守に先立って交換部品を手配したり,あらかじめ保守に要する期間をレンタル会社に連絡したりすることができるからである。
X 社は不定期に発生する保守のために多くの社員を海外に常駐させており,それがコスト増と業績悪化を招いている。方針として,保守形態を見直して海外に常駐する社員を減らし,国内でできる業務は国内にシフトする。
稼働データ(状態監視情報を含む)をインターネット経由で X 社が直接受信すれば,保全の判断を国内の X 社で行える。保守の実作業は現地の会社に委託し,X 社は状態監視情報を基に交換部品を手配し,保守に要する期間をレンタル会社に連絡する。つまり,保全に必要な稼働データを国内で取得して,レンタル会社や現地の保守会社に情報を提供することが目的で,これによって海外常駐の社員を減らせる。
45字に対し,解答例は「保全に必要な稼働データを取得し,レンタル会社や現地の保守会社に情報を提供する。」で39字。データを受け取るだけでなく,誰に(レンタル会社,現地の保守会社)提供するかまで書くと,保守形態の見直しにつながることが伝わる。
設問3(1)
45字以内
状態監視保全に基づく情報を X 社から受け取ることによって,レンタル会社ができるようになることを,45 字以内で述べよ。
解答例
代替の建設機械を事前に手配することで,建設機械のレンタルスケジューリングができる。
解説
本文の根拠
〔建設機械に関する海外市場の調査結果とその分析〕
⑦ 建設機械の保守を開始してから交換部品を取り寄せて修理を行うので,建設機械の不稼働時間が長かったり,代替の建設機械の引当てが間に合わなかったりして,建設機械のスケジューリングがうまくいかなくなる場合がある。
〔新たな機能を組み込んだ製品の事業計画〕
その理由は,状態監視保全を取り入れ,X 社が状態監視情報を基に判断することによって,保守に先立って交換部品を手配したり,あらかじめ保守に要する期間をレンタル会社に連絡したりすることができるからである。
レンタル会社の問題⑦は,保守を始めてから交換部品を取り寄せるので不稼働時間が長く,代替の建設機械の引当てが間に合わず,スケジューリングがうまくいかないことである。
状態監視保全を取り入れると,X 社は故障を予見し,保守に要する期間をあらかじめレンタル会社に連絡できる。レンタル会社は保守の時期と期間が前もって分かるので,代替の建設機械を事前に手配でき,レンタルスケジュールを組めるようになる。問題⑦の「代替の建設機械の引当てが間に合わなかったり」と「スケジューリングがうまくいかなくなる」を裏返せば答えになる。
45字に対し,解答例は「代替の建設機械を事前に手配することで,建設機械のレンタルスケジューリングができる。」で41字。手段(代替機の事前手配)と結果(レンタルスケジューリングができる)の両方を書く。
設問3(2)
40字以内
新たな機能を組み込んだ製品が広く普及した場合,工事費用優先モードの利用が減ると Y 氏が考えた理由を,40 字以内で述べよ。
解答例
建設工事に適さない季節がなくなり,レンタル費用の差が小さくなるから
解説
本文の根拠
〔建設機械に関する海外市場の調査結果とその分析〕
⑥ 日照時間,気温,天候などを考慮し,地域ごとに多段階のレンタル費用を設定している。しかし,工事に適さない季節は,レンタル費用を低く設定していても利用率は上がらない。
〔建設機械に関する海外市場の調査結果とその分析〕
日照時間,気温,天候などに左右されずに,24 時間作業が行えるようにする。
〔新たな機能を組み込んだ製品の事業計画〕
工事費用優先モード:工事費用を最小とする経済的な建設機械のレンタルスケジュールを試算する。
レンタル会社は日照時間,気温,天候などを考慮して,地域ごとに多段階のレンタル費用を設定している。工事に適さない季節は費用を低くしている。工事費用優先モードは,この費用の違いを使って,工事費用が最小になるレンタルスケジュールを試算するものである。
新たな機能は,日照時間,気温,天候などに左右されずに 24 時間作業できるようにする。この製品が広く普及すれば,工事に適さない季節がなくなり,季節による費用の差を付ける理由も薄れて,レンタル費用の差が小さくなる。費用の差が小さければ,時期を選んで費用を抑える余地が減り,工事費用優先モードを使う意味が小さくなる。講評によると,シミュレーションシステムのモードの特徴をよく理解できていない解答が多く見られた。
40字に対し,解答例は「建設工事に適さない季節がなくなり,レンタル費用の差が小さくなるから」で33字。新たな機能がもたらす変化(適さない季節がなくなる)と,モードが前提にしている条件の変化(費用の差が小さくなる)をつなげ,理由なので「〜から」で結ぶ。
採点講評(IPA)
設問3では,事業計画について解答を求めた。(2)では,シミュレーションシステムのモードの特徴をよく理解できていない解答が多く見られた。
設問3(3)
35字以内
工事図面のデータを社内に蓄積することが有効と Y 氏が考えた理由を,35 字以内で述べよ。
解答例
蓄積したデータを分析し製品開発に役立てることができるから
解説
本文の根拠
〔X 社の現状と方針〕
建設業界のこのような状況に加えて,X 社では製品販売数が伸び悩んでいる。
〔X 社の現状と方針〕
主力製品である大型の建設機械に有効と考えられる,工事そのものの自動化技術を他社に先駆けて開発し,新たな機能として製品に組み込むことによって,製品販売数を増やす。
〔新たな機能を組み込んだ製品の事業計画〕
工事図面を 3D CAD データ化する技術は,X 社が請け負うこととした。その理由は,工事図面のデータを社内に蓄積することが有効と考えたからである。
X 社は建設機械メーカで,製品販売数が伸び悩んでいる。そこで工事そのものの自動化技術を他社に先駆けて開発し,新たな機能として製品に組み込んで販売数を増やす方針である。Y 氏は,完成までに長期間掛かる機能は後からソフトウェアを追加して向上させることにしている。
工事図面の 3D CAD データ化を X 社が請け負えば,さまざまな建設現場の工事図面のデータが社内にたまる。これを分析すれば,どのような工事にどのような機能が求められるかが分かり,新たな機能や後から追加するソフトウェアなどの製品開発に役立てられる。メーカである X 社にとって,蓄積の価値は自社の製品を強くすることにある。
35字に対し,解答例は「蓄積したデータを分析し製品開発に役立てることができるから」で28字。「蓄積する」だけでは設問の言い換えなので,蓄積したデータを何に使うか(分析して製品開発に役立てる)まで書く。
出典:平成26年度 秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問4(表記を一部改変)
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